JP2012164955A - ZnO系半導体層の製造方法及びZnO系半導体発光素子の製造方法 - Google Patents

ZnO系半導体層の製造方法及びZnO系半導体発光素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】p型伝導性を有するZnO系半導体層の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】ZnO系半導体層の製造方法は、(a)下地層上方に、Zn材料及びO材料、及び必要に応じてMg材料を同時に供給して、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜を形成する工程と、(b)MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜上に、Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びN材料を、形成される層が基板全面は被覆しないような供給量で、同時に供給することにより、NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を形成する工程とを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、ZnO系半導体層の製造方法及びZnO系半導体発光素子の製造方法に関する。
近年の薄膜結晶成長技術の進歩に伴い、ZnO系材料の半導体としての応用を目指した研究が盛んになってきた。ZnOは、室温で3.37eVのバンドギャップを有している直接遷移型の半導体であることから、単結晶薄膜を利用した発光素子や受光素子等の光半導体材料として注目されている。
ZnOは、励起子の束縛エネルギーが60meVと、他の短波長半導体材料ZnSe(18meV)、GaN(24meV)等に比べて大きいので、室温で励起子発光過程を利用した高効率な紫外発光素子の材料として期待されている。また、屈折率が2.0と、ZnSeの2.6やGaNの2.6等に比べて小さく光取り出し効率が高いことからも、高効率な短波長(紫外〜青)発光ダイオード(LED)、また蛍光体と組み合わせた高効率・高演色な白色LEDの材料としても期待されている。
これらのデバイスを実現するためには、ZnO系半導体の伝導性制御が必要不可欠となる。ZnOは、アンドープでもn型伝導性を示す。n型伝導性は、また、Znサイトを置換してドナーとして働くAlやGa等のIII族元素をドープすることでも容易に得られる。
一方、p型化については、主に、Oサイトを置換するN等のV族元素のドーピングが研究されているが、キャリア濃度を高めることや、再現性、安定性を向上させることが難しい。
特開2005−197410号公報
本発明の一目的は、p型伝導性を有するZnO系半導体層の新規な製造方法、及び、それを用いたZnO系半導体発光素子の製造方法を提供することである。
本発明の一観点によれば、(a)下地層上方に、Zn材料及びO材料、及び必要に応じてMg材料を同時に供給して、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜を形成する工程と、(b)前記MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜上に、Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びN材料を、形成される層が基板全面は被覆しないような供給量で、同時に供給することにより、NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を形成する工程とを有するZnO系半導体層の製造方法が提供される。
MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜上に、Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びN材料を、形成される層が基板全面は被覆しないような供給量で、同時に供給することにより、p型伝導性を有するNドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を形成することができる。
図1は、MBE装置の概略断面図である。 図2は、第1実験における、Zn膜の成長速度の、Znフラックス強度及び成長温度依存性を示すグラフである。 図3Aは、第1実施例の試料の概略断面図であり、図3Bは、第1実施例によるNドープZnO層の製造方法を示すタイミングチャートである。 図4は、第1実施例のNドープZnO層における、1回当たりのZn−N結合形成時間とN濃度との関係を示すグラフである。 図5は、第2実施例によるNドープMgZnO層中の、N濃度のデプスプロファイルである。 図6A〜図6Cは、それぞれ、第2実施例、第2実施例の第1変形例、及び第2実施例の第2変形例によるNドープMgZnO層の製造方法を示すタイミングチャートである。 図7Aは、第3実施例の発光素子の概略断面図であり、図7B及び図7Cは、それぞれ、第3実施例及び第3比較例の発光素子におけるp型MgZnO層のRHEED像である。 図8Aは、第3実施例及び第3比較例の発光素子のELスペクトルであり、図8B及び図8Cは、それぞれ、第3実施例及び第3比較例による発光素子の発光時の写真である。 図9A及び図9Bは、第4実施例の発光素子におけるp型MgZnO層のN濃度を、深さ方向について概略的に示すグラフである。 図10Aは、第5実施例の発光素子の概略断面図であり、図10Bは、量子井戸構造の活性層の概略断面図であり、図10Cは、第5実施例の変形例によるp型MgZnO層の積層構造を示す概略断面図である。 図11は、第6実施例の発光素子の概略断面図である。 図12は、Zn、Mg、ZnO、及びMgOの諸物性をまとめた表である。 図13は、ZnOの結晶構造図である。 図14は、第7実施例(第8実施例、第9実施例、第4比較例、及び第5比較例)の発光素子の概略断面図である。 図15A及び図15Bは、それぞれ、第7実施例及び第4比較例の発光素子のI-V特性である。 図16は、第7実施例及び第4比較例の発光素子のNドープZnO層におけるN濃度を示すグラフである。 図17A及び図17Bは、それぞれ、第8実施例及び第5比較例の発光素子におけるNドープMgZnO層のRHEED像である。 図18A及び図18Bは、それぞれ、第8実施例及び第5比較例の発光素子のI-V特性である。 図19A及び図19Bは、それぞれ、第8実施例及び第9実施例の発光素子の発光時の写真である。 図20A及び図20Bは、それぞれ、第8実施例及び第9実施例の発光素子のI-V特性である。 図21は、第8実施例及び第9実施例の発光素子におけるNドープMgZnO層のN濃度を示すグラフである。 図22A〜図22Cは、S照射を行ってNドープMgZnO層(NドープZnO層)を形成する方法についてまとめたタイミングチャートである。
本願発明者は、以下に説明するように、NがドープされたMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を得る新規な技術を提案する。
ZnOにMgを添加してMgZnOとすることにより、バンドギャップを広げることができる。ただし、ZnOはウルツ鉱構造で、MgOは岩塩構造であるため、Mg組成が高すぎると相分離を起こしてしまう。
MgZnOのMg組成をzと明示したMgZn1−zOにおいて、Mg組成zは、ウルツ鉱構造を保つため0.6以下とするのが好ましい。なお、Mg組成z=0も含めることにより、MgZn1−zOという表記に、Mgの添加されていないZnOも含める。
まず、結晶製造装置について説明する。結晶製造方法として、以下に説明する実験や実施例や比較例では、分子線エピタキシ(MBE)を用いる。
図1は、MBE装置の概略断面図である。真空チャンバ101が、Znソースガン102、Mgソースガン103、Gaソースガン104、Oソースガン105、及び、Nソースガン106を備える。Znソースガン102、Mgソースガン103、Gaソースガン104は、それぞれ、Zn固体ソース(例えば純度7N)、Mg固体ソース(例えば純度6N)、及びGa固体ソース(例えば純度7N)を収容するP(パイロリティック)BN製るつぼを含み、るつぼを加熱することにより、Znビーム、Mgビーム、Gaビームを出射する。
