JP2012190648A - リチウム遷移金属系化合物の製造方法 - Google Patents

リチウム遷移金属系化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 リチウム遷移金属系化合物の製造方法において、安定に大量のリチウム遷移金属系化合物を製造することができ、シャープな粒度分布のリチウム遷移金属系化合物を得ることが可能となり、製造工程において、金属系異物の混入を防止できる製造方法を提供する。
【解決手段】 リチウム遷移金属系化合物の製造方法であって、分級された粗大粒子を、ピンミルにより粉砕して再度分級することを特徴とするリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウム遷移金属系化合物の製造方法に係る。
近年、携帯用電子機器、通信機器の小型化、軽量化に伴い、それらの電源として、また、自動車用動力源として、高出力、高エネルギー密度であるリチウム二次電池が注目されている。
リチウム二次電池用正極活物質としては、リチウム遷移金属系化合物が知られている。中でも、標準組成がLiCoO2、LiNiO2、LiMn24等のリチウム遷移金属複合酸化物が好ましいことが知られている。さらに、安全性や原料コストの観点から、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属の一部を他の遷移金属で置換したLiNi1−XMn2 (ただし、0≦X≦1)、LiNi1−x’−y’Mnx’Coy’2
ただし、0≦X’≦1、0≦Y’≦1、0≦X’+Y’≦1)等のLiCoOやLiNiOと同じ層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が注目されている。
これらリチウム遷移金属系化合物の製造法としては、例えば、リチウム原料、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料等を乾式で混合して焼成、解砕、分級する方法、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料等を含み、所望により更に少量のリチウム原料を含むスラリーを噴霧乾燥して粒状体とし、これに所望の組成比となるように更にリチウム原料を乾式混合し、焼成、解砕、分級する方法、あるいは、ニッケル、コバルト、マンガン等を、例えば炭酸塩として共沈させて得られる複合炭酸塩を焼成して脱炭酸し、得られた粒状体とリチウム原料を乾式混合した後焼成、解砕、分級する方法などが用いられている。
リチウム二次電池の携帯機器や自動車への適用が急速に拡大するのに伴い、リチウム二次電池を、安定して供給することが求められるようになってきている。リチウム二次電池を安定して供給するためには、その電極に使用するリチウム遷移金属系化合物を安定生産することが必要である。つまり上述したリチウム遷移金属系化合物の製造法のうち、安定に大量のリチウム遷移金属系化合物が製造できる製造方法が求められている。
また、リチウム二次電池には、高容量、高出力等の高性能化が求められるようになってきている。特に高容量化を実現するために、リチウム二次電池の電極を薄くする検討が積極的に実施されている。そのため、その電極に使用するリチウム遷移金属系化合物には、シャープな粒度分布にすることが必要である。つまり上述したリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法のうち、リチウム遷移金属系化合物としたときに、シャープな粒度分布を得ることが可能となる製造方法が求められている。
さらに、リチウム二次電池を構成する材料、特に正極活物質中への金属系異物の混入は電池の不良、さらには電池の発火等に繋がる危険性があることが知られており、リチウム電池用の正極活物質であるリチウム遷移金属系化合物の製造工程において、金属系異物を混入させない製造方法が求められている。
さらに、特許文献1には、リチウム遷移金属系化合物の製造方法において、粗大粒子を分級する工程が記載されており、その分級工程に、特殊なメッシュを用いることで、生産性よくリチウム遷移金属系化合物を分級することが記載されている。
また、特許文献2には、粗粉砕したガラスセラミックなどの粉体を微粉砕し、該微粉砕した粉体を乾式気流法で分級して所定の粒径範囲の粉体を取り出し、前記所定の粒径範囲
以上の粉体を高速気流式粉砕機(ジェットミル)などで、再び前記微粉砕する工程に戻すことが記載されている。
特開2008−247646号公報 特開2003−12377号公報
しかし、特許文献1では、分級された粗大粒子を再度粉砕していない。従って、リチウム遷移金属系化合物の歩留まりが向上できていない。
特許文献2では、硬度が高いガラスセラミックに対し、高速気流式粉砕機などの粉砕強度の非常に高い粉砕機を用いているが、このように粉砕強度の高い粉砕機を用いてリチウム遷移金属系化合物を粉砕した場合、過粉砕による微粉の発生が避けられない。
従って、本願発明の課題は、リチウム遷移金属系化合物の製造工程において、金属コンタミを少なく、また、余計な微粉などを出さずに、効率的に生産性良く製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、リチウム遷移金属系化合物の製造方法の中で、粗大粒子を再度粉砕して分級する工程において、ピンミルを用いて粉砕を行うことで上記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1)焼成後のリチウム遷移金属複合酸化物を分級する工程を含むリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法において、
該分級工程により得られた以下の定義で表される粗大粒子を、ピンミルにより粉砕して再度分級することを特徴とする
リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
〈粗大粒子〉
粗大粒子とは、リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(平均粒径)の整数部分を5倍し、1の位を四捨五入した粒径以上の粒子を言う。
