JP2012192819A - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents

車両用駆動装置の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ハイブリッド車両用駆動装置において、差動用電動機用の駆動回路の耐久性低下を生じるほどその駆動回路が発熱することを防止すると共に、ドライバビリティの悪化を抑えることができる制御装置を提供する。
【解決手段】目標第1電動機回転速度Ngtagは、それが零近傍回転速度範囲RNgz内とされる場合であって、且つ、第1電動機トルクTgが予め定められたトルク判定値TgA以上である場合には、上記零近傍回転速度範囲RNgz外の回転速度に設定される。従って、上記差動用電動機である第1電動機MG1用の駆動回路の耐久性を低下させるほどその駆動回路が発熱することを、防止できる。更に、第1電動機トルクTgが加味されるので、第1電動機回転速度Ngが上記零近傍回転速度範囲RNgzを外して段階的に変化することが不必要には行われなくなり、ドライバビリティの悪化を抑えることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両走行用の駆動力源に含まれる電動機を制御する制御装置に関する。
エンジンからの動力を駆動輪へ出力し差動用電動機により差動状態が制御される電気式差動機構を備えたハイブリッド車両において、前記差動用電動機の回転速度が所定の目標回転速度となるようにその差動用電動機を制御する車両用駆動装置の制御装置が、従来からよく知られている。例えば、特許文献1に開示されたハイブリッド車両の制御装置がそれである。その特許文献1の制御装置は、前記差動用電動機である第1の電動発電機の瞬時の目標回転速度と将来の目標回転速度とを逐次算出する。そして、その瞬時の目標回転速度とその将来の目標回転速度との両方が、零を含む所定の回転速度範囲内である場合には、前記第1の電動発電機の回転速度がその所定の回転速度範囲内に入らないように前記所定の目標回転速度を設定した上で、その第1の電動発電機を制御する。
特開2000−184506号公報 特開2005−045863号公報 特開平10−084602号公報 特開2006−187169号公報
一般的に、ハイブリッド車両では、前記電動発電機はインバータによって駆動制御されている。特許文献1の制御装置は、前記第1の電動発電機を駆動するインバータがその耐久性低下を生じるほど発熱することを、上記のように第1の電動発電機の目標回転速度を設定することで防止している。ここで、上記インバータが発熱するためにはその前提として、上記第1の電動発電機に供給される駆動電流が大きいこと、すなわち、その第1の電動発電機のトルクが大きいことが必要である。しかし、特許文献1の制御装置は、前記第1の電動発電機の回転速度が前記所定の回転速度範囲内に入らないように前記所定の目標回転速度を設定する際に、上記第1の電動発電機のトルクを加味せずにその所定の目標回転速度を設定するものであった。従って、特許文献1の制御装置は、前記インバータの発熱抑制の観点から、前記第1の電動発電機の回転速度が前記所定の回転速度範囲内に入らないようにする必要が無い場合においても、前記第1の電動発電機の回転速度が前記所定の回転速度範囲内に入らないように第1の電動発電機を制御していた。そのため、上記第1の電動発電機の回転速度が上記所定の回転速度範囲を外して段階的に変化することが不必要に発生し、ドライバビリティを不必要に悪化させる可能性があった。なお、このような課題は未公知である。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンからの動力を駆動輪へ出力し差動用電動機により差動状態が制御される電気式差動機構を備えた車両用駆動装置において、前記インバータのような上記差動用電動機用の駆動回路の耐久性低下を生じるほどその駆動回路が発熱することを防止すると共に、ドライバビリティの悪化を抑えることができる車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)エンジンからの動力を駆動輪へ出力し差動用電動機により差動状態が制御される電気式差動機構を備えた車両用駆動装置において、前記差動用電動機の回転速度が所定の目標回転速度となるようにその差動用電動機を制御する車両用駆動装置の制御装置であって、(b)前記差動用電動機の目標回転速度が、零を含む予め定められた回転速度範囲内とされる場合であって、且つ、前記差動用電動機のトルクが予め定められたトルク判定値以上である場合には、前記目標回転速度を前記予め定められた回転速度範囲外の回転速度に設定することを特徴とする。
