JP2012176555A - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】層間接着性に優れる積層体の製法を提供する。
【解決手段】基材(A)表面の少なくとも一部にポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体を塗布して接着剤層を形成させる第一工程、該接着剤層にマイクロ波を照射する第二工程、及び該接着剤層表面に他の基材(B)を圧着させる第三工程を具備する積層体の製造方法。前記水性分散体は、さらに粘着付与成分を含有することが好ましく、また、第二工程で、マイクロ波を照射して接着剤層を50℃以上に加熱することが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体を用いて積層体を得る方法に関する。
ポリオレフィン樹脂は、自動車、電気、包装等の各種分野で幅広く、大量に使用されている。また、ポリオレフィン樹脂を、接着性などの機能性を付与するコーティング剤として利用する方法も知られている。しかしながら、ポリオレフィン樹脂は非極性材料であるため、コーティング剤として利用した場合には、被着体に対しての密着性や接着性に劣る傾向にあった。このようなポリオレフィン樹脂の欠点を改良する方法としては、ポリオレフィン樹脂に酸性成分などを共重合して、ポリオレフィン共重合体として利用する方法が一般的に用いられている。
このような、ポリオレフィン共重合体をコーティング剤として利用するには、一般的には、溶剤溶液または水性分散体に加工して利用される。中でも、環境に配慮した水性分散体の利用が盛んになっている。本願出願人も接着性に優れた酸変性ポリオレフィン共重合体の水性分散体を、特許文献1や特許文献2で提案している。
特許第3759160号 特開2004−51884号公報
近年、接着剤は広域の分野で必要不可欠なものとなっており、必要とされる性能も多種多様なものが求められている。中でも自動車や日用品、建築材料などの分野では、使用条件が過酷な場合が多く、強力な接着性が必要とされることが多い。このような分野においては、特許文献1、2で例示したようなポリオレフィン共重合体の水性分散体を接着剤として利用した場合、用いる基材の種類や条件にもよるが、必要とされる強力な層間接着性を発現させることは困難であった。
本発明は、上記のような問題を解決するものであり、層間接着性に優れる積層体の製法を提供しようとするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体を塗布して得られる接着剤層に、マイクロ波を照射した後に、被着体同士を圧着することで、層間接着性に優れる積層体が得られることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)基材(A)表面の少なくとも一部にポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体を塗布して接着剤層を形成させる第一工程、該接着剤層にマイクロ波を照射する第二工程、及び該接着剤層表面に他の基材(B)を圧着させる第三工程を具備することを特徴とする積層体の製造方法。
(2)前記水性分散体が、さらに粘着付与成分を含有することを特徴とする上記(1)記載の積層体の製造方法。
(3)第二工程で、マイクロ波を照射して接着剤層を50℃以上に加熱することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の積層体の製造方法。
(4) 第三工程において、圧着の際の接着剤層の温度が50℃以上であって、かつ該接着剤層の温度が前工程のマイクロ波照射の残熱であることを特徴とする上記(3)記載の積層体の製造方法。
本発明によれば、過酷な条件下で使用しても層間が剥離し難い、接着性良好な積層体を容易に得ることができる。また、本発明では、水性分散体を接着剤に用いているため、積層体を得る際、環境に与える負荷が少ないという利点がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における水性分散体には、ポリオレフィン共重合体が含まれる。ポリオレフィン共重合体は、主成分としてオレフィン成分を含有し、オレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよい。中でも、積層体の層間接着性を向上させる観点から、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。このようなオレフィン成分の含有量は、ポリオレフィン共重合体100質量%に対して10〜99.9質量%が好ましく、30〜99.8質量%がより好ましく、50〜99.7質量%が特に好ましく、70〜99.5質量%がさらに好ましく、80〜99.0質量%が最も好ましい。含有量が10質量%未満の場合は、積層体中の接着剤層の耐候性が低下する場合があり、99.9質量%を超える場合は、積層体の層間接着性が低下したり、水性分散体が得難くなる傾向にある。
本発明におけるポリオレフィン共重合体には、積層体の層間接着性を向上させると共に、水性分散体の分散性を向上させる観点から、上記オレフィン成分以外の成分が共重合されている必要があり、かかる成分として、不飽和カルボン酸成分が好ましく使用される。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドなどがあげられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン共重合体中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などがあげられる。
