JP2012185880A - 電子ビーム描画方法、電子ビーム描画システム、インプリントモールドの製造方法および磁気ディスク媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】周方向にグルーブパターンとサーボパターンが交互に配置されてなる微細パターンを電子ビーム走査により描画する際の、各パターンの周方向描画位置の精度を向上させる。
【解決手段】回転ステージを回転させつつ、電子ビームを走査して原盤にパターン描画を行うに際して、ある所定領域へのサーボパターンの描画を開始する際に、その直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、そのデータ信号の一部を破棄して、ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始する。
【選択図】図5
【解決手段】回転ステージを回転させつつ、電子ビームを走査して原盤にパターン描画を行うに際して、ある所定領域へのサーボパターンの描画を開始する際に、その直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、そのデータ信号の一部を破棄して、ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始する。
【選択図】図5
Description
本発明は、高密度磁気記録媒体であるディスクリートトラックメディア用のインプリントモールド原盤を作製する際に、所望の微細パターンを描画するための電子ビーム描画方法および電子ビーム描画システムに関するものである。
また、本発明は、電子ビーム描画方法を用いた描画を行う工程を経て製造される、凹凸パターン表面を有するインプリントモールドの製造方法、さらには該インプリントモールドを用いて凹凸パターンが転写されてなる磁気ディスク媒体の製造方法に関するものである。
現状の磁気ディスク媒体では、一般にサーボパターンなどの情報パターンが予め形成されている。また、記録密度のさらなる高密度化の要請から、隣接するデータトラックを溝(グルーブ)で分離し、隣接トラック間の磁気的干渉を低減するようにしたディスクリートトラックメディア(DTM)が注目されている。
従来、上記サーボパターン等の微細パターンは、磁気ディスク媒体に凹凸パターンまたは磁化パターンなどとして形成されており、高密度の磁気ディスク媒体を製造するための磁気転写用マスター担体の原盤などに、所定の微細パターンをパターニングするための電子ビーム描画方法が提案されている。この電子ビーム描画方法は、原盤を回転ステージ上に載置し、該回転ステージを回転させることにより原盤を回転させながら、原盤上において電子ビームを偏向走査させることによってパターン描画を行うものである(例えば、特許文献1、2参照)。
特に、特許文献2にはディスクリートトラックメディア用の微細パターンを描画する方法が開示されており、グルーブパターンを周方向に複数の領域に分割して描画する方法が提案されている。
電子ビーム描画方法においては、回転ステージを駆動する駆動モータの回転角度位置を検出するエンコーダからのエンコーダ信号とフォーマッタで生成される描画クロックとを同期させてパターンを描画する方法が一般的である。しかしながら、この方法を用いると、回転ステージを駆動する駆動モータの回転速度ムラがある場合には、円周方向のパターン配置に誤差が生じる。
引用文献3では、描画領域の直前のエンコーダパルスから所定時間経過後に描画を開始するようにすることで、描画開始位置の位置誤差を抑制する方法が提案されている。
特許文献2に記載のようにグルーブパターンを周方向に複数の領域に分割して、各領域毎にエンコーダパルスに基づいて描画を開始する場合、回転速度ムラにより次のような問題が生じると考えられる。
図8は、エンコーダパルスに基づいて描画を行う際に、グルーブパターンの各領域間に生じ得る問題を説明するための図である。
各領域について、所定のエンコーダパルスから所定の描画クロック数後に描画が開始される。ここでは、エンコーダパルスE1から3描画クロック目に第1の領域のグルーブパターンG1の描画を開始し、次のエンコーダパルスE2から3描画クロック目に第2の領域グルーブパターンG2の描画を開始するよう描画開始の基準点(以下、インデックス(Index)と称する。)が設定されているものとする。描画データ信号群は連続したデータ信号からなり、各領域はそれぞれの領域を描画するためのデータ信号に基づいて描画される。
各領域について、所定のエンコーダパルスから所定の描画クロック数後に描画が開始される。ここでは、エンコーダパルスE1から3描画クロック目に第1の領域のグルーブパターンG1の描画を開始し、次のエンコーダパルスE2から3描画クロック目に第2の領域グルーブパターンG2の描画を開始するよう描画開始の基準点(以下、インデックス(Index)と称する。)が設定されているものとする。描画データ信号群は連続したデータ信号からなり、各領域はそれぞれの領域を描画するためのデータ信号に基づいて描画される。
図8に示されるように、回転の線速度が正常であるとき、時刻t1にグルーブパターンG1の描画データ信号群Data(G1)に基づく描画を開始し、1描画クロック当たりLnの長さ周方向に描画し、次のインデックス(時刻t2)でグルーブパターンG2の描画データ信号群Data(G2)に基づく描画が開始される。
しかし、グルーブパターンG1描画時の回転の線速度が正常時よりも速い場合、1描画クロック当たりLf(>Ln)の長さを描画することとなり、グループパターンG1についてのデータ信号群Data(G1)に基づく描画がグルーブパターンG1を書くべき領域(円周方向x1〜x2)内で終了せず、i)グルーブパターンG2の先頭領域(円周方向x2〜x2’)において描画が重なる、あるいはii)グルーブパターンG2の描画の開始位置が本来の開始位置x2からずれる(遅れる)ことが起こり得る。
また回転の線速度が正常時よりも遅い場合、1描画クロック当たりLs(<Ln)の長さを描画することとなり、グルーブパターンG1についてのデータ信号群Data(G1)に基づく描画ではグルーブパターンG1を書くべき領域を満たすのに足らず、グルーブパターンG2との間に隙間が生じ得る。
このように、回転の速度ムラがあると、描画領域が重なったり、描画開始位置がずれたり、さらには、描画領域にとびが生じたりして、描画精度が低下するという問題がある。
また、グルーブパターンとサーボパターンとの境界においても同様の問題が生じる。図9は、グルーブパターンとサーボパターンとの各領域間に生じ得る問題を説明するための図である。
グルーブパターン同士の場合と同様に、グルーブパターンGの描画時に回転の線速度が正常時よりも速い場合、グループパターンGについてのデータ信号群Data(G)に基づく描画がグルーブパターンGを書くべき領域(円周方向x1〜x2)内で終了せず、i)サーボパターンSの先頭領域(円周方向x2〜x2’)において描画が重なる、あるいはii)サーボパターンSの描画の開始位置本来の開始位置x2からずれる(遅れる)ことが起こり得る。
