以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をこれのみに限定する趣旨のものではない。
{1. 実施形態}
図1は、実施形態に係る医療用実習装置Mの全体を示す外観図である。また、図2は、図1に示した演算処理部41に接続される構成を示したブロック図である。本実施形態に係る医療用実習装置Mは、歯科分野の模擬的な治療実習を行うのに適した構成を備えている。医療用実習装置Mは、診療器具11a〜11eを備えたトレーテーブル1と、人間の患者をモデルにした疑似生体模型2と、疑似生体模型2を固定または載置して診療を行うための診療台3と、GUI(Graphical User Interface)として各種情報を表示し、疑似生体模型2に対する各種指令を受け付ける情報処理装置4とを備えている。
トレーテーブル1は、テーブル1aの上方に表示部5が設けられており、患者のカルテを呼び出して表示したり、実習中の診療器具類の操作内容等の実習に関連する情報をモニタリングしたりすることが可能となっている。
トレーテーブル1は、診療台3にアーム(図示せず)を介して回動可能に取り付けたトレーテーブル1に設けられているテーブル1aの手前側に器具ホルダー1bを備えている。器具ホルダー1bには、診療器具11a〜11eが取り上げ/収納可能に取り付けられている。器具ホルダー1bは、図1のようにトレーテーブル1に設けられるものの他、診療台3に設けられていてもよい。
診療器具11a〜11eは、器具ホルダー1bから取り上げられたことを検出して駆動したり、フートコントローラ12の操作に基づいて駆動したり、もしくは診療器具類自体に設けられた操作手段の操作に基づいて駆動するように構成される。診療器具11a〜11eは、水供給源、エア供給源やエア吸引手段等に適宜接続されているが、この接続機構については公知の技術を含む種々の技術を利用することができる。
診療器具11a〜11eは、例えばエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース等の切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジが該当する。なお、診療器具11a〜11eは、これらに限定されるものではなく、口腔カメラや光重合照射器(いずれも図示せず)等であってもよい。これら診療器具類の作動状態は、各診療器具11a〜11eまたはトレーテーブル1等に設けられた診療器具駆動検出部111によって監視され、各診療器具類の駆動情報は情報処理装置4に収集される。
診療器具駆動検出部111は、例えば、歯切削用診療器具等の回転駆動部を有する診療器具については、回転数、または、回転数に相当する電圧値もしくは電流値等を駆動情報として取得する。またその他の駆動情報として、診療器具作動時の、エア圧、エア流量、周波数、振動数等が取得されてもよい。さらに、診療器具11a〜11eが疑似生体模型2に接触する際に作用する抑圧力(トルク値)が取得されてもよい。また、診療器具の動作を制御するフートコントローラ12の操作信号が駆動情報として取得されてもよい。
疑似生体模型2は、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成されている。疑似生体模型2は、模擬的な医療実習の内容に対応するよう、患部を含む処置部をモデルにした実習用パーツ21が所定の装着部位22(図2参照)に装着される。実習用パーツ21には、医療実習中に施術される処置(例えば治療)内容を検出するため、各種センサで構成される処置検出部211が取り付けられている。処置検出部211によって取得される検出情報は、情報処理装置4に収集される。
なお、疑似生体模型2が受け付けた処置内容を検出するための検出手段としては、様々なものが想定される。例えば歯牙模型に圧力センサや衝撃センサ等を設け、切削状態を検出するようにしたりすること等が考えられる。
前記のように検出した処置内容に応じて、頭部模型2aの顔面の表情を変化させて、実際の患者に診療を行なう際に想定される患者の表情や反応を再現することができるので、実習者に対してリアルな医療実習を提供できる。例えば、切削実習時に、歯牙に適正でない圧力や衝撃が加えられる等の不適正な処置が行なわれた場合、圧力センサや衝撃センサがその処置の状態を検知し、頭部模型2aの顔面を苦痛の表情に変えたり、苦痛を訴えるように腕模型2cを動かしたり、発声によって苦痛を訴えたりすることができる。なお、表情を表現するための構成については後述する。
疑似生体模型2は、人体に酷似した外観にするため、頭髪となるカツラが被せられるかもしくは植毛が施され、人工皮膚を被せられることが好ましい。つまり疑似生体模型2は、機械系の部品で骨格を形成したものではなく、人工皮膚や人工頭髪を被せて人体に極めて酷似させた、いわゆるアンドロイド型のロボットとして構成されることが好ましい。
疑似生体模型2は、実習中、人間の患者と同様に診療台3に載置されており、種々の処置を受けることが可能に構成されている。疑似生体模型2には、その姿勢や、顔の表情を変化させるため機械的、電気的または流体的なエネルギー(作動媒体)等を供給する駆動源が接続されている。疑似生体模型2は、診療台3と一体型もしくは連動可能に構成されていてもよいし、また独立して動作するように構成されていてもよい。
例えば、頭部模型2aには、顔面の表情を変化させる模型駆動機構2Aが内蔵される。模型駆動機構2Aは、頭部模型2aの顔面の各部位(眼球、瞼、眉、頬、口、唇および首)を駆動する駆動機構で構成されている。模型駆動機構2Aは、眉の上下駆動、瞼の開閉駆動、眼球の上下左右駆動、口の開閉駆動、首の前後左右駆動等によって、人間と同様の顔面表情を再現させる。なお、上述の顔面の各部位のうち一部のみを駆動できるように構成されていてもよい。模型駆動機構2Aの具体的構成については、本願出願人に係る特許文献1に記載された構成や、これに類似する各種技術を適宜利用することができる。
また、頭部模型2aのうち上述した駆動部位以外の場所を駆動可能にすることで、顔の表情が変化するように構成されてもよい。また、胴体模型2b、腕模型2c、脚模型2dを動作させることで、疑似生体模型2が例えば腕模型2cなどの体で反応を表現するようにすることもできる。疑似生体模型2は、模擬的に処置を受ける患者の感情を表現できるのであれば、どのように構成されていてもよい。