ポリオレフィン共重合体における不飽和カルボン酸成分の含有量としては、ポリオレフィン共重合体100質量%に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.3〜10質量%が特に好ましく、0.5〜8質量%がさらに好ましく、1〜5質量%が最も好ましい。含有量が0.1質量%未満の場合は、積層体の層間接着性が低下したり、水性分散体とすることが困難であり、20質量%を超える場合は、積層体中の接着剤層の耐水性が低下する傾向がある。
本発明におけるポリオレフィン共重合体樹脂において、上記不飽和カルボン酸成分と併せて別の成分が共重合されていると、層間接着性により優れる積層体が得られることがある。そのような成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸ジエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類、並びにビニルエステル類を塩基性化合物などでケン化して得られるビニルアルコール、(メタ)アクリル酸アミド類などやこれらの混和物があげられる。中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル類成分が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
これらの成分は、ポリオレフィン共重合体中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などがあげられる。
ポリオレフィン共重合体におけるこれらの成分の含有量としては、ポリオレフィン共重合体100質量%に対して0.1〜90質量%であることが好ましく、0.2〜50質量%であることがより好ましく、0.5〜30質量%であることが特に好ましく、1〜18質量%であることがさらに好ましく、5〜15質量%であることが最も好ましい。含有量が0.1質量%未満の場合は、積層体の層間接着性が低下する傾向にあり、90質量%を超える場合は、積層体中の接着剤層の耐候性や耐水性が低下する傾向にある。
以上の点を踏まえると、本発明におけるポリオレフィン共重合体としては、具体的に、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル−無水マレイン共重合体、又はこれらのモノマー構成を含む共重合体などが好適である。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
本発明におけるポリオレフィン共重合体の融点としては、50℃以上が好ましく、60〜250℃がより好ましく、80〜2000℃がさらに好ましい。融点がこの範囲にあると、熱間状態における積層体の層間接着性が優れるようになる。
また、ポリオレフィン共重合体の分子量としては、質量平均分子量で5000〜500000であることが好ましく、10000〜200000がより好ましく、15000〜100000がさらに好ましく、20000〜80000が特に好ましい。質量平均分子量が5000未満であると、積層体の層間接着性が低下する傾向にある。一方、質量平均分子量が500000を超えると、水性分散体が得難くなる傾向にある。
一般にポリオレフィン共重合体は、溶剤に対して難溶である。このため、分子量測定が困難となる場合があるが、そのような場合には、溶融樹脂の流動性を示すメルトフローレート値を分子量の目安とするのがよい。
この場合、ポリオレフィン共重合体のメルトフローレート値(JIS K7210:1999に準ずる)としては、0.1〜2000g/10分であることが好ましく、0.5〜1000g/10分であることがよりに好ましく、1〜500g/10分であることがさらに好ましく、2〜200g/10分であることが特に好ましい。メルトフローレート値が2000g/10分を超えると、積層体の層間接着性が低下する傾向にある。一方、メルトフローレート値が0.1g/10分未満になると、水性分散体が得難くなる傾向にある。
本発明では、ポリオレフィン共重合体を水性媒体中に分散させた水性分散体として使用する。分散方法としては、自己乳化法や強制乳化法など公知の分散方法を採用すればよい。また、水性分散体としては、ポリオレフィン共重合体を水性媒体中で塩基性化合物によって中和することで得られるアニオン性の水性分散体が、接着性の観点から好ましい。さらに、界面活性剤や高酸価ワックスなど分散化を促進する目的で任意で添加される、不揮発性水性分散化助剤を使用しない分散方法を採用することが、積層体の層間接着性や耐水性を高める観点から好ましい。
水性分散体中に含有されるポリオレフィン共重合体の数平均粒子径としては、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
水性分散体におけるポリオレフィン共重合体の固形分濃度としては、特に限定されないが、塗布のしやすさや接着剤層の厚みの調整しやすさなどの点から、水性分散体全質量に対して、1〜60質量%が好ましく、2〜50質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
