{実施形態}
以下、実施形態に係る医療用実習装置について説明する。図1は医療用実習装置全体を示す概略図である。この医療用実習装置Tは、医療における実習、ここでは、歯科医療における実習を行うための装置であり、診療台10と、診療台10に設けられたトレーテーブル20及び制御装置101と、患者模型30と、システム制御ユニット50とを備える。
概略的に説明すると、診療台10、トレーテーブル20及び制御装置101は、一般的な医療用診療装置(ここでは、歯科用診療装置C)と同様の構成を備えている。これらに、患者模型30が組込まれると共に、患者模型30の動作制御、実習履歴及びその評価履歴の記憶機能等を行うシステム制御ユニット50が組込まれることで、医療(ここでは歯科医療)における実習を行うのに適した医療用実習装置Tが構成される。もっとも、歯科用診療装置Cの形態としては、制御装置101は、診療台10の一部ではなく別体とする構成あるいはトレーテーブル20の中に設けられる構成であってもよい。トレーテーブル20の形態としては、診療台10と別体の形態であってもよい。また、医療用実習装置Tの形態としては、システム制御ユニット50が診療台の一部として組み込まれているような構成であってもよい。
なお、本実施形態では、歯科医療における実習装置を想定した例で説明する。もっとも、本医療用実習装置は、その他、外科処理一般、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、産婦人科、泌尿器科等の実習装置として適用することも可能である。
トレーテーブル20は、複数の診療器具24をセット可能な診療器具ホルダユニット22とともに構成されている。診療器具24としては、例えば、エアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース等の切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジ、口腔カメラ、光重合照射器等が想定される。これらの診療器具24は、患者模型30に対する診療実習行為に供され、実習者による駆動指示又は取扱い操作等に基づいて動作する。
診療台10は、患者模型30を支持する部分である。診療台10は、患者模型30を、診療実習に適した姿勢で支持することが好ましい。ここでは、歯科医療の診療実習を想定しているため、診療台10は、図1の矢符A1、A2方向に傾動(姿勢変更)可能とされ、これにより、患者模型30を座らせた姿勢又は仰向けに寝かせた姿勢で支持できるように構成されている。また、診療台10は、図1の矢符B1、B2方向に昇降可能とされている。
本診療台10には、フートコントローラ11が設けられている。フートコントローラ11は、実習者からの診療台10、診療器具24等に対する諸動作指示等を受付可能に構成されている。フートコントローラ11で受付けられた実習者からの指示は、上記制御装置101に入力される。そして、上記制御装置101が、当該指示に基づいて、診療台10の姿勢駆動制御、高さ駆動制御、或は、各種診療器具24の動作制御を行う。勿論、各診療器具24は、自己に設けられたスイッチに対する操作に基づいて動作を行ってもよい。また、別の実施形態としては、フートコントローラ11で受付けられた実習者からの指示は、システム制御ユニット50を一旦介して、制御装置101に入力されるような構成としてもよい。
また、診療台10の近傍には、スピットン12、アシストハンガー13等が設けられていてもよい。スピットン12は、患者の口腔内を濯ぐ際等に使用される給水栓と排唾鉢等を備える。アシストハンガー13は、診療台10の上方で、照明部13a、撮像部13b(図1では2箇所に図示)等を支持可能に構成されている。
なお、トレーテーブル20、各診療器具24、診療台10は、本医療用実習装置の構成要素として含まれる場合もあるし、含まれない場合もある。後者の場合、本医療用実習装置は、トレーテーブル20、各診療器具24、診療台10を省略した形態で製造、販売等されるが、最終的には、トレーテーブル20、各診療器具24、診療台10と組合わされた形態で使用されることが好ましい。
患者模型30は、患者の模型であり、実習行為の対象となる模型である。ここでは、患者模型30は、頭部模型32と、胴部模型38、その他、左右の腕模型、左右の脚模型とを備える(図3参照)。すなわち、ここでは、患者模型30は、人間の全体を模した模型として構成されている。もっとも、患者模型30は、人間の頭部のみ、或は、口腔部のみの模型であってもよい。
患者模型30には、自己の少なくとも一部を動作させる患者模型駆動部、例えば、自己の姿勢、表情を変化させる患者模型駆動部が組込まれる。
患者模型30の患者模型駆動部、患者模型30と診療台10との合体例については後で説明する。
システム制御ユニット50は、後述するように、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ハードディスク等を備えた一般的なコンピュータによって構成されている。システム制御ユニット50には、液晶モニタ等の表示部61と、キーボード、マウス等の入力部50U等が接続されている。入力部50Uの形態は、この他にもタッチスクリーンの機能を有する表示部や、表示部上のポインタを操作するタッチパッド等種々の構成を代用したり併用したりすることができる。
システム制御ユニット50の一部を構成する表示部61は実習指導者用のものである。一方、トレーテーブル20に設けられた表示部62は実習者用のものである。表示部61、62で表示される情報は、それぞれの使用者にとって、また使用状況に応じて、適切な内容が表示される。
また、患者模型30及び診療台10は本システム制御ユニット50に接続されている。
制御装置101は、一般的な歯科用医療装置におけるマイクロコンピューター等によって構成される制御装置と同様に、フートコントローラ11等からの指示に基づいて、診療台10の動作制御、各診療器具24の動作制御を行う機能を備え、システム制御ユニット50は、医療用実習装置としての機能として、患者模型30の動作制御、患者模型30に対する受診状況の取得、記憶等を行って、実習用のシナリオを実行する機能を備えている。
また、制御装置101及びシステム制御ユニット50が一体で構成されている場合には、当該一体として構成された制御装置両方の機能を備えるようにすればよい。
このシステム制御ユニット50の構成及び当該システム制御ユニット50に接続された各構成部分については後でさらに説明する。
図2は患者模型30の頭部模型32に組込まれた患者模型駆動部の一例を示す概略図である。
頭部模型32には、患者模型駆動部として、口腔部駆動部33、瞼開閉駆動部36、眼球駆動部37が組込まれている。なお、頭部模型32に、これらの全てが組込まれていることは必須ではないし、また、患者模型駆動部自体が組込まれていることも必須ではない。もっとも、リアリティに富んだ実習を行うためには、口腔部駆動部33、瞼開閉駆動部36、眼球駆動部37の少なくとも1つが組込まれていることが好ましい。
すなわち、頭部模型32は、基本骨格をなすフレーム部材(不図示)、その外周を覆う皮膚部材300等を備える。フレーム部材は、金属又は樹脂等の部材によって構成されており、頭部模型32の基本形状を形作る。皮膚部材300は、皮膚に似た柔らかさのシリコンゴム等で形成されており、頭部模型32の外周ほぼ全体を覆っている。この頭部模型32に、口腔部32A、眼部32B等が組込まれている。
口腔部駆動部33は、人体の口腔に相当する位置に設けられ、上記口腔部32Aを開閉駆動可能に構成されている。すなわち、口腔部32Aは、上顎骨部材と下顎骨部材とが開閉可能に連結された構成とされている。口腔部32Aは、磁力等を利用して上顎模型及び下顎模型が着脱、交換可能な構成とされていることが好ましい。口腔部駆動部33は、エアシリンダ等によって構成されており、上記下顎骨部材を、上顎骨部材に対して開閉駆動するように、下顎骨部材に直接又は力の伝達機構を介して連結されている。
