以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
{1. 実施形態}
{1.1. 医療用実習装置Mの構成及び機能}
図1は、実施形態に係る医療用実習装置Mの概略図である。図1に示す医療用実習装置Mは、診療器具11a〜11eを備えた器具台1と、患者を模した疑似患者体2と、疑似患者体2を固定または載置して診療を行うための診療台3と、GUIとして各種情報を表示し、疑似患者体2に対する各種指令を受け付ける情報処理装置4とを備えている。本実施形態に係る医療用実習装置Mは、歯科分野の実習を行うのに適した構成となっている。
また器具台1は、テーブル1aの上方に表示部5が設けられており、患者のカルテを呼び出して表示したり、実習中の診療器具類の操作内容等の実習に関連する情報をモニタリングしたりすることが可能となっている。
器具台1は、診療台3にアーム(図示せず)を介して回動可能に取り付けたテーブル1aの手前側に器具ホルダー1bを備えている。器具ホルダー1bには、診療器具11a〜11eが着脱可能に取り付けられている。器具ホルダー1bは、図1のように器具台1に設けられるものの他、診療台3に設けられていてもよい。
診療器具11a〜11eは、例えばエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース等の切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジ等が該当する。また診療器具11a〜11eは、上記以外にも口腔カメラや光重合照射器(いずれも図示せず)が含まれていてもよい。さらに、これら診療器具類の作動状態を検出するために、器具ホルダー1b等に診療器具回路111が設けられている(図2のブロック図参照)。
各診療器具11a〜11eは、器具ホルダー1bから取り上げられたことを検出して駆動したり、フートコントローラ12aの操作を検出して駆動したり、診療器具類自体に設けた操作手段の操作を検出して駆動するように構成されていてもよい。
また、診療器具回路111は、診療器具11a〜11eの回転数又は回転数に相当する電圧値、電流値、又は診療器具類が作動するエア圧、エア流量、周波数、振動数、又は診療器具11a〜11eが疑似患者体2に接触する際の抑圧力や診療台3に接続されたフートコントローラ12aの操作信号を検出する。診療器具11a〜11eは、水供給源、エア供給源やエア吸引手段に接続されているが、この接続機構については公知の技術を含む種々の技術を適宜利用することができる。
疑似患者体2は、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成され、その内部には、疑似患者体2の姿勢、表情を変化させたり、疑似患者体2に対する診療状態を検出したり、また検出した情報を情報処理装置4へ送ったりする疑似患者体駆動回路21が設けられている(図2のブロック図参照)。
疑似患者体2は、人体に酷似した外観にするため、頭髪となるカツラが被せられるかもしくは植毛が施され、人工皮膚を被せられていてもよい。このように疑似患者体2は、機械系の部品で骨格を形成したものではなく、人工皮膚や人工頭髪を被せて人体に極めて酷似させた、いわゆるアンドロイド型のロボットとして構成されていてもよい。
疑似患者体2は、実習中、人間の患者と同様に診療台3に載置されており、種々の処置を施すことが可能となっている。疑似患者体2には、その姿勢や、顔の表情を変化させるため機械的、電気的あるいは流体的なエネルギー(作動媒体)等を供給する駆動源が接続されている。疑似患者体2は、診療台3と一体型或いは連動可能に構成されていてもよいし、また独立して動作するように構成されていてもよい。なお、疑似患者体2の構成や駆動等については、国際公開第2008/023464号パンフレットに記載された構成や、これに類似する各種技術を適宜利用することができる。
診療台3は、基台30に昇降可能に載置された座部シート3aと、その座部シート3aの後方に連接された傾動可能な背板シート3bと、その背板シート3bの上端に連接された傾動可能なヘッドレスト3cとを備えている。図示を省略するが、診療台3には診療状況に応じた最適位置に制御するため座部シート昇降手段、背板シート傾倒手段およびヘッドレスト傾倒手段が設けられていてもよく、またフートコントローラ12によってその動作を制御するようにしてもよい。このような座部シート昇降手段や背板シート傾倒手段、ヘッドレスト傾倒手段には、従来の油圧シリンダや電動モーター等を含む種々の動力源を利用し得る。また診療台3には、これら駆動部の動作状態を検出するために診療台回路31が設けられている(図2のブロック図参照)。
診療台3の近傍には、口腔内を濯ぐ際等に給水する給水栓と、排唾鉢とを備えるスピットン3dが設けられていてもよい。
情報処理装置4は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、ハードディスク等のストレージを備えた一般的なコンピューターである情報処理本体部41と、液晶モニター等の表示部42と、キーボード、マウス等の入力部43と、実習を評価する実習評価者が評価結果を入力するための評価入力部44とで構成されている。
評価入力部44は、実習評価者が、実習者の行った実習内容の評価を情報処理装置4に対して入力する入力装置である。評価入力部44は、情報処理本体部41にケーブルによって有線接続されていてもよいし、無線接続されていてもよい。また評価入力部44は、複数設けてもよい。評価入力部44を複数設けることによって、同時に複数の実習評価者が評価を行うことができる。
情報処理装置4は、表示部42に各種情報を表示して、キーボードやマウス等の入力部43を介して各種指令を受け付ける。情報処理装置4は、表示部42に実習時の疑似患者体2の受診状況や評価状況等を表示するとともに、必要な情報を随時呼び出して表示する。
なお、擬似患者体2の受診状況を検知するために、様々な検知手段が考えられる。例えば模型歯牙に圧力センサーや接触センサーを設けて各種ハンドピースによる切削状態を検知したり、光学センサーを用いて実習者の動きを直接検知したりすること等が考えられる。
また診療器具回路111、診療台回路31、擬似患者体駆動回路21等、装置の駆動制御に用いられる要素は、診療器具11a〜11d、診療台3、擬似患者体2等を駆動制御するとともに、駆動信号を検出する手段として利用できる。これらはいずれも検知信号に基づき、検診の内容を評価結果に反映する検診検知部として機能し得る。
また情報処理装置4は、情報処理本体部41に特定のプログラムPGを内蔵しており、そのプログラムPGを適宜実行することによって、疑似患者体2を作動させることができる。したがって、例えば実習教官等のオペレーターが、実習者の状況を把握しながら、表情を変化させたり姿勢を変えたりする等、疑似患者体2の動作を制御してもよい。また情報処理装置4は、疑似患者体2の各部に内蔵した各種のセンサーを呼び出して、検知信号を表示部42等にモニター表示させることもできる。
また、診療台3には、地面に対して垂設される治療用スタンドポール6が付設されている。治療用スタンドポール6は、途中で分岐しており、それぞれの先端部に回動可能に突出させたアーム61,62が設けられている。アーム61には、実習中に照明する無影灯63が設けられている。また、アーム62には、実習者の診療器具11a〜11eの扱いや動き、疑似患者体2の姿勢、動き、表情の変化等を撮像する撮像カメラ等で構成されうる撮像部64が取り付けられている。
なお、図1では、疑似患者体2の上部に設けられた1つの撮像部64のみを図示しているが、疑似患者体2を側面部から撮影するカメラや、疑似患者体2の口腔内から撮影するカメラ等、様々なアングルから実習行為を撮影するように構成されていてもよい。またカメラを複数設けて撮影対象を三次元データとして検出するようにしてもよい。また撮影に用いるカメラは、好ましくは広角からズームまでの機能を搭載したものが用いられる。
