JP2012189565A - ラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置 - Google Patents

ラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置において、補助具やスリップリングによるアンバランス荷重や、スリップリングの回転抵抗や慣性モーメントの影響を受けず、実際の動作状況での保持器の状態量を正確に計測できる実用的な状態量計測装置を提供すること。
【解決手段】ラジアル転がり軸受2の保持器24に取付けられた状態量センサ5と、ラジアル転がり軸受2とスリップリング4との中間に、ラジアル転がり軸受2と同軸に配置される補助軸受3とを備え、スリップリング4の回転部が信号線6と共に補助軸受3の保持器34により回転させられるようにした。さらに補助軸受3はラジアル転がり軸受2と同一諸元の転動体および軌道で構成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、ラジアル転がり軸受を所要条件で動作させた状態で、ラジアル転がり軸受に備えられる保持器にかかる状態量を計測する状態量計測装置に関する。
ラジアル転がり軸受の保持器の状態量を計測する状態量計測装置は、被測定保持器の所要位置に取付けられる歪ゲージ等の状態量センサと、前記センサに対して電圧を供給してセンサの電気抵抗の変化を検出する計測回路と、被測定保持器と共に回転するセンサと非回転の計測回路とを電気的に接続するスリップリングと、被測定保持器の一側に一体的に取付けられてスリップリングを支持する補助具とを含む。
このスリップリングは、一般的に、非回転の固定部と、この固定部に対して回転自在に支持される回転部とを備え、固定部には計測回路の電気配線が接続される外部端子が、また回転部には状態量センサの電気配線が接続される外部端子がそれぞれ設けられ、これら両外部端子が、固定部または回転部に設けられて相手に電気導通可能に接触する導電性ブラシ等を介して電気的に接続される構成になっている。
そして、状態量計測に先立ち、被測定保持器の所定位置に状態量センサを取付け、軸方向一側に補助具としての環状板を取付け、この環状板にスリップリングの回転部を一体に連結する。この保持器を内・外輪、転動体と組み合わせてラジアル軸受を完成し、このラジアル軸受を回転軸および軸受箱に組み込む。
このような状態で、回転軸を回転させるとともに、ラジアル軸受にラジアル荷重やアキシャル荷重等を適宜加担させる。このとき、被測定保持器にかかる荷重による弾性ひずみに応じた歪ゲージ等の状態量センサの電気抵抗値等の変化を計測回路で検出し、被測定保持器にかかる荷重等の状態量を計測している。
上述した従来の計測形態では、被測定保持器の軸方向片側のみに補助具やスリップリングを取付けているため、被測定保持器に対して補助具やスリップリングによるアンバランス荷重が加担されてしまう。これにより、被測定保持器がアンバランスな状態で回転することになるので、実際の使用状況での回転運動とは大きく異なる状況になるなど、実際の使用状況で被測定保持器にかかる荷重等の状態量を正しく計測できない。
上述の課題の解決手段として、被測定保持器の回転バランスを調整する要素としての補助具を被測定保持器に取付けた測定装置(特許文献1参照)や、スリップリングの回転部を専用の駆動装置で被測定保持器の回転数に同期させる測定装置(特許文献2参照)が考えられている。
特開平11―194058号公報 特開平10―239186号公報
しかしながら、スリップリングを直接被測定保持器に取付ける構成の装置では、被測定保持器に取付けられたスリップリングの回転抵抗や慣性モーメントが被測定保持器の挙動に影響するため、測定誤差が生じる。そのため、被測定保持器の状態量を精度良く認識するのが困難な場合がある。また、スリップリングの回転部を専用の駆動装置で被測定保持器の回転数に同期させる測定装置は装置自体が大型、複雑、高価で、かつ制御が難しく実用的でない。
この発明の目的は、ラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置において、補助具やスリップリングによるアンバランス荷重や、スリップリングの回転抵抗や慣性モーメントの影響を受けず、実際の動作状況での保持器の状態量を正確に計測できる実用的な状態量計測装置を提供することにある。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、