眼部32Bは、人体の眼に相当する位置に設けられており、擬似的な眼球部32B1と、擬似的な瞼部32B2とを備えている。眼球部32B1は、頭部模型32において上下及び左右に移動可能に支持されている。瞼部32B2は、眼球部32B1の前上方位置に配設されており、部分的に瞼部32B2を構成する皮膚部材300の伸縮する性質等によって、眼球部32B1を開閉可能に覆っている。
瞼開閉駆動部36は、エアシリンダ等によって構成されており、瞼部32B2を開閉駆動するように、直接又は力の伝達機構を介して瞼部32B2に連結されている。
眼球駆動部37も、エアシリンダ等によって構成されており、眼球部32B1を上下及び左右に移動駆動するように、直接又は力の伝達機構を介して眼球部32B1に連結されている。
なお、ここでは、頭部模型32に、眉部32Cが設けられており、エアシリンダ等を含む眉駆動部35によって眉部32Cが上下移動駆動可能とされている。
患者模型30には、その他の患者模型駆動部が組込まれていてもよい。その他の患者模型駆動部としては、擬似的な首部分において、胴部模型38に対して頭部模型32を、前後、左右に傾けるように駆動したり、旋回(首を捻る回動運動)させたりする首駆動部のような機構、擬似的な手足(脚)を駆動する腕駆動部や脚駆動部のような機構等を挙げることができる。
上記患者模型駆動部は、システム制御ユニット50による制御の下、駆動され、患者模型30に対して実習に適した動作を行わせる。
また、この患者模型30には、患者模型30に対する実習者の診療状況を取得する診療状況取得部が組込まれている。
診療状況取得部としては、口腔部32Aに組込まれたもの、頭部模型32のうち口腔部32A以外の箇所に組込まれたもの、患者模型30のうち頭部模型32以外の箇所に組込まれたもの等が挙げられる。
口腔部32Aに組込まれた診療状況取得部としては、次のような各種センサを想定できる。例えば、診療器具24が歯牙に接触したときの衝撃を検出する衝撃センサ、切削治療時に歯牙や上下顎に加えられる圧力を検出する圧力センサあるいは振動を検出する振動センサ、温度上昇(例えば、印象採得時、レーザ切削時など)を検出する温度センサ、歯牙の切削度合いを検出する導通あるいは抵抗値の変化を検出するセンサ、麻酔対象部位に設けられた麻酔状態検出センサ等である。麻酔状態検出センサは、例えば、麻酔対象部位に、相互に絶縁した状態で複数の導電性物質を埋設し、麻酔針の進入による各導電性物質間の導通状態等を検出することで、麻酔に適した特定部位に注射がされたか否か、また注射針の深さが適切かどうか等を検出できるようになっている。口腔部32Aに組込まれた診療状況取得部は、口腔部32A内の舌部材40、喉部材(不図示)等に設けられた接触センサ等を含んでいてもよい。
頭部模型32のうち口腔部32A以外の箇所に組込まれた診療状況取得部としては、左右の頬に設けられた接触センサ又は圧力センサ等が挙げられる。その他、唇等に接触センサ又は圧力センサ等が組込まれていてもよい。
患者模型30のうち頭部模型32以外の箇所に組込まれた診療状況取得部としては、胸部に設けられた接触センサ又は圧力センサ等が挙げられる。
これらの診療状況取得部で取得された診療状況検出信号は、システム制御ユニット50に与えられ、後述するように、実習者の診療状況の把握及び記憶、緊急状態にすべきか否かの判定処理等に供される。
上記患者模型駆動部、診療状況取得部自体の構成は、国際公開第2008/023464号、特開平5−27675号公報等に開示されている。
上記患者模型駆動部を、エアシリンダを用いて構成する場合、駆動用のエアは、コンプレッサ(不図示)等から供給される。好ましくは、患者模型駆動部を駆動するための駆動媒体は、診療台10を経由して供給されることが好ましい。
図3は診療台10と患者模型30との接続構成を示す全体概略図であり、図4は同接続構成を示す斜視図である。
すなわち、診療台10には、ハンドピースなどの診療器具24を駆動するための駆動媒体の一手段としてのエアを流すための駆動媒体流路14が組込まれている。駆動媒体流路14には、コンプレッサ等を介してエアが供給される。また、患者模型30には、各患者模型駆動部を駆動するための駆動媒体としてのエアを流すための駆動媒体流路34が組込まれている。そして、診療台10と駆動媒体流路14と、患者模型30の駆動媒体流路34とが着脱可能に接続されるようになっている。
より具体的には、診療台10のうち患者模型30の臀部を支える箇所に、患者模型30を固定するための固定具15が設けられている。この固定具15に、診療台10の駆動媒体流路14の端部に接続されたジョイント部材15aが取付けられている。
また、患者模型30の臀部の下面には、方形枠状の被固定具31が取付けられている。上記固定具15は、本被固定具31に下方より嵌め込み固定可能とされている。この被固定具31内に、患者模型30の駆動媒体流路34の端部に接続されたジョイント部材31aが設けられている。ジョイント部材15aとジョイント部材31aとは、着脱可能な流体用の管継手等によって構成されている。
そして、患者模型30を診療台10上に載置する際に、ジョイント部材31aをジョイント部材15aに接続することで、コンプレッサ等からのエアが、診療台10の駆動媒体流路14から患者模型30の駆動媒体流路34を通って、各患者模型駆動部に供給される。
もっとも、患者模型駆動部は、モータ又は電磁コイルの磁力による吸引力を利用した電磁アクチュエータ等を含む構成であってもよい。これらの場合には、当該患者模型駆動部に対して電力を供給する電線が、駆動媒体としての電気を流す駆動媒体流路である。勿論、エア等を流す駆動媒体流路(チューブ等)と電気を流す駆動媒体流路(電線)とが組合わされ、従って、エア等によって駆動される患者模型駆動部と、電動の患者模型駆動部とが組合わされていてもよい。
なお、ここでは、固定具15にコネクタ15bが設けられると共に、被固定具31に当該コネクタ15bと着脱可能なコネクタ31bが設けられている。そして、システム制御ユニット50と患者模型30の患者模型駆動部、診療状況取得部とが、患者模型30内の配線、コネクタ31b及び診療台10内の配線、コネクタ15bを通じて電気的に接続されるようになっている。
もっとも、システム制御ユニット50と患者模型30の患者模型駆動部、診療状況取得部とは、他の配線を通じて接続されてもよい。特に、システム制御ユニット50と患者模型30の患者模型駆動部、診療状況取得部との間の電気信号については、無線通信を通じて送受されてもよい。
また、患者模型30の駆動媒体流路及び配線を、診療台10を介さないで外部接続するようにしてもよい。これにより、既存の診療台10に対して患者模型30を容易に設置することが可能となり、汎用性に優れる。
これにより、診療台10から患者模型30を取外すことができるため、患者模型30を単独で使った医療実習も可能となり、また、メンテナンスも容易となる。
なお、上記説明に拘らず、患者模型は、駆動部、センサ等を備えない単なる模型であってもよい。
図5は本医療用実習装置の機能ブロック図である。同図に示すように、CPU51は、各機能ブロック52〜62に対して通信可能に接続されており、各機能ブロック52〜61からの諸信号に基づいて、各機能ブロック52〜61を制御することで、患者状態判定部51a、駆動制御部51bとしての処理を含む諸処理を実行可能に構成されている。
ここで、機能ブロック52は、診療台10の姿勢(診療実習時における診療台10の制御状態)を検出する診療台姿勢検出部52であり、a)座部シート昇降検出部、b)背板シート傾動検出部、c)ヘッドレスト位置検出部のうちの少なくとも1つを備える。a)座部シート昇降検出部は、診療台10の座部の高さ位置を検出し、b)背板シート傾動検出部は診療台10の背もたれ部の傾き姿勢を検出し、c)ヘッドレスト位置検出部は診療台10のヘッドレストの傾き或は回動などで調節された角度姿勢を検出する。これらは、角度検出センサ、ポテンショメータ等によって構成されている。この診療台姿勢検出部52による検出結果は、システム制御ユニット50(CPU51)に与えられる。
