JP2012164533A - 有機積層薄膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機材料の溶液乃至分散液を用いた塗布法において、層混合させることなく所望の有機材料を積層することができ、3層以上の複数層の積層が可能であり、重合開始剤などの不純物を排除でき、特殊な装置を用いないことから低コストであり、製膜レート優れていることからタクトタイムが短く、材料の利用効率が高く、塗布面の表面平滑性に優れる有機積層薄膜の製造方法の提供。
【解決手段】有機化合物Aを含有する第1の層形成工程と、有機化合物Bと、特定の溶媒種を含有する第1の溶媒群と、特定の溶媒種を含有する第2の溶媒群と、を少なくとも含有する吐出液を調製する吐出液調製工程と、該吐出液を液滴状に吐出させて該吐出液から該第1の溶媒群を揮発させつつ該第1の層へ着弾させる第2の層形成工程と、を含む有機積層薄膜の製造方法である。
【選択図】図3

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に好適に用いられる有機積層薄膜の製造方法に関する。
有機薄膜太陽電池、有機半導体を利用したトランジスタ、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」と称することがある。)等の有機材料を利用した電子デバイスをはじめとして、ナノメートルからマイクロメートルオーダーの有機薄膜の需要が高まっている。これらの有機薄膜は、一層で機能を発現するとは限らず、積層構造を有する場合が多い。
従来、有機薄膜の積層構造は、蒸着法、スパッタ法、CVD法等の気相堆積法で作製される場合が多かった。これらの方法によれば、各層が分離積層された構造を容易に実現することができる。
しかし、気相堆積法は、設備費が高額である、タクトタイムが長い、材料利用効率が低いなどの点が問題である。
前記気相堆積法の問題を解決するために、塗布法の検討が盛んに行われている。
しかし、前記有機EL素子は、数ナノメートルから数百ナノメートルの厚みの有機薄膜からなる積層構造を有するため、塗布法で有機EL素子を製造する場合、積層製膜時に下層の溶解や、湿潤、含浸等の現象に起因して層混合が生じやすい。したがって、積層構造を形成するための技術的難易度が高いという問題がある。
積層構造を塗布法により形成する方法として、下層と、該下層に積層する上層とにおいて、溶解度の大きく異なる材料を組み合わせる方法が提案されている。この方法によれば水溶性の材料と油溶性の材料とを組み合わせるなどの方法によって、2層の積層は現実的に可能である。
しかし、この方法では、溶媒と材料との組合せの現実性を考慮すると、3層以上を積層することは困難であり、また選択できる材料に制限がかかる点が問題である。
また、積層構造を形成する際、下層に重合、架橋等の処理を行い硬膜化する方法も提案されている。
しかし、この方法は、重合開始剤の影響による有機EL素子の性能低下が起こる可能性があることや、重合時間を要するためにタクトタイムが長くなることが問題である。
これらの問題に対して、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層又はキャリア輸送層の原料となる有機材料が溶媒中に希薄状態で溶解又は分散している原料液をエアロゾル化し、該エアロゾル中の前記溶媒を気化させることにより生成する前記有機材料の微粒子を基板上に付着させることによって該基板上に該有機材料の薄膜を形成する有機エレクトロルミネッセンス薄膜の作製方法及び該作製方法に用いられる装置が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、有機材料の種類に限られることなく有機薄膜を積層できる。
しかし、この方法は、特殊な装置が必要であるために装置開発にコストがかかる点、及び製膜レートが低い点が問題である。
また、静電塗布法も提案されている(非特許文献1参照)。前記静電塗布法は、高分子溶液をシリンジで供給させる際に、該シリンジ先端部に数kV程度の高電圧を印加して帯電させて液滴を吐出する方法である。静電気力で表面張力を破って前記シリンジ先端から噴射した高分子溶液の液滴は、帯電しているためにクーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がっていく。このとき、液滴は微細化に伴い体積に対する表面積の割合が大きくなるので、高分子を希釈している有機溶媒が揮発しやすく、概ね乾燥した状態の高分子材料が基板上に到達して薄膜を形成する。したがって、この方法によれば、下層を溶解することなく有機薄膜を積層することができる。
しかし、この静電塗布法も、特殊な装置が必要であるために装置開発にコストがかかる点、及び製膜レートが低い点が問題である。
また、塗布法においては、溶剤種、塗布条件、乾燥条件などを適切に設定しないと、表面平滑性に劣る場合があり問題である。ここで、溶剤種は材料によって制限がかかる場合が多く、ヌレ性が悪い溶剤しか選定できないような場合は特に問題である。
したがって、有機材料の溶液乃至分散液を用いた塗布法において、層混合させることなく所望の有機材料を積層することができ、3層以上の複数層の積層が可能であり、重合開始剤などの不純物を排除でき、特殊な装置を用いないことから低コストであり、製膜レートが優れていることからタクトタイムが短く、材料の利用効率が高く、塗布面の表面平滑性に優れる有機積層薄膜の製造方法の提供が求められているのが現状である。
特許第3541294号公報
福田 武司ら、「導電性高分子膜を陽極に用いた有機EL」、月間ディスプレイ、2009年(9月号)、vol.15、No.9
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、有機材料の溶液乃至分散液を用いた塗布法において、層混合させることなく所望の有機材料を積層することができ、3層以上の複数層の積層が可能であり、重合開始剤などの不純物を排除でき、特殊な装置を用いないことから低コストであり、製膜レート優れていることからタクトタイムが短く、材料の利用効率が高く、塗布面の表面平滑性に優れる有機積層薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、有機化合物Aを含有する第1の層を形成する第1の層形成工程と、有機化合物Bと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群と、を少なくとも含有する吐出液を調製する吐出液調製工程と、前記吐出液を液滴状に吐出させて該吐出液から前記第1の溶媒群を揮発させつつ前記第1の層へ着弾させて第2の層を形成する第2の層形成工程と、を含み、前記吐出液調製工程における前記第1の溶媒群が、前記有機化合物Bへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満である少なくとも1種の溶媒種を含有し、前記吐出液調製工程における前記第2の溶媒群が、前記有機化合物Aへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上である少なくとも1種の溶媒種を含有する、有機薄膜上に有機薄膜を積層した有機積層薄膜の製造方法は、前記第1の層(下層)を構成する有機化合物Aと前記第2の層(上層)を構成する有機化合物Bの溶剤への溶解性が同様な場合においても、層混合なく積層することができ、3層以上の複数層の積層が可能であり、重合開始剤などの不純物を排除でき、特殊な装置を用いないことから低コストであり、製膜レート優れていることからタクトタイムが短く、材料の利用効率が高く、塗布面の表面平滑性に優れることを知見し、本発明の完成に至った。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 有機薄膜上に有機薄膜を積層した有機積層薄膜の製造方法であって、
有機化合物Aを含有する第1の層を形成する第1の層形成工程と、
有機化合物Bと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群と、を少なくとも含有する吐出液を調製する吐出液調製工程と、
前記吐出液を液滴状に吐出させて該吐出液から前記第1の溶媒群を揮発させつつ前記第1の層へ着弾させて第2の層を形成する第2の層形成工程と、
を含み、
前記吐出液調製工程における前記第1の溶媒群が、前記有機化合物Bへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満である少なくとも1種の溶媒種を含有し、
前記吐出液調製工程における前記第2の溶媒群が、前記有機化合物Aへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上である少なくとも1種の溶媒種を含有することを特徴とする有機積層薄膜の製造方法である。
<2> 吐出液を液滴状に吐出させて該吐出液から第1の溶媒群を揮発させつつ第1の層へ着弾させる方法がスプレー塗布法である前記<1>に記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<3> 第2の溶媒群が、アルカン類、ケトン類、シクロアルカン類、アリール類、及び環状ケトン類の中から選択される少なくとも2種類の溶媒類を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<4> 第2の溶媒群における溶媒類同士の沸点又は平均沸点の差が10℃以内である前記<3>に記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<5> 第1の溶媒群が、テトラヒドロフランを含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<6> 第2の溶媒群が、ケトン類とアルカン類とを含む前記<3>から<5>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<7> 第2の溶媒群が、アリ−ル類と環状ケトン類とを含む前記<3>から<6>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<8> 有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層及びキャリア輸送層のいずれかに用いられる有機積層薄膜を製造する前記<1>から<7>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<9> 第2の層形成工程が、吐出液をノズルからキャリアガスにより液滴状に吐出し、かつ該ノズルを移動させながら第2の層を形成する工程であり、
前記ノズルと第1の層の距離を測定し、該ノズルに対する該第1の層と同じ距離に感油紙を設置し、