ZnO系半導体のn型伝導性は、n型不純物を添加しなくても得ることができるが、Gaを、n型キャリア濃度を高めるために添加することもできる。ここで、ZnO系半導体は、少なくともZnとOとを含む。
Oソースガン105、Nソースガン106は、それぞれ、例えば13.56MHzのラジオ周波(RF)を用いた無電極放電管を含み、Oガス(例えば純度6N)、Nガス(例えば純度6N)をプラズマ化してOビーム、Nビームを出射する。放電管材料として、PBNもしくは高純度石英を使用することができる。
ボンベ105aからマスフローコントローラ105bを介して、OガスがOソースガン105に供給される。Nボンベ106aからマスフローコントローラ106bを介して、NガスがNソースガン106に供給される。
Oソースガン105から出射されるOビームには、主に、原子ラジカルOと、基底状態の中性分子Oが含まれる。ZnO系半導体の結晶成長には、原子状のOラジカルが望ましい。単に「Oラジカル」というときは、原子ラジカルOを指すこととする。
Nソースガン106から出射されるNビームには、主に、原子ラジカルN、分子ラジカルN 、分子イオンN 、及び、基底状態の中性分子Nが含まれる。ZnO系半導体のOサイトをN原子で置換することにより、p型伝導性のZnO系半導体を得ることができるので、原子状のNラジカルが望ましい。単に「Nラジカル」というときは、原子ラジカルNを指すこととする。
真空チャンバ101内に、ヒータを含む基板ホルダ107が配置され、ホルダ107が、基板108を保持する。基板108上に、所望のビームを供給することにより、所望の結晶層を成長させることができる。
Znソースガン102、Mgソースガン103、Gaソースガン104、Oソースガン105、及び、Nソースガン106の各々について、ビーム出射口から僅かに離れた位置に、セルシャッタ102S〜106Sが設けられている。セルシャッタが開状態のとき、ソースガンから出射したビームは、そのまま基板108に向けて供給される。セルシャッタが閉状態のとき、ソースガンから出射したビームは、セルシャッタに衝突して遮られる。
Nセルシャッタ106Sが閉状態の場合について説明する。セルシャッタ106Sへの衝突により、分子ラジカルN は基底状態のNに戻り、分子イオンN は中性化されてNに戻る。一方、原子ラジカルNは、衝突によるエネルギー損失はあるものの、分子にならず原子ラジカルのまま残る。
セルシャッタが閉状態なので、ビームはそのまま基板108に向かって供給されないが、シャッタへの衝突後に横方向に進んだビームが、チャンバ101の内壁で反射されて、基板108に到達する可能性はある。基底状態の中性分子Nは、基板108に到達しても、活性がないため、ZnO系半導体結晶にほとんど取り込まれない。一方、原子ラジカルNは、活性を維持しているので、基板108に到達すれば、ZnO系半導体結晶に取り込まれやすい。
Oセルシャッタ105Sが閉状態の場合ついて説明する。セルシャッタ105Sへの衝突により、原子ラジカルOは、酸化物となってシャッタに付着するか、基底状態の中性分子Oに戻る。基底状態の中性分子Oは、活性がないため、基板108に到達したとしても、ZnO系半導体結晶に取り込まれない。
Znセルシャッタ102Sが閉状態の場合の動作について説明する。Znビームに含まれるZnは、セルシャッタ102Sへ衝突し、セルシャッタ102Sの裏側(ソースガン側)に堆積する。このため、セルシャッタ102Sの閉状態では、Znは基板に到達しない。Mg及びGaについても、Znと同様に、セルシャッタ103S、104Sの閉状態では、セルシャッタ上に堆積して、基板に到達しない。
基板108のソースガン側手前に、メインシャッタMSが設けられている。メインシャッタMSは、基板108にビームが入射する開状態と、ビームが入射しない閉状態とを切り替える。結晶成長時は、メインシャッタMSを開状態とする。
真空チャンバ101内に、水晶振動子を用いた膜厚モニタ109が備えられている。膜厚モニタ109で測定される付着速度から、Znビーム等のフラックス強度が求められる。膜厚モニタ109による測定から直接的に、nm/s単位のフラックス強度(例えばZnについてこれをFZnと表す)を知ることができ、また、nm/s単位のフラックス強度から換算して、atoms/cms単位のフラックス強度(例えばZnについてこれをJZnと表す)を求めることができる。
本MBE装置は、反射高速電子回折(RHEED)用のガン110、RHEED像を映すスクリーン111、及び、固体撮像装置とモニタとを含むRHEED像の表示装置112も備える。RHEED像から、成長した結晶層の結晶性を評価できる。
単結晶が2次元成長し表面が平坦である場合は、RHEED像がストリークパターンを示し、単結晶が3次元成長し表面が平坦でない場合は、RHEED像がスポットパターンを示す。なお、多結晶が成長した場合は、RHEED像がリングパターンを示す。
ZnO系半導体結晶成長におけるVI/II比について説明する。Znビームのフラックス強度をJZnと表し、Mgビームのフラックス強度をJMgと表し、Oラジカルビームのフラックス強度をJと表す。金属材料であるZnあるいはMgのビームは、原子、または複数個の原子を含むクラスターのZnあるいはMgを含み、原子及びクラスターのいずれも結晶成長に有効である。ガス材料であるOのビームは、原子ラジカルや中性分子を含むが、ここでは、結晶成長に有効な原子ラジカルのフラックス強度を考える。
結晶へのZnの付着しやすさを示す付着係数をkZnとし、Mgの付着しやすさを示す付着係数をkMgとし、Oの付着しやすさを示す付着係数をkとする。
Znの付着係数kZnとフラックス強度JZnとの積kZnZn、Mgの付着係数kMgとフラックス強度JMgとの積kMgMg、及び、Oの付着係数kとフラックス強度Jとの積kは、それぞれ、基板の単位面積に単位時間当たりに付着するZn原子、Mg原子、及びO原子の個数に対応する。
ZnZnとkMgMgの和に対するkの比であるk/(kZnZn+kMgMg)を、VI/II比と定義する。VI/II比が1より小さい場合をZnリッチ条件と呼び、VI/II比が1に等しい場合をストイキオメトリ条件と呼び、VI/II比が1より大きい場合をOリッチ条件と呼ぶ。なお、+c面(Zn面)での結晶成長においては、基板表面温度850℃以下であれば、付着係数kZn、kMg、及びkを1と見なすことができ、VI/II比をJ/(JZn+JMg)と表せる。
次に、第1比較例によるNドープZnO層の製造方法について説明する。第1比較例では、下地層上に、Znビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを同時照射して、NドープZnO層を形成する。
第1比較例によるNドープZnO層形成方法では、OラジカルビームとNラジカルビームを同時供給しているため、ZnO中のOサイトをN原子が置換したNだけでなく、NO分子が置換した(NO)やN分子が置換した(N等の欠陥が形成されやすい。成長温度が、例えば600℃以上に高くなると、N+(NO)や、格子間窒素Nの拡散等により、Nより安定な(Nの欠陥が形成されやすくなるようである。なお、特に、Oラジカル及びNラジカルのような活性種を用いるMBE成長の場合、OとNが容易に結びつく可能性が高い。
これらの欠陥は、ドナーとして働き、Nによるアクセプタを補償してしまうので、NドープZnO層のp型キャリア濃度を低下させたり、p型伝導性を不安定にしたりする。
次に、第2比較例によるNドープMgZnO層の製造方法について説明する。第2比較例では、下地層上に、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームを同時照射して、NドープMgZnO層を形成する。
第2比較例の方法で得られたNドープMgZnO層では、Mg組成が高くなるに従い、N濃度が減少しやすい。これは、Mgが非常に酸化されやすいので、OラジカルビームとNラジカルビームが同時供給されるとき、MgがNと結合せずにOと結合してしまうからであろうと考えられる。
次に、第1実験について説明する。第1実験では、Znビーム及びNラジカルビームを同時照射して、Zn膜を成長させた。成長基板として、a面サファイア基板を用いた。
Nラジカルビームの照射条件は、RFパワーを300W、N流量を2sccmとし、一定とした。Znビームの照射条件は、フラックス強度FZnを0.03nm/s〜0.65nm/sの範囲で変化させた(フラックス強度JZnを2.0×1014atoms/cms〜4.3×1015atoms/cmsの範囲で変化させた)。さらに、成長温度を200℃〜250℃の範囲で変化させた。
