JP2012177181A - アークイオンプレーティング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】アークスポットが蒸発源の表面部以外に入り込む現象を防止して、安定した放電を行わせるとともに、表面平滑性を向上させ、残留応力の制御性が高い薄膜を形成可能なアークイオンプレーティング装置を提供する。
【解決手段】蒸発源の端面から内方に所定幅の端部領域を除く内側領域表面の磁束密度が10〜15mTであり、端部領域表面の磁束密度が内側領域表面の磁束密度よりも3mT以上大きく、蒸発源の表面からワークまでの距離が120〜300mmであり、その距離の間の磁束密度の絶対値の積算値が260mT・mm以下であり、蒸発面における磁力線は、蒸発面の法線に対する角度θが0°<θ<20°であり、端部領域表面では内側領域に向けて傾いており、内側領域の磁束密度は、標準偏差が3以下である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、アーク放電によって蒸発源をイオン化させてワークの上に成膜させるアークイオンプレーティング装置に関する。
アークイオンプレーティング装置は、真空中で金属材料やセラミックス材料の蒸発源を陰極(カソード)としてアーク放電を起こし、それにより蒸発源を蒸発させると同時にイオンとして放出させ、一方、ワーク(被コーティング物)には負のバイアス電圧を印加しておき、そのワーク表面にイオンを加速供給して成膜する装置である。蒸発源としては、チタンやクロムが広く用いられており、例えば、高速度鋼や超硬合金、サーメットなどからなる切削工具の表面に、耐摩耗性向上のためにTi、TiAl、CrAlなどの硬質皮膜を形成する技術に利用されている。
この種のアークイオンプレーティング装置では、蒸発源表面の微小領域にアーク電流が集中することにより、その微小領域がアークスポットとなって蒸発源を溶解蒸発させる。このアークスポットが滞留すると、その滞留部の付近の材料が蒸発せずに溶解して飛散するので、蒸発源の背部に磁石を設置して、アークスポットの移動を促進させることが行われる。
その磁界として、特許文献1には、蒸発源の蒸発面における磁界の強さが5mT(ミリテスラ)以上で、アーク電流値が200A以上であることが推奨されている。また、蒸発面における法線に対する磁力線の最大角度θが60°以下であることが推奨されている。
また、特許文献2には、蒸発面の中心から蒸発面の径方向に沿った任意の線分上における磁束密度の最小値が4.5mT以上、平均値が8mT以上、標準偏差が3以下である磁界を形成することで、陰極(カソード)の利用効率を向上させることができると記載されている。
特許文献3には、ターゲット裏面中心に第1磁石、裏面の外周部に磁界が反極性かつ第1磁石の磁力の0.5〜1倍の磁力を有する6個以上の第2磁石を均等間隔で配置し、さらに第2磁石と同軸かつほぼ同じ外径の環状電磁コイルを隣接させて配置し、アークスポットの可動領域を制御して、エロージョン領域を広げ、ターゲット寿命を向上させることが記載されている。
特許第4034563号公報 特開2009−144236号公報
しかしながら、放電中にアークスポットが蒸発源表面部以外に入り込む現象がみられ、それに起因して電源の停止を招くなど、安定的に放電ができなくなるという問題が生じる。
また、ターゲットの周辺部に比べて中心部の磁力が小さいため、中心部にアークスポットが集中してドロップレットが発生し易く、薄膜表面の平滑性を損なう原因となる。
これを解決するため、磁力を大きくすると、ワーク近傍での磁力も大きくなって蒸発源からのイオン粒子の飛程が大きくなり、その間にイオン粒子の価数が上昇して、ワークに引き込まれる力が大きくなり、薄膜の残留応力が大きくなる傾向にある。この場合、ワークにかけるバイアス電圧を低くすればよいと考えられるが、磁力が大きいために、バイアス電圧を低くしても残留応力を低減させることは難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、アークスポットが蒸発源表面部以外に入り込む現象を防止して、安定した放電を行わせるとともに、表面平滑性を向上させ、残留応力の制御性が高い薄膜を形成可能なアークイオンプレーティング装置を提供することを目的とする。
本発明のアークイオンプレーティング装置は、蒸発源の端面から内方に所定幅の端部領域を除く内側領域表面の磁束密度が10〜15mTであり、前記端部領域表面の磁束密度が前記内側領域表面の磁束密度よりも大きく、かつ前記蒸発源の表面からワークまでの距離が120〜300mmであり、その距離の間の磁束密度の絶対値の積算値が260mT・mm以下であることを特徴とする。