本発明における水性分散体には、積層体の層間接着性をより向上させる点で、さらに粘着付与成分を含有させることが好ましい。粘着付与成分としては、各種公知のものを使用できる。例えば、ロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂などがあげられ、これらの単独で又は2種以上を混合して使用することができる。ロジン類としては、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルなどがあげられる。テルペン系樹脂としては、低重合テルペン系、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール系、芳香族変性テルペン系、水素添加テルペンなどあげられる。石油系樹脂としては、炭素数5個の石油留分を重合した石油樹脂、炭素数9個の石油留分を重合した石油樹脂、及びこれらを水素添加した石油樹脂、マレイン酸変性、フタル酸変性した石油樹脂などがあげられる。これらの中でも、積層体の層間接着性の点でテルペン系樹脂が好ましく、特に芳香族変性テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂がより好ましい。
上記の粘着付与成分の環球法軟化点としては、積層体の層間接着性の観点から、80〜180℃が好ましく、80〜160℃がより好ましい。環球法軟化点は、JIS K5903に記載の方法に基づき測定する。
水性分散体に粘着付与成分を含有させる方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着付与成分を含む水性分散体と、ポリオレフィン共重合体を含む水性分散体とを混合攪拌する方法、粘着付与成分を含む溶剤溶液と、ポリオレフィン共重合体を含む水性分散体とを混合攪拌する方法、ポリオレフィン共重合体と粘着付与成分とを一括して水性媒体に添加し、分散化する方法などが採用できる。粘着付与成分を含む水性分散体を得る際は、粘着付与成分を水溶性の溶剤に一旦溶解したものを用いることが、かかる水性分散体の均一性の観点から好ましい。粘着付与成分の分散方法としては、自己乳化法や強制乳化法など公知の分散方法が採用できる。
水性分散体におけるポリオレフィン共重合体と粘着付与成分との固形分質量比は、ポリオレフィン共重合体/粘着付与成分=99/1〜20/80の範囲であることが好ましく、97/3〜55/45の範囲がより好ましく、95/5〜60/40が特に好ましく、95/5〜65/35がさらに好ましく、93/7〜70/30が最も好ましい。ポリオレフィン共重合体/粘着付与成分=99/1〜20/80の範囲を外れると、積層体の層間接着性や接着剤層の耐水性などの向上が期待できない傾向にあり、好ましくない。
本発明における水性分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を加えることが好ましい。添加剤としては、例えば、上記ポリオレフィン共重合体及び粘着付与成分以外の樹脂、架橋剤、無機微粒子などがあげられる。
上記ポリオレフィン共重合体及び粘着付与成分以外の樹脂(以下、「他の樹脂」と称する場合がある)としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−アミノアクリルアミド共重合体、エチレン−アミノアクリレート共重合体、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アミノアルキルマレイミド共重合体、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン系エラストマー、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエチレンイミン、UV硬化型樹脂などがあげられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、積層体の層間接着性をより向上させる観点から、ウレタン樹脂が好ましい。これらの樹脂を添加する際は、これらを水性分散体又は水溶液としたものを使用するのが一般的である。
本発明におけるポリオレフィン共重合体の水性分散体は、架橋剤を添加することで、より層間接着性を向上させたり、熱間での層間接着性を向上させるのが可能となる。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基などポリオレフィン共重合体の含有する官能基と、反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤、多価の配位座を有する金属錯体などを用いることができる。具体的には、ヒドラジド化合物、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤、有機過酸化物などがあげられ、これらの架橋剤は組み合わせて使用してもよい。
