JP2012184804A - ラチェット式テンショナ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラチェット式テンショナのラチェット機構Rは、巻掛け伝動体の張力過多時に第2反力F2がプランジャ120に作用するときに、ラチェット150が反噛合い方向に摺動してラチェット歯151がラック歯122から噛み外れることによりプランジャ120の後退を許容する。ラチェット150の外周面153は、第2反力F2が作用しているプランジャ120により後退方向に押圧されたラチェット150が傾斜状態になったときに内周面115に接触する曲面である第2摺接面156,157を有する。ラチェット150は、各第2摺接面156,157において内周面115に線接触しつつ反噛合い方向に摺動する。
【選択図】図9
Description
そして、プランジャが過飛び出し状態になると、チェーンに過大張力が発生することから、この過大張力が発生しているチェーンからの反力によるプランジャの後退が規制されると、チェーンは、過大張力が作用している状態(以下、「張力過多」という。)のまま走行することになり、チェーンへの負担や騒音が増加する。
また、本発明の別の目的は、テンショナの高圧油室内の油圧が反力に対向するのに十分でない低油圧状態にあるときに、プランジャの後退を阻止して、プランジャが後退することに起因する騒音の低減を図ることである。
d1<d2
を満たすことにより、前述した課題を解決したものである。
第2摺接面が、プランジャ側端部および反プランジャ側端部の少なくとも一方において、周方向で局部的に設けられればよいので、第2摺接面を形成するための加工が容易化され、テンショナのコストの削減が可能になる。
プランジャ側第2摺接面および反プランジャ側第2摺接面間の最小距離d2が第1摺接面の最大幅d1よりも大きいので、ラチェットが案内面に両第2摺接面で接触するときに、最小距離d2が最大幅d1以下である場合に比べて、ラチェットが過度に傾斜することが防止される。この結果、ラチェットが傾斜状態になる際に、ラチェット歯がラック歯と干渉してプランジャの後退を阻害することが防止されるので、プランジャの後退の迅速化に寄与する。
プランジャの後退によりラチェットが傾斜を開始してから、第2摺接面が案内面に接触するまでの移行が円滑に行われるので、反噛合い方向へのラチェットの摺動性が向上することにより、プランジャの後退の迅速化に寄与する。
軸平面と第2摺接面との交線である曲線が、第1摺接面から延びているクロソイド曲線であることから、前記曲線が円弧である場合に比べて、第1摺接面と第2摺接面との境界を滑らかに連続させることが容易になるので、第2摺接面が案内面に接触するまでの移行が円滑に行われることにより反噛合い方向へのラチェットの摺動性を向上させるための第2摺接面を容易に形成することができる。
また、第2摺接面は、反噛合い方向に向かうにつれて径方向内方に湾曲する度合いが大きくなることから、プランジャの後退によりラチェットが傾斜を開始してから第2摺接面が案内面に接触するまでの移行の途中での第2摺接面と案内面との接触を抑制することができるので、該移行が円滑に行われる。この結果、反噛合い方向へのラチェットの摺動性が向上することにより、プランジャの後退の迅速化に寄与する。
ラチェット付勢手段の付勢力が巻掛け伝動体からプランジャを後退させる第1反力で発生するラチェットの摺動方向の第1分力よりも大きく設定されていることにより、プランジャを後退させる反力が発生すると、ラチェット付勢手段の付勢力がラチェットに作用して、ラチェット歯がプランジャのラック歯と噛み合うため、プランジャの後退方向の動きを規制して後退変位を阻止し、巻掛け伝動体のバタツキ音を低減することができるばかりでなく、プランジャ付勢手段の付勢力が単にプランジャを突出付勢させる付勢力のみで充足されるため、特殊な高荷重対応のプランジャ付勢用ばねやオリフィス機構やオイルリザーブ機構を必要とせず、部品点数や製造コストを低減してテンショナ自体を小型化することができる。
ラック歯がラチェットの反噛合い方向に対して前進方向側に傾斜するストップ面と反噛合い方向に対して後退方向側に傾斜する摺動面とで凹凸状に形成されているとともに、ラチェット歯がラチェットの反噛合い方向に対して前進方向側に傾斜するストップ対向面と反噛合い方向に対して後退方向側に傾斜する摺動対向面とで凹凸状に形成されていることにより、張力過多時にプランジャを後退させる第2反力が発生すると、この反力がプランジャ側のストップ面を介してラチェットのストップ対向面に分力として作用し、このラチェットのストップ対向面に作用した分力がラチェットの摺動方向の更に小さな分力としてラチェットのラチェット歯をプランジャのラック歯と噛み外れるように作用し、プランジャのラック歯がラチェットのストップ対向面を経て摺動対向面を滑動して1歯分戻すため、張力過多時にラチェットのラチェット歯とプランジャのラック歯に生じがちな歯欠けなどの摩損を防止しつつプランジャの後退方向の動きを規制せず後退変位を円滑に許容することができるとともにラチェット付勢手段に対する過度の衝撃も回避して優れた耐久性を発揮することができる。