前記吐出液の流量、前記ノズルの移動速度、前記キャリアガスの流量、前記ノズルの外部の温度、前記ノズルの外部の圧力を、前記第2の層を形成する際と同じ条件として、第1の溶媒群と第2の溶媒群とをそれぞれ吐出して着色させた前記感油紙の発色濃度を、それぞれ分光光度計で測定した反射率で検出した場合に、下記式1で算出した前記第1の溶媒群が付着した前記感油紙の発色濃度D1と、下記式2で算出した前記第2の溶媒群が付着した前記感油紙の発色濃度とD2との比(D2/D1)が、1.2以上となる条件で前記第2の層を形成する前記<1>から<8>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
D1=log10(1/R1) ・・・(式1)
D2=log10(1/R2) ・・・(式2)
ただし、前記式1において、R1は、前記第1の溶媒群が付着した感油紙の反射率を表し、前記式2において、R2は、前記第2の溶媒群が付着した感油紙の反射率を表す。
<10> 第2の層形成工程の後、更に第2の層形成工程を繰り返し行い第2の層を厚膜化する厚膜化工程を含む前記<1>から<9>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<11> 第2の層の上に、有機化合物Bとは異なる有機化合物を含有する層を複数層積層する複数層積層工程を更に含む前記<1>から<10>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<12> 有機化合物A及び有機化合物Bの少なくともいずれかが、PTPDES、4,4’−ビス(9−カルバゾイル)−ビフェニル、Firpic、及びN,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジンから選択される少なくいとも1種である前記<1>から<11>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<13> ケトン類が、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、4−ヘプタノン、及びジイソブチルケトンから選択される少なくとも1種であり、アルカン類が、オクタン、ノナン、デカン、及びドデカンから選択される少なくとも1種である前記<6>から<12>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
<14> アリール類が、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、及びo−ジエチルベンゼンから選択される少なくとも1種であり、環状ケトン類が、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びアセトフェノンから選択される少なくとも1種である前記<7>から<13>のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、有機材料の溶液乃至分散液を用いた塗布法において、層混合させることなく所望の有機材料を積層することができ、3層以上の複数層の積層が可能であり、重合開始剤などの不純物を排除でき、特殊な装置を用いないことから低コストであり、製膜レート優れていることからタクトタイムが短く、材料の利用効率が高く、塗布面の表面平滑性に優れる有機積層薄膜の製造方法を提供することができる。
図1は、有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。 図2Aは、試験例1における第1の溶媒群の揮発性評価の結果を表す図である。 図2Bは、試験例1における第2の溶媒群の揮発性評価の結果を表す図である。 図3は、実施例1において、発光層形成後の有機積層薄膜をD−SIMS法で測定した結果を表す図である。 図4Aは、実施例1において、発光層形成後の有機積層薄膜表面を光学式プロファイラで測定した結果を表す図である。 図4Bは、実施例1において、発光層形成前の正孔輸送層表面を光学式プロファイラで測定した結果を表す図である。
(有機積層薄膜の製造方法)
本発明の有機積層薄膜の製造方法は、第1の層形成工程と、吐出液調製工程と、第2の層形成工程と、を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
<第1の層形成工程>
前記第1の層形成工程は、有機化合物Aを含有する第1の層を形成する工程である。
<<有機化合物A>>
前記有機化合物Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよく、例えば、発光材料、キャリア輸送材料などが挙げられる。
−発光材料−
前記発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光発光材料、燐光発光材料などが挙げられる。これらの中でも、前記発光材料は、燐光発光材料が好ましい。これらの発光材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、本発明の有機積層薄膜の製造方法により製造された有機積層薄膜が有機EL素子の発光層として用いられる場合、前記発光材料が前記発光層に2種以上含まれていると、色純度を向上させることや、発光波長領域を広げることができる点で好ましい。
−−燐光発光材料−−
前記燐光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体などが挙げられる。
前記遷移金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、白金などが好ましく、レニウム、イリジウム、白金などがより好ましく、イリジウム、白金などが特に好ましい。
前記ランタノイド原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムなどが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、ガドリニウムなどが好ましい。
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著, Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社, 1987年発行, H.Yersin著, 「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」, Springer−Verlag社, 1987年発行, 山本明夫著, 「有機金属化学−基礎と応用−」, 裳華房社, 1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
前記配位子の具体例としては、ハロゲン配位子(例えば、塩素配位子が好ましい。)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、ナフチルアニオンなどが挙げられ、炭素数5〜30が好ましく、炭素数6〜30がより好ましく、炭素数6〜20が更に好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、又はフェナントロリンなどが挙げられ、炭素数5〜30が好ましく、炭素数6〜30がより好ましく、炭素数6〜20が更に好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンが好ましい。)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子などが挙げられ、炭素数2〜30が好ましく、炭素数2〜20がより好ましく、炭素数2〜16が更に好ましい。)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子などが挙げら、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数6〜20が更に好ましい。)、シリルオキシ配位子(例えば、トリメチルシリルオキシ配位子、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシ配位子、トリフェニルシリルオキシ配位子などが挙げられ、炭素数3〜40が好ましく、炭素数3〜30がより好ましく、炭素数3〜20が更に好ましい。)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子、リン配位子(例えば、トリフェニルフォスフィン配位子などが挙げられ、炭素数3〜40が好ましく、炭素数3〜30がより好ましく、炭素数3〜20が更に好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい。)、チオラト配位子(例えば、フェニルチオラト配位子などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数6〜20が更に好ましい。)、フォスフィンオキシド配位子(例えば、トリフェニルフォスフィンオキシド配位子などが挙げられ、炭素数3〜30が好ましく、炭素数8〜30がより好ましく、炭素数18〜30が更に好ましい。)などが好ましく、含窒素ヘテロ環配位子がより好ましい。
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。また、異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
これらの中でも、前記発光性材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。これらの中でも、前記発光性材料としては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体などが好ましく、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体などがより好ましく、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が更に好ましく、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
−−蛍光発光材料−−
前記蛍光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
また、前記発光材料の具体例としては、特開2009−16579号公報の段落[0054]〜[0064]に例示の具体化合物、特開2008−218972号公報の段落[0059]〜[0068]に例示の具体化合物、及び、後述する実施例で使用したFirPicなども挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
−キャリア輸送材料−
前記キャリア輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正孔輸送性に優れる材料(以下、「正孔輸送性材料」と称することがある。)及び電子輸送性に優れる材料(以下、「電子輸送性材料」と称することがある。)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
−−正孔輸送性材料−−
