JP2012174532A - リチウムイオン二次電池用外装缶 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の電池缶は、角型パイプと、該角型パイプの両端をそれぞれ閉塞する一対の蓋部材とを有し、前記角型パイプは、アルミニウム系素材を、熱間押出加工法を用いて成形した押出成形体よりなり、前記各蓋部材は、前記角型パイプの各端部にレーザ溶接法によって溶接され、前記各蓋部材と前記角型パイプとの溶接部は、平均最大溶け込み深さが0.4mm以上、平均ビード幅が0.5mm以上であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
ここで、例えば携帯電話等のモバイル電子機器に用いられる小型リチウムイオン二次電池の場合には、その電池缶として、多段深絞り工法によって製造されたアルミニウム合金製角型缶が採用されることが多い。この多段深絞り工法では、アルミニウム合金板材を素材とし、例えばドラスファプレスを使用して多段プレスすることで角型缶を製造するのが一般的である。
小型リチウムイオン二次電池は内容圧力がそれほど高くならないため、金属缶と蓋部材の接合部に大きな耐圧強度は要求されないとはいうものの、ろう付けによる接合強度では不足があるので、最近では溶接により金属缶と蓋部材の接合がなされている。
しかし、小型リチウムイオン二次電池の溶接部に対し、高い溶接強度が要求されている訳ではないので、溶接部における平均溶け込み深さは0.3mm程度以下であるのが一般的である。このため、レーザ溶接に使用される溶接機としては、通常、平均出力が500〜600W級の小型YAGパルスレーザが用いられる。
例えば、角型缶を多段深絞り工法で作製する場合、角型缶の横断面における長辺長をW、短辺長をBとし、角型缶の高さをHとしたとき、W/B比が8を超えると不良率が大きく上昇し、10を超えると割れが多発し、ほとんど生産できなくなる。
すなわち、小型の角型缶の場合には、プレス技術を工夫すれば強度300MPa以上の加工硬化を付加した硬質素材からでも製造することができる。このため、電池缶の薄肉高強度化を容易に図ることができる。
ところが、大型の角型缶を作製するには、アルミニウム合金板材を深くプレスする必要があるため、素材が比較的軟質なもの(プレス成形性の良いもの)に限定されてしまい、電池缶の高強度軽量化の要求に応えることができない。
本発明は、かかる知見に基づいて成されたものであって、以下の構成を有する。
また、本発明において、前記熱間押出加工法を用いて成形された押出成形体は、前記熱間押出加工法によって成形された押出成形体に、さらに引抜き加工を施したものであることを特徴とする。
各蓋部材が、角型パイプの各端部にレーザ溶接法によって溶接されており、各蓋部材と角型パイプとの溶接部について、平均最大溶け込み深さ及び平均ビード幅が所定値以上に規定されていることにより、溶接部の溶接強度が高く、耐圧強度に優れた電池缶を得ることができる。
角型パイプの肉厚Tが所定の範囲である場合には、その重量を抑えつつ耐圧強度に優れた電池缶を確実に得ることができる。
さらに、角型パイプのW/B比が所定の範囲である場合には、電池缶は、その体積当りの表面積が大きくなり、前述したような電池内部の熱を効率良く発散する効果を確実に得ることができる。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用外装缶の第一実施形態を示す分解縦断面図、図2は、図1に示すリチウムイオン二次電池用外装缶が備える角型パイプを示す横断面図、図3は、図1に示すリチウムイオン二次電池用外装缶の溶接部分を示す側面図である。
なお、以下の説明では、角型パイプ2において、中心軸に直交する方向に沿った断面を「横断面」と言い、この角型パイプ2の横断面における外形の長辺長を「W」、短辺長を「B」とし、長辺長と短辺長との比をW/B比とする。また、角型パイプ2の中心軸に沿う方向の長さを「高さH」とする。
図2に示すように、角型パイプ2は、横断面が略長方形状もしくは略正方形状の角筒体であり、後述する組成のアルミニウム合金を、熱間押出加工法を用いて成形した押出成形体により構成されている。なお、角型パイプ2の角部は、外面や内面に適当な曲率を有していても構わない。