ストップ面の傾斜角が摺動面の傾斜角より小さく形成されていることにより、プランジャを後退させる第1反力が発生してもプランジャのラック歯とラチェットのラチェット歯との噛み外れが阻止するため、プランジャの後退を阻止することができる。
高圧油室内の油圧が第1反力に対向するのに十分でない低油圧状態にあるエンジン始動時にプランジャを後退させようとする第1反力が発生したときに、プランジャのラック歯とラチェットのラチェット歯との噛み外れが阻止されるため、エンジン始動時にプランジャの後退を阻止することができる。また、エンジン始動後での張力過多時にプランジャを後退させる第2反力が発生したときに、プランジャの後退が許容されるため、過大張力を速やかに減少させることができる。したがって、エンジンにおいて、前述した発明の効果が奏される。
図1は、本発明の実施例に係るラチェット式テンショナ100の使用態様図、図2は、図1のテンショナ100の断面図、図3は、図1のテンショナ100のプランジャ120が前進するときのラック歯122とラチェット歯151との噛合い状態を説明する図、図4は、エンジン始動時にプランジャ120の後退が阻止されるときのラック歯122とラチェット歯151との噛合い状態を説明する図、図5は、タイミングチェーンCの張力過多時に、プランジャ120が後退を開始するときのラック歯122とラチェット歯151との噛合い状態を説明する図、図6は、タイミングチェーンCの張力過多時に、プランジャ120が後退しているときのラック歯122とラチェット歯151との噛合い状態を説明する図、図7は、タイミングチェーンCの張力過多時に、プランジャ120が後退を終了したときのラック122歯とラチェット歯151との噛合いを説明する図、図8は、エンジン始動時にプランジャ120の後退が阻止されるときのラチェット150の状態を説明する図、図9は、タイミングチェーンCの張力過多時に、プランジャ120が後退を開始した後のラチェット150の状態を説明する図、図10は、図9のX−X線断面図である。
なお、図8,図9において、断面であるラチェット150のハッチングは省略されている。
ここで、スプロケットS1、1対の被駆動側のスプロケットS2およびタイミングチェーンCは、巻掛け伝動装置を構成する。
タイミングチェーンCの張り側にはタイミングチェーンCの走行を案内する固定ガイドGがエンジン本体に取り付けられている。
プランジャ付勢用ばね130および高圧油室131内の圧油は、プランジャ120を前進方向に付勢するプランジャ付勢手段を構成する。
径方向および周方向は、それぞれ、ラチェット150の中心軸線Lrを中心とする径方向および周方向であるとする。また、中心軸線Lrは、ラチェット150の外周面153の一部分である第1摺接面154(図8参照)の中心軸線でもある。
なお、図2には、中心軸線Lhを有する内周面115と同心状態で位置するラチェット150が示されている。
同様に、部材などにおける「前進方向側」は、該部材などにおいて、プランジャ120の進退方向で前進方向側の位置を意味し、また「後退方向側」は、プランジャ120の進退方向で後退方向側の位置を意味するものとする。
本実施例では、ハウジング110の油供給路111に繋がる油路141aを有するボールシート141と、このボールシート141の弁座141bに着座するチェックボール142と、このチェックボール142をボールシート141に押圧付勢するボール付勢用ばね143と、このボール付勢用ばね143を支持し且つチェックボール142の移動量を規制する鐘状リテーナ144とから構成された逆止弁ユニット140が採用されている。
ばね係止用プラグ170は、その外周部に、ラチェット収容穴113の反プランジャ側端部に嵌め込まれて抜止めのための弾力性を発揮する多数の突出舌片171を有する抜止め用座金であるとともに、ラチェット付勢用ばね160の付勢力Fs(図3〜図5参照)を設定する付勢力設定部でもある。
図3に示されるように、ラチェット付勢用ばね160の付勢力Fsは、エンジン始動時およびエンジン始動後の通常運転時(すなわち、タイミングチェーンCが後述する張力過多でないときのエンジン運転時)において、プランジャ付勢用ばね130および高圧油室131内の圧油の油圧に基づいてプランジャ120に作用する前進力Faにより、プランジャ120が前進して突出する際、ラック歯122およびラチェット歯151を通じラチェット150に作用する該前進力Faの反噛合い方向の分力faよりも、常に小さくなるように設定されている。