前記正孔輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体などが挙げられる。
これらの中でも、前記正孔輸送性材料としては、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、分子内にカルバゾール基を有するものがより好ましい。
−−電子輸送性材料−−
前記電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.4eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.3eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
このような電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピリジン、キノリン、ピリミジン、ピラジン、フタラジン、フェナントロリン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレン、ペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、及びそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体などが挙げられる。
これらの中でも、前記電子輸送性材料としては、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)が好ましく、耐久性の点から金属錯体化合物がより好ましい。
前記金属錯体化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体が好ましい。
前記金属錯体中の金属イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、パラジウムイオンなどが好ましく、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、パラジウムイオンなどが更に好ましい。
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行などに記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、含窒素ヘテロ環配位子が好ましい。前記含窒素ヘテロ環配位子の炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1〜30が好ましく、炭素数2〜20がより好ましく、炭素数3〜15が特に好ましい。
また、前記配位子は、単座配位子であってもよく、2座以上の配位子であってもよいが、2座以上6座以下の配位子又は2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子が好ましい。
前記配位子としては、例えば、アジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。)、アリールオキシ配位子(例えば、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜12が更に好ましい。)、ヘテロアリールオキシ配位子(例えば、ピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、及びキノリルオキシなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、アルキルチオ配位子(例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、アリールチオ配位子(例えば、フェニルチオなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。)、ヘテロアリールチオ配位子(例えば、ピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、及び2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、シロキシ配位子(例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、及びトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数3〜25がより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(例えば、フェニルアニオン、ナフチルアニオン、及びアントラニルアニオンなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜25がより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(例えば、ピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、及びベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数2〜25がより好ましく、炭素数2〜20が特に好ましい。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられる。
これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、シロキシ配位子などが好ましく、含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、芳香族ヘテロ環アニオン配位子などがより好ましい。
金属錯体電子輸送性材料の具体例としては、特開2002−235076号、特開2004−214179号、特開2004−221062号、特開2004−221065号、特開2004−221068号、特開2004−327313号等の公報に記載の化合物などが挙げられる。
これらの中でも、本発明の有機積層薄膜の製造方法に用いられるキャリア輸送材料の具体例としては、特開2009−16579号公報の段落[0079]〜[0083]に例示の具体化合物、及び、後述する実施例で使用したCBPなども挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、前記キャリア輸送材料のガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃〜150℃が好ましく、60℃〜150℃がより好ましい。
これらの有機化合物Aは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記有機化合物Aの前記第1の層における含有量としては、特に制限はなく、形成する第1の層の厚さなどに応じて適宜選択することができるが、前記第1の層は、前記化合物Aからなることが好ましい。
−第1の層の形成方法−
前記第1の層は、例えば、前記有機化合物Aを有機溶媒等に溶解させた溶液を用いて形成することができる。
前記有機溶媒としては、前記有機化合物Aを溶解することができれば、特に制限はなく、有機化合物Aの種類などに応じて適宜選択することができる。
ここで、前記有機化合物Aの前記有機溶媒への溶解とは、0.1重量%以上溶解していることが好ましく、0.1重量%〜10重量%溶解していることがより好ましく、0.1重量%〜5重量%溶解していることが特に好ましい。
前記有機溶媒の具体例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等の環状ケトン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン等の芳香族系(アリール系)溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等のシクロアルカン系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、ジイソプロピルケトン(DIPK、2,4−ジメチル−3−ペンタノン)、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン(DIBK、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン)等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記第1の層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着法等の気相堆積法でもよく、塗布法でもよい。前記塗布法としては、例えば、スピン塗布法、エアナイフ塗布法、バー塗布法、ブレード塗布法、スライド塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法、キャスト塗布法、浸漬塗布法、インクジェット塗布法などが挙げられる。
−第1の層−
前記第1の層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明における薄膜とは、1nm〜1,000nmが好ましく、5nm〜200nmより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
前記第1の層の厚みは、前記有機化合物Aの有機溶媒中の濃度や、該有機化合物Aを含む前記第1の溶媒群の基材への単位面積あたりの着液量(ウエット膜厚)を制御することにより調整することができる。
前記ウエット膜厚は、前記第1の溶媒群の粘度や塗布方法などにより制御することができ、例えばスピンコート法では回転数でウエット膜厚を制御することができる。
前記第1の層の表面粗さ(Ra)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以下が好ましく、2nm以下がより好ましい。前記第1の層の表面粗さが、10nmを超えると、通電時にリークが発生することがある。
前記表面粗さは、例えば、光学式プロファイラ(商品名:Wyco、Veeco社製)を用いて測定することができる。
前記有機積層薄膜が、後述する有機EL素子に用いられる場合、前記第1の層は、発光層やキャリア輸送層として好適に利用することができる。前記キャリア輸送層としては、例えば、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層などが挙げられる。
前記第1の層が、前記有機EL素子において、前記発光層として用いられる場合、前記化合物Aとしては、前記発光材料を含むことが好ましい。
前記第1の層が、前記有機EL素子において、前記正孔輸送層又は前記正孔注入層として用いられる場合、前記化合物Aとしては、前記正孔輸送性材料を含むことが好ましい。
また、前記第1の層が、前記有機EL素子において、前記電子輸送層又は前記電子注入層として用いられる場合、前記化合物Aとしては、前記電子輸送性材料を含むが好ましい。
<吐出液調製工程>