また回転の線速度が正常時よりも遅い場合、グルーブパターンG1についてのデータ信号群Data(G)に基づく描画ではグルーブパターンGを書くべき領域を満たすのに足らず、サーボパターンSとの間に隙間が生じ得る。
特に、回転の線速度が速い場合に生じるサーボパターンとグルーブとの重なりやサーボパターンの開始位置のズレはサーボ精度に影響を及ぼす恐れがあり問題となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、円周方向に配置される描画領域間の境界領域における描画パターン精度の向上を可能とする電子ビーム描画方法および電子ビーム描画システムを提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記電子ビーム描画方法を用いた、インプリントモールドの製造方法を提供すること、および、そのインプリントモールドを用いた磁気ディスク媒体の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明の電子ビーム描画方法は、ロータリエンコーダを備えた回転ステージ上に載置された原盤に、前記回転ステージを回転させつつ電子ビームを走査して、ディスクリートトラックメディアを形成するための周方向に交互に配置されたグルーブパターンとサーボパターンとからなる微細パターンの描画を行う電子ビーム描画方法において、
各半径位置の周方向の所定領域毎に、該所定領域が前記電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間経過後に、該所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するものとし、
ある所定領域へのサーボパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始することを特徴とする。
各半径位置の周方向の所定領域毎に、該所定領域が前記電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間経過後に、該所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するものとし、
ある所定領域へのサーボパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始することを特徴とする。
前記グルーブパターンを前記周方向に複数の所定領域に区分して該所定領域毎に描画する場合、
ある所定領域へのグルーブパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域のグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始することが望ましい。
ある所定領域へのグルーブパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域のグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始することが望ましい。
また、ある所定領域にグルーブパターンを描画するためのデータ信号群として、該所定領域に対応するデータ信号よりも多くのデータ信号を用意しておくことが望ましい。
本発明の電子ビーム描画システムは、ロータリエンコーダを備えた回転ステージおよび電子ビームを出射する電子銃を備え、該回転ステージ上に載置された原盤に、該回転ステージを回転させつつ前記電子ビームを走査してパターンの描画を行う電子ビーム描画装置と、
各半径位置の周方向の所定領域毎に、該所定領域が前記電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間の経過後に、該所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するように、前記所定領域毎の描画データ信号群を生成し、該描画データ信号群のデータ信号を前記電子ビーム描画装置に順次送出するデータ信号生成送出装置とを備え、
前記データ信号生成送出装置が、前記電子ビーム描画装置に出力する前記所定領域毎の前記描画データ信号群を、描画順序に従って交互に格納する複数のメモリを備え、前記所定領域毎にデータ信号を送出するメモリを切り替え、該メモリに格納されている描画データ信号群のデータ信号を送出するものであり、ある所定領域へのパターン描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部がデータ信号送出中のメモリに残っている場合であっても、前記ある所定領域の描画データ信号群を格納しているメモリに切り替え、該メモリから該ある所定領域の描画データ信号群のデータ信号の送出を開始するものであることを特徴とするものである。
各半径位置の周方向の所定領域毎に、該所定領域が前記電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間の経過後に、該所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するように、前記所定領域毎の描画データ信号群を生成し、該描画データ信号群のデータ信号を前記電子ビーム描画装置に順次送出するデータ信号生成送出装置とを備え、
前記データ信号生成送出装置が、前記電子ビーム描画装置に出力する前記所定領域毎の前記描画データ信号群を、描画順序に従って交互に格納する複数のメモリを備え、前記所定領域毎にデータ信号を送出するメモリを切り替え、該メモリに格納されている描画データ信号群のデータ信号を送出するものであり、ある所定領域へのパターン描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部がデータ信号送出中のメモリに残っている場合であっても、前記ある所定領域の描画データ信号群を格納しているメモリに切り替え、該メモリから該ある所定領域の描画データ信号群のデータ信号の送出を開始するものであることを特徴とするものである。
前記データ信号生成送出装置は、前記グルーブパターンを描画するための前記描画データ信号群として、前記グルーブパターンが描画されるべき所定領域に対応するデータ信号よりも多くのデータ信号を含む描画データ信号群を生成するものであることが望ましい。
また、前記データ信号生成送出装置がバッファメモリをさらに備え、前記複数のメモリから該バッファメモリを介して前記電子ビーム描画装置へ送出するものであることが望ましい。
本発明のインプリントモールドの製造方法は、本発明の電子ビーム描画方法により、周方向に交互に配置されるグルーブパターンとサーボパターンとからなる微細パターンを原盤に描画し、該微細パターンが描画された原盤を用いて、前記微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て製造することを特徴とする。