そして、分力faが、付勢力Fsと摩擦力との合力に打ち勝つと、プランジャ120は、ラチェット150を反噛合い方向に押し戻しながら可動レバーA(図1参照)に追従して前進する。なお、図3には、プランジャ120が前進する前のプランジャ120の前端部およびラチェット150の位置が二点鎖線で示されている。
ここで、前記摩擦力は、ラック歯122とラチェット歯151との間で作用する摺動方向での摩擦力である。
ここで、第1反力f1は、タイミングチェーンCの第1走行状態、例えば、高圧油室131が低油圧状態にあるときとしてのエンジン始動時、および、エンジン始動後の通常運転時での走行状態における反力Fである。
また、前記低油圧状態は、高圧油室131への前記外部圧油の供給が行われないエンジン停止中での高圧油室131への空気の侵入などに起因して、高圧油室131にプランジャ120の後退を規制するための十分な油圧が存在していない状態、つまり高圧油室131内の油圧が第1反力F1に対向するのに十分でない状態である。
ここで、第2反力F2は、タイミングチェーンCの第2走行状態、例えばエンジン始動後(したがって、高圧油室131が圧油で満たされているとき)に、タイミングチェーンCの張力変動やエンジンの温度変化によるエンジン本体やタイミングチェーンCの熱膨張などに起因して、タイミングチェーンCの伸長時にプランジャ120が過大に前進する状態(すなわち、過飛び出し状態)になって、タイミングチェーンCに過大張力が発生する張力過多時での走行状態における反力Fである。
したがって、第1反力F1は、タイミングチェーンCに発生する張力が前記過大張力よりも小さいときの反力である。そして、第2反力F2は第1反力F1よりも大きい。
テンショナ100において、図3〜図5に示されるように、ラック歯122は、ラチェット150の摺動方向に対して反噛合い方向に向かって前進方向に傾斜する歯面であるストップ面122aとラチェット150の摺動方向に対して反噛合い方向に向かって後退方向に傾斜する歯面である摺動面122bとで凹凸状に形成されている。そして、ラチェット歯151は、ラチェット150の摺動方向に対して反噛合い方向に向かって前進方向に傾斜する歯面であるストップ対向面151aとラチェット150の摺動方向に対して反噛合い方向に向かって後退方向に傾斜する歯面である摺動対向面151bとで凹凸状に形成されている。
傾斜角θは、プランジャ120に対して、第1反力F1が作用するときに、ラック歯122とラチェット歯151との噛外れを阻止して、プランジャ120の後退を阻止するように、かつ第2反力F2が作用するときに、ラック歯122とラチェット歯151との噛外れ許容して、プランジャ120の後退を許容するように実験やシミュレーションなどにより決定される。
また、傾斜角αは、プランジャ120に対して、前進力Fa(図3参照)が作用するときに、ラック歯122とラチェット歯151との噛外れ許容して、プランジャ120の前進を許容するように、実験やシミュレーションなどにより決定される。
fa=Fa×cosα×sinα
fa>Fs
となる。
f1=F1×cosθ×sinθ
f1<Fs
となる。
f2=F2×cosθ×sinθ
f2>Fs
となる。
図8,図9に示されるように、ハウジング110は、ラチェット収容穴113を形成する内周面115、すなわちラチェット収容穴113の形成面を有する。内周面115は、ラチェット150における摺接面である外周面153が摺接することによりラチェット150を摺動方向に摺動自在に案内する案内面である。そして、摺動方向での内周面115の形成範囲Nh(図2参照)は、摺動方向での外周面153の形成範囲Nr(図2参照)、すなわち摺動方向でのラチェット本体152の長さよりも大きい。
なお、図8,図9には、説明の便宜上、ラチェット150をラチェット収容穴113内で摺動自在とするための内周面115と外周面153との間の径方向の微小隙間Gが誇張されて示されている。
この第1摺接面154は、プランジャ120が前進するときに、プランジャ120により前進方向に押圧されて内周面115の前進方向側に押し付けられたラチェット150が反噛合い方向に移動するときに、および、ラチェット150が噛合い方向に移動するときに、内周面115に摺接する面でもある。
したがって、傾斜状態にあるラチェット150は、外周面153において、プランジャ側第2摺接面156が後退方向側で内周面115に接触し、反プランジャ側第2摺接面157が前進方向側で内周面115に接触する。
d1<d2