機能ブロック53は、患者模型30に対する診療実習に用いられる診療器具24に関する情報を出力する診療器具情報検出部53であり、各診療器具24、フートコントローラ11の実習中の操作状態、つまり、オン、オフ、回転数、負荷などを検出可能に構成されている。具体的には、診療器具情報検出部53は、a)エアータービンハンドピース駆動状況検出部、b)マイクロモータハンドピース駆動状況検出部、c)スリーウエイシリンジ駆動状況検出部、d)スケーラハンドピース駆動状況検出部、e)バキュームシリンジ駆動状況検出部、f)口腔カメラ駆動状況検出部、g)光重合照射器駆動状況検出部、h)フートコントローラ作動状況検出部のうちの少なくとも1つを備える。この診療器具情報検出部53による検出結果は、システム制御ユニット50(CPU51)に与えられる。
診療器具情報検出部53は、その他、診療器具24自体が発する音を例えば別途設けた検出マイクなどで検出することで、その動作状況を検出するものであってもよい。
機能ブロック54は、受診状況検出部54であり、実習者による患者模型30に対する受診状況を検出可能に構成されている。具体的には、受診状況検出部54は、a)頬部への接触検出部、b)胸への接触検出部、c)歯牙への衝撃又は押圧検出部、d)歯牙又は歯肉の温度上昇検出部、e)麻酔部位への検出部、f)首、腰、腕などの駆動部位の検出部、g)撮像部、h)音声検出用マイク、i)臭気検出部、j)特定形状検出部のうちの少なくとも1つを備える。受診状況検出部54による取得結果は、システム制御ユニット50(CPU51)に与えられる。
もっとも、上記c)歯牙への衝撃又は押圧検出部は、検出対象を歯牙への衝撃又は押圧だけでなく、歯牙並びに上下顎への衝撃、押圧又は振動というような構成にすることもできる。
a)頬部への接触検出部、b)胸への接触検出部、c)歯牙への衝撃又は押圧検出部、e)麻酔部位への検出部等は、患者模型30に対する物理的刺激を検知する物理的刺激検知部として機能する。d)歯牙又は歯肉の温度上昇検出部は、患者模型30への物質の接触温度を検知する温度検知部として用いられる。温度検知部は、患者模型30への物質の接触温度を検出する以外にも、その周辺雰囲気温度又は患者模型30自体の温度を検知するものであってもよい。
f)首、腰、腕等の駆動部位の駆動状態の検出部は、角度検出センサ、ポテンショメータ等によって構成されており、首、腰、腕等の駆動部位の駆動状態(角度等)を検出可能に構成されている。g)撮像部は、診療状況を撮像可能な箇所に設けられている(図1の撮像部13b参照)。h)音声検出用マイクは、実習者の声等を収集するマイクであり、患者模型30の耳部等実際の診療で術者の発声が届き得る箇所に設けられている。i)臭気検出部は、患者模型30の鼻部等実際の診療で施術中に特有の臭気が漂い得る箇所に設けられた臭気センサであり、診療実習中の周辺の匂いを検知する匂い検知部として用いられる。特定形状検出部は、所定箇所に特定形状の物品が近づいたか否かを検出可能に構成されている。特定形状検出部は、例えば、患者模型30の眼球等に設けられた撮像部と、当該撮像部から出力される画像信号に基づいてパターンマッチング等を行って、特定形状(例えば、尖状の形状、ハンドピース等の特定の器具形状等)の認識を行う画像処理部等を含む形状認識センサ等によって実現することができる。そして、画像内において特定形状及び当該特定形状が画像内の一定面積を占めることが判定されると、眼球等の所定箇所に、診療器具24の先端部が近づいたことを検出する構成とすることができる。j)特定形状検出部は、眼球以外に設けられた撮像部(例えば、上記撮像部13b)及びシステム制御ユニット50によって実行される画像処理機能を含む構成によって実現されてもよい。かかるj)特定形状検出部は、患者模型の眼の近くへの器具の接近を検知する近接センサとして用いられる。
受診状況検出部54としては、各部位に組込まれた各種センサによって、多くの例を実現することができる。その他の一部の例については、後の緊急状態の判定処理の説明において言及することがある。
本実施形態では、上記診療器具情報検出部53と受診状況検出部54が、患者模型30に対する実習者の診療状況を取得する診療状況取得部として機能する。
診療状況取得部は、上記例に限られない。例えば、診療状況取得部は、撮像部13bによって撮像された動画を解析して実習者の実習行為が適切な診療行為か否かを把握する構成であってもよい。あるいは、診療状況取得部は、上記診療器具情報検出部53と受診状況検出部54に加え、診療台姿勢検出部52を更に含んで機能する構成であってもよい。
機能ブロック55は、患者模型駆動部55であり、上記したように、a)眼球駆動部(37)、b)瞼開閉駆動部(36)、c)眉駆動部(35)、d)口腔部駆動部(33)、e)首駆動部、f)腕駆動部、g)音声出力部のうちの少なくとも1つを含む。これらは、上記したように、患者模型30の顔面、身体に組み込まれ、患者模型30に顔面の表情を作らせたり、身体の動作等を行わせたりする。なお、g)音声出力部は、スピーカ等によって構成されている。g)音声出力部は、患者模型30の喉近傍に組込まれることが好ましいが、その他の箇所に組込まれていてもよい。
機能ブロック56は、記憶部56であり、実習を行うにあたって必要となるプログラム、実習の評価を行う際の評価基準等の諸データ、実習中に診療状況取得部で取得された診療状況を示すデータ、実習評価部(57)によって評価された評価等の諸データが記憶される。記憶部56は、システム制御ユニット50内に組込まれた記憶装置であってもよいし、システム制御ユニット50にLAN等を介して接続された別体の記憶装置であってもよい。
機能ブロック57は、実習評価部57であり、実習者の診療行為中又は後に、予め記憶部56に記憶された評価基準と、診療器具情報検出部53及び受診状況検出部54より出力された諸データとを比較等して、所定のアルゴリズムに基づいて実習の評価結果を求め、当該実習結果を記憶部56に記憶させたり、表示部61、62に表示させたりする。実習に対する評価は、1つ又は複数の診療行為を含む一定の診療行為単位に対するもの、診療行為全体に対するもの等に対して行われるとよい。また、実習に対する評価は、入力部50U等を介して実習指導者によって入力されるものであってもよい。
機能ブロック58は、患者模型30に対して動作を操作指示するための患者模型操作部58である。患者模型操作部58は、各種表情を選択可能なボタン等によって構成された、a)表情選択部を含む。ここで、記憶部56等には、各種表情種別に患者模型駆動部55の各動きを対応させた表情パターンデータが記憶されている。指導者等により、a)表情選択部を通じて所定の表情種別が選択されると、CPU51は、当該表情パターンデータに基づいて、患者模型30が指示された所定の表情をなすように、患者模型駆動部55を駆動制御する。これにより、患者模型30において、平常状態、緊急状態、その他、嘔吐、苦痛、不安、リラックス、不快などの表情変化が再現される。もっとも、本実施例のような患者模型30の表情を操作指示できる構成の他にも、表情とともに手など身体の一部の動きも操作指示できるような構成としてもよい。また、各種表情の操作指示は、入力部50U等を介して実習指導者によって入力されるか、CPU51と通信可能な入力機器を別途設けるのであってもよい。
機能ブロック59は、表示操作部59であり、a)表示選択部を含む。a)表示選択部は、受診状況検出部54の各出力を選択するための要素であり、例えば、マウス等によって当該選択指示を受付ける。このa)表示選択部で選択された出力が指導者用の表示部61等に表示される。
