JP2012173402A - 立体視眼鏡用反射偏光フィルム、それからなる偏光板および立体視眼鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】1軸延伸多層積層フィルムを用いた反射型の偏光フィルムでありながら、従来の反射型偏光板よりも高い偏光性能を備え、さらに吸収型偏光板に較べて透過軸に平行な偏光について高い透過率を備えた、立体映像を観察者に認識させるための立体視用眼鏡に適した反射偏光フィルム、それからなる偏光板および立体視用眼鏡を提供する。
【解決手段】1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムであり、該1軸延伸多層積層フィルムのフィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が95%以上であり、フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が12%以下である立体視眼鏡用反射偏光フィルムによって得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、立体映像を観察者に認識させるための立体視用眼鏡に適した、高透過率かつ高偏光度な反射偏光フィルム、それからなる偏光板および立体視用眼鏡に関し、さらに詳しくは、立体映像を観察者に認識させるための立体視用眼鏡に適した、1軸延伸多層積層フィルムを用いた高透過率かつ高偏光度な立体視眼鏡用反射偏光フィルム、それからなる偏光板および立体視眼鏡に関する。
従来より、一定の周期で右眼映像と左眼映像を画面上に交互に表示し、観察者が装着している立体視用眼鏡においては前記一定の周期に同期して右眼用液晶と左眼用液晶における透過と不透過を交互に行い、観察者に立体視させる3次元映像表示システムが知られている。このシステムは、シャッタ方式と呼ばれ、このシャッタ方式に用いる立体視用眼鏡は液晶シャッタ眼鏡と呼ばれている。
また、他の方式の3次元映像表示システムとして、偏光方式が知られている。この偏光方式は、右眼映像が形成される第1液晶パネルに光源からの光を透過させて右眼映像光を得て、これをスクリーン上に投影するとともに、左眼映像が形成される第2液晶パネルに光源からの光を透過させて左眼映像光を得て、これを前記スクリーン上に投影し、前記第1液晶パネル及び第2液晶パネルにおいて、透過する光の偏光方向が相互に略90°異なるようにしておき、これに対応させて観察者が装着している立体視用眼鏡においても、右眼用偏光板及び左眼用偏光板において、透過する光の偏光方向が相互に略90°異ならせておくことで、右眼映像を観察者の右眼に、左眼映像を観察者の左眼にそれぞれ導いて立体視を行わせるようにしたシステムである。
前記偏光方式では、観察者の立体視用眼鏡を傾けた場合に偏光軸のずれが発生するため、改良策として、右眼映像が形成される第1液晶パネルおよび左眼映像が形成される第2液晶パネルの前方にλ/2板やλ/4板を設け、それぞれ異なる円偏光光として、さらに右眼用偏光板及び左眼用偏光板の前方にλ/2板やλ/4板を設けた円偏光方式が知られている(例えば特許文献1)。
いずれの方式においても立体視用眼鏡には、偏光板として一般的に光吸収タイプの2色性直線偏光板と呼ばれる吸収型偏光板が用いられており、ヨウ素を含むPVAをトリアセチルセルロース(TAC)で保護した偏光板が広く用いられている。このような吸収型の偏光板は、透過軸方向の偏光光を透過し、透過軸と直交方向の偏光光を吸収するが、透過軸方向の偏光光においても吸収が生じてしまい、透過率が低下するといった問題点があった。
一方で反射型の偏光子の一例として、透過軸と直交方向の偏光光を有効利用するために、輝度向上フィルムと呼ばれる反射型の偏光子を光源と液晶パネルの間に用いる構成が検討されており、光学干渉を用いたポリマータイプのフィルムが検討されている(特許文献2など)。
しかしながら、従来検討されているような複屈折性の多層構成を用いた反射偏光性ポリマーフィルム(例えば特許文献3〜5)は、透過軸と直交方向の偏光を反射し、透過軸方向の偏光を透過する機能を有するものの、その偏光度は吸収型偏光板と同等のレベルには至っていない。
同様に、特許文献4に記載されているポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下、2,6−PENと称することがある)を高屈折率層に用い、熱可塑性エラストマーやイソフタル酸を30mol%共重合したPENを低屈折率層に用いた多層積層フィルムは、延伸により延伸方向(X方向)の層間の屈折率差を大きくしてX方向に平行な(透過軸と直交方向)偏光の反射率を高め、一方フィルム面内方向におけるX方向と直交する方向(Y方向)の層間の屈折率差が小さいことでY方向に平行な(透過軸方向)偏光の透過率を高めて一定レベルの偏光性能を発現しているが、その偏光度は吸収型偏光板と同等のレベルには至っていない。
そのため、かかる多層構成のポリマーフィルム単独で吸収型偏光板に代わる偏光板として用いることは難しく、立体視眼鏡用の偏光板としていまだ実用化されていないのが現状である。
特開平10−232365号公報 特表平09−507308号公報 特開平04−268505号公報 特表平09−506837号公報 WO01/47711号パンフレット
本発明の目的は、1軸延伸多層積層フィルムを用いた反射型の偏光フィルムでありながら、従来の反射型偏光板よりも高い偏光性能を備え、さらに吸収型偏光板に較べて透過軸に平行な偏光について高い透過率を備えた、立体映像を観察者に認識させるための立体視用眼鏡に適した反射偏光フィルム、それからなる偏光板および立体視用眼鏡を提供することにある。
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の知見を得た。すなわち、従来の多層積層型の反射偏光フィルムにおいて、高屈折率層を構成する樹脂として使われていたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代えて、一軸延伸により、X方向の屈折率が増大する一方、Y方向とZ方向の両方向の屈折率がともに低下する特性を有する熱可塑性樹脂を用いることにより、一軸延伸後の第1層のX方向とY方向の屈折率差を従来よりも大きくすることが可能となる。その結果、従来のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いた多層積層型の反射偏光フィルムに較べてX方向に平行な偏光、すなわち透過軸に直交な偏光についてより高い反射性能が得られ、その直交方向(透過軸方向,本発明におけるY方向)の偏光は選択的により透過させることができ、従来の反射偏光フィルムよりも高い偏光性能が得られること、また透過軸方向について吸収型偏光板よりも高い透過性が得られることを見出した。
かかる知見により、本発明者等は、多層積層のフィルムからなる反射型偏光板を吸収型偏光板に代わる偏光板として単独で立体視眼鏡用に用いた場合に、従来の反射型偏光板よりも偏光性能が高く、さらに吸収型偏光板に較べて透過軸方向において高い透過性を有しているため、立体視眼鏡用に用いた場合に視野が明るく、立体映像の視認性および立体映像以外の視認性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムであり、該1軸延伸多層積層フィルムのフィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が95%以上であり、フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が12%以下である立体視眼鏡用反射偏光フィルム(項1)によって達成される。
また本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、好ましい態様として以下の少なくともいずれか1つを具備するものも包含するものである。
項2. 該1軸延伸多層積層フィルムが第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有しており、
1)第1層は、平均屈折率1.60以上1.70以下であって、1軸延伸方向(X方向)の屈折率nXが延伸により増大し、フィルム面内で1軸延伸方向に直交する方向(Y方向)の屈折率nYおよびフィルム厚み方向(Z方向)の屈折率nZが延伸により低下する熱可塑性樹脂からなり、
2)第2層は、延伸前のX方向、Y方向、Z方向の平均屈折率が1.50以上1.60以下であって、該延伸前の平均屈折率と延伸後のX方向、Y方向、Z方向の屈折率との差が3方向とも0.05以下である熱可塑性樹脂からなる、項1に記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
項3. 該1軸延伸多層積層フィルムが第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有しており、第1層はジカルボン酸成分とジオール成分とのポリエステルからなり、
(i)該ジカルボン酸成分は5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される成分および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分を含有し、
(式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
(式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基を表わす)
(ii)該ジオール成分は90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表される成分を含有する、項1または2に記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
(式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
項4. 第2層を形成する熱可塑性樹脂が、イソフタル酸もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合したエチレンテレフタレート成分を主たる成分とするポリエステルである項2または3に記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
項5. 該1軸延伸多層積層フィルムの積層数が251層以上である項1〜4のいずれかに記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを含む偏光板。
項7. さらにλ/4波長フィルムを含む項6に記載の偏光板。