を満足するように設定される。
このように、両第2摺接面156,157間の最小距離d2が第1摺接面154の最大幅d1よりも大きいことにより、ラチェットが内周面に両第2摺接面156,157で接触するときに、最小距離d2が最大幅d1以下である場合に比べて、ラチェット150が過度に傾斜することが防止される。
さらに、最小距離d2は、傾斜状態のときにラチェット本体152のプランジャ側端部がプランジャ120と干渉することが防止される値に、かつラチェット151歯とラック歯122との噛外れがラック歯122の1歯分ずつ行われる値に設定される。
なお、図6,図7には、エンジン始動後にタイミングチェーンCに過大張力が発生したときに、プランジャ120が後退を開始する前のプランジャ120の前端部およびラチェット150の位置が二点鎖線で示されている。
このようにして、プランジャ120がラック歯122の1歯分もしくは数歯分だけ後退することにより、タイミングチェーンCの張力変動やエンジンの温度変化などで発生するプランジャ120の過飛び出し状態および該過飛出し状態により発生する過大張力が解消される。
テンショナ100において、ラチェット収容穴113に摺動自在に収容され摺動方向に移動するラチェット150と、ラチェット歯151と噛合い可能なラック歯122と、噛合い方向にラチェット150を付勢するラチェット付勢用ばねとを備えるラチェット機構Rは、エンジンの始動時などに第1反力F1がプランジャ120に作用するときに、ラチェット歯151とラック歯122との噛合いによりプランジャ120の後退を規制し、エンジン始動後のタイミングチェーンCの張力過多時に第2反力F2がプランジャ120に作用するときに、ラチェット150が反噛合い方向に摺動してラチェット歯151がラック歯122から噛み外れることによりプランジャ120の後退を許容し、ラチェット本体152の外周面153は、第1反力F1が作用しているプランジャ120によりラチェット150が後退方向に押圧されてラチェット収容穴113を形成する内周面115に押し付けられたときに、内周面115に接触する第1摺接面154と、第1反力F1よりも大きい第2反力F2が作用しているプランジャ120により後退方向に押圧されて内周面115に押し付けられたラチェット150が反噛合い方向に向かって前進方向に傾斜する傾斜状態で内周面115に接触する各第2摺接面156,157とを有し、ラチェット150の中心軸線Lrを含む軸平面Pと各第2摺接面156,157との交線は、第1摺接面154に対して、反噛合い方向に向かうにつれて径方向内方に向かって延びている曲線E1,E2であり、ラチェット150は、第2反力F2がプランジャ120に作用するときに、各第2摺接面156,157において内周面115に線接触しつつ反噛合い方向に摺動する。
この構成により、各第2摺接面156,157が、外周面153のプランジャ側端部および反プランジャ側端部において、周方向で局部的に設けられればよいので、各第2摺接面156,157が全周に亘って形成される場合に比べて、各第2摺接面156,157を形成するための加工が容易化され、テンショナ100のコストの削減が可能になる。
また、外周面153のプランジャ側端部において、プランジャ側第2摺接面156以外の部分は、前進方向側部分を含めて第1摺接面であり、同様に、外周面153の反プランジャ側端部において、反プランジャ側第2摺接面157以外の部分は、後退方向側部分を含めて第1摺接面であることにより、プランジャ120が前進するときのラチェット150の摺動性を向上させることができる。
d1<d2
を満たす。
この構成により、プランジャ側第2摺接面156および反プランジャ側第2摺接面157間の最小距離d2が第1摺接面の最大幅d1よりも大きいので、ラチェット150が内周面115に両第2摺接面156,157で接触するときに、最小距離d2が最大幅d1以下である場合に比べて、ラチェット150が過度に傾斜することが防止される。この結果、ラチェット150が傾斜状態になる際に、傾斜したラチェットがプランジャと干渉してプランジャの後退を阻害することが防止されるので、プランジャの後退の迅速化に寄与する。
この構成により、高圧油室131内の油圧が第1反力F1に対向するのに十分でない低油圧状態にあるエンジン始動時にプランジャ120の後退変位を抑制することで、タイミングチェーンCのバタツキ音を低減することができるとともに、エンジン始動後のタイミングチェーンCの過大張力によってプランジャ120の後退変位を許容することで、プランジャ120の焼き付きを防止することができる。しかも、特殊な高荷重対応のプランジャ付勢用ばねやオリフィス機構やオイルリザーブ機構を必要とせず、部品点数や製造コストを低減してテンショナ100自体を小型化することができる。