また、アーム62には、実習者が疑似患者体2等に向かって発する音声を集音するマイクで構成される集音部65と、音声を出力するスピーカーで構成される音声出力部66が設置されている。なお、実際の診療状況を再現するために、マイクを疑似患者体2の耳や肩近傍等に設けてもよい。またスピーカーを疑似患者体2の口内に設けてもよい。さらにマイクやスピーカーを、診療台3等のその他の場所に設けてもよい。
医療用実習装置Mは、実習者が診療実習中に着座するオペレーションスツール7を備えていてもよい。オペレーションスツール7は、コロを備えており、診療台3の周りを自由に移動することができる。また、オペレーションスツール7には、その位置を検出する位置検出部71が設けられてもよい。位置検出部71がオペレーションスツール7の位置を検出して情報処理本体部41に送信することによって、実習中(シナリオ実行制御部103が実習シナリオ9を実行している間)の実習者の位置を記録することが可能となる。
なお、オペレーションスツール7の位置を検出する方法としては、例えば特開2000−166995号公報に開示されている技術を利用することが可能である。具体的には、オペレーションスツール7に位置発信部をとりつけ、この発信部が発信する信号を位置受信部によって受信して、オペレーションスツール7の位置を検出すればよい。また、テーブル1aとオペレーションスツール7とを連動させるように構成し、テーブル1aの位置を検出することによって、間接的にオペレーションスツール7の位置を検出するようにしてもよい。
さらに実習者の他に診療補助者が実習に参加する場合には、診療補助者が着座するアシスタント用スツールを別途設けてもよい。そして実習中におけるアシスタント用スツールの位置も、オペレーションスツール7と同様に記録するようにしてもよい。
図2は、医療用実習装置Mが備える構成の接続関係を示すブロック図である。シナリオ設定部101、シナリオ実行制御部103、評価演算部105、駆動再現部107は、情報処理本体部41が備えるCPUが記憶部411に格納されたプログラムPGをメモリ上で実行することにより実現される機能ブロックである。
記憶部411は、情報処理本体部41の筐体内に内蔵された記憶装置や、情報処理本体部41に接続される外部の記憶装置等である。記憶部411は、プログラムPG、実習シナリオ9、実習履歴情報411a、実習評価情報411bを格納する。
図3は、実習シナリオ9に含まれるシナリオを示す図である。実習シナリオ9は、医療実習で基本的に実習者、または実習者及び患者が行う行為(発声も含む)をまとめた情報である。実習シナリオ9は、主に、医療面接についての複数の医療面接シナリオ91Aと、医療面接の後に実施される診療(面接後診療)に関する複数のシナリオ(面接後診療シナリオ92)とが含まれる。
また図3に示すように面接後診療シナリオ92には、実習者が疑似患者体2に接したり装置等を使って病状を調べたりする検診(または診察)に関する複数のシナリオ(検診シナリオ91B)と、医療面接や検診によって特定された患部に対して処置を施す治療に関する複数のシナリオ(治療シナリオ91C)とで構成されている。
シナリオ設定部101は、実習シナリオ9の中から、特定の医療面接シナリオ91Aと特定の面接後診療シナリオ92とを、入力部43からの操作入力に基づいて設定する。シナリオ設定のパターンとしては、以下のような組合せが例示的に挙げることができる。
●パターン1:医療面接シナリオ−検診シナリオ−治療シナリオ
●パターン2:医療面接シナリオ−検診シナリオ
●パターン3:医療面接シナリオ−治療シナリオ
パターン1は、医療面接、検診、治療といった一般的な一連の診療の流れを実習する際に選択されるシナリオの組合せである。またパターン2は、医療面接の後に、検診によって患部を特定したり、さらには治療方針を決定したりするまでの診療を実習するシナリオの組合せである。また実際の診療では、医療面接、検診によって診断を行ったものの、自身が十分な治療設備等を持っていない等のため、他の診療所・医院(歯科医院を含む)での治療を勧める場合もある。パターン2では、このような場面を想定して訓練を行うことが可能である。
さらにパターン3は、医療面接の後に、検診を行わずに治療を行うシナリオの組合せである。実際の診療では、例えば前回来院時に齲触を除去した後、仮の充填物を入れており、今回は正式な充填物を充填するといった状況が想定され得る。パターン3は、このような診療形態を実習する際に選択されるシナリオの組合せとなっている。
図2に戻って、実習履歴情報411aは、シナリオ設定部101によって設定された実習シナリオ9に基づいて行われる実習行為の履歴情報(実習履歴)である。実習履歴情報411aには、実習シナリオ9に基づいて行われた実際の実習行為が含まれ、実習シナリオ9を構成する情報以外の、実習者、又は実習者及び疑似患者体2が行う行為及び発声も含まれることになる。
また疑似患者体駆動回路21から送られてくる情報、または、診療台回路31によって検出される診療台3の駆動状態等に基づいて、実習中における実習者や疑似患者体2の姿勢状態が実習履歴情報411aとして記録される。また好適には、位置検出部71によって検出されるオペレーションスツール7の位置を、実習者の位置として実習履歴情報411aとして記録される。
実習評価情報411bは、評価入力部44等から入力された実習評価者による評価結果や、評価演算部105が所定の評価基準に基づいて評価演算した結果が、実習履歴情報411aに関連付けられた情報である。
入力部43は、情報処理本体部41で実行する処理や疑似患者体2の動作を制御するための各種設定値を入力する手段である。例えば、疑似患者体2は誤反応を起こさないセンサーや機構を備えているが、実習者の診療行為によっては誤動作を生じる場合がある。そこで好ましくは、当該誤動作の修正を第三者が入力部43を用いて行えるように医療用実習装置Mが構成される。
また、第三者が入力部43を使用して疑似患者体2を制御することで、実習者や評価者に対して予期せぬ状況が起きた際の判断能力や応対の訓練をすることもできる。予期せぬ状況の一例として、例えば、疑似患者体2が、不意に腕2cを動かしたり、くしゃみや咳等の生理現象を起こしたり、実習者に対して話しかけてきたり、等の制御が可能である。このように、医療用実習装置Mの行為が実習時に加えられることもある。すなわち、実習シナリオは予め記憶部411に格納されて準備されている行為のみからなるのではなく、後に加えられる行為も含み得るものである。
なお、実習者に対する発話行為を疑似患者体2に実行させる場合、音声データを入力するPC用マイク(図示せず)を用いてもよい。例えば第三者がPC用マイクを通じて入力した音声データを、音声出力部66から音声出力させ、患者の発話行為に対する実習者の応対訓練を実施することも可能である。
シナリオ実行制御部103は、集音部65で入力された実習者の発声等を音声認識処理し、認識された内容に対して、音声出力部66から回答を行うように構成されている。具体的に、シナリオ実行制御部103は、医療面接シナリオ91Aの実行中に、医療面接で実習者が質問した項目(問診項目)を認識し、認識された該問診項目に対して医療面接シナリオ91Aに従って応答するように構成されている。このように本実施形態では、集音部65と音声出力部66とによって、実習者の問診に対してシナリオ実行制御部103により制御されて応答する応答部が構成されている。なお、音声認識処理については、公知の技術を含む種々の技術を適用することが可能である。