項8. 少なくともλ/4波長フィルム側において空気とλ/4波長フィルムと間に反射防止層を有する項7に記載の偏光板。
項9. 項6〜8のいずれかに記載の偏光板を用いた立体視眼鏡。
本発明によれば、1軸延伸多層積層フィルムを用いた反射型の偏光フィルムでありながら、立体視眼鏡として十分な高い偏光性能を有しており、さらに吸収型偏光板に較べて透過軸方向において高い透過性を有しているため立体視眼鏡用に用いた場合に視野が明るく、立体映像の視認性および立体映像以外の視認性にも優れていることから、立体映像を観察者に認識させるための立体視眼鏡用反射偏光フィルム、それからなる偏光板および立体視用眼鏡を提供することができる。
図1は、2,6−PENの1軸延伸後の延伸方向(X方向)、延伸方向と直交する方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)の屈折率(それぞれn、n、nと示す)である。 図2は、本発明における第1層用芳香族ポリエステル(I)の1軸延伸後の延伸方向(X方向)、延伸方向と直交する方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)の屈折率(それぞれn、n、nと示す)である。 図3は、本発明の1軸延伸多層積層フィルムのフィルム面を反射面とし、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分(p光成分)、および延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(s光成分)の波長に対する、入射角0°での反射率のグラフの一例である。 図4は円偏光板の概略断面図である。 図5は円偏光板を用いた立体視眼鏡の概略図であり、図5(a)は立体視眼鏡の正面概略図、図5(b)は立体視眼鏡を上面概略図である。 図6は反射防止層を片側に含む円偏光板の概略断面図である。 図7は反射防止層を両側に含む円偏光板の概略断面図である。
以下、本発明を詳しく説明する。
[1軸延伸多層積層フィルム]
(平均反射率)
本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムは1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムであり、該1軸延伸多層積層フィルムのフィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が95%以上であり、フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が12%以下であることを特徴する。
ここで、入射面とは反射面と垂直の関係にあり、かつ入射光線と反射光線を含む面を指す。また、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分は、本発明においてp偏光、透過軸に直交な偏光、消光軸方向の偏光、または反射軸方向の偏光と称することがある。また、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分は、本発明においてs偏光、透過軸方向の偏光と称することがある。さらに入射角とは、フィルム面の垂直方向に対する入射角を表す。
フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は、さらに好ましくは98%以上100%以下である。p偏光成分に対する平均反射率がこのように高いことにより、p偏光の透過量を従来よりも抑え、s偏光を選択的に透過させる高い偏光性能が発現され、従来の反射型偏光板よりも高い偏光性能が得られる。
また、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は95%以上であることが好ましく、さらに好ましくは96%以上99%以下である。入射角50度でのp偏光についても平均反射率がこのように高いことにより、高い偏光性能が得られるとともに、斜め方向に入射した光の透過が高度に抑制されるため、かかる光による色相ずれが抑制される。
フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(s偏光)について入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は、より好ましくは5%以上12%以下であり、さらに好ましくは8%以上12%以下、特に好ましくは9%以上11%以下である。
また、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(s偏光)について入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率は、12%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5%以上10%以下であり、特に好ましくは8%以上10%以下である。
s偏光成分に対する波長400〜800nmの平均反射率がかかる範囲内に制限されることにより、光源と反対側に透過されるs偏光量が増大し、s偏光に対する透過率が高くなる。一方、s偏光成分に関する平均反射率が上限値を越える場合、反射偏光フィルムとしての偏光透過率が低下するため、従来の反射型偏光板に比べて改良された偏光性能を得ることができず、立体視眼鏡の偏光板または円偏光板として鮮明な映像を視認することができない。さらに、透過軸方向において高透過率でないため、視野が暗くなり、そのため立体映像の視認性および立体映像以外の視認性が十分でない。
一方、かかる範囲内でより該偏光反射率が低い方がよりs偏光成分の透過率が高くなるものの、下限値より低くすることは組成や延伸との関係で難しいことがある。
フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(s偏光)について入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均透過率は、好ましくは88%以上、より好ましくは88%以上95%以下、さらに好ましくは88%以上92%以下、特に好ましくは89%以上91%以下である。
また、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(s偏光)について入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均透過率は、好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上95%以下、特に好ましくは90%以上92%以下である。
s偏光成分に対する波長400〜800nmの平均透過率がかかる範囲内にあることにより、光源と反対側に透過されるs偏光量が増大する。一方、s偏光成分に関する平均透過率が下限値に満たない場合、反射偏光フィルムとしての偏光透過率が低下して、従来の反射型偏光板に比べて改良された偏光性能を得ることができず、立体視眼鏡の偏光板または円偏光板として鮮明な映像を視認することができない。さらに、透過軸方向において高透過率でないため、視野が暗くなり、そのため立体映像の視認性および立体映像以外の視認性が十分でない。
一方、かかる範囲内でより該平均透過率が高い方がよりs偏光成分の透過率が高くなるものの、下限値より低くすることは組成や延伸との関係で難しいことがある。
p偏光成分についてかかる平均反射率特性を得るためには、第1層および第2層の交互積層で構成される1軸延伸多層積層フィルムにおいて、各層を構成するポリマーとして後述する屈折率特性を有するポリマーを用い、延伸方向(X方向)に一定の延伸倍率で延伸して第1層のフィルム面内方向を複屈折率化させることにより、延伸方向(X方向)における第1層と第2層の屈折率差を大きくすることによって達成される。また、波長400〜800nmの波長域においてかかる平均反射率を得るために、第1層、第2層の各層厚みを調整する方法が挙げられる。
また、s偏光成分についてかかる平均反射率特性または平均透過率特性を得るためには、第1層および第2層の交互積層で構成される1軸延伸多層積層フィルムにおいて、各層を構成するポリマー成分として後述する屈折率特性を有するポリマーを用い、かつ該延伸方向と直交する方向(Y方向)に延伸しないか、低延伸倍率での延伸にとどめることにより、該直交方向(Y方向)における第1層と第2層の屈折率差を極めて小さくすることによって達成される。また、波長400〜800nmの波長域においてかかる平均反射率を得るために、第1層、第2層の各層厚みを調整する方法が挙げられる。
[第1層]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有している。本発明において、第1層は第2層より屈折率の高い層、第2層は第1層より屈折率の低い層をそれぞれ表す。また、延伸方向(X方向)の屈折率はn、延伸方向と直交する方向(Y方向)の屈折率はn、フィルム厚み方向(Z方向)の屈折率はnと記載することがある。
本発明において第1層を構成する熱可塑性樹脂は、平均屈折率1.60以上1.70以下であって、1軸延伸方向(X方向)の屈折率nが延伸により増大し、フィルム面内で1軸延伸方向に直交する方向(Y方向)の屈折率nおよびフィルム厚み方向(Z方向)の屈折率nが延伸により低下する特性を有する熱可塑性樹脂である。
反射偏光機能を有する多層積層フィルムの第1層として、これまでポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが最も好適な材料として知られていたが、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、延伸前後でY方向の屈折率nがほとんど変化しない材料である。一方、本発明の第1層を構成する熱可塑性樹脂は延伸によりY方向の屈折率nがZ方向の屈折率nと同様、延伸に伴い減少する点で最も特徴を有する。
反射偏光機能を有する多層積層フィルムにおいて、第1層を構成する樹脂として従来知られていなかった本発明の屈折率特性の熱可塑性樹脂を第1層に用い、さらに後述する第2層の熱可塑性樹脂と組み合わせて多層積層フィルムにすることにより、これまでの多層積層フィルムでは困難であった高い偏光性能が発現する。そのため、立体映像を観察者に認識させるための立体視用眼鏡に適した反射偏光フィルムとして用いることができ、立体視用眼鏡の偏光板として好適に用いることができる。
ここで、本発明における平均屈折率とは、第1層を構成する熱可塑性樹脂を単独で溶融させ、ダイより押出して未延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向における屈折率について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmで測定し、それらの平均値を平均屈折率として規定したものである。