(2)ピンミルのピンが、セラミックおよび/または強化処理されたセラミックを使うことを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)分級が、閉回路分級であることを特徴とする(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)分級が、気流式分級であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)粗大粒子の90%以上が100μm以下になるまでピンミルによる粉砕が行われた後、再度分級することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
リチウム遷移金属系化合物の製造方法において、粗大粒子を再度粉砕して分級する工程において、ピンミルを用いて粉砕を行うことで、リチウム遷移金属系化合物の製造工程において、金属コンタミを少なく、また、余計な微粉などを出さずに、効率的に生産性良く製造する方法を提供することにある。
実施例1(ピンミル)および比較例1(ジェットミル)で得られたリチウム遷移金属複合酸化物粉体の粒度分布である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
<リチウム遷移金属系化合物>
本発明のリチウム遷移金属系化合物の製造方法(以下適宜、「本発明の製造方法」という)で製造されるリチウム遷移金属系化合物の用途は、特に限定されないが、本発明の製造方法によると、本発明の製造方法によると、金属系不純物の混入が無いため、ディスプレー材料、誘電材料、磁性材料、半導体材料、超伝導材料、電池材料等の電子材料に供することが好ましい。これらの中でも、電池材料に供することがさらに好ましい。電池材料としては、燃料電池材料、リチウム一次電池材料、リチウム二次電池材料等が挙げられる。これらの中でも、リチウム二次電池の負極材料または正極材料に供することがさらに好ましく、リチウム二次電池の正極材料に供することが特に好ましい。
また、本発明の製造方法により製造されるリチウム遷移金属系化合物は特に制限されないが、Liイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、リン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物、硫化物などが挙げられる。
具体的には、
(1)オリビン構造を有し、一般的にはLiMePO(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPOなどが挙げられるリン酸塩化合物、
(2)リチウムイオンの三次元的拡散が可能なスピネル構造を有し、一般的にLiMe(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn、LiCoMnO、LiNi0.5Mn1.5、CoLiVOなどが挙げられるスピネル構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、
(3)リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造を有し、一般的にLiMeO(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiNi1−XCo(ただし、0≦X≦1)、LiNi1−X’−Y’MnX’CoY’2(ただし、0≦X’≦1、0≦Y’≦1、0≦X’+Y’≦1)、L
iNi0.5Mn0.5、Li1.2Cr0.4Mn0.4、Li1.2Cr0.4Ti0.4、LiMnOなどが挙げられる層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、
(4)硫化物、例えば、二次元層状構造を有するTiSやMoS、また強固な三次元骨格構造を有し、一般式MeX’’Mo(ただし、MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属、0≦X’’≦1)で表されるシュブレル化合物、などが挙げられる。
なかでも、リチウム二次電池用の正極活物質として使用した場合に良好な電池特性を得られる点から、スピネル構造または層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が特に好ましい。
〈結晶構造〉
本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は、少なくとも層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物および/またはスピネル構造を有するリチウムマンガン系複合酸化物を主成分としたものが好ましい。これらの中でも、結晶格子の膨張・収縮が大きく、本発明の効果が顕著であるため、層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物を主成分としたものがさらに好ましい。なお、本発明においては、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物のうち、コバルトを含まないリチウムニッケルマンガン系複合酸化物も「リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物」との
文言に含むものとする。
ここで、層状構造に関してさらに詳しく述べる。層状構造を有するものの代表的な結晶系としては、LiCoO、LiNiOのようなα−NaFeO型に属するものがあり、これらは六方晶系であり、その対称性から空間群
Figure 2012190648
(以下「層状R(−3)m構造」と表記することがある。)に帰属される。
ただし、層状LiMeOとは、層状R(−3)m構造に限るものではない。これ以外にもいわゆる層状Mnと呼ばれるLiMnOは斜方晶系で空間群Pm2mの層状化合物であり、また、いわゆる213相と呼ばれるLiMnOは、Li[Li1/3Mn2/3]Oとも表記でき、単斜晶系の空間群C2/m構造であるが、やはりLi層と[Li1/3Mn2/3]層及び酸素層が積層した層状化合物である。
さらに、スピネル構造に関してさらに詳しく述べる。スピネル型構造を有するものの代表的な結晶系としては、LiMn4のようなMgAl型に属するものがあり、