疑似患者体駆動回路21は、疑似患者体2を制御するための駆動回路である。シナリオ実行制御部103は、疑似患者体駆動回路21を駆動することによって、入力部43から入力される情報や実習シナリオ9に基づき、疑似患者体2に設けられた各駆動部を駆動する。また、疑似患者体駆動回路21は、検診シナリオが実行されている際に、疑似患者体2に設けられたセンサーが検知した検診検知信号を情報処理本体部41に送信する。したがって本実施形態の疑似患者体駆動回路21は、検診検知部として機能する。
診療器具回路111は、診療器具11a〜11eから送られてくる情報を信号として情報処理本体部41に送信する。また診療台回路31は、診療台3の駆動状態を示す駆動信号を情報処理本体部41に送信する。
測定機器評価入力部8は、評価者が入力する評価結果以外に、外部の測定装置で測定した結果等を入力する装置であり、実習において作成した評価対象物(例えば、実習で削った歯)を所定の測定器で評価した結果を情報処理本体部41に入力する。情報処理本体部41は、測定機器評価入力部8から入力された測定結果や評価結果を、実習評価情報411bとして記憶部411に記憶する。
駆動再現部107は、記憶部411に格納された実習履歴情報411aのうち、疑似患者体2の駆動情報に基づいて、実習中における疑似患者体2または診療台3を時系列にしたがって駆動することによって実習を再現する。これにより、実習中の各時点で、患者の姿勢が適切かどうか、を後から具体的に見直すことが容易となる。なお、撮像部64等で撮影した実習状況を表示部42や表示部5等で再現することも可能であるが、実際に疑似患者体2等を動かすことによって、実習内容をより具体的に見直すことが可能となる。
なお、駆動再現部107は、実習履歴情報411aのうちの診療台3の動作状態を示す情報(駆動情報)に基づいて、診療台3の駆動を再現するようにしてもよい。この場合も、診療台3に載置された実習中の疑似患者体2の姿勢を再現し得る。
また医療用実習装置Mは、好適には、オペレーションスツール7の位置を再現して、実習者の位置が適切かを確認し得るように構成される。この構成については、後に詳述する。
また図示を省略するが、各種診療器具11a〜11eの取り出し状況をランプ等で表示するようにし、用いた診療器具が適切か、また、用いるタイミングが適切か等をランプ表示の再現によって確認できるようにしてもよい。
図2では、診療器具回路111を情報処理本体部41に接続しているが、疑似患者体駆動回路21を介して診療器具回路111を情報処理本体部41に接続するようにしてもよい。また図2では、診療台回路31を情報処理本体部41に接続しているが、疑似患者体駆動回路21を介して診療台回路31を情報処理本体部41に接続してもよい。
{1.2. 医療用実習装置Mの動作}
図4は、医療用実習装置Mの動作を示す流れ図である。なお、以下に説明する医療用実習装置Mの動作は、特に断らない限り、情報処理本体部41によって制御されるものとする。
まず医療用実習装置Mは、シナリオ設定部101によって実習シナリオ9の組合せを設定する(ステップS101)。具体的には、それぞれが複数種ある医療面接シナリオ91A、検診シナリオ91B、治療シナリオ91Cの中から、どの特定のシナリオを実行するかが設定される。特定の医療面接シナリオ91Aと特定の面接後診療シナリオ92との組合せの設定入力を、入力部43で受け付けるようにした場合、入力部43はシナリオ設定入力部として機能する。
図5は、医療面接シナリオ91A、検診シナリオ91B、治療シナリオ91Cの具体例を示す図である。図5に示すように、医療面接シナリオ91A、検診シナリオ91B、治療シナリオ91Cには、それぞれ複数のシナリオA001〜A003,B001〜B003,C001〜C004が用意されている。もちろん用意されるシナリオはこれだけに限定されるものではなく、より多くのシナリオが用意されることが望ましい。
図5では、各シナリオの下にそれぞれのシナリオの内容を記載している。例えばシナリオA001は、「痛みあり。ぐらつきなし。」となっており、シナリオA001が選択された場合には、痛みがあるがぐらつきはないという内容の応答を、実習者が患者(疑似患者体2)から聞き出せるようなシナリオで構成されている。同様にシナリオA002が選択された場合は、「痛みあり。ぐらつきあり。」という内容の応答を、実習者が患者から聞き出せるようにシナリオが構成されている。
検診シナリオ91Bは、医療面接で患者から聴き出した情報を元に、実際に必要な検診を行って、患部や病状等を特定するために準備されたシナリオ群である。例えばシナリオB001では、歯LH7が齲蝕であり、歯LH6が齲蝕であることを実習生が特定し得るようにシナリオが構成されている。
なお、「LH6」や「LH7」は、複数ある歯牙を特定する識別記号であり、「L」は「左」、「H」は「上」をそれぞれ意味している。また、右端の数字は歯列中央から数えた場合の歯の位置を示している。すなわち、歯LH7は、第三大臼歯(通称親知らず)を除いて左上の一番奥の歯を指しており、歯LH6は、その一つ内側の歯を指す。
治療シナリオ91Cは、医療面接や検診によって特定された患部を、その症状にあわせて治療を実施するように構成されたシナリオである。例えばシナリオC001は、歯LH7、LH6に対して切削による治療を行うように構成されたシナリオとなっている。
図5に示す破線は、互いに組合せ得るシナリオ同士を結び付けたものである。例えば特定の医療面接シナリオ91AとしてシナリオA001が選択された場合、この医療面接につながる特定の検診シナリオ91B(ここでは、シナリオB001またはシナリオB002)が選択される。さらにシナリオB001が選択された場合には、この検診シナリオ91Bに合った特定の治療シナリオ91C(ここではシナリオC001)が選択される。
シナリオA003は、「痛みはなく、詰め物外れた。」ということを、実習者が患者から聴き出す医療面接シナリオ91Aである。シナリオA003の場合、特別な検診をすることなく、患者からの聴き取りやカルテ等での治療歴の確認のみで患部を特定し得る。この診療実習では、特定の検診シナリオ91Bは選択されずに、特定の治療シナリオ91C(ここでは、シナリオC004)を選択される場合もある。この{シナリオA003−シナリオC004}の組合せは、上記した診療形態の「パターン3」に相当するものとなっている。
図4に戻って、ステップS101にて実行すべきシナリオが設定されると、選択された特定のシナリオが記憶部411から読み出され、シナリオ実行制御部103によるシナリオ実行の準備が行われる。
次に医療用実習装置Mは、実習評価者による評価を行うかどうかを確認する(ステップS102)。このステップでは、医療用実習装置Mを用いて行われた実習者の実習行為に対して、実習評価者が評価した結果を入力する実行モード(マニュアル評価モード)か、医療用実習装置Mが予め定められた基準に基づいて、自動で評価する実行モード(オート評価モード)のどちらかを選択させる、選択ダイアログを表示部42等に表示し、オペレーターに選択させる。この選択は、実習評価者が行う場合もあれば、実習者が行う場合もあり、あるいはどちらにも該当しない者が行う場合もある。このオート評価モードは、実習者が医療用実習装置Mを用いて実習シナリオに基づく医療行為を自ら実習訓練(自習訓練)する実行モード(自習モード)として用いてもよい。
マニュアル評価モードが選択された場合(ステップS102においてYES)、医療用実習装置Mは、評価入力部44を介する評価入力の受付を開始する(ステップS103)。そして医療用実習装置Mは、ステップS101で設定された特定の医療面接シナリオ91Aの実行を開始する(ステップS104)。なお、実習中における評価者による評価の入力情報は、実習評価情報411bとして記憶部411に逐次記憶される。