また、延伸による各方向の屈折率変化については、次の方法により求めることができる。すなわち、第1層を構成する熱可塑性樹脂を単独で溶融させてダイより押出し、未延伸フィルムを作成する。得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定し、3方向の屈折率の平均値より平均屈折率を求め、延伸前の屈折率とする。
次に、延伸後の屈折率については、第1層を構成する熱可塑性樹脂を単独で溶融させてダイより押出し、1軸方向に135℃で5倍を施して1軸延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定し、延伸後の各方向の屈折率とする。
かかる方法で得られた延伸前の屈折率と延伸後の各方向の屈折率とを比較し、延伸による屈折率変化の増減を確認することができる。
第1層の熱可塑性樹脂の平均屈折率の下限値は、より好ましくは1.61、さらに好ましくは1.62である。また第1層の熱可塑性樹脂の平均屈折率の上限値は、より好ましくは1.69、さらに好ましくは1.68である。第1層の熱可塑性樹脂の平均屈折率がかかる範囲内にあることにより、延伸後の第2層との層間の各方向の屈折率差を所望の範囲にすることができる。一方、第1層の熱可塑性樹脂の平均屈折率が下限値に満たない場合、第2層との屈折率差が近くなり、延伸後のX方向の屈折率差を十分に大きくすることができない。また第1層の熱可塑性樹脂の平均屈折率が上限値を超える場合は延伸後の第2層との屈折率差が大きくなり、延伸後のY方向、Z方向における層間の屈折率差を小さくし難い。
第1層の熱可塑性樹脂のX方向における屈折率nは、延伸により0.20以上増大することが好ましく、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.27以上である。該屈折率の変化がより大きい方がより偏光性能を高めることができるが、延伸倍率が高すぎるとフィルム破断が生じる関係で、上限値は0.35に制限され、さらには0.30である。
第1層の熱可塑性樹脂のY方向における屈折率nは、延伸により0.05以上0.20以下の範囲で低下することが好ましく、より好ましくは0.06以上0.15以下、さらに好ましくは0.07以上0.10以下である。該屈折率の低下量が下限値に満たない場合は、Y方向の層間屈折率が一致するように両層の樹脂を選択すると、X方向の層間の屈折率差を大きくするに伴いZ方向の層間の屈折率のずれが大きくなり、斜め方向の入射光に対する透過偏光の色相ずれが生じることがあり、立体視眼鏡として使用したときに映像光の入射角によって色相ずれが生じることがある。一方、該屈折率の低下量が上限値を超える場合は、配向性が高すぎて、機械的な強度が十分でないことがある。
第1層の熱可塑性樹脂のZ方向における屈折率nは、延伸により0.05以上0.20以下の範囲で低下することが好ましく、より好ましくは0.06以上0.15以下、さらに好ましくは0.07以上0.10以下である。該屈折率の低下量を下限値に満たない範囲にするためにはX方向を低配向にせざるを得ず、X方向の層間の屈折率差を十分に大きくすることができないことがある。一方、該屈折率の低下量が上限値を超える場合は、配向性が高すぎて、機械的な強度が十分でないことがある。
第1層の延伸後のY方向屈折率nと延伸後のZ方向屈折率nの屈折率差は、0.05以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.01以下である。これら2方向の屈折率差が非常に小さいことにより、偏光光が斜め方向の入射角で入射しても色相ずれが生じない効果を奏する。かかる偏光光は特に、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(s偏光)についての色相ずれの解消に効果的であり、立体視眼鏡として使用したときに映像光の入射角による色相ずれが生じることなく、映像光の再現性に優れる。
かかる屈折率特性を有する熱可塑性樹脂として、具体的には以下に述べるような特定構造の共重合成分をジカルボン酸成分に有する芳香族ポリエステル(以下、芳香族ポリエステル(I)と称することがある)が例示される。
<芳香族ポリエステル(I)>
第1層を形成する熱可塑性樹脂として、特定構造の共重合成分をジカルボン酸成分に有する芳香族ポリエステル(I)が例示される。かかるポリエステルは、以下に詳述するジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合によって得られる。
(ジカルボン酸成分)
本発明の芳香族ポリエステル(I)を構成するジカルボン酸成分(i)として、5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される成分、および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分の、少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸成分またはそれらの誘導体が用いられる。ここで、各芳香族ジカルボン酸成分の含有量は、ジカルボン酸成分の全モル数を基準とする含有量である。
(式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
(式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基を表わす)
式(A)で表される成分について、式中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である。かかるアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。
式(A)で表される成分の含有量の下限値は、好ましくは7モル%、より好ましくは10モル%、さらに好ましくは15モル%である。また、式(A)で表される成分の含有量の上限値は、好ましくは45モル%、より好ましくは40モル%、さらに好ましくは35モル%、特に好ましくは30モル%である。
従って、式(A)で表される成分の含有量は、好ましくは5モル%以上45モル%以下、より好ましくは7モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上35モル%以下、特に好ましくは15モル%以上30モル%以下である。
式(A)で表される成分は、好ましくは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸から誘導される成分が好ましい。これらの中でも式(A)におけるRの炭素数が偶数のものが好ましく、特に下記式(A−1)で表わされる6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸から誘導される成分が好ましい。
かかる芳香族ポリエステル(I)は、ジカルボン酸成分が5モル%以上50モル%以下の式(A)で表される成分を含有することを特徴とする。式(A)で示される酸成分の割合が下限値に満たない場合は、1軸延伸によるY方向の屈折率の低下が生じにくいため、
延伸フィルムにおけるY方向の屈折率nとZ方向の屈折率nの差異が大きくなり、斜め方向の入射角で入射した偏光による色相ずれが生じることがある。また、式(A)で示される成分の割合が上限値を超える場合は、非晶性の特性が大きくなり、延伸フィルムにおけるX方向の屈折率nとY方向の屈折率nとの差異が小さくなるため、反射偏光フィルムとして十分な反射性能が得られない。
このように、式(A)で表される成分を含有するポリエステルを用いることで、反射偏光フィルムとしての偏光性能が従来より高い1軸延伸多層積層フィルムを製造することができ、さらに斜め方向の入射角による色相ずれを抑制することができる。
また、式(B)で表される酸成分について、式中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である。
式(B)で表される成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらの組み合わせから誘導される成分が挙げられ、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導される成分が好ましく例示される。
式(B)で表される成分の含有量の下限値は、好ましくは55モル%、より好ましくは60モル%、さらに好ましくは65モル%、特に好ましくは70モル%である。また、式(B)で表される成分の含有量の上限値は、好ましくは93モル%、より好ましくは90モル%、さらに好ましくは85モル%である。
従って、式(B)で表される成分の含有量は、好ましくは55モル%以上95モル%以下、より好ましくは60モル%以上93モル%以下、さらに好ましくは65モル%以上90モル%以下、特に好ましくは70モル%以上85モル%以下である。
式(B)で示される成分の割合が下限値に満たない場合は、非晶性の特性が大きくなり、延伸フィルムにおけるX方向の屈折率nとY方向の屈折率nとの差異が小さくなるため、反射偏光フィルムとして十分な性能を発揮しない。また、式(B)で示される成分の割合が上限値を超える場合は、式(A)で示される成分の割合が相対的に少なくなるため、延伸フィルムにおけるY方向の屈折率nとZ方向の屈折率nの差異が大きくなり、斜め方向の入射角で入射した偏光による色相ずれが生じることがある。
このように、式(B)で表される成分を含有するポリエステルを用いることで、X方向に高屈折率を示すと同時に1軸配向性の高い複屈折率特性を実現できる。
(ジオール成分)
本発明の芳香族ポリエステル(I)を構成するジオール成分(ii)として、90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表されるジオール成分が用いられる。ここで、ジオール成分の含有量は、ジオール成分の全モル数を基準とする含有量である。
(式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
式(C)で表されるジオール成分の含有量は、好ましくは95モル%以上100モル%以下、より好ましくは98モル%以上100モル%以下である。
式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基であり、かかるアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらの中でも式(C)で表されるジオール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等から誘導される成分が好ましく挙げられる。特に好ましくはエチレングリコールから誘導される成分である。式(C)で示されるジオール成分の割合が下限値に満たない場合は、前述の1軸配向性が損なわれる。