この模型駆動機構2Aは、例えば、実習用パーツ21に取り付けられた処置検出部211の検出信号に基づいて駆動されたり、あるいは、オペレータによる入力部43等を介した操作入力に基づいて駆動されたりする。したがって、実習者が不適切な処置(例えば、実習目的に沿わない不必要な治療行為、診療器具11a〜11e等を患部以外に不用意に接近または接触させる行為、疑似生体模型2の患部とは異なる部分に接触する行為等)を処置検出部211で検出したり、あるいはオペレータが目視で確認したりすることによって、模型駆動機構2Aを適宜駆動させ、疑似生体模型2の表情を変化させることができる。これにより、実習者は、疑似生体模型2の表情に基づいて、自身が行った行為が不適切なものかどうかをその場で認識できるため、実習者の診療技術の向上を図ることができる。
診療台3は、基台30に昇降可能に載置された座部シート3aと、その座部シート3aの後方に連接された傾動可能な背板シート3bと、その背板シート3bの上端に連接された傾動あるいは伸縮可能なヘッドレスト3cとを備えている。また好適には、診療台3の近傍に、口腔内を濯ぐ際等に給水する給水栓と排唾鉢とを備えるスピットン3dが設けられる。
診療台3には、好ましくは診療状況に応じて、最適位置に制御するため座部シート昇降手段、背板シート傾倒手段およびヘッドレスト傾倒手段が設けられる。これらの駆動は、診療台3近傍に設けられた操作スイッチ類(図示省略)で操作されてもよいし、フートコントローラ12によって制御されるようにしてもよいし、トレーテーブル1に設けた操作スイッチ類(図示省略)等によって制御されるようにしてもよい。座部シート昇降手段や背板シート傾倒手段、ヘッドレスト傾倒手段には、従来の油圧シリンダや電動モーター等を含む種々の動力源を利用し得る。
診療台3には、駆動部の動作状態を検出するための姿勢検出部311が設けられ、姿勢検出部311によって取得された検出情報が情報処理装置4に集められる。具体的に、姿勢検出部311は、角度検出センサやポテンショメータ等で構成されており、座部シートの昇降量や、背板シートやヘッドレストの傾倒量及び傾倒角度等を検出情報として情報処理装置4に送信する。
情報処理装置4は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を備えた一般的なコンピューターで構成される演算処理部41と、液晶モニター等のディスプレイで構成される表示部42と、キーボード、マウス等の入力デバイスで構成される入力部43を備えている。演算処理部41は、疑似生体模型2から提供される各種信号を演算処理し、その演算処理結果を表示部42に表示する。なお、演算処理部41によって演算処理された、疑似生体模型2から提供される各種信号の演算処理結果を、表示部5が表示できる設計にすることも可能である。また、表示部は、音声表示のような形態にすることもできる。
情報処理装置4には、実習を評価する実習評価者が評価結果を入力するための評価入力部44が有線的または無線的に接続されている。評価入力部44は、実習評価者が、実習者の行った実習内容の評価を情報処理装置4に対して入力するための入力装置である。図1に示したように、評価入力部44が複数の入力部で構成されることで、複数の実習評価者が同時に評価入力を行うことができる。ただし、この入力部は必ずしも複数設ける必要は無く、単数であってもよい。なお、評価入力の方法としては、例えば実習内容毎に予め設定された採点項目毎に、マル・バツで評価するものや、多段階評価したりするものでもよいし、また、テキスト入力を可能とすることで実習評価者のコメントを記録できるようにしてもよい。
なお、本実施例では、医療用実習装置Mに評価入力部44を設ける形態を示しているが、評価入力部44は設けられていなくてもよく、例えば、外部の評価装置によって実習内容を評価し、その評価の情報を、医療用実習装置に設けた外部データ入力部(不図示)等から、情報処理装置4に取り込むことができる構成にすることもできる。
演算処理部41には、ハードディスク等のストレージで構成される記憶部45が接続されている。図2に示したように、記憶部45には、実習用プログラムや、パーツ登録情報、制御プログラムが格納されている。また、記憶部45には、実習中に演算処理部41が取得する各種データ(実習履歴情報)が保存される。なお、記憶部45は、情報処理装置4の一部であるような構成でもよい。また、記憶部45は、診療台3の一部あるいは擬似生体模型2の一部として演算処理部41に接続されていてもよいし、インターネット等のネットワークを介して、演算処理部41と接続されていてもよい。このような場合、記憶部45に対して、演算処理部41以外の他の情報処理装置からアクセスさせることができ、データ取得の自由度を高めることができる。また、記憶部45は、複数の記憶装置で構成され、それぞれが演算処理部41とネットワークを介して接続されていてもよい。
実習用プログラムは、医療用実習シナリオの進行を制御するために、演算処理部41のCPUが実行するプログラムである。この医療用実習シナリオは、医療実習で実習者、または、実習者及び患者(疑似生体模型2)が基本的に行う行為や発声等を時系列に整理した情報である。医療用実習装置では、例えば、う蝕治療、印象採得、形成、口腔検査、麻酔、ラバーダム防湿等の模擬実習を行うための医療用実習シナリオが用意される。医療用実習シナリオについては、例えば本願出願人に係る特開2010-55068号公報に開示された医療用実習シナリオ、もしくはこれに類似するものを適宜採用することができる。
パーツ登録情報は、疑似生体模型2に装着可能な複数の実習用パーツ21に関する情報である。具体的に、パーツ登録情報は、後述する実習用パーツ21毎に割り振られた識別情報(ID情報)と、その識別情報を持つ実習用パーツ21の装着部位22、その識別情報を持つ実習用パーツ21に関連する実習用プログラム等が、実習用パーツ21の種別毎にまとめられた情報となっている。
制御プログラムは、演算処理部41が、疑似生体模型2の動作を制御したり、疑似生体模型2に装着される実習用パーツ21から各種情報を取得したり、取得した情報を処理して表示部42に表示したりする動作を実行するためのプログラムである。なお、演算処理部41は疑似生体模型2の一部あるいは診療台3の一部をなすような構成であってもよいし、別個の演算処理装置のような形態として、疑似生体模型2や診療台3に対して通信可能に接続されていてもよい。
情報処理装置4は、表示部42に各種情報を表示し、入力部43を介してオペレータの各種指令を受け付ける。情報処理装置4は、表示部42に実習時の疑似生体模型2の受診状況や評価状況等を表示するとともに、必要な情報を随時呼び出して表示する。なお、表示部42がタッチパネルディスプレイで構成されることによって、入力部43の機能の一部または全部を有していてもよい。