本発明の磁気ディスク媒体の製造方法は、本発明の製造方法により製造されたインプリントモールドを用い、該モールドの表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた凹凸パターンを転写する工程を経て製造することを特徴とする。
本発明の電子ビーム描画方法によれば、各半径位置の周方向の所定領域毎に、該所定領域が前記電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間経過後に、該所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するものとし、ある所定領域へのサーボパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するので、回転ムラにより線速度が速くなった場合に、サーボパターンとグルーブパターンの境界において描画が重なったり、サーボパターン開始位置が後方にずれたりするのを防止し、パターンの描画精度を向上することができる。すなわち周方向におけるグルーブパターンの終了位置およびサーボパターンの開始位置の精度が向上し、結果としてサーボの精度の向上に繋がる。
同様に、前記グルーブパターンを前記周方向に複数の所定領域に区分して該所定領域毎に描画する場合、ある所定領域へのグルーブパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域のグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始すれば、回転ムラにより線速度が速くなった場合に、所定領域間の境界で描画が重なったり、描画開始位置が後方にずれたりするのを防止することができ、パターンの描画精度を向上することができる。
また、ある所定領域にグルーブパターンを描画するためのデータ信号群として、該所定領域に対応するデータ信号よりも多くのデータ信号を用意しておくようにすれば、回転ムラにより線速度が遅くなった場合にも、データ信号が足りずにパターンにトビが生じるという問題を生じず、該所定領域内全域に描画を行うことができる。
本発明の電子ビーム描画システムは、電子ビーム描画装置に出力する前記所定領域毎の前記描画データ信号群を、描画順序に従って交互に格納する複数のメモリを備え、前記所定領域毎にデータ信号を送出するメモリを切り替え、該メモリに格納されている描画データ信号群のデータ信号を送出するものであり、ある所定領域へのパターン描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部がデータ信号送出中のメモリに残っている場合であっても、前記ある所定領域の描画データ信号群を格納しているメモリに切り替え、該メモリから該ある所定領域の描画データ信号群のデータ信号の送出を開始するデータ信号生成送出装置を備えているので、本発明の電子ビーム描画方法を容易に実現することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
「電子ビーム描画システム」
まず、本発明の電子ビーム描画方法を実施するための本発明の電子ビーム描画システムの一実施形態について説明する。図1は電子ビーム描画システムの構成概略を示すブロック図である。
電子ビーム描画システム100は、電子ビーム描画装置40およびデータ信号生成送出装置50を備え、電子ビーム描画装置40は、原盤に対して電子ビームを照射する電子ビーム照射部20と、原盤を回転および直線移動させる機械駆動部30とを備えている。
まず、本発明の電子ビーム描画方法を実施するための本発明の電子ビーム描画システムの一実施形態について説明する。図1は電子ビーム描画システムの構成概略を示すブロック図である。
電子ビーム描画システム100は、電子ビーム描画装置40およびデータ信号生成送出装置50を備え、電子ビーム描画装置40は、原盤に対して電子ビームを照射する電子ビーム照射部20と、原盤を回転および直線移動させる機械駆動部30とを備えている。
電子ビーム照射部20は、鏡筒18内に電子ビームEBを出射する電子銃21、電子ビームEBを半径方向Yおよび円周方向Xへ偏向させるとともに円周方向Xに一定の振幅で微小往復振動させる偏向手段22,23、電子ビームEBの照射をオン・オフするためのブランキング手段24としてアパーチャ25およびブランキング26(偏向器)を備えており、電子銃21から出射された電子ビームEBは偏向手段22、23および図示しない電磁レンズ等を経て、原盤(ここでは、レジスト11が塗布された基板10)上に照射される。
ブランキング手段24における上記アパーチャ25は、中心部に電子ビームEBが通過する透孔を備え、ブランキング26はEB照射のオン・オフ信号の入力に伴って、オン信号時には電子ビームEBを偏向させることなくアパーチャ25の透孔を通過させて照射させ、一方、オフ信号時には電子ビームEBを偏向させてアパーチャ25の透孔を通過させることなくアパーチャ25で遮断して、電子ビームEBの照射を行わないように作動する。
機械駆動部30は、鏡筒18が上面に配置された筐体19内に原盤を支持する回転ステージ31および該ステージ31の中心軸と一致するように設けられたモータ軸を有するスピンドルモータ32と備えた回転ステージユニット33と、回転ステージユニット33を回転ステージ31の一半径方向に直線移動させるための直線移動手段34とを備えている。直線移動手段34は、回転ステージユニット33の一部に螺合された精密なネジきりが施されたロッド35と、このロッド35を正逆回転駆動させるパルスモータ36とを備えている。また、ステージユニット33には、回転ステージ31の回転角に応じたエンコーダ信号を出力するエンコーダ37が設置されている。エンコーダ37は、スピンドルモータ32のモータ軸に取り付けられる、多数の放射状のスリットが形成された回転板38と、そのスリットを光学的に読み取り、エンコーダ信号を出力する光学素子39とを備えている。なお、モータ32の回転速度ムラに基づきエンコーダ信号にはバラツキが生じうる。
データ信号生成送出装置50は、ハードディスクパターンの各半径位置の周方向の所定領域毎に、各所定領域が電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間の経過後に、所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するように、所定領域毎の描画データ信号群を生成し、描画データ信号群のデータ信号を電子ビーム描画装置40に順次送出するものである。
データ信号生成送出装置50は、描画すべきパターンに関する設計データ(描画パターンや描画タイミングを示すデータなど)を蓄積する設計データ蓄積部52と、描画タイミングを計るための描画クロックを生成する描画クロック生成部54と、設計データに基づいて描画データ信号群を生成し、その描画データ信号群を電子ビーム描画装置40に送出するデータ振り分け部60とを備えている。データ信号生成送出装置50は所謂フォーマッタにより構成することができる。