(芳香族ポリエステル(I))
芳香族ポリエステル(I)において、式(A)で表される酸成分と式(C)で表されるジオール成分で構成されるエステル単位(−(A)−(C)−)の含有量は、全繰り返し単位の5モル%以上50モル%以下であり、好ましくは5モル%以上45モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上40モル%以下である。
芳香族ポリエステル(I)を構成する他のエステル単位として、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなどのアルキレンテレフタレート単位、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、トリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのアルキレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が挙げられる。これらの中でも高屈折率性などの点からエチレンテレフタレート単位やエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましい。
芳香族ポリエステル(I)として、特に、式(A)で表されるジカルボン酸成分が式(A−1)で表わされるジカルボン酸成分であり、
式(B)で表されるジカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の芳香族ジカルボン酸成分であり、ジオール成分がエチレングリコールであるポリエステルが好ましい。
芳香族ポリエステル(I)は、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.5dl/g、特に好ましくは0.5〜1.2dl/gである。
芳香族ポリエステル(I)の融点は、好ましくは200〜260℃の範囲、より好ましくは205〜255℃の範囲、さらに好ましくは210〜250℃の範囲である。融点はDSCで測定して求めることができる。
該ポリエステルの融点が上限値を越えると、溶融押出して成形する際に流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなることがある。一方、融点が下限値に満たないと、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなり、また本発明の屈折率特性が発現し難い。
一般的に共重合体は単独重合体に比べて融点が低く、機械的強度が低下する傾向にある。しかし、本発明のポリエステルは、式(A)の成分および式(B)の成分を含有する共重合体であり、式(A)の成分のみを有する単独重合体に比べて融点が低いものの機械的強度は同程度であるという優れた特性を有する。
芳香族ポリエステル(I)のガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)は、好ましくは80〜120℃、より好ましくは82〜118℃、さらに好ましくは85〜118℃の範囲にある。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れたフィルムが得られる。かかる融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジアルキレングリコールの制御などによって調整できる。
かかる芳香族ポリエステル(I)の製造方法は、例えばWO2008/153188号パンフレットの第9頁に記載されている方法に準じて製造することができる。
(芳香族ポリエステル(I)の屈折率特性)
芳香族ポリエステル(I)を1軸延伸した場合の各方向の屈折率の変化例を図2に示す。図2に示すように、X方向の屈折率nは延伸により増加する方向にあり、Y方向の屈折率nとZ方向の屈折率nはともに延伸に伴い低下する方向にあり、しかも延伸倍率によらずnとnの屈折率差が非常に小さいことを特徴としている。
また第1層は、かかる特定の共重合成分を含む芳香族ポリエステル(I)を用いて1軸延伸を施すことにより、X方向の屈折率nが1.80〜1.90の高屈折率特性を有する。第1層におけるX方向の屈折率がかかる範囲にあることにより、第2層との屈折率差が大きくなり、十分な反射偏光性能を発揮することができる。
一方、第1層を構成するポリエステルが、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの場合、図1に示すように、1軸方向の延伸倍率によらず、Y方向の屈折率nは一定で低下がみられないのに対し、Z方向の屈折率nは1軸延伸倍率の増加に伴い屈折率が低下する。そのためY方向の屈折率nとZ方向の屈折率nの差が大きくなり、偏光光が斜め方向の入射角で入射した際に色相ずれが生じやすくなり、立体視眼鏡として使用したときに映像光の入射角によって映像光本来の色を十分に再現できないことがある。
[第2層]
<熱可塑性樹脂>
本発明における第2層は、延伸前のX方向、Y方向、Z方向の平均屈折率が1.50以上1.60以下であって、該延伸前の平均屈折率と延伸後のX方向、Y方向、Z方向の屈折率との差が3方向とも0.05以下である熱可塑性樹脂からなる。
ここで、第2層における延伸前のX方向、Y方向、Z方向の平均屈折率とは、第2層を構成する熱可塑性樹脂を単独で溶融させ、ダイより押出して未延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向における屈折率について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmで測定し、それらの平均値を平均屈折率として規定したものである。
また、第2層における延伸後のX方向、Y方向、Z方向の屈折率については、第2層を構成する熱可塑性樹脂を単独で溶融させてダイより押出し、1軸方向に135℃で5倍の延伸を施して1軸延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して延伸後の各方向の屈折率を求めたものである。
このようにして求めた延伸前の平均屈折率と、延伸後のX方向、Y方向、Z方向の屈折率との差をそれぞれ求め、3方向ともその差が絶対値で0.05以下である屈折率特性を有する熱可塑性樹脂を第2層に用いる。
第2層を構成する熱可塑性樹脂の平均屈折率は、好ましくは1.53以上1.60以下、さらに好ましくは1.55以上1.60以下、さらに好ましくは1.58以上1.60以下である。第2層がかかる平均屈折率を有し、しかも延伸前後の屈折率差の小さい等方性材料であることにより、第1層と第2層の層間における延伸後のX方向の屈折率差が大きく、その結果、高い偏光性能が得られる。また、Y方向の屈折率差およびZ方向の屈折率差が共に極めて小さい屈折率特性を得ることができ、斜め方向の入射角よる色相ずれに対しても良好である。
かかる屈折率特性を有する熱可塑性樹脂の中でも、1軸延伸における製膜性の観点から、結晶性ポリエステルであることが好ましい。かかる屈折率特性を有する結晶性ポリエステルとして、共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートなどの共重合ポリエステル、結晶性の共重合ポリエステル同士のブレンド、結晶性の共重合ポリエステルと非晶性ポリエステルとのブレンドが好ましく例示される。
結晶性の共重合ポリエステルの中でも共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましく、さらにイソフタル酸もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合したエチレンテレフタレート成分を主たる成分とするポリエステルが好ましく、特にイソフタル酸もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合したエチレンテレフタレート成分を主たる成分とする融点が220℃以下のポリエステルであることが好ましい。
また、共重合ポリエチレンテレフタレートの場合、上記成分以外の共重合成分としては、第2層のポリエステルを構成する全繰り返し単位を基準として10モル%以下の範囲内で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸などのうちのメインの共重合成分以外の芳香族カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸といった脂環族ジカルボン酸等の酸成分、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノールといった脂環族ジオール等のグリコール成分を好ましく挙げることができる。
また共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートとして本発明の第1層で用いられる芳香族ポリエステル(I)を用いることができ、かかる場合には本発明の第2層の屈折率特性を得るために、他の結晶性の共重合ポリエステルとブレンドして用いることが好ましい。他の結晶性の共重合ポリエステルとして、例えばポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートの共重合体が挙げられる。
なお、第2層を構成する熱可塑性樹脂の融点は、フィルムにする前の段階から低い必要はなく、延伸処理後に低くなっていれば良い。例えば、2種以上のポリエステルをブレンドし、これらを溶融混練時にエステル交換させたものであってもよい。
[積層構成]
(積層数)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、上述の第1層および第2層が交互に合計251層以上積層されていることが好ましい。積層数が251層未満であると、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmにわたり一定の平均反射率を満足するすることができないことがある。
積層数の上限値は、生産性およびフィルムのハンドリング性など観点から2001層に制限される。積層数の上限値は、本発明の平均反射率特性が得られれば生産性やハンドリング性の観点からさらに積層数を減らしてもよく、例えば1001層、501層、301層であってもよい。
(各層厚み)
