本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
<実施形態1>
図2〜図4には、本発明の電動工具の実施形態1を示している。本実施形態の電動工具は、駆動源であるモータ(メインモータ)1と、このモータ1の回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部2と、減速機構部2を介して伝達された回転動力を出力軸4にまで伝達する駆動伝達部3とを備えている。そして、モータ1と、減速機構部2と駆動伝達部3は胴体ハウジング101内に収容されている。
胴体ハウジング101からは把持部ハウジング102が延設され、電動工具の本体ハウジング100は、胴体ハウジング101と把持部ハウジング102とで構成される。把持部ハウジング102にはトリガスイッチ103を引き込み自在に設けている。さらに、把持部ハウジング102の延設先端部には、外部電源に接続される電源コードや把持部ハウジング102から着脱自在の電池パック等の電源部70(図1等参照)を備えている。
また、胴体ハウジング101内には、モータ1や減速機構部2に対して軸方向が平行となるように、変速用アクチュエータ6を収容している。この変速用アクチュエータ6は、専用のモータ(サブモータ)50を駆動源とした回転式のアクチュエータであり、減速機構部2が有する切替部材7を、変速カムプレート8を介して軸方向にスライド移動させ、減速比の切替を行う。この点について詳しくは後述する。
図5〜図10には、減速機構部2等の構造をより詳細に示している。本実施形態の減速機構部2は、ギアケース9内に三段の遊星減速機構を収容したものであり、各段の遊星減速機構の減速状態と非減速状態を切り替えることによって、減速機構部2全体の減速比を切り替える。以下においては、モータ1に近い側から順に1、2、3段目の遊星減速機構として説明を行う。
1段目の遊星減速機構は、モータ1からの回転動力によって軸中心に回転駆動される太陽ギア10(図5中では図示略)と、該太陽ギア10と噛み合う複数の遊星ギア11と、各遊星ギア11に噛み合うリングギア12とを備えている。遊星ギア11は太陽ギア10を囲むように位置し、リングギア12はこれら複数の遊星ギア11を囲むように位置する。1段目の遊星減速機構は、これら複数の遊星ギア11と回動自在に連結されるキャリア14と、遊星ギア11とキャリア14を連結させるキャリアピン13とをさらに備えている。
2段目の遊星減速機構は、1段目の太陽ギア10に結合される2段目の太陽ギア20(図5中では図示略)と、該太陽ギア20と噛み合う複数の遊星ギア21と、これら複数の遊星ギア21とも噛み合うことが可能な1段目のリングギア12とを備えている。遊星ギア21は太陽ギア20を囲むように位置する。2段目の遊星減速機構は、これら複数の遊星ギア21と回動自在に連結されるキャリア24と、遊星ギア21とキャリア24を連結するキャリアピン23とをさらに備え、キャリアピン23は、その先端部が1段目のキャリア14に連結される。
リングギア12は、1段目の遊星減速機構を形成するための部材として機能するか、2段目の遊星減速機構を形成するための部材として機能するかが、そのスライド位置によって択一的に選択可能な構造である。つまり、リングギア12は、モータ1側のスライド位置にあるときには1段目の遊星ギア11に噛み合い、出力軸4側のスライド位置にあるときには2段目の遊星ギア21に噛み合う。
以下の本文中において、モータ1側を単に「入力側」といい、出力軸4側を単に「出力側」という。
ギアケース9の内周面には、リングギア12が軸方向にスライド自在に且つ回転不能に係合するガイド部15を設けており、リングギア12はこのガイド部15により案内されながら軸方向のスライド移動を行う。
3段目の遊星減速機構は、2段目のキャリア24に結合される3段目の太陽ギア30と、該太陽ギア30と噛み合う複数の遊星ギア31と、これら複数の遊星ギア31と噛み合うリングギア32とを備え、遊星ギア31は太陽ギア30を囲むように位置する。3段目の遊星減速機構は、これら複数の遊星ギア31と回動自在に連結されるキャリア34と、遊星ギア31とキャリア34を連結させるキャリアピン33とをさらに備えている。
リングギア32は、ギアケース9に対して軸方向にスライド自在に且つ回転自在に配されている。リングギア32が入力側のスライド位置にあるときには、リングギア32は、2段目のキャリア24の外周縁部に噛み合う。リングギア32が出力側のスライド位置にあるときには、リングギア32は、ギアケース9と一体に形成された係合歯部40と噛み合う。また、リングギア32はいずれのスライド位置にあるときも、遊星ギア31とは噛み合う。
これら3段の遊星減速機構は、軸方向に連結されている。つまり、1〜3段目の太陽ギア10,20,30が軸方向の一直線上に並設され、これらを囲むように位置する二つのリングギア12,32もまた軸方向の一直線上に並設されている。
各リングギア12,32は独立して軸方向にスライド自在であり、そのスライド位置に対応して減速比を切り替え、出力軸4の回転出力を1速、2速、3速に変更する。このように、本実施形態では、各リングギア12,32が、軸方向にスライド自在な切替部材7をなす。なお、ここでの1速は最も減速比の小さい状態であり、2速は1速よりも減速比の大きな状態、3速は1,2速よりも減速比の大きな状態(つまり、最も減速比の大きな状態)である。