このようにすれば、たとえばインバータのような上記差動用電動機用の駆動回路の耐久性を低下させるほどその駆動回路が発熱することを、防止することができる。更に、上記差動用電動機のトルクが加味された上で、その差動用電動機の目標回転速度が前記予め定められた回転速度範囲外の回転速度に設定されるので、例えば上記差動用電動機の駆動電流が小さいことでその差動用電動機の駆動回路の発熱のおそれがないような場合には、上記差動用電動機の回転速度が上記予め定められた回転速度範囲を外して段階的に変化することが回避される。そのため、ドライバビリティの悪化を抑えることができる。
ここで、好適には、前記差動用電動機のトルクが予め定められたトルク判定値以上である場合とは、その差動用電動機のトルクが、その差動用電動機の駆動電流が所定値以上となる予め定められたトルク領域内である場合である。
本発明が適用される車両用駆動装置を説明するための骨子図である。 図1の車両用駆動装置を制御するための制御装置として機能する電子制御装置に入力される信号を例示した図であると共に、その電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。 図2の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち、エンジン走行モードにおいて第1電動機回転速度を制御する制御作動を説明するためのフローチャートである。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される車両用駆動装置8を説明するための骨子図である。図1に示すように、車両用駆動装置8は、走行用の動力を出力する一般的に知られた自動車用ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンであるエンジン14と、そのエンジン14と駆動輪40(図2参照)との間に介装された車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」という)とを備えている。動力伝達装置10はエンジン14からの駆動力を駆動輪40に伝達するトランスアクスルである。そして、動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース12(以下、「ケース12」という)内において、エンジン14側から順番に、そのエンジン14の出力軸15(例えばクランク軸)に作動的に連結されてエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパー16、そのダンパー16を介してエンジン14によって回転駆動させられる入力軸18、第1電動機MG1、動力分配機構として機能する第1遊星歯車装置20、減速装置として機能する第2遊星歯車装置22、および、駆動輪40に動力伝達可能に連結された第2電動機MG2を備えている。
この動力伝達装置10は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪40を駆動するために好適に用いられるものである。動力伝達装置10では、エンジン14の動力がカウンタギヤ対32の一方を構成する動力伝達装置10の出力回転部材としての出力歯車24からカウンタギヤ対32、ファイナルギヤ対34、差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される(図2参照)。このように、本実施例では、入力軸18とエンジン14とはダンパー16を介して作動的に連結されており、エンジン14の出力軸15がエンジン14の出力回転部材であることはもちろんであるが、この入力軸18もエンジン14の出力回転部材に相当する。図1に示されているように、車両用駆動装置8はトルクコンバータのような流体伝動装置を備えていない。
入力軸18は、両端がボールベアリング26および28によって回転可能に支持されており、一端がダンパー16を介してエンジン14に連結されることでエンジン14により回転駆動させられる。また、他端には潤滑油供給装置としてのオイルポンプ30が連結されており入力軸18が回転駆動されることによりオイルポンプ30が回転駆動させられて、動力伝達装置10の各部例えば第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置22、ボールベアリング26、および28等に潤滑油が供給される。
第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部を構成しており、エンジン14からの動力を駆動輪40へ出力する差動機構である。そして、第1遊星歯車装置20は、第1電動機MG1により差動状態が制御される電気式差動機構として機能する。具体的に、第1遊星歯車装置20は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、および、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1遊星歯車装置20のギヤ比ρ1は、第1サンギヤS1の歯数をZS1とし第1リングギヤR1の歯数をZR1とすれば、「ρ1=ZS1/ZR1」で算出される。