演算処理部41は、処置検出部211からの検出情報に基づいて、模型駆動機構2Aを制御する。なお、入力部43を介したオペレータからの操作入力に基づき、演算処理部41が模型駆動機構2Aを操作できるようにしてもよい。これによれば、実習評価者や実習教官等のオペレータが、実習者の状況を把握しながら、疑似生体模型2の表情を変化させたり姿勢を変えたりする等、疑似生体模型2の動作を制御することができる。また、疑似生体模型2の各部に内蔵した各種のセンサを呼び出して、その検知信号を表示部42等に表示できるようにしてもよい。これによれば、実習中の疑似生体模型2の受診状態をより詳細に把握することができる。
図1に戻って、診療台3には、地面に対して垂設される治療用スタンドポール6が付設されている。治療用スタンドポール6は、途中で分岐しており、それぞれの先端部に回動可能に突出したアーム61,62が設けられている。アーム61には、実習中に照明する無影灯63が設けられている。また、アーム62には、実習者の診療器具11a〜11eの扱いや動き、疑似生体模型2の姿勢、動き、表情の変化等を撮像する撮像カメラ等で構成された撮像部64が取り付けられている。医療実習中に撮像部64によって撮影された画像は、演算処理部41に送られた後、記憶部45に保存(録画)される。保存された画像は、医療実習の終了後に実習者の手技や疑似生体模型2の様子を見直す際に利用することができる。なお、治療用スタンドポールは、壁などに設けることもできる。
図1では、疑似生体模型2の上部に設けられた1つの撮像部64のみを図示しているが、疑似生体模型2を側面部から撮影するカメラや、疑似生体模型2の口腔内から撮影するカメラ等、様々なアングルから実習行為を撮影するように構成されていてもよい。またカメラを複数設けて撮影対象を三次元データとして検出するようにしてもよい。また撮影に用いるカメラは、好ましくは広角からズームまでの機能を搭載したものが用いられる。
また、アーム62には、実習者が疑似生体模型2等に向かって発する音声を集音するマイクで構成される集音部65と、音声を出力するスピーカーで構成される音声出力部66が設置されている。なお、実際の診療状況を再現するために、マイクを疑似生体模型2の耳や肩近傍等に設けてもよい。また、スピーカーは、疑似生体模型2の口内に設けられてもよい。さらにマイクやスピーカーは、診療台3等のその他の場所に設けられてもよい。
医療実習では、実習者が疑似生体模型2に対して声かけを行ったりする場合がある。この実習者の音声は、集音部65によって検出され、情報処理装置4に音声情報が送信される。また、疑似生体模型2が患者として、実習者に対して発声する場合には、演算処理部41の制御に基づいて、音声出力部66から音声が出力される。この発声内容は、実習用プログラムで規定された医療用実習シナリオに基づいている。
なお、本実施例の医療用実習装置Mでは撮像部64、集音部65、音声出力部66を搭載している形態を示しているが、これらは、装置外部に別途設ける構成でも、1つも設けない構成でもよく、自由に設計できる。
図3は、実習用パーツ21aと疑似生体模型2の接続例を示すブロック図である。図3に示した実習用パーツ21aは、図2に示した実習用パーツ21の一構成例である。
実習用パーツ21aは、図2に示した処置検出部211として機能する複数のセンサ211a,211b,211c,211dと、これらセンサ211a〜211dから出力される検出信号をプリアンプ等の処理をして情報処理装置4に順次送信する信号処理部212a,212bと、実習用パーツ21固有の情報を保持する情報保持部213と、実習用パーツ21と疑似生体模型2との間を電気的に接続するコネクタ214aとを備えている。コネクタ214aは、実習用パーツ21が取り付けられる装着部位22aに設けられたコネクタ221aに接続される。
センサ211a〜211dは、全て同種のセンサで構成されていてもよいし、異種のものが含まれていてもよい。また、図3では、センサ211a,211bとセンサ211c,211dとが、それぞれ異なる信号処理部212a,212bに接続されているが、単一の信号処理部でセンサ211a〜211dの検出信号を受けとるようにしてもよい。また、センサや信号処理部の数は、適宜増減することができる。
図4は、図3で示した実習用パーツ21aのコネクタ214aと装着部位22aのコネクタ221aを接続する配線を示す模式図である。コネクタ214a,221a間を繋ぐ配線は、一本の信号線24Lと、接地線25Lと、電源供給線26Lとで構成されている。なお、コネクタ214a,221aは、例えば、プラグとジャックとで構成され、結合部における信号線24L、接地線25Lおよび電源供給線26Lが、例えば、コネクタ214a,221aのうち一方に形成されたピンPを他方に形成された孔に挿入すること等で構成される。
信号線24Lは、情報保持部213や、信号処理部212a,212bから出力される電気信号を、情報処理装置4に向けて送信する配線である。医療用実習装置Mでは、この一本の信号線24Lを介して、各センサ211a〜211dから出力される検出信号や、情報保持部213から出力される識別情報及び校正情報が送信される。複数のセンサ211a〜211dから同時に情報処理装置4に送信される場合には、信号処理部212a,212bの動作により、各センサ211a〜211dからの検出信号が時分割的に送信される。1本の信号線24Lでデータ通信を行うようにすることで、実習用パーツ21a内の配線やコネクタ214a,221a間の接続を簡素化することができる。したがって、センサの数が増減しても、柔軟に対応することが可能となる。このような単一接点での信号の通信方法は、例えば、1−Wire(マキシム インテグレイテッド プロダクツ,インコーポレイテッドの登録商標)に関連する技術を適用することで実現することが可能である。なお、信号線24Lと電源供給線26Lとを1本の線で兼用する構成であってもよい。
なお、1本の通信線ではなく、信号処理部212a,212bや、情報保持部213から延びる信号線のそれぞれを演算処理部41に個別に接続し、各種信号をパラレルに送信するようにしてもよい。この場合、コネクタ214a,221a間のピン数の増大や配線の複雑化を招来するものの、各部から出力される信号を演算処理部41に直接送信することができる。
また、情報保持部213や、信号処理部212a,212bから出力される電気信号を、情報処理装置4に向けて送信するための信号線は、上記の1−Wireの他にも、Controller Area Network(CAN)や、Inter−Integrated Circuit(I2C:コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィの登録商標)やこれらに関連する公知の技術を適用することもできる。前記CANあるいはI2Cの技術を適用する場合、少なくとも二本の信号線と、接地線と、電源供給線とで構成される形態になる。これらの技術を用いても、実習用パーツ21a内の配線やコネクタ214a,221a間の接続を簡素化することが可能である。また通信部材も安価なため、製品のコストダウンを図ることができる。