前記吐出液調製工程は、有機化合物Bと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群とを少なくとも含有する吐出液を調製する工程である。
<<吐出液>>
−有機化合物B−
前記有機化合物Bとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、発光材料、キャリア輸送材料などが挙げられる。
前記発光材料、前記キャリア輸送材料としては、前記有機化合物Aと同様のものなどが挙げられる。前記有機化合物Aと前記有機化合物Bとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
前記有機化合物Bの前記吐出液における含有量としては、特に制限はなく、形成する第2の層の厚さなどに応じて適宜選択することができるが、前記第2の層は、前記化合物Bからなることが好ましい。
−第1の溶媒群−
前記第1の溶媒群は、前記有機化合物Bへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満の溶媒群である。なお、本発明において、前記有機化合物Bへの溶解度が0.5重量%以上である溶媒を「良溶媒」と称することがある。
前記第1の溶媒群としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、環状エーテル類、ハロゲン化炭化水素類などの溶媒類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記第1の溶媒群が、2種以上の溶媒類を含む場合、前記第1の溶媒群全体として前記有機化合物Bへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満であればよい。
なお、前記溶解度は、例えば、飽和溶液の吸光度により算出することができる。
前記環状エーテル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキセタン(沸点50℃)、テトラヒドロフラン(沸点65℃)、テトラヒドロピラン(沸点88℃)などの溶媒種が挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化メチレン(沸点40℃)、クロロホルム(沸点61℃)、ジクロロエタン(沸点83℃)、などの溶媒種が挙げられる。
これらの中でも、前記第1の溶媒群としては、室温(約25℃)近傍で取り扱いやすい沸点を有するテトラヒドロフラン若しくはクロロホルムを含むことが好ましい。これらの溶媒種は、吐出前には揮発しにくくハンドリング性が良好であり、吐出後は容易に揮発して下層を溶解しない点で好ましい。
なお、本発明において、前記第1の溶媒群中の溶媒類は、2種以上の溶媒種が混合されていてもよい。例えば、オキセタン(溶媒種)とテトラヒドロフラン(溶媒種)から環状エーテル類(溶媒類)を構成していてもよい。
ここで、前記第1の溶媒群は、沸点が100℃未満の溶媒群であるが、前記第1の溶媒群における溶媒類が2種以上の溶媒種を含む場合、その沸点としては、該2種以上の溶媒種の平均沸点を意味する。即ち、前記溶媒種の平均沸点とは、前記同一溶媒類における複数の溶媒種の沸点(T1、T2、T3、‥Tn)と、前記同一溶媒類における複数の溶媒種の重量分率(C1、C2、C3、‥Cn)とを用いて、下記式3で表される温度である。
前記吐出液における前記第1の溶媒群の含有量としては、前記有機化合物Bへの溶解度が0.5重量%以上である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−第2の溶媒群−
前記第2の溶媒群は、前記有機化合物Aへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上の溶媒群である。なお、本発明において、前記有機化合物Aへの溶解度が0.1重量%以下である溶媒を「貧溶媒」と称することがある。
前記第2の溶媒群としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルカン類、ケトン類、シクロアルカン類、アリール類、環状ケトン類等の溶媒類から選択されることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記第2の溶媒群が、2種以上の溶媒類を含む場合、前記第2の溶媒群全体として前記有機化合物Aへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上であればよい。
なお、前記溶解度は、例えば、飽和溶液の吸光度により算出することができる。
前記アルカン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オクタン(沸点125℃)、ノナン(沸点150℃)、デカン(沸点174℃)、ドデカン(沸点216℃)などの溶媒種が挙げられる。
前記ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルケトン(沸点102℃)、ジイソプロピルケトン(沸点125℃)、4−ヘプタノン(沸点149℃)、ジイソブチルケトン(沸点168℃)などの溶媒種が挙げられる。
前記シクロアルカン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルシクロヘキサン(沸点100℃)、エチルシクロヘキサン(沸点131℃)、デカリン(沸点195℃)などの溶媒種が挙げられる。
前記アリール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン(沸点110℃)、o−キシレン(沸点144℃)、m−キシレン(沸点139℃)、p−キシレン(沸点138℃)、メシチレン(沸点164℃)、o−ジエチルベンゼン(沸点183℃)などの溶媒種が挙げられる。
前記環状ケトン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シクロペンタノン(沸点130℃)、シクロヘキサノン(沸点155℃)、アセトフェノン(沸点201℃)などの溶媒種が挙げられる。
前記第2の溶媒群は、少なくとも2種の溶媒類を含むことが好ましい。前記第2の溶媒群が少なくとも2種の溶媒類を含む場合は、ヌレ性が良好となり、その結果、塗布面の表面平滑性が良好となるために好ましい。前記第2の溶媒群が1種の溶媒類のみからなる場合、表面平滑性が悪くなることがあり、その影響で前記有機積層薄膜を有機EL素子に用いた場合、発光効率や耐久性が劣ることや駆動電圧が高くなることがある。
なお、本発明において、前記第2の溶媒群中の溶媒類は、2種以上の溶媒種が混合されていてもよい。例えば、オクタン(溶媒種)とデカン(溶媒種)からアルカン類(溶媒類)を構成していてもよい。
ここで、前記第2の溶媒群は、沸点が100℃以上の溶媒群であるが、前記第2の溶媒群における溶媒類が2種以上の溶媒種を含む場合、その沸点としては、該2種以上の溶媒種の平均沸点を意味する。即ち、前記溶媒種の平均沸点とは、前記同一溶媒類における複数の溶媒種の沸点(T1、T2、T3、‥Tn)と、前記同一溶媒類における複数の溶媒種の重量分率(C1、C2、C3、‥Cn)とを用いて、下記式3で表される温度である。
また、前記第2の溶媒群が2種以上の溶媒類を含む場合、該2種以上の溶媒類同士の沸点又は平均沸点の差が10℃以内であることが好ましい。前記沸点又は平均沸点の差が10℃を超えると、乾燥過程において該2種以上の溶媒類の混合比率が変動する結果、表面平滑性が悪くなることがあり、その影響で発光効率や耐久性が劣ることや駆動電圧が高くなることがある。
前記第2の溶媒群における溶媒類の組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ケトン類とアルカン類、アリ−ル類と環状ケトン類の組合せを含むことが、ヌレ性が特に良好であることから表面平滑性が特に良好になる点で好ましい。
前記吐出液における前記第2の溶媒群の含有量としては、前記有機化合物Aへの溶解度が0.1重量%以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、本発明の効果が発現する範囲においては、前記第1の溶媒群と、第2の溶媒群との混合比率としても特に制限はなく、使用する材料や溶媒、目的とする積層のレベルに応じて、適宜選択することができる。
<第2の層形成工程>
前記第2の層形成工程は、前記吐出液調製工程で調製した吐出液を液滴状に吐出させて該吐出液から前記第1の溶媒群を揮発させつつ前記第1の層へ着弾させて前記第2の層を形成する工程である。
本発明において、「第1の溶媒群を揮発させつつ」とは、前記第2の層形成工程において、前記吐出液が吐出されてから前記第1の層に着弾されるまでの過程で、前記吐出液から前記第1の溶媒群が揮発されることにより、結果として、着弾時の吐出液に対して、前記第1の層の溶解性が低下した状態となることをいうが、前記着弾時の吐出液中から前記第1の溶媒群が揮発して除去されていることが好ましい。これにより、前記第1の層を溶解することなく、前記第2の層を積層できる点で有利である。
なお、前記吐出液が吐出されてから前記第1の層に着弾されるまでの過程で、前記吐出液中の前記第2の溶媒群は揮発されないことが好ましい。
−第2の層の形成方法−
前記液滴状に吐出させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット法若しくはスプレー塗布法で吐出させる方法が好ましい。前記第2の層の形成にスプレー塗布法を用いることで、吐出部と製膜部との距離を大きく取れることから、吐出後に第1の溶媒群を揮発させやすい点でより好ましい。
前記スプレー塗布法に採用されるスプレー装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、応じて適宜選択することができ、該装置のノズルから前記吐出液を吐出することができる。したがって、本発明の有機積層薄膜の製造方法は、特殊な装置を用いることなく積層できる点で有利である。
なお、前記吐出液のスプレー塗布法は、換言すれば、該吐出液の液体粒子が気体(キャリアガス)に浮遊してなるエアロゾルを所定面上に噴射することにより、エアロゾルを塗布して層を形成する方法である。
前記エアロゾルの形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記吐出液の液体粒子の平均粒子径が、0.1μm〜200μmが好ましく、1μm〜50μmがより好ましい。
前記気体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。製膜対象の有機化合物が酸化によって悪影響を受ける場合は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが好ましい。その中でも、安価であることから、窒素がより好ましい。
前記エアロゾルのキャリアガス流量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1L/分間〜100L/分間が好ましく、1L/分間〜10L/分間がより好ましい。前記エアロゾルのキャリアガス流量が小さい場合は、液滴化が難しい。キャリアガス流量が大きい場合は、塗布面の平滑性が悪化する場合がある。