そして、第1遊星歯車装置20は、入力軸18に伝達されたエンジン14の出力を機械的に分配する機械的な動力分配機構であって、エンジン14の出力を第1電動機MG1および出力歯車24に分配する。つまり、この第1遊星歯車装置20においては、第1回転要素としての第1キャリヤCA1は入力軸18すなわちエンジン14に連結され、第2回転要素としての第1サンギヤS1は第1電動機MG1に連結され、第3回転要素としての第1リングギヤR1は出力歯車24すなわちその出力歯車24に作動的に連結された駆動輪40に連結されている。これより、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1は、それぞれ相互に相対回転可能となることから、エンジン14の出力が第1電動機MG1および出力歯車24に分配されると共に、第1電動機MG1に分配されたエンジン14の出力で第1電動機MG1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機MG2が回転駆動されるので、動力伝達装置10は、例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、第1遊星歯車装置20の差動状態が第1電動機MG1により制御されることにより、エンジン14の所定回転に拘わらず出力歯車24の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。また、第1遊星歯車装置20では、第1電動機MG1が無負荷状態とされて空転させられることで第1キャリヤCA1と第1リングギヤR1との間の動力伝達が遮断されるので、第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間の動力伝達を遮断可能な動力伝達遮断装置としても機能する。
第2遊星歯車装置22は、シングルピニオン型の遊星歯車装置である。第2遊星歯車装置22は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、および、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を回転要素として備えている。なお、第1遊星歯車装置20のリングギヤR1および第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は一体化された複合歯車となっており、その外周部に出力歯車24が設けられている。そのため、本実施例では、リングギヤR1の回転速度Nr1とリングギヤR2の回転速度Nr2と出力歯車24の回転速度Noutとは互いに同一である。
この第2遊星歯車装置22においては、第2キャリヤCA2は非回転部材であるケース12に連結されることで回転が阻止され、第2サンギヤS2は第2電動機MG2に連結され、第2リングギヤR2は出力歯車24に連結されている。すなわち、第2電動機MG2は出力歯車24と第1遊星歯車装置20のリングギヤR1とに第2遊星歯車装置22を介して連結されている。これにより、例えば発進時などは第2電動機MG2が回転駆動することにより、第2サンギヤS2が回転させられ、第2遊星歯車装置22によって減速させられて出力歯車24に回転が伝達される。
本実施例の第1電動機MG1及び第2電動機MG2は何れも、発電機能をも有する所謂モータジェネレータである。具体的に第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、周方向に配設された複数の永久磁石と回転軸とを含むロータと、回転軸心まわりに回転磁界を形成する三相コイルが巻回された非回転部材のステータとを備えた同期電動発電機である。第1電動機MG1及び第2電動機MG2では、上記複数の永久磁石が発生させる磁界と上記三相コイルが発生させる磁界との相互作用により上記ロータが回転駆動され、或いは、それらの相互作用により上記三相コイルの端子間に起電力が生じさせられる。このような構成から、第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、上記三相コイルに通電される駆動電流が大きいほど、大きなトルクを発生させる。第1電動機MG1及び第2電動機MG2はそれぞれインバータ58(図2参照)を介して蓄電装置59に電気的に接続されており、第1電動機MG1と第2電動機MG2と蓄電装置59とは相互に電力授受可能な構成となっている。差動用電動機として機能する第1電動機MG1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備えている。また、走行用電動機として機能する第2電動機MG2は車両6の駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備えており、駆動輪40へ走行用の動力を出力する。上記蓄電装置59は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどであって、第1電動機MG1及び第2電動機MG2に電力を供給し且つそれらの各電動機MG1,MG2から電力の供給を受けることが可能な電気エネルギ源である。