これらは立方晶系であり、その対称性から空間群
Figure 2012190648
(以下「スピネル型Fd(−3)m構造」と表記することがある。)に帰属される。ただし、スピネル型LiMeO4とは、スピネル型Fd(−3)m構造に限るものではない。
これ以外にも異なる空間郡(P432)に属するスピネル型LiMeOも存在する。
〈組成〉
また、本発明のリチウム含有遷移金属化合物粉体は、下記組成式(A)または(B)で示されるリチウム遷移金属系化合物粉体であることが好ましい。 さらに、層状化合物に
おいては、スピネル型化合物と比較して、相対的にMnの溶出量が少なく、サイクル特性におよぼすMnの影響が少ないため、本発明の効果がより明確な差となって現れる。従って、本発明は下記組成式(A)で示されるリチウム遷移金属系化合物粉体であることが、さらに好ましい。
1)下記組成式(A)で示されるリチウム遷移金属系化合物粉体である場合
Li1+xMO …(A)
ただし、xは通常0以上、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、最も好ましくは0.03以上、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下、最も好ましくは0.2以下である。Mは、Ni及びMn、或いは、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上、より一層好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上、最も好ましくは0.9以上、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2.5以下、最も好ましくは1.5以下である。Ni/Mモル比は通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、最も好ましくは0.05以上、通常0.50以下、好ましくは0.49以下、より好ましくは0.48以下、更に好ましくは0.47以下、最も好ましくは0.45以下である。Co/Mモル比は通常0以上、好まし
くは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、最も好ましくは0.05以上、通常0.50以下、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.30以下、更に好ましくは0.20以下、最も好ましくは0.15以下である。なお、xで表されるLiのリッチ分は、遷移金属サイトMに置換している場合もある。
なお、上記組成式(A)においては、酸素量の原子比は便宜上2と記載しているが、多少の不定比性があってもよい。不定比性がある場合、酸素の原子比は通常2±0.2の範囲、好ましくは2±0.15の範囲、より好ましくは2±0.12の範囲、さらに好ましくは2±0.10の範囲、特に好ましくは2±0.05の範囲である。
また、本発明のリチウム遷移金属系化合物粉体は、正極活物質の結晶性を高めるために酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って焼成されたものであることが好ましい。
焼成温度の下限は特に、上記組成式(A)で示される組成を持つリチウム遷移金属系化合物においては、通常900℃以上、好ましくは950℃以上、最も好ましくは1000℃以上であり、通常1300℃以下、好ましくは1250℃以下、最も好ましくは1200℃以下である。焼成温度が低すぎると異相が混在し、また結晶構造が発達せずに格子歪が増大する。また比表面積が大きくなりすぎる。逆に焼成温度が高すぎると一次粒子が過度に成長し、粒子間の焼結が進行し過ぎ、比表面積が小さくなり過ぎる。
2)下記一般式(B)で表されるリチウム遷移金属系化合物である場合。
Li[LiaMn2−b−a]O4+δ・・・(B)
ただし、Mは、Ni、Cr、Fe、Co、Cu、Zr、AlおよびMgから選ばれる遷移金属のうちの少なくとも1種から構成される元素であり、これらの中でも、高電位における充放電容量の点から、最も好ましくはNiである。
bの値は通常0.4以上、好ましくは0.425以上、より好ましくは0.45以上、さらに好ましくは0.475以上、最も好ましくは0.49以上、通常0.6以下、好ましくは0.575以下、より好ましくは0.55以下、更に好ましくは0.525以下、最も好ましくは0.51以下である。
bの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度が高く、好ましい。
また、aの値は通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、最も好ましくは0.04以上、通常0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.1以下、最も好ましくは0.075以下である。
aの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度を大きく損なわず、かつ、良好な負荷特性が得られるため、好ましい。
さらに、δの値は通常±0.5の範囲、好ましくは±0.4の範囲、より好ましくは±0.2の範囲、さらに好ましくは±0.1の範囲、特に好ましくは±0.05の範囲である。
δの値がこの範囲であれば、結晶構造としての安定性が高く、このリチウム遷移金属系化合物を用いて作製した電極を有する電池のサイクル特性や高温保存が良好であるため、好ましい。
ここで本発明のリチウム遷移金属系化合物の組成であるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物におけるリチウム組成の化学的な意味について、以下により詳細に説明する。
上記リチウム遷移金属系化合物の組成式のa,bを求めるには、各遷移金属とリチウムを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)で分析して、Li/Ni/Mn
の比を求める事で計算される。
構造的視点では、aに係るリチウムは、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、aに係るリチウムによって、電荷中性の原理によりMとマンガンの平均価数が3.5価より大きくなる。