図2は、Zn膜の成長速度の、Znフラックス強度及び成長温度依存性を示すグラフである。横軸は、nm/s単位で表したZnフラックス強度(FZn)であり、縦軸は、nm/h単位で表したZn膜の成長速度である。成長温度(Tg)200℃、225℃、及び250℃の結果を、それぞれ、丸、四角、三角のプロットで示す。
Zn膜の成長速度は、成長温度に大きく依存し、成長温度の上昇とともに減少することがわかる。Zn膜の成長速度GZn3N2は、GZn3N2= [(kZn
Zn−1+(k)−1]−1 という式で近似することができる。ここで、kZn、kは、それぞれZn及びNの付着係数である。JZn、Jは、それぞれ、Zn及びNのフラックス強度で、単位面積単位時間当たりの照射原子数である。図2中には、成長速度のZnフラックス強度依存性を、この近似式でフィッティングした曲線を示している。
を2×1014atoms/cmsとして、成長温度Tgが200℃、 225℃、 250℃の時、それぞれ、Znの付着係数KZnが0.2、0.03、 0.002であると見積もられた。成長温度300℃を超えると、Zn膜は全く成長しなかった。Zn膜の成長温度は、300℃以下とするのが好ましく、250℃以下とするのがより好ましいとわかった。
次に、第2実験について説明する。第2実験では、Mgビーム及びNラジカルビームを同時照射して、Mg膜を成長させた。Mg膜の成長温度は、500℃程度まで高くできることを確認した。つまり、Mg膜の成長温度は、500℃以下とするのが好ましいとわかった。
Mgの付着係数が、Znの付着係数よりも高いことにより、Mg膜の方が、Zn膜よりも成長温度を高くできたものと考えられる。参考として、図12に、Zn、Mg、ZnO、及びMgOの諸物性を表にまとめて示す。
なお、Znビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームを同時照射して、(MgZn1−a(0<a<1)を形成することも可能である。成長温度により、MgとZnの付着係数の違いから、MgとZnの組成比を変えることもできる。
次に、本発明の第1実施例によるNドープZnO層の製造方法について説明する。
図3Aは、第1実施例の試料の構造を示す概略断面図であり、図3Bは、第1実施例のNドープZnO層の製造方法を示すタイミングチャートである。タイミングチャートは、上方に基板温度を示し、下方にZnソースガン、Oソースガン、及びNソースガンのセルシャッタの開閉状態を示す。
Zn面ZnO(0001)基板1に、900℃で30分サーマルクリーニングを施した後、基板温度を200℃まで下げた。
ZnO基板1上に、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnO膜2を形成した。Znビームの照射条件は、フラックス強度FZnを0.04nm/s(フラックス強度JZnを2.6×1014atoms/cms)とした。Oラジカルビームの照射条件は、O流量を1.5sccm、RFパワーを300Wとした。
Znビーム及びOラジカルビームの供給を中断し、インターバル(例えば1秒)を挟み、次に、ZnO膜2上に、Znビーム及びNラジカルビームを同時照射した。Znビーム及びNラジカルビームの照射で形成される構造を、Zn−N結合層3と呼ぶこととする。Znビームの照射条件は、ZnO膜2形成時と同様とし、Nラジカルビームの照射条件は、N流量を0.5sccm、RFパワーを100Wとした。
Oラジカルビームを供給しない状態で、Znビーム及びNラジカルビームを照射することにより、Zn−N結合が形成されて、ZnOのOサイトをN原子が置換したNを良好に得ることができると考えられる。
Znビーム及びNラジカルビームの供給を中断し、インターバル(例えば1秒)を挟み、再びZnビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnO膜2を形成した。
ZnO膜形成工程及びZn−N結合形成工程を1組とした工程を、100セット繰り返し、Zn−N結合層3を介してZnO膜2が積層されたNドープZnO層4を形成した。1回当たりのZnO膜形成時間を10秒と一定にし、1回当たりのZn−N結合形成時間を0秒〜20秒の範囲で変化させて、NドープZnO層4の厚さが80nm〜100nmの複数の試料を作製した。
図4は、第1実施例のNドープZnO層における、1回当たりのZn−N結合形成時間とN濃度との関係を示すグラフである。N濃度は、2次イオン質量分析(SIMS)で測定した。
Zn−N結合形成時間が0秒のとき、ZnO層中のN濃度は1018cm−3のオーダで、ほぼバックグラウンドレベルであった。Zn−N結合形成時間を長くすることにより、ZnO層中のN濃度は増加し、1021cm−3のオーダまで変化させることができることがわかった。
なお、Zn面ZnO基板上にNドープZnO層を形成した例について説明したが、O面ZnO基板上にNドープZnO層を形成した場合も、同様な結果が得られた。
Zn−N結合形成工程の1回当たりの、Znビーム及びNラジカルビームの供給量が多すぎると、ZnOと結晶構造の異なるZn結晶膜が形成されたり、あるいは、N濃度が高くなりすぎてZnON混晶が形成されたりする。Zn結晶が形成されたり、ZnON混晶レベルまでNが入ったりすると、バンドギャップの低下や格子ミスマッチによる結晶性悪化等を引き起こしてしまう。
図13は、ZnOの結晶構造図である。図13の上下方向が、c軸方向に平行である。c軸方向のZn−Zn面間隔(ステップ高さ)、つまりZn−O−Zn結合のc軸方向のZn−Zn間隔を、ZnOの1分子層厚みとする。1分子層厚みは、c軸に平行なZn−Oボンド長(約0.2nm)と、c軸に平行でないZn−Oボンド長のc軸方向間隔とを足し合わせて、0.26nmと見積もられる。
Zn−N結合層の構造は、ZnO結晶のOをNで置換したものと思われ、Zn−N結合層の1分子層厚みは、Zn−N−Zn結合のc軸方向のZn−Zn間隔と考えることができる。Zn−Nボンド長は、Zn−Oボンド長に比べてやや短いと考えられるが、約0.2nm程度であり、Zn−N結合層の1分子層厚みは、0.25nm〜0.26nmと見積もられる。
第1実施例では、1回のZnO膜形成工程で、0.8nm〜1nm程度の厚さ、つまり4分子層程度の厚さのZnO膜が形成されていた。仮に、1回のZn−N結合形成工程で、Zn−N結合層が1分子層全面に形成されたと考えると、Nが約20%入って、ZnONという混晶が形成されることとなる。ZnOの密度が5×1022cm−3程度であるので、このときのN濃度は、1×1022cm−3程度となる。
しかし、第1実施例では、例えば20秒照射の実験結果(図4参照)で、N濃度は1021cm−3程度のオーダであった。よって、Zn−N結合層が形成されている領域は、基板全面でなく、その10%程度と推測される。
以上のような考察から、Zn−N結合形成工程1回あたりのZnビーム及びNラジカルビームの供給量は、Zn−N結合形成工程で形成される層が、基板全面は被覆しないような量に(被覆率100%未満となるような量に)抑えることが望ましいといえる。
第1実験より、Zn膜の成長温度は、300℃以下とするのが好ましく、250℃以下とするのがより好ましいとわかった。これより、第1実施例におけるZn−N結合形成工程の温度も、300℃以下とするのが好ましく、250℃以下とするのがより好ましいと考えられる。
第1実施例では、Zn−N結合形成工程の温度を、例えば200℃とした。そして、ZnO膜形成工程の温度も、これと等しく200℃とした。ZnO膜形成工程と、Zn−N結合形成工程とを、等しい温度に設定することにより、両工程の間で温度を変える手間を省くことができる。
ZnO膜を、例えば200℃の低温で成長させるとき、表面マイグレーションが起こりにくく、3次元成長が起こって結晶性が悪化しやすい。1回当たりに形成されるZnO膜の膜厚を、例えば2nm以下に薄くすることにより、ZnO膜の結晶性を向上させることができる。ただし、ZnO膜は母結晶であるので、1回当たりに形成するZnO膜の厚さは、1分子層(0.26nm)以上は必要である。