機能ブロック60は、実習者用の表示部62に表示させる生体情報を緊急用に変化させる指示を与える緊急状態操作部60であり、a)脈拍操作部、b)血圧操作部、c)血中酸素飽和度操作部、d)筋電位操作部、e)心電位操作部のうちの少なくとも1つを含む。緊急状態操作部60は、例えば、指導者用の表示部61に表示された脈拍、血圧、血中酸素飽和度、筋電位、心電位の各選択肢を1つ又は複数選択することによって緊急状態が実現されるようにする。ここで、各選択肢中に対する生体情報の緊急パターン(値)は、記憶部56に予め記憶されている。緊急状態操作部60を通じて1つ又は複数の生体情報を緊急用に変化させるべき指示が入力されると、CPU51は当該選択肢に応じて所定の緊急パターンを実習者用の表示部62に表示させる。なお、緊急状態操作部60の指示は、所定のプログラムに従って自動的に与えるものであってもよいし、例えば入力部50Uやその他の別途設けた入力機器によって指導者等の操作者が手動で与えるものであってもよい。
機能ブロック61、62は、液晶モニタ等の表示部61、62であり、実習指導者用の表示部61は、実習指導者による指導に適した位置に設けられ、実習者用の表示部62は、実習中の実習者の視認に適した位置、例えば、トレーテーブル20の近傍等に配設される。実習者用の表示部62は、後述するように、実習中の患者模型30に対する模擬的な生体情報を表示可能な生体情報表示部として用いられる。
図6は医療用実習装置のシステム制御ユニット50のハードウエア構成例を示すブロック図である。
システム制御ユニット50は、CPU51、ROM(Read Only Memory)70、主記憶部としてのRAM(Randam Access Memory)71、外部記憶装置72(ここでは、上記記憶部56として使用される),入出力回路部75、画像出力部76等がバスラインを介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM70には、本システム制御ユニット50の起動用のプログラム等が格納されている。RAM71は、CPU51がプログラムの記述に従った処理を行う際の作業領域として供される。外部記憶装置72には、基本プログラムに加えて、実習プログラム73及び実習履歴データ74等が記憶されている。
なお、外部記憶装置72は、一時的ではない不揮発性の記憶装置(ハードディスク装置、フラッシュメモリ等)によって構成されていればよい。
また、システム制御ユニット50は、入出力回路75を介して上記各機能ブロック52〜55、57〜69を構成する各要素に接続され、画像出力部76を介して表示部61、62(図6では、実習者用の表示部62のみ図示)に接続されている。
そして、主制御部としてのCPU51が、上記外部記憶装置72に記憶された実習プログラム73等を読込んで実行し、外部からの指示、検出結果等に応じて実習プログラム73に記述された手順に従って演算処理を実行することにより、条件に応じて緊急状態にすべきか否かを判定する患者状態判定部51a、患者状態判定部51aにおいて緊急状態にすべきと判定された場合に患者模型30が緊急状態を示す動作を行うように患者模型駆動部55を駆動させる駆動制御部51b等の各処理機能が実現される。なお、本システム制御ユニット50が行う一部又は全部の機能が、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
上記実習プログラム73は、処理モジュールとして、メイン処理部73aと、複数のシナリオ処理部73b(シナリオ1処理部、シナリオ2処理部、・・・)と、複数の緊急シナリオ処理部73c(緊急シナリオ1処理部、緊急シナリオ2処理部、・・・)とを備える。シナリオ処理部73bは1つだけであってもよいし、また、緊急シナリオ処理部73cは1つだけであってもよい。
図7はメイン処理部としての処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、システム制御ユニット50は、シナリオ選択を受付ける。シナリオ選択の指示は、例えば、実習指導者が表示部61に表示されたシナリオを、入力部50Uを通じて選択することにより行われる。ここで、シナリオは、医療実習(診療実習)で実習者、または実習者及び患者が行う行為(発声も含む)を時系列に整理した情報であり、例えば、治療にあたって事前に行われる医療面接シナリオ、治療にあたって実習者が患者模型に接したり装置等を使って病状を調べたりする検診(または診察)シナリオ、医療面接及び検診によって特定された患部に対して処置を施す治療に関する治療シナリオ等が想定される。治療シナリオの一例については後述する。
ステップS1において、シナリオ選択が受付けられると、次ステップS2において、システム制御ユニット50は、選択されたシナリオを実行する。
ステップS2終了後、ステップS3において、システム制御ユニット50は、シナリオ実行により得られた実習に対する評価を通知する。評価の通知は、表示部61、62に表示すること等により行われる。もっとも、評価の通知は、システム制御ユニット50と通信可能なように別途設けられたプリンタ等の出力装置によって行われるなどしてもよい。
次ステップS4では、シナリオ実行中の諸履歴データを再現するかどうかが判定される。再現をすべきかどうかは、例えば、入力部50Uを通じた指示に応じて決定される。再現不要と判定された場合には処理を終了し、再現必要と判定された場合には、ステップS5に進む。
ステップS5では、シナリオ実行中の諸履歴データが再現される。再現される諸履歴データは、シナリオ中に含まれる行為の撮像データ、評価データ、診療状況取得部で取得された各診療状況検出信号のデータ等の少なくとも一部である。これにより、実習者は自己の行為の復習等を行える。この後、処理を終了する。
図8及び図9は治療シナリオの一例を示すフローチャートである。
図8は緊急シナリオ無しで歯牙の切削治療を行う場合の処理を示すフローチャートである。
同図に示すように、ステップS11において、システム制御ユニット50は、実習者による開口作業の有無を判定する。例えば、診療状況取得部等を通じて実習者による開口作業(患者模型30の口腔の開口動作)有りと判定されると、次ステップS12に進む。
ステップS12では、システム制御ユニット50は、口腔部駆動部33に口腔部32Aを開口させるように制御する。これにより、口腔部32Aが開口する。
次ステップS13では、システム制御ユニット50は、実習者が患者模型30に対して、麻酔を希望するか否かの質問を発したかどうかを判定する。この判定は、例えば、音声検出用マイクを通じて入力された音声信号に基づいて音声認識処理等を行うことで実現することができる。ステップS13において、上記質問が発せられたと判定されると、次ステップS14に進む。
ステップS14では、システム制御ユニット50は、外部記憶装置72等に記憶された音声データを再現することによって又は合成音声によって、麻酔を希望する旨を患者模型30の返答として出力する。
次ステップS15では、システム制御ユニット50は、麻酔作業の有無を判定する。この判定は、例えば、受診状況検出部54における麻酔部位の検出部からの検出信号に基づいて行われる。麻酔作業有りと判定されると、次ステップS16に進む。
次ステップS16では、システム制御ユニット50は、麻酔の作業状態を検出する。システム制御ユニット50は、例えば、受診状況検出部54における麻酔部位の検出部からの検出信号に基づいて、麻酔の作業状態を検出する。検出された作業状態は、当該実習行為(麻酔行為)に関連付けて、実習履歴データ74として外部記憶装置72(記憶部56)に記憶される。実習履歴データ74として記憶される内容は、麻酔部位の検出部からの生の検出データであってもよいし、麻酔部位の検出部からの検出データに基づいて判断された実習行為の評価データであってもよい。
次ステップS17では、システム制御ユニット50は、次の切削作業の有無を検出する。この判定は、例えば、診療器具情報検出部53における各診療器具24の駆動状況検出部あるいはフートコントローラ作動状況検出部、受診状況検出部54における歯牙への衝撃又は押圧検出部等からの検出信号に基づいて行われる。切削作業無しと判定されると、上記ステップS16を繰返し、切削作業有りと判定されると、次ステップS18に進む。