第1層および第2層は、層間の光干渉によって選択的に光を反射するために、各層の厚みは0.01μm以上0.5μm以下である。また第1層の各層の厚みは、好ましくは0.01μm以上0.1μm以下、第2層の各層の厚みは、好ましくは0.01μm以上0.3μm以下である。各層の厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムが示す反射波長帯は、可視光域から近赤外線領域であることから、第1層および第2層について各層の厚みをかかる範囲とすることで効率的に可視光域から近赤外線領域の反射率特性を得ることができる。層厚みが0.5μmを超えると反射帯域が赤外線領域になり、一方、層厚みが0.01μm未満であると、ポリエステル成分が光を吸収し反射性能が得られなくなる。
(最大層厚みと最小層厚みの比率)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層および第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みの比率がいずれも2.0以上5.0以下であり、より好ましくは2.0以上4.0以下、さらに好ましくは2.0以上3.5以下、特に好ましくは2.0以上3.0以下である。
即ち、第1層における最大層厚みと最小層厚みの比率が2.0以上5.0以下であり、かつ第2層における最大層厚みと最小層厚みの比率が2.0以上5.0以下である。
例えば、第1層が126層あり第2層が125層ある多層延伸フィルムにおいて、第1層の最大層厚みとは、126層ある第1層の中で最も厚みの大きい層の厚みのことである。第1層の最小層厚みとは、126層ある第1層の中で最も厚みの小さい層の厚みのことである。
かかる層厚みの比率は、具体的には最小層厚みに対する最大層厚みの比率で表わされる。第1層、第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みは、透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
多層積層フィルムは、層間の屈折率差、層数、層の厚みによって反射する波長が決まるが、積層された第1層および第2層のそれぞれが一定の厚みでは、特定の波長のみしか反射することができず、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmの幅広い波長帯にわたって均一に平均反射率を高めることができない。また、最大層厚みと最小層厚みの比率が上限値を超える場合は、反射帯域が広がりすぎ、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の反射率の低下を伴うことがある。
第1層および第2層の層厚みは、段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された第1層および第2層のそれぞれが変化することで、より広い波長域の光を反射することができる。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムにおける多層構造を積層する方法は特に限定されないが、例えば、第1層用ポリエステルを137層、第2層用熱可塑性樹脂を138層に分岐させた第1層と第2層が交互に積層され、その流路が連続的に2.0〜5.0倍までに変化する多層フィードブロック装置を使用する方法が挙げられる。
(第1層と第2層の平均層厚み比)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比が1.5倍以上5.0倍以下の範囲であることが好ましい。第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の下限値は、より好ましくは2.0である。また、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の上限値は、より好ましくは4.0であり、さらに好ましくは、3.5である。
第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比がかかる範囲にあることにより、反射波長の半波長で生じる2次反射を有効に利用できるため、第1層および第2層それぞれの最大層厚みと最小層厚みの比率を最小限に抑えることができ、光学特性の観点から好ましい。また、このように第1層と第2層の厚み比を変化させることにより、層間の密着性を維持したまま、また使用する樹脂を変更することなく、得られたフィルムの機械特性も調整することができ、フィルムが裂けにくくなる効果も有する。
一方、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比がかかる範囲からはずれる場合、反射波長の半波長で生じる2次反射が小さくなってしまい、反射率が低下することがある。
(厚み調整層)
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、かかる第1層、第2層以外に、層厚みが2μm以上の厚み調整層を第1層と第2層の交互積層構成の一部に有していてもよい。かかる厚みの厚み調整層を第1層と第2層の交互積層構成の一部に有することにより、偏光機能に影響をおよぼすことなく、第1層および第2層を構成する各層厚みを均一に調整しやすくなる。かかる厚みの厚み調整層は、第1層、第2層のいずれかと同じ組成、またはこれらの組成を部分的に含む組成であってもよく、層厚みが厚いため、反射特性には寄与しない。
[1軸延伸フィルム]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、目的とする反射偏光フィルムとしての光学特性を満足するために、少なくとも1軸方向に延伸されている。本発明における1軸延伸には、1軸方向にのみ延伸したフィルムの他、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向に、より延伸されたフィルムも含まれる。1軸延伸方向(X方向)は、フィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよい。また、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムの場合は、より延伸される方向(X方向)はフィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよく、延伸倍率の低い方向は、1.05〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが偏光性能を高める点で好ましい。2軸方向に延伸され、一方向により延伸されたフィルムの場合、偏光光や屈折率との関係での「延伸方向」とは、より延伸された方向を指す。
延伸方法としては、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
[第1層と第2層の層間の屈折率特性]
第1層と第2層のX方向の屈折率差は0.10〜0.45であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.40、特に好ましくは0.25〜0.30である。X方向の屈折率差がかかる範囲にあることにより、反射特性を効率よく高めることができ、より少ない積層数で高い反射率を得ることができる。
また、第1層と第2層のY方向の屈折率差および第1層と第2層のZ方向の屈折率差は、それぞれ0.05以下であることが好ましい。Y方向およびZ方向それぞれの層間の屈折率差がともに上述の範囲にあることにより、偏光光が斜め方向の入射角で入射した際に色相ずれを抑制することができる。
[フィルム厚み]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、フィルム厚みが15μm以上40μm以下であることが好ましい。従来の反射偏光機能を有する多層積層フィルムは、p偏光の平均反射率を高めるために層数を多くする必要があり、100μm程度の厚みが必要であったところ、本発明は第1層を構成する熱可塑性樹脂として延伸によりY方向の屈折率が低下する樹脂を用い、さらに既述の第2層の熱可塑性樹脂と組み合わせて一定層厚みの多層積層フィルムにすることにより、従来の多層積層フィルムよりもフィルム厚みを薄くできる。
[1軸延伸多層積層フィルムの製造方法]
つぎに、本発明の1軸延伸多層積層フィルムの製造方法について詳述する。
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、第1層を構成する熱可塑性樹脂と第2層を構成する熱可塑性樹脂とを溶融状態で交互に重ね合わせた状態で押出し、多層未延伸フィルム(シート状物とする工程)とする。このとき、積層物は各層の厚みが段階的または連続的に2.0倍以上、好ましくは5.0倍以下の範囲で変化するように積層される。
このようにして得られた多層未延伸フィルムは、製膜方向、またはそれに直交する幅方向の少なくとも1軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸される。延伸温度は、第1層の熱可塑性樹脂のガラス転移点の温度(Tg)〜Tg+50℃の範囲が好ましい。このときの延伸倍率は2〜10倍であることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜7倍、さらいに好ましくは3〜6倍、特に好ましくは4.5〜5.5倍である。延伸倍率が大きい程、第1層および第2層における個々の層の面方向のバラツキが、延伸による薄層化により小さくなり、多層延伸フィルムの光干渉が面方向に均一化され、また第1層と第2層の延伸方向の屈折率差が大きくなるので好ましい。このときの延伸方法は、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。また、かかる延伸方向と直交する方向(Y方向)にも延伸処理を施し、2軸延伸を行う場合は、1.05〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが好ましい。Y方向の延伸倍率をこれ以上高くすると、偏光性能が低下することがある。また、延伸後にさらに熱固定処理を施すことが好ましい。
[立体視眼鏡用反射偏光フィルム]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムは、従来の反射型偏光板に比べて高い偏光性能を有し、また吸収型偏光板に較べて透過軸方向の高い透過率とを備えるため、立体視眼鏡用反射偏光フィルムとして用いることができる。さらに、斜め方向に入射した光に対する透過光の色相ずれが小さいため、立体視眼鏡として使用したときに映像光の入射角による色相ずれが生じることなく、映像光の再現性に優れる。