中でも、酸変性ポリオレフィン共重合体の水性分散体を用いた場合は、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤との反応性などに優れるため、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する架橋剤がより好ましい。このような架橋剤としては、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、ヒドラジド化合物、アミン化合物、メラミン化合物、及びポリオールが挙げられ、これらは一種を単独でも二種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、より架橋の効果に優れるオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物が好ましく、オキサゾリン化合物、ヒドラジド化合物、アミン化合物、メラミン化合物がさらに好ましい。
架橋剤の添加量としては、架橋構造を十分に形成させる観点から、ポリオレフィン共重合体100質量部に対して架橋剤の固形分0.01〜300質量部の範囲が好ましく、0.1〜100質量部の範囲がより好ましく、0.2〜50質量部の範囲が特に好ましく、0.5〜30質量部の範囲がさらに好ましい。
さらに、上記無機微粒子としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンなどの金属微粒子や金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、雲母、タルク、擬ベーマイト、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどの無機粒子があげられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
無機微粒子の平均粒子径としては、水性分散体の分散安定性の面から0.0005〜100μmが好ましく、0.005〜10μmがより好ましい。
さらに、本発明における水性分散体には、この他、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、触媒、光触媒、UV硬化剤、濡れ剤、浸透剤、柔軟剤、増粘剤、分散剤、ゴム成分、撥水剤、帯電防止剤などの各種薬剤、顔料あるいは染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ガラス繊維などを添加してもよい。これらは、単独で用いてもよいし、種類以上組み合わせて用いてもよい。
次に、第一工程について説明する。
第一工程は、基材(A)表面の少なくとも一部に上記ポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体を塗布して接着剤層を形成させる工程である。基材(A)表面に水性分散体を塗布する方法としては、例えば、キャスティングヘッドからの吐出、ロールコート、ナイフコート、エアナイフコート、グラビアロールコート、ドクターロールコート、ドクターナイフコート、カーテンフローコート、スプレーコート、シャワーコート、ワイヤーバー、ロッドコート、浸漬コート、筆塗り、刷毛塗りなどが採用できる。塗布は、全面状、非全面状のいずれでもよく、また、必要に応じて2回以上塗布してもよい。
第一工程では、水性分散体を基材(A)表面に塗布するだけで接着剤層を形成することができるが、作業効率や得られる積層体の品質向上の観点から、塗布後に接着剤層を乾燥する工程を設けることが好ましい。接着剤層を乾燥させる方法としては、特に限定されず自然乾燥や熱風乾燥など公知の方法が採用できる。ただ、第二工程におけるマイクロ波照射によっても、接着剤層を乾燥させることができるため、第一工程における乾燥工程は必ずしも十分なものである必要はない。
水性分散体の基材(A)表面への塗布量としては、水性分散体中の固形分質量に換算して0.2g/m以上であることが好ましく、1〜1000g/mの範囲がより好ましく、5〜500g/mの範囲が特に好ましい。塗布量が0.2g/m未満の場合は、積層体の層間接着性が低下することがある。
本発明における基材(A)としては、成形体、シート、フィルム、織編物、不職布、紙、板、膜、箔、発泡体、スポンジなどが使用でき、形状、形態、大きさは任意である。また、複数の基材を組み合わせたものを1つの基材として用いてもよい。
基材(A)を構成する素材としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン共重合体、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂などの樹脂又はこれらの混合物、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、人工皮革、ウレタン系合成皮革などの合成皮革、牛革、豚革、馬革、羊革などから得られる天然皮革、天然ゴム、SBR、BR、IR、NBAなどのゴム及びそれらの加硫物、ラテックス成形体の他、金属、ガラス、木材、コンクリートなどがあげられる。これらは、必要に応じて単独で又は複数組み合わせて使用できる。
また、基材(A)には、積層体の層間接着性を向上させる観点から、表面処理したものを用いてもよい。表面処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、熱処理、バフ掛け、プライマー処理、アンカーコート処理、酸処理、アルカリ処理、薬品処理、溶剤処理、脱脂処理などが採用できる。
次に、第二工程について説明する。
第二工程は、第一工程の後に実施する工程であり、第一工程で形成された接着剤層にマイクロ波を照射する工程である。