描画すべきパターンに関する設計データは、電子ビーム描画を開始する前に、予め図示しない外部の設計データ処理装置からデータ信号生成送出装置50に送られ、設計データ蓄積部52に蓄積される。
データ信号生成送出装置50のデータ振り分け部60は、設計データ蓄積部52に蓄積されている設計データを用いて、電子ビーム描画装置40に出力する所定領域毎の描画データ信号群を生成するデータ生成部61と、描画データ信号群を描画順序に従って交互に格納する複数のメモリ62、63と、描画データ信号を電子ビーム描画装置40に送出する信号出力部68と、該信号出力部68と複数のメモリ62、63との間に配置されたバッファメモリ66を備えている。
データ信号生成送出装置50は、各所定領域の描画毎にデータ信号を送出する複数のメモリ62、63を切り替え手段65により切り替え、メモリ62、63(以下において、メモリ1、メモリ2と称することがある。)に格納されている描画データ信号群のデータ信号を順次送出する。ここでは、2つのメモリ62、63を備えるが、3つ以上のメモリを備えていてもよい。
メモリ62、63からのデータ信号は、バッファメモリ66を介して信号出力部68に入力され、信号出力部68から電子ビーム描画装置40に送出される。このバッファメモリ66を介することにより、メモリ62、63の切り替え時に、データ信号出力の遅れの発生を防止することができる。
メモリ62、63からのデータ信号は、バッファメモリ66を介して信号出力部68に入力され、信号出力部68から電子ビーム描画装置40に送出される。このバッファメモリ66を介することにより、メモリ62、63の切り替え時に、データ信号出力の遅れの発生を防止することができる。
描画データ信号を読み出すメモリの切り替えタイミングは、円周方向の所定領域毎に予め設定されている所定のエンコーダパルスと描画クロックによって決定される。所定領域が電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間の経過後(所定の描画クロック数)にインデックスが付されており、データ信号生成送出装置50はこのインデックスに基づいてメモリの切り替えを行うように構成されている。このメモリの切り替えは、所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画が開始されるタイミングに相当する。
また、データ信号生成送出装置50は、ある所定領域へのパターン描画を開始する際に、その所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部がデータ信号送出中のメモリ62に残っている場合であっても、その所定領域の描画データ信号群を格納しているメモリ63に切り替え、メモリ63から描画データ信号群のデータ信号送出を開始するように構成されている。データ信号生成送出装置は、原則として描画クロックに付与されているインデックスに基づいて、メモリの切り替えを行い、データ信号の送出を行う。
パターン描画を開始する際に、その所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部がデータ信号送出中のメモリ62に残っている場合であっても、その所定領域の描画データ信号群を格納しているメモリ63に切り替え、メモリ63から描画データ信号群のデータ信号送出を開始するように構成されている。データ信号生成送出装置は、原則として描画クロックに付与されているインデックスに基づいて、メモリの切り替えを行い、データ信号の送出を行う。
さらに、データ信号生成送出装置50は、データ生成部61において、既述の通り、所定領域毎にその所定領域の描画すべきパターンの描画データ信号群を生成するものであるが、このとき、グルーブパターンを描画するための描画データ信号群としては、所定領域に対応するデータ信号数より多いデータ信号数を含む描画データ信号群を生成し、メモリに格納するよう構成されていることが望ましい。
描画クロック生成部54は、不変の基準クロックを発生する基準クロック発生部を内包し、この基準クロックに基づいて描画クロックを生成するものである。
本電子ビーム描画システム100においては、データ信号生成送出装置50が、ブランキングのオン・オフ制御、電子ビームEBのX−Y偏向制御、回転ステージ31の回転速度制御等の制御信号からなる描画データ信号群を各所定領域毎に生成し、その描画データ信号を各アンプおよびドライバに振り分けるものであり、それぞれのデータ信号はエンコーダ37から入力されたエンコーダパルスと描画クロックに基づいて所定のタイミングで送出される。
そして、電子ビーム描画装置40において、スピンドルモータ32の駆動すなわち回転ステージ31の回転速度、パルスモータ36の駆動すなわち直線移動手段34による直線移動、電子ビームEBの変調、偏向手段22および23の制御、ブランキング手段24のブランキング26のオン・オフ制御等はデータ信号生成送出装置50から送出された描画データ信号に基づいて行われる。
そして、電子ビーム描画装置40において、スピンドルモータ32の駆動すなわち回転ステージ31の回転速度、パルスモータ36の駆動すなわち直線移動手段34による直線移動、電子ビームEBの変調、偏向手段22および23の制御、ブランキング手段24のブランキング26のオン・オフ制御等はデータ信号生成送出装置50から送出された描画データ信号に基づいて行われる。
「電子ビーム描画方法」
次に、上述の電子ビーム描画システム100を用いた、本発明の電子ビーム描画方法の実施形態を説明する。
図2は本発明の電子ビーム描画方法により原盤に描画するべき磁気ディスク媒体の微細パターン(ハードディスクパターン)を示す全体平面図、図3はこの微細パターンの一部の拡大図を示す図である。
次に、上述の電子ビーム描画システム100を用いた、本発明の電子ビーム描画方法の実施形態を説明する。
図2は本発明の電子ビーム描画方法により原盤に描画するべき磁気ディスク媒体の微細パターン(ハードディスクパターン)を示す全体平面図、図3はこの微細パターンの一部の拡大図を示す図である。
図2および図3に示すように、ディスクリートトラックメディア用の微細パターンは、周方向に交互に配置されたサーボ領域12に形成されるサーボパターンSとデータ領域15に形成されるグルーブパターンGとで構成され、円盤状の基板10に、外周部10aおよび内周部10bを除く円環状領域に形成される。
サーボパターンSは、基板10の同心円状トラックに等間隔で、各セクターに中心部から湾曲放射状の細幅のサーボ領域12に形成されてなる。サーボパターンSは、例えば、プリアンブル、アドレス、バースト信号に対応するパターンを含み、一部を拡大した図2にはプレアンブル部のパターンが示されている。
一方、グルーブパターンGは、隣接する各トラックを分離するようトラック方向に延びる同心円状に形成されてなるものである。