エアロゾルの噴射時間としては、特に制限はなく、前記第2の層として得ようとする厚みに応じて、適宜選択することができる。
前記装置におけるノズルの数としては、特に制限はなく、1個であってもよいが、複数個あることが、スループットの向上の観点から好ましい。若しくは、スリットから液滴が吐出されるラインノズルであることが好ましい。
前記吐出液から前記第1の溶媒群を揮発させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記吐出液を吐出させた領域(例えば、スプレー装置を用いる場合、ノズルの外部など)近傍の温度、蒸気圧、該ノズルの開口部と前記第1の層との距離、前記吐出液を吐出させる流量などを適宜調整する方法などが挙げられる。
前記吐出液を吐出させる領域近傍の温度(前記第1の溶媒群を揮発させる温度)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶媒揮発の制御性の観点及び設備コストの観点から室温近傍が好ましい。前記温度が室温より著しく低い(例えば、5℃未満)と前記第1の溶媒群が前記吐出液から揮発せず、前記吐出液の前記第1の層への溶解度を低下させることができず、前記第1の層を溶解させることがある。また、前記温度が室温より著しく高い(例えば、50℃以上)と、前記第2の溶媒群も揮発してしまい、前記第2の層が不均一になることがある。
前記吐出液を吐出させる領域近傍の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶媒揮発の制御性の観点及び設備コストの観点から常圧近傍が好ましい。前記圧力が、常圧より著しく小さい場合(例えば、50,000Pa未満)は、減圧装置などの設備コストがかかる点で好ましくない。また前記第2の溶媒群も揮発してしまい、前記第2の層が不均一になることがある。また、前記圧力が、常圧よりも著しく大きい場合(例えば、200,000Pa以上)は、加圧装置などの設備コストがかかる点で好ましくなく、安全上も問題がある。また前記第1の溶媒群が前記吐出液から揮発せず、前記吐出液の前記第1の層への溶解度を低下させることができず、前記第1の層を溶解させることがある。
前記ノズルの開口部と前記第1の層との距離としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10mm〜300mmが好ましく、30mm〜70mmがより好ましい。前記距離が、10mm未満であると、前記第1の溶媒群が前記吐出液から揮発せず、前記吐出液の前記第1の層への溶解度を低下させることができず、前記第1の層を溶解させることがある。また、前記距離が、300mmを超えると、第2の溶媒群も揮発するようになることから前記第1の層への付着効率が悪くなったり、前記第2の層が不均一になったりすることがある。
前記吐出液を吐出させる流量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mL/分間〜10mL/分間が好ましく、1mL/分間〜5mL/分間がより好ましい。前記流量が、0.1mL/分間未満であると、第2の溶媒群も揮発するようになることから前記第1の層への付着効率が悪くなったり、前記第2の層が不均一になったりすることがあり、10mL/分間を超えると、前記第1の溶媒群が前記吐出液から揮発せず、前記吐出液の前記第1の層への溶解度を低下させることができず、前記第1の層を溶解させることがある。
また、前記第2の層形成工程は、前記第1の層の面積に応じて前記ノズルを移動させながら塗布することができる。前記ノズルの移動速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mm/秒間〜1,000mm/秒間が好ましく、2mm/秒間〜100mm/秒間がより好ましい。前記ノズルの移動速度が、1mm/秒間未満であると、製膜レートが小さくなることからタクトタイムが長くなってしまうことがあり、1,000mm/秒間を超えると、噴霧液滴の分布が乱れ、前記第2の層が不均一になることがある。
前記吐出液が前記第1の層に着弾する際の前記吐出液中の前記第1の溶媒群の含有量としては、該吐出液が前記第1の層への溶解度が低下した状態となっていれば、特に制限はなく、前記第1の溶媒群の全てが揮発した状態であってもよく、一部が揮発された状態であってもよいが、下記で規定される含有量となることが好ましい。
前記有機化合物Bを含む吐出液の前記第1の層への着弾時の該記第1の層への溶解度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、次のように規定されることが好ましい。
即ち、前記ノズルと第1の層の距離を測定し、該ノズルに対する該第1の層と同じ距離に感油紙を設置した場合、前記吐出液の流量、前記ノズルの移動速度、前記キャリアガスの流量、前記ノズルの外部の温度、前記ノズルの外部の圧力を、前記第2の層を形成する際と同じ条件として、第1の溶媒群と第2の溶媒群とをそれぞれ吐出して着色させた前記感油紙の発色濃度を、それぞれ分光光度計(例えば、U−4100、日立ハイテク社製)で測定した反射率で検出した場合に、下記式1で算出した前記第1の溶媒群が付着した前記感油紙の発色濃度D1と、下記式2で算出した前記第2の溶媒群が付着した前記感油紙の発色濃度とD2との比(D2/D1)が、1.2以上となる条件で前記第2の層を形成することが好ましく、1.5以上がより好ましい。
D1=log10(1/R1) ・・・(式1)
D2=log10(1/R2) ・・・(式2)
ただし、前記式1において、R1は、前記第1の溶媒群が付着した感油紙の反射率を表し、前記式2において、R2は、前記第2の溶媒群が付着した感油紙の反射率を表す。
したがって、前記吐出液中の、前記有機化合物Bの含有量、前記第1の溶媒群の含有量、前記第2の溶媒群の含有量、前記第1の溶媒群と前記第2の溶媒群との混合比、前記スプレー塗布の条件、ノズル外部の温度や圧力等の雰囲気条件などは、前記着弾時の前記第1の溶媒群の濃度条件を満たす限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−第2の層−
前記第2の層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明における薄膜とは、1nm〜1,000nmが好ましく、5nm〜200nmより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
前記第2の層の厚みは、前記有機化合物Bの前記第2の溶媒群中の濃度や、該有機化合物Bを含む前記第2の溶媒群の前記第1の層への単位面積あたりの着液量(ウエット膜厚)を制御することにより調整することができる。
前記ウエット膜厚は、前記第2の溶媒群の粘度、吐出量、前記ノズルの移動速度、前記第1の層への付着効率などにより制御することができる。
前記第1の層を溶解することなく、前記第2の層が積層されたか否かは、例えば、D−SIMS法(Dynamic Secondary Ion−microprobe Mass Spectrometer)で確認することができる。
前記第2の層の表面粗さ(Ra)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以下が好ましく、2nm以下がより好ましい。前記第1の層の表面粗さが、10nmを超えると、通電時にリークが発生することがある。
前記表面粗さは、例えば、光学式プロファイラ(商品名:Wyco、Veeco社製)を用いて測定することができる。
なお、前記有機積層薄膜が、後述する有機EL素子に用いられる場合、前記第2の層は、発光層として好適に利用することができる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機化合物Bを含有する第2の層の上に更に該有機化合物Bを含有する層を積層する厚膜化工程、前記有機化合物Bを含有する第2の層の上に更に該有機化合物Bとは異なる種類の有機化合物を含有する層を積層する複数層積層工程を含むことが好ましい。
−厚膜化工程−
前記厚膜化工程は、前記第2の層形成工程の後、更に前記第2の層形成工程を、有機化合物Bを用いて複数回行うことで厚膜化する工程である。
前記吐出液調製工程及び前記第2の層形成工程の繰り返し回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2回以上が好ましく、2回〜50回がより好ましく、2回〜8回が特に好ましい。
−複数層積層工程−
前記複数層積層工程は、前記第2の層の上に、有機化合物Bとは異なる有機化合物を含有する層を複数層積層する工程である。
具体的には、前記有機化合物Bを含有する第2の層の上に、該有機化合物Bとは異なる種類の有機化合物C、有機化合物D、有機化合物Eなどを用いて複数回の塗布を行い、該第2の層上に、第3の層、第4の層、第5の層等の別の層を積層することができる。
前記有機化合物Cを含有する前記第3の層は、第2の吐出液を調製する第2の吐出液調製工程と、第3の層を形成する第3の層形成工程と、により形成することができる。
前記第2の吐出液は、前記有機化合物Cと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群と、を含有する。なお、前記第2の吐出液調製工程における前記第1の溶媒群は、該有機化合物Cへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満である少なくとも1種の溶媒種を含有する溶媒群であり、前記第2の吐出液調製工程における前記第2の溶媒群は、該有機化合物Bへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上である少なくとも1種の溶媒種を含有する溶媒群である。
前記有機化合物Dを含有する前記第4の層は、第3の吐出液を調製する第3の吐出液調製工程と、第4の層を形成する第4の層形成工程と、により形成することができる。
前記第3の吐出液は、前記有機化合物Dと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群と、を含有する。なお、前記第3の吐出液調製工程における前記第1の溶媒群は、該有機化合物Dへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満である少なくとも1種の溶媒種を含有する溶媒群であり、前記第3の吐出液調製工程における前記第2の溶媒群は、該有機化合物Cへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上である少なくとも1種の溶媒種を含有する溶媒群である。
前記有機化合物Eを含有する前記第5の層は、第4の吐出液を調製する第4の吐出液調製工程と、第5の層を形成する第5の層形成工程と、により形成することができる。