熱間押出加工では、多段深絞り工法に比べて、比較的広い範囲のアルミニウム系素材で良好な加工性を得ることができる。このため、機械的強度やレーザ溶接性を重視してアルミニウム系素材を選択することができ、電池缶1に必要十分な機械的強度及び溶接強度をもたせることができる。
まず、(1)のアルミニウム合金として、例えばJIS(あるいはAA)1000系の各合金等が挙げられる。これらは、優れた押出加工性を有する一方、強度が低く、レーザ溶接性がそれほど良好ではないが電池缶1の構成材料として用いることができる。
(2)のMnを含有するアルミニウム合金として、例えばJIS(あるいはAA)3000系の各合金等が挙げられる。これらは、優れたレーザ溶接性を有している一方、中程度の押出加工性と強度を有する。
(3)のMgを含有するアルミニウム合金としては、例えばJIS(あるいはAA)5000系の各合金等が挙げられる。このアルミニウム合金は、Mg含有量の選択によって高押出加工性または高強度の要求に対応できる一方、レーザ溶接性の面では若干劣る場合がある。
(4)のFeを含有するアルミニウム合金としては、例えばJIS(あるいはAA)8000系の各合金等が挙げられる。これらは、(1)のアルミニウム合金に比べて、成形性を損なうことなく、強度とレーザ溶接性の向上が図れるという利点があるが、前記(2)、(3)、あるいは後述の(5)の各アルミニウム合金の強度より強度は低くなる。
(5)のMg及びSiを含有するアルミニウム合金としては、例えばJIS(あるいはAA)6000系の各合金等が挙げられる。これらは、高押出加工性と高強度に加えて時効硬化特性を有するため、レーザ溶接によって軟化した蓋とパイプの接合部を補強できる利点がある。その一方、レーザ溶接性が前記(4)のアルミニウム合金よりは若干劣る傾向がある。
ここで、熱間押出加工法は、素材を、該素材が再結晶化する温度より高い温度に保ちつつ圧力を加え、ダイスの孔から押出すことで、ダイスの孔形状に対応した断面形状の、長尺状の押出成形体を得る方法である。本実施形態では、ダイスとして、その孔形状が目的とする角型パイプ2の断面形状に対応するものを用い、アルミニウム系素材を長尺状の角型パイプとなるように押出成形する。そして、得られた押出成形体を目的とする電池缶1の高さに相当する長さに切断する。この場合、角型パイプ2は、この押出成形体の切断によって構成される。
このため、熱間押出加工法を用いて成形された角型パイプ2は、その形状をモジュールやパッケージ等の電池の使用形態に容易に対応させることができる。また、横断面におけるW/B比を比較的大きく設定することも可能であり、これによって、電池缶1は、体積当りの表面積が大きくなり、電池に適用したときに電池内部の熱を効率良く発散することができる。
角型パイプ2のW/B比が8未満である場合には、適用される電池によっては、電池内部の熱を発散させ難く、電池内部の温度上昇によって外部の電子機器に悪影響を及ぼす可能性がある。また、W/B比が8未満の角型パイプ2は、多段深絞り工法によっても容易に製造することができるため、その製造設備や成形条件が既に確立している場合には、熱間押出加工法を用いる優位性は認められず、却って既存の設備等が無駄になるという不都合が生じる。
一方、角型パイプ2の肉厚Tが0.6mm未満である場合には電池缶1の耐圧強度が不足する。また、肉厚Tが1.5mmを超えると電池缶1の軽量化が困難になる。
ここで、レーザ溶接法は、レーザ光を熱源とし、金属等よりなる被接合材同士を接合する溶接法である。このレーザ溶接法では、レーザ光を被接合材(角型パイプ2と各蓋部材3)同士の境界部近傍に集光し、この集光スポットを該境界部に沿って走査させることによって金属を局部的に溶融・凝固させ、角型パイプ2と各蓋部材3とを接合する。
ここで、本明細書中において、「平均最大溶け込み深さ」及び「平均ビード幅」とは、以下のようにして測定される値である。
電池缶1を溶接部4で破断し、この破断面を50倍の拡大率で観察する。そして、この観察された拡大像から、溶接部4の最大溶け込み深さを電池缶1の幅全長に亘って測定し、平均値を求める。
b.平均ビード幅
電池缶1の溶接部ビードを、上方から50倍の拡大率で観察する。そして、この観察された拡大像から、溶接部4のビード幅aを電池缶1の幅全長に亘って測定し、その平均値を求める。