第1実施例によるNドープZnO層形成方法では、OラジカルビームとNラジカルビームとが同時照射されない。これにより、ZnO中のOサイトをNO分子が置換した(NO)の形成が抑制される。また、Zn−N結合形成工程、及びZnO膜形成工程とも、出来る限り熱的に非平衡状態で行うことが望ましく、例えば300℃以下の低温で行われることにより、平衡状態で安定と思われる、OサイトをN分子が置換した(Nの形成が抑制されて、OサイトをN原子が置換したNが良好に形成されると考えられる。従って、第1比較例に比べ、NドープZnO層の良好なp型伝導性が期待される。
ZnO成長中は、Nセルシャッタを閉じているが、Nラジカル(N)が基板に到達する可能性がある。ZnO膜中へのNラジカルの取り込みを抑制するために、ZnO膜形成工程は、フラックス条件(VI/II比)をOリッチ条件とすることが望ましい。
なお、N濃度の制御方法としては、1回当たりのZn−N結合形成時間を変化させる方法の他、1回当たりのZnO膜形成時間を変えてZn−N結合形成時間との比を変化させる方法や、成長温度を変える方法や、Nラジカルビームの照射条件(N流量やRFパワー)を変える方法や、Znフラックス強度を変える方法等も考えられる。
次に、第2実施例によるNドープMgZnO層について説明する。第1実施例では、ZnO膜を、Zn−N結合層を介して積層して、NドープZnO層を得た。第2実施例では、第1実施例のZnO膜形成工程を、MgZnO膜形成工程に替え、MgZnO膜を、Zn−N結合層を介して積層して、NドープMgZnO層を得た。様々な条件で試料を作製し、Mg組成zが0.25〜0.35のNドープMgZn1−zO層を得た。成長基板は、Zn面ZnO基板とした。
図5は、第2実施例によるNドープMgZnO層中の、N濃度のSIMSによるデプスプロファイルである。MgZnO層中のN濃度は、3×1018cm−3〜2×1021cm−3の範囲で、深さ方向にほぼ一定に制御できることがわかった。
また、Mg組成が高くなっても、MgZnO層中のN濃度を高くすることが容易であることがわかった。第2実施例では、OラジカルビームとNラジカルビームが同時照射されないので、Oの影響を抑制して、MgZnO層中にNを良好に取り込むことができるものと考えられる。
N濃度は、Zn−N結合形成工程の条件(例えば1回当たりのZn−N結合形成時間)により制御でき、Mg組成は、MgZnO膜形成工程の条件(例えばMgフラックス強度)により制御できる。第2実施例は、第2比較例に比べ、Mg組成とN濃度とを独立に制御しやすい。
第2実施例のように、NドープMgZnO層を形成する場合、Zn−N結合層の形成工程を、第1変形例としてMg−N結合層の形成工程に替えることや、あるいは、第2変形例としてZn―N結合及びMg−N結合層の形成工程に替えることができると考えられる。
図6A〜図6Cは、それぞれ、第2実施例、第2実施例の第1変形例、及び第2実施例の第2変形例によるNドープMgZnO層の製造方法を示すタイミングチャートである。Znソースガン、Mgソースガン、Oソースガン、及びNソースガンのセルシャッタの開閉状態を示す。
図6Aに示すように、第2実施例では、MgZnO膜形成工程と、Zn−N結合形成工程とが交互に繰り返される。MgZnO膜形成工程では、Znビーム、Oラジカルビーム、及びMgビームが同時照射される。Zn−N結合形成工程では、Znビーム及びNラジカルビームが同時照射される。
図6Bに示すように、第1変形例では、MgZnO膜形成工程と、Mg−N結合形成工程とが交互に繰り返される。Mg−N結合形成工程では、Mgビーム及びNラジカルビームが同時照射される。なお、Mg−N結合形成工程で形成されるMg−N結合層は、ZnO結晶のZnをMgで置換し、OをNで置換した構造と思われる。
Oラジカルビームを供給しない状態で、Mgビーム及びNラジカルビームを照射することにより、Mg−N結合が形成されて、MgZnOのOサイトをN原子が置換したNを得ることができると考えられる。
第2実験より、Mg膜の成長温度は、500℃以下とするのが好ましいとわかった。これより、第1変形例におけるMg−N結合形成工程の温度も、500℃以下とするのが好ましいと考えられる。
図6Cに示すように、第2変形例では、MgZnO膜形成工程と、Zn−N結合及びMg−N結合形成工程とが交互に繰り返される。Zn−N結合及びMg−N結合形成工程では、Znビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームが同時照射される。なお、Zn−N結合及びMg−N結合形成工程で形成されるZn−N結合及びMg−N結合層は、ZnO結晶のZnを一部Mgで置換し、OをNで置換した構造と思われる。
MgZnOのOサイトをN原子が置換したNを得るために、第2変形例のように、Zn−N結合及びMg−N結合の両方を形成するようにしてもよいと考えられる。なお、Zn−N結合及びMg−N結合形成工程の温度により、Zn−N結合とMg−N結合の割合を変えることもできると考えられる。
第2実施例及びその変形例で、結合形成工程の温度は、Mg−N結合形成のみの場合は500℃以下、Zn−N結合形成が含まれる場合は300℃以下とするのが好ましいといえる。
第2実施例及びその変形例のように、MgZnO膜を形成する場合も、結晶性向上の観点から、1回当たりに形成されるMgZnO膜の厚さは、2nm以下とするのが好ましい。
第1実施例でZn−N結合形成工程について考察したのと同様に、Mg−N結合形成工程1回あたりのMgビーム及びNラジカルビームの供給量は、Mg−N結合形成工程で形成される層が、基板全面は被覆しないような量に抑えることが望ましく、また、Zn−N結合及びMg−N結合形成工程1回あたりのZnビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームの供給量は、Zn−N結合及びMg−N結合形成工程で形成される層が、基板全面は被覆しないような量に抑えることが望ましい。
なお、Zn−N結合形成工程、Mg−N結合形成工程、またはZn−N結合及びMg−N結合形成工程では、結晶に取り込まれるZnまたはMgが微量であるので、結合形成工程は、ZnまたはMgの組成にほぼ影響しないといえる。
なお、第1及び第2実施例で、Znソースガン及び(Mgを添加する場合)Mgソースガンのセルシャッタは開状態のままとし、OソースガンとNソースガンのセルシャッタの開閉状態を切り替えるようにしてもよい。
次に、第3実施例について説明する。第3実施例では、シングルへテロ接合構造を有するZnO系半導体発光素子のp型MgZnO層を、第2実施例のNドープMgZnO層形成方法を応用して形成する。
図7Aは、第3実施例の発光素子の概略断面図である。まず、n型伝導性を持つZn面面ZnO(0001)基板11上に、成長温度300℃で、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnOバッファ層12を厚さ30nm形成した。Znビームは、フラックス強度を0.1nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O流量を2sccm、RFパワーを300Wとして照射した。そして、ZnOバッファ層12の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃でアニールを行った。
ZnOバッファ層12上に、成長温度900℃で、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、n型ZnO層13を厚さ100nm形成した。Znビームは、フラックス強度を0.3nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O流量を2sccm、RFパワーを300Wとして照射した。
その後、基板温度を205℃まで下げ、MgZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程とを交互に40回繰り返して、厚さ30nmのp型MgZnO層14を形成した。得られたp型MgZn1−xO層14のMg組成xは0.3であった。
1回当たりのMgZnO膜形成工程において、Znビームはフラックス強度を0.04nm/sとして照射し、Mgビームはフラックス強度を0.03nm/sとして照射し、OラジカルビームはO流量を1.5sccm、RFパワーを300Wとして照射し、ビーム照射時間は6秒とした。
1回当たりのZn−N結合形成工程において、Znビームはフラックス強度を0.04nm/sとして照射し、NラジカルビームはN流量を0.5sccm、RFパワーを100Wとして照射し、ビーム照射時間は6秒とした。