図6には1速の状態、図7には1速と2速の切替途中の状態、図8には2速の状態、図9には2速と3速の切替途中の状態、図10には3速の状態を示している。
図6の1速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が入力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が入力側の位置にある。そのため、1段目の遊星減速機構だけが減速状態となる。
図8の2速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が出力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が入力側の位置にある。そのため、2段目の遊星減速機構だけが減速状態となる。
ここで、1段目の遊星減速機構と2段目の遊星減速機構とでは、2段目の方が減速比が大きくなるように各部材の寸法形状を相違させている。したがって、2速の場合は1速よりも減速比が大きく、出力軸4の回転速度は小さくなる。
図10の3速にある減速機構部2では、切替部材7をなす一方のリングギア12が出力側の位置にあり、同じく切替部材7をなす他方のリングギア32が出力側の位置にある。そのため、2段目の遊星減速機構と3段目の遊星減速機構が共に減速状態となる。
切替部材7をなす二つのリングギア12,32のスライド位置は共に、変速カムプレート8の回転位置に応じて決定される。変速カムプレート8は、筒状をなすギアケース9の外周面に沿う断面円弧状のプレートであり、ギアケース9の中心軸まわりに回転自在となるように装着される。
変速カムプレート8には、二つのカム溝41,42を軸方向に並設している。入力側のカム溝41は、リングギア12のスライド移動に対応した折れ線形状を有する貫通溝である。カム溝41に挿通される変速ピン45の先端部が、ギアケース9に貫通形成したガイド溝48(図5参照)を通じてギアケース9内に挿入され、リングギア12の外周面の凹溝に係合する。ガイド溝48は、減速機構部2の軸方向と平行に形成している。
出力側のカム溝42は、リングギア32のスライド移動に対応した折れ線形状を有する貫通溝である。カム溝42に挿通される変速ピン46の先端部が、ギアケース9に貫通形成したガイド溝49(図5参照)を通じてギアケース9内に挿入され、リングギア32の外周面の凹溝に係合する。ガイド溝49は、減速機構部2の軸方向と平行に形成したものであり、他方のガイド溝48と一直線上に形成している。
この変速カムプレート8は、その周方向端部に、回転式の変速用アクチュエータ6と噛み合うギア部47を有する。変速用アクチュエータ6は、専用のモータ50と、モータ50の回転動力を減速して伝達する減速機構部51と、減速機構部51を通じて伝達される回転動力により回転駆動される出力部52とを有する。つまり、変速用アクチュエータ6は変速カムプレート8を介して切替部材7を軸方向にスライドさせる。
このように、本実施形態の電動工具では、減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、これら切替部材7の軸方向のスライド位置に応じて該切替部材7との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材5と、を用いて形成している。
切替部材7は、上述のようにリングギア12,32である。また、ここでのギア部材5は、リングギア12に対しては1段目の遊星ギア11と2段目の遊星ギア21であり、リングギア32に対しては2段目のキャリア24と係合歯部40である。これら切替部材7とギア部材5の係合状態と非係合状態に応じて、減速機構部2全体の減速比が切り替わる。
さらに、本実施形態の電動工具は、図1に概略的に示すように、モータ1およびアクチュエータ6を制御する制御部62と、モータ1を駆動させるモータ駆動部65と、変速用アクチュエータ6を駆動させるアクチュエータ駆動部66とを備えている。これら、制御部62とモータ駆動部65とアクチュエータ駆動部66とには、電源部70から電力が供給されている。
モータ駆動部65は、制御部62の制御を受けて、モータ1を駆動させるとともにモータ1の回転動力を変更させるものであり、モータ1の回転動力を調整するモータ1側の駆動調整部を兼ねている。アクチュエータ駆動部66は、制御部62の制御を受けて、変速用アクチュエータ6(モータ50)を駆動させるとともに変速用アクチュエータ6の駆動を調整するものであり、変速用アクチュエータ6側の駆動調整部61を兼ねている。
また、本実施形態の電動工具は、変速用アクチュエータ6の入出力情報を検知する情報検知部67と、モータ1の駆動状態を検知する駆動状態検知部60と、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部68とをさらに備えている。
駆動状態検知部60は、モータ1に流れる電流値とモータ1の回転数の少なくとも一方を検知することで、モータ1の駆動状態を検知し、その検知結果を制御部62に入力する。情報検知部67は、アクチュエータ駆動部66に印加された供給電圧の値(供給電力の電圧値)を検知することで、切替部材7の移動速度(つまりリングギア12,32のそれぞれのスライド速度)を検知し、その検知結果を制御部62に入力する。スライド位置検知部68は、切替部材7に連動する変速カムプレート8のギアケース9に対する回転位置を検知することで、間接的に切替部材7の位置(つまりリングギア12,32のそれぞれのスライド位置)を検知し、その検知結果を制御部62に入力する。スライド位置検知部68は、非接触式の変位検知センサであってもよいし、変速カムプレート8に直接接触する接触式のものであってもよい。