上述のように構成された車両用駆動装置8では、電子制御装置80(図2参照)は、例えば、キーがキースロットに挿入された後、フットブレーキ45が操作された状態でパワースイッチが操作されることにより制御が起動されると、運転者の要求出力に対応するアクセルペダル41(図2参照)の操作量であるアクセル開度(アクセル操作量)Accに基づいてその運転者の要求出力を算出し、燃費が良く排ガス量の少ない運転となるようにエンジン14および/または第2電動機MG2から要求出力を発生させる。例えば、電子制御装置80は、エンジン14を停止し専ら第2電動機MG2を駆動源とするモータ走行モード、エンジン14の動力で第1電動機MG1により発電を行いながら第2電動機MG2を駆動源として走行する充電走行モード、エンジン14の動力を機械的に駆動輪40に伝えて走行するエンジン走行モード等を、走行状態に応じて切り換える。そのエンジン走行モードでは、エンジン14と共に第2電動機MG2も必要に応じて駆動状態とされて第2電動機MG2がアシストトルクを出力することがある。なお、例えば、燃費とは単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率が大きくなることである。
また、電子制御装置80は、上記エンジン走行モードでは、エンジン14が例えば最適燃費曲線等の予め定められた動作曲線に従って作動するように第1電動機MG1によってエンジン14の回転速度Ne(以下、エンジン回転速度Neという)を制御する。このとき、電子制御装置80は、エンジン回転速度Neの制御及び第1電動機MG1の発電量の制御に伴い、第1遊星歯車装置20の変速比γ0(=入力軸18の回転速度/出力歯車24の回転速度)をその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。すなわち、第1電動機MG1により第1遊星歯車装置20の差動状態を連続的に制御する。具体的には、電子制御装置80は、エンジン出力Peの目標値である目標エンジン出力Petagが得られる目標エンジン動作点(エンジン14の目標動作点)を前記最適燃費曲線上において逐次決定し、その目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度NeおよびエンジントルクTeをそれぞれ目標エンジン回転速度Netagおよび目標エンジントルクTetagとして逐次決定する。そして、その目標エンジントルクTetagがエンジン14から出力されるようにスロットル開度θthを逐次調節すると共に、エンジン回転速度Neがその目標エンジン回転速度Netagに一致するように第1電動機MG1により第1遊星歯車装置20の差動状態を制御する。なお、前記最適燃費曲線は、エンジン14を動作させる基準となる基準動作曲線であって、運転性能と燃費性能とを両立するように予め実験的に設定されたものである。
また、後進走行は、例えば、第2電動機MG2を逆方向へ回転駆動することによって達成される。このとき、電子制御装置80は、第1電動機MG1は空転状態として、エンジン14の作動状態に関係なく出力歯車24が逆回転することを許容する。
さらに、電子制御装置80は、コースト走行時には車両6の有する慣性エネルギーで第2電動機MG2を回転駆動することにより電力として回生し、蓄電装置59にその電力を蓄える。
また、電子制御装置80は、前記モータ走行モードでは、エンジン14の運転を停止した状態で蓄電装置59からの電力により第2電動機MG2を駆動してその第2電動機MG2のみを車両6の駆動力源とする。このモータ走行モードでは、運転を停止しているエンジン14の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、例えば第1電動機MG1を無負荷状態とすることにより空転させて、第1遊星歯車装置20の差動作用によりエンジン回転速度Neを零乃至略零に維持する。つまり、モータ走行モードでは、エンジン14の運転が単に停止させられるだけではなく、エンジン14の回転も停止させられる。
図2は、本実施例の車両用駆動装置8を制御するための制御装置として機能する電子制御装置80に入力される信号を例示した図であると共に、電子制御装置80に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン14、第1電動機MG1、第2電動機MG2に関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するものである。