その後、ZnO基板11の裏面上に、厚さ10nmのTi層を堆積し、Ti層上に厚さ500nmのAl層を堆積して、n側電極15nを形成した。また、p型MgZnO層14上に、大きさ300μm□で、厚さ0.5nmのNi層を堆積し、Ni層上に厚さ10nmのAu層を堆積して、p側電極15pを形成した。このようにして、第3実施例のZnO系半導体発光素子を形成した。
次に、第3比較例について説明する。第3比較例は、第3実施例のZnO系半導体発光素子と、p型MgZnO層14の形成工程が異なり、p型MgZnO層14の形成に、第2比較例の方法を採用する。図7Aを流用して、説明を進める。
第3実施例と同様にして、ZnO基板11上に、n型ZnO層13までを形成する。その後、成長温度を300℃とし、Znビーム、Mgビーム、Oラジカルビーム、及びNラジカルビームを同時照射して、Nドープp型MgZnO層14を厚さ30nm形成した。
Znビームは、フラックス強度を0.1nm/sとして照射し、Mgビームは、フラックス強度を0.04nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O流量を2sccm、RFパワーを300Wとして照射し、Nラジカルビームは、N流量を0.5sccm、RFパワーを100Wとして照射した。得られたp型MgZn1−xO層14のMg組成xは0.3であった。
その後、第3実施例と同様にして、n側電極15n及びp側電極15pを形成した。このようにして、第3比較例のZnO系半導体発光素子を形成した。
図7B及び図7Cは、それぞれ、第3実施例及び第3比較例の発光素子におけるp型MgZnO層のRHEED像である。左側が[11−20]方向からの、右側が[1−100]方向からのRHEED像である。
第3比較例のp型MgZnO層は、スポットパターンを示し、3次元成長している。一方、第3実施例のp型MgZnO層はストリークパターンを示し、成長温度が205℃と低温にもかかわらず、表面が平坦な2次元成長で、エピタキシャル成長が行われていることがわかる。
図8Aは、第3実施例及び第3比較例の発光素子のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルである。測定時の電流は5mAである。第3比較例では、波長378nmの紫外領域の発光と、波長450nm〜700nmの可視光領域のブロードな発光とが得られた。
第3実施例では、波長377nmの強い紫外発光が得られた。発光により、第3実施例の方法でp型ZnO系半導体層が得られていることが確認される。
図8B及び図8Cは、それぞれ、第3実施例及び第3比較例による発光素子の発光時の写真である。第3比較例では、点発光が含まれた面内で不均一な白色発光が観察された。第3実施例では、p側電極部全体で均一な紫色の発光(紫外発光の裾野の部分)が観察された。
このように、第3実施例の発光素子では、第3比較例に比べ、深い準位からの可視光領域の発光が抑制され、紫外光強度の大幅な増加が観測された。これは、p型MgZnO層からのキャリア注入量が増加したためと考えられる。
なお、p型MgZnO層14の形成工程を、第1実施例のようなNドープp型ZnO層の形成工程に替えて、ホモ接合構造のZnO系半導体発光素子を形成することもできる。
次に、第4実施例について説明する。第3実施例の発光素子では、p型MgZnO層14のN濃度が、深さ方向に均一なものとなる。第4実施例は、第3実施例を一部変更して、p型MgZnO層14のN濃度が厚さ方向に変化するZnO系半導体発光素子を形成する。
図9A及び図9Bは、第4実施例の発光素子におけるp型MgZnO層のN濃度を、深さ方向について概略的に示すグラフである。N濃度は、pn接合側ほど低く、表面側(p側電極側)ほど高く設定されている。pn接合側のN濃度を低くすることは、結晶性の観点から望ましい。図9Aは、N濃度を階段状に変化させた例であり、図9Bは、N濃度を連続的に変化させた例である。
p型MgZnO層14の形成工程において、例えば、1回当たりのMgZnO膜形成時間とZn−N結合形成時間の割合を変えることにより、N濃度を制御することができる。Zn−N結合形成時間の割合を短くすれば、N濃度を低くでき、Zn−N結合形成時間の割合を長くすれば、N濃度を高くできる。上方ほどZn−N結合形成時間の割合を長くすることにより、図9Aや図9Bに示すようなN濃度プロファイルを得ることができる。
次に、第5実施例について説明する。第5実施例では、ダブルへテロ接合構造を有するZnO系半導体発光素子を形成する。
図10Aは、第5実施例の発光素子の概略断面図である。まず、n型伝導性を持つZn面ZnO(0001)基板21上に、成長温度300℃で、Znビーム(フラックス強度0.1nm/s)及びOラジカルビーム(O流量2sccm/RFパワー300W)を同時照射して、ZnOバッファ層22を厚さ30nm形成する。そして、ZnOバッファ層12の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃でアニールを行う。
ZnOバッファ層22上に、成長温度900℃で、Znビーム(フラックス強度0.3nm/s)及びOラジカルビーム(O流量1sccm/RFパワー250W)を同時照射して、n型ZnO層23を厚さ150nm形成する。
n型ZnO層23上に、成長温度900℃で、Znビーム(フラックス強度0.1nm/s)、Mgビーム(フラックス強度0.03nm/s)、及びOラジカルビーム(O流量2sccm/RFパワー300W)を同時照射して、n型MgZnO層24を厚さ30nm形成する。
n型MgZnO層24上に、成長温度900℃で、Znビーム(フラックス強度0.1nm/s)及びOラジカルビーム(O流量2sccm、RFパワー300W)を同時照射して、ZnO活性層25を厚さ10nm形成する。
なお、図10Bに示すように、活性層25を、ZnOの単層に替えて、MgZnO障壁層25bとZnO井戸層25wとが交互に積層された量子井戸構造とすることもできる。
活性層25の形成後、基板温度を例えば205℃まで下げ、MgZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程とを交互に繰り返して、活性層25上に、p型MgZnO層26を形成する。例えば、第3実施例のp型MgZnO層14形成と同様な条件で、厚さ30nmのp型MgZnO層26を形成する。
その後、第3実施例のn側電極15n、p側電極15pの形成と同様にして、ZnO基板21の裏面上にn側電極27nを形成し、p型MgZnO層26上にp側電極27pを形成する。さらに、p側電極27p上に、大きさ100μmφで、厚さ500nmのAu層を堆積して、p側ボンディング電極28を形成する。このようにして、第5実施例のZnO系半導体発光素子が形成される。
なお、図10Cに示すような変形例を採用することもできる。活性層25上に、まず、成長温度700℃で、Znビーム(フラックス強度0.1nm/s)、Mgビーム(フラックス強度0.03nm/s)、Oラジカルビーム(O流量2sccm/RFパワー300W)、及びNラジカルビーム(N流量0.5sccm/RFパワー100W)を同時照射して、p型MgZnO層26aを形成する。なお、これは第2比較例のNドープMgZnO層形成方法と同様である。
次に、p型MgZnO層26a上に、MgZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程とを交互に繰り返す第2実施例の方法により、コンタクト層として、p型MgZnO層26bを形成する。その後、p型MgZnO層26b上に、p側電極27p等を形成する。
Nドープp型MgZnO層の結晶性を高め易いという観点からは、成長温度を例えば700℃と高温にできる第2比較例の方法はよい。キャリア密度を高める観点からは、第2実施例の方法が好ましい。本変形例では、活性層25側(pn接合側)に結晶性の良いp型MgZnO層26aを形成し、その後、キャリア注入層としてp型MgZnO層26bを形成している。
第2実施例の方法で形成されるp型MgZnO層26bは、第2比較例の方法で形成されるp型MgZnO層26aよりも実効的にキャリアとして働くN濃度を高めることが容易なので、コンタクト層に好適である。
次に、第6実施例について説明する。第6実施例も、第5実施例と同様に、ダブルへテロ構造を有するZnO系半導体発光素子を形成する。第5実施例では、導電性基板を用いたが、第6実施例は絶縁性基板を用いる。これに伴い、第5実施例と電極配置が異なる。