最終的なディスクリートトラックメディアでは、グルーブパターンGおよびサーボパターンの描画部分が凹部に、その他の部分が磁性層による平坦部(ランド)となる。なお、凹部は非磁性体により埋め込まれていてもよい。
上記サーボパターンSおよびグルーブパターンGの描画は、表面にレジスト11が塗布された基板10からなる原盤を回転ステージ31(図1参照)に設置して回転させつつ、例えば、内周側のトラックより外周側トラックへ順に、またはその反対方向へ、1トラックずつ電子ビームEBで走査しレジスト11を照射露光するものである。基板10は、例えばシリコン、ガラスあるいは石英からなる。
図4は、本発明の電子ビーム描画方法を実行するためのタイミングチャートを示す図である。本実施形態においては、1トラック分のグルーブパターンGとサーボパターンSを、基板10の1回転で一度に描画するものとしている。
グルーブパターンGは、基板10(回転ステージ31)を回転させつつ、電子ビームを一定の描画位置に照射させた状態で維持して描画する。他方サーボパターンSはそれぞれトラック幅に亘るエレメントS1,S2,…を、基板10を回転させつつ、その形状を塗りつぶすように微小径の電子ビームEBで走査して、1回転で1トラック内のサーボパターンSを描画する。なお、隣接するトラックにまたがる半トラックずれたサーボエレメント(例えば、バースト信号)は、半分に分割することなく、描画基準を半トラックずらせて一度に描画すればよい。
グルーブパターンGは、基板10(回転ステージ31)を回転させつつ、電子ビームを一定の描画位置に照射させた状態で維持して描画する。他方サーボパターンSはそれぞれトラック幅に亘るエレメントS1,S2,…を、基板10を回転させつつ、その形状を塗りつぶすように微小径の電子ビームEBで走査して、1回転で1トラック内のサーボパターンSを描画する。なお、隣接するトラックにまたがる半トラックずれたサーボエレメント(例えば、バースト信号)は、半分に分割することなく、描画基準を半トラックずらせて一度に描画すればよい。
エレメントを塗りつぶす電子ビームEBの走査は、電子ビームEBの照射のオン、オフをブランキング手段24の動作により制御しつつ、サーボエレメントの最小トラック方向長さより小さいビーム径の電子ビームEBを、半径方向Yおよび半径方向と直交する方向(以下周方向X)へX−Y偏向させて、基板10(回転ステージ31)の回転速度に応じて、半径方向Yと直交する周方向Xへ一定の振幅で高速に往復振動させて振らせることにより行う。
図4に基づき順により詳細に説明する。
図4(A)は電子ビームEBの半径方向Yおよび周方向Xの電子ビームEBの描画動作を示し、図4(B)に半径方向Yの偏向信号Def(Y)を、(C)に周方向Xの偏向信号Def(X)を、(D)に周方向Xの振動信号Mod(X)を、(E)にEB照射のオン・オフ動作を、(F)にエンコーダパルス、(G)に描画クロックをそれぞれ示している。
図4(A)は電子ビームEBの半径方向Yおよび周方向Xの電子ビームEBの描画動作を示し、図4(B)に半径方向Yの偏向信号Def(Y)を、(C)に周方向Xの偏向信号Def(X)を、(D)に周方向Xの振動信号Mod(X)を、(E)にEB照射のオン・オフ動作を、(F)にエンコーダパルス、(G)に描画クロックをそれぞれ示している。
まず、既述の通り、グルーブパターンGは、半径方向、周方向に偏向させることなく、また周方向に振動をさせることなく、EB照射信号のオンとして電子ビームEBを照射させた状態で、基板の回転により描画する。グルーブパターンGの描画は、複数の所定領域に分割し、それぞれの所定領域毎にエンコーダパルスに基づく描画開始するようにしている。ひとつのデータ領域15に形成される連続したグルーブパターンは、ひとつのデータ領域に亘って、途中でエンコーダパルスとの同期をとることなく連続的に描画してもよいが、複数の所定領域に分割して、該所定領域毎に予め定められたエンコーダパルスによる同期を取ることにより、これによりグルーブパターンGとサーボパターンSとの境界でのズレを抑制することができる。
サーボパターンSのサーボエレメントS1の描画は、所定のエンコーダパルスE2発生時刻から所定時間Δt2経過後に設定されたインデックス位置で、基準位置にある電子ビームEBを(D)の振動信号Mod(X)により周方向Xに往復振動させつつ、(B)の偏向信号Def(Y)により半径方向(−Y)に偏向させて送るとともに、基板10の回転に伴う電子ビームEBの照射位置のずれを補償するために、(C)の偏向信号Def(X)により回転の向きと同一の向き(−X)に偏向させて送ることにより、矩形状のサーボエレメントS1を塗りつぶすように走査し、EB照射信号のオフによりブランキングさせて電子ビームEBの照射を停止し、サーボエレメントS1の描画を終了する。その後に、半径方向Yおよび周方向Xの偏向を基準位置に戻す。
次に、基板10が回転してサーボエレメントS2、S3・・・の描画位置で、サーボエレメントS1の描画と同様に電子ビームEBを周方向Xに往復振動させつつ、半径方向および回転の向きに偏向させて描画を行う。
サーボパターンSの先頭に配置されているエレメントS1の描画開始点が、(F)のエンコーダパルスに基づいて正確な位置決めがなされるので、1周中のサーボパターンSの形成位置の精度を高めることができる。
1つのトラックを1周描画した後、次のトラックに移動し同様に描画して、基板10の全領域に所望の微細パターンを描画する。描画位置のトラック移動(径方向への移動)は、電子ビームEBを半径方向Yに偏向させて行うか、あるいは回転ステージ31を半径方向Yに直線移動させて行う。回転ステージを直線移動させるのは、前述のように、電子ビームEBの半径方向Yの偏向可能範囲に応じて複数トラックの描画毎に行うか、1トラックの描画毎に行ってもよい。しかしながら、偏向手段により径方向へ移動させる方が効率的であることから、偏向手段による径方向への移動が可能な範囲では偏向させることによりトラック移動を行って複数トラック描画させた後に、ビームの偏向手段による径方向への偏向を一旦解除すると共に、直線移動手段34を用いて回転ステージを複数トラック分程度半径方向に移動させるのが好ましい。
また、基板10の描画領域における、描画部位の半径方向位置の移動つまりトラック移動に対し、基板10の外周側部位でも内周側部位でも全描画域で同一の線速度となるように、前記回転ステージ31の回転速度を外周側描画時には遅く、内周側描画時には速くなるように調整して、電子ビームEBによる描画を行うのが均一照射線量を得るためおよび描画位置精度を確保する点で好ましい。
電子ビームEBのビーム強度は、上記サーボエレメントS1、S2・・・の高速振動描画でレジスト11の露光が十分に行える程度に設定されている。つまり、電子ビームEBによる描画幅(実質露光幅)は、照射時間、振幅に応じて照射ビーム径および振幅より広くなる特性があり、最終的なエレメント幅の描画を行うためには、その描画幅となる所定の照射線量で走査するために、振幅、偏向速度を調整することによって照射線量を規定するものである。なお、描画途中でのビーム強度を変更することは、ビーム安定性の面で困難である。