電子制御装置80には、図2に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン14のシリンダブロックに設けられたエンジン水温センサ51からのエンジン水温TEMPWを表す信号、エンジン回転速度Neを表すエンジン回転速度センサ50からの信号、出力歯車24の回転速度Nout(以下、「出力回転速度Nout」という)に対応する車速Vを表す車速センサ52からの信号、常用ブレーキであるフットブレーキ45の操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ46からのフットブレーキ操作を表す信号、運転者の要求出力に対応するアクセルペダル41の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度センサ42からの信号、エンジン14の吸気管に設けられエンジン14の吸入空気量を電動で調節する電子スロットル弁のスロットル開度θthを表すスロットル弁開度センサ43からの信号、第1電動機MG1の回転速度Ng(以下、「第1電動機回転速度Ng」という)を表す信号、第2電動機MG2の回転速度Nm(以下、「第2電動機回転速度Nm」という)を表す信号、蓄電装置59の充電残量(充電状態)SOCを表す信号、シフトレバーの操作位置(操作ポジション)POPEを検出する為の位置センサであるレバー操作位置センサ48からの操作ポジションPOPEに応じたシフトレバー位置信号、第1電動機MG1のトルクTg(以下、「第1電動機トルクTg」という)に対応する第1電動機MG1の駆動電流を表す信号、第2電動機MG2のトルクTm(以下、「第2電動機トルクTm」という)に対応する第2電動機MG2の駆動電流を表す信号、水冷のインバータ58の温度すなわちインバータ水温TEMPinvを表す信号等が、それぞれ供給される。なお、第1電動機MG1が発電する際には、上記第1電動機MG1の駆動電流を第1電動機MG1の発電電流と呼んでもよい。
また、電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御のための制御信号例えば前記電子スロットル弁のスロットル開度θthを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号やエンジン14の燃料噴射装置による吸気管或いはエンジン14の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号やエンジン14の点火装置によるエンジン14の点火時期を指令する点火信号、各電動機MG1,MG2の作動を指令する指令信号等が、それぞれ出力される。電子制御装置80は、スロットル開度θthをアクセル開度Accに応じて調節するスロットル制御では、予め定められた関係に従ってアクセル開度Accが増加するほどスロットル開度θthを増加させる。そのスロットル開度θthの増加に伴いエンジン14に吸入される吸入空気量も増加する。
図2に示すように、電子制御装置80は、目標エンジン動作点決定手段90と、目標第1電動機回転速度ベース値算出手段92と、目標第1電動機回転速度判断手段94と、第1電動機トルク判断手段96と、目標第1電動機回転速度設定手段98と、ハイブリッド制御手段100とを備えている。
目標エンジン動作点決定手段90は、前記目標エンジン出力Petagに基づいて、エンジン回転速度Neの目標値である目標エンジン回転速度Netagを決定する目標エンジン回転速度決定手段として機能すると共に、エンジントルクTeの目標値である目標エンジントルクTetagを決定する目標エンジントルク決定手段として機能する。具体的には、目標エンジン動作点決定手段90は、前記最適燃費曲線を予め記憶しており、上記目標エンジン出力Petagが得られる目標エンジン動作点をその最適燃費曲線上において逐次決定し、その目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度NeおよびエンジントルクTeをそれぞれ目標エンジン回転速度Netagおよび目標エンジントルクTetagとして逐次決定する。上記目標エンジン出力Petagは、運転者の要求出力が得られるように予め定められた関係から、アクセル開度Accおよび車速V等に基づいて逐次決定される。
目標第1電動機回転速度ベース値算出手段92は、第2電動機回転速度Nmに対応するリングギヤR1の回転速度Nr1と第1遊星歯車装置20のギヤ比ρ1(=ZS1/ZR1)と目標エンジン動作点決定手段90が決定した目標エンジン回転速度Netagとに基づいて、第1電動機回転速度Ngの暫定的な目標値である目標第1電動機回転速度ベース値Ngbを逐次算出する。具体的には、下記式(1)により、上記目標エンジン回転速度Netagを達成する第1電動機回転速度Ngを上記目標第1電動機回転速度ベース値Ngbとして算出する。
Ngb=(Netag−Nr1)/ρ1+Netag ・・・(1)