図11は、第6実施例の発光素子の概略断面図である。まず、c面サファイア基板31上に、成長温度650℃で、Mgビーム(フラックス強度0.05nm/s)及びOラジカルビーム(O流量2sccm/RFパワー300W)を同時照射して、MgOバッファ層32を厚さ約10nm形成する。
MgOバッファ層32は、その上に成長するZnO系半導体層を、Zn面を表面として成長させるような極性制御層として働く。なお、このような極性制御層について、例えば、特開2005−197410号公報の「発明を実施するための最良の形態」の欄に説明されている。
MgOバッファ層32上に、成長温度300℃で、Znビーム(フラックス強度0.1nm/s)及びOラジカルビーム(O流量2sccm/RFパワー300W)を同時照射して、ZnOバッファ層33を厚さ約30nm形成する。そして、ZnOバッファ層33の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃で30分アニールを行う。
ZnOバッファ層33上に、成長温度900℃で、Znビーム(フラックス強度0.05nm/s)、Oラジカルビーム(O流量2sccm/RFパワー300W)、及びGaビームを同時照射して、Gaドープn型ZnO層34を厚さ約1.5μm形成する。
n型ZnO層34上に、成長温度900℃で、Znビーム(フラックス強度0.1nm/s)、Mgビーム(フラックス強度0.03nm/s)、及びOラジカルビーム(O流量2sccm/RFパワー300W)を同時照射して、n型MgZnO層35を厚さ30nm形成する。
n型MgZnO層35上に、成長温度900℃で、Znビーム(フラックス強度0.1nm/s)及びOラジカルビーム(O流量2sccm、RFパワー300W)を同時照射して、ZnO活性層36を厚さ10nm形成する。なお、第5実施例と同様に、活性層36を、量子井戸構造とすることもできる。
活性層36の形成後、基板温度を例えば205℃まで下げ、MgZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程とを交互に繰り返して、活性層36上に、p型MgZnO層37を形成する。例えば、第3実施例のp型MgZnO層14形成と同様な条件で、厚さ30nmのp型MgZnO層37を形成する。
なお、第5実施例の変形例と同様に、活性層36上に、まず第2比較例と同様にしてp型MgZnO層を形成し、このp型MgZnO層上に、第2実施例と同様にしてp型MgZnOコンタクト層を形成するようにしてもよい。
その後、n側電極形成領域を、p型MgZnO層37側からn型ZnO層34の上面までエッチングする。露出したn型ZnO層34上に、厚さ10nmのTi層を堆積し、Ti層上に厚さ500nmのAl層を堆積して、n側電極38nを形成する。p型MgZnO層37上に、厚さ0.5nmのNi層を堆積し、Ni層上に厚さ10nmのAu層を堆積して、p側電極38pを形成する。p側電極38p上に、厚さ500nmのAu層を堆積して、p側ボンディング電極39を形成する。このようにして、第6実施例のZnO系半導体発光素子が形成される。
以上、実施例に沿って説明したように、下地層上方に、Znを含むZn材料及びOを含むO材料、及び必要に応じてMgを含むMg材料を同時に供給して、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜を形成し(実施例のZnO膜形成工程またはMgZnO膜形成工程)、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜上に、Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びNを含むN材料を、形成される層が基板全面は被覆しないような供給量で同時に供給すること(実施例のZn−N結合形成工程、Mg−N結合形成工程、またはZn−N結合及びMg−N結合形成工程)により、p型伝導性を有するNドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を形成することができる。
Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びN材料を同時供給する工程では、活性を持つO材料が供給されない。なお、上記実施例では、活性を持つO材料として、Oの原子ラジカルを用いたが、その他例えば、オゾンを用いることもできると考えられる。
MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜形成の下地層として、MgZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶表面を有する下地層を用いることができる。
なお、上記実施例では、例えばZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程とを1組とした工程を繰り返したが、1組分の工程だけでも、NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を形成することができると考えられる。所望の厚さの膜を得るために、工程を繰り返して、NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を積層することができる。
次に、第7実施例について説明する。第7実施例では、ホモ接合構造を有するZnO系半導体発光素子のp型ZnO層を、第1実施例のNドープZnO層形成方法を応用して、つまり、ZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程とを交互に繰り返して形成する。ただし、以下に説明するように、ZnO膜形成工程において、Zn、OラジカルとともにSも供給する。
再び図1を参照する。本実施例では、図1に示したMBE装置において、Gaソースガン104を、Sソースガン104と読み替える。Sソースガン104は、固体ソースとして例えばZnS(例えば純度6N)を用い、Sビームを出射する。なお硫黄源はZnSに限らない。たとえば、固体硫黄を用いることもできる。
図14は、第7実施例の発光素子の概略断面図である。まず、n型伝導性を持つZn面ZnO基板41上に、成長温度300℃で、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、ZnOバッファ層42を厚さ30nm形成した。Znビームは、フラックス強度を0.1nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O流量を2.0sccm、RFパワーを300Wとして照射した。そして、ZnOバッファ層42の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃で10分アニールを行った。
ZnOバッファ層42上に、成長温度900℃で、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、n型ZnO層43を厚さ150nm形成した。Znビームは、フラックス強度を0.3nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O流量を2.0sccm、RFパワーを300Wとして照射した。
n型ZnO層43上に、成長温度900℃で、Znビーム及びOラジカルビームを同時照射して、活性層44を厚さ15nm形成した。Znビームは、フラックス強度を0.1nm/sとして照射し、Oラジカルビームは、O流量を2.0sccm、RFパワーを300Wとして照射した。
その後、基板温度を250℃まで下げて、活性層44上にp型ZnO層45を形成した。ZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程を1セットとした工程を240回繰り返して、厚さ40nmのp型ZnO層45を形成した。ZnO膜形成工程では、Sも同時供給した。
1回当たりのZnO膜形成工程において、Znビームはフラックス強度を0.04nm/sとして照射し、OラジカルビームはO流量を1.5sccm、RFパワーを300Wとして照射し、SビームはZnSセル温度TZnS=760℃として照射した。ビーム照射時間は6秒とした。
1回当たりのZn−N結合形成工程において、Znビームはフラックス強度を0.04nm/sとして照射し、NラジカルビームはN流量を0.5sccm、RFパワーを300Wとして照射し、ビーム照射時間は6秒とした。