一方、ステップS102においてオート評価モードが選択された場合(ステップS102においてNO)、そのままステップS104へ進む。このオート評価モードでは、基本的に実習評価者は介入しないが、医療用実習装置Mが予め定められた基準に基づいて、自動で評価する評価結果が出力される。この評価結果は、実習評価情報411bとして記憶部411に逐次格納される。
なお、図示を省略するが、実習行為の評価を分担して、ある実習行為については自動の評価で、他の実習行為については評価者による評価で行うようにしてもよい。また、自動評価モードであっても、実習評価者が医療用実習装置Mの自動評価が不適切と判断すれば修正できるようにしてもよい。
また、評価を伴わない訓練のみができるようにしてもよい。この場合、記憶された実習履歴情報411aに基づいて、実習後にその実習の進行状況を表示部5,42等に表示させて確認可能にしたり、駆動再現部107が実習履歴情報411aに基づいて各構成の駆動を再現することで実習の確認を可能にしたりすることによって、実習者が自身の実習中の行為の適切さを確認しやすくできる。
このように、医療用実習装置Mは、実習評価者が評価を行うマニュアル評価を実施することも可能であるし、また、医療用実習装置Mが所定基準に基づいて自動で評価を行うオート評価を実施することも可能である。なお、この評価基準の具体例については後に詳述する。
ステップS104では、シナリオ実行制御部103の制御に基づいて、医療用実習装置Mが特定の医療面接シナリオ91Aを実行する。医療面接シナリオ91Aについて、図6を参照しつつ説明する。
図6は、図5に示すシナリオA001の詳細を示す図である。シナリオA001は、上述したように、「痛みあり、ぐらつきなし」という内容のシナリオとなっており、図6(a)に示すように、10個の問診項目(DA1−1〜DA1−10)と、各問診項目に対する応答(PA1−1〜PA1−10)とがあらかじめ定められている。
医療面接では、実習者の発した音声が集音部65で集音され、それが情報処理本体部41において音声認識処理される。そして認識された音声が、シナリオA001の問診項目のいずれかに該当すると判断されるとき、シナリオ実行制御部103の制御に基づいて概問診項目に対応する応答が音声出力部66から出力される。例えば問診項目DA1−2(「どのへんが痛みますか?」)が認識された場合、これに対応する応答PA1−2(「左上の奥歯です。」)が音声出力される。このようにして、実習者と医療用実習装置M(疑似患者体2)との間で、音声を介した医療面接が進行される。そして、実習者が発した問診項目と、医療用実習装置Mが発した応答と履歴が、それぞれ時系列的にまとめられて、実習履歴情報411aとして記憶部411に逐次記憶される。
なお、音声の認識精度については、ある程度の認識誤差を含むように設定されていることが好ましい。例えば認識される音声の語尾については、ある程度変更があっても、無視するか、認識処理の重みを低くすることによって、全体で問診項目と一致するかどうかを判定するようにしてもよい。またあらかじめ各問診項目について、言い換えたバリエーションを登録しておくことによって、異なる言い回しで問診された場合でも同一の問診内容と認識し得るように設定しておくことも妨げられない。
図6(b)は、シナリオA001に従って実行される医療面接について、評価演算部105が評価する際の評価基準の一例を示したものである。この基準では、減点項目RA1−1〜RA1−6と、各減点項目のそれぞれについての減点量とが定められている。例えば、問診項目DA1−1〜DA1−9のうちの全てが医療面接で実行された場合は、医療面接は満点(100点)と評価され(減点項目RA1−1)、全てが実行されなかった場合は、ゼロ点と評価される(減点項目RA1−6)。またこの評価基準では、問診項目が欠けていた場合に適宜減点がなされ(例えば減点項目RA1−2)、また、問診項目の登場する順序も評価基準の一つとなっている(例えば減点項目RA1−3)。もちろん評価基準はここに挙げたようなものに限定されるものではなく、医療分野のニーズに合わせて評価基準を適宜設定すればよい。この評価結果は、医療面接についての実習評価情報411bとして記憶部411に記憶される。
またステップS102において、マニュアル評価モードが選択されていた場合には、例えば医療面接で求められる事項(実習者の言葉遣いが適切かどうかや、患者(疑似患者体2)の目を見て話をしているか等)について評価がなされる。なおオート評価モードが選択された場合に評価演算部105が評価対象とする事項を、実習評価者が評価するようにしてもよい。
この実習評価者による評価結果は評価入力部44を介して情報処理本体部41に入力され、実習評価者による医療面接についての実習評価情報411bとして記憶部411に記憶される。このとき、医療面接に対するコメントを評価とともに加えるようにしてもよい。
これらの評価は、面接シナリオA001が特定の面接後診療シナリオと組み合わされていることに基づいてなされる。つまり、シナリオA001とシナリオB001とシナリオC001とが組み合わされている場合、実習シナリオ全体は、歯LH6,LH7が齲蝕であることを検診によって診断させ、歯LH6,LH7を適切に治療する実習をさせるという目的を持っている。この目的に向けて、実習者の行為がどれだけ適切か、各シナリオにおける行為の評価がなされる。以下の各組合せのいずれにおいても、評価は特定の面接シナリオが特定の面接後診療シナリオと組み合わされていることに基づいてなされるので、逐一繰り返さない。
なお、医療面接シナリオの最後に、実習者自身が医療面接から下される判断結果を入力するように予め決めておき、評価演算部105がその時の実習シナリオにおける適合性を評価ないし判定するようにしてもよい。この場合、例えば、実習者の判断(例えば、実習者の決定した症例、または次にとるべき診療行為(検診または治療)についての判断)を、実習者が医療用実習装置Mに対して入力する。この入力方法は、音声入力によるものであってもよいし、またはキーボードやマウス、各種ボタン類等を介して実施されてもよい。
この判断の適合性は実習評価者が評価または判定するようにしてもよい。この評価も、その時の特定の面接シナリオと特定の面接後診療シナリオの組合せに基づいてなされる。
この実習者の判断の入力するタイミングは、医療用実習装置Mが実行する医療面接シナリオ91Aの最後とするものに限られるものではなく、検診シナリオ91Bを開始した際、もしくは、治療シナリオ91Cを開始した際に行われるようにしてもよい。
また実習生のした判断の適合性についての、実習評価者による判定結果は、実習中に実習者に対して通知されるようにしてもよい。この通知方法としては、例えば、表示部5等を介して適合性が視覚的に通知されてもよいし、音声出力部66を介して音声で通知されてもよい。これによれば、例えば実習者の判断が不適切である場合に、実習者は医療面接が不適切であったことを認識することが可能となる。また次のシナリオに進む前もしくは次のシナリオの開始時点でこのような通知を行うことによって、実習者が次に行う診療行為について、予め設定された次のシナリオに沿って行為を実施するように仕向けることができる。
無論、実習者がこの適合性の判断の入力を行わずに、医療面接、面接後診療行為を続けて行い、一連の診療行為が評価されるようにしても構わない。
また、実習者に対する診療行為の評価の通知は、医療用実習の完了後(ステップS108もしくはステップS110,S111の後)に実習者に通知されるようにしてもよいが、例えば実習中の各段階(例えば、実行中の各シナリオの最初、最後もしくは途中)で通知されるようにすることも可能である。さらに、各診療行為において、適切な実習行為がなされなければ、医療用実習装置Mが次のシナリオ、もしくは実施中のシナリオを停止することによって、実習者が次のステップに進めないようにしてもよい。