蒸発面に生じるアークスポットは、電子の放出点であるから、蒸発源の利用効率を高めるには、蒸発面の全域で平均的に動き回れるようにすることが重要である。本発明では、蒸発面の磁束密度を10〜15mTとした内側領域表面においては、アークスポットは高速でランダムに動き回ることができる。また、その放電領域にアークスポットを閉じ込める効果を得るには、磁束密度として10mT以上必要である。磁束密度が15mTを超えると、アークスポットの存在自体が著しく制限され、成膜速度が著しく低下してしまう問題がある。また、アーク放電の電圧値が通常時より上昇する問題も発生してしまう。
一方、蒸発源の端部領域においては、内側領域表面よりも磁束密度が大きいので、内側領域表面のアークスポットが端部領域に向かおうとしても、端部領域の強い磁場によって跳ね返されるようにして、内側領域に戻される。したがって、アークスポットを端部領域から表面部以外に入り込む現象を防止して、ほぼ内側領域内に閉じ込めた状態で移動させることができる。所定幅としては端面から1cmの幅が望ましい。
これにより、蒸発源を面内均一に蒸発させて、薄膜表面の平滑性を高めることができる。
また、蒸発源からワークまでの間の磁束密度の絶対値の積算値を小さくして、ワーク近傍の磁束密度が小さくなるようにしているから、蒸発源のイオン粒子の飛程を短くすることができる。このため、イオンの価数の上昇を抑制して、ワークに対するバイアス電圧によるイオンの引き込み効果を低減することができ、その結果、薄膜の残留応力の制御が容易になる。
本発明のアークイオンプレーティング装置において、前記蒸発源の背面に、蒸発源の表面の磁束密度を周辺部より中央部に集中させて大きくするように中央磁石が設けられ、蒸発源の半径方向外側に、極性を逆にした二重のリング状磁石が設けられているとよい。
中央磁石とリング状磁石とを配置し、中央磁石により蒸発源の中央部の磁束密度を大きくすることにより、蒸発源表面の磁束密度を面内均一にし、リング状磁石を極性を逆にして二重に配置したことにより、ワークまでの空間における磁場を打ち消し合って、積算値を小さくすることができる。
本発明のアークイオンプレーティング装置において、前記端部領域表面における磁束密度は前記内側領域表面の磁束密度よりも3mT以上大きいとよい。
アークスポットを端部領域から外に移動しないようにするために、端部領域表面の磁束密度を内側領域表面の磁束密度より少なくとも3mT大きくしておくことが重要である。より好ましくは、内側領域表面の磁束密度が10〜15mTに対して、端部領域表面の磁束密度を18mT以上とするとよい。
本発明のアークイオンプレーティング装置において、前記蒸発面における磁力線は、前記蒸発面の法線に対する角度θが0°<θ<20°であり、前記端部領域表面では前記内側領域に向けて傾いているとよい。
磁力線が蒸発面の法線に対して上記の角度に設定されていると、蒸発面にアークスポットを閉じ込める効果がある。
また、アークスポットを移動させる力は、磁場における蒸発面に平行な成分と、蒸発面に垂直な成分とのそれぞれの大きさにより決まり、その向きは、蒸発面に平行な成分に直角の方向と、平行な成分に同じ方向との合成方向となる。したがって、磁場における蒸発面に平行な成分を蒸発面の内側領域に向けるようにすれば、端部領域表面にアークスポットが移動しようとしても蒸発面の内側領域に戻す方向に力が働き、端部領域から外に飛び出すことが防止される。
本発明のアークイオンプレーティング装置において、前記内側領域の磁束密度は、標準偏差が3以下であるとよい。
蒸発面の内側領域においては、局部的な集中をなくして全体に均等にアークスポットが移動することにより、蒸発源が均等に消耗し、利用効率がよくなる。
本発明のアークイオンプレーティング装置によれば、蒸発源の表面でアークスポットを高速でランダムに移動させるとともに、アークスポットが表面部以外に入り込む現象を防止して、安定した放電を生じさせることができ、薄膜表面の平滑性を高めることができる。また、蒸発源からワークまでの間の磁束密度の絶対値の積算値を小さくしたことから、ワークに対するバイアス電圧によるイオンの引き込み効果を低減して、薄膜の残留応力の制御を容易にすることができる。
本発明のアークイオンプレーティング装置の一実施形態を模式的に示した平断面図である。 図1の縦断面図である。 蒸発面上の磁力線のベクトルを示す模式図である。 蒸発面上の磁力線によるアークスポットの移動原理を説明する模式図である。 蒸発面上の磁束密度、磁力線の角度の分布を示すグラフである。
以下、本発明のアークイオンプレーティング装置の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