外周に内輪軌道を有する内輪、内周に外輪軌道を有する外輪、前記内輪軌道と前記外輪軌道の間を転動する複数の転動体および前記転動体を円周方向に所定の間隔に保持する保持器が組込まれたラジアル転がり軸受の前記保持器の回転中の状態量を計測するラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置であって、
前記ラジアル転がり軸受の前記保持器に取付けられた状態量センサと、
前記状態量センサの出力信号を外部に出力する信号線と、
前記状態量センサの出力信号の変化を検出する計測回路と、
回転する前記状態量センサの出力信号を固定された前記計測回路に出力するスリップリングと、
外周に内輪軌道を有する内輪、内周に外輪軌道を有する外輪、前記内輪軌道と前記外輪軌道の間を転動する複数の転動体および前記転動体を円周方向に所定の間隔に保持する保持器を備え、前記ラジアル転がり軸受と前記スリップリングとの中間に、前記ラジアル転がり軸受と同軸に配置される補助軸受と、
前記補助軸受を収容するハウジングと、
前記ラジアル転がり軸受および前記補助軸受の内輪または外輪を一体的に回転させる駆動装置とを備え、
前記スリップリングの回転部が前記信号線と共に前記補助軸受の前記保持器により回転させられるようにしたことである。
上記構成によると、前記スリップリングの回転部は被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器ではなく、前記補助軸受の保持器によって駆動されるため、前記スリップリングによるアンバランス荷重の加担が被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器の挙動に影響しない。このためラジアル転がり軸受の保持器の実際の使用状況での状態量を正確に計測することができる。
上記の課題を解決するため、請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記補助軸受は被測定軸受である前記ラジアル転がり軸受と同一軸受形式で、かつ前記ラジアル転がり軸受と同一の形状、寸法の転動体、外輪軌道および内輪軌道で形成されていることである。
保持器の回転速度は転動体の公転速度に等しく、内輪の回転数に対する保持器の回転数の割合は転動体、外輪軌道および内輪軌道の形状、寸法(以下内部諸元と称す)によって決定される。上記構成によると、前記補助軸受の内部諸元は被測定軸受である前記ラジアルころがり軸受の内部諸元と同一であるため、前記補助軸受の保持器は被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器と略同一速度で回転する。このため前記スリップリングの回転部の回転速度は被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器の回転速度と略等しくなり、前記信号線を介してスリップリングの回転抵抗や慣性モーメントが被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器に影響しない。このためラジアル転がり軸受の保持器の実際の使用状況での状態量を正確に計測することができる。
上記の課題を解決するため、請求項3に係る発明の構成上の特徴は、前記スリップリングの回転部は前記補助軸受の保持器の内径または側面に形成された溝との噛み合いで係合されるスリップリング駆動部材によって駆動されることである。
上記構成によると、前記スリップリング駆動部材は前記信号線が前記スリップリングに結合された後でも容易に前記スリップリングの回転部に固定することができる。
上記の課題を解決するため、請求項4に係る発明の構成上の特徴は、前記信号線の半径方向外方にあって、前記信号線を保護する鉄より密度の小さい材質からなる保護部材が前記補助軸受の保持器に固定されていることである。前記保護部材によって前記信号線の遠心力による張力は発生せず、前記信号線の張力による前記被測定保持器の挙動への影響が防止できる。また軽量材質による質量の増加抑制が図れる。
上記の課題を解決するため、請求項5に係る発明の構成上の特徴は、前記保護部材は外周面から内周面に通じる窓が形成されていることである。本構成によると、前記窓を通して前記信号線の挙動を観察することにより、前記補助軸受の保持器の回転速度の補正に必要な、被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器と前記補助軸受の保持器との回転方向の位相差を確認することができる。
上記の課題を解決するため、請求項6に係る発明の構成上の特徴は、前記ハウジングには、前記ハウジングに収容された前記補助軸受の軸方向中央に対峙する位置の外径面から内径面に貫通すする半径方向ねじ穴と、前記半径方向ねじ穴に螺合し、先端が前記補助軸受の外輪の外径面に直接または緩衝材を介して接する半径方向ねじ部材を備えていることである。