この構成により、エンジン始動後のタイミングチェーンCの張力過多時にラチェット歯151とラック歯122に生じがちな歯欠けなどの摩損を防止しつつプランジャ120の後退方向の動きを規制せず後退変位を円滑に許容できるとともにラチェット付勢用ばね160に対する過度の衝撃も回避して優れた耐久性を発揮することができる。
第2摺接面155として、プランジャ側摺接面156および反プランジャ側摺接面157のいずれか一方が設けられてもよい。この場合にも、プランジャ側摺接面156または反プランジャ側摺接面157が内周面115と線接触することにより、プランジャ120が後退するときのラチェット150の摺動性を向上させることができる。
曲線E1,E2が、第1摺接面154から延びるクロソイド曲線であることにより、曲線E1,E2が円弧である場合に比べて、第1摺接面154と第2摺接面156,157との境界を滑らかに連続させることが容易になるので、第2摺接面156,157が内周面115に接触するまでの移行が円滑に行われることにより反噛合い方向へのラチェット150の摺動性を向上させるための第2摺接面156,157を容易に形成することができる。
また、プランジャ側第2摺接面156は、噛合い方向に向かうにつれて径方向内方に湾曲する度合いが大きくなり、反プランジャ側第2摺接面157は、反噛合い方向に向かうにつれて径方向内方に湾曲する度合いが大きくなることから、プランジャ120の後退によりラチェット150が傾斜を開始してから各第2摺接面156,157が内周面115に接触するまでの移行の途中での各第2摺接面156,157と内周面115との接触を抑制することができるので、該移行が円滑に行われる。この結果、反噛合い方向へのラチェット150の摺動性が向上することにより、プランジャ120の後退の迅速化に寄与する。
曲線E1,E2は、曲率半径が無限大である直線を含む。この場合、各第2摺接面156,157は、内周面115を構成する円柱面の半径とほぼ等しい半径の円柱面の一部分である湾曲面により構成され、内周面115と各第2摺接面156,157とが面接触する。
ラチェット150が、その中心軸線Lrと直交する平面での断面形状が矩形断面を有するものであってもよい。
各第2摺接面156,157は、周方向での一部分で内周面115に線接触してもよい。
外周面153のプランジャ側端部および反プランジャ側端部の少なくとも一方において、全周に亘って第2摺接面156,157が形成されていてもよい。
曲線E1,E2は、滑らかに連続する仮想曲線上で1以上の箇所で分断された曲線であってもよい。また、第1,第2摺接面154,155は、滑らかに連続する仮想曲面上で、周方向で分断されていてもよい。
ラチェット150が摺動自在に収容される収容空間は、穴以外の空間であってもよい。
前記実施例では、ハウジング110の内周にラチェット150が嵌合したが、ハウジング110の一部分である支持部の外周にラチェット150が嵌合する場合には、請求項における案内面はハウジング110の前記支持部の外周面により構成され、請求項における摺接面はラチェット150の内周面により構成される。
進退方向と摺動方向との交差は、直交以外の形態でもよい。
巻掛け伝動体は、エンジンのタイミングチェーンC以外のチェーンまたはベルトであってもよく、また、エンジン以外の機械の巻掛け伝動装置に備えられてもよい。
110 ハウジング
115 内周面
120 プランジャ
122 ラック歯
122a ストップ面
122b 摺動面
130 プランジャ付勢用ばね
131 高圧油室、
150 ラチェット
151 ラチェット歯
151a ストップ対向面
151b 摺動対向面
153 外周面
154 第1摺接面
155,156,157 第2摺接面
160 ラチェット付勢用ばね
C タイミングチェーン
S1,S2 スプロケット
Fs ラチェット付勢用ばねの付勢力
F,F1,F2 反力
f1,f2 分力
R ラチェット機構
θ ストップ面の傾斜角
α 摺動面の傾斜角
Lr 中心軸線
P 軸平面
E1,E2 曲線
Claims (9)
- ハウジングと、前記ハウジングに進退方向に移動自在に支持されるとともに回転部材に巻き掛けられた巻掛け伝動体に張力を付与するために前記ハウジングから前記進退方向で前進するプランジャと、前記プランジャを前進方向に付勢するプランジャ付勢手段と、前記巻掛け伝動体から後退方向に作用する反力による前記プランジャの後退を規制可能なラチェット機構とを備えるラチェット式テンショナにおいて、