接着剤層にマイクロ波を照射する方法としては、特に限定されず、公知のマイクロ波照射装置を用いて照射すればよい。マイクロ波照射装置としては、マイクロ波の周波数や出力が可変で調整でき、かつターンテーブルなどでマイクロ波ができるだけ均一に照射できるものが好ましい。
照射するマイクロ波の周波数としては、0.9〜40GHzが好ましく、接着剤層に含まれる固形成分や基材(A)の熱分解、熱変形などを抑える点で、2〜30GHzの範囲がより好ましく、3〜20GHzの範囲が特に好ましい。照射時間としては、特に限定されないが、通常、10〜300秒の範囲が好ましい。
接着剤層へマイクロ波を照射する第二工程を採用すると、得られる積層体が後に優れた層間接着性を発現する。特に、マイクロ波の照射によって接着剤層が加熱されると層間接着性の向上がより期待できるようになる。加熱温度としては、50℃以上が好ましく、70〜200℃がより好ましく、90〜150℃がさらに好ましい。
第二工程では、マイクロ波の照射により接着剤層に含まれる媒体を揮発させることもできる。第二工程を経た接着剤層は、乾燥塗膜であることが層間接着性を良好に保つ点で好ましい。
次に、第三工程について説明する。
第三工程は、第二工程の後に実施する工程であり、第二工程を経た接着剤層の表面に他の基材(B)を圧着させる、すなわち、接着剤層を介して基材(A)と基材(B)とを圧着させて、基材(A)と基材(B)とを接着させる工程のことである。
接着剤層を介して基材(A)と基材(B)とを圧着させる方法としては、特に限定されない。圧着時の圧力としては、可能な限り高い圧力が好ましく、一般に0.01MPa以上が好ましい。ただ、圧力が高くなりすぎると、基材の形状が崩れやすくなるので、一般に20MPaを上限とするのがよい。他方、圧着時間としては、0.5〜300秒が好ましい。
また、熱を加えながらの圧着することは、積層体の層間接着性を高める点で有効である。圧着開始時の接着剤層の温度としては、50℃以上であることが好ましく、70〜200℃の範囲がより好ましく、90〜150℃の範囲がより好ましい。ただ、本発明では、第二工程で接着剤層にマイクロ波を当てることで接着剤層を加熱することができ、このときの残熱を利用することが、層間接着性の向上に有利である。すなわち、第三工程において、圧着の際の接着剤層の温度が50℃以上であって、かつ該接着剤層の温度が前工程のマイクロ波照射の残熱であることが好ましい。
本発明における基材(B)の素材や形状、形態、表面処理方法は特に限定されず、基材(A)と同様のものをあげることができる。また、基材(A)と基材(B)とは、それぞれが同じ素材や形状、形態で、表面処理あってもかまわないし、別の素材や形状、形態、表面処理であってもかまわず、用途によって必要な組み合わせを選択すればよい。さらに基材(B)は、基材(A)と同様に、本発明に用いる水性分散体を塗布したものでもかまわないし、その後にマイクロ波を照射したものでもかまわない。
本発明は、以上の3工程を含むものであるが、必要に応じて別工程を任意の段階において組み入れてもよい。
本発明により得られる積層体は、良好な層間接着性を有している。接着構造物中の基材(A)と基材(B)とを剥離するのに必要な強度(層間接着性)としては、基材の種類や形状などに応じて多少変動するが、15mm巾に切り取った試験片を用いて測定した場合おいて、10N/15mm以上が好ましく、20N/15mm以上がより好ましく、40N/15mm以上がさらに好ましく、70N/15mmが特に好ましく、100N/15mmが最も好ましい。
本発明により得られる積層体は、様々な用途に用いることができる。例えば、ドアパネルの製造、壁紙の接着、樹脂成形物の接着、タイルの接着、フローリングの接着などの建材用途、鞄の製造や手袋の製造に必要な皮革の接着、繊維の接着、ゴムの接着、加硫ゴムの接着、樹脂成形物の接着などの日用品用途、太陽電池の製造に必要なエチレン−酢酸ビニルの接着、基盤の接着などの電気機器用途、自動車用途など幅広い用途で用いることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(ポリオレフィン共重合体の製造)
英国特許2091745号明細書、米国特許4617366号明細書、米国特許644044号明細書に記載された方法に基づいて、ポリオレフィン共重合体たるエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(以下、EAMAと示す)を製造した。得られたEAMAにおいて、共重合成分の質量比は、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸=84/13/3であり、JIS K7210:1999記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定したメルトフローレート値(MFR)は40g/分であり、DSC(示差走査熱量測定)装置で測定した融点は90℃であった。
(水性分散体の製造)
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、EAMAを100g、イソプロパノールを100g、トリエチルアミンを4g、蒸留水を296g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌し分散化させた。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約80℃まで冷却したところで、系内を徐々に減圧して、イソプロパノールと水を除去した。イソプロパノールを99g以上除去した後、系内温度が35度になったところで、180メッシュのステンレス製フィルターで加圧濾過して、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン共重合体の水性分散体を得た。