この実施形態のアークイオンプレーティング装置1は、図1及び図2に示すように、真空チャンバ2内に、ワーク(被コーティング物)3を保持するテーブル4が設けられるとともに、このテーブル4を介して両側に、カソードとしての蒸発源5がそれぞれ設けられている。テーブル4は、その上面に複数のワーク3を保持する支持棒6が周方向に間隔をおいて複数本立設されるとともに、これら支持棒6を図1の矢印で示すように水平回転する機構を有しており、自身も旋回機構(図示略)により水平に旋回させられるターンテーブルとなっている。そして、支持棒6に保持したワーク3を自転させながら公転させる構成である。
また、真空チャンバ2には、内部に反応ガスを導入するガス導入口7と、内部から反応ガスを排出するガス排出口8とが設けられているとともに、テーブル4の後方に、テーブル4上のワーク3を加熱して被膜の密着力を高めるためにヒータ9が設けられている。
蒸発源5は、図示例のものは、円板状に形成され、その一面をテーブル4上のワーク3に向けて(テーブル4の半径方向と直交させて)配置されており、テーブル4に向けた面が蒸発面11となる配置とされる。そして、この蒸発源5の蒸発面11の適宜箇所を向けてアノード電極12が配置され、蒸発源5をカソードとし、アノード電極12と蒸発源5との間に負のバイアス電圧をかけるアーク電源13が接続されている。
また、テーブル4にも、これに保持されるワーク3に負のバイアス電圧をかけるバイアス電源14が接続されている。
また、蒸発源5の背面中央部に中央磁石15が設けられるとともに、蒸発源5の半径方向外側位置に、蒸発源5の外周面を囲むように二つのリング状磁石16A,16Bが設けられている。これら磁石15,16A,16Bは永久磁石である。
蒸発源5の背部の中央磁石15は、周辺部よりも中央部の厚さが大きい円錐状に形成されており、その円錐面を蒸発源5に向けた状態に配置されている。言い換えれば、中央磁石15の極の表面(円錐面)は、蒸発源5の背面に中央部が最も接近し、周辺部に向かうにしたがって漸次離間する配置となっている。このため、蒸発源5の表面の磁束密度は、周辺部より中央部に集中して大きくなる。
一方、蒸発源5の外側に設けられる一組のリング状磁石16A,16Bは、蒸発源5の中心に対して二重のリング状に配置されるとともに、相互に反対の極性とされている。また、その内側の磁石16Aは、中央磁石15の極に対しても反対の極となる配置である。
図示例では、中央磁石15が蒸発源5の前方に向けた側の極がN極、リング状磁石のうち、内側の磁石16Aは、蒸発源5の前方に向けた側の極がS極、外側の磁石16Bは、蒸発源5の前方に向けた側の極がN極となる配置とされている。
このような磁石配置としたことにより、中央磁石15によって蒸発源5表面の中央に磁力線が集中して、中央の磁束密度が大きくなっているとともに、各磁石15,16A,16Bの磁場の一部が相互に重なり合うように作用する。リング状磁石16A,16Bは、いずれも蒸発源5の外周部で磁力線が集中し、蒸発源5の中央部にかけて弱くなるが、極性を反対にして二重に配置されているので、これらの磁力線が逆向きとなり、相互に打ち消すように作用する。
そして、このような複数の磁石15,16A,16Bの磁束密度を適宜に設定することにより、これらの合成された磁場が蒸発源5の表面に作用する。その蒸発源5の表面における磁束密度は、蒸発源5の外周端面から内方に1cm幅のリング状の端部領域Eを除く内側領域C表面においては10〜15mT(ミリテスラ)、標準偏差が3以下とされ、リング状の端部領域E表面においては、内側領域C表面の磁束密度よりも大きく、15mT以上とされる。
また、蒸発源5を通過する磁力線は、その蒸発面11の法線に対する角度θが0°<θ<20°とされ、リング状の端部領域E表面では、その角度が内側領域Cに向けて傾斜するように形成される。
図3に蒸発面11上の磁力線のベクトルを模式的に示したように、破線で示すように、内側領域Cにおいては、蒸発面11の法線に対する角度が0°<θ<20°とされ、端部領域Eにおいては、実線で示すように、内側領域Cの磁力線よりも大きい磁束密度の磁力線が蒸発面11の法線に対する角度は0°<θ<20°とされるが、内側領域Cに向けて傾いた状態に形成される。
このように構成したアークイオンプレーティング装置1を用いてワーク3に成膜する方法について説明する。