立体視眼鏡用に本発明の1軸延伸多層積層フィルムを用いた場合、かかる高い偏光性能を有することにより、第1層としてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いた従来の反射型偏光板に較べてコントラスト、例えば白表示と黒表示との輝度を比較したコントラストが高くなる。そのため、立体視眼鏡の偏光板として用いた場合に映像をより鮮明に視認することができる。また、吸収型偏光板に較べて透過軸方向において高い透過性を有しているため立体視眼鏡用に用いた場合に視野が明るく、そのため立体映像の視認性および立体映像以外の視認性にも優れている。さらに、本発明の1軸延伸多層積層フィルムを用いた場合、従来の反射型偏光板よりも高い偏光性能でありながら、斜め方向に入射した光に対する透過光の色相ずれが小さいため、立体視眼鏡として使用したときに映像の色を再現性高く視認することができる。
[偏光板および立体視眼鏡]
(直線偏光板および直線偏光板を用いた立体視眼鏡)
本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを立体視眼鏡の偏光板として用いる場合、さらにλ/4波長フィルムを貼り合せることなく、偏光板により偏光された直線偏光をそのまま視認する態様の立体視眼鏡として使用することができる。かかる方式の立体視眼鏡は直線偏光方式と呼ばれることがあり、また本発明においてかかる方式の偏光板を直線偏光板と称することがある。
直線偏光方式の立体視眼鏡は、観察者の右目側に配置される右目用画像透過部と観察者の左目側に左目用画像透過部とからなり、通常の眼鏡における右目側に配置されるレンズと左目側に配置されるレンズに対応している。かかる右目用画像透過部は立体画像表示装置から出射する右目用画像の画像光の偏光軸と平行な偏光方向の光を透過するよう本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムが配置され、左目用画像透過部は立体画像表示装置から出射する左目用画像の画像光の偏光軸と平行な偏光方向の光を透過するよう本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムが配置される。また、本発明における立体視眼鏡は、これら右目用画像透過部と左目用画像透過部の偏光軸が互いに直交するように配置される。
本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを用いた偏光板は、従来の反射型偏光板に比べて改良された偏光性能を有しているため、従来は偏光性能が十分でないために反射型偏光板を立体視眼鏡に用いることが困難であったところ、吸収型偏光板に代えて反射型偏光板を立体視眼鏡に用いた場合に、高鮮明な映像を視認することができる。また本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを用いた偏光板は、透過軸方向において従来の吸収型偏光板よりも高透明であるため、立体視眼鏡をかけることによる視野の明るさ低下がなく、そのため立体映像の視認性および立体映像以外の視認性が向上する。特に映画館など照明を暗くした環境で立体映像を観る場合などにおいて、十分な視認性を得ることができる。
(円偏光板および円偏光板を用いた立体視眼鏡)
本発明の偏光板として、上述の直線偏光板以外に、立体視眼鏡用反射偏光フィルムとλ/4波長フィルムとを含む、立体視眼鏡の円偏光板に用いることもできる。ここでλ/4波長フィルムとは、単色光に対して1/4波長の位相差を与える延伸フィルムを指す。
かかる円偏光板は、本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムとλ/4波長フィルムとを、配向軸に対して45度傾けて貼合することによって得られる。円偏光板として用いる場合、本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを用いることによる効果に加え、さらに観察者の立体視用眼鏡を傾けて使用しても偏光軸のずれが発生しないため、鉛直方向と同じ視認性を得ることができる。
本発明において用いるλ/4波長フィルムは、例えば高分子フィルムを一軸ないし二軸等で延伸処理する方法などにより得ることができ、公知のλ/4波長フィルムを用いることができる。延伸フィルムを形成する高分子の種類については特に限定はなく、透明性に優れるものが好ましく用いられる。その例としては、ポリカーボネート系高分子、ポリエステル系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリオレフィン系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、酢酸セルロース系高分子、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリメチルメタクリレート系高分子などがあげられる。
円偏光方式とは、立体画像表示装置から左目用画像、右目用画像として回転方向の異なる円偏光を出射し、円偏光方式の立体視眼鏡により左目には左目だけの画像を、右目には右目だけの画像を透過させる方式である。
円偏光方式の立体視眼鏡は、観察者の右目側に配置される右目用画像透過部と観察者の左目側に左目用画像透過部とからなり、この右目用画像透過部および左目用画像透過部に上述の立体視眼鏡用反射偏光フィルムおよびλ/4波長フィルムを含む円偏光板が用いられる。
かかる円偏光板における立体視眼鏡用反射偏光フィルムは、その透過軸方向が立体画像表示装置の液晶モジュールに配置される2つの偏光板のうち視認者に近い方の偏光板の透過軸方向と直交方向になるように配置される。また、右目用画像透過部に配置される立体視眼鏡用反射偏光フィルムの透過軸方向と、左目用画像透過部に配置される立体視眼鏡用反射偏光フィルムの透過軸方向と平行になるように配置される。
さらに、右目用画像透過部に配置されるλ/4波長フィルムと左目用画像透過部に配置されるλ/4波長フィルムは、それぞれ貼り合せる立体視眼鏡用反射偏光フィルムの配向軸に対して45度傾けて貼合され、かつ立体視眼鏡用反射偏光フィルムの配向軸に対する左右のλ/4波長フィルムの貼り合せ角度が右方向または左方向の逆方向となるように貼合される。ここで、左右の方向は立体画像表示装置の表示形式によって適宜選択される。
本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを用いた円偏光板は、直線偏光方式の偏光板と同様、従来の反射型偏光板に比べて改良された偏光性能を有しているため、従来は偏光性能が十分でないために反射型偏光板を立体視眼鏡に用いることが困難であったところ、吸収型偏光板に代えて反射型偏光板を立体視眼鏡に用いた場合に、高鮮明な映像を視認することができる。また本発明の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを用いた偏光板は、透過軸方向において従来の吸収型偏光板よりも高透明であるため、立体視眼鏡をかけることによる視野の明るさ低下がなく、そのため立体映像の視認性および立体映像以外の視認性が向上する。特に映画館など照明を暗くした環境で立体映像を観る場合などにおいて、十分な視認性を得ることができる。
また、本発明の反射偏光フィルムとλ/4波長フィルムとを含む円偏光板として用いる場合、少なくともλ/4波長フィルム側において空気とλ/4波長フィルムと間に反射防止層を有する円偏光板として用いることがさらに好ましい。
本発明の反射偏光フィルムをλ/4波長フィルムとともに円偏光板として用いる場合、反射偏光フィルムで反射された反射偏光がλ/4波長フィルムと空気の界面で再反射し、偏光角度を変えて、反射偏光フィルムの透過軸に平行な偏光として透過することがあり、結果的に遮断すべき偏光が透過することがある。これにより、円偏光フィルムとしての偏光度が低下してしまうことがあるため、少なくともλ/4波長フィルム側において空気とλ/4波長フィルムと間に反射防止層を設けることにより、かかる再反射光を防ぐことができ、吸収型偏光板並みの高偏光度の反射型円偏光板が得られる。
本発明で用いる反射防止層は特に限定されず、低屈折率層1層のみからなる層、(λ/4波長フィルム/)高屈折率層/低屈折率層の2層、(λ/4波長フィルム/)中屈折層/高屈折層/低屈折層などの3層、のいずれの層構成のものであってもよい。
また、かかる反射防止層の形成は、溶液をフィルム上に塗布後乾燥して積層していく湿式塗布法、スパッタリング・蒸着等による乾式法、のいずれの方法を用いてもよく、両者を組み合わせてもよい。
また、反射防止層を形成する基材は、貼合等により光学特性が損なわれない範囲であれば特に特に限定されない。反射防止層は、上述のλ/4波長フィルム上に直接形成しても良いし、λ/4波長フィルム上に公知のハードコート層を塗布したのちに反射防止層を形成してもよい。更には、位相差の小さい等方性フィルム(トリアセチルセルロース等)上に形成した上でλ/4波長フィルムと貼合してもよい。
その中でも工程の簡便さから1層からなる低屈折率層が好ましい。好ましい低屈折率の例として、例えば特開平10−182745号公報に記載されている特定構造の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体組成物を重合させてなる低屈折率材料を用いることができる。また、特開2001−262011号公報に記載されている含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤及びフッ素含有シランカップリング剤によって編成されたコロイダルシリカとを特定割合で含む含フッ素硬化性塗液を用いてもよい。その他、特開2003−202406号公報に記載されている加水分解性オルガノシランの部分加水分解物及び/または加水分解物からなるシリコーンレジンと平均粒径が5nm〜2μmで且つ外殻の内部に空洞が形成された中空シリカ微粒子とを必須成分とするコーティング剤組成物の硬化被膜層を反射防止層として用いてもよい。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。
なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
(1)反射率、反射波長、透過率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、光源側に偏光フィルタを装着し、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長400nmから800nmの範囲で測定する。このとき、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向(X方向)と合わせるように配置した場合の測定値をp偏光とし、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と直交するように配置した場合の測定値をs偏光とした。それぞれの偏光成分について、400−800nmの範囲での反射率の平均値を平均反射率とし、400−800nmの範囲での透過率の平均値を平均透過率とした。
