JP2012177181A - アークイオンプレーティング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蒸発源の端面から内方に所定幅の端部領域を除く内側領域表面の磁束密度が10〜15mTであり、端部領域表面の磁束密度が内側領域表面の磁束密度よりも3mT以上大きく、蒸発源の表面からワークまでの距離が120〜300mmであり、その距離の間の磁束密度の絶対値の積算値が260mT・mm以下であり、蒸発面における磁力線は、蒸発面の法線に対する角度θが0°<θ<20°であり、端部領域表面では内側領域に向けて傾いており、内側領域の磁束密度は、標準偏差が3以下である。
【選択図】 図3
Description
その磁界として、特許文献1には、蒸発源の蒸発面における磁界の強さが5mT(ミリテスラ)以上で、アーク電流値が200A以上であることが推奨されている。また、蒸発面における法線に対する磁力線の最大角度θが60°以下であることが推奨されている。
また、特許文献2には、蒸発面の中心から蒸発面の径方向に沿った任意の線分上における磁束密度の最小値が4.5mT以上、平均値が8mT以上、標準偏差が3以下である磁界を形成することで、陰極(カソード)の利用効率を向上させることができると記載されている。
特許文献3には、ターゲット裏面中心に第1磁石、裏面の外周部に磁界が反極性かつ第1磁石の磁力の0.5〜1倍の磁力を有する6個以上の第2磁石を均等間隔で配置し、さらに第2磁石と同軸かつほぼ同じ外径の環状電磁コイルを隣接させて配置し、アークスポットの可動領域を制御して、エロージョン領域を広げ、ターゲット寿命を向上させることが記載されている。
また、ターゲットの周辺部に比べて中心部の磁力が小さいため、中心部にアークスポットが集中してドロップレットが発生し易く、薄膜表面の平滑性を損なう原因となる。
これを解決するため、磁力を大きくすると、ワーク近傍での磁力も大きくなって蒸発源からのイオン粒子の飛程が大きくなり、その間にイオン粒子の価数が上昇して、ワークに引き込まれる力が大きくなり、薄膜の残留応力が大きくなる傾向にある。この場合、ワークにかけるバイアス電圧を低くすればよいと考えられるが、磁力が大きいために、バイアス電圧を低くしても残留応力を低減させることは難しい。
一方、蒸発源の端部領域においては、内側領域表面よりも磁束密度が大きいので、内側領域表面のアークスポットが端部領域に向かおうとしても、端部領域の強い磁場によって跳ね返されるようにして、内側領域に戻される。したがって、アークスポットを端部領域から表面部以外に入り込む現象を防止して、ほぼ内側領域内に閉じ込めた状態で移動させることができる。所定幅としては端面から1cmの幅が望ましい。
これにより、蒸発源を面内均一に蒸発させて、薄膜表面の平滑性を高めることができる。
中央磁石とリング状磁石とを配置し、中央磁石により蒸発源の中央部の磁束密度を大きくすることにより、蒸発源表面の磁束密度を面内均一にし、リング状磁石を極性を逆にして二重に配置したことにより、ワークまでの空間における磁場を打ち消し合って、積算値を小さくすることができる。
アークスポットを端部領域から外に移動しないようにするために、端部領域表面の磁束密度を内側領域表面の磁束密度より少なくとも3mT大きくしておくことが重要である。より好ましくは、内側領域表面の磁束密度が10〜15mTに対して、端部領域表面の磁束密度を18mT以上とするとよい。
磁力線が蒸発面の法線に対して上記の角度に設定されていると、蒸発面にアークスポットを閉じ込める効果がある。
また、アークスポットを移動させる力は、磁場における蒸発面に平行な成分と、蒸発面に垂直な成分とのそれぞれの大きさにより決まり、その向きは、蒸発面に平行な成分に直角の方向と、平行な成分に同じ方向との合成方向となる。したがって、磁場における蒸発面に平行な成分を蒸発面の内側領域に向けるようにすれば、端部領域表面にアークスポットが移動しようとしても蒸発面の内側領域に戻す方向に力が働き、端部領域から外に飛び出すことが防止される。