その後、ZnO基板41の裏面上にn側電極46nを形成した。また、p型ZnO層45上に、p側電極46pとp側ボンディング電極47を形成した。このようにして、第7実施例のZnO系半導体発光素子を形成した。
次に、第4比較例の発光素子について説明する。第4比較例は、p型ZnO層45の形成方法以外は、第7実施例と同様である。第4比較例では、p型ZnO層45の形成において、ZnO膜形成工程とともにZn−N結合形成工程でもSビーム照射を行った。
図15A及び図15Bは、それぞれ、第7実施例及び第4比較例の発光素子のI-V特性である。I−V特性は、カーブトレーサーにより測定した。第7実施例の発光素子は、リークなど見られずダイオード特性を示した。一方、第4比較例の発光素子は、ショットキー特性を示した。
図16は、第7実施例及び第4比較例の発光素子のNドープZnO層におけるN濃度を示すグラフである。N濃度は、2次イオン質量分析(SIMS)により測定した。縦軸がN濃度を示し、横軸が深さを示す。NドープZnO層のN濃度は、第7実施例及び第4比較例で同程度であり、4.0×1020cm−3であった。また、ZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程の1セット当たりの成長速度は、第7実施例及び第4比較例で同程度であり、0.162nm/セットであった。
第7実施例(ZnO膜形成工程のみでS照射)と第4比較例(ZnO膜形成工程及びZn−N結合形成工程の両方でS照射)とでは、成長速度、N濃度ともに同程度であることがわかった。
第4比較例は、SをZn−N結合形成工程でも照射したことに起因する成長速度変化やN濃度変化は見られないが、SがNと同時に供給されることにより、SによるNの取込み阻害(置換位置阻害、複合欠陥形成など)が起こっていると考えられる。
次に、第8実施例について説明する。第8実施例では、シングルヘテロ接合構造を有するZnO系半導体発光素子のp型MgZnO層を、第2実施例のNドープMgZnO層形成方法を応用して、つまり、MgZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程とを交互に繰り返して形成する。ただし、第7実施例と同様に、MgZnO膜形成工程において、Sも供給する。
再び図14を参照する。第7実施例の活性層44の形成工程までと同様な条件で、Zn面ZnO基板51上に、ZnOバッファ層52、n型ZnO層53、及び活性層54を形成した。
その後、基板温度を250℃まで下げて、活性層54上にp型MgZnO層55を形成した。MgZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程を1セットとした工程を240回繰り返して、厚さ40nmのp型MgZnO層55を形成した。MgZnO膜形成工程では、Sも同時供給した。形成されたp型MgZn1−xO層55のMg組成xは0.3であった。
1回当たりのMgZnO膜形成工程において、Znビームはフラックス強度を0.04nm/sとして照射し、Mgビームはフラックス強度を0.03nm/sとして照射し、OラジカルビームはO流量を1.5sccm、RFパワーを300Wとして照射し、SビームはZnSセル温度TZnS=760℃として照射した。ビーム照射時間は6秒とした。
1回当たりのZn−N結合形成工程において、Znビームはフラックス強度を0.04nm/sとして照射し、NラジカルビームはN流量を0.5sccm、RFパワーを300Wとして照射し、ビーム照射時間は6秒とした。
その後、ZnO基板51の裏面上に、厚さ10nmのTi層を堆積し、Ti層上に厚さ100nmのAu層を堆積して、n側電極56nを形成した。また、p型ZnO層55上に、厚さ1nmのNi層を堆積し、Ni層上に厚さ10nmのAu層を堆積して、p側電極56pを形成した。p側電極56p上の中央部に、厚さ10nmのNi層を堆積し、Ni層上に厚さ1000nmのAu層を堆積して、p側ボンディング電極57を形成した。このようにして、第8実施例のZnO系半導体発光素子を形成した。
次に、第5比較例の発光素子について説明する。第5比較例は、p型MgZnO層55の形成方法以外は、第8実施例と同様である。第5比較例のp型MgZnO層55は、以下に説明するように、第2比較例と同様にして(つまり、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームを同時照射して)、ただしSビームも同時照射して、形成する。
p型MgZnO層55は、成長温度を250℃とし、厚さ40nm成長させた。Znビームはフラックス強度を0.1nm/sとして照射し、Mgビームはフラックス強度を0.04nm/sとして照射し、OラジカルビームはO流量を2sccm、RFパワーを300Wとして照射し、NラジカルビームはN流量を0.5sccm、RFパワーを100Wとして照射し、SビームはZnSセル温度TZnS=760℃として照射した。成長温度を250℃と低温にしたため、2次元成長を促すサーファクタント効果を期待して、Sを同時照射した。形成されたp型MgZn1−xO層55のMg組成xは0.3であった。
次に、第9実施例の発光素子について説明する。第9実施例は、p型MgZnO層55の形成方法以外は、第8実施例と同様である。第9実施例のp型MgZnO層55は、第8実施例におけるp型MgZnO層55の形成においてSビーム照射を省いた方法(つまり、第2実施例のNドープMgZnO層形成方法と同様な方法)で形成した。
図17A及び図17Bは、それぞれ、第8実施例及び第5比較例の発光素子の、NドープMgZnO層のRHEED像である。左側が[11−20]方向の像であり、右側が[1−100]方向の像である。
第5比較例ではRHEED像がスポットパターンを示したのに対し、第8実施例ではRHEED像がストリークパターンを示した。第8実施例では、成長温度が250℃と低いにもかかわらず、表面が2次元成長するエピタキシャル成長が行われていることがわかる。
図18A及び図18Bは、それぞれ、第8実施例及び第5比較例の発光素子のI-V特性である。第8実施例の発光素子はダイオード特性を示したが、第5比較例の発光素子はショットキー特性を示した。
第5比較例は、Sを、サーファクタント効果を期待して供給したものの、低い成長温度に起因して3次元成長が生じたと考えられる。低温成長のためZnO中のOサイトにN分子が置換した(Nなどの欠陥は形成されないと考えられるが、結晶性が悪化したり、O源とN源の同時供給によりZnO中のOサイトに、NO分子が置換した(NO)などの欠陥が生じたりといった問題が起こっていると考えられる。第5比較例ではまた、SとNの同時供給に起因するSとNの相互作用により、Nの取込み阻害(置換位阻害、置複合欠陥形成など)なども起こっていると考えられる。
なお、第5比較例の方法では、Oリッチ条件だとNを取り込むことができないため、ストイキオメトリあるいはZnリッチ条件で成膜する必要がある。これは元々O空孔が形成しやすい条件である上、S照射によるSとOの反応により、O空孔形成が促進されることも考えられる。O空孔はドナーとして働く。
図19A及び図19Bは、それぞれ、第8実施例及び第9実施例の発光素子の発光時の写真である。S照射を行った第8実施例の方が、S照射を行っていない第9実施例に比べて、きれいな面発光となった。第9実施例の発光素子は、細かい点発光となってしまっている部分がある。これは、以下に説明するように第9実施例の発光素子の方が高抵抗であることを反映して、電流集中が起こっているためと考えられる。
図20A及び図20Bは、それぞれ、第8実施例及び第9実施例の発光素子のI-V特性である。第9実施例の発光素子は、第8実施例に比べ高抵抗な特性を示し、約9V付近でブレークしてしまった。この時のシリーズ抵抗Rsは基板の抵抗と一致しており、膜が破壊してしまっていることがわかった。
一方、第8実施例の発光素子は、約4V付近でpn接合の再結合電流に起因する電流傾きの変化が見られ、また、第9実施例に比べ低抵抗化しておりブレークすることもなかった。第8実施例は、S照射を行ったことにより、第9実施例よりもp型層のキャリア濃度が増加していると考えられる。