上記構成によると、前記半径方向ねじ部材を回転させ前記補助軸受の外輪の外径面に押し付け、前記補助軸受の外輪を半径方向に変形させることにより、前記補助軸受の転動体に荷重を与え、前記転動体と前記補助軸受の軌道との間のすべりが防止でき、前記転動体の公転速度すなわち前記補助軸受の保持器の公転速度と被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器の回転速度を近づけることができる。この結果、前記補助軸受の保持器の回転速度と、被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器の回転速度の差による位相差の拡大が防止でき、位相差拡大時の前記信号線の張力による被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器の挙動への影響が防止できる。
上記の課題を解決するため、請求項7に係る発明の構成上の特徴は、前記ラジアルころがり軸受および前記補助軸受は転動体が玉であるラジアル玉軸受であって、前記補助軸受の外輪の両側側面に対峙する前記ハウジングの両側の円盤部には前記円盤部を貫通する複数の軸方向ねじ穴と、前記軸方向ねじ穴に螺合し先端が前記補助軸受の外輪の側面に直接または緩衝材を介して接する複数の軸方向ねじ部材を備えていることである。
荷重条件によって生じる玉軸受固有の接触角変動に起因する保持器の回転速度変動により、被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器と前記補助軸受の保持器との回転方向の位相差が生じる。
上記構成によると、前記ねじを回転させ前記ねじの先端を前記補助軸受の側面に押し付け前記補助軸受を移動させたり、傾けたりすることにより、前記補助軸受の玉の公転速度が調整できる。
上述の調整によって、前記補助軸受の保持器に被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器の回転速度変動と同位相の回転速度変動を生じさせることができ、前記位相差を吸収できるため、位相差拡大時の前記信号線の張力による被測定保持器である前記ラジアルころがり軸受の保持器の挙動への影響が防止できる。
本発明によれば、ラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置において、補助具やスリップリングによるアンバランス荷重や、スリップリングの回転抵抗や慣性モーメントの影響を受けず、実際の動作状況での保持器の状態量を正確に計測できる実用的な状態量計測装置を提供することができる。
本発明の第1の実施形態の保持器の状態量計測装置の概要を示す断面図である。 図1の主要部の拡大断面図である。 本発明の第1の実施形態の保持器とスリップリング駆動部材の詳細および係合を説明する説明図である。 本発明の第1の実施形態の保持器と保護部材の詳細および係合を説明する説明図である。 本発明の第2の実施形態の保持器の状態量計測装置の概要を示す断面図である。 図5の主要部の拡大断面図である。 本発明の第2の実施形態の保持器と保護部材の詳細および係合を説明する説明図である。 本発明の第2の実施形態の保持器とスリップリング駆動部材の詳細および係合を説明する説明図である。
本発明の実施形態を、以下図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態の保持器の状態量計測装置の概要を示す断面図であり、図2は図1の主要部の拡大断面図である。
図1および図2において、保持器の状態量計測装置1は被測定保持器24が介在する被測定軸受2と被測定軸受2を収容するハウジング11、被測定軸受2に内嵌され、被測定軸受2を駆動する回転軸8、回転軸8を回転自在に支えるサポート部14、回転軸8を駆動する駆動部9、被測定軸受2に負荷を与える負荷部10を備えている。
また、被測定保持器24の所要位置に固定された状態量測定センサとしての歪ゲージ5、歪ゲージ5に対して電圧を供給して前記歪ゲージ5の電気抵抗の変化を検出する計測回路13、被測定保持器24の軸方向一側に回転軸8と同心に配置され、かつ歪ゲージ5と計測回路13とを電気的に接続するスリップリング4を備え、さらに、被測定軸受2とスリップリング4の間に介在し回転軸8に外嵌された補助軸受3、補助軸受3を収容するハウジング12、歪ゲージ5とスリップリング4を結ぶ信号線6、信号線6を保護する保護部材35および2個のスリップリング駆動部材7を備えている。