<原料金属化合物>
本発明の製造方法に用いられる原料金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、リチウム原料、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料、鉄原料、バナジウム原料物、クロム原料およびチタン原料からなる群から選ばれる少なくとも一種の原料金属化合物が用いられる。これらの中でも、リチウム原料、ニッケル原料、コバルト原料およびマンガン原料からなる群から選ばれる少なくとも一種の原料金属化合物を用いることが電池特性の点から好ましい。
これらの原料の好ましい具体例については後述する。
<製造方法>
本発明の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法において、原料を湿式で混合し、スラリーとし、該スラリーを噴霧乾燥して粒状体とし、焼成、解砕、分級する方法(本製造方法を本願では、「噴霧乾燥法」ということがある。)、中でも、リチウム原料、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料等を湿式で混合しスラリーとし、該スラリーを噴霧乾燥して粒状体とし、焼成、解砕、分級する方法(本製造方法を本願では、「リチウム先添加噴霧乾燥法」ということがある。)、あるいは、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料等を含み、所望により更に少量のリチウム原料を湿式で混合しスラリーを噴霧乾燥して粒状体とし、これに所望の組成比となるように更にリチウム原料を乾式混合し、焼成、解砕、分級する方法(本製造方法を本願では、「リチウム後添加噴霧乾燥法」ということがある。)、または、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料等を、例えば炭酸塩として共沈させて得られる複合炭酸塩を焼成して脱炭酸し、得られた粒状体とリチウム原料を乾式混合した後、焼成、解砕、分級する方法(本、製造方法を本願では、「共沈法」ということがある。)などが挙げられる。
<リチウム遷移金属系化合物の粒径>
本発明の製造方法で得られるリチウム遷移金属系化合物の粒径は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。
ただし、リチウム遷移金属系化合物は、超音波発振器による分散処理を行わない試料をレーザー回折法により粒度分布を測定したときのメジアン径が、通常20μm以下、好ましくは15μm以下であることが望ましい。メジアン径が上限を上回ると、所望する粒径に見合うだけのスラリーを安定的に供給出来なかったり、粗大粒子が多く発生してしまうことで、リチウム遷移金属系化合物としてシャープな粒度分布が得られなかったり、等本発明の効果が得られない場合がある。
一方、上記メジアン径の下限は、通常1μm以上、好ましくは3μm以上である。メジアン径が上記下限を下回ると、所望する粒径に見合うだけのスラリーを安定的に供給出来なかったり、微粉が増加してリチウム遷移金属系化合物の粒子同士が凝集することで、リチウム遷移金属系化合物としてシャープな粒度分布が得られなかったり、本発明の効果が得られない場合がある。
なお、リチウム遷移金属系化合物のメジアン径は、JIS Z 8825−1に基づいて公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製:LA−920型)によって測定した値を採用することができる。また、測定の際に用いる分散媒としては、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いる。さらに、測定時の超音波(出力
30W、周波数22.5kHz)印加時間は0分、測定時に使用する屈折率は、1.60a010i(実数部1.60、虚数部0.10)である。
<リチウム遷移金属系化合物の比表面積>
本発明の製造方法で得られるリチウム遷移金属系化合物の比表面積は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。
ただし、リチウム遷移金属系化合物の比表面積が、通常10m/g以下、好ましくは5m/g以下であることが望ましい。メジアン径が上限を上回ると、本発明により得られたリチウム遷移金属系化合物として塗布特性が低下したり、電池性能が悪化したりする等の問題が発生する場合がある。
一方、上記メジアン径の下限は、通常0.1m/g以上、好ましくは0.3m/g以上である。比表面積が上記下限を下回ると、本発明により得られたリチウム遷移金属系化合物として電池性能が悪化したりする等の問題が発生する場合がある。
なお、BET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置によって測定できる。本発明では、島津製作所製:フローソーブII2300型比表面積測定装置を用い、吸着ガスに窒素、キャリアガスにヘリウムを使用し、連続流動法によるBET1点式法測定を行った。具体的には粉体試料を混合ガスにより350℃の温度で加熱脱気し、次いで液体窒素温度まで冷却して窒素/ヘリウム混合ガスを吸着させた後、これを水により室温まで加温して吸着された窒素ガスを脱着させ、その量を熱伝導検出器によって検出し、これから試料の比表面積を算出した。
次に、リチウム遷移金属系化合物としてリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体を例にあげて、その原料および製造方法をより詳細に説明する。
<Li原料>
本発明の方法により、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物を製造するに当たり、スラリーの調製に用いる原料化合物のうち、リチウム化合物としては、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHOOLi、LiO、LiSO、ジカルボン酸Li、クエン酸Li、脂肪酸Li、アルキルリチウム等が挙げられる。