図7は、図5に示すシナリオA002の詳細を示す図である。シナリオA002では、問診項目DA2−1〜DA2〜9とシナリオA001の問診項目DA1−1〜DA1−9とが一致するものの、問診項目DA2−9(「歯がぐらぐらした感じがあるか」)の問いかけに対して、「あります」と応答PA2−9を行う点で、シナリオA001とは異なっている(応答DA1−9では、「ありません」となっている。図6参照)。さらに問診項目DA2−10において、ぐらぐらする度合を聞かれた場合の応答も定められている。
シナリオA002が選択された場合は、図5に示すように、動揺要因を検診するシナリオB003及び動揺を治療する(詳細にはポケット治療)シナリオC003が選択される。
なお、シナリオA002は、シナリオA001と問診項目およびその応答で互いに共通する部分が存在する。すなわち問診項目DA2−9の問いかけがなされるまでは、シナリオ実行制御部103がシナリオA001、もしくはシナリオA002のどちらを実行しても同様の医療面接が実行されることとなる。そこでステップS102の時点では、例えば第1の組合せ(シナリオA001−シナリオB001−シナリオC001)と第2の組合せ(シナリオA002−シナリオB003−シナリオA003)の双方、をシナリオ設定部101が実習シナリオとして設定しておき、問診項目DA2−9(問診項目DA1−9と同じ)が実習者によって問いかけられた時点で、どちらか一方の組合せを正式に選択するようにすることも可能である。この選択は、医療用実習装置Mの操作者が選択するようにしてもよいし、医療用実習装置Mが自動で選択するようにしてもよい。
このようにシナリオの選択が医療面接等の実習中に途中で変更されてもよい。このように医療用実習装置Mを設計した場合、例えば医療用実習装置Mを複数台並べて一度に多数の実習生が医療用実習を実施してこれを評価する場合に、隣同士で同一内容のシナリオが実行されることを抑制し得る。そのため、他の実習生を真似て実習する等して、不正に評価を高めるといったことを未然に防ぐことが可能となる。
さらに図8は、図5に示すシナリオA003の詳細を示す図である。図5において説明したようにシナリオA003では、歯の詰め物が外れたという設定で構築されたシナリオである。この場合は、上述したように、カルテを確認する行為(問診項目DA3−8)によって、患部を特定することが可能となっている。そのため、図5に示すように、ステップS102において検診シナリオ91Bは設定されない。したがって、シナリオ実行制御部103は、医療面接シナリオ91Aが完了すると、検診シナリオ91Bの実行をスキップして(ステップS105)、治療シナリオ91C(具体的にはシナリオC004)を実行することとなる(ステップS111参照)。
なお、図8(b)に示すように、問診項目DA3−8の「カルテを確認する行為」があったかどうかについても、評価演算部105による評価対象となり得る(減点項目RA3−7)。これは、例えば表示部5に該カルテを表示するように実習者が所定の操作を行ったかどうかで、評価演算部105が評価を行うように構成すればよい。
図4に戻って、ステップS104の医療面接が完了すると、医療用実習装置Mは、次に検診シナリオ91Bを実行するかどうかを確認する(ステップS105)。このステップS105では、ステップS101において特定の検診シナリオ91Bが設定されているかどうかで判断される。
特定の検診シナリオ91Bが設定されている場合(ステップS105においてYES)は、医療用実習装置Mは、その特定の検診シナリオ91Bを実行する(ステップS106)。このステップS106では、以下に説明するように、実習者の疑似患者体2に対する検診処置が検知される。一方、特定の検診シナリオ91Bが設定されていない場合は、医療用実習装置MはステップS106をスキップして、次のステップS107へ進む。
図9は、図5に示すシナリオB001の詳細を示す図である。シナリオB001は、図5で説明したように、歯LH6,LH7が齲蝕であることを検診によって診断させるためのシナリオとして構成されている。具体的には、図9(a)に示すように、検診項目(DB1−1〜DB1−5)と、各検診項目に対する装置の動作(PB1−1〜PB1−5)とがそれぞれ設定されている。
例えば検診項目DB1−1では、疑似患者体2の口を開けさせる検診内容となっている。具体的には、例えば実習者が疑似患者体2に対して「口を開けてください。」といった問いかけが行われ、これが音声認識処理される。この項目が実施されると、疑似患者体2の口が開くこととなっており、実習者は口内を検診することが可能となる。
またこのときの疑似患者体2の口内には、健康な状態を示す歯牙模型が装着されており、シナリオB001が実行された際に、疑似患者体2の口内は外観上異常がないよう構成されている(PB1−1)。すなわちこの検診だけでは患部や症状を特定できないため、その他の検診により患部を特定し得るように、シナリオB001では、検診項目DB1−1の他にも、X線撮影の選択(DB1−2)、打診(DB1−3)、蛍光観察(DB1−4)が検診項目として設定されている。また、シナリオB001では、患部や症状について患者に対する説明(DB1−5)も検診項目として設定されている。
なお検診項目DB1−2は、X線撮影の選択となっているが、ここではX線撮影を現実に行うのではなく、例えば図示しない入力手段や表示部5上等で実習者が所定操作を実行することで、あらかじめ準備されたX線画像を表示させるようになっている。すなわち、実習者が行う画像表示のための「所定入力」が、ここでは検診処置(X線撮影)に相当しており、医療用実習装置Mはこの入力を検知するようになっている。そしてこの検診処置が検知された場合、歯LH6,LH7が齲蝕であり、また歯LH6は歯LH7よりも齲蝕の程度が軽度である画像が表示される(PB1−2)。なお、この「所定入力」は検診シナリオ91BにおけるX線撮影に相当する検診処置の一例であり、その他の方法で実現されていてもよい。もちろん検診シナリオ91Bにおいて、実際にX線撮影装置を用いてX線撮影を行う検診項目が設定されていてもよい。
また検診項目DB1−3の打診や検診項目DB1−4の蛍光観察によっても、齲蝕の程度が歯LH6の方が歯LH7よりも軽度であることを把握し得るように装置の動作、状態が設定されている(PB1−3,PB1−4)。このようなシナリオB001に従って、ステップS106の検診シナリオが実行される。
また図9(b)に示すように、シナリオB001に従って実行される検診について、評価演算部105が評価する際の評価基準が予め規定されている。この評価基準では、図9(a)に示す各検診項目が実施されたかどうかで減点量が定められ(RB1−1,RB1−2)、また患部や症状についての説明(DB1−5)内容の正誤に応じて減点量が定められている(RB1−3,RB1−4)。この評価基準に基づく評価演算部105の評価結果は、検診実習についての実習評価情報411bとして記憶部411に記憶される。
またステップS102において、実習評価者が評価する実行モードが選択されていた場合には、例えば検診で求められる事項(検診時の疑似患者体2と実習者の位置関係が適切かどうか等)について評価がなされる。オート評価モードであったなら評価演算部105の評価対象となっていた事項を実習評価者が評価するようにしてもよい。
この実習評価者による評価結果は評価入力部44を介して情報処理本体部41に入力され、実習評価者による検診についての実習評価情報411bとして記憶部411に記憶される。このとき、検診行為に対するコメントを評価とともに加えるようにしてもよい。
図4に戻って、ステップS106が終了すると、またはステップ105においてNOである場合、医療用実習装置Mは、診療方針の受付を実施する(ステップS107)。ここでの診療方針には、医療面接や検診に基づいて実習生が特定した患部の位置や病状等の診断結果、またはこの診断結果に基づいて定められる治療方針が含まれる。このような診療方針が、医療用実習装置Mに対して実習者により入力される。この入力方法は、音声入力によるものであってもよいし、またはキーボードやマウス、各種ボタン類等を介して実施されてもよい。