被測定軸受2は外周に内輪軌道22aを有する内輪22と、内周に外輪軌道21aを有する外輪21と、前記内輪軌道22aと前記外輪軌道21aの間を転動する転動体としての複数の円筒ころ23と、円筒ころ23を円周方向に所定の間隔に保持する被測定保持器24で構成される円筒ころ軸受である。
補助軸受3は外周に内輪軌道32aを有する内輪32と、内周に外輪軌道31aを有する外輪31と、内輪軌道32aと外輪軌道31aの間を転動する複数の転動体としての円筒ころ33と、円筒ころ33を円周方向に所定の間隔に保持する保持器34で構成される円筒ころ軸受で、保持器34の内径面34aの被測定軸受2側には信号線6を保護する保護部材35が固定され、内径面34aのスリップリング4側にはスリップリング駆動部材7が固定されている。
ここで、補助軸受3の内輪軌道32aの直径は被測定軸受2の内輪軌道22aの直径と等しく、外輪軌道31aの直径は被測定軸受2の外輪軌道21aの直径と等しく、円筒ころ33の直径および個数は被測定軸受2の円筒ころ23の直径および個数と等しい。
図3は本発明の第1の実施形態の保持器とスリップリング駆動部材の詳細および係合を説明する説明図である。
図4は本発明の第1の実施形態の保持器と保護部材の詳細および係合を説明する説明図である。
ここで、補助軸受3の保持器34は材質および内径寸法、外径寸法、幅等の主要寸法は被測定保持器24と等しく、軸方向中央部には外径面から内径面に貫通する円筒ころ33を保持する複数の矩形のポケット34aが等間隔に形成されている。また、保持器34の内径部34cの各ポケット間の柱部34bには、保護部材35の固定、スリップリング駆動部材7の係合の為の軸方向に貫通する断面がコの字型の溝34dが形成されている。
スリップリング駆動部材7は、材質はアルミニウムで、幅が保持器34の内径部34cの切欠き部34dの幅に略等しい爪部7aを含む平面部7b、平面部7bよりL字形に折り曲げられた側面7cおよび側面7cから爪部7aと反対の方向に折り曲げられて延在する取付け部7dとで構成されている。側面7cの長さは補助軸受3の保持器34の内径とスリップリング4のフランジ42aの外径との半径の差に略等しい。また、取付け部7dには取付け用穴7eが形成されている。
2個のスリップリング駆動部材7が180度位相をずらして対象配置されており、爪部7aが補助軸受3の保持器34の対称位置の溝34dに挿入されることにより保持器34と係合し、取付け部7dが取付け用穴7eを貫通しフランジ42aのねじ穴42bに螺合するねじ42cでスリップリング4のフランジ42aの外径面の対称位置に固定されている。
図4に示すように、保護部材35は材質はアルミニウムで外径寸法が保持器34の外径寸法に略等しい薄肉の円筒部35aと、円筒部35aの端面より半径方向内方に保持器34の内径面34aの切欠き部34dの内径34eに略等しい直径の位置まで延在する薄肉の円盤部35bと円盤部35bの内方端部より円筒部35aと反対側に軸方向に延在する爪部35cとで構成されている。
また爪部35cの幅は保持器34の内径面34aの溝34dの幅に等しく、爪35cの軸方向長さは補助軸受3の保持器34の側面からポケット43aの端面までの距離に略等しい。保護部材35は爪35cを補助軸受3の保持器34の溝34dに挿入されることにより保持器34と係合し、接着剤で固定されている。さらに、図2に示すように、前記円筒部35aの軸方向長さは対峙する被測定軸受2の端面から補助軸受3の端面までの距離より僅かに短く形成されており、保護部材35の半径方向内方に前記信号6が配置されている。
また、図1、図2および図3において、スリップリング4は、一般的に周知のもので、非回転の固定部41と、この固定部41に対して回転自在に支持される回転部42とを備え、回転部42の軸方向補助軸受3側端部には外径面にスリップリング駆動部材7を固定するねじ穴42bが形成されたフランジ42a、固定部41には計測回路13の電気配線が接続される複数の外部端子43が設けられている。
さらに、回転部42のフランジ42aには歪ゲージ5から延在する信号線6が接続される複数の外部端子44がそれぞれ設けられ、これら両外部端子は固定部41または回転部42に設けられて相手に電気導通可能に接触する導電性ブラシ等を介して電気的に接続される構成になっている。
信号線6は被測定軸受2の被測定保持器24の所要位置に接着剤で固定された歪ゲージ5から補助軸受3の保持器34の内側を経由してスリップリング4の回転部42の外部端子44と結ばれている。また、信号線6の歪ゲージ5から補助軸受3の保持器34の歪ゲージ5側側面までの長さは歪ゲージ5と保持器34の歪ゲージ5側側面との間隔に対し余裕を持った長さで保持器34の内径に形成された切欠き34dに接着剤で固定されている。