前記第4の吐出液は、前記有機化合物Eと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群と、を含有する。なお、前記第4の吐出液調製工程における前記第1の溶媒群は、該有機化合物Eへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満である少なくとも1種の溶媒種を含有する溶媒群であり、前記第4の吐出液調製工程における前記第2の溶媒群は、該有機化合物Dへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上である少なくとも1種の溶媒種を含有する溶媒群である。
前記有機化合物A、前記有機化合物B、前記有機化合物C、前記有機化合物D、及び前記有機化合物Eとは異なる前記有機化合物Fなどを用いて前記第6の層を形成する場合、更に第7の層、第8の層などを形成する場合も同様の方法で製膜できる。
ここで、第3の層以上の層に用いられる第1の溶媒群及び第2の溶媒群は、前記各層における有機化合物に対する溶解度と沸点の規定を満たす範囲で、前記有機化合物Bを含む吐出液と同様のものの中から適宜選択して用いることができる。
前記複数層積層工程において形成する層の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2層以上が好ましく、2層〜50層がより好ましく、2層〜8層が特に好ましい。
前記複数層を積層する場合、乾燥させた層上に積層することが好ましい。例えば、第3の層を形成する場合は、前記第2の層をスプレー塗布法により形成し、一定時間、乾燥させてから該第3の層を塗布することが好ましい。第4の層、第5の層などについても同様である。
前記乾燥する方法としては、特に制限はなく、吐出液の組成などに応じて適宜選択することができるが、温度20℃〜150℃で、1分間〜10時間乾燥する方法が好ましい。
また、乾燥は、真空乾燥であってもよいし、常圧乾燥であってもよい。
前記第2の層上に形成される複数層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2層以上が好ましく、3層〜50層がより好ましく、4層〜8層が特に好ましい。
従来の有機積層薄膜の形成方法では、溶解度の近い有機化合物を含有する層を3層以上積層することが困難であったが、本発明の有機積層薄膜の製造方法によれば、前記有機化合物Bと、前記第1の溶媒群と、前記第2の溶媒群とを含む吐出液を用いてスプレー塗布法によって第2の層を形成した後に、有機化合物Bを含有する第2の層の上に、該有機化合物Bと近い溶解性を有する前記有機化合物Bとは異なる有機化合物Cを積層して第3の層を形成しても、該第3の層の塗布時に該第2の層を溶解することなく積層できる点で有利である。
ここで、「溶解性が近い」とは、前記有機化合物Bと前記有機化合物Cの同一の溶媒類に対する溶解度が、0.1倍〜10倍の範囲にあることを意味する。
なお、ここでは、第2の層と、第3の層とを例に挙げたが、前記第1の層に含まれる有機化合物Aと、前記第2の層に含まれる有機化合物Bと溶解性が同じか、あるいは近似である場合も同様であり、第3の層と第4の層、第4の層と第5の層などを積層した場合においても同様である。
前記複数層が積層されたか否かは、例えば、D−SIMS法(Dynamic Secondary Ion−microprobe Mass Spectrometer)で確認することができる。
<有機積層薄膜>
本発明の前記有機積層薄膜の製造方法により製造された有機積層薄膜は、ヌレ性が良好で塗布面の表面平滑性に優れるものであり、有機EL素子の発光層及びキャリア輸送層に好適に利用可能である。
<<有機EL素子>>
前記有機EL素子は、前記有機積層薄膜の製造方法により製膜された第1の層と、第2の層を少なくとも有する。前記有機EL素子において、前記第1の層及び前記第2の層は、それぞれ発光層であってもよく、キャリア輸送層であってもよい。
有機EL素子を本発明の前記有機積層薄膜の製造方法で製造すると、従来のように前記キャリア輸送層及び前記発光層の形成において蒸着法を採用する必要がなく、前記キャリア輸送層及び前記発光層をスプレー塗布法によって形成することができるため、有機EL素子の製造コストを低減できる点で有利である。
前記キャリア輸送層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、などが挙げられる。
前記有機化合物層の前記発光層及び前記キャリア層以外の層としては、例えば、電極(陽極及び陰極)、基材、正孔ブロック層、電子ブロック層、保護層、封止層などが挙げられる。
前記有機化合物層の形状、大きさ、厚みなどについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
図1は、前記有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
有機EL素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に、有機化合物層が介在している。ここで、有機化合物層は、例えば、正孔輸送層4、第1発光層5、第2発光層6、第3発光層7、及び、電子輸送層8がこの順で積層されてなる層である。
ここで、有機EL素子10においては、発光層を形成する、第1発光層5、第2発光層6、及び第3発光層7が、前記吐出液調製工程で調製された吐出液をスプレー塗布法によって塗布することにより形成されている。
第1発光層5、第2発光層6、第3発光層7は、例えば、発光層を形成する材料(例えば、発光材料)が異なるなどして、それぞれ異なる第1発光色、第2発光色、及び、第3発光色を発光するように形成されている。よって、第1、第2、第3の発光色を、光の三原色である赤、緑、青から1色ずつ選択されるように設計すれば、白色光を発光する有機EL素子を作製することができる。
また、有機EL素子10は、第1発光層5と第3発光層7が同一の発光色を発光し、第2発光層6が別の発光色を発光する層構成であってもよい。
また、有機EL素子10から第3発光層7を省くことにより、発光層を2層で有する有機EL素子としてもよい。このような層構成によれば、第1、第2発光色を、赤と青とから1色ずつ選択されるように設計すればマゼンタを発光する有機EL素子を、赤と緑とから1色ずつ選択されるように設計すれば、イエローを発光する有機EL素子を、青と緑とから1色ずつ選択されるように設計すれば、シアンを発光する有機EL素子を、それぞれ作製することができる。
また、第1、第2発光色を、青とオレンジ色とから1色ずつ選択されるように設計すれば白色を発光する有機EL素子を作製することもできる。
前記有機EL素子の層構成の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。例えば、本発明の実施形態に係る有機EL素子は、所望の色を得るために、発光層を4層以上で有してもよい。
(1)陽極/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/電子輸送層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/ブロック層/電子輸送
層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/第3発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/第3発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
(8)陽極/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/第3発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(9)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/第3発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極
(10)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/第1発光層/第2発光層/第3発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(11)陽極/第1正孔輸送層/第2正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
前述のとおり、前記有機積層薄膜の製造方法によりスプレー塗布法で積層された有機薄膜は、前記有機EL素子において、キャリア輸送層及び発光層に好適に利用される。
このため、前記有機EL素子において、キャリア輸送層及び発光層以外の層(例えば、正孔注入層、ブロック層、電子注入層など)が、スプレー塗布法以外の方法(例えば、蒸着法)で形成された場合も本発明の範囲内である。
−基材−
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記発光層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましく、例えば、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、及びポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材などが挙げられる。
例えば、前記基材としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
前記基材の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、前記有機EL素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
一般的には、前記基材の形状としては、板状(基板)であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
前記基材は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、前記発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
前記基材には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けてもよい。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高周波スパッタリング法などが挙げられる。
前記基材の材料として熱可塑性を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
−陽極−
前記陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、前記有機EL素子の用途、目的等に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記陽極は、通常、透明陽極として設けられる。