この診療方針が医療用実習装置Mに入力されると、評価演算部105がその時の実習シナリオにおける適合性を評価ないし判定する。実習評価者等の実習者以外の者により、この適合性が評価ないし判定されるようにしてもよい。この適合性の判定結果は、実習者に対して表示部5等を介して視覚的に通知してもよいし、音声出力部66を介して音声で通知してもよい。これによれば、例えば実習者の診療方針が不適切である場合、実習者は医療面接や検診が不適切であったことを認識することが可能となる。またこのような通知を行うことによって、実習者が次に行う診療実習の次のステップ(治療)について、予め設定された治療シナリオ91Cに沿って診療行為(ここでは治療行為)を実施するように仕向けることができるため、この診療行為を適切に評価することが可能となる。
診療方針の入力は、検診シナリオの最後に行われるようにしてもよいし、面接のみで治療に進める場合は医療面接シナリオの最後に行われるようにしてもよい。また、治療シナリオの最初に行われるようにしてもよい。
なお、このステップS107は省略することも可能である。すなわち、診療方針を確認することなく、実習者に一連の診療行為を実施させ、実習した内容が評価されるようにしてもよい。
ステップS107が完了すると、医療用実習装置Mは、特定の治療シナリオ91Cが設定されているかどうかを確認する(ステップS108)。医療用実習装置Mは、特定の治療シナリオ91Cが設定されている場合にはステップS109に進み、設定されていない場合にはステップS112に進む。
ステップS109では、シナリオの変更があるかどうかが判定される。ここでシナリオの変更は、以下のような事情に基づいて実施される。すなわち、ステップS107において、実習者が入力した診療方針が、医療面接シナリオ91Aや検診シナリオ91Bで想定された診療方針と適合しない場合に、設定された治療シナリオ91Cに従って治療行為が実施されないことが起こり得る。このような場合には、治療内容の評価を適切に行うことは困難となるため、装置資源を無駄に消費してしまうおそれがある。そこで、実習者評価者等の実習者以外の者が、入力部43等を介してシナリオの変更入力を行えるように医療用実習装置Mを構成することによって、実習者の診療方針に適合する治療シナリオ91Cを医療用実習装置Mに実施させてもよい。この場合、入力部43は、シナリオ実行制御部103が面接後診療シナリオ92である治療シナリオ91Cを実行する前に、その治療シナリオ91Cを別の治療シナリオ91Cに設定変更する他面の入力を受け付けるシナリオ変更入力部として機能することとなる。
医療用実習装置Mが医療面接シナリオ91Aや検診シナリオ91Bに対する適合性を判断し、シナリオの変更を行うようにしてもよい。この場合、シナリオ変更を行うこと、その理由等を表示することが好適である。
また実習者が入力した診療方針が、医療面接シナリオ91Aや検診シナリオ91Bで想定された診療方針と適合しないことを実習者に通知してもよい。この場合、表示部5、表示部42、音声出力部66を通知部として用いることが可能である。
このように治療シナリオ91Cが実行される前に別の治療シナリオ91Cへ変更することを可能とすることによって、状況に応じたシナリオ変更が可能となり、実習者の診療行為をシナリオにしたがって適切に評価することが可能となる。
医療用実習装置Mは、ステップS109においてシナリオ変更がない場合には、ステップS102で設定された治療シナリオ91Cを実行し(ステップS110)、シナリオ変更があった場合には、変更後の治療シナリオ91Cを実施する(ステップS111)。このステップS110,S111では、医療用実習装置Mは、実習者が実施する診療処置を疑似患者体2によって受け付ける。
図10は、図5に示すシナリオC001の詳細を示す図である。シナリオC001は、歯LH6,LH7を切削するシナリオである。図10(a)に示すように、シナリオC001は、実習者が患部を治療するために口部を開けさせたり(DC1−1)、麻酔を希望するか尋ねたり(DC1−2)、麻酔処置(DC1−3)、切削処置(DC1−4)充填処置(DC1−5)の各作業を実施したり、処置が完了したことを疑似患者体2に告げたりする(DC1−6)各行為に応じて、医療用実習装置M(具体的には疑似患者体2)が行う動作が定められている。
ここで、例えば診療器具11a〜11eのいずれかを麻酔用の注射器とし、該注射器で注射する状態や、患部に対して注射した麻酔薬の注射量等を、診療器具回路111で検出することによって、麻酔処置が行われたかどうかを検出することが可能となる。また、振動センサー等で検出することで、切削処置が行われたことを検出することが可能となる。また、診療器具11a〜11eのいずれかを充填器具として、該充填器具の駆動を診療器具回路111によって検出することによって、充填処置が行われたことを検出することが可能となる。
また図10(b)に示すように、シナリオC001に従って実行される治療項目について、評価演算部105が評価する際の評価基準が設定されている。具体的には、関係のない歯を治療した場合(RC1−1)や、歯LH7のみが治療された場合等、治療が十分でない場合(RC1−2,RC1−3)、さらには麻酔処置や切削処置、充填処置等の処置内容が十分でない場合(RC1−4)に減点が課せられる。なお、減点項目RC1−4では、疑似患者体2に設けられたセンサーや診療器具11a〜11eに設けられたセンサーが出力する検出信号に基づき減点量が決定される。例えば、標準的に各処置を行った際の検出信号を基準として、これと実際の検出信号と比較することによって減点量が算出される。この評価基準に基づく評価演算部105の評価結果は、治療行為についての実習評価情報411bとして記憶部411に記憶される。また切削した歯(模型)の形状を外部機器で解析した評価が行われてもよい。この外部機器による評価結果は、測定機器評価入力部8を介して記憶部411に記憶される。
またステップS102において、実習評価者が評価する実行モードが選択されていた場合には、例えば治療処置の際に求められる事項(処置時の疑似患者体2と実習者との位置関係が適切かどうか等)について評価がなされる。なおオート評価モードが選択された場合に評価演算部105が評価対象とする事項を、実習評価者が評価するようにしてもよい。
この実習評価者による評価結果は評価入力部44を介して情報処理本体部41に入力され、実習評価者による検診についての実習評価情報411bとして記憶部411に記憶される。このとき、各治療行為に対するコメントを評価とともに加えるようにしてもよい。
図4に戻って、治療に関する実習が完了すると、医療用実習装置Mは、実習者に対して診療内容の評価結果を通知する(ステップS112)。この評価結果は、記憶部411に格納された実習評価情報411bに基づいて行われるものであり、シナリオにしたがって実習した医療面接、検診、治療に関する評価結果が含まれている。なお、表示部5や表示部42等のモニター上に、実習項目毎の評価結果(評価得点や、実習者のコメント等)を表示して実習者に通知するようにしてもよいし、音声出力部66を介して音声で通知するようにしてもよい。このように表示部5、表示部42、音声出力部66は評価結果を通知する通知部として機能させることが可能である。
このように、医療用実習装置Mによると、実際に想定される医療面接から面接後診療につながる一連の診療の流れを実習できるとともに、これらの実習内容が総合的に評価されるため、医療従事者の技能向上を図ることができる。