目標第1電動機回転速度判断手段94は、第1電動機回転速度Ngの零を含む予め定められた回転速度範囲RNgzである零近傍回転速度範囲RNgzを予め記憶しており、第1電動機回転速度Ngの目標値である目標第1電動機回転速度Ngtagが上記零近傍回転速度範囲RNgz内とされるか否かを判断する。ここで、後述する目標第1電動機回転速度設定手段98が、基本的には前記目標第1電動機回転速度ベース値Ngbをそのまま目標第1電動機回転速度Ngtagとするので、上記目標第1電動機回転速度Ngtagが上記零近傍回転速度範囲RNgz内とされる場合とは、目標第1電動機回転速度ベース値算出手段92が算出した目標第1電動機回転速度ベース値Ngbがその零近傍回転速度範囲RNgz内である場合である。零近傍回転速度範囲RNgzは、第1電動機回転速度Ngが零又は零付近であることを判定するために予め実験的に設定された判定範囲であり、具体的には、その範囲RNgzの上限値は回転速度零判定値Ngzero(Ngzero>0)とされ且つ下限値は「−Ngzero」とされている。従って、目標第1電動機回転速度判断手段94は、上記のように、目標第1電動機回転速度ベース値Ngbが零近傍回転速度範囲RNgz内であるか否かを判断するのであるが、具体的には、その目標第1電動機回転速度ベース値Ngbの絶対値が回転速度零判定値Ngzero以下か否かを判断する。そして、その目標第1電動機回転速度ベース値Ngbの絶対値が回転速度零判定値Ngzero以下であれば、目標第1電動機回転速度Ngtagが上記零近傍回転速度範囲RNgz内とされるものと判断する。
第1電動機トルク判断手段96は、第1電動機MG1の駆動電流から第1電動機トルクTgを逐次算出し、その第1電動機トルクTgの絶対値が予め定められたトルク判定値TgA(TgA>0)以上であるか否かを逐次判断する。例えば、第1電動機MG1において3相のうちの1相に対し連続的に電流集中した場合にインバータ58の耐久性を低下させるほどの発熱がインバータ58に生じると判断される第1電動機トルクTgの下限値が、予め実験的に求められており、上記トルク判定値TgAはその第1電動機トルクTgの下限値とされている。なお、上記トルク判定値TgAはインバータ水温TEMPinvに応じて可変、すなわち、トルク判定値TgAはインバータ水温TEMPinvが低いほど大きくされても差し支えない。
目標第1電動機回転速度設定手段98は、目標第1電動機回転速度判断手段94および第1電動機トルク判断手段96の判断に応じて目標第1電動機回転速度Ngtagを逐次設定する。詳細には、目標第1電動機回転速度設定手段98は、目標第1電動機回転速度判断手段94によって前記目標第1電動機回転速度ベース値Ngbの絶対値が前記回転速度零判定値Ngzeroよりも大きいと判断された場合、または、第1電動機トルク判断手段96によって第1電動機トルクTgの絶対値が前記トルク判定値TgA未満であると判断された場合には、上記目標第1電動機回転速度ベース値Ngbをそのまま目標第1電動機回転速度Ngtagとして設定する。その一方で、目標第1電動機回転速度設定手段98は、目標第1電動機回転速度判断手段94によって目標第1電動機回転速度ベース値Ngbの絶対値が回転速度零判定値Ngzero以下であると判断され、且つ、第1電動機トルク判断手段96によって第1電動機トルクTgの絶対値がトルク判定値TgA以上であると判断された場合には、目標第1電動機回転速度Ngtagを前記零近傍回転速度範囲RNgz外の回転速度に設定する。具体的にはその場合、目標第1電動機回転速度ベース値Ngbが零以上であれば、目標第1電動機回転速度Ngtagを回転速度零判定値Ngzeroに設定し、目標第1電動機回転速度ベース値Ngbが零未満であれば、目標第1電動機回転速度Ngtagを回転速度零判定値Ngzeroに「−1」を乗じた値(=−Ngzero)に設定する。なお、上記回転速度零判定値Ngzeroは上記零近傍回転速度範囲RNgzの境界値であるが、目標第1電動機回転速度Ngtagをその境界値Ngzero又は−Ngzeroに設定することは、上記零近傍回転速度範囲RNgz外の回転速度に設定することに含まれる。
ハイブリッド制御手段100は、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとスロットル開度θthとをパラメータとする予め定められた関係から、エンジントルクTeが前記目標エンジントルクTetagになるようにスロットル開度θthを逐次調節する。それと共に、ハイブリッド制御手段100は、第1電動機回転速度Ngが、目標第1電動機回転速度設定手段98により設定された目標第1電動機回転速度Ngtagとなるように、第1電動機MG1を逐次制御する。言い換えれば、その目標第1電動機回転速度Ngtagに第1電動機回転速度Ngを一致させるように、第1電動機トルクTg、すなわち、第1電動機MG1の駆動電流を逐次制御する。このように、ハイブリッド制御手段100は、エンジン制御手段として機能すると共に、第1電動機制御手段として機能する。