これらリチウム化合物の中でも、焼成処理の際にSO、NO等の有害物質を発生させない点で、窒素原子や硫黄原子、ハロゲン原子を含有しないリチウム化合物が好ましい。また、焼成時に分解ガスを発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に分解ガスを発生するなどして空隙を形成しやすい化合物が好ましい。これらの点を勘案すると、とりわけLiCO、LiOH、LiOH・HOが特に好ましい。これらのリチウム化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
<Ni原料>
また、ニッケル化合物としては、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、炭酸ニッケル
、NiC24・2H2O、Ni(NO32・6H2O、NiSO4、NiSO4・6H2O、
脂肪酸ニッケル、ニッケルハロゲン化物等が挙げられる。
これらニッケル化合物の中でも、焼成処理の際にSO、NOX等の有害物質を発生さ
せない点で、Ni(OH)2、NiO、NiOOH、炭酸ニッケル、NiC24・2H2Oのようなニッケル化合物が好ましい。また、工業原料として安価に入手できる観点、及び、反応性が高いという観点からNi(OH)2、NiO、NiOOH、炭酸ニッケルが更
に好ましい。加えて焼成時に分解ガスを発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に空隙を形成しやすいという観点から、Ni(OH)2、NiO、炭酸ニッケルが特に好まし
い。これらのニッケル化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
<Mn原料>
また、マンガン化合物としてはMn23、MnO2、Mn34等のマンガン酸化物、M
nCO3、Mn(NO32、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン等のマンガン塩、オキシ水酸化物、塩化マンガン等のハロゲン化物等が挙げられる。
これらのマンガン化合物の中でも、焼成処理の際にSO、NO等のガスを発生せず、更に工業原料として安価に入手できる点から、MnO、Mn23、Mn34、MnCOが好ましい。これらのマンガン化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
<Co原料>
また、コバルト化合物としては、Co(OH)2、CoOOH、CoO、Co23、C
34、Co(OCOCH32・4H2O、CoCl2、Co(NO32・6H2O、Co
(SO42・7H2O、CoCO等が挙げられる。
これらコバルト化合物の中でも、焼成工程の際にSO、NOX等の有害物質を発生さ
せない点で、Co(OH)2、CoOOH、CoO、Co23、Co34、CoCO
好ましく、工業的に安価に入手できる点及び反応性が高い点でCo(OH)2、CoOO
Hが更に好ましい。加えて焼成時に分解ガスを発生する等して、噴霧乾燥粉体の二次粒子内に空隙を形成しやすいという観点から、Co(OH)2、CoOOH、CoCOが特
に好ましい。これらのコバルト化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
<他元素置換・添加物>
また、電池特性を適宜調整するために、上記のLi、Ni、Mn、Co原料化合物以外にリチウム遷移金属複合酸化物の構造内に他元素置換を行って異元素群を導入したり、後述する噴霧乾燥にて異元素群を添加することで、形成される二次粒子内の粉体物性を調整することが可能である。なお、ここで使用する、二次粒子の空隙を効率よく形成させることを目的として添加する異元素の添加段階は、その性質に応じて、原料混合前または混合後の何れかを選択することが可能である。とくに、混合工程によって機械的剪断応力が加わるなどして分解しやすい化合物は混合工程後に添加することが好ましい。
他元素置換を行って異元素群を導入したり、添加される異元素群の具体例としては、2群の元素が挙げられ、それらの具体的化合物名を以下に記載する。
第1の群としては、B及びBiから選ばれる少なくとも1種の元素(更なる添加元素1)を有する化合物(更なる添加剤1)を用いることが好ましい。これらの更なる添加元素1の中でも、工業原料として安価に入手でき、かつ軽元素である点から、更なる添加元素1がBであることが好ましい。
添加元素1を含有する化合物(更なる添加剤1)の種類としては、本発明の効果を発現するものであればその種類に格別の制限はないが、通常はホウ酸、オキソ酸の塩類、酸化物、水酸化物などが用いられる。これらの更なる添加剤2の中でも、工業原料として安価に入手できる点から、ホウ酸、酸化物であることが好ましく、ホウ酸であることが特に好ましい。
更なる添加剤1の例示化合物としては、BO、B、B、B、BO、BO、B13、LiBO、LiB、Li、HBO、HBO、B(OH)、B(OH)、BiBO、Bi、Bi、Bi(OH)などが挙げられ、工業原料として比較的安価かつ容易に入手できる点から、好ましくはB、HBO、Biが挙げられ、特に好ましくは、HBOが挙げら
れる。これらの更なる添加剤1は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
第2の群としては、Mo、W、Nb、Ta及びReから選ばれる少なくとも1種以上の元素(以下「更なる添加元素2」と称す。)を有する化合物(以下「更なる添加剤2」と称す。)を用いることが好ましい。これらの更なる添加元素2の中でも、効果が大きい点から、更なる添加元素2がMoまたはWであることが好ましく、Wであることが最も好ましい。
更なる添加元素2を含有する化合物(更なる添加剤2)の種類としては、本発明の効
果を発現するものであればその種類に格別の制限はないが、通常は酸化物が用いられる。
更なる添加剤2の例示化合物としては、MoO、MoO、MoO、MoO、Mo、Mo、LiMoO、WO、WO、WO、WO、W、W、W1849、W2058、W2470,W2573、W40118、LiWO、NbO、NbO、Nb、Nb、Nb・nHO、LiNbO、TaO、Ta、LiTaO、ReO、ReO、Re、Reなどが挙げられ、工業原料として比較的入手し易い、又はリチウムを包含するといった点から、好ましくはMoO、LiMoO、WO、LiWOが挙げられ、特に好ましくはWOが挙げられる。これらの更なる添加剤2は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