ステップS18では、システム制御ユニット50は、切削作業状態を検出する。すなわち、システム制御ユニット50は、例えば、診療器具情報検出部53における各診療器具24の駆動状況検出部あるいはフートコントローラ作動状況検出部、受診状況検出部54における歯牙への衝撃又は押圧検出部、歯牙又は歯肉の温度上昇検出部等からの検出信号に基づいて、切削作業状態を検出する。検出された切削作業状態は、当該実習行為(切削行為)に関連付けて、実習履歴データ74として外部記憶装置72に記憶される。実習履歴データ74として記憶される内容は、各検出部からの生の検出データであってもよいし、当該検出部からの検出データに基づいて判断された実習行為の評価データであってもよい。
次ステップS19では、システム制御ユニット50は、次の充填作業の有無を検出する。この判定は、例えば、診療器具情報検出部53における各診療器具24の駆動状況検出部あるいはフートコントローラ作動状況検出部、受診状況検出部54における歯牙への押圧検出部、歯牙又は歯肉の温度上昇検出部等からの検出信号に基づいて行われる。充填作業無しと判定されると、上記ステップS18を繰返し、充填作業有りと判定されると、次ステップS20に進む。
ステップS20では、システム制御ユニット50は、充填の作業状態を検出する。すなわち、システム制御ユニット50は、例えば、診療器具情報検出部53における各診療器具24の駆動状況検出部あるいはフートコントローラ作動状況検出部、受診状況検出部54における歯牙への押圧検出部、歯牙又は歯肉の温度上昇検出部等からの検出信号に基づいて、充填の作業状態を検出する。検出された充填作業状態は、当該実習行為(充填行為)に関連付けて、実習履歴データ74として外部記憶装置72に記憶される。実習履歴データ74として記憶される内容は、各検出部からの生の検出データであってもよいし、当該検出部からの検出データに基づいて判断された実習行為の評価データであってもよい。
次ステップS21では、システム制御ユニット50は、実習者が患者模型30に対して、終了を伝えたか否かを判定する。この判定は、例えば、音声検出用マイクを通じて入力された音声信号に基づいて音声認識処理等を行うことで実現することができる。ステップS21において、上記終了を伝えたと判定されると、次ステップS22に進む。
ステップS22では、システム制御ユニット50は、外部記憶装置72等に記憶された音声データを再現することによって又は合成音声によって、謝意等を患者模型30の返答として出力し、本シナリオ処理を終了する。
なお、上記の処理中、撮像部13bで撮像された、実習者の動作の撮像データが、実習履歴データ74として外部記憶装置72に記憶されている。撮像部13bで撮像された撮像データは、各実習行為(評価の単位)と関連付けて記憶されることが好ましい。後述する緊急状態に対する処理の際にも、当該生じた緊急状態に対する処置と対応付けて、撮像部13bで撮像された実習行為の撮像データが実習履歴データ74として外部記憶装置72に記憶される。これにより、緊急状態を生じさせることが可能な実習シナリオに、実習者の診療状況を示す情報を対応付けて外部記憶装置72に記憶させ、特に、緊急状態に対応する処置を、後から再現して、実習者による復習に役立てることができる。
また、各ステップS11〜S22について、上記実施例においてはシステム制御ユニット50で自動的に判定を行っているが、この形態に限らず、特にステップS11,S13,S15,S17,S19,S21の各判定(或る行為の有無に関する判定)等については、例えば当該実習の指導者が、実習又は実習履歴を観察しながら、入力部50Uやその他の入力機器を用いて、行為の有無に関する判定を手動で行うような構成とすることもできる。
図9は緊急シナリオ有りで歯牙の切削治療を行う場合の処理を示すフローチャートである。
図9の処理が図8の処理と異なる点は、ステップS16とステップS17との間に緊急シナリオのステップS31が挿入され、ステップS18とステップS19の間にも緊急シナリオのステップS31が挿入されている点である。なお、ステップS17において、切削作業無しと判定された場合は、麻酔の作業状態を検出するステップS16に戻り、ステップS19において、充填作業無しと判定された場合には、切削の作業状態を検出するステップS18に戻る。
すなわち、本フローチャートでは、実習者による麻酔作業中及び切削作業中に、緊急シナリオの処理S31、S32が実行される。
図10は緊急シナリオの処理を示すフローチャートである。
緊急シナリオ処理は、概略的には、所定の条件に応じて緊急状態にすべきか否かを判定し、緊急状態にすべきと判定された場合に、生体情報表示部である実習者用の表示部62に緊急状態を示す生体情報を表示させる処理である。
すなわち、ステップS41において、システム制御ユニット50は、緊急状態にすべきか否かを判定する。緊急状態にすべきか否かの判定は、所定の条件を満たすか否かによって行われる。所定の条件を満たすか否かの判定は、診療状況取得部(診療器具情報検出部53、受診状況検出部54)で取得された診療状況に基づいて行われる場合と、診療状況に拘らず、確率的な条件下で判定される場合(偶発的な緊急状態の発生を再現する場合)等が想定される。
診療状況取得部(診療器具情報検出部53、受診状況検出部54)で取得された診療状況に基づいて、緊急状態にすべきか否かを判定する場合、実習プログラム73の開始時等に設定される設定状態(例えば、患者の体質、気質等)を加味して判定が行われてもよい。この例については、後により具体的に説明する。後者の例については、例えば、乱数表等に基づいて一定の確率的割合下で、ランダムに緊急状態にすべきと判定するような処理を挙げることができる。これにより、適正な診療行為であっても偶発的に発生する緊急状態の対処訓練をさせることができる。
いずれにせよ、本緊急シナリオ処理では、必然的に緊急状態に移行するのではなく、実習者の行為又は偶発的な原因等に起因して、部分的な割合で緊急状態に移行する。
次ステップS42では、システム制御ユニット50は、緊急状態を示す生体情報を少なくとも実習者用の表示部62に表示させる(図21参照)。なお、初期状態では、実習者用の表示部62には、平常状態を示す生体情報が表示されている(図20参照)。ステップS52では、当該平常状態を示す生体情報に代って、緊急状態を示す生体情報が表示される。ここで、表示部62に表示させるべき生体情報、即ち、緊急状態を示す生体情報と、平常状態を示す生体情報は、画像データ(静止画であっても動画であってもよい)或は数値データとして、外部記憶装置72等に予め記憶されている。表示部62に表示される生体情報は、当該外部記憶装置72に予め記憶されていた生体情報である。図20及び図21では、生体情報の例として、心電情報(心電波形)を示しているが、これに加えて又は代えて、脈拍、心電情報、血圧、血中酸素飽和度、筋電位のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい(図12、図15、図18に記載の「平常状態」、「緊急状態」の部分参照)。
上記のようにすることで、平常状態が継続する生体情報或は平常状態と緊急状態との間で変る生体情報、即ち、患者模型30の生体反応を模したリアルタイムな生体情報を表示部62に表示させることができる。表示部62には、そのようなリアルタイムな生体情報とは別に、比較用の生体情報が表示されてもよい。比較用の生体情報は、平常状態(例えば、診療開始前の状態)を示す生体情報として事前に記憶されている情報であり、上記初期状態で表示するために平常状態を示す生体情報として記憶されていたものであってもよいし、別途、初期の平常状態を示す生体情報として記憶されていたものであってもよい。
実習者は、表示部62に表示された生体情報を見て、患者を模した患者模型30の状態を察することができる。