図3は、電子制御装置80の制御作動の要部、すなわち、前記エンジン走行モードにおいて第1電動機回転速度Ngを制御する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図3のフローチャートはエンジン14の駆動中において実行される。
先ず、目標エンジン動作点決定手段90に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、目標エンジン回転速度Netagが決定される。具体的には、前記目標エンジン出力Petagが得られる目標エンジン動作点が前記最適燃費曲線上において決定され、その目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Netagとして決定される。SA1の次はSA2に移る。
目標第1電動機回転速度ベース値算出手段92に対応するSA2においては、目標第1電動機回転速度ベース値Ngbが算出される。具体的には、SA1にて決定された目標エンジン回転速度Netagが前記式(1)によって目標第1電動機回転速度ベース値Ngbに変換される。SA2の次はSA3に移る。
目標第1電動機回転速度判断手段94に対応するSA3においては、SA2にて算出された目標第1電動機回転速度ベース値Ngbの絶対値が前記回転速度零判定値Ngzero以下か否かが判断される。このSA3の判断が肯定された場合、すなわち、目標第1電動機回転速度ベース値Ngbの絶対値が回転速度零判定値Ngzero以下である場合には、SA4に移る。一方、このSA3の判断が否定された場合には、SA6に移る。
第1電動機トルク判断手段96に対応するSA4においては、第1電動機トルクTgの絶対値が前記トルク判定値TgA以上であるか否かが判断される。言い換えれば、第1電動機トルクTgが、第1電動機MG1の駆動電流が上記トルク判定値TgAに対応する所定の電流値以上となる予め定められたトルク領域内であるか否かが判断される。このSA4の判断が肯定された場合、すなわち、第1電動機トルクTgの絶対値がトルク判定値TgA以上である場合には、SA5に移る。一方、このSA4の判断が否定された場合には、SA6に移る。
目標第1電動機回転速度設定手段98に対応するSA5においては、目標第1電動機回転速度ベース値Ngbが零以上であれば、目標第1電動機回転速度Ngtagが回転速度零判定値Ngzeroにされる(Ngtag=Ngzero)。その一方で、目標第1電動機回転速度ベース値Ngbが零未満であれば、目標第1電動機回転速度Ngtagが、回転速度零判定値Ngzeroに「−1」を乗じた値(=−Ngzero)にされる(Ngtag=−Ngzero)。SA5の次はSA7に移る。
目標第1電動機回転速度設定手段98に対応するSA6においては、目標第1電動機回転速度Ngtagが前記目標第1電動機回転速度ベース値Ngbにされる(Ngtag=Ngb)。
ハイブリッド制御手段100に対応するSA7においては、第1電動機回転速度Ngが、SA5またはSA6にて決定された目標第1電動機回転速度Ngtagとなるように、第1電動機MG1が制御される。
本実施例によれば、第1電動機回転速度Ngが所定の目標回転速度すなわち目標第1電動機回転速度Ngtagとなるように第1電動機MG1が制御される。そして、上記目標第1電動機回転速度Ngtagは、その目標第1電動機回転速度Ngtagが、零を含む予め定められた回転速度範囲である前記零近傍回転速度範囲RNgz内とされる場合であって、且つ、第1電動機トルクTgの絶対値が予め定められた前記トルク判定値TgA以上である場合には、上記零近傍回転速度範囲RNgz外の回転速度に設定される。従って、たとえばインバータ58のような第1電動機MG1用の駆動回路の耐久性を低下させるほどその駆動回路が発熱することを、防止することができる。更に、第1電動機トルクTgが加味された上で、目標第1電動機回転速度Ngtagが前記零近傍回転速度範囲RNgz外の回転速度に設定されるので、例えば第1電動機MG1の駆動電流が小さいことでその第1電動機MG1の駆動回路に発熱のおそれがないような場合には、第1電動機回転速度Ngが上記零近傍回転速度範囲RNgzを外して段階的に変化することが回避される。そのため、ドライバビリティの悪化を抑えることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、前述の実施例の第1遊星歯車装置20において、第1キャリヤCA1はエンジン14に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機MG1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車24に連結されているが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン14、第1電動機MG1、出力歯車24は、それぞれ第1遊星歯車装置20の3つの回転要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は第1遊星歯車装置20のリングギヤR1に対し一体的に連結されているが、上記リングギヤR2の連結先は、上記リングギヤR1に限定されるものではなく、例えば第1遊星歯車装置20の第1キャリヤCA1に連結されていても差し支えない。