本実施形態の電子ビーム描画方法の描画開始タイミングの制御について図5、図6に基づいて説明する。
図5はグルーブパターンGおよびそれに続くサーボパターンSの描画および描画開始タイミングを説明するための図であり、エンコーダパルスと描画クロックによる描画タイミング、および回転ムラによる線速度の速度毎のパターン描画について示す図である。なお、図5には理解を容易にするために、各領域にパターンを描画するための、メモリ1およびメモリ2に格納されている描画データ信号群を模式的に示している。
図5に示すように、所定領域(円周方向位置x1−x2)へのグルーブパターンGの描画は、位置x1がEB照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスE1を基準とし、パルスE1発生時刻t1から所定時間(Δt1)経過後に開始される。所定時間Δt1は、ここでは、t1からインデックスが付与された3描画クロックである。同様にサーボパターンSの描画は、位置x2がEB照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスE2を基準とし、パルスE2発生時刻t2から所定時間(Δt2)経過後に開始される。
グルーブパターンGを描画しているとき、データ信号生成送出装置50のメモリ1に格納されたグルーブパターンデータ信号群Data(G)のデータ信号がバッファメモリ66および信号出力部68を介して電子ビーム描画装置40に送出されているとする。メモリ1には、回転が正常(線速度が正常)であるときに、所定領域を描画するために必要とされるデータ信号数よりも多いデータ数を含むグループパターンデータ信号群Data(G)が格納されている。
線速度が正常である場合、1描画クロック当たりLnの長さ描画し、サーボパターン描画の開始時刻t2+Δt2において、余分なデータは未だ送出されずメモリ1に残っているが、切り替え手段65によりメモリ2に切り替えられて、メモリ2に格納されているサーボパターンのデータ信号群Data(S)のデータ信号のバッファメモリ66への送出が開始され、次の所定領域へのサーボパターン描画が開始される。メモリ2からの信号送出の間に、先のグルーブパターンの描画データ信号群Data(G)はメモリ1から消去(破棄)され、メモリ1には新たにサーボパターンの次に描画するグルーブパターンの描画データ信号群が格納される。
線速度が正常時よりも速い場合、1描画クロック当たりLf(>Ln)の長さを描画するので、正常時よりも少ないデータ数で所定領域の描画が終了してしまこととなるが、正常時と同様に、サーボパターン描画の開始時刻t2+Δt2において、未だ送出されていないデータ信号がメモリ1に残っているが、切り替え手段65によりメモリ2に切り替えられて、メモリ2に格納されているサーボパターンのデータ信号群Data(S)のデータ信号のバッファメモリ66への送出が開始され、サーボパターン描画が開始される。メモリ2からの信号送出の間に、先のグルーブパターンの描画データ信号群Data(G)はメモリ1から消去(破棄)され、メモリ1には新たにサーボパターンの次に描画するグルーブパターンの描画データ信号群が格納される。
線速度が正常時よりも遅い場合、1描画クロック当たりLs(<Ln)の長さしか描画できないので、所定領域の描画を行うためには、正常時よりも多いデータ数が必要となる。本実施形態では、グルーブパターンの描画データ信号群Data(G)として、メモリ1に回転が正常(線速度が正常)であるときに、所定領域を描画するために必要とされるデータ信号数よりも多いデータ数を含むグループパターンデータ信号群Data(G)が格納されているので、線速度が遅い場合であっても、所定領域内に描画抜け(トビ)が生じない。この場合にも、サーボパターン描画の開始時刻t2+Δt2において、切り替え手段65によりメモリ2に切り替えられて、メモリ2に格納されているサーボパターンのデータ信号群Data(S)のデータ信号のバッファメモリ66への送出が開始され、サーボパターン描画が開始される。
このように、本実施形態の電子ビーム描画方法は、ある所定領域へのサーボパターンの描画を開始する際に、その所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、そのデータ信号の一部を破棄して、ある所定領域の描画データ信号群に基づくサーボパターンの描画を開始するので、回転が速くなった場合であっても、サーボパターンが描画されるべき所定領域にグルーブパターンが延びて描画されることがなく、グルーブパターンの終了位置およびサーボパターンの開始位置精度を向上させることができる。
また、グルーブパターンの描画データ信号群として、過剰なデータ信号を予め用意しておくことにより、回転が遅くなった場合であっても、グルーブパターンが描画されるべき領域の全域にグルーブパターンの描画をすることができ、描画抜けが生じないので、やはり、グルーブパターンの終了位置の精度を向上させることができる。
図6はグルーブパターンGを周方向に複数の所定領域に分割して描画する場合であって、グルーブパターンG1に引き続きグルーブパターンG2の描画を行う場合のパターン描画および描画開始タイミングを説明するための図であり、エンコーダパルスと描画クロックによる描画タイミング、および回転ムラによる線速度の速度毎のパターン描画について示す図である。なお、図6には図5と同様に、理解を容易にするために、各領域にパターンを描画するための、メモリ1およびメモリ2に格納されている描画データ信号群を模式的に示している。
図6に示すように、所定領域(円周方向位置x1−x2)へのグルーブパターンG1の描画は、位置x1がEB照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスE1を基準とし、パルスE1発生時刻t1から所定時間(Δt1)経過後に開始される。所定時間Δt1は、ここでは、t1からインデックスが付与された3描画クロックである。同様にグルーブパターンG2の描画は、位置x2がEB照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスE2を基準とし、パルスE2発生時刻t2から所定時間(Δt2)経過後に開始される。
グルーブパターンG1を描画しているとき、データ信号生成送出装置50のメモリ1に格納されたグルーブパターンデータ信号群Data(G1)のデータ信号がバッファメモリ66および信号出力部68を介して電子ビーム描画装置40に送出されているとする。メモリ1には、回転が正常(線速度が正常)であるときに、所定領域を描画するために必要とされるデータ信号数よりも多いデータ数を含むグループパターンデータ信号群Data(G1)が格納されている。