制御部62は、駆動状態検知部60により検知されるモータ1の駆動状態(負荷)に応じて、アクチュエータ駆動部66に変速用アクチュエータ6を起動させ、切替部材7をスライド移動させることにより減速機構部2の減速比を変更する。
つまり、本実施形態の電動工具では、変速用アクチュエータ6と、アクチュエータ駆動部66と、駆動状態検知部60と、スライド位置検知部68と、情報検知部67と、制御部62とを用いて、減速比切替手段を構成している。
そして、制御部62においては、変速用アクチュエータ6(つまりモータ50)を起動させるとき、スライド位置検知部68の検知結果に応じて、モータ1の回転動力を一時的に低下または増大させるように制御する切替用制御部63の機能を兼ねている。ここでモータ1の回転動力を低下または増大させるのは、スライド移動される切替部材7とこれがスライド後に係合するギア部材5との間において、係合時の相対回転速度を極力減じる(望ましくはゼロとする)ためである。
制御部62(切替制御部63)は、電動工具での作業時に、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、自動変速させる。
以下、1速→2速に自動変速される場合、2速→3速に自動変速される場合を例にとり、具体的に説明する。
1速から2速への自動変速は、モータ1に流れる電流値が所定値以上になったとき、モータ1の回転数が所定値以下になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
該検知結果を入力された切替制御部63は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の入力側のカム溝41に挿通される変速ピン45は、ギアケース9に設けたガイド溝48にガイドされながら、出力側へとスライド駆動される。変速ピン45は、切替部材7であるリングギア12を出力側へとスライド移動させる。
スライド移動したリングギア12は、まず1段目の遊星ギア11との係合が解除され、図7に示す切替途中の状態となる。このとき、リングギア12はギアケース9に対して回転固定の状態にある。一方、次期係合対象のギア部材5である2段目の遊星ギア21は、モータ1の回転動力に依存した形態で、ギアケース9に対して軸まわりに回転駆動される。
制御部62は、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果をスライド位置検知部68から入力されると、その時点で、モータ1の回転動力を一時的に低下させる(ゼロとする場合を含む)。これにより、図8のようにリングギア12が2段目の遊星ギア21と係合する際に両者12,21間の相対回転速度を低減させ(好ましくはゼロとし)、係合の際の衝撃を抑制する。したがって、1速から2速への自動変速が、スムーズ且つ安定的に実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
2速→3速の自動変速は、次のとおりの制御となる。つまり、図8に示す2速の状態でモータ1を回転駆動させているときに、駆動状態検知部60にてモータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知されたときに、3速に自動変速される。具体的には、モータ1に流れる電流値が所定値以上になったとき、モータ1の回転数が所定値以下になったとき、または、この電流値と回転数とが所定の関係を満たすようになったときに、モータ1にかかる負荷が所定水準に到達したと検知する。
該検知結果を入力された制御部62は、変速用アクチュエータ6のモータ50を起動させ、変速カムプレート8を回転移動させる。変速カムプレート8の出力側のカム溝42に挿通される変速ピン46は、ギアケース9に設けたガイド溝49にガイドされながら、出力側へとスライド駆動される。変速ピン46は、もう一つの切替部材7であるリングギア32を出力側へとスライド移動させる。
スライド移動したリングギア32は、まず2段目のキャリア24との係合が解除され、図9に示す切替途中の状態に至る。このとき、リングギア32は、3段目の遊星ギア31に係合し、且つ、ギアケース9には回転固定されない状態にある。
図9の切替途中状態にあるリングギア32は、2速にてキャリア24に係合していたときの回転慣性で回転を続けるが、これと同時に、モータ1により駆動される3段目の遊星ギア31からの反力によって、該回転慣性とは反対方向の回転力を受ける。一方、リングギア32が次に係合するギア部材5である係合歯部40は、ギアケース9に対して固定されている。
制御部62は、この回転慣性と反対方向の回転力を積極的に利用して、リングギア32と係合歯部40との相対回転速度を低減させる(好ましくはゼロとする)ものとなっている。つまり、制御部62は、リングギア32が図9の所定の切替途中状態に至ったことをスライド位置検知部61により検知すると、その時点で、リングギア32のスライド移動を一旦停止させる。そして、モータ1の回転動力を一時的に増大させ、リングギア32のギアケース9に対する回転速度を速やかに低減させる。そのうえでリングギア32のスライド移動を再開し、係合歯部40と係合する際にはリングギア32の回転速度が極力ゼロに近づくように調整する。