またフィルムサンプルのフィルム面に対して垂直方向より測定光を入射させた場合を0度入射とした。
(2)各方向の延伸前、延伸後の屈折率および平均屈折率
各層を構成する個々の樹脂について、それぞれ溶融させてダイより押出し、キャスティングドラム上にキャストしたフィルムをそれぞれ用意した。また、得られたフィルムを135℃にて一軸方向に5倍延伸した延伸フィルムを用意した。得られたキャストフィルムと延伸フィルムについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれn、n、nとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求め、延伸前、延伸後の屈折率とした。各層の延伸前の平均屈折率については、延伸前の3方向の屈折率の平均値を平均屈折率とした。
(3)熱可塑性樹脂およびフィルムの融点(Tm)およびガラス転移点(Tg)
ポリマー試料またはフィルムサンプルを10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/min.の昇温速度で、融点およびガラス転移点を測定する。
(4)熱可塑性樹脂の特定ならびに共重合成分および各成分量の特定
フィルムサンプルの各層について、H−NMR測定より熱可塑性樹脂の成分ならびに共重合成分および各成分量を特定した。
(5)各層の厚みおよび積層数
フィルムサンプルをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S−4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みおよび積層数を測定した。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率、第2層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率をそれぞれ求めた。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層の平均層厚み、第2層の平均層厚みをそれぞれ求め、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みを算出した。
なお、最外層のヒートシール層は第1層と第2層から除外した。また交互積層中に2μm以上の厚み調整層が存在する場合は、かかる層も第1層と第2層から除外した。
(6)フィルム全体厚み
フィルムサンプルをスピンドル検出器(安立電気(株)製K107C)にはさみ、デジタル差動電子マイクロメーター(安立電気(株)製K351)にて、異なる位置で厚みを10点測定し、平均値を求めフィルム厚みとした。
(7)明るさ、コントラスト
後述する方法で作成した立体視眼鏡および円偏光方式の3D液晶表示装置備えたパソコン(富士通製「ESPRIMO FH550/AN」)を用い、パソコンにより黒画面表示したとき、および白画面表示したときの立体視眼鏡の右目用画像透過部と左目用画像透過部を通した液晶表示装置の画面の正面輝度をオプトデザイン社製FPD視野角測定評価装置(ErgoScope88)で測定し、白画面より明輝度を、また黒画面より暗輝度をそれぞれ求め、
下記の基準で明るさを評価した。
i)明るさ
◎ :明輝度が立体視眼鏡を用いない場合の85%以上
○ :明輝度が立体視眼鏡を用いない場合の75%以上、85%未満
× :明輝度が立体視眼鏡を用いない場合の75%未満
ii)コントラスト
あわせて明輝度/暗輝度より求められるコントラストを以下の基準で評価した。
◎: コントラスト(明輝度/暗輝度) 15以上
○: コントラスト(明輝度/暗輝度) 10以上、15未満
×: コントラスト(明輝度/暗輝度) 10未満
iii)色相
さらに明輝度時の色相xまたはyを測定し、下記の基準で色相を評価した。
○:立体視眼鏡を用いない場合を基準としたx、yのいずれかの最大変化が0.15未満
△:立体視眼鏡を用いない場合を基準としたx、yのいずれかの最大変化が0.15以上、0.25未満
×:立体視眼鏡を用いない場合を基準としたx、y両方の最大変化が0.25以上
[比較例1]
(偏光子の作成)
ポリビニルアルコールを主成分とする高分子フィルム[クラレ製 商品名「9P75R(厚み:75μm、平均重合度:2,400、ケン化度99.9モル%)」]を周速の異なるロール間で染色しながら延伸搬送した。まず、30℃の水浴中に1分間浸漬させてポリビニルアルコールフィルムを膨潤させつつ搬送方向に1.2倍に延伸した後、30℃のヨウ化カリウム濃度0.03重量%、ヨウ素濃度0.3重量%の水溶液中で1分間浸漬することで、染色しながら搬送方向に、全く延伸していないフィルム(原長)を基準として3倍に延伸した。次に60℃のホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%の水溶液中に30秒間浸漬しながら、搬送方向に原長基準で6倍に延伸した。次に、得られた延伸フィルムを70℃で2分間乾燥することで偏光子を得た。なお、偏光子の厚みは30μm、水分率は14.3重量%であった。
(接着剤の作成)
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度1200、ケン化度98.5モル%、アセトアセチル化度5モル%)100重量部に対して、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7重量%の水溶液を調製した。この水溶液100重量部に対して、正電荷を有するアルミナコロイド(平均粒子径15nm)を固形分濃度10重量%で含有する水溶液18重量部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤溶液の粘度は9.6mPa・sであり、pHは4〜4.5の範囲であり、アルミナコロイドの配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して74重量部であった。
(吸収型偏光板の作成)
厚み80μm、正面レターデーション0.1nm、厚み方向レターデーション1.0nmの光学等方性素子(富士フィルム製商品名「フジタック ZRF80S」の片面に、上記のアルミナコロイド含有接着剤を、乾燥後の厚みが80nmとなるように塗布し、これを上記の偏光子の片面に両者の搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層した。続いて、偏光子の反対側の面にも同様にして光学等方性素子(富士フィルム製商品名「フジタック ZRF80S」)の片面に上記のアルミナコロイド含有接着剤を乾燥後の厚みが80nmとなるように塗布したものを、これらの搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層した。その後55℃で6分間乾燥させて偏光板を得た。この偏光板を「偏光板X」とする。
(λ/4波長板の作成)
厚さ50μmのポリカーボネートフィルムを150℃で2.5%延伸処理し、複屈折光に基づいて波長550nmの光に対して1/4波長の位相差を与えるλ/4延伸フィルムを得た。
(円偏光フィルムの作成)
「偏光板X」とλ/4延伸フィルムの光軸が45度となるように粘着剤で貼合し、円偏光フィルムとした。
(立体視眼鏡の作成)
得られた円偏光フィルムを眼鏡のレンズに相当する大きさに2枚裁断し、偏光板Xのそれぞれの偏光軸が互いに平行になるように右目用画像透過部と左目用画像透過部に設置し、λ/4延伸フィルムが立体画像表示装置側になるよう配置して立体視眼鏡を作成した。得られた立体視眼鏡越しの明るさ評価、コントラスト評価および色相評価を行った。
この吸収型偏光板を立体視眼鏡の偏光板として用いた場合、s偏光の入射角0°における平均透過率が70%であり、立体視眼鏡有無で明輝度を評価した明るさについても、明輝度が立体視眼鏡を用いない場合の75%未満と視野が暗くなった。
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の65モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(表中、PENと記載)、酸成分の35モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分(表中、ENAと記載)、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステルを得、これを第1層用熱可塑性樹脂とし、第2層用熱可塑性樹脂として固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのイソフタル酸20mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(IA20PET)を準備した。
準備した第1層用熱可塑性樹脂および第2層用熱可塑性樹脂を、それぞれ170℃で5時間乾燥後、第1、第2の押出機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、第1層用ポリエステルを137層、第2層用ポリエステルを138層に分岐させた後、第1層と第2層が交互に積層され、かつ第1層と第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みが最大/最小で2.2倍まで連続的に変化するような多層フィードブロック装置を使用して、第1層と第2層が交互に積層された総数275層の積層状態の溶融体とし、その積層状態を保持したまま、その両側に第3の押出機から第2層用ポリエステルと同じポリエステルを3層ダイへと導き、総数275層の積層状態の溶融体の両側にヒートシール層をさらに積層した。両端層(ヒートシール層)は、全体の18%なるよう第3の押出機の供給量を調整した。その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして、第1層と第2層の平均層厚み比が1.0:2.6になるように調整し、総数277層の未延伸多層積層フィルムを作成した。
この多層未延伸フィルムを135℃の温度で幅方向に5.2倍に延伸し、140℃で3秒間熱固定処理を行った。得られた反射偏光フィルムの厚みは33μmであった。
(円偏光フィルムの作成)
得られた反射偏光フィルムと比較例1で用いたλ/4延伸フィルムとを用い、これらの光軸が45度となるように粘着剤で貼合し、円偏光板とした。
(立体視眼鏡の作成)
得られた円偏光フィルムを眼鏡のレンズに相当する大きさに2枚裁断し、それぞれの反射偏光フィルムの偏光軸が互いに平行になるように右目用画像透過部と左目用画像透過部に設置し、λ/4延伸フィルムが立体画像表示装置側になるよう配置して立体視眼鏡を作成した。得られた立体視眼鏡越しの明るさ評価、コントラスト評価および色相評価を行った。