蒸発面の内側領域においては、局部的な集中をなくして全体に均等にアークスポットが移動することにより、蒸発源が均等に消耗し、利用効率がよくなる。
この実施形態のアークイオンプレーティング装置1は、図1及び図2に示すように、真空チャンバ2内に、ワーク(被コーティング物)3を保持するテーブル4が設けられるとともに、このテーブル4を介して両側に、カソードとしての蒸発源5がそれぞれ設けられている。テーブル4は、その上面に複数のワーク3を保持する支持棒6が周方向に間隔をおいて複数本立設されるとともに、これら支持棒6を図1の矢印で示すように水平回転する機構を有しており、自身も旋回機構(図示略)により水平に旋回させられるターンテーブルとなっている。そして、支持棒6に保持したワーク3を自転させながら公転させる構成である。
また、真空チャンバ2には、内部に反応ガスを導入するガス導入口7と、内部から反応ガスを排出するガス排出口8とが設けられているとともに、テーブル4の後方に、テーブル4上のワーク3を加熱して被膜の密着力を高めるためにヒータ9が設けられている。
また、テーブル4にも、これに保持されるワーク3に負のバイアス電圧をかけるバイアス電源14が接続されている。
蒸発源5の背部の中央磁石15は、周辺部よりも中央部の厚さが大きい円錐状に形成されており、その円錐面を蒸発源5に向けた状態に配置されている。言い換えれば、中央磁石15の極の表面(円錐面)は、蒸発源5の背面に中央部が最も接近し、周辺部に向かうにしたがって漸次離間する配置となっている。このため、蒸発源5の表面の磁束密度は、周辺部より中央部に集中して大きくなる。
図示例では、中央磁石15が蒸発源5の前方に向けた側の極がN極、リング状磁石のうち、内側の磁石16Aは、蒸発源5の前方に向けた側の極がS極、外側の磁石16Bは、蒸発源5の前方に向けた側の極がN極となる配置とされている。
図3に蒸発面11上の磁力線のベクトルを模式的に示したように、破線で示すように、内側領域Cにおいては、蒸発面11の法線に対する角度が0°<θ<20°とされ、端部領域Eにおいては、実線で示すように、内側領域Cの磁力線よりも大きい磁束密度の磁力線が蒸発面11の法線に対する角度は0°<θ<20°とされるが、内側領域Cに向けて傾いた状態に形成される。
まず、テーブル4の支持棒6にワーク3を保持して、真空チャンバ2内を真空引きした後、Ar等をガス導入口7より導入して、蒸発源5とワーク3上の酸化物等の不純物をスパッタすることにより除去する。そして、再度真空チャンバ2内を真空引きした後、窒素ガス等の反応ガスをガス導入口7から導入し、蒸発源5に向けたアノード電極12をトリガとしてアーク放電を発生させることにより、蒸発源5を構成する物質をプラズマ化して反応ガスと反応させ、テーブル4上のワーク3表面に窒化膜等を成膜する。
このとき、蒸発源5の蒸発面11上には、前述した磁石15,16A,16Bによって磁界が発生しており、この磁界の作用によりアークスポットの移動が制御される。
なお、この内側領域Cの磁束密度の標準偏差が3以下としたのは、蒸発源5を均等に消耗させるためである。
そして、このようにアークスポットAを内側領域C内に閉じ込め、端部領域Eを超えることが拘束されるので、アークスポットが蒸発源表面部以外に入り込む現象が防止され、安定した放電を維持することができる。
蒸発源として直径100mm、厚さ16mmのTiAl(Ti:Al=50:50)を用いた。