情報保持部213は、実習用パーツ21aに割り当てられた識別情報と、実習用パーツ21aに設けられたセンサ211a〜211dの校正情報を保持している。疑似生体模型2は、様々な種類の実習用パーツ21を取り付け、または、交換することが可能となっている。識別情報は、この複数の実習用パーツ21のそれぞれについて、その個体毎に割り振られる固有のID情報であり、疑似生体模型2に装着された実習用パーツ21の個体を特定するために利用される。なお、識別情報は、実習用パーツ21の種別のみを識別できるものでもよいが、好ましくは、同種の実習用パーツ21についても相互に識別できるものとされる。
ここで、実習用パーツ21の種別としては、後述する上顎パーツ21A,21D、下顎パーツ21B,21E及び舌パーツ21C等、口腔関係の実習用パーツ21がある。もちろんこれら以外にも、耳鼻咽喉や口唇等をモデルにした実習用パーツ21、疾患のある心臓や肺等の内蔵をモデルにした実習用パーツ21等、装着部位22が相互に異なるものが用意されてもよい。
また、実習用パーツ21の種別として、同一の装着部位22に取り付けられるものの、実習内容に応じた症状をそれぞれモデルにした複数種類の実習用パーツ21が用意される場合もある。例えば、口腔関係の実習用パーツでは、う蝕治療を模擬実習するための実習用パーツ21、歯周病検査を模擬実習するための実習用パーツ21、インプラント治療を模擬実習するための実習用パーツ21等の他、窩洞形成、根管洗浄、スケーリング等の模擬実習を可能とする実習用パーツ21が同一装着部位に交換可能に取り付けられる場合がある。
本実施形態では、このように多種多様な実習用パーツ21を相互に識別するため、識別情報が各実習用パーツ21毎に割り振られている。
また、校正(キャリブレーション)情報は、各センサ211a〜211dから出力された検出信号を補正するための情報となっている。一般的に、センサは、検出感度等が個体毎に違う場合がある。そこで、演算処理部41が、この校正情報に基づき、検出信号を補正することによって、センサ211a〜211dの個体間誤差をなくすことができる。なお、校正情報は必ずしも演算処理部41に送信される必要はなく、例えば各センサ211a〜211dの検出信号が信号処理部212a,212b等で校正された後に、演算処理部41へ送信されるようにしてもよい。
このように、本実施形態では、取り付けた実習用パーツ21に応じて、自動的に演算処理部41がセンサ(処置検出部211)の校正情報を取得できるように構成されている。このため、オペレータが、各実習用パーツ21毎の校正情報を、装着の度に逐一登録する等の手作業を省略することができる。したがって、実習用パーツ21毎に検出情報の補正を容易に行えるとともに、人為的ミスの発生を抑制することができる。
医療用実習装置Mでは、コネクタ214a,221a間が相互に接続されて実習用パーツ21aと情報処理装置4との間で通信可能となったときに、演算処理部41が出力する読み取り命令に基づき、情報保持部213から識別情報及び校正情報が読み出され、演算処理部41に出力される。演算処理部41は、識別情報や校正情報に応じて、以下のような動作を実行する。
すなわち、演算処理部41は、識別情報を取得した場合には、記憶部45に格納されたパーツ登録情報に基づき、装着された実習用パーツ21を特定し、該実習用パーツが装着されたことを、表示部42を介してオペレータに通知したり、対応する実習用プログラムを選択したりする。
また、演算処理部41は、校正情報を取得した場合には、これを用いて、各センサ211a〜211dによって取得された検出信号を適宜補正する。なお、演算処理部41が各センサ211a〜211dの検出結果を記憶部45に保存する場合には、補正後の検出情報を保存するようにしてもよいし、また、補正前の検出信号をそのまま保存して、その後校正情報を使って該検出信号を補正できるようにしてもよい。
電源供給線26Lは、実習用パーツ21aに設けられたセンサ211a〜211dや信号処理部212a,212b、情報保持部213に電力を供給するための配線である。なお、実習用パーツ21a自体に電池などの電源が搭載してもよい。この場合、疑似生体模型2から電力を供給する必要がなくなるため、電源供給線26Lを省略することも可能である。
図5は、実習用パーツ21aの具体例である上顎パーツ21Aと、上顎パーツ21Aが装着される上顎装着部位22Aとを示す部分側面図である。図5中、上顎装着部位22Aの一部は、断面で示されている。
上顎パーツ21Aは、人体の上顎模型として構成されている。上顎パーツ21Aは、歯列弓状に装着された複数の人工歯牙210Aと、人工歯牙210Aの基底部近傍に内蔵された歯切削センサ211Aを備えている。また、上顎パーツ21Aは、歯切削センサ211Aから送られてくる信号を処理する信号処理部212Aと、上顎パーツ21Aに関する情報を記憶する情報保持部213Aと、上顎パーツ21Aを上顎装着部位22Aに接続するためのコネクタ214Aとを備えている。また、上顎装着部位22Aは、上顎パーツ21Aが取り付けられるパーツ取付部220Aと、コネクタ214Aに接続されるコネクタ221Aとを備えている。
複数の人工歯牙210Aのうちいくつかは、医療実習における処置(治療)対象物となっており、ここではう蝕状態を模した歯牙模型として形成されている。人工歯牙210Aに取り付けられた歯切削センサ211Aは、人工歯牙210Aが診療器具(切削器具)によって切削されるときの切削状況(深さや位置等)を検出するように構成されている。
図3では、1つの歯切削センサ211Aのみを図示しているが、複数の人工歯牙210Aに歯切削センサ211Aがそれぞれ取り付けられていてもよい。また、切削以外の処置を検出する圧力センサや衝撃センサ等を取り付けることによって、切削以外の処置内容を検出できるようにしてもよい。歯切削センサ211Aの検出方式としては、例えば、電気抵抗の変化を検出するセンサや振動、圧力、光、温度などを検出するセンサを採用することができる。
パーツ取付部220Aに対し上顎パーツ21Aを固定する方法としては、例えば、どちらか一方に設けた爪状部材を他方に引っ掛けることで固定するようにしてもよいし、ボルト部材とナット部材等の固定手段により固定してもよいし、もしくは、磁石等の磁性部材を取り付けて磁力により固定するようにしてもよい。少なくとも実習中にずれたり外れたりすることがないような、且つ着脱作業が容易な適宜の構成を採用することができる。