また、補助軸受3を収容するハウジング12は、補助軸受3の軸方向中央に対峙する位置に外径面から補助軸受3が内嵌される内径面へ半径方向に貫通するねじ穴12aとねじ穴12aに螺合しハウジング12の半径方向外方に頭が位置し、先端が補助軸受3の外輪31の外径面31bに緩衝材12cを介して接する半径方向ねじ12bを備えている。
本実施形態によると、前記スリップリング4の回転部42は被測定保持器24ではなく、前記補助軸受3の保持器34に固定されたスリップリング駆動部材7によって駆動されるため、被測定保持器24に補助具や前記スリップリングによるアンバランス荷重の加担が被測定保持器の挙動に影響しない。さらに、保持器34およびセンサ5の回転に伴い回転する信号線6は遠心力による半径方向の拡張が保護部材35によって抑えられ、遠心力よる張力は発生しない。これにより信号線6の張力による前記被測定保持器2の挙動への影響が防止できる。
一般に、転がり軸受の内輪の回転速度niに対する転動体の公転速度すなわち保持器の回転速度ncは次式で表される。
nc=(1−Dacosα/dm)×ni/2
ここでDaは転動体の直径、αは接触角。dmは転動体のピッチ円直径を表している。
すなわち転動体の直径、接触角、転動体のピッチ円直径および内輪の回転速度が同じ転がり軸受の保持器の回転速度は等しい。
本実施形態では、被測定軸受2と補助軸受3とを同じ内部諸元にしている。すなわち、被測定軸受2と補助軸受3の接触角(円筒ころ軸受なので0度)、転動体の直径、転動体のピッチ円直径を等しくしている。また、被測定軸受2と補助軸受3を同一回転軸8に外嵌し、被測定軸受2と補助軸受3の内輪の回転速度を等しくしている。
すなわち、被測定軸受2の被測定保持器24と補助軸受3の保持器34の回転速度は等しくなり、補助軸受3の保持器34に駆動されるスリップリング4の回転部42の回転速度も被測定保持器24の回転速度と等しくなる。この結果、被測定保持器24が前記信号線6を介してスリップリング4の回転抵抗や慣性モーメントの影響を受けない。このため被測定保持器24の実際の状態量を正確に計測することができる。
また、前述のハウジング12の半径方向ねじ12bを回転させ補助軸受3の外輪31の外径面31bを押し付け外輪31を半径方向に変形させることにより、補助軸受3の転動体33に荷重を与え、転動体33と補助軸受3の軌道31aおよび32aとの間のすべりを防止し、転動体33の公転速度すなわち補助軸受の保持器34の公転速度と前記被測定保持器24の回転速度を確実に一致させることができる。
図5は本発明の第2の実施形態の保持器の状態量計測装置の概要を示す断面図であり図6は図5の主要部の拡大断面図である。
第2の実施形態の保持器の状態量計測装置100は被測定軸受102および補助軸受103の構成、導線106および補助軸受103を収容する軸受箱112の構成が第1の実施形態と異なる。
第2の実施形態の保持器の状態量計測装置100では、第1の実施形態の保持器の状態量計測装置と共通の構成、作用効果については説明を省略することにし、第1の実施形態の保持器の状態量計測装置1と異なる構成、作用効果についてのみ説明を行う。
図5および図6において、保持器の状態量計測装置100は被測定保持器134が介在する被測定軸受102と被測定軸受102を収容するハウジング11、被測定軸受102に内嵌し被測定軸受102を駆動する回転軸8、回転軸8を駆動する駆動部9、被測定軸受102に負荷を与える負荷部10を備えている。
被測定軸受102は外周に内輪軌道122aを有する内輪122と、内周に外輪軌道121aを有する外輪121と、前記内輪軌道22aと前記外輪軌道121aの間を転動する転動体としての複数の玉123と、玉123を円周方向に所定の間隔に保持する被測定保持器124で構成される深溝玉軸受である。
補助軸受103は外周に内輪軌道132aを有する内輪132と、内周に外輪軌道131aを有する外輪131と、内輪軌道132aと外輪軌道131aの間を転動する複数の転動体としての玉133と、玉133を円周方向に所定の間隔に保持する保持器134で構成される玉軸受で、保持器134の被測定軸受2側の内径面134aには信号線6を保護する保護部材35が固定され、スリップリング4側の内径面134aにはスリップリング駆動部材7が固定されている。
ここで、補助軸受103の内輪軌道132aの直径および軌道曲率半径は被測定軸受102の内輪軌道122aの直径および軌道曲率半径と等しく、外輪軌道131aの直径および曲率半径は被測定軸受102の外輪軌道121aの直径および軌道曲率半径と等しく、玉133の直径および個数は被測定軸受102の玉123の直径および個数と等しい。