そして、溶接部4の平均最大溶け込み深さが0.4mm未満の場合には、溶接部4の溶接強度が小さく、電池缶1の耐圧強度が不足する。但し、平均最大溶け込み深さを必要以上に大きく設定すると、溶け込み部分が板厚を超え、電池部品に損傷を与える恐れがある。また、平均最大溶け込み深さを大きな値とするため、大きな入熱量が必要となり、溶接効率が低下するという不都合が生じる。これらの点から、平均最大溶け込み深さは、角型パイプ2の肉厚Tの4/5以下とするのが好ましい。
ここで、レーザ溶接法に用いるレーザ溶接機としては、最大出力が2kw以上のファイバーレーザ溶接機を用いるのが好ましい。これにより、集光スポットの走査速度を比較的速くした場合でも、角型パイプ2と各蓋部材3とを、平均最大溶け込み深さが0.4mm以上、平均ビード幅が0.5mm以上となるように溶接することができ、大きな溶接強度で高速溶接することが可能となる。ここで、前述の(1)〜(5)のアルミニウム合金は、このような出力の大きいレーザ溶接機によってレーザ光が照射されても特性がほとんど変化せず、このような高速溶接を、その機械的強度を損なうことなく行うことができる。
このため、本発明の電池缶1は、大容量で大型のリチウムイオン二次電池の電池缶として好適に用いることができる。
以上、本発明のリチウムイオン二次電池用外装缶の実施形態について説明したが、前記外装缶を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
(実施例1)
JIS規定の1050合金を溶解し、外径13インチのビレットを鋳造した。
このビレットに、均質化処理を施した後、切断、再加熱を行い、ポートホール押出法によって成形することで扁平パイプ(長尺状の角型パイプ)を得た。この扁平パイプは、横断面における外形寸法が長辺長W:205mm、短辺長B:12.5mmであり、側壁の肉厚Tが1.2mmである。この扁平パイプを高さHが250mmとなるように切断することで角型パイプを得た。
次に、JIS規定の3003合金製の蓋部材2枚を用意した。蓋部材は、その平面視での寸法が角型パイプの横断面の寸法と略同一であり、肉厚は1.3mmである。そして、角型パイプの両端を、各蓋部材を組付けて閉塞し、角型パイプの両端と各蓋部材とをレーザ溶接にて接合した。以上の工程により電池缶を作製した。
ビレットの鋳造に用いる合金及びビレットの外径、角型パイプの寸法を表1に示すように変える以外は、前記実施例1と同様にして電池缶を作製した。
ビレットの鋳造に用いる合金及びビレットの外径、角型パイプの寸法を表1に示すように変えるとともに、熱間押出加工によって得られた扁平パイプに、肉厚が0.8mmとなるように冷間引抜き加工を行い、この引抜パイプを切断することで角型パイプを作製する以外は、前記実施例1と同様にして電池缶を作製した。
板厚1.4mmのJIS規定1050合金からなる軟質材(O材)を用い、扁平管を得るべく9段深絞りのプレス機にて成形を行った。目的とする扁平管の寸法は、横断面における長辺長が168mm、短辺長が15.5mmであり、側壁の肉厚が1.2mmである。
軟質材として用いる合金、目的とする扁平管の寸法を表1に示すように変える以外は、前記実施例1と同様にして9段深絞りのプレス機による成形を行った。
(比較例4、5)
軟質材として用いる合金、目的とする扁平管の寸法を表1に示すように変える以外は、前記比較例1と同様にして9段深絞りのプレス機による成形を行った。
1.各実施例及び各比較例について、目的とする寸法の扁平パイプまたは扁平管が成形できたか否かを、表1に示す。
○:扁平パイプまたは扁平管が成形できた場合
×:扁平パイプまたは扁平管が成形できなかった場合
なお、表1中、合金の種類を記載した欄の4桁の数字は、JIS規定されたアルミニウム合金の番号である。
(1)押出加工性評価
横断面における外形寸法が長辺長W:188mm、短辺長B:12.5mmであり、肉厚Tが1.2mm、角部の内面側の曲率Rが3mmの押出成形用のダイスを用い、各ビレットを、各種押出速度で扁平パイプに成形した。そして、寸法・形状の精度が良く、表面品質が安定に得られる最大押出速度を調べた。この測定結果を、以下の基準に従い評価した。
最大押出速度が15m/min以上である場合二重丸で示し、最大押出速度が5m/min以上から15m/min未満である場合に○印で示し、最大押出速度が5m/min未満である場合に△印で示した。
各電池缶について、長辺をなす側壁の中央付近から短冊状にサンプルを切出した。そして、JIS規定5号試験片に加工して引張試験を行い、引張強さ、耐力、伸びをそれぞれ測定した。