図6は、実習用パーツ21bと疑似生体模型2の接続例を示すブロック図である。図6に示した実習用パーツ21bは、実習用パーツ21の一構成例であり、実習用パーツ21aとほぼ同様の構成を備えているが、コネクタ214aの代わりに、無線通信を行うための送受信部214bを備えている。また、実習用パーツ21bを装着する装着部位22bは、送受信部214bと無線通信を行う送受信部221bと、装着センサ222とを備えている。なお、図3に示した実習用パーツ21aと同様の機能を有する要素については同符号を付して適宜説明を省略する。
送受信部214bは、信号処理部212a,212bに接続されている。センサ211a〜211dから出力された検出信号は、信号処理部212a,212bで処理されて、送受信部214bに入力される。また、送受信部214bは、情報保持部213に接続されており、情報保持部213に格納された識別情報、校正情報を受け取ることができる。送受信部214bは、送受信部221bとの間で所定の通信プロトコルに従って無線通信を行う。
送受信部221bは、演算処理部41に接続されており、送受信部214bから送信されたセンサ211a〜211dの検出信号や情報保持部213に格納された識別情報または校正情報を演算処理部41に出力する。また、送受信部221bは、演算処理部41からの読取信号を送受信部214bに転送する。これにより、情報保持部213に格納された各種情報が読み取られる。
装着センサ222bは、演算処理部41に接続されており、実習用パーツ21bが装着部位22bに装着されたか否かを検出する装着検出手段を構成する。装着センサ222bは、例えば光センサで構成される。具体的には、例えば、装着センサ222から出射された光が実習用パーツ21bで反射する光を検出することによって、実習用パーツ21bの装着を検出する。また、実習用パーツ21bの装着により、出射された光の光路が遮断されたかどうかを検出するようにしてもよい。もしくは、装着センサ222bを圧力センサで構成し、実習用パーツ21bの装着時に作用する圧力を検出するようにしてもよい。また装着センサ222bを、実習用パーツ21bの装着により生じる回路内の電流量の変化を検出するように構成してもよい。
なお、装着センサ222bは、実習用パーツ21b側に設けられていてもよい。この場合、装着されたことを示す信号が、送受信部214bを介して送受信部221bに転送されるようにすればよい。また、送受信部214b,221b間で通信可能となったことを演算処理部41が検出することによって、実習用パーツ21bが装着されたことを検出してもよい。このような場合、装着センサ222bを省略することも可能である。
図6に示した実習用パーツ21bは、図3に示した実習用パーツ21aとは異なり、疑似生体模型2との間で、無線通信が行われる。このため、信号線を省略することが可能となり、接続部分の構成を簡略化することができる。識別情報の無線通信を行う構成として、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)などの技術を用いることができる。
図7は、実習用パーツ21bの具体例である下顎パーツ21Bと、下顎パーツ21Bが装着される下顎装着部位22Bとを示す部分側面図である。また、図8は、図7に示した下顎パーツ21Bの上面図である。
下顎パーツ21Bは、人体の下顎模型として構成されている。下顎パーツ21Bは、歯列弓状に装着された複数の人工歯牙210Bと、いくつかの人工歯牙210B周囲の歯周ポケットに配置される歯周ポケットセンサ211Baと、口腔の咽頭部付近に設けられた印象センサ211Bbを備えている。また、下顎パーツ21Bは、歯周ポケットセンサ211Ba及び印象センサ211Bbからの検出信号を受け取る信号処理部212Bと、下顎パーツ21Bに関する情報を保持する情報保持部213Bと、信号を送受信する送受信部214Bとを備えている。下顎装着部位22Bは、下顎パーツ21Bが取り付けられるパーツ取付部220Bと、送受信部214Bとの間で信号を送受信する送受信部221Bと、装着センサ222Bを備えている。
歯周病検査に関する医療実習では、歯周ポケットの深さを測定するために、診療器具(歯周ポケット測定用プローブ)が歯周ポケットの内部に挿入される。歯周ポケットセンサ211Baは、この歯周ポケットの深さの検査が適切に行われたかどうかを検出する。歯周ポケットセンサ211Baは、電気抵抗の変化を検出するセンサや、圧力、または光を検出するセンサ等で構成することができる。
印象センサ211Bbは、咽頭部に相当する位置に設けられており、歯型を採取するために使用される印象材の流れ込みを検出することができる。図8に示した例では、印象センサ211Bbは、複数(3つ)の抵抗を使い、これらの分圧値を図示しないA/Dコンバータに入力するよう構成されている。ただし、印象センサ211Bbは、電気抵抗の変化を検出するものに限定されるものではなく、圧力、または光を検出するセンサ等で構成することができる。
上記の実施例では、下顎パーツ21Bと下顎装着部位22Bを用いて、歯周ポケットセンサ211Baや印象センサ211Bbの構成を説明したが、言うまでもなく、上顎パーツ21Aと上顎装着部位21Bも同様の構成にすることが望ましい。
下顎パーツ21Bは、歯周病検査や、印象採得や咬合採得の歯型の採取が適切に行えるかどうかの医療実習を効果的に行うための疑似生体模型である。この下顎パーツ21Bでは、送受信部214B,221B間で無線通信が行われるため、下顎パーツ21Bと下顎装着部位22Bの接続部分を接続する信号線を省略することができ、構成を簡略化することができる。
図9は、実習用パーツの1つである舌パーツ21Cを示す上面図である。また、図10は、図9に示した舌パーツ21Cと舌装着部位22Cとを示す側面図である。舌パーツ21Cは、その外側が、ゴムやシリコンや合成樹脂素材等の弾性素材で構成されており、その内部に、圧力センサ211Cと、信号処理部212Cと、情報保持部213Cと、コネクタ214Cと、アクチュエータ215,215とが設けられている。また、舌装着部位22Cは、舌パーツ21Cが装着される部位であり、コネクタ214Cが接続されるコネクタ221Cを備えている。
圧力センサ211Cは、シート状に形成されており、複数の圧力検出素子が2次元平面内に並べて設けられている。圧力センサ211Cと信号処理部212Cは、信号線によって接続されている。情報保持部213Cは、舌パーツ21Cについての識別情報と、圧力センサ211Cについての校正情報とが保持されている。