前記陽極に含まれる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物などが好適に挙げられる。
前記陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが特に好ましい。
前記陽極の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。
例えば、前記陽極の材料としてITOを選択する場合には、前記陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
前記有機EL素子において、前記陽極の形成位置としては、特に制限はなく、前記有機EL素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、前記陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、前記陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
前記陽極の厚みとしては、特に制限はなく、前記陽極を形成する材料等に応じて適宜選択することができるが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
前記陽極の抵抗値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
前記陽極が透明である場合は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
−陰極−
前記陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、前記有機EL素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記陰極に含まれる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。
具体例としては、Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、前記陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01重量%〜10重量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
なお、前記陰極の材料については、特開平2−15595号、特開平5−121172号等の公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
前記陰極の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。
例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
前記陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
前記有機EL素子において、前記陰極の形成位置としては、特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、前記陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
前記陰極の厚みとしては、特に制限はなく、前記陰極を構成する材料などに応じて適宜選択することができるが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、前記陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜10nmの厚みに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層又は前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
前記正孔注入層又は前記正孔輸送層を形成する材料としては、前記有機化合物A(及びB)として記載した正孔輸送性材料などを好適に用いることができる。
これらの材料の中でも、前記正孔輸送材料としては、PTPDES(ケミプロ化成株式会社の商品名)が好ましい。
前記正孔注入層又は前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。前記正孔注入層又は前記正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物などが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153号、特開平11−111463号、特開平11−251067号、特開2000−196140号、特開2000−286054号、特開2000−315580号、特開2001−102175号、特開2001−160493号、特開2002−252085号、特開2002−56985号、特開2003−157981号、特開2003−217862号、特開2003−229278号、特開2004−342614号、特開2005−72012号、特開2005−166637号、特開2005−209643号等の公報に記載の化合物も好適に用いることができる。
これらの電子受容性ドーパントの中でも、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、又はフラーレンC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、又は2,3,5,6−テトラシアノピリジンがより好ましく、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが特に好ましい。
前記電子受容性ドーパントは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記電子受容性ドーパントの使用量としては、特に制限はなく、材料の種類などに応じて適宜選択することができるが、前記正孔輸送層材料に対して、0.01重量%〜50重量%が好ましく、0.05重量%〜20重量%がより好ましく、0.1重量%〜10重量%が特に好ましい。
前記正孔注入層又は前記正孔輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
前記正孔輸送層の厚みとしては、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
前記正孔注入層の厚みとしては、0.1nm〜200nmが好ましく、0.5nm〜100nmがより好ましく、1nm〜100nmが特に好ましい。
前記正孔注入層又は正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−発光層−
前記発光層は、電界印加時に、前記陽極、前記正孔注入層又は前記正孔輸送層から正孔を受け取り、前記陰極、後述する電子注入層又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層に含まれる材料としては、発光材料のみであってもよいが、ホスト材料と、発光材料(「発光性ドーパント」と称することがある。)の混合層とすることが好ましい。
前記発光材料としては、例えば、前記有機化合物A(及びB)として記載した発光材料などを好適に用いることができる。
前記発光層中の前記発光材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該発光層を形成する全化合物重量に対して、0.1重量%〜50重量%が好ましく、耐久性、外部量子効率の観点から1重量%〜50重量%がより好ましく、2重量%〜40重量%が特に好ましい。
前記ホスト材料としては、例えば、前記有機化合物A(及びB)として記載した電荷輸送材料などを好適に用いることができる。
前記発光層中の前記ホスト材料の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物重量に対して15重量%〜95重量%が好ましい。
前記発光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、2nm〜500nmが好ましく、これらの中でも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmがより好ましく、5nm〜100nmが更に好ましく、10nm〜50nmが特に好ましい。
前記有機EL素子の発光層は、前記有機積層薄膜の製造方法により複数の発光層を形成できるため、所望の発光色を得るべく複数種類の発光材料を用意した場合、複数種類の発光材料を同一の発光層ではなく、複数の発光層に別々に含有させることができる。よって、前記有機EL素子によれば、複数種類の発光材料が同一の発光層に含有されて、発光材料が他の発光材料の性能を劣化させることを回避できるので、色再現性を向上できるとともに、発光効率及び耐久性に関しても向上させることができるものと考えられる。
−電子輸送層、電子注入層−
前記電子注入層又は前記電子輸送層は、前記陰極又は前記陰極側から電子を受け取り前記陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子注入層又は前記電子輸送層を形成する材料としては、前記有機化合物A(及びB)として記載した電子輸送性材料などを好適に用いることができる。
これらの中でも、前記電子輸送材料としては、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(III)(Alq)が好ましい。
前記電子注入層又は前記電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。
前記電子注入層又は前記電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Li等のアルカリ金属、Mg等のアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。
前記金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、仕事関数が4.2eV以下の金属が好ましく、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、Ybなどが挙げられる。
また、前記還元性有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153号、特開2000−196140号、特開2003−68468号、特開2003−229278号、特開2004−342614号等の公報に記載の材料を用いることができる。