なお、評価演算部105は、医療面接の評価結果(X点)、検診の評価結果(Y点)、治療の評価結果(Z点)のそれぞれを重み付けして演算することによって、1つの合計点を算出する様にしてもよい。この重み付けは任意に設定することが可能であり、何を重視するかによって適宜変更すればよい。
次に医療用実習装置Mは、評価結果を通知すると、装置全体の駆動を再現するかどうかを確認する(ステップS113)。具体的には、情報処理本体部41に対して、すでに実施された実習中における各駆動部の駆動状況について、再現を要求する入力があるかどうかが確認される。例えば情報処理本体部41が表示部42に、駆動を再現するためのボタン類を表示し、これをマウスによるクリック操作等の簡易な操作入力で、この再現駆動が行われるように構成してもよい。
駆動を再現する要求があった場合(ステップS113)、駆動再現部107は、実習履歴情報411aを読み込むことによって、診療台3や疑似患者体2の駆動を時系列に従って再現する(ステップS114)。これにより、実習中における疑似患者体2の姿勢に着目して、実習内容が適切であったかどうかを見直しすることができる。また診療器具11a〜11eのうちの実習中に駆動状況を記録していたものについても、その駆動を再現するようにしてもよい。
なお、実習中における駆動の全過程を再現するようにしてもよいが、駆動の過程の一部を再現するようにしてもよい。また、駆動の再現については、駆動過程の一部を表示部42に画像で表示するようにしてもよい。例えば、診療器具11a〜11eのいずれかを取り上げた後の扱い方については、記録した画像の再生で表示するようにしてもよい。
さらに実習中に位置検出部71によって記録されたオペレーションスツール7の位置情報に基づいて、オペレーションスツール7を駆動するようにしてもよい。例えばオペレーションスツール7に取り付けられたコロを遠隔駆動可能に構成することによって、実習履歴情報411aに基づき、実習中におけるオペレーションスツール7の移動状況を再現し得る。また、別の駆動機構として、特開2000−166996号公報に開示された技術を利用することも可能である。具体的にはオペレーションスツールを回動モーターによって所定軸周りに回動するように構成し、回動モーターを駆動することによって実習中におけるオペレーションスツールの移動(回動)状況を再現するようにしてもよい。
以上のようにオペレーションスツール7の移動状況を実習後に再現することによって、実習中における実習者と疑似患者体2との位置関係を再現することが可能となる。したがって、医療面接や検診、あるいは治療を適切な姿勢で行えたかどうかを、実習者が正確に把握することが容易となる。
なお、実習中におけるオペレーションスツール7の位置を再現する場合、オペレーションスツール7を実際に移動するようにしてもよいし、あるいは表示部5,43等に位置情報を表示するようにしてもよい。いずれの場合において、実習後にオペレーションスツール7の位置を確認できるため、実習中における実習者の位置が適切であったかどうかを確認できる。
なお、駆動が再現される場合には、好ましくは医療面接やその他の実習項目における実習者と疑似患者体2との間で交わされる会話や、疑似患者体2の眼球や口等の動き等も再現される。
また、各構成要素の駆動を再現するのではなく、実習者や医療用実習装置Mが実習中に行った行為の実行順序を、医療用実習装置Mが時系列的に提示することによって、実習内容を再現し、実習者や実習評価者等がこれを確認できるようにしてもよい。実習中における行為の実行順序の提示方法について、以下に説明する。
図11は、実習における実習者と医療用実習装置Mの実習における行為の分岐を時系列に従って示した概念図である。以下の説明では、図11に示すシナリオ進行の例として、医療面接シナリオ91Aにおける実習者の初動行為(実習者の行為A1)から終了行為(例えば実習者の判断AD)までの過程を想定する。またこの医療面接は、その後に続く検診、治療を含むシナリオ全体を通して、歯茎の癌の発見とその治療とを実習者が実習できるように構成されているものとする。
まず、医療用実習装置Mは設定されたシナリオに応じて応答を進める。例えば行為A1が実習者の「どうしましたか」という問いかけであり、医療用実習装置Mは問いかけに対する応答PA1(例えば「違和感があります。」という回答)を実行する。
図11に示す例では、医療面接シナリオ91Aについて、過程AA、AB、ACに概念的に分類されている。より具体的には、歯茎の癌に関する医療面接である場合、過程AAが違和感の場所に関するやりとり、過程ABが違和感の質に関するやりとり、過程ACが違和感の程度に関するやりとりに相当する。もちろん、医療面接シナリオ91Aは、このように分類できるものに限定されるわけではない。
さらに過程AAについては、想定される実習者の行為群(質問群AA1〜AA3)が準備されている。同様に、過程ABについても、想定される実習者の行為群(質問群AB1〜AB3)が準備されている。さらに、過程ACについても、想定される実習者の行為群(質問群AC1〜AC3)が準備されている。
また行為群である質問群AA1〜AA3,AB1〜AB3,AC1〜AC3のそれぞれについても、実習者の具体的行為(質問aa11〜aa13,質問ab11〜ab13,質問ac11〜ac13)で構成されている。なお、各質問の中身についての詳細は省略するが、この具体的行為の一つ一つが、例えば図6〜図8に示した医療面接における問診事項に相当する。
なおここでは、各行為(ここでは質問)を具体的な内容毎に群別に分類するようにしているが、このような分類方法に限られるものではなく、任意に分類することが可能である。
また図11では、図示を簡略にするため、過程はAA、AB、ACの3つであり、過程AA、AB、ACのそれぞれにおいて質問群は3つであり、各質問群が3つの質問から成っていることにしているが、これらの数はこのようなものに限定されない。
図11に示すPAA,PAB,PACは、それぞれ順に過程AA,AB,ACにおける実習者の行為(質問)に対する医療用実習装置Mの応答(反応や回答)を示している。過程ABにおいては応答PABが、過程ACにおいては応答PACが設定されている。
ここで実習者の評価は、前述したように、特定の面接シナリオが特定の面接後診療シナリオと組み合わされていることに基づいてなされる。例えば、シナリオ全体が歯茎の癌の発見、治療に向けられたものであれば、医療面接における実習者の行為がどれだけその発見、治療の目的に沿うものであるかが評価される。
例えば、実際に実習者に行われた質問が、aa31→ab21→ab22→ab23→ac31→ac11→ac12→ac13の順に実施されたとする(図11の破線の矢印。)と、医療用実習装置Mは、所定の表示命令がある場合に、表示部42にこの実習の進行を表示するようにしてもよい。具体的な表示例としては、実習がA1→PA1→aa11→aa12→aa13→PAA→ab21→ab22→ab23→PAB→ac31→PAC→ADであったことを表示する。
このように実行順序の提示を行うことにより、実習の進行を詳細に確認することが可能となる。すなわち、実習者の行為がどれだけその時の特定の面接シナリオと特定の面接後診療シナリオの組合せの目的に沿うものであったかがシナリオの経過を遡って容易に確認できる。
また、判断ADの内容が始めに提示されるようにしておき、入力部43等を介した所定の操作入力(マウスのクリック操作やキーボードの入力操作等)があった場合に、順次シナリオの経過を遡って表示されるようにして、実習の進行を確認できるようにしてもよい。
なお、シナリオの内容によっては、実習者が過程AA→過程AB→過程ACの順に進まないと評価を低くしたり、あるいは、順番が前後しても評価を変えないようにしたり、といったように評価基準が様々に規定され得る。またシナリオの内容によっては、例えば質問群AA3において、実習者の質問する順が質問aa31→aa32→aa33と進まないと評価を低くしたり、あるいは、順番が前後しても評価を変えないとしたり、といったように評価基準が様々に規定され得る。