これにより、図10のようにリングギア32が係合歯部40と係合する際の衝撃を抑制し、スムーズ且つ安定的な自動変速を実現するとともに、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制することができる。
なお、リングギア32のスライド移動の一旦停止は行わず、モータ1の回転動力を一時的に増大させるだけで回転速度を調整してもよい。また、リングギア32の一旦停止によってのみ、回転速度を調整してもよい。また、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させ、2速にてキャリア24に係合していたときのリングギア32の回転慣性による回転を低下させる制御としてもよい。
また、3速→2速の自動変速の場合や、2速→1速の自動変速の場合には、制御部62は、モータ1の回転動力が停止した状態、または切替途中状態に至ったときに回転動力を低下または停止させ、切替部材7とギア部材5の相対回転速度を低減する。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。
また、制御部62(切替制御部63)は、変速用アクチュエータ6を起動させた時点からモータ1の回転動力をある程度低下させる制御であってもよい。この場合の制御部62は、例えば、変速用アクチュエータ6の起動と同期してモータ1の回転動力を徐々に低下させてゆき、リングギア12が図7の所定の切替途中状態に至ったという検知結果が入力された時点で、モータ1の回転動力をさらに低下させる。
以上のように、本実施形態の制御部62は、モータ1の駆動状態に応じて変速用アクチュエータ6を起動させるとともに、検知された切替部材7(リングギア12,32)の現在位置に対応するかたちで、モータ1の回転動力を一時的に低下または増大させる。この回転動力の低下は、モータ1を停止させる場合も含む。これにより、スムーズ且つ安定的な自動変速が実現され、衝突によるギアの磨耗や破損も抑制される。なお、制御部62を、変速用アクチュエータ6の起動にも同期してモータ1の回転動力を徐々に低下または増大させるものとしてもよい。
また、2速から1速や3速から2速の自動変速は、制御部62が作業完了と判断した際に行われるものであってもよい。具体的には、モータ1の負荷が所定水準に達した後、該負荷が略無くなり制御部62が作業完了と判断した、またはトリガスイッチ103の操作が解除された等でモータ1を駆動停止させたときの自動変速である。つまり、該状態における自動変速は、所定の作業の完了に伴い次の作業に移行する準備のために、3速または2速から1速に戻す変速である。
加えて、本実施形態の制御部62では、減速比の切替時(変速時)に、情報検知部67とスライド位置検知部68が検知する切替部材7(リングギア12,32)の位置に対応するかたちで、変速用アクチュエータ6の駆動を調整するように制御する。これにより、電池パックの消耗等による供給電圧の低下等に伴う切替部材7のスライド量または速度の低下に対応して、切替部材7のスライドを調整することができ、切替部材7を所定の時間で所定の目標位置にスライドさせ、スムーズな自動変速を実現する。
以下、この変速用アクチュエータ6の制御について具体的に述べる。
制御部62は、切替部材7を所定の目標位置に時間通りに到達させるようにアクチュエータ駆動部66を制御するアクチュエータ制御部64の機能を兼ねている。つまり、電源部70からの供給電圧の変化や、ギア磨耗による芯ずれ、ギア間のクリアランス増大等の経年劣化によって、切替部材7の移動速度にばらつきを生じる場合がある。この場合、切替部材7の時間あたりのスライド量が低下するため、切替部材7が所定の時間内に所定の目標位置にまでスライド移動せず、変速がうまく行かず作業の障害になるだけでなく、減速比の切替に要する時間(切替時間)の増大の原因ともなる。
これに対して、制御部62は、情報検知部67から入力される検知結果によって、切替部材7の移動速度のばらつきを把握し、アクチュエータ駆動部66に切替部材7のスライド移動を調整させ、切替部材7の時間あたりのスライド量不足を解消させる。つまり、制御部62は、変速用アクチュエータ6の駆動が所定の時間経過されたときに、切替部材7が所定の目標位置に位置するように、アクチュエータ駆動部66に変速用アクチュエータ6の駆動を調整させる。このとき、所定の時間とは、自動変速に要する切替時間であり、変速用アクチュエータ6の駆動時間と略同じ時間となっている。
具体的には、情報検知部67は、変速用アクチュエータ6が駆動されるときに、入出力情報として、電源部70からアクチュエータ駆動部66に印加された供給電圧の値を随時検知し、検知結果を制御部62に出力する。制御部62は、入力された検知結果に応じて、切替部材7が所定の目標位置に至るまでの時間あたりのスライド量を一定にさせるようにアクチュエータ駆動部66を制御する。つまり、制御部62は、情報検知部67の検知結果に応じてアクチュエータ駆動部66にモータ50の回転動力を随時変更させて、所定の時間経過時に切替部材7が所定の目標位置に至るように、変速用アクチュエータ6を駆動調整する。これにより、切替部材7の移動速度のばらつきに伴うスライド量不足を抑制し、切替部材7を所定の時間に所定の目標位置に到達させることができ、スムーズかつ安定な自動変速を実現する。