また、上記リングギヤR2は、上記リングギヤR1ではなく第1遊星歯車装置20と駆動輪40との間の動力伝達経路のどこかに連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、出力歯車24と駆動輪40との間の動力伝達経路に変速機は設けられていないが、その動力伝達経路に、手動変速機もしくは自動変速機が設けられていても差し支えない。
また、前述の実施例において、入力軸18はダンパー16を介してエンジン14に連結されているが、そのダンパー16が無く、入力軸18が直接に或いは伝動ベルトや歯車等を介してエンジン14に連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例の動力伝達装置10において、エンジン14と第1遊星歯車装置20との間にクラッチ等の動力断続装置は設けられていないが、そのような動力断続装置がエンジン14と第1遊星歯車装置20との間に介装されていても差し支えない。また、第1電動機MG1及び第2電動機MG2に関しても同様であり、上記動力断続装置が、第1電動機MG1と第1遊星歯車装置20との間または第2電動機MG2と第2遊星歯車装置22との間に介装されていても差し支えない。
また前述の実施例においては、第1電動機MG1の運転状態が制御されることにより、第1遊星歯車装置20はその変速比が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであるが、例えば第1遊星歯車装置20の変速比を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであってもよい。
また、前述の実施例において、第1遊星歯車装置20および第2遊星歯車装置22は何れもシングルプラネタリであるが、それらの一方または両方がダブルプラネタリであっても差し支えない。
また前述の実施例においては、第1遊星歯車装置20を構成する第1キャリヤCA1にはエンジン14が動力伝達可能に連結され、第1サンギヤS1には第1電動機MG1が動力伝達可能に連結され、第1リングギヤR1には駆動輪40への動力伝達経路が連結されているが、例えば、第1遊星歯車装置20が2つの遊星歯車装置に置き換えられて、その2つの遊星歯車装置がそれを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、その遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、電動機、駆動輪が動力伝達可能に連結されており、その遊星歯車装置の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により有段変速と無段変速とに切換可能な構成であってもよい。
また、前述の実施例の第2電動機MG2はエンジン14から駆動輪40までの動力伝達経路の一部を構成する出力歯車24に第2遊星歯車装置22を介して連結されているが、第2電動機MG2がその出力歯車24に連結されていることに加え、クラッチ等の係合要素を介して第1遊星歯車装置20にも連結可能とされており、第1電動機MG1の代わりに第2電動機MG2によって第1遊星歯車装置20の差動状態を制御可能とする動力伝達装置10の構成であってもよい。
8:車両用駆動装置
14:エンジン
20:第1遊星歯車装置(電気式差動機構)
40:駆動輪
80:電子制御装置(制御装置)
MG1:第1電動機(差動用電動機)

Claims (1)

  1. エンジンからの動力を駆動輪へ出力し差動用電動機により差動状態が制御される電気式差動機構を備えた車両用駆動装置において、前記差動用電動機の回転速度が所定の目標回転速度となるように該差動用電動機を制御する車両用駆動装置の制御装置であって、
    前記差動用電動機の目標回転速度が、零を含む予め定められた回転速度範囲内とされる場合であって、且つ、前記差動用電動機のトルクが予め定められたトルク判定値以上である場合には、前記目標回転速度を前記予め定められた回転速度範囲外の回転速度に設定する
    ことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017132328A (ja) * 2016-01-27 2017-08-03 トヨタ自動車株式会社 ハイブリッド車両

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