次ステップS43では、システム制御ユニット50は、患者模型30に緊急状態動作を行わせる。より具体的には、システム制御ユニット50は、患者模型駆動部55に緊急状態を示すような表情、動作を行わせる。ここで、緊急状態において、患者模型駆動部55に行わせるべき表情、動作も、外部記憶装置72等に予め記憶されている。従って、システム制御ユニット50は、当該外部記憶装置72に記憶された動作データに従って、患者模型駆動部55に所定の緊急状態動作を行わせる。
実習者は、患者模型30の表情、動作を見ることによっても、患者を模した患者模型30の状態を察することができる。
次ステップS44では、システム制御ユニット50は、平常状態に復帰させるべきか否かを判定する。平常状態にすべきか否かの判定は、所定の条件を満たすか否かによって行われる。所定の条件を満たすか否かの判定は、診療状況取得部(診療器具情報検出部53、受診状況検出部54)で取得された診療状況に基づいて行われる場合と、診療状況に拘らず、確率的な条件下で判定される場合(偶発的に平常状態へ戻るケースを再現する場合)と、さらには、一定の時間の経過により判定される場合とがある。
診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて行われる場合の例については後により具体的に説明する。診療状況に拘らず、確率的な条件下で判定される場合は、例えば、上記と同様に、乱数表等に基づいて一定の確率的割合下で、平常状態に復帰させるべきと判定するような処理である。一定の時間の経過により判定される場合は、例えば、緊急状態に移行(開始時点は、判定時点、生体情報の表示時点、患者模型の駆動時期のいずれでもよい)してから一定時間経過後に、平常状態に復帰させるべきと判定するような場合である。ステップS44で平常状態に戻すべきではないと判定されると、ステップS42に戻り、平常状態に戻すべきと判定されると、ステップS45に進む。
ステップS45では、システム制御ユニット50は、平常状態を示す生体情報を少なくとも実習者用の表示部62に表示させる。
次ステップS46では、システム制御ユニット50は、患者模型30を平常状態に戻す。より具体的には、システム制御ユニット50は、患者模型駆動部55に平常状態を示すような表情、動作を行わせる。ここで、平常状態において、患者模型駆動部55に行わせるべき表情、動作も、外部記憶装置72等に予め記憶されている。従って、システム制御ユニット50は、当該外部記憶装置72に記憶された動作データに従って、患者模型駆動部55に所定の平常状態を示す動作を行わせる。
上記処理において、患者模型30の表情、動作は省略されてもよい。これにより、実習者に対して生体情報のみを手がかりとして、患者模型30(患者)の状態を察するように訓練することができる。
診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて緊急状態にすべきかどうかを判定する条件例、平常状態及び緊急状態の生体情報の表示例、患者模型駆動部の動作例、診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて平常状態に復帰させるべきかどうかを判定する条件例について説明する。
まず、麻酔行為に対するステップS31の緊急シナリオにおいて設定されるのに適した条件例等を説明する。
図11は、診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて緊急状態にすべきかどうかを判定する条件例を示している。同図は、不適切な方法で麻酔による刺針を行った場合を想定している。すなわち、条件として次の4つが設定されている。条件1は、プログラム(実習プログラム73)の開始時の設定等において、患者(患者模型30)が神経質であると設定されていることであり、条件2は、目模型(眼部32B)の特定形状検出部(形状認識センサ)が尖状の形状を認識したことであり、条件3は、頬部の接触センサ(特に、頬の内側に設けられた接触センサであることが好ましい)が、所定位置でない箇所への刺針を検出したことであり、条件4は麻酔部位の検出部(顎模型の導通センサ)が所定深さを超える刺針を検出したことであり、条件5は、同麻酔部位の検出部が所定位置でない箇所への刺針を検出したことである。そして、条件1の他に、条件2〜条件5中の2つ以上の条件が満たされた場合に、緊急状態にすべきと判定するとよい。勿論、満たすべき条件数は増減されてもよいし、他の条件が付加されてもよい。これは、以下の各判定処理においても同様である。満たすべき条件数が増えると、実習の難易度は低くなり、満たすべき条件数が小さくなれば難易度は高くなる。また、条件1のような、患者(患者模型30)の気質、体質に関する条件は設定されなくてもよい。患者模型30の気質、体質に関する条件が設定される場合であっても、心身とも健全健康な患者が緊急状態に陥るようなプログラムにしてもよい。
図12は、緊急状態の状態例として過換気症候群を想定し、平常状態の表示例と緊急状態の表示例と、緊急状態における患者模型30の動作に関する反応例を示している。まず、平常状態から緊急状態へ移行すると、最高血圧、最低血圧が下降し、脈拍数、SpO2(血中酸素飽和度)、呼吸数、精神性発汗量が上昇し、また、心電波形は、早くかつ上下に大きく振れるようになっている。緊急状態における患者模型30の反応例としては、目模型(眼部32B)を見開くようにし(瞼部32B2を開く)、口模型(口腔部32A)を開口したままにし、頭部模型32を仰け反らせ、腕模型の手を胸部に移動させ、胸部模型を早く激しく上下させる動作が想定される。その他、頭部模型32に皮膚を動かす駆動部を組込んだり、胴部模型38に鼓動を再現させる胸部模型等を組込んだり、顔面表情を苦しそうに歪めたりする動作を行わせてもよい。
図13は診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて平常状態に復帰させるべきかどうかを判定する条件例を処置例として示している。条件として次の6つの処置が行われたか否かが判定されるように設定されている。条件1は、診療器具24の駆動信号がOFFになったこと(実習者が処置を止める)であり、条件2は、顎模型の角度センサが初期値(閉口時)に戻ること(実習者が処置を止めて、口腔部32Aを閉じさせる)であり、条件3は音声検出用マイク等で「大丈夫ですか」等の音声を認識すること(実習者が声掛けをする)であり、条件4は診療台10の傾斜方向への傾動信号がONになったこと(実習者の操作により診療台10の椅子を倒す)であり、条件5は、音声検出用マイク等で「口を閉じて、ゆっくり鼻で呼吸して下さい」等の音声を認識すること(鼻呼吸(複式呼吸)指示)であり、条件6は処置を止めてから所定時間の経過を検出すること(休憩させる)ことである。これらの6つの条件が満たされた場合に、平常状態に復帰させるべきと判定するとよい。
条件5の鼻呼吸(複式呼吸)指示に換えて、ペーパーバッグ法の実施を検出したことであってもよい。この場合、例えば形状認識センサなどを用いて袋形状を認識させたり、頬の接触センサなどで患者の口腔及び鼻一帯が覆われたこと検出したりすること等で、ペーパーバック法の実施を検出することができる。
なお、麻酔行為に対する緊急シナリオにおいて、他の条件が設定され、当該条件を満たしたときに、他の緊急状態、例えば、「アナフィラキシーショック状態」に患者模型30が陥った状態とするようにしてもよい。この場合、表示部62には、アナフィラキシーショックの生理状態を示す生体情報の表示がなされる。患者模型30には、嘔吐或は意識喪失状態等を表現させるとよい。
このアナフィラキシーショック状態のときの対象方法としては、専門的な処置が必要となるので、救急車を呼ぶ対処が適切である。かかる適切な対処がなされたかの判定は、音声検出用マイク等で「救急車を呼んで」等の音声を認識することで行うことができる。
次に、切削行為に対するステップS32の緊急シナリオにおいて設定されるのに適した条件例等を説明する。