次に、本発明の電動工具の他の実施形態について順に述べる。なお、上述の実施形態1と同様の構成については詳しい説明を省略し、実施形態1とは相違する特徴的な構成について、主に詳述する。
<実施形態2>
本実施形態の電動工具においても、変速用アクチュエータ6の駆動を調整し、切替部材7を所定の目標位置に時間通り位置させるように設けている。これにより、切替部材7のスライド量不足を解消するとともに、減速比の切替時間が所定の時間から増大することを抑制し、スムーズかつ安定な自動変速を実現する。しかし、本実施形態においては、駆動調整部61の構成や、変速用アクチュエータ6への供給電圧の調整の仕方が実施形態1の場合と相違している。
具体的には、減速比切替手段は、図11に示すように、電力調整部69を備えている。該電力調整部69は、電源部70からの供給電力を昇圧する昇圧回路と、PWM制御を行う制御回路とを有し、供給電圧を一定値に調整したうえで、アクチュエータ駆動部66に給電するものとなっている。つまり、電力調整部69は、電源部70から変速用アクチュエータ6への供給電圧を検知する情報検知部67と、情報検知部67の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6の駆動を調整する駆動調整部61とを兼ねている。
電力調整部69は、電源部70からの供給電圧に応じて、昇圧回路でアクチュエータ駆動部66への供給電圧を上げるまたは制御回路のPWM制御で供給電圧を下げることで、アクチュエータ駆動部66への供給電圧を一定値に調整する。
これにより、減速比の切替時に、アクチュエータ駆動部66は一定の供給電圧で変速用アクチュエータ6を駆動させ、切替部材7が一定速度でスライド移動され、切替部材7が所定の時間に所定の目標位置に至り、スムーズかつ安定な自動変速を実現する。なお、制御部62やアクチュエータ駆動部66に、電力調整部69の機能を兼ねたものを用いて、電動工具の構成部材を削減してもよい。
<実施形態3>
本実施形態の電動工具においても、変速用アクチュエータ6の駆動を調整し、切替部材7を所定の目標位置に時間通り位置させるように設けている。これにより、切替部材7のスライド量不足を解消するとともに、減速比の切替時間が所定の時間から増大することを抑制し、スムーズかつ安定な自動変速を実現する。しかし、本実施形態においては、変速用アクチュエータ6への供給電圧の調整の仕方が実施形態1の場合と相違している。そして、変速用アクチュエータ6への供給電圧を一定に調整させる点は、実施形態2と同様である。しかし、情報検知部67で検知する入出力情報において、実施形態2とは相違する。
具体的には、情報検知部67は入出力情報として変速用アクチュエータ6の起動前の電圧の値(電圧値V1)を検知する。制御部62は、変速用アクチュエータ6に印加する供給電圧を、該検知結果に応じて決定した電圧値V2に調整させる。つまり、制御部62は、図12に示すように、検知された電圧値V1から、切替部材7を所定の移動速度S1でスライドさせる電圧値V2を演算し、演算結果に応じて駆動調整部61に供給電圧を調整させる制御を行うものとなっている。この所定の移動速度S1は、自動変速時に、所定の時間経過した際に切替部材7を所定の目標位置に至らせる速度である。
これにより、切替部材7を一定の移動速度でスライド移動させることができ、切替部材7の移動速度のばらつきが解消され、切替部材7が所定の時間に所定の目標位置に至り、スムーズかつ安定な自動変速を実現する。なお、アクチュエータ駆動部66に、電力調整部69の機能を兼ねたものを用いて、電動工具の構成部材を削減してもよい。また、駆動調整部61の機能は、制御部62、アクチュエータ駆動部66、電力調整部69のいずれが兼ねたものであってもよい。
<実施形態4>
本実施形態の電動工具においても、変速用アクチュエータ6の駆動を調整し、切替部材7を所定の目標位置に時間通り到達させるように設けている。これにより、切替部材7のスライド量不足を解消するとともに、減速比の切替時間が所定の時間から増大することを抑制し、スムーズかつ安定な自動変速を実現する。しかし、本実施形態においては、変速用アクチュエータ6への供給電圧の調整の仕方が実施形態1の場合と相違している。そして、変速用アクチュエータ6への供給電圧を一定に調整させる点は、実施形態3と同様である。しかし、情報検知部61で検知する入出力情報において、実施形態3とは相違する。
具体的には、情報検知部67は入出力情報として変速用アクチュエータ6の起動時の駆動電流の最大値(最大電流値A1)を検知する。制御部62は、該検知結果から推定した電圧値V2に、変速用アクチュエータ6に印加する供給電圧を調整させる。つまり、制御部62は、図13に示すように、検知された最大電流値A1から、電圧値V3またはモータ50の停動電流を推定する。そして、図14に示すように、推定結果に基づき切替部材7を所定の移動速度S1でスライドさせるための電圧値V2を演算し、演算結果に応じて駆動調整部61に供給電圧を調整させるものとなっている。
これにより、切替部材7を一定の移動速度でスライド移動させることができ、切替部材7の移動速度のばらつきが抑制され、切替部材7が所定の時間に所定の目標位置に至り、スムーズ且つ安定な自動変速を実現する。なお、駆動調整部61の機能は、制御部62、アクチュエータ駆動部66、電力調整部69のいずれが兼ねたものであってもよい。