線速度が正常である場合、1描画クロック当たりLnの長さ描画し、グルーブパターンG2描画の開始時刻t2+Δt2において、余分なデータは未だ送出されずメモリ1に残っているが、切り替え手段65によりメモリ2に切り替えられて、メモリ2に格納されているグルーブパターンG2のデータ信号群Data(G2)のデータ信号のバッファメモリ66への送出が開始され、次の所定領域へのサーボパターン描画が開始される。メモリ2からの信号送出の間に、先のグルーブパターンG1の描画データ信号群Data(G1)はメモリ1から消去(破棄)され、メモリ1には新たにサーボパターンの次に描画するグルーブパターンの描画データ信号群が格納される。
線速度が正常時よりも速い場合、1描画クロック当たりLf(>Ln)の長さを描画するので、正常時よりも少ないデータ数で所定領域の描画が終了してしまこととなるが、正常時と同様に、グルーブパターンG2描画の開始時刻t2+Δt2において、未だ送出されていないデータ信号がメモリ1に残っているが、切り替え手段65によりメモリ2に切り替えられて、メモリ2に格納されているグルーブパターンG2のデータ信号群Data(G2)のデータ信号のバッファメモリ66への送出が開始され、サーボパターン描画が開始される。メモリ2からの信号送出の間に、先のグルーブパターンG1の描画データ信号群Data(G1)はメモリ1から消去(破棄)され、メモリ1には新たにグルーブパターンG2の次に描画するパターンの描画データ信号群が格納される。
線速度が正常時よりも遅い場合、1描画クロック当たりLs(<Ln)の長さしか描画できないので、所定領域の描画を行うためには、正常時よりも多いデータ数が必要となる。本実施形態では、グルーブパターンG1の描画データ信号群Data(G1)として、メモリ1に回転が正常(線速度が正常)であるときに、所定領域を描画するために必要とされるデータ信号数よりも多いデータ数を含むグループパターンデータ信号群Data(G1)が格納されているので、線速度が遅い場合であっても、所定領域内に描画抜け(トビ)が生じない。この場合にも、グルーブパターンG2描画の開始時刻t2+Δt2において、切り替え手段65によりメモリ2に切り替えられて、メモリ2に格納されているグルーブパターンG2のデータ信号群Data(G2)のデータ信号のバッファメモリ66への送出が開始され、グルーブパターンG2描画が開始される。
このように、本実施形態の電子ビーム描画方法は、ある所定領域へのグルーブパターンの描画を開始する際に、その所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、そのデータ信号の一部を破棄して、ある所定領域の描画データ信号群に基づくグルーブパターンの描画を開始するので、回転が速くなった場合であっても、グルーブパターン同士の境界において、グルーブパターンが重なったり、後のグルーブパターンの開始位置が遅れて描画されたりすることがなく、グルーブパターン同士の境界における描画精度を向上させることができる。
また、グルーブパターンの描画データ信号群として、過剰なデータ信号を予め用意しておくことにより、回転が遅くなった場合であっても、グルーブパターンが描画されるべき領域に全域にグルーブパターンの描画をすることができ、描画抜けが生じないので、やはり、グルーブパターン間の描画精度をさらに向上させることができる。
なお、上記においては、グルーブパターンを、電子ビームの偏向走査をすることなく描画を行うものとしているが、グルーブパターンを複数の所定領域に分割した複数のグルーブエレメント(上述のグルーブパターンG1、G2…に相当)で構成し、グルーブエレメント単位で電子ビームを半径方向と直交する方向(周方向X)に偏向走査し、基板の回転に伴ってグルーブエレメントGn(n=1,2,…)を順に時間的間隔を持って描画するようにしてもよい(特開2009−122217号公報参照)。この場合も、グルーブエレメントGnの描画のための電子ビーム周方向Xへの偏向走査中に次のインデックス(次のグループエレメントGn+1の描画開始時刻)が生じた場合には、このインデックスで、次のグループエレメントGn+1の描画を開始するようにすれば、回転ムラにより線速度が速くなった場合に、グルーブエレメント間、あるいは、グルーブパターンとサーボパターンとの境界において描画が重なったり、パターンの開始位置が後方にずれたりするのを防止し、パターンの描画精度を向上させることができる。
上記実施形態においては、エンコーダパルスの立ち上がり時刻を基準とするものとしたが、エンコーダパルスの立ち下り時刻、あるいは立ち上がりおよび立ち下り時刻の両者を基準としてもよい。
なお、上記実施形態においては、描画方法として、サーボパターン中のエレメントの描画は電子ビームを周方向に高速振動させると共に、半径方向に偏向させることによりエレメント形状を塗りつぶすようにする方法について説明したが、電子ビームを半径方向に高速振動させるようにしてもよい。また。従来のON,OFF描画方法を用いて、複数回転で1トラックを描画するようにしてもよい。
具体的な例を簡単に説明する。
半径30mmの位置のトラックを描画する際、1周を250セクタ(1のデータ領域と1のサーボ領域)程度に分割し、1つのデータ領域を1つの所定領域として(複数の領域に分割することなく)描画すると、所定領域の終端において周方向に1セクタあたり90nm程度のズレが生じる場合がある。したがって、このような場合においてはグルーブパターンを描画するための描画データ信号群として余分に100nm程度以上のデータ信号を用意しておくことが望ましい。
半径30mmの位置のトラックを描画する際、1周を250セクタ(1のデータ領域と1のサーボ領域)程度に分割し、1つのデータ領域を1つの所定領域として(複数の領域に分割することなく)描画すると、所定領域の終端において周方向に1セクタあたり90nm程度のズレが生じる場合がある。したがって、このような場合においてはグルーブパターンを描画するための描画データ信号群として余分に100nm程度以上のデータ信号を用意しておくことが望ましい。
<インプリントモールドの製造方法および磁気ディスク媒体の製造方法>
次に、上記のような電子ビーム描画システム100により、前述の電子ビーム描画方法によって微細パターンを描画する工程を経て製造するインプリントモールド(凹凸パターン担持体)の製造方法およびそのインプリントモールドを用いた磁気ディスク媒体の製造方法を説明する。図7は、インプリントモールドを用いて微細凹凸パターンを転写形成している過程を示す概略断面図である。
次に、上記のような電子ビーム描画システム100により、前述の電子ビーム描画方法によって微細パターンを描画する工程を経て製造するインプリントモールド(凹凸パターン担持体)の製造方法およびそのインプリントモールドを用いた磁気ディスク媒体の製造方法を説明する。図7は、インプリントモールドを用いて微細凹凸パターンを転写形成している過程を示す概略断面図である。