図14は、診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて緊急状態にすべきかどうかを判定する条件例を示している。同図は、高血圧症の患者に対して痛みを伴う切削を行った場合を想定している。すなわち、条件として次の6つが設定されている。条件1は、プログラム(実習プログラム73)の開始時の設定等において、患者(患者模型30)が高血圧症の患者であると設定されていることであり、条件2は、口腔部32Aに組込まれた下顎の開口度合を検出する角度センサの出力に基づいて顎模型の開口状態が所定時間を超過していることが検出されたことであり、条件3は同角度センサの出力に基づいて顎模型の開口状態が所定角度より大きいことが検出されたことであり、条件4は歯牙模型の圧力センサに基づいて強い力での切削によって所定値を上回る圧力が加えられたことが検出されたことであり、条件5は歯牙模型に設けられてその切削量を検出する導通センサによって、切削過多が検出されたこと(切削過多によって歯牙模型に導通された電気の抵抗値が小さくなり、電圧値又は電流値が大きくなった場合)であり、条件6は歯牙模型に設けられた温度センサによって切削に伴う摩擦によって所定温度を超過していることが検出されたことである。条件1の他に、条件2〜条件6中の2つ以上の条件が満たされた場合に、緊急状態にすべきと判定するとよい。
図15は、緊急状態の状態例として頻脈を想定し、平常状態の表示例と緊急状態の表示例と、緊急状態における患者模型30の動作に関する反応例を示している。まず、平常状態から緊急状態へ移行すると、最高血圧、最低血圧、脈拍数、呼吸数、精神性発汗量が上昇し、また、心電波形は、早くかつ上下に大きく振れるようになっている。緊急状態における患者模型30の反応例としては、目模型(眼部32B)の眼球部32B1をキョロキョロと左右上下に動かし、口模型(口腔部32A)を閉じようとする動作が想定される。その他、頭部模型32に皮膚を動かす駆動部を組込んだ場合には、顔面表情を苦しそうに歪めるとよい。
図16は診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて平常状態に復帰させるべきかどうかを判定する条件例を処置例として示している。条件として次の6つの処置が行われたか否かが判定されるように設定されている。条件1は、診療器具24の駆動信号がOFFになったこと(実習者が処置を止める)であり、条件2は、顎模型の角度センサが初期値(閉口時)に戻ること(実習者が処置を止めて、口腔部32Aを閉じさせる)であり、条件3は音声検出用マイク等で「大丈夫ですか」等の音声を認識すること(声掛けをする)であり、条件4は診療台10の起立方向への傾動信号がONになったこと(実習者の操作により診療台10の椅子を起す)であり、条件5は、スピットン12に設けられたコップ注水用の注水センサ(注水されたか否かを検出するスイッチ)がONになったことであり、条件6は処置を止めてから所定時間の経過を検出すること(患者を休憩させる)ことである。これらの6つの条件が満たされた場合に、平常状態に復帰させるべきと判定するとよい。
上記では歯の切削治療を行う場合を想定した説明であるが、その他の実習を行う場合でも、同様に考えることができる。
例えば、抜歯治療を行う場合には、次のようにするとよい。
図17は、診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて緊急状態にすべきかどうかを判定する条件例を示している。同図は、極度の緊張状態にある患者に無理のある抜歯を行った場合を想定している。すなわち、条件として次の5つが設定されている。条件1は、プログラム(実習プログラム73)の開始時の設定等において、患者(患者模型30)が極度の緊張状態であると設定されていることであり、条件2は、口腔部32Aに組込まれて下顎の開口度合を検出する角度センサの出力に基づいて顎模型の開口状態が所定角度より大きいことが検出されたことであり、条件3は顎模型に組込まれた衝撃センサに基づいて、診療器具24の接触又は無理矢理な抜歯により所定値を上回る衝撃が検出されたことであり、条件4は、歯牙模型に組込まれた圧力センサによって、抜歯対象歯に対する所定値を上回る圧力が検出されたことであり、条件5は同圧力センサによって不適切な抜歯方向による隣接歯等に対する所定値を上回る圧力が検出されたことである。
図18は、緊急状態の状態例として神経性ショックを想定し、平常状態の表示例と緊急状態の表示例と、緊急状態における患者模型30の動作に関する反応例を示している。まず、平常状態から緊急状態へ移行すると、最高血圧、最低血圧、脈拍数、SpO2が下降し、呼吸数、精神性発汗量が上昇する。また、心電波形は、大きく下方に振れるようになっている。緊急状態における患者模型30の反応例としては、目模型(眼部32B)を半開きで白目をむく状態にし、口模型(口腔部32A)を半開きにし、頭部模型32を、首を弛緩させて傾斜させ、腕模型を弛緩状態にするとよい。その他、胸部模型を早く上下させる動作を行わせてもよい。
図19は診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて平常状態に復帰させるべきかどうかを判定する条件例を処置例として示している。条件として次の6つの処置が行われたか否かが判定されるように設定されている。条件1は、診療器具24の駆動信号がOFFになったこと(実習者が処置を止める)であり、条件2は、顎模型の角度センサが初期値(閉口時)に戻ること(実習者が処置を止めて、口腔部32Aを閉じさせる)であり、条件3は音声検出用マイク等で「大丈夫ですか」等の音声を認識すること(患者を安心させる)であり、条件4は腕模型の手に組込まれた圧力センサ又は腕模型の動きを検出するセンサ等によって、手を握ったことを検出すること(患者を安心させる)であり、条件5は脚模型に組込まれたポテンショメーター等の位置検出センサ等によって、下肢の上部方向への移動を検出すること(ショック体位(足側高位))であり、条件6は処置を止めてから所定時間の経過を検出すること(患者を休憩させる)ことである。これらの6つの条件が満たされた場合に、平常状態に復帰させるべきと判定するとよい。
上記各例は勿論一例に過ぎない。例えば、上記に説明した緊急状態にすべきか否かの各条件(図11、図14、図17参照)を満たした場合に、緊急状態の状態例、反応例(図12、図15、図18参照)のいずれが引き起されてもよい。緊急状態にすべきか否かの各条件(図11、図14、図17参照)を満たした場合に、緊急状態の状態例、反応例(図12、図15、図18参照)のいずれからランダムに引き起される例であってもよい。この場合、臨床上、想定の難しい緊急状態の訓練が可能となる。
また、診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて平常状態に復帰させるべきかどうかを判定する処置例において、図13、図16、図19に記載の実施例では、全ての条件が満たされた場合に、平常状態に復帰させるべきと判定がなされるようになっているが、例えば、全ての条件のうち、2つ以上の条件の組合せで復帰させるべき判定がなされるような、実習の難易度が上記の例より低い実習プログラムであってもよい。
以上のように構成された医療用実習装置によると、生体情報表示部である表示部62に、緊急状態を示す生体情報が不規則的に表示されるため、実習者に対して、生体情報に基づいて患者が緊急状態に陥ったか否かの判断能力や、突発的に発生する緊急状態への対処能力を訓練できる。
特に、実習者の診療状況に応じて表示部62に緊急状態を示す生体情報が表示されるため、実習者に対して、どのような診療状況、診療行為が緊急状態を引き起し易いかを訓練することができる。
特に、診療状況取得部は、患者模型30に対する診療実習に用いられる診療器具24に関する情報を出力する診療器具情報検出部53、受診状況検出部54等を含むため、実際の診療状況に近い実習行為によって、どのような診療状況、診療行為が緊急状態を引き起し易いかを訓練することができる。