<実施形態5>
本実施形態の電動工具においても、変速用アクチュエータ6の駆動を調整し、切替部材7を所定の目標位置に所定の時間で至るように設けている。これにより、切替部材7のスライド量不足を解消するとともに、減速比の切替時間が所定の時間から増大することを抑制し、スムーズかつ安定な自動変速を実現する。本実施形態においては、変速用アクチュエータ6の駆動中に随時移動速度を調整させる点は、実施形態1と同様である。しかし、変速用アクチュエータ6の駆動中の切替部材7の移動速度の調整の仕方が実施形態1の場合と相違する。
具体的には、制御部62は、情報検知部67の検知結果とスライド位置検知部68の検知結果に応じて、変速用アクチュエータ6への供給電力(供給電圧)を調整させるように駆動調整部61を制御する。これにより、切替部材7の移動速度のばらつきを抑制することができ、スムーズ且つ安定な自動変速を実現する。
さらに、クリアランスの変化やギアの軸ずれ等のギアの経年劣化に伴い所定の時間より早く目標位置に到る場合に、ギア同士(切替部材7と狙いのギア部材5)が衝突し、ギアに磨耗や破損を生じることがある。これに対して、本実施形態では、スライド位置検知部68の検知結果と情報検知部67の検知結果に応じて、切替時間が予め設定された所定の時間よりも減少することを抑制し、ギア同士の衝突に伴うギアの磨耗や破損を抑制する。なお、駆動調整部61の機能は、制御部62、アクチュエータ駆動部66、電力調整部69のいずれが兼ねたものであってもよい。
<実施形態6>
本実施形態の電動工具においても、情報検知部67とスライド位置検知部68の両検知結果に応じて変速用アクチュエータ6の駆動を調整し、切替部材7を所定の目標位置に所定の時間で至るように設けている。これにより、スムーズ且つ安定な自動変速を実現するとともに、ギア同士の衝突に伴うギアの磨耗や破損も抑制する。しかし、本実施形態においては、移動速度の調整に用いる情報検知部67の検知結果において、実施形態5とは相違する。
具体的には、情報検知部67は入出力情報として、変速用アクチュエータ6の駆動時の電流値A2と駆動時間を検知する。制御部62は、図15に示すように、情報検知部67で検知された電流値A2から、変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1を算出する。さらに、制御部62は、算出した負荷トルクT1と、情報検知部67で検知された駆動時間から、該電流値A2検知時のモータ50の回転数を切替部材7の移動速度の指標として求める。制御部62は、求めた移動速度の指標(回転数)から、切替部材7をスライド位置検知部68で検知された位置から目標位置へ所定の時間に到達させるように、駆動調整部61に供給電力を調整させる。つまり、制御部62は、変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1と駆動時間によって、該入出力情報検知時の切替部材7の移動速度の指標を求め、求めた移動速度の指標とスライド位置検知部68の検知結果に応じて、所定の速度になるように変速用アクチュエータ6の駆動を調整する。この所定の移動速度S2は、変速用アクチュエータ6を所定の時間駆動させたときに、切替部材7をスライド位置検知部68で検知された切替部材7の位置から所定の目標位置に到達させる移動速度となっている。
これにより、切替部材7が所定の時間に所定の目標位置に到達し、切替部材7のスライド量不足を解消し、スムーズかつ安定な自動変速を実現するとともに、切替時間が所定の時間から減少することを抑制し、衝突に伴うギアの磨耗や破損を抑制する。
なお、駆動調整部61の機能は、制御部62、アクチュエータ駆動部66、電力調整部69のいずれが兼ねたものであってもよい。また、電流値A2のかわりに、トルクセンサ等を用いて変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1を直接検知し、検知した負荷トルクT1を検知結果として制御部62に入力するものであってもよい。
<実施形態7>
本実施形態の電動工具においても、情報検知部67とスライド位置検知部68の両検知結果に応じて変速用アクチュエータ6の駆動を調整し、切替部材7を所定の目標位置に所定の時間で至るように設けている。これにより、スムーズ且つ安定な自動変速を実現するとともに、ギア同士の衝突に伴うギアの磨耗や破損も抑制する。しかし、本実施形態においては、移動速度の調整に用いる情報検知部67の検知結果において、実施形態5とは相違する。
具体的には、情報検知部67は入出力情報として、変速用アクチュエータ6の駆動時の電流値A2と電圧値V4を検知する。また、制御部62は、図15に示すように、情報検知部67で検知された電流値A2から、変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1を算出する。さらに、制御部62は、図16に示すように、算出した負荷トルクT1と、情報検知部67で検知された電圧値V4から、電流値A2検知時の切替部材7の移動速度(モータ50の回転数R1)を推定し、推定結果に応じて駆動調整部61に供給電力を調整させる。つまり、制御部62は、変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1と駆動時間によって求めた移動速度の指標と、スライド位置検知部68の検知結果とに基づき、所定の移動速度S2となるように供給電圧を駆動調整部61に調整させる。この所定の移動速度S2は、変速用アクチュエータ6を所定の時間駆動させたときに、切替部材7をスライド位置検知部68で検知された切替部材7の位置から所定の目標位置に到達させる移動速度となっている。