インプリントモールド70は、透光性材料による基板71の表面に、図7では不図示の前述のレジスト11が塗布され、サーボパターンSおよびグルーブパターンGが描画される。その後、現像処理して、レジストによる凹凸パターンを基板71に形成する。このパターン状のレジストをマスクとして基板71をエッチングし、その後レジストを除去し、表面に形成された微細凹凸パターン72を備えるインプリントモールド70を得る。一例としては、上記微細凹凸パターン72は、ディスクリートトラックメディア用のサーボパターンとグルーブパターンとを備えたものである。
このインプリントモールド70を用いて、インプリント法によって磁気ディスク媒体80を製造する。磁気ディスク媒体80は、基板81上に磁性層82を備え、その上にマスク層を形成するためのレジスト樹脂層83が被覆されている。そして、このレジスト樹脂層83に、前記インプリントモールド70の微細凹凸パターン72が押し当てられて、紫外線照射によって上記レジスト樹脂層83を硬化させ、微細パターン72の凹凸形状を転写形成してなる。その後、レジスト樹脂層83の凹凸形状に基づき磁性層82をエッチングし、磁性層82による微細凹凸パターンが形成されたディスクリートトラックメディア用の磁気ディスク媒体80を製造する。
以上説明した、本発明の電子ビーム描画方法を用いた、インプリントモールドの製造方法は一例であり、本発明の電子ビーム描画方法を用いて微細パターンの描画を行い、凹凸パターンを形成する工程を経るものであれば上述の製造方法に限るものではない。
10 基板
11 レジスト
12 サーボ領域
15 データ領域
20 電子ビーム照射部
30 機械駆動部
37 エンコーダ
40 電子ビーム描画装置
50 データ信号生成送出装置
60 データ振り分け部
61 データ生成部
62,63 メモリ
66 バッファメモリ
70 インプリントモールド
71 基板
72 微細凹凸パターン
80 磁気ディスク媒体
81 基板
82 磁性層
83 レジスト樹脂層
G グルーブパターン
S サーボパターン
EB 電子ビーム
11 レジスト
12 サーボ領域
15 データ領域
20 電子ビーム照射部
30 機械駆動部
37 エンコーダ
40 電子ビーム描画装置
50 データ信号生成送出装置
60 データ振り分け部
61 データ生成部
62,63 メモリ
66 バッファメモリ
70 インプリントモールド
71 基板
72 微細凹凸パターン
80 磁気ディスク媒体
81 基板
82 磁性層
83 レジスト樹脂層
G グルーブパターン
S サーボパターン
EB 電子ビーム
Claims (8)
- ロータリエンコーダを備えた回転ステージ上に載置された原盤に、前記回転ステージを回転させつつ電子ビームを走査して、ディスクリートトラックメディアを形成するための周方向に交互に配置されたグルーブパターンとサーボパターンとからなる微細パターンの描画を行う電子ビーム描画方法において、
各半径位置の周方向の所定領域毎に、該所定領域が前記電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間の経過後に、該所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するものとし、
ある所定領域へのサーボパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始することを特徴とする電子ビーム描画方法。 - 前記グルーブパターンを前記周方向に複数の所定領域に区分して該所定領域毎に描画する場合、
ある所定領域へのグルーブパターンの描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域のグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部が描画されることなく残っている場合、該データ信号の一部を破棄して、前記ある所定領域の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始することを特徴とする請求項1記載の電子ビーム描画方法。 - ある所定領域にグルーブパターンを描画するためのデータ信号群として、該所定領域に対応するデータ信号よりも多くのデータ信号を用意しておくことを特徴とする請求項1または2記載の電子ビーム描画方法。
- ロータリエンコーダを備えた回転ステージおよび電子ビームを出射する電子銃を備え、該回転ステージ上に載置された原盤に、該回転ステージを回転させつつ前記電子ビームを走査してパターンの描画を行う電子ビーム描画装置と、
各半径位置の周方向の所定領域毎に、該所定領域が前記電子ビーム照射位置に位置する前に生じる所定のエンコーダパルスから所定時間の経過後に、該所定領域毎の描画データ信号群に基づくパターン描画を開始するように、前記所定領域毎の描画データ信号群を生成し、該描画データ信号群のデータ信号を前記電子ビーム描画装置に順次送出するデータ信号生成送出装置とを備え、
前記データ信号生成送出装置が、前記電子ビーム描画装置に出力する前記所定領域毎の前記描画データ信号群を、描画順序に従って交互に格納する複数のメモリを備え、前記所定領域毎にデータ信号を送出するメモリを切り替え、該メモリに格納されている描画データ信号群のデータ信号を送出するものであり、ある所定領域へのパターン描画を開始する際に、該ある所定領域の直前の所定領域にグルーブパターンを描画するための描画データ信号群のデータ信号の一部がデータ信号送出中のメモリに残っている場合であっても、前記ある所定領域の描画データ信号群を格納しているメモリに切り替え、該メモリから該ある所定領域の描画データ信号群のデータ信号の送出を開始するものであることを特徴とする電子ビーム描画システム。 - 前記データ信号生成送出装置が、前記グルーブパターンを描画するための前記描画データ信号群として、前記グルーブパターンが描画されるべき所定領域に対応するデータ信号よりも多くのデータ信号を含む描画データ信号群を生成するものであることを特徴とする請求項4記載の電子ビーム描画システム。
- 前記データ信号生成送出装置がバッファメモリをさらに備え、前記複数のメモリから該バッファメモリを介して前記電子ビーム描画装置へ送出するものであることを特徴とする請求項4または5項記載の電子ビーム描画システム。
- 請求項1から請求項3いずれか1項記載の電子ビーム描画方法により、周方向に交互に配置されるグルーブパターンとサーボパターンとからなる微細パターンを原盤に描画し、該微細パターンが描画された原盤を用いて、前記微細パターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て製造することを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
- 請求項7記載の製造方法により製造されたインプリントモールドを用い、該モールドの表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた凹凸パターンを転写する工程を経て製造することを特徴とする磁気ディスク媒体の製造方法。
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