得られた水性分散体の固形分濃度は、30質量%であり、EAMAの数平均粒子径は0.085μmであった(日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150を用い、樹脂の屈折率は1.5として求めた)。
(実施例1)
ポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体として、上記水性分散体を用い、基材(A)として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(サイズ:縦120mm×横90mm×高さ0.19mm、コロナ処理品、以下、PETフィルム)を用い、基材(B)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体の射出成形品(サイズ:縦120mm×横90mm×高さ6mm、表面をアセトンで脱脂した、以下、EVAと示す)を用いた。PETフィルム及びEVAの片面表面に刷毛を用いて上記水性分散体を70g/m塗布し、後に熱風乾燥機を用いて、これを75℃で10分間乾燥することで、両基材上に接着剤層を形成した。以上が第一工程である。
次に、ターンテーブルを備えたマイクロ波照射装置を用いて、周波数4〜6GHzの範囲のマイクロ波を両接着剤層に60秒間照射した。なお、非接触型の温度計を用いて照射直後の接着剤層の温度を測定したところ、両基材上のものとも73℃であった。以上が第二工程である。
温度測定の後、直ちに両基材上の接着剤層同士を重ね合わせ、プレス機を用いてこれを0.2MPaの圧力で20秒間圧着し、積層体を得た。なお、圧着時の接着剤層の温度は71℃であった。以上が第三工程である。
その後、積層体を室温で24時間静置した後、15mm巾で切り出し、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用いて、引張速度50mm/分、25℃の条件で、PETフィルムとEVAとの層間接着性(剥離強度)を測定した。測定はn=5で行い、平均値を剥離強度とした。測定結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1で用いた水性分散体に、粘着付与成分の水性分散体(ヤスハラケミカル社製ナノレットR−1050、芳香族変性テルペン系樹脂、固形分濃度50質量%、平均粒子径0.3μm、軟化点105℃、以下、R−1050と示す)を加えた後、混合攪拌し、固形分質量比でEAMM/粘着付与成分=75/25の水性分散体を得た。次に、水性分散体としてこの水性分散体を用いる以外は、実施例1と同様に行い、積層体を得た。なお、第三工程における圧着時の接着剤層の温度は72℃であった。
そして、実施例1の場合と同様の条件で、積層体の層間接着性を測定した。測定結果を表1に示す。
(比較例1)
第二工程を省く以外は、実施例1と同様と行い、積層体を得た。なお、第三工程における圧着時の接着剤層の温度は72℃であった。
そして、実施例1の場合と同様の条件で、積層体の層間接着性を測定した。測定結果を表1に示す。
(比較例2)
第二工程を省く以外は、実施例2と同様と行い、積層体を得た。なお、第三工程における圧着時の接着剤層の温度は71℃であった。
そして、実施例1の場合と同様の条件で、積層体の層間接着性を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例の結果より明らかなように、本発明の方法を採用すれば、優れた層間接着性を有する積層体が得られる。

Claims (4)

  1. 基材(A)表面の少なくとも一部にポリオレフィン共重合体を含有する水性分散体を塗布して接着剤層を形成させる第一工程、該接着剤層にマイクロ波を照射する第二工程、及び該接着剤層表面に他の基材(B)を圧着させる第三工程を具備することを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 前記水性分散体が、さらに粘着付与成分を含有することを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法。
  3. 第二工程で、マイクロ波を照射して接着剤層を50℃以上に加熱することを特徴とする請求項1又は2記載の積層体の製造方法。
  4. 第三工程において、圧着の際の接着剤層の温度が50℃以上であって、かつ該接着剤層の温度が前工程のマイクロ波照射の残熱であることを特徴とする請求項3記載の積層体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016122569A (ja) * 2014-12-25 2016-07-07 大和製罐株式会社 リチウムイオン電池外装用積層体およびその製造方法
JP2018154737A (ja) * 2017-03-17 2018-10-04 リンテック株式会社 ワーク加工用粘着シートおよびその製造方法

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