図7は本発明の第2の実施形態の保持器と保護部材の詳細および係合を説明する説明図である。
保護部材135の円筒部135aの軸方向中央には円周上の対称2箇所に外周面から内周面に通じる窓135dが形成されている。
図8は本発明の第2の実施形態の保持器とスリップリング駆動部材の詳細および係合を説明する説明図である。
補助軸受103の保持器134は材質および内径寸法、外径寸法、幅等の主要寸法は被測定保持器124と等しく、軸方向中央部には外径面から内径面に貫通する玉133を保持する断面が円形の複数のポケット134aが等間隔に形成されている。また、保持器134の内径面134cの各ポケット間の柱部134bには、保護部材35およびスリップリング駆動部材7の回転止めの為の軸方向に貫通する断面がコの字型の溝134dが形成されている。
図6によると、補助軸受103を収容するハウジング112は補助軸受103の外輪131の両側側面に対峙する2個の円盤部112fを有している。また、両円盤部112fの反軸受側の側面から軸受側側面に向け軸方向に貫通する複数のねじ穴112dとねじ穴112dに螺合する複数の軸方向ねじ112eを備えている。軸方向ねじ112eは円盤部112fの反軸受側側面の外方に頭が位置し、先端が補助軸受103の外輪131の両側面に達し、補助軸受103の外輪131をハウジング112内の軸方向の所定の位置に固定された状態で保持している。
ここで片側のねじ112eをすべて緩め、反対側のねじ112eをすべて締付けると、外輪131は軸方向の緩められたねじ112eの側に移動して固定される。
一般に、玉軸受の内輪の回転速度niに対する玉の公転速度すなわち保持器の回転速度ncは前述と同様次式で表される。
nc=(1−Dacosα/dm)×ni/2
ここでDaは玉の直径、αは接触角、dmは玉のピッチ円直径を表している。
すなわち玉の直径、接触角、玉のピッチ円直径および内輪の回転速度が同じ玉軸受の保持器の回転速度は等しい。
ここで、本実施形態の被測定軸受102の場合、深溝玉軸受であり接触角αは通常0度であるが、荷重条件によっては多少の角度が付く場合がある。
通常は被測定軸受102と補助軸受103の玉の直径、玉のピッチ円直径および内輪の回転速度が等しい場合、被測定軸受102の被測定保持器124と補助軸受103の保持器134の回転速度は略等しく、補助軸受103の保持器134に駆動されるスリップリング4の回転部42の回転速度も被測定保持器124の回転速度と略等しくなる。しかし、玉軸受の特性として、荷重条件によっては被測定軸受102の接触角の変動により、被測定保持器124に回転速度変動が生じ、被測定保持器124と補助軸受103の保持器134との間に回転方向の位相差が生じることがある。
本実施形態によれば、前記保護部材135の窓135dを通して信号線106の挙動をストロボ投光によって観察し、被測定保持器124と補助軸受103の保持器134との回転方向の位相差を確認できる。
さらに上記確認結果に基づき、前記軸方向ねじ112eの緩め、締付けにより、補助軸受103の外輪131を軸方向に移動させたり、傾けることにより、補助軸受103の接触角を変動させ、補助軸受103の玉133の公転速度を調整することができる。
すなわち、前述の軸方向ねじ112eの緩め、締付けによる調整によって、保持器134に被測定保持器124の回転速度変動と同位相の回転速度変動を生じさせ、前記回転方向の位相差を吸収できる。この結果、信号線106を介してスリップリング4の回転抵抗や慣性モーメントが被測定保持器124に影響しない。このため被測定保持器124の実際の状態量を正確に計測することができる。
上記第1および第2の実施形態によれば、補助具やスリップリングによるアンバランス荷重や、スリップリングの回転抵抗や慣性モーメントの影響を受けず、実際の動作状況での被測定保持器24および124の状態量を正確に計測できる実用的なラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置を提供することができる。
上記第1および第2の実施形態において状態量センサは歪ゲージであるが、その他の実施形態として、状態量センサは、温度計測用の温度センサや振動測定用の加速度センサ等の状態量センサであっても良い。
1、101 ‥ 状態量計測装置
2、102 ‥ 被測定軸受(ラジアルころがり軸受)
3、103 ‥ 補助軸受
21、31、121、131 ‥ 外輪
22、32、122、132 ‥ 内輪
23、33 ‥ 円筒ころ(転動体)
123、133 ‥ 玉(転動体)
24、34、124、134 ‥ 保持器
35,135 ‥ 保護部材
135a ‥ 窓
4 ‥ スリップリング