最大出力2kwのYb−ファイバーレーザ溶接機を用い、各角型パイプの両端に、3003合金製の蓋部材をそれぞれ溶接して電池缶を得た。蓋部材は、その平面視での寸法が扁平パイプの横断面の寸法と略同一であり、肉厚は1.1mmである。また、溶接条件は以下の2通りである。比較例4、5は溶接条件2、その以外のものは溶接条件1で溶接した。
溶接条件1
発振方式:CW発振、集光光学系:YW50(fc=125)、ファイバー径:φ0.1、
Arガス流量:20(l/min)、ノズルタイプ:φ10センター、出力:550W、
加工速度:166(mm/sec)。
溶接条件2
発振方式:CW発振、集光光学系:YW50(fc=125)、ファイバー径:φ0.1、
Arガス流量:20(l/min)、ノズルタイプ:φ10センター、出力:450W
加工速度:166(mm/sec)。
得られた電池缶について、溶接部の平均最大溶け込み深さ及び平均ビード幅を以下のようにして測定した。
各電池缶を溶接部で破断し、この破断面を50倍の拡大率で観察した。そして、この観察された拡大像から、溶接部の最大溶け込み深さを電池缶の幅全長に亘って測定し、平均値を求めた。
b.平均ビード幅
電池缶の溶接部ビードを、上方から50倍の拡大率で観察した。そして、この観察された拡大像から、溶接部のビード幅aを電池缶の幅全長に亘って測定し、その平均値を求めた。
c.スパッタ痕跡
各電池缶外周面について、溶接ビードから±1.0mmの範囲をCCDカメラによって観察し、50μm以上の溶融スパッタの発生数を計測し、単位長さ250mm中の個数に換算した。その個数が250以上なら×、200〜250未満なら△、100〜200未満なら○、100未満なら◎として評価した。
なお、電池缶の溶接部は缶の角部にあり、試験片を切出して引張試験によって評価することが難しい。その代わりに下記の方法を採用し、評価した。
各パイプまたは板材から幅50、長さ100の短柵状サンプル2枚を切出し、前記の溶接条件1(本発明例1〜8)または溶接条件2(比較例4、5)によって2枚のサンプルの短辺をつき合わせして溶接した。その後、溶接ビードを、試験片の長手方向と垂直になるように平行部の中央にしてJIS5号試験片を作製した。この試験片を用いて引張試験を行い、引張強さを測定し、この値を溶接材引張強さと呼ぶ。この溶接材引張強さと前記の電池缶の機械的性質測定で得た引張強さとの比を求め、それを継ぎ手効率と呼び、溶接強度の評価指標とした。その測定結果も表2に示し、40%以上あれば溶接強度として問題はないと判断した。
以上の評価結果を表2に示す。
Claims (3)
- 角型パイプと、該角型パイプの両端をそれぞれ閉塞する一対の蓋部材とを有し、前記角型パイプは、アルミニウム系素材を、熱間押出加工法を用いて成形した押出成形体よりなり、前記各蓋部材は、前記角型パイプの各端部にレーザ溶接法によって溶接され、前記各蓋部材と前記角型パイプとの溶接部は、平均最大溶け込み深さが0.4mm以上、平均ビード幅が0.5mm以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用外装缶。
- 前記アルミニウム系素材は、不可避不純物の含有量が0.6重量%以下のアルミニウム合金、Mn含有量が0.3〜2.0重量%のアルミニウム合金、Mg含有量が0.5〜3.0重量%のアルミニウム合金、Fe含有量が0.3〜1.8重量%のアルミニウム合金、または、Mg含有量が0.3〜1.5重量%、Si含有量が0.3〜1.2重量%のアルミニウム合金のいずれからなり、
前記角型パイプは、その横断面における長辺長をW、短辺長をB、側壁の肉厚をTとしたとき、W/B比が8以上、肉厚Tが0.6〜1.4mmであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用外装缶。 - 前記熱間押出加工法を用いて成形された押出成形体は、前記熱間押出加工法によって成形された押出成形体に、さらに引抜き加工を施したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用外装缶。
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JP5677130B2 (ja) | 2015-02-25 |
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