<湿式粉砕>
なお、原料の混合段階においてはそれと並行して原料の粉砕が為されていることが好ましい。粉砕の程度としては、粉砕後の原料粒子の粒径が指標となるが、平均粒子径(メジアン径)として通常1.0μm以下、好ましくは0.7μm以下、最も好ましくは0.5μm以下とする。粉砕後の原料粒子の平均粒子径が大きすぎると、焼成工程における反応性が低下するのに加え、組成が均一化し難くなる。ただし、必要以上に小粒子化することは、粉砕のコストアップに繋がるので、平均粒子径が通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上となるように粉砕すれば良い。このような粉砕程度を実現するための手段としては特に限定されるものではないが、湿式粉砕法が好ましい。具体的にはダイノーミル、スターミル、等を挙げることができる。
なお、スラリー中の粉砕粒子のメジアン径は、JIS Z 8825−1に基づいて公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製:LA−920型)によって測定した値を採用することができる。また、測定の際に用いる分散媒としては、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いる。さらに、測定時の超音波(出力30W、周波数22.5kHz)印加時間は5分、測定時に使用する屈折率は、1.24a000i(実数部1.24、虚数部0.00)である。
<噴霧乾燥>
湿式混合後は、次いで通常乾燥工程に供される。方法は特に限定されないが、生成する粒子状物の均一性や粉体流動性、粉体ハンドリング性能、乾燥粒子を効率よく製造できる等の観点から噴霧乾燥が好ましい。
噴霧乾燥に供されるスラリーの濃度は特に限定されず本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。スラリー濃度が低すぎると生産性を著しく損ねるためである。また、スラリー濃度の上限は、高濃度であるほど、生産性が向上し好ましいが、スラリー濃度が高すぎるとスラリーの粘度が高くなり、後述する噴霧工程にてノズルで噴霧できなくなる恐れがある。従って、通常70重量%以下である。
さらに、スラリーの粘度は特に制限はなく本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100mPa・s以上、好ましくは200mPa・s以上であり、また、通常5000mPa・s以下、好ましくは3000mPa・s以下である。スラリーの粘度が低すぎると後述する噴霧工程にて噴霧した際にきれいな球状粒子を形成できなくなりやすく、また、高すぎるとノズルで噴霧できなくなる可能性がある。
噴霧乾燥は、公知の方法により行なえばよい。例えば、ノズルの先端に気体流とスラリーとを流入させることによってノズルからスラリーを液滴として吐出させ、乾燥ガスと接触させて液滴を迅速に乾燥させる方法を用いることができる。
なお、噴霧乾燥で造粒粒子を製造する場合、得られる造粒粒子の粒子径は、噴霧形式、加圧気体流供給速度、スラリー供給速度、乾燥温度等を適宜選定することによって制御することができる。
また、噴霧乾燥時の条件に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。例えば、乾燥雰囲気は通常大気であるが、窒素などの不活性雰囲気下でもよい。また、乾燥用ガスの温度も任意であるが、通常は、80〜300℃で噴霧装置に導入し、45〜250℃で装置から排出することが好ましい。
噴霧乾燥により得られる粉体のメジアン径は通常30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下、最も好ましくは18μm以下となるようにする。ただし、あまりに小さな粒径は得にくい傾向にあるので、通常は3μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは5μm以上である。
<焼成前駆体>
ここで、本発明において「焼成前駆体」とは、噴霧乾燥粉体を処理して得られる焼成前のリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物等のリチウム遷移金属系化合物の前駆体を意味する。例えば、前述の焼成時に分解ガスを発生又は昇華して、二次粒子内に空隙を形成させる化合物を、上述の噴霧乾燥粉体に含有させて焼成前駆体としてもよい。
<焼成>
この焼成条件は、組成や使用するリチウム化合物原料にも依存するが、傾向として、焼成温度が高すぎると一次粒子が過度に成長し、粒子間の焼結が進行し過ぎ、比表面積が小さくなり過ぎる。逆に低すぎると異相が混在し、また結晶構造が発達せずに格子歪が増大する。また比表面積が大きくなりすぎる。焼成温度としては、通常900℃以上、好ましくは950℃以上、最も好ましくは1000℃以上であり、通常1300℃以下、好ましくは1250℃以下、最も好ましくは1200℃以下である。
焼成を二段階で行う場合、一段目の保持温度は500℃以上が好ましく、より好ましくは550℃以上、最も好ましくは600℃以上が好ましく、通常1000℃以下、より好ましくは950℃以下、最も好ましくは900℃以下である。 焼成には、例えば、箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。焼成工程は、通常、昇温・最高温度保持・降温の三部分に分けられる。二番目の最高温度保持部分は必ずしも一回とは限らず、目的に応じて二段階又はそれ以上の段階をふませてもよく、二次粒子を破壊しない程度に凝集を解消することを意味する解砕工程または、一次粒子或いはさらに微小粉末まで砕くことを意味する粉砕工程を挟んで、昇温・最高温度保持・降温の工程を二回又はそれ以上繰り返しても良い。
焼成に要する時間は、温度によっても異なるが、短いほど生産性の観点から好ましいが、短すぎると、リチウム遷移金属系化合物の結晶性が向上しないため、通常30分以上、好ましくは3時間以上、最も好ましくは6時間以上で、24時間以下、好ましくは20時間以下、最も好ましくは16時間以下である。保持時間が短すぎると結晶性の良いリチウ
ムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体が得られ難くなり、長すぎるのは実用的ではない。焼成時間が長すぎると、生産性を著しく損ねるので好ましくない。
焼成を二段階で行う場合、一段目の焼成に要する時間は、温度によっても異なるが、短いほど生産性の観点から好ましいが、短すぎると、第一段階の目的(予備焼成)を達成できないことがあるため、通常30分以上、好ましくは3時間以上、最も好ましくは6時間以上で、24時間以下、好ましくは20時間以下、最も好ましくは16時間以下である。焼成時間が長すぎると、生産性を著しく損ねるので好ましくない。
前述の焼成炉による製造方法に加えて、移動床などによる焼成も可能である。
焼成時の雰囲気は、空気等の酸素含有ガス雰囲気を用いることができる。通常は酸素濃度が1体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上で、100体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは25体積%以下の雰囲気とする。
この焼成工程を行なうことにより、リチウム遷移金属複合化合物を得ることができる。
<解砕・分級工程>
焼成工程にて得られたリチウム遷移金属複合化合物は、次いで解砕・分級工程に供される。
解砕工程は、焼成後焼結しているリチウム遷移金属複合化合物を、適度な大きさまで崩す工程であり、解砕後の大きさとしては、通常1cm以下、好ましくは3mm以下であり、通常1μm以上、好ましくは10μm以上である。解砕後の大きさが大きすぎると、次工程である分級工程での分級効率が低下する恐れがある。一方で解砕後の大きさが小さすぎると、噴霧乾燥工程にて形成した球形が崩れたり、微粉同士が凝集して次工程である分級工程での分級効率が低下する恐れがある。解砕には、円形振動篩、ロールクラッシャー、ピンミル、等の装置が用いられる。所望する解砕後の大きさに応じて、各装置の運転条件を決定する。なお、解砕工程は、リチウム遷移金属複合化合物の焼結の度合いに応じて、実施しなくてもよいし、複数回実施してもよい。
解砕工程にて適度な大きさにされたリチウム遷移金属複合化合物は、次に分級工程で最終的に所望する粒度まで粒度調整される。分級後のメジアン径としては、通常20μm以下、好ましくは15μm以下であり、通常1μm以上、好ましくは3μm以上である。メジアン径が上限を上回ると、電池の電極とした際に電極膜厚を超えるような粗大粒子が多く発生し、電池歩留まりに悪影響を及ぼす場合がある。メジアン径が上記下限を下回ると、微粉が増加してリチウム遷移金属系化合物の粒子同士が凝集することで、リチウム遷移金属系化合物としてシャープな粒度分布が得られなかったり、本発明の効果が得られない場合がある。分級には、円形振動篩、高速回転するブレードにより粉体をメッシュスクリーンに押し当てて篩いわける分級機、気流式分級機等の装置が用いられる。所望する解砕後の大きさに応じて、各装置の運転条件を決定する。なお、分級程は、必要に応じて複数回実施してもよい。また分級の際に、同時に解砕を実施してもよい。
<粗大粒子を再度粉砕して分級する工程>
上述の分級工程において、分級されて次工程に供されなかった粗大粒子については、再度粉砕して分級することが生産性の点から好ましい。ただし、粗大粒子とは、リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(平均粒径)の整数部分を5倍し、1の位を四捨五入した粒径以上の粒子を言う。具体的な粒径としては、該粗大粒子は、下限としては、40μm以上のものをいい、50μm以上が好ましい。上限としては、通常3mm以下、更に好ましくは1mm以下である。また、分級機から回収された粗大粒子は、気力輸送により移送されることが異物混入防止の点から好ましい。さらに、本願発明の製造方法において、回収された粗大粒子は、ピンミルで解砕することを特徴としている。
ここでいうピンミルとは、突起を有する回転ディスクにより供給物を粉砕する機構を持つ装置全般のことをいう。このピンミルのピンの材質としては、通常、金属、超鋼、セラミック、強化処理したセラミック等が挙げられる。これらの中でも、金属異物混入防止の点から、セラミック、強化処理したセラミックが好ましく、強化処理したセラミックが特に好ましい。
強化処理とは、例えば高温製造、緻密化処理、加熱加圧処理(例えばHIP処理)、微構造制御されたものが挙げられる。
本願発明の製造方法において、粗大粒子を再度粉砕して分級する工程は、通常、開回路および閉回路の分級で行うことが可能であるが、生産性向上および異物混入防止の点から、閉回路の分級で行うことが好ましい。
また、本願発明の製造方法において、粗大粒子を再度粉砕して分級する工程は、通常、分級を円形振動篩、高速回転するブレードにより粉体をメッシュスクリーンに押し当てて篩いわける分級機、気流式分級機等で行うことが可能であるが、分級効率の点から、気流式分級機で行うことが好ましい。
さらに、本願発明の製造方法において、粗大粒子を再度粉砕して分級する工程は、通常、粉砕を、粗大粒子の90%以上が100μm以下になるまでピンミルによる粉砕が行われてから、再度分級することが好ましい。粉砕される粒子の比率としては、生産性の点から、通常、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。粉砕後の粗大粒子の平均粒径としては、生産性の点から、上限としては、通常50μm以下、好ましくは10μm以下、下限としては、通常1μm以上、好ましくは3μm以上である。
本願発明の製造方法において、粗大粒子を再度粉砕して分級する工程は、通常、粗粉粉砕後のリチウム遷移金属複合酸化物粉体の全体としての1μm以下の微粉がなるべく増加しないように行う。粗粉粉砕後の1μm以下の微粉量の上限としては、凝集性など粉体特性の点から通常20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは、10%以下であり、下限としては、粉砕性と生産性の両立という点から通常0%以上、好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上である。粉砕前後の微粉の増加倍率としては、粉砕性と生産性の両立という点から通常100倍以下、好ましくは50倍以下、さらに好ましくは20倍以下である。