まず、テーブル4の支持棒6にワーク3を保持して、真空チャンバ2内を真空引きした後、Ar等をガス導入口7より導入して、蒸発源5とワーク3上の酸化物等の不純物をスパッタすることにより除去する。そして、再度真空チャンバ2内を真空引きした後、窒素ガス等の反応ガスをガス導入口7から導入し、蒸発源5に向けたアノード電極12をトリガとしてアーク放電を発生させることにより、蒸発源5を構成する物質をプラズマ化して反応ガスと反応させ、テーブル4上のワーク3表面に窒化膜等を成膜する。
この成膜工程時に蒸発源5の蒸発面11上には放電電流が微小領域に集中して、高温で極めて活性な数μm径のアークスポットが発生し、蒸発面11上を10m/s以上の速さでランダムに動き回りながら、蒸発源5を瞬時に溶解蒸発させるとともに、イオンとして放出する。
このとき、蒸発源5の蒸発面11上には、前述した磁石15,16A,16Bによって磁界が発生しており、この磁界の作用によりアークスポットの移動が制御される。
具体的には、蒸発源5の外周の端部領域Eを除く内側領域Cの表面においては、磁束密度が10〜15mTとされていることから、その内側領域Cの表面で発生したアークスポットは、この内側領域Cに閉じ込められる。また、蒸発面11上の磁力線が前述した二つの磁石15,16の相互作用により、蒸発面11の法線に対する角度θが0°<θ<20°とされているので、アークスポットを蒸発面11に閉じ込めるように作用する。
なお、この内側領域Cの磁束密度の標準偏差が3以下としたのは、蒸発源5を均等に消耗させるためである。
一方、蒸発源5の端部領域Eにおいては、内側領域C表面よりも磁束密度が大きく設定されているので、内側領域C表面のアークスポットが端部領域Eに向かおうとしても、端部領域Eの強い磁場によって跳ね返されるようにして、内側領域Cに戻される。この端部領域Eの磁束密度としては、内側領域Cの磁束密度よりも3mT以上大きくなるように設定しておけば、アークスポットを内側領域Cに戻す効果を発揮させることができる。
また、蒸発面11の法線に対する磁力線の角度が端部領域Eにおいては、内側領域Cに向けて傾斜するように形成されているので、アークスポットを内側領域Cに向けて戻す効果がある。Robsonら(Springer社、Cathodic arcs, p.140)によると、蒸発面11に生じる磁場がアークスポットに作用する力は、図4のBで示す磁場を例にとると、蒸発面11に平行な磁場成分BHは、この磁場成分に対して90°傾いた方向の力AHとなり、蒸発面11に垂直な磁場成分BVは、平行な磁場成分BHと同じ方向の力AVを作用する。そして、これら磁場から作用する力AH,AVの合成力によってアークスポットAが移動する。したがって、蒸発面11の法線に対する磁力線の角度θを内側領域Cに向けることにより、磁場からアークスポットAに作用する力AVの方向を内側領域Cに向けることができる。また、蒸発面11に垂直な磁場成分BVを大きくすることにより、力AVの大きさを大きくすることができ、アークスポットAを内側領域Cに戻す力を大きくすることができる。
これら端部領域Eの磁束密度を大きくしたこと、及びその磁力線を内側領域Cに向けて傾斜させたことにより、図3に矢印で示したようにアークスポットAは端部領域Eに移動しようとすると戻されて内側領域Cに戻される。
そして、このようにアークスポットAを内側領域C内に閉じ込め、端部領域Eを超えることが拘束されるので、アークスポットが蒸発源表面部以外に入り込む現象が防止され、安定した放電を維持することができる。
また、中央磁石15と一組のリング状磁石16A,16Bとにより、蒸発源5の表面では大きな磁束密度とし、蒸発源5から離れるにしたがって磁束密度が小さくなるので、蒸発源5からワークまでの間の磁束密度の絶対値の積算値を小さくすることができ、特にワーク近傍の磁束密度が小さくなり、蒸発源5のイオン粒子の飛程を短くすることができる。このため、イオンの価数の上昇を抑制して、ワークに対するバイアス電圧によるイオンの引き込み効果を低減することができ、その結果、薄膜の残留応力の制御が容易になる。
本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
蒸発源として直径100mm、厚さ16mmのTiAl(Ti:Al=50:50)を用いた。
そして、蒸発源の外側の一組のリング状磁石及び蒸発源裏面の中央磁石とも永久磁石のネオジム磁石で、保磁力が2000kA/m、表面磁束密度が1150mTとした。比較例として、蒸発源の外側には、1個のリング状磁石で、ネオジム磁石で保磁力が2000kA/m、表面磁束密度が1150mTとした。蒸発源の裏面中央の磁石はフェライト磁石で、保磁力が250kA/m、表面磁束密度が350mTとした。
このような磁石を取り付けたアークイオンプレーティング装置に蒸発源を配置し、蒸発面の磁場を測定したところ、図5に示すものとなった。図5において、破線が実施例、実線が比較例である。いずれも横軸は、蒸発源の中心を0とし、中心からの距離を左右に示しており、左右両端が外周端である。