そして、蒸発源の外側の一組のリング状磁石及び蒸発源裏面の中央磁石とも永久磁石のネオジム磁石で、保磁力が2000kA/m、表面磁束密度が1150mTとした。比較例として、蒸発源の外側には、1個のリング状磁石で、ネオジム磁石で保磁力が2000kA/m、表面磁束密度が1150mTとした。蒸発源の裏面中央の磁石はフェライト磁石で、保磁力が250kA/m、表面磁束密度が350mTとした。
この図5に示されるように、実施例のものでは、蒸発源の中心から比較的広い範囲でほぼ一定の領域が存在し、外周端部付近で15mT以上に大きくなっている。端部領域を除く内側領域の部分では、磁束密度は標準偏差3以下であった。また、磁力線と蒸発面の法線とのなす角度(傾斜角)は、全面で0°<θ<20°の範囲となっている。また、その角度が比較的小さいので、磁束密度の絶対値と垂直成分との差はあまり生じていない。
なお、磁束密度は、磁束計にて、蒸発源表面において蒸発源表面の中心を通る直線上を測定した。蒸発源の表面では、測定箇所を10mm間隔と設定し、各測定点で蒸発源表面の垂直方向及び平行方向の磁束密度を測定した。また、これらの測定値から各測定点での磁束密度及び磁力線と蒸発面の法線とのなす角度(傾斜角)を算出した。また、蒸発源表面での磁束密度の標準偏差は、端部領域の磁束密度が大きい部分を除いた磁束密度の数値から標準偏差を算出した。
積算磁力は、磁束計にて、蒸発源表面中心からワークまでの直線上を10mm間隔で磁束密度を求め、これを蒸発源からワークまで積算して求めた。
残留応力は、X線回折を利用した2θ―sin2φ法により求めた。
表1が比較例、表2が実施例を示している。
例えば、上記実施形態では、中央磁石を円錐形状に形成したが、蒸発源の磁束密度を周辺部よりも中央部に集中させて大きくすることができるものであればよく、同一極の磁石を中央部に複数集中させて設け、周辺部には分散して配置することにより、磁束密度に分布を持たせるようにしてもよい。
また、蒸発源を円板状に形成したが、柱状、筒状等のものにも適用することができ、その場合も、端面から1cm幅の範囲を端部領域として、前述したような磁界を設定すればよい。
2 真空チャンバ
3 ワーク
4 テーブル
5 蒸発源
6 支持棒
7 ガス導入口
8 ガス排出口
9 ヒータ
11 蒸発面
12 アノード電極
13 アーク電源
14 バイアス電源
15 中央磁石
16A,16B リング状磁石
Claims (5)
- 蒸発源の端面から内方に所定幅の端部領域を除く内側領域表面の磁束密度が10〜15mTであり、前記端部領域表面の磁束密度が前記内側領域表面の磁束密度よりも大きく、かつ前記蒸発源の表面からワークまでの距離が120〜300mmであり、その距離の間の磁束密度の絶対値の積算値が260mT・mm以下であることを特徴とするアークイオンプレーティング装置。
- 前記蒸発源の背面に、蒸発源の表面の磁束密度を周辺部より中央部に集中させて大きくするように中央磁石が設けられ、蒸発源の半径方向外側に、極性を逆にした二重のリング状磁石が設けられており、かつ中央磁石と二重のリングの内側の極性が逆であることを特徴とする請求項1記載のアークイオンプレーティング装置。
- 前記端部領域表面における磁束密度は前記内側領域表面の磁束密度よりも3mT以上大きいことを特徴とする請求項1又は2記載のアークイオンプレーティング装置。
- 前記蒸発面における磁力線は、前記蒸発面の法線に対する角度θが0°<θ<20°であり、前記端部領域表面では前記内側領域に向けて傾いていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアークイオンプレーティング装置。
- 前記内側領域の磁束密度は、標準偏差が3以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアークイオンプレーティング装置。
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