アクチュエータ215,215は、コネクタ214C,221Cを介して演算処理部41に接続されており、演算処理部41からの駆動信号に基づいて駆動制御される。アクチュエータ215,215は、電動式のものや油圧式のもの等を採用することができる。
信号処理部212C、情報保持部213C及びアクチュエータ215,215から延びる複数の信号線は、図3に示した実習用パーツ21aと同様に、一本の信号線にまとめられてコネクタ214Cに接続される。このとき、信号処理部212C、情報保持部213C及びアクチュエータ215,215は、一本の信号線を介して、演算処理部41と信号をやり取りすることとなる。なお、信号処理部212C、情報保持部213C、アクチュエータ215,215から延びる信号線を演算処理部41にそれぞれ接続し、複数の信号線を介して、各信号が個別に入力されるにしてもよい。
実習者が下顎パーツ21B等の口腔内の実習用パーツ21に対して処置を行う際、診療器具や実習者の手等が舌パーツ21Cに触れる場合がある。圧力センサ211Cは、この舌パーツ21C表面への接触を検出し、その検出信号を信号処理部212Cに出力する。信号処理部212Cは、検出信号をコネクタ214C,221Cを介して演算処理部41に転送する。演算処理部41は、送られてきた検出信号に応じて、舌を動かす駆動信号をアクチュエータ215,215に出力する。アクチュエータ215,215は、この駆動信号に基づいて、舌パーツ21Cを所定方向に曲げたり、揺動させたり、前後左右に引っ込めたり延ばしたりすることができる。
このように、舌パーツ21Cを疑似生体模型2に取り付けることによって、舌パーツ21Cに診療器具等が接触した場合に、舌パーツ21Cを駆動させることができる。ここで、舌を駆動させるのに必要な圧力の閾値を、実際の患者が不快に感じる程度の大きさに設定することで、不適切な接触に応じた舌の駆動を実現することができる。これによりリアルな医療実習が再現可能となり、実習者が不適切に舌へ接触することがないように意識して医療実習を行うことができるため、診療技術を向上させることができる。
なお、本実施形態では、コネクタ214C,221Cによって、駆動信号や検出信号を有線的に送信するようにしているが、図6に示したような送受信部214b,221bを舌パーツ21C及び舌装着部位22Cに設け、無線通信によってデータ通信できるようにしてもよい。
図11は、上顎パーツ21Dおよび下顎パーツ21Eを示す側面図である。上顎パーツ21D及び下顎パーツ21Eは、インプラントを埋め込むインプラント治療の模擬実習を行うことを目的として形成された実習用パーツ21であり、通常の全歯牙の一部が欠損した形態を有している。上顎パーツ21Dは、図5に示した上顎装着部位22Aに装着され、下顎パーツ21Eは、図7に示した下顎装着部位22Bにそれぞれ装着される。つまり、上顎装着部位22Aに対しては、上顎パーツ21A,21Dが着脱交換可能に構成されている。そして、下顎装着部位22Bに対しては、下顎パーツ21B,21Eが着脱交換可能に構成されている。
上顎パーツ21Dは、インプラントセンサ211Dと、インプラントセンサ211Dに接続される信号処理部212Dと、情報保持部213Dと、コネクタ214Dを備えている。また、下顎パーツ21Eは、インプラントセンサ211Eと、信号処理部212Eと、情報保持部213Eと、送受信部214Eとを備えている。
インプラントセンサ211Dは、例えば上顎洞の位置に設けられており、上顎洞に診療器具のドリルが達したかどうかを検出するように構成される。また、インプラントセンサ211Eは、例えば下顎神経管の位置に設けられており、神経管に診療器具のドリルが達したかどうかを検出するように構成される。なお、インプラントセンサ211D,211Eを設ける位置は、これらの位置に限定されるものではなく、その他の主要な神経管や血管等の位置であってもよい。また、インプラントセンサ211D,211Eは、電気抵抗の変化を検出するセンサや、光センサ、圧力センサ等で構成することができる。
信号処理部212D,212Eは、インプラントセンサ211D,211Eから送られてきた検出信号を処理してコネクタ214Dまたは送受信部214Eを介して演算処理部41に転送する。情報保持部213D,213Eは、それぞれ上顎パーツ21Dまたは下顎パーツ21Eについての識別情報や、インプラントセンサ211Dまたはインプラントセンサ211Eについての校正情報を保持している。情報保持部213D,213Eは、演算処理部41からの読取命令に従って、識別情報や校正情報をコネクタ214Dまたは送受信部214Eを介して演算処理部41に転送する。
なお、上顎パーツ21Dに関して、コネクタ214D,コネクタ214Dと接続する221Aの代わりに、図6に示した送受信部214b,221bを設けることによって、信号処理部212D及び情報保持部213Dと、演算処理部41とが無線通信を行うように構成してもよい。また、下顎パーツ21Eに関して、送受信部214E,221Bの代わりに図3に示したコネクタ214a,221aを設けることによって、信号処理部212E及び情報保持部213Eと、演算処理部41とが有線通信を行うように構成してもよい。
<医療用実習装置Mの動作フロー>
次に、実習用パーツ21を疑似生体模型2の装着部位22に装着する際の医療用実習装置Mの動作フローについて説明する。
図12は、新規に実習用パーツ21を装着部位22に装着する際の医療用実習装置Mの動作を示した流れ図である。なお、以下に説明する医療用実習装置Mの動作は、特に断らない限り、制御プログラムを実行する演算処理部41によって制御されるものとする。
まず、演算処理部41は、通信経路(演算処理部41と実習用パーツ21とを接続する通信線)上において、識別情報を探索する(ステップS11)。例えばユーザが、疑似生体模型2に実習用パーツ21aを装着すると、演算処理部41からの読み取り命令に基づき、実習用パーツ21aの情報保持部213aから識別情報が読み取られ、演算処理部41に送信される。
識別情報が取得されると、演算処理部41は、その識別情報が新規のものであるかどうかを判定する(ステップS12)。本実施形態に係る医療用実習装置Mでは、既に装着されている実習用パーツの識別情報は、装着パーツ情報として記憶部45等に逐次登録される。この装着パーツ情報は、装着部位22と、その装着部位22に装着された実習用パーツ21の識別情報とが関連付けられて記録されたデータとなっている。演算処理部41は、この装着パーツ情報を参照することによって、取得された識別情報が新規のものかどうかを判定する。これにより、取得された識別情報から特定される実習用パーツが、新規のものであるかどうか判定される。新規の識別情報でない場合は、演算処理部41は再度ステップS11に戻って、新規の識別情報の取得を継続して行い、新たな実習用パーツが装着されたかどうかを監視する。