これにより、切替部材7が所定の時間に所定の目標位置に到達し、切替部材7のスライド量不足を解消し、スムーズかつ安定な自動変速を実現するとともに、切替時間が所定の時間から減少することを抑制し、衝突に伴うギアの磨耗や破損を抑制する。
なお、駆動調整部61の機能は、制御部62、アクチュエータ駆動部66、電力調整部69のいずれが兼ねたものであってもよい。また、移動速度の指標を求めるものに限らず、電流値A2検知時の移動速度を求め、求めた移動速度とスライド位置検知部68の検知結果に応じて、変速用アクチュエータ6の駆動を調整するものであってもよい。また、電流値A2のかわりに、トルクセンサ等を用いて変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1を直接検知し、検知した負荷トルクT1を検知結果として制御部62に入力するものであってもよい。
<実施形態8>
本実施形態の電動工具においても、情報検知部67とスライド位置検知部68の両検知結果に応じて変速用アクチュエータ6の駆動を調整し、切替部材7を所定の目標位置に所定の時間で至るように設けている。これにより、スムーズ且つ安定な自動変速を実現するとともに、ギア同士の衝突に伴うギアの磨耗や破損も抑制する。しかし、本実施形態においては、移動速度の調整に用いる情報検知部67の検知結果において、実施形態7とは相違する。
具体的には、情報検知部67は入出力情報として、変速用アクチュエータ6の駆動時の電流値A2と動作速度S3を検知する。また、制御部62は、図15に示すように、情報検知部67で検知された電流値A2から、変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1を算出する。さらに、制御部62は、図17に示すように、算出した負荷トルクT1と、情報検知部67で検知された変速用アクチュエータ6の動作速度S3から、該検知時の電圧値V5を推定する。制御部62は、推定した電圧値V5に基づき、駆動調整部61に切替部材7を目標位置へ所定の時間に到達させる移動速度S2になるように供給電圧を調整させる。つまり、制御部62は、変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1と動作速度S3によって求めた変速用アクチュエータ6へ印加された電圧値V5と、スライド位置検知部68の検知結果に基づき、所定の移動速度S2となるように供給電圧を調整させる。この所定の移動速度S2は、変速用アクチュエータ6を所定の時間駆動させたときに、切替部材7をスライド位置検知部68で検知された切替部材7の位置から所定の目標位置に到達させる移動速度となっている。
これにより、切替部材7が所定の時間に所定の目標位置に到達し、切替部材7のスライド量不足を解消し、スムーズかつ安定な自動変速を実現するとともに、切替時間が所定の時間から減少することを抑制し、衝突に伴うギアの磨耗や破損を抑制する。
なお、駆動調整部61の機能は、制御部62、アクチュエータ駆動部66、電力調整部69のいずれが兼ねたものであってもよい。また、移動速度S3を求めるものに限らず、電流値A2検知時の移動速度の指標を求め、求めた移動速度の指標とスライド位置検知部68の検知結果に応じて、変速用アクチュエータ6の駆動を調整するものであってもよい。また、電流値A2のかわりに、トルクセンサ等を用いて変速用アクチュエータ6の負荷トルクT1を直接検知し、検知した負荷トルクT1を検知結果として制御部62に入力するものであってもよい。
<実施形態9>
本実施形態の電動工具においても、制御部62は、駆動調整部61に変速用アクチュエータ6の駆動を調整させるように設けている。しかし、本実施形態においては、切替部材7の移動速度において、実施形態1とは相違する。
具体的には、制御部62は、1速から2速を経由した3速に切り替える制御と、3速から2速を経由して1速に切り替える制御とで切替部材7の移動速度を異なるように制御する。つまり、制御部62は、1速から3速に切り替わる際の切替部材7の移動速度に比べて、3速から1速に切り替わる際の切替部材7の移動速度を速くし、切替部材7のスライド方向に応じて切替時間を異なるものとしている。
これにより、作業完了後に3速や2速から1速に戻す減速比のリセット動作や、ねじの緩め動作等の作業終期に大きな出力トルクが要求され難いとき等に、1速から2速や3速へ切り替える場合に比べて、自動変速の切替時間を短縮させ、作業効率が高くなる。
なお、駆動調整部61の機能は、制御部62、アクチュエータ駆動部66、電力調整部69のいずれが兼ねたものであってもよい。また、1速と2速の間や2速と3速の間で移動速度が異なるものや、減速比の切替動作毎に夫々異なるものであってもよい。また、制御部62は、モータ1の動作負荷の有無等に応じて、自動変速時の切替部材7の移動速度を変更するものであってもよい。
ここまで、実施形態1〜9の電動工具の詳細な構成について説明した。