ここで適切とされる過程順または具体的な質問順が前後しても評価が変わらないように評価基準が設定されている場合においても、上述したように過程の進行順や質問の順番が具体的に提示するように医療用実習装置Mを構成することによって、どのぐらい適切とされる行為が実行できたかどうかを確認できる。
また、実習中に実行された過程AA,AB,ACのうち、一部の過程、例えば過程AAのみ表示するようにしてもよい。例えば、過程AAのみの表示であれば、aa31→PAAであったことが提示される。また過程AA,ABのみの提示というようにしてもよく、この場合には、aa31→PAA→ab21→ab22→ab23→PABの順に実習が進行されたことが提示される。
さらに何が最も適切な行為であったかを併せて提示されるようにしてもよく、例えば、最も適切な進行順(例えば、質問群AA3→AB3→AC3。図11中、実線の矢印)と、実際の進行順(質問群AA3→AB2→AC1。図11中、破線の矢印)とを表示し、進行順の違いのために評価が低くなっていることを明示するようにしてもよい。またこれと同様に、過程AAにおいてaa31→aa32→aa33が最も適切だったところ、aa31の問いかけのみにとどまったためにどれだけ評価が低くなったか、が提示されるようにしてもよい。
また、適切とされる質問の実行順序が、質問群aa31→aa32→aa33であるのに対して、実際の実行順序が質問群aa31→aa33→aa32となっている場合に、実行順序が適切なものと異なったのでどれだけ評価が低くなったか、を表示するようにしてもよい。
さらに適切な順序で進行したと仮定した場合に、その後の実習が、どう進められたかを表示するようにしてもよい。例えば、実習者が質問群AA3→AB2→AC1の順に実行した場合、AA3→AB3と進んでいたら、AC3に進むことが容易となり、従って判断ADも当初予定されていたものに適合するものになっていた可能性が高く、また、その方が評価も高かった、ということが提示されるようにしてもよい。
また、実習者が質問aa31→aa33→aa32の順に実行した場合において、質問aa31→aa32→aa33の順に仮に進むことで質問群AB3へ進むことが容易となり、判断ADも適切なものとなっていた可能性が高く、また、その方が評価も高かったという旨を提示するようにしてもよい。
さらに実習者が、適切とされる質問以外の質問をしても評価が変わらないようにしてもよく、適切とされる質問以外の質問をしたらその分だけ評価が低くなるようにしてもよい。
また仮に、実習者の下した判断ADが医療用実習装置Mのシナリオで設定した判断と一致したとしても、それまでの過程に不適切な行為があれば評価を低くしてよい。
図11の説明においては、行為A1から行為ADまでのシナリオとして、医療面接シナリオ91Aの例で説明したが、医療面接シナリオ91Aに限られず、診断シナリオ91B、治療シナリオ91Cにも同様に、進行状況を確認できるように構成してもよい。
図12は、実習シナリオの全過程における行為の集合を示した概念図である。図12中、SALは、実習シナリオの全過程における行為の集合を示している。この集合SALは、医療面接シナリオ91Aにおける行為の集合SBFと面接後診療シナリオ92における行為の集合SAFを含む。
医療面接シナリオ91Aにおける行為の集合SBFは、医療面接シナリオ91Aにおける行為の集合SAを含む。また、面接後診療シナリオ92における行為の集合SAFは、例えば検診シナリオ91Bにおける行為の集合SBや治療シナリオ91Cにおける行為の集合SCを含む。さらに、各集合SA,SB,SCはそれぞれ、実習者の行為ACDと医療用実習装置Mの行為ACPを含む。なお医療用実習装置Mの行為ACPとは、実習者の行為ACDに応じて実施される駆動内容であり、具体的には、疑似患者体2の駆動や、音声出力部66からの音声出力等である。
図11では、医療面接シナリオ91における実習生の行為(質問)の進行順を表示部5等に表示する態様について説明したが、これと同様に、図12に示す集合SA、SB、SCの少なくとも1つについて前述したように各行為の実行順序を提示するようにしてもよいし、集合SBFと集合SAFの少なくとも1つについて前述の進行表示をしてもよい。さらには、集合SALについて前述の進行表示をしてもよい。
例えば、集合SALについて前述の進行表示をする場合、実習シナリオの全過程における行為が一挙に提示されることとなる。このとき、前述したように行為の順序を遡って提示するようにしてもよいし、その一部のみ表示してもよい。また、最も適切とされる行為の順序を併せて表示するようにしてもよく、適切な進行をしたらどうなっていたかを表示するようにしてもよい。
繰り返しになるが、このように実習者の実施した行為の順序を提示するように構成することにより、実習時の各行為の実行順序を確認できる。したがって、実習者の行為が、設定された特定の面接シナリオと特定の面接後診療シナリオの組合せの目的にどれだけ沿うものであったかを、シナリオの経過を遡って容易に確認できる。
例えば医療面接→検診→治療と実習が進行した場合、各実習中の行為の進行状況が表示部5等に表示される。その結果、医療面接で行った行為(質問)は適切であったか、その質問への回答からなすべき検診がされたか、実施したその検診は適切であったか、医療面接と検診から導かれたなすべき治療がなされたか、その治療は適切であったか等につき、表示された進行状況を遡ることで確認することができる。
例えば、前述の歯茎の癌を設定した例で、医療面接において、医療用実習装置Mが違和感を訴えたとして、適切な順序で質問を行えば、違和感が齲触や一時的な炎症に起因するものではないことを十分に判断し得る。ところが、実習者が適切な質問を行わなかったために別の結論に至った場合、医療面接における質問順序を表示することによって、どの段階で誤ったのか、その原因を確認でき、どのようにすれば適切であったか確認できる。
また、仮に実習者がその違和感が齲触や一時的な炎症に起因するものではないと判断できた場合において、その後の検診が適切であれば違和感が癌に起因するものであることをつきとめられたのに、検診が適切でなかったためにそれが判明しなかったとする。このようなときにも、検診行為の順序を表示するようにすることで、その経過および原因が確認でき、どのようにすれば適切であったか確認できる。また、検診が適切であれば癌のある部位が正確につきとめられたのに、検診が適切でなかったために誤った部位を患部と判断してしまった場合においても、その誤った原因を後から探ることができる。
さらに、実習者が、違和感が癌に起因するものであることをつきとめた場合であっても、その後の治療が適切であれば完治できたのに、癌を悪化させてしまうような治療を行ってしまう場合がある。このような場合においても、治療行為の順序を表示するようにすることで、治療経過を確認でき、どのような手順で治療を行えば適切であったかを確認することができる。
{2. 変形例}
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記実施形態では主に歯科用の実習を行うのに適した医療用実習装置Mについて説明したが、医科用の実習を行う場合にも本発明が適用できることは言うまでもない。
また、獣医科における診療の実習に対しても本発明は有効である。この場合、疑似患者体は犬等の禽獣類とされる。そして会話による医療面接は、例えば実習者と該禽獣類の飼育者等との間で行われることが想定される。この場合にも、医療面接とその後に続く一連の診療行為を実習することが可能となるため、獣医分野に従事する者の技能を向上することが可能となる。
さらに上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。