本願発明の製造方法においては、Fe不純物の混入をなるべく防止して行う。Fe不純物量の上限としては、電池特性への影響の点から通常100ppm以下、好ましくは80ppm以下、さらに好ましくは、60ppm以下であり、下限としては、少ない方が好ましい。
[その他の工程]
本発明の製造方法においては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の分級工程や焼成工程以外の工程を行なうようにしても良い。
例えば、焼成により得られたリチウム遷移金属複合酸化物を粉砕する粉砕工程などを行なうようにしても良い。
さらに、例えば、焼成前駆体に、その含有元素の割合を調整するため、原料を一部追加したり、或いは取り除いたりしても良い。
また、例えば、焼成前駆体のメジアン径や最大粒径を上述した範囲内に収めるため、適宜、粉砕などを行なうようにしても良い。
〈本発明の製造方法が上述の効果をもたらす理由〉
本発明の製造方法が上述の効果をもたらす理由としては、次のように推察される。
即ち、本発明の製造方法は、リチウム遷移金属系化合物の粗大粒子を再度効率的に、異物の混入を防ぎながら再度粉砕して分級できるため、品質を保持しつつ生産性が向上できるものである。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
LiCO、炭酸ニッケル、Mn、CoOOH、HBO、WOをLi:Ni:Mn:Co:B:W=1.15:0.45:0.45:0.10:0.0025:0.015のモル比となるように秤量、混合し、これに水を加えて固形分40重量%のスラリーを調製した。循環式媒体攪拌型湿式ビーズミルを用いて、スラリー中の固形分をメジアン径0.5μmに湿式粉砕した。得られたスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥し、メジアン径約17μmのほぼ球状の造粒粒子を得た。この造粒粒子をセラミック製焼成鉢に仕込み、空気を流通させながら、最高温度800℃、約10時間の一段目の焼成を行い、次いで最高温度1150℃、約12時間の二段目の焼成を行った。これにより、ほぼ仕込みのモル比組成の焼成粉体を得た。この焼成粉体をロールクラッシャーにて予備解砕を実施した。 予備解砕を行った焼成粉体を気流式分級機(日清エンジニアリング
社製ターボクラシファイア)を用いて分級することで、リチウム遷移金属複合酸化物粉体を得た。ここで、分級工程で発生した粒子径が、50μm以上の粗大粒子は18%であった。さらに、分級工程で発生した粗大粒子は、HIP処理のZrO(強化セラミックス)製のピンを用いたピンミル(ダルトン社製AVIS)を用いて粉砕し、気力輸送によって再度前記分級機に閉回路供給することで再分級した。最終的にメジアン径約9μmのリチウム遷移金属複合酸化物粉体を歩留まり99%で得た。ピンミル粉砕後の粒径はほぼ100%が100μm以下であった。この際、1μm以下の微粉量は、8%であった。また、Fe不純物の混入量は、20ppm以下であった。
<比較例1>
粗大粒子粉砕機をジェットミルにした以外は、実施例1と同様の手法にて、リチウム遷移金属複合酸化物粉体を得た。ジェットミル粉砕後の粒径はほぼ100%が100μm以下であったが、粉砕力が強すぎて、微粉が大きく増加した。この際、1μm以下の微粉量は、29%であった。
上記、実施例及び比較例での各試験項目結果を表1、図1に示す。
Figure 2012190648
ここで、表1中の「最終製品」とは、粗粉粉砕後の「粗粉粉砕粉」をリサイクルラインで分級された製品と混合し、粗粉粉砕粉を含めて収率99%以上までとした最終製品という意味である。
次に、本願発明の実施例1(ピンミル)および比較例1(ジェットミル)を比較する。
本願発明に係る実施例1では、ピンミルを用いて粗粉を粉砕している。そのため、「粗粉粉砕粉」が1μm以下の微粉が少なく、最終製品の平均粒径と近い粒径に粉砕されてい
る。従って、「粗粉粉砕粉」を混合して得られた最終製品についても平均粒径も小さくならず、微粉量も増加していない。従って、図1に示されるように、シャープな粒度分布となっている。
一方で、ジェットミルを用いた比較例1では、粉砕力が強すぎるため、「粗粉粉砕粉」は、最終製品よりも平均粒径が小さくなり、さらに、微粉量も多い。従って、「粗粉粉砕粉」を混合した最終製品においても、平均粒径は下がり、微粉量も増加してしまっている。従って、図1に示されるように、微粉領域頻度が高い粒度分布となっている。
本発明の適用分野は、リチウム二次電池用遷移金属複合酸化物の製造法であり、本発明の製造方法を用いれば、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等に好適に用いられるリチウム二次電池用の遷移金属複合酸化物を効率的に製造することができる。

Claims (5)

  1. 焼成後のリチウム遷移金属複合酸化物を分級する工程を含むリチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法において、
    該分級工程により得られた以下の定義で表される粗大粒子を、ピンミルにより粉砕して再度分級することを特徴とする
    リチウム二次電池用リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
    〈粗大粒子〉
    粗大粒子とは、リチウム遷移金属複合酸化物のメジアン径(平均粒径)の整数部分を5倍し、1の位を四捨五入した粒径以上の粒子を言う。
  2. ピンミルのピンが、セラミックおよび/または強化処理されたセラミックを使うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 分級が、閉回路分級であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 分級が、気流式分級であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 粗大粒子の90%以上が100μm以下になるまでピンミルによる粉砕が行われた後、再度分級することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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