得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また1軸延伸多層積層フィルムの特性および立体視眼鏡の特性を表2に示す。
本実施例の多層積層フィルムを立体視眼鏡に用いることで、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを第1層に用いた比較例2に較べて、s偏光の入射角0°における平均透過率、立体視眼鏡有無で明輝度を評価した明るさ、コントラストおよび色相ともに特性が向上し、明るく鮮明な視認性が得られた。
[実施例2〜6]
表1に示すとおり、各層の樹脂組成または層厚みを変更した以外は実施例1と同様にして、1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムを得た。
なお、実施例2で第2層用ポリエステルとして用いたNDC20PETとは、実施例1の第2層用ポリエステルとして用いたイソフタル酸20mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(IA20PET)の共重合成分を2,6−ナフタレンジカルボン酸に変更した共重合ポリエステルである。
また、実施例4で第2層用ポリエステルとして用いたENA21PEN/PCTブレンドとは、実施例4の第1層用ポリエステルであるENA21PEN(酸成分の79モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の21モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル)と、イーストマンケミカル製PCTA AN004(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体)を、重量比率で2:1になるように混合したものである。
得られた反射偏光フィルムと比較例1で用いたλ/4延伸フィルムとを用い、実施例1と同様にこれらの光軸が45度となるように粘着剤で貼合し、円偏光フィルムとした。
また、得られた円偏光フィルムを眼鏡のレンズに相当する大きさに2枚裁断し、それぞれの偏光軸が互いに平行になるように右目用画像透過部と左目用画像透過部に設置し、立体視眼鏡を作成した。得られた立体視眼鏡について、明るさ、コントラストおよび色相評価を行った。
得られた1軸延伸多層積層フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また1軸延伸多層積層フィルムの特性および立体視眼鏡の特性を表2に示す。
[実施例7]
実施例1で用いたλ/4延伸フィルム上にフッ素系コート剤DS−5300(株式会社ハーベス製)をマイヤーバー#5で塗工して風乾し、反射防止層付λ/4延伸フィルムを得た。得られた反射防止層付λ/4延伸フィルムと実施例1で作成した1軸延伸多層積層フィルムとを実施例1に倣い、これらの光軸が45度となるように配置し、反射防止層が塗布されていない面を粘着剤で貼合し、円偏光フィルムとした以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られた立体視眼鏡について、明るさ、コントラストおよび色相評価を行い、立体視眼鏡の特性を表2に示す。得られた立体視眼鏡は、吸収型偏光板を用いた立体視眼鏡と同程度の高いコントラストを有しており、しかも明るさ、色相は吸収型偏光板を用いた立体視眼鏡よりも良好であった。
[実施例8]
実施例1で用いた1軸延伸多層積層フィルム上にもフッ素系コート剤DS−5300(株式会社ハーベス製)をマイヤーバー#5で塗工して風乾し、反射防止層付1軸延伸多層積層フィルムを得た。得られた反射防止層付1軸延伸多層積層フィルムと、実施例7にて得られた反射防止層付λ/4延伸フィルムとを、実施例1と同様にこれらの光軸が45度となるように配置し、反射防止層が塗布されていない面を粘着剤で貼合し、円偏光フィルムとした以外は実施例1と同様の操作を繰り返した。得られた立体視眼鏡について、明るさ、コントラストおよび色相評価を行い、立体視眼鏡の特性を表2に示す。得られた立体視眼鏡は、吸収型偏光板を用いた立体視眼鏡と同程度の高いコントラストを有しており、しかも明るさ、色相は吸収型偏光板を用いた立体視眼鏡よりも良好であった。
[比較例2]
第1層用熱可塑性樹脂を固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、第2層用熱可塑性樹脂を固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのテレフタル酸64mol%共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(TA64PEN)に変更し、表1に示す製造条件に変更する以外は実施例1と同様にして1軸延伸多層積層フィルムを得、かかるフィルムを偏光板として比較例1で用いたλ/4延伸フィルムと貼り合せて円偏光フィルムを形成し、立体視眼鏡を作成した。
得られた1軸延伸多層積層フィルムはp偏光の平均反射率が95%未満であり、またs偏光の平均反射率が12%を超え、偏光性能が実施例に比べて低いため、十分なコントラストが得られなかった。また、明るさ、色相も実施例に較べて低下した。
[比較例3〜7]
表1に示すとおり、樹脂組成、層厚み、製造条件のいずれかを変更した以外は実施例1と同様にして、1軸延伸多層積層フィルムを作成し、かかるフィルムを偏光板として比較例1で用いたλ/4延伸フィルムと貼り合せて円偏光フィルムを形成し、立体視眼鏡を作成した。
得られたフィルムはいずれも実施例に比べて偏光性能が低下しており、十分なコントラストが得られなかった。また、明るさ、色相も実施例に較べて低下した。
なお、表1中のポリエステルの組成は以下の通りである。
NDC:2,6−ナフタレンジカルボン酸
ENA:6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸
EG:エチレングリコール
IA:イソフタル酸
TA:テレフタル酸
PEN:ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート
PET:ポリエチレンテレフタレート
1軸延伸多層積層フィルムを用いた反射型の偏光フィルムでありながら、立体視眼鏡として十分な高い偏光性能を有しており、さらに吸収型偏光板に較べて透過軸方向において高い透過性を有しているため立体視眼鏡用に用いた場合に視野が明るく、立体映像の視認性および立体映像以外の視認性にも優れていることから、立体映像を観察者に認識させるための立体視眼鏡用反射偏光フィルム、それからなる偏光板および立体視用眼鏡を提供することができる。
1 偏光板
2 λ/4波長フィルム
3 立体視眼鏡
3L 円偏光フィルムを用いた左目用画像透過部
3R 円偏光フィルムを用いた右目用画像透過部
4 反射防止層

Claims (9)

  1. 1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムであり、該1軸延伸多層積層フィルムのフィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が95%以上であり、フィルム面を反射面とし、X方向を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が12%以下であることを特徴とする立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
  2. 該1軸延伸多層積層フィルムが第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有しており、
    1)第1層は、平均屈折率1.60以上1.70以下であって、1軸延伸方向(X方向)の屈折率nXが延伸により増大し、フィルム面内で1軸延伸方向に直交する方向(Y方向)の屈折率nYおよびフィルム厚み方向(Z方向)の屈折率nZが延伸により低下する熱可塑性樹脂からなり、
    2)第2層は、延伸前のX方向、Y方向、Z方向の平均屈折率が1.50以上1.60以下であって、該延伸前の平均屈折率と延伸後のX方向、Y方向、Z方向の屈折率との差が3方向とも0.05以下である熱可塑性樹脂からなる、請求項1に記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
  3. 該1軸延伸多層積層フィルムが第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有しており、第1層はジカルボン酸成分とジオール成分とのポリエステルからなり、
    (i)該ジカルボン酸成分は5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される成分および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分を含有し、
    (式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
    (式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基を表わす)
    (ii)該ジオール成分は90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表される成分を含有する、請求項1または2に記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
    (式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
  4. 第2層を形成する熱可塑性樹脂が、イソフタル酸もしくは2,6−ナフタレンジカルボン酸を共重合したエチレンテレフタレート成分を主たる成分とするポリエステルである請求項2または3に記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
  5. 該1軸延伸多層積層フィルムの積層数が251層以上である請求項1〜4のいずれかに記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の立体視眼鏡用反射偏光フィルムを含む偏光板。
  7. さらにλ/4波長フィルムを含む請求項6に記載の偏光板。
  8. 少なくともλ/4波長フィルム側において空気とλ/4波長フィルムと間に反射防止層を有する請求項7に記載の偏光板。
  9. 請求項6〜8のいずれかに記載の偏光板を用いた立体視眼鏡。
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