ステップS12において、取得された識別情報が新規である場合には、演算処理部41は、その新規の識別情報を装着パーツ情報として記憶部45に格納する(ステップS13)。
次に、演算処理部41は、新規に取得された識別情報から該当する実習用パーツを特定し、その実習用パーツが装着されたことを表示部42に表示する(ステップS14)。もしくは、歯牙のように同種の複数の実習用パーツが密集して装着されるような場合には、その実習用パーツが装着されたことと装着された位置とを表示部42に表示すれば、より詳細な情報をユーザに通知できるので好ましい。本実施形態では、表示部42がディスプレイで構成されているため、映像で通知されることとなる。ただし、この通知方法は、映像によるものに限られるものではない。例えば、表示部42を、音声を出力する手段として構成し、音声で表示する(通知する)ようにしてもよい。
またステップS14の通知の際に、識別情報が取得された実習用パーツ21が、本来装着されるべき装着部位22とは異なる位置に装着されていることが検出された場合、表示部42にその旨が表示されてもよい。また、図4に示したコネクタ214a,221a等の接続が不十分なために、通信が途切れる等の障害が発生した場合に、実習用パーツ21の装着不良を通知するようにしてもよい。また、図6に示した実習用パーツ21bの場合に、装着センサ222bにより装着は検出されたが送受信部214b,221b間で通信できない場合、または、通信できるが装着センサ222bによる装着が検出されない場合等についても、装着不良として、表示部42を介して通知されるようにしてもよい。
次に、演算処理部41は、予め準備された実習用プログラムの中から、特定された実習用パーツに対応する実習用プログラムを選別する(ステップS15)。演算処理部41は、記憶部45に格納されたパーツ登録情報を参照することによって、実習用パーツに対応する実習用プログラムを特定する。
ステップS15において、複数の実習用プログラムが選別された場合、演算処理部41が、表示部42に実習用プログラムを選択するための選択画面を表示するようにしてもよい。この選択画面に基づいて、オペレータが、目的の実習用プログラムを選択することができるため、効率的に医療実習を行うことができる。
また、選別される実習用プログラムが1つしかない場合には、演算処理部41がその実習用プログラムの実行を開始してもよい。また、表示部42や入力部43等を介して、該実習用プログラムの実行の承認をオペレータから取得するようにしてもよい。
仮にオペレータが実習目的とは異なる実習用パーツ21を疑似生体模型2に装着した場合、演算処理部41は、オペレータが実習目的に対応しない実習用プログラムが表示部42を介してオペレータに通知することとなる。したがって、オペレータは、この通知を確認することで、装着が不適正であることを認識することができる。
図13は、疑似生体模型2から実習用パーツを取り外した際の医療用実習装置Mの動作を示す流れ図である。医療用実習装置Mは、例えば定期的に図13に示した動作フローを実行することによって、実習用パーツの取り外しが行われたかどうかを自動検出するように構成される。なお、オペレータが所定の操作入力を行うことで、実習用パーツを取り外す命令を発し、医療用実習装置Mが図13に示した動作フローを実行するようにしてもよい。
最初に、演算処理部41は、信号経路上において識別情報の検索を行う(ステップS21)。具体的には、演算処理部41は、実習用パーツの情報保持部から識別情報を取得する。この動作は、ステップS11の動作とほぼ同様である。
次に、演算処理部41は、登録された識別情報に変更されたかどうかを判定する(ステップS22)。具体的に、演算処理部41は、ステップS21にて取得した識別情報と、装着パーツ情報とを比較する。演算処理部41は、このような比較を、全装着部位22に関して順次行う。仮に、ある特定の装着部位22に関して、登録情報に登録された識別情報が取得されない場合、その装着部位22から実習用パーツ21が取り外されたと判定される。また、ある特定の装着部位22に関して、登録された識別情報とは異なる別の識別情報が取得された場合、その装着部位に装着されていた実習用パーツ21が別の実習用パーツ21に交換されたと判定される。また、未装着であった装着部位22に、新たな実習用パーツ21が装着されている場合には、ステップS13以降の動作が実行される。
ステップS22において、識別情報に変更があった場合、演算処理部41は、変更のあった識別情報について、装着パーツ情報を更新する(ステップS23)。具体的には、演算処理部41は、ステップS22において、識別情報が取得できなかった場合は、該当する識別情報を削除し、また、異なる識別情報が取得された場合は、対応する装着部位22の識別情報を新たな識別情報に更新する。
なお、装着パーツ情報は、実習用パーツ21の着脱履歴として記憶部45に格納される。このとき、装着パーツ情報とともに、実習用プログラムにしたがって実施される医療実習の内容(例えば、診療器具駆動検出部111により取得される駆動情報、疑似生体模型2の駆動情報、処置検出部211により取得される検出情報、姿勢検出部311により取得される診療台3の検出情報、撮像部64や集音部65により取得される実習状況の記録等)の一部または全部が記憶部45に格納される。このように、医療用実習装置Mは、医療実習に用いられた実習用パーツ21と、該実習用パーツ21を使って実施された実習内容とを関連付けて記録することができる。
また、演算処理部41は、装着パーツ情報を更新すると共に、装着された実習用パーツ21に変更があったことを、表示部42を介してオペレータに通知する(ステップS24)。これにより、オペレータは、実習用パーツが取り外されたり、または、実習用パーツ21が交換されたことを認識したりすることができる。なお、表示部42を、音声を出力する手段として構成し、変更があった旨を音声で通知するようにしてもよいし、映像と音声とによって通知するようにしてもよい。
なお、ステップS23,S24において、別の実習用パーツに交換されていた場合は、ステップS15で説明したように、演算処理部41が、交換後の実習用パーツ21に対応する実習用プログラムを選別するようにしてもよい。選別された実習用プログラムの中から、実行する実習用プログラムを選択する選択画面を表示部42に表示されるようにすることで、実習用パーツの交換後、効率的に医療実習を開始することができる。