例えば、診療器具24の標準的な音や匂いがもとで実際の患者がショックを起こすことは、まれであるが、注射を誤って射したり、ハンドピースで口唇を切ったりするとショックを起こす原因となり得ること、また、スケーラのような尖がった器具を目の前に持ってきてもショックを起こしたり、失神したりする原因となること、等を実習者に体感させ学ばせることができる。
また、実習者に対して、患者模型30の動作に基づいても患者が緊急状態に陥ったか否かの判断能力を訓練できる。
さらに、実習者の診療状況に応じた表示部62に平常状態を示す生体情報が表示されるため、実習者に対して、緊急状態に対する処置の適正性を自ら判断、確認させることができる。
また、実習者に対して、患者模型30の動作に基づいても、緊急状態に対する処置の適正性を自ら判断、確認させることができる。
また、患者模型30は、患者模型駆動部55として、口腔部駆動部33、瞼開閉駆動部36、眼球駆動部37等を含むため、実習者は、患者模型の表情、動作等を観察しながら、現実に近い実習を行える。
また、表示部62(61)に表示させる生体情報として、脈拍、心電情報、血圧、血中酸素飽和度、筋電位のうちの少なくとも1つを含むため、実際の診療中に提供される情報と同様な情報を見て、現実に近い実習が可能となる。これにより、実習者は患者の注意すべき情報や状況の理解を深めることができる。なお、前記の種々の生体情報の他にも、例えば、患者(患者模型30)の体温等その他実際の医療現場で必要とされる生体情報を表示させることもできる。
{変形例}
なお、図22に示すように、上記緊急状態にすべきと判定された場合に、緊急状態を音又は光、あるいはそれらの組合せによって報知する報知部80を備えていてもよい。すなわち、システム制御ユニット50は、緊急状態にすべきと判定された場合に、報知部を通じて緊急状態を音又は光、あるいはそれらの組合せによって報知してもよい。報知部80としては、スピーカ、ブザー、LED又は電球等を用いることができる。もっとも、報知の方法はこれに限らず、表示部62上の効果的表示(例えば文字の点滅や色文字での表示等)を行ったり、あるいは効果的表示と音や光を組合せるようなものでもよい。
これにより、実習者に対して、実習中の緊急状態を確実に報知することができる。
また、上記実施形態では、システム制御ユニット50が生体情報表示部としての表示部62の表示制御を行ったが、医療用実習装置が生体情報表示部に緊急状態を示す生体情報を表示させる構成は上記例に限られない。
例えば、図23に示すように、患者模型駆動部55として、患者(患者模型30)の仮想的な脈拍、心臓の鼓動等を再現するスピーカや実際の人体の拍動に近似した脈拍、心臓の鼓動等を再現する振動発生体等の生体動作生成部90を組込み、システム制御ユニット50が緊急状態を判定した場合に、これらの生体動作生成部90を所定の緊急状態に即した動作を行わせるようにしてもよい。そして、脈拍、心臓の鼓動等を検出してモニタに表示する一般的な生体情報モニタ装置92の生体センサ94によって、当該生体動作生成部90の動作を検出し、その検出結果を生体情報モニタ装置92のモニタに表示させるようにしてもよい。
この場合、システム制御ユニット50の処理としては、図10に示すフローチャートにおいて、生体情報の表示処理(ステップS42)を行わず、代りに、患者模型の緊急状態動作として、上記生体動作生成部90の動作を行わせれば(ステップS43)よいことになる。
この変形例によると、患者模型30は、患者模型駆動部55として、生体動作を生成する生体動作生成部90を含むため、診療環境の再現性に優れ、より現実に近い状況で実習できる。
また、実際の診療等で用いられる生体センサ(血圧計等)等を用いて実習を行えるため、診療環境の再現性に優れ、より現実に近い状況で実習できる。
勿論、本変形例において、上記実施形態と同様に、表示部62による生体情報の表示が行われていてもよい。この場合、図10に示すフローチャートにおいて、ステップS42とステップS43との順序が入れ替わったフローの処理がなされればよいことになる。あるいは、システム制御ユニット50によって、ステップS42とステップS43とを、並列的に処理し、直前に処理されたステップに直後のステップが依存しないような構成としてもよい。
また、図24に示す変形例に示すように、患者状態判定部51aは、診療状況取得部で取得された診療状況に基づいて、患者模型30をリラックス状態にすべきか否かを判定し、リラックス状態にすべきと判定された場合に、生体動作情報表示部又は他の表示部に、患者がリラックス状態であることを示す情報を表示させるようにしてもよい。
リラックス状態であるかどうかの判定処理は、図8又は図9に示すプログラムの実行中に一定時間毎に又は並列的に行われるとよい。リラックス状態であるかどうかの判定は、例えば、脈拍及び血圧が一定の変動範囲内にあるかどうかや、呼吸数が一定の変動範囲内にあるいかどうか等に基づいて行うことができる。
患者(患者模型30)がリラックス状態である旨の表示は、表示部62による表示の他、他の表示部、表示ランプ等によって行われてもよい。その他にも、例えば報知部80で、リラックス状態を示す特定の音を発するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、診療状況取得部は、実際の実習行為を模した行為をセンサ等によって取得する構成としているが、必ずしもその必要はない。例えば、実習行為の各行為、診療器具、薬品等に対応付けられた個体識別情報を有する個体識別装置を準備しておき、診療状況取得部としてのリーダ装置が前記個体識別装置の識別符号を読取ることで、適切な行為、診療器具、薬品の使用等の診療状況を取得する構成であってもよい。個体識別装置及びリーダ装置としては、磁気方式、バーコードのような一次元コードや一般的な二次元コードの読み取り、RFID(Radio Frequency IDentification)等の各種方式のものを用いることができる。
例えば、上記実施形態における音声認識の代りに、当該音声を記載し、かつ、個体識別装置を含むカードを、リーダ装置で読みとらせることによって上記判定を行うようにしてもよい。
また、麻酔薬、抗菌薬、消炎剤、鎮痛剤、止血剤等々の種々の薬の容器や麻酔器具などにバーコードやRFIDタグなどの個体識別情報を有する個体識別装置を設けておいて、これをリーダ装置で読み取らせ、更にそのデータを、診療状況を示すデータとして処理する(実習履歴として記録する)ことによって、患者に対する麻酔薬の投与の事実を認識させてもよい。この場合、実際の薬の容器や器具等を準備せずに、これらを模擬するための個体識別装置を設けたカード又は模型等を代替物として用いてもよい。この場合、実際の薬や器具を準備する必要がないので実習に用いる各種医療用ツールの取扱いや管理が簡単である。
また、上記ペーパーバッグ法の実施を検出する際に、例えば、実際に「ペーパーバック法」を行いその実施情報を検出させなくても、「ペーパーバッグ法」の実施情報(個体識別情報)を有する個体識別装置を組み込んだ施術カードのようなアイテムを準備しておいて、これをリーダ装置に読み込ませることによって、その実施の検出を行う構成とし、診療状況を示すデータとして処理する(読み取った実施情報を実習履歴として記録する)ようにしてもよい。
これは「ペーパーバッグ法」に限ったことではなく、例えば、呼吸困難に陥った際の「酸素マスクの着用による100%酸素の投与」、誤飲・誤嚥がおきた際の「背部強打法」、「ハイムリック法(患者を背後から抱きかかえた状態で腹部を瞬間的に強く圧迫する処置)」など、センサでの検出が困難であったり、患者模型を使った実施が困難であったりするような、種々の対処内容に応用することができる。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。