5 ‥ 歪ゲージ(状態量センサ)
6 ‥ 信号線
7 ‥ 駆動部材
8 ‥ 回転軸
9 ‥ 駆動部
10 ‥ 負荷部
11、12、112 ‥ ハウジング
12b、112e ‥ ねじ(ねじ部材)
112f ‥ 円盤部
13 ‥ 計測回路
14 ‥ サポート部

Claims (7)

  1. 外周に内輪軌道を有する内輪、内周に外輪軌道を有する外輪、前記内輪軌道と前記外輪軌道の間を転動する複数の転動体および前記転動体を円周方向に所定の間隔に保持する保持器が組込まれたラジアル転がり軸受の前記保持器の回転中の状態量を計測するラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置であって、
    前記ラジアル転がり軸受の前記保持器に取付けられた状態量センサと、
    前記状態量センサの出力信号を外部に出力する信号線と、
    前記状態量センサの出力信号の変化を検出する計測回路と、
    回転する前記状態量センサの出力信号を固定された前記計測回路に出力するスリップリングと、
    外周に内輪軌道を有する内輪、内周に外輪軌道を有する外輪、前記内輪軌道と前記外輪軌道の間を転動する複数の転動体および前記転動体を円周方向に所定の間隔に保持する保持器を備え、前記ラジアル転がり軸受と前記スリップリングとの中間に、前記ラジアル転がり軸受と同軸に配置される補助軸受と、
    前記補助軸受を収容するハウジングと、
    前記ラジアル転がり軸受および前記補助軸受の内輪または外輪を一体的に回転させる駆動装置とを備え、
    前記スリップリングの回転部が前記信号線と共に前記補助軸受の前記保持器により回転させられるようにしたことを特徴とするラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置。
  2. 前記補助軸受は前記ラジアル転がり軸受と同一軸受形式で、かつ前記ラジアル転がり軸受と同一の形状、寸法の転動体、外輪軌道および内輪軌道で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置。
  3. 前記スリップリングの回転部は前記補助軸受の前記保持器の内径部または側面部に形成された溝との噛み合いで係合されるスリップリング駆動部材によって駆動されることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載のラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置。
  4. 前記信号線の半径方向外方にあって前記信号線を保護する、鉄より密度の小さい材質からなる保護部材が前記補助軸受の前記保持器に固定されていることを特徴とする 請求項1から請求項3のいずれかに記載のラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置。
  5. 前記保護部材には外周面から内周面に通じる窓が形成されていることを特徴とする 請求項4に記載のラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置。
  6. 前記ハウジングには、前記ハウジングに収容された前記補助軸受の軸方向中央に対峙する位置に外径面から内径面に貫通すする半径方向ねじ穴と、前記半径方向ねじ穴に螺合し、先端が前記補助軸受の外輪の外径面に直接または緩衝材を介して接する半径方向ねじ部材を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置。
  7. 前記ラジアル転がり軸受および前記補助軸受は転動体が玉であるラジアル玉軸受であって、前記補助軸受の外輪の両側側面に対峙する前記ハウジングの両側の円盤部には前記円盤部を貫通する複数の軸方向ねじ穴と、前記軸方向ねじ穴に螺合し先端が前記補助軸受の外輪の側面に直接または緩衝材を介して接する複数の軸方向ねじ部材を備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のラジアル転がり軸受の保持器の状態量計測装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103332206A (zh) * 2013-06-27 2013-10-02 南车四方车辆有限公司 动车轴承温度检测图谱仪及动车车辆
CN114088260A (zh) * 2020-08-24 2022-02-25 深圳臻宇新能源动力科技有限公司 曲轴应力测试装置

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