このように、特定の装着部位22に対して、相互に異なる複数種の実習用パーツ21を着脱交換できるようにするとで、システムを大きく変更することなく、医療用実習装置Mを用いて様々な医療実習を実施することが可能となる。また、実習用パーツ21を着脱自在とすることで、医療用実習装置Mのメンテナンスを容易にすることができる。
従来の医療用実習装置においても、実習用パーツを疑似生体模型に装着する際、オペレータによって、その実習用パーツが装着されたことを医療用実習装置に対し通知(登録)する操作がなされる。この操作は、例えば、生体模型に装着可能な実習用パーツの一覧が画面に表示され、この一覧から装着した実習用パーツを選択することで完了する。ところが、疑似生体模型に装着可能な実習用パーツの種類が増大すると、一覧から装着した実習用パーツを特定することが煩雑となり、また、登録ミスなども発生しやすくなる。また、一度に装着する実習用パーツが複数ある場合等にも、登録作業が煩雑となり、ミスも発生しやすくなる。これに対し、本実施形態に係る医療用実習装置Mは、識別情報に基づいて、装着された実習用パーツ21を自動的に特定することが可能となるため、登録作業を簡潔に行うことができるとともに、登録ミスの発生を効果的に低減することができる。したがって、目的に応じた医療実習を円滑に、且つ適正な実習環境の下で、効率よく行うことができるようになる。
{2. 変形例}
上記実施形態に係る実習用パーツ21の誤装着を防止するために、取付部の構造やコネクタ形状を、装着部位22毎に固有のものとしてもよい。このように構成することで、例えば、上顎パーツ21Aと下顎パーツ21B等、形態が似ているものの装着部位が異なるような実習用パーツ21が複数ある場合に、誤装着を効果的に防止できる。
また、上記実施形態では、上顎パーツ21Aや下顎パーツ21Bを別体として構成されているが、これらが一体型として構成されていてもよい。また、上顎パーツ21Aや下顎パーツ21B等を、例えば、男性、女性、成人、小人、老人、狭小顎,反対咬合等に合わせて構成してもよい。
また、図9、10に示した舌パーツ21Cは、主に患者の舌の動きを再現することを目的として設けられている。しかしながら、この舌模型21Cの代わりに、舌癌、舌苔、舌の口内炎等の症状をモデルにした舌模型を用意し、これらを舌装着部位22Cに装着することによって、舌の症状特有の治療を目的とした医療実習を効果的に行うことができる。また、大きい舌や小さい舌、長い舌や短い舌、厚い舌や薄い舌、幅広の舌や幅狭の舌など、様々な形状の舌パーツを舌装着部位22Cに取り付けるようにしてもよい。
また、実習用パーツ21として、例えば、乳癌、乳腺症、乳腺嚢胞等の症状をモデルにした胸部模型をそれぞれ用意し、胸部の装着部位にそれぞれに装着することによって、胸部の触診や外科的治療などの模擬実習を効果的に行うことができる。
また、上記実施形態の疑似生体模型2は、患者の身体全体をモデルにした模型としているが、患者の身体の一部として構成されていてもよい。また、疑似生体模型2は、何らかの症状を持った患者をモデルにしたものに限られるものではなく、健康な人の身体をモデルにしたものであってもよい。このような生体模型は、各種検査等を目的とする医療実習を行う際に特に有用である。さらに、疑似生体模型2は人間をモデルにしたものに限られるものではなく、人以外の動物をモデルにした模型であってもよい。このような生体模型は、獣医学分野の診療を模擬的に行う医療実習等において有用である。
また、情報保持部213を、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリで構成することによって、情報保持部213が保持する識別情報や校正情報等のデータを適宜書換えできるようにしてもよい。特に情報保持部213をEEPROMで構成した場合、演算処理部41の制御に基づいて、情報保持部213の情報を書き換えるようにしてもよい。このときに、例えば1−Wire、CAN、I2C等の公知の技術を適用することによって、図3に示した実習用パーツ21a実習用パーツ21a内部、および、実習用パーツ21aの接続部の配線を簡素化でき、センサの数の増減にも柔軟に対応できる。なお、情報保持部213は、EEPROMに限定されるものではなく、その他記憶手段(フラッシュメモリ等)を採用することも可能である。
また、実習用パーツ21の形態に応じて、情報保持部213の情報を書き換えるための書換装置を別途設けてもよい。例えば、図3に示した実習用パーツ21aのような場合、コネクタ214aを利用して有線的に情報保持部213のデータを書き換える書換装置を採用することができる。また、図6に示した実習用パーツ21bのような場合、送受信部214bを利用して無線的に情報保持部213の情報を書き換える書換装置を採用することができる。GUIの操作などによって実習用パーツの識別情報等の書換えや消去が可能な構成にすれば、例えば、歯牙の実習用パーツを、う蝕治療用のものから、印象採得用のものに取り替えたときに、その変更した情報をGUIで入力操作して実習用パーツの情報保持部213の情報を書換えすることができるので、簡素な通信形態のまま容易に情報の更新が可能となるという効果が更に奏される。
また、実習用パーツ21aについて、センサ211a〜211dと、信号処理部212a,212bと、情報保持部213と、コネクタ214a間の通信手段には、上記のような1−Wireを信号線として使用することで実習用パーツ21a内の配線を簡素にすることができるので望ましい。これ以外にも信号線には上記のようなCAN、I2C等の公知の技術を用いることもできる。実習用パーツ21b(後述の図6参照)のセンサ211a〜211dと、信号処理部212a,212bと、情報保持部213と、送受信部214b間の通信手段についても、実習用パーツ21aと同様の構成が可能である。
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の医療用実習装置は、実施形態の医療用実習装置Mに対応し、
以下同様に、
疑似生体模型は、疑似生体模型2,頭部模型2aに対応し、
実習用パーツは、実習用パーツ21,21a,21b、上顎パーツ21A,21D、下顎パーツ21B,21E、舌パーツ21C、または、人工歯牙210A,210Bに対応し、
識別情報保持部は、情報保持部213,213a,213A〜213Eに対応し、
出力部は、コネクタ214a,214A,214C,214Dや、送受信部214b,214B,214Eに対応し、
受付部は、コネクタ221a,221A,221C,221Dや、送受信部221b,221B,221Eに対応する。
しかしながら、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。