上述のように、実施形態1〜9の電動工具では、駆動源であるモータ1と、モータ1の回転動力を減速したうえで伝達する減速機構部2と、減速機構部2の減速比を切り替える減速比切替手段と、を具備する。該減速機構部2は、軸方向にスライド自在な切替部材7と、切替部材7の軸方向のスライド位置に応じて切替部材7との係合状態と非係合状態が切り替えられるギア部材5と、を用いて、減速比が切り替わるように形成されたものである。該減速比切替手段は、切替部材7をスライドさせる変速用アクチュエータ6と、変速用アクチュエータ6の駆動を調整する駆動調整部61と、モータ1の回転動力を変更させる切替制御部63と、変速用アクチュエータ6を制御するアクチュエータ制御部64と、を有するものである。該アクチュエータ制御部64は、変速用アクチュエータ6の駆動が所定の時間経過されたときに切替部材7を所定の目標位置に位置させるように駆動調整部61を制御するものとなっている。
該構成を具備する電動工具においては、減速比の切替時に、切替部材7を所定の時間に所定の目標位置に位置させるといった制御が可能となるため、自動的な減速比変更を、スムーズに且つ所定の時間に安定して完了することができる。
また、実施形態1〜9の電動工具において、減速比切替手段は、さらに、変速用アクチュエータ6の入出力情報を検知する情報検知部67を有し、アクチュエータ制御部64は、情報検知部67の検知結果に応じて駆動調整部61を制御するものとなっている。つまり、変速用アクチュエータ6の入出力情報に応じて、切替部材7の時間あたりのスライド量を調整するといった制御が可能になり、自動的な減速比変更を、よりスムーズに且つ安定して完了することができる。
実施形態1の電動工具では、変速用アクチュエータ6の駆動中に、情報検知部67が随時アクチュエータ駆動部66に印加された供給電圧を検知し、駆動調整部61が検知結果に応じて随時変速用アクチュエータ6の駆動を調整するものとなっている。これにより、電源部70の消耗等の電動工具の作業に伴う供給電圧の低下に対応して、切替部材7の移動速度が調整され、変速用アクチュエータ6を所定の時間駆動させたときに、切替部材7を所定の目標位置に到達させることができる。
さらに、実施形態2〜8の電動工具において、駆動調整部61は、情報検知部67の検知結果に応じて、変速用アクチュエータ6への供給電力を調整するものとなっている。これにより、電源部70の経年劣化等に伴う供給電力の電圧値のばらつきが解消され、変速用アクチュエータ6を所定の時間駆動させたときに、切替部材7を所定の目標位置に位置させ、スムーズ且つ安定的な自動変速を完了することができる。
また、実施形態2,3の電動工具において、アクチュエータ制御部64は、駆動調整部61に変速用アクチュエータ6への供給電圧を一定にさせて、切替部材7の移動速度を一定にさせるように制御するものとなっている。これにより、一定の供給電圧で変速用アクチュエータ6を駆動させることができ、よりスムーズかつ安定な減速比変更をすることができるとともに、電圧を一定にして給電するため、変速用アクチュエータ6の制御を容易に行うことができる。
また、実施形態4の電動工具において、情報検知部67は入出力情報として、変速用アクチュエータ6の駆動時に変速用アクチュエータ6に流れる電流値を検知する。駆動調整部61は、該情報検知部67の検知結果に応じて、変速用アクチュエータ6への供給電力を調整するものとなっている。これにより、変速用アクチュエータ6に印加される供給電圧を一定に調整することができ、所定の目標位置に到達したときの時間あたりのスライド量を一定にすることができる。
また、実施形態5〜8の電動工具において、減速比切替手段は、さらに、切替部材7のスライド位置を検知するスライド位置検知部68を有する。アクチュエータ制御部64は、スライド位置検知部68の検知結果と情報検知部67の検知結果に応じて、変速用アクチュエータ6への供給電力を調整するものとなっている。これにより、切替部材7の位置に応じて移動速度を調整させる制御が可能となり、移動速度が速くなり過ぎた場合等での切替部材7とギア部材5の衝突を軽減し、ギアの磨耗や破損を抑制することができる。
さらに、実施形態6〜8の電動工具において、情報検知部67は入出力情報として、変速用アクチュエータ6の負荷トルクの指標となるものを検知し、制御部62は、この検知結果を基にして変速用アクチュエータ6の駆動を調整するものとなっている。これにより、負荷トルクに応じて、変速用アクチュエータ6の時間あたりのスライド量を制御することが可能となり、よりスムーズ且つ安定的な自動変速を完了することができる。
また、実施形態9の電動工具において、アクチュエータ制御部64は、切替部材7のスライド方向毎に時間あたりのスライド量を異なるように制御するものとなっている。これにより、変速における出力トルクの変更があまり重要にならない場合や、次工程の作業の減速比に迅速に対応させる場合(1速に戻す場合)等での切替時間が短縮され、作業効率が高くなる。
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、各実施形態において適宜の設計変更を行うことや、各実施形態の構成を適宜組み合わせて適用することが可能である。
また、変速用アクチュエータ6を用いて減速比を切り替えるものであれば、本実施形態のような駆動状態検知部60の検知結果に応じて変速用アクチュエータ6を起動させる自動変速型の電動工具に限らない。例えば、制御部62が作業者の外部操作等による減速比切替指令等を受けることで、制御部62が変速用アクチュエータ6を起動させるものであってもよい。