前記ラチェット機構は、前記ハウジングに設けられた収容空間内に摺動自在に収容されて前記進退方向と交差する摺動方向に移動するラチェットと、前記プランジャに設けられて前記ラチェットのラチェット歯と噛合い可能なラック歯と、前記ラチェット歯が前記ラック歯と噛み合うときの前記摺動方向である噛合い方向に前記ラチェットを付勢するラチェット付勢手段とを備え、
前記ラチェット機構は、前記反力が、前記巻掛け伝動体に発生する張力が過大張力よりも小さいときの第1反力であるときに、前記ラチェット歯と前記ラック歯との噛合いにより前記プランジャの後退を規制し、前記反力が、前記張力が前記過大張力であるときの第2反力であるときに、前記ラチェットが前記摺動方向での反噛合い方向に摺動して前記ラチェット歯が前記ラック歯から噛み外れることにより前記プランジャの後退を許容し、
前記ハウジングは、前記収容空間を形成するとともに前記ラチェットの摺接面が摺接することにより前記ラチェットを前記摺動方向に案内する案内面を有し、
前記摺接面は、前記ラチェットが前記噛合い方向に摺動するときに、および前記第1反力が作用している前記プランジャにより前記ラチェットが前記後退方向に押圧されて前記案内面に押し付けられたときに、前記案内面に接触する第1摺接面と、前記第1反力よりも大きい前記第2反力が作用している前記プランジャにより前記後退方向に押圧されて前記案内面に押し付けられた前記ラチェットが前記反噛合い方向に向かって前記前進方向に傾斜する傾斜状態で前記案内面に接触する第2摺接面とを有し、
前記ラチェットの中心軸線を含む軸平面と前記第2摺接面との交線は、前記第1摺接面に対して、前記反噛合い方向に向かうにつれて前記中心軸線に向かって延びている曲線であり、
前記ラチェットは、前記第2反力が前記プランジャに作用するときに、前記第2摺接面において前記案内面に線接触または面接触しつつ前記反噛合い方向に摺動することを特徴とするラチェット式テンショナ。 - 前記第2摺接面は、前記摺接面のプランジャ側端部における後退方向側部分、および、前記摺接面の反プランジャ側端部における前進方向側部分の、少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のラチェット式テンショナ。
- 前記第2摺接面は、前記摺接面の前記プランジャ側端部における前記後退方向側部分のプランジャ側第2摺接面、および、前記摺接面の前記反プランジャ側端部における前記前進方向側部分の反プランジャ側第2摺接面であり、
前記軸平面上において、中心軸線に直交する方向で第1摺接面により規定される前記ラチェットの最大幅d1と、前記プランジャ側第2摺接面および前記反プランジャ側第2摺接面の間の最小距離d2とが、次の関係式
d1<d2
を満たすことを特徴とする請求項2に記載のラチェット式テンショナ。 - 前記曲線は、前記第1摺接面に接する円弧であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラチェット式テンショナ。
- 前記曲線は、前記第1摺接面から延びているクロソイド曲線であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラチェット式テンショナ。
- 前記ラチェット付勢手段が前記ラチェットを前記噛合い方向に付勢する付勢力は、前記第1反力で発生する前記摺動方向の第1分力よりも大きく設定され、前記第2反力で発生する前記摺動方向の第2分力よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のラチェット式テンショナ。
- 前記ラック歯が、前記反噛合い方向に向かって前記前進方向に傾斜するストップ面と、前記反噛合い方向に向かって前記後退方向に傾斜する摺動面とで凹凸状に形成され、
前記ラチェット歯が、前記反噛合い方向に向かって前記前進方向に傾斜するストップ対向面と、前記反噛合い方向に向かって前記後退方向に傾斜する摺動対向面とで凹凸状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のラチェット式テンショナ。 - 前記ストップ面の傾斜角が、前記摺動面の傾斜角より小さく形成されていることを特徴
とする請求項7に記載のラチェット式テンショナ。 - 前記ハウジングは、前記回転部材を回転させるエンジンに取り付けられ、
前記プランジャ付勢手段は、前記ハウジングに形成された高油圧室に前記エンジンの運転時に供給される圧油の油圧を含み、
前記第1反力は、前記エンジンの始動時に発生する前記反力を含み、
前記第2反力は、前記エンジンの始動後に発生する前記反力を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のラチェット式テンショナ。
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