この図5に示されるように、実施例のものでは、蒸発源の中心から比較的広い範囲でほぼ一定の領域が存在し、外周端部付近で15mT以上に大きくなっている。端部領域を除く内側領域の部分では、磁束密度は標準偏差3以下であった。また、磁力線と蒸発面の法線とのなす角度(傾斜角)は、全面で0°<θ<20°の範囲となっている。また、その角度が比較的小さいので、磁束密度の絶対値と垂直成分との差はあまり生じていない。
これに対して、比較例のものは、蒸発源の外周端部も15mT以上であるが、中心部付近の磁場が7mT以下と非常に小さい値となっている。内側領域を含めて全体に磁束密度のばらつきも大きい。また、磁力線と蒸発面の法線とのなす角度(傾斜角)は、蒸発面の中心部付近は0°<θ<20°の範囲であるが、外周端部付近では20°を超えている。
なお、磁束密度は、磁束計にて、蒸発源表面において蒸発源表面の中心を通る直線上を測定した。蒸発源の表面では、測定箇所を10mm間隔と設定し、各測定点で蒸発源表面の垂直方向及び平行方向の磁束密度を測定した。また、これらの測定値から各測定点での磁束密度及び磁力線と蒸発面の法線とのなす角度(傾斜角)を算出した。また、蒸発源表面での磁束密度の標準偏差は、端部領域の磁束密度が大きい部分を除いた磁束密度の数値から標準偏差を算出した。
次に、表1及び表2に示すように、各種の条件で成膜し、蒸発源からワークまでの積算磁力と膜の残留応力とを測定した。反応ガスとしては窒素ガスを用いた。
積算磁力は、磁束計にて、蒸発源表面中心からワークまでの直線上を10mm間隔で磁束密度を求め、これを蒸発源からワークまで積算して求めた。
残留応力は、X線回折を利用した2θ―sinφ法により求めた。
表1が比較例、表2が実施例を示している。
Figure 2012177181
Figure 2012177181
この表1及び表2の結果から明らかなように、実施例においては、バイアス電圧を調整することにより、膜の残留応力も大きく変動しており、その制御が容易であることがわかる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、中央磁石を円錐形状に形成したが、蒸発源の磁束密度を周辺部よりも中央部に集中させて大きくすることができるものであればよく、同一極の磁石を中央部に複数集中させて設け、周辺部には分散して配置することにより、磁束密度に分布を持たせるようにしてもよい。
また、蒸発源を円板状に形成したが、柱状、筒状等のものにも適用することができ、その場合も、端面から1cm幅の範囲を端部領域として、前述したような磁界を設定すればよい。
1 アークイオンプレーティング装置
2 真空チャンバ
3 ワーク
4 テーブル
5 蒸発源
6 支持棒
7 ガス導入口
8 ガス排出口
9 ヒータ
11 蒸発面
12 アノード電極
13 アーク電源
14 バイアス電源
15 中央磁石
16A,16B リング状磁石

Claims (5)

  1. 蒸発源の端面から内方に所定幅の端部領域を除く内側領域表面の磁束密度が10〜15mTであり、前記端部領域表面の磁束密度が前記内側領域表面の磁束密度よりも大きく、かつ前記蒸発源の表面からワークまでの距離が120〜300mmであり、その距離の間の磁束密度の絶対値の積算値が260mT・mm以下であることを特徴とするアークイオンプレーティング装置。
  2. 前記蒸発源の背面に、蒸発源の表面の磁束密度を周辺部より中央部に集中させて大きくするように中央磁石が設けられ、蒸発源の半径方向外側に、極性を逆にした二重のリング状磁石が設けられており、かつ中央磁石と二重のリングの内側の極性が逆であることを特徴とする請求項1記載のアークイオンプレーティング装置。
  3. 前記端部領域表面における磁束密度は前記内側領域表面の磁束密度よりも3mT以上大きいことを特徴とする請求項1又は2記載のアークイオンプレーティング装置。
  4. 前記蒸発面における磁力線は、前記蒸発面の法線に対する角度θが0°<θ<20°であり、前記端部領域表面では前記内側領域に向けて傾いていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアークイオンプレーティング装置。
  5. 前記内側領域の磁束密度は、標準偏差が3以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアークイオンプレーティング装置。
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