図21は、第8実施例及び第9実施例の発光素子におけるNドープMgZnO層のN濃度を示すグラフである。縦軸がN濃度を示し、横軸が深さを示す。NドープMgZnO層のN濃度は、第8実施例が4.0×1020cm−3であり、第9実施例が6.0×1020cm−3であった。MgZnO膜形成工程とZn−N結合形成工程の1セット当たりの成長速度は、第8実施例では0.162nm/セットであり、第9実施例では0.498nm/セットであった。
第8実施例(MgZnO膜形成工程でS照射)では、第9実施例(S照射なし)に比べて、N濃度が約2/3に減少し、成長速度が約1/3に減少することがわかる。これは、S照射によりZnの付着係数が下がったためだと考えられる。第8実施例では、S照射により、ZnなどのII族元素のマイグレーションが促進されて、結晶性が向上していると考えられる。また、第8実施例は膜厚を第9実施例と同程度としても、きれいな面発光となり、ブレークすることもなかった。
なお、第8実施例の第1変形例として、n型ZnO層53をn型MgZnO層53としたダブルへテロ(DH)接合構造の発光素子を形成することもできる。また、第8実施例の第2変形例として、活性層54を、図10Bを参照して説明した第5実施例と同様に、多重量子井戸(MQW)構造とすることもできる。
第7実施例及び第8実施例に沿って説明した、S照射を行う方法についてまとめる。図22A〜図22Cは、Znソースガン、Mgソースガン、Oソースガン、Nソースガン、及びSソースガンのセルシャッタの開閉状態を示すタイミングチャートである。
図22Aに示す方法では、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)膜形成工程とZn−N結合形成工程とが交互に行われ、図22Bに示す方法では、MgZn1−yO(0<y≦0.6)膜形成工程とMg−N結合形成工程とが交互に行われ、図22Cに示す方法では、MgZn1−yO(0<y≦0.6)膜形成工程とZn−N結合及びMg−N結合形成工程とが交互に行われる。なお、Mg組成y=0の場合は、図22Aにおいて、Mgソースガンが閉状態のままとなる。
図22A〜図22Cのいずれの場合でも、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)膜形成工程で、Znビーム、Oラジカルビーム、(必要に応じ)Mgビームとともに、Sビームを同時照射する。Zn−N結合形成工程、Mg−N結合形成工程、または、Zn−N結合及びMg−N結合形成工程では、Sビームを照射しない。
第7実施例及び第8実施例で説明したように、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)膜形成工程部分ではS照射を行うことにより、形成されるNドープp型MgZn1−zO(0≦z≦0.6)膜の低抵抗化等を図ることができる。なお、実施例としてS照射を行ったが、S以外に、SeやTeといった他のカルコゲン元素でも同様な効果が期待されよう。
なお、上記実施例では、NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜の形成方法としてMBEを用いたが、その他、化学気相堆積(CVD)、有機金属(MO)CVD等を用いることもできるであろう。
実施例の方法で得られるNドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜は、例えば、短波長(紫外〜青)の発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)に利用でき、また、これらの応用製品(各種インジケータ、LEDディスプレイ、CD・CVD用光源等)に利用できる。また、白色LEDやその応用製品(照明器具、各種インジケータ、ディスプレイ、各種表示器のバック照明等)に利用できる。紫外センサに利用することもできる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
1 ZnO基板
2 ZnO膜
3 Zn−N結合層
4 NドープZnO層
11、21、41、51 ZnO基板
12、22、33、42、52 ZnOバッファ層
13、23、34、43、53 n型ZnO層
14、26、37 p型MgZnO層
15n、27n、38n、46n、56n n側電極
15p、27p、38p、46p、56p p側電極
24、35 n型MgZnO層
25、36、44、54 活性層
28、39、47、57 p側ボンディング電極
26a、55 p型MgZnO層
26b p型MgZnOコンタクト層
31 サファイア基板
32 MgOバッファ層
45 p型ZnO層

Claims (10)

  1. (a)下地層上方に、Zn材料及びO材料、及び必要に応じてMg材料を同時に供給して、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜を形成する工程と、
    (b)前記MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜上に、Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びN材料を、形成される層が基板全面は被覆しないような供給量で、同時に供給することにより、NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を形成する工程と
    を有するZnO系半導体層の製造方法。
  2. 前記工程(b)は、活性を持つO材料を供給しない状態で行われる請求項1に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  3. 前記工程(a)は、カルコゲン材料も同時供給する請求項1または2に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  4. 前記工程(a)は、厚さ2nm以下のMgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜を形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  5. 前記工程(a)及び(b)を交互に繰り返して、NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を積層する請求項1〜4のいずれか1項に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  6. 前記工程(b)は、Zn材料及びMg材料のうちMg材料のみ供給される場合は500℃以下、Zn材料が供給される場合は300℃以下で行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  7. 前記工程(a)での、Zn材料及びO材料、及び必要に応じてMg材料を同時供給する供給時間と、前記工程(b)での、Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びN材料を同時供給する供給時間との比を変えながら、前記工程(a)及び(b)を繰り返すことにより、厚さ方向にN濃度を変化させて、前記NドープMgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を積層する請求項5に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  8. 前記工程(a)及び(b)に、MBEを用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  9. 前記工程(a)は、Oリッチ条件で行われる請求項8に記載のZnO系半導体層の製造方法。
  10. (a)基板上方に、n型ZnO系半導体層を形成する工程と、
    (b)前記n型ZnO系半導体層の上方に、Zn材料及びO材料、及び必要に応じてMg材料を同時に供給して、MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜を形成する工程と、
    (c)前記MgZn1−yO(0≦y≦0.6)単結晶膜上に、Zn材料及びMg材料の少なくとも一方、及びN材料を、形成される層が基板全面は被覆しないような供給量で、同時に供給することにより、Nドープp型MgZn1−zO(0≦z≦0.6)単結晶膜を形成する工程と
    を有するZnO系半導体発光素子の製造方法。
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