これらの電子供与性ドーパントは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記電子供与性ドーパントの使用量としては、特に制限はなく、材料の種類などに応じて適宜選択することができるが、前記電子輸送層材料に対して、0.1重量%〜99重量%が好ましく、1.0重量%〜80重量%がより好ましく、2.0重量%〜70重量%が特に好ましい。
前記電子注入層又は電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚みとしては、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
また、前記電子注入層の厚みとしては、0.1nm〜200nmが好ましく、0.2nm〜100nmがより好ましく、0.5nm〜50nmが特に好ましい。
前記電子注入層又は電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−正孔ブロック層−
前記正孔ブロック層は、前記陽極側から前記発光層に輸送された正孔が、前記陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。前記有機EL素子は、前記発光層と前記陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
前記正孔ブロック層に含まれる化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電子輸送材料として挙げたものなどが挙げられる。
前記正孔ブロック層に用いられる化合物の具体例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム(Balq)等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体などが挙げられる。
前記正孔ブロック層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
前記正孔ブロック層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−電子ブロック層−
前記電子ブロック層は、前記陰極側から前記発光層に輸送された電子が、前記陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。前記有機EL素子において、前記発光層と前記陽極側で隣接する有機化合物層として、前記電子ブロック層を設けることができる。
前記電子ブロック層に含まれる化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記正孔輸送材料として挙げたものなどが挙げられる。
前記電子ブロック層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
前記正孔ブロック層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
−保護層−
前記有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
−封止−
前記有機EL素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。また、封止容器と前記有機EL素子との間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、及びシリコーンオイル類が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、SiO、SiN、Al等の無機膜封止や樹脂封止層にて封止する方法も好適に用いられる。
−封止接着剤−
前記有機EL素子に用いられる封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。これらの中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が特に好ましい。長瀬ケムテック株式会社製のXNR5516などが挙げられる。
前記封止接着剤中のポリマー組成、濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記封止接着剤の材料にフィラーを添加することも好ましい。
前記封止接着剤に添加されているフィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、SiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)又はSiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。前記フィラーの添加により、前記封止接着剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
前記封止接着剤の塗布厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜1mmが好ましい。前記塗布厚みが1μm未満であると、前記封止接着剤を均一に塗れなくなることがあり、1mmを超えると、水分が侵入する道筋が広くなることがある。
前記封止接着剤を用いて水分や酸素の侵入を防止する方法としては、例えば、前記封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2の基板を重ねて、硬化させる方法などが挙げられる
−駆動−
前記有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
前記有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、特開平6−301355号、特開平5−29080号、特開平7−134558号、特開平8−234685号、特開平8−241047号等の公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、米国特許6023308号等の各明細書などに記載の駆動方法を適用することができる。
前記有機EL素子は、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば、微細な凹凸パターンを形成する)、基板、電極層、及び有機層の屈折率を制御する、基板、電極層、及び有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
前記有機EL素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆるトップエミッション方式であってもよく、基板側から発光を取り出す、いわゆるボトムエミッション方式であってもよい。
前記有機EL素子は、共振器構造を有してもよい。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第1の態様の場合の計算式は、特開平9−180883号公報に記載されている。第2の態様の場合の計算式は、特開2004−127795号公報に記載されている。
有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33頁〜37頁に記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機EL素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機EL素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
また、上記方法により得られる異なる発光色の有機EL素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源などである。
<応用>
本発明の有機積層薄膜の製造方法は、前記第1の層を溶解させることなく、該第1の層と溶解度の近い有機材料を3層以上積層することができ、材料の利用効率がよく、タクトタイムが短く、製膜レートに優れ、特殊な装置を用いることなく低コストであるため、有機EL素子の製造に好適に利用可能である。
本発明の有機積層薄膜の製造方法を利用して製造された有機EL素子は、ヌレ性が良好で塗布面の表面平滑性に優れ、発光効率及び耐久性が高く、駆動電圧が低く、低コストで製造できるため、デジタルスチルカメラのディスプレイ、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い分野で応用される。
なお、本発明の有機積層薄膜の製造方法は、表面平滑性を向上させることができるため、積層膜の製造だけでなく、表面平滑性に優れる単層膜の製膜技術としても応用することができる。
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<有機積層薄膜、有機EL素子の作製>
−陽極−
酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)層を有するガラス基板(ジオマテック株式会社製、表面抵抗10Ω/□、サイズ:0.5mm厚み、2.5cm角)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
−正孔輸送層−
正孔輸送材料PTPDES(ケミプロ化成株式会社製)の2.0重量%シクロヘキサノン溶液を調製し、前記陽極(ITO)上に、スピンコート(2,500rpm、20sec)を行うことで、厚み40nmの正孔輸送層(第1の層)を製膜した。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%テトラヒドロフラン(THF)、並びに、第2の溶媒群としての5重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、35重量%ジイソプロピルケトン(DIPK)、1.25重量%デカン、及び8.75重量%オクタンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としての4,4’−ビス(9−カルバゾイル)−ビフェニル(CBP)及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液1を調製した。
スプレー装置(商品名:STS−200、YDメカトロニクス社製)を用いて、吐出液流量(4mL/分間)、ノズル移動速度(100mm/秒間)、ノズル−ワーク距離(70mm)、Nキャリアガス流量(3L/分間)の条件にて、正孔輸送層上に前記吐出液1をスプレー塗布し、厚み40nmの発光層(第2の層)を製膜した。
なお、スプレー塗布する際のノズル外部の雰囲気は、温度25℃、常圧であった。
−正孔ブロック層−
前記発光層上に、正孔ブロック層として、ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラートアルミニウム(III)(Balq)を、厚みが15nmとなる条件で真空蒸着製膜した。
−電子輸送層−
前記正孔ブロック層上に、電子輸送層として、Alqを、厚みが20nmとなる条件で真空製膜した。
−電子注入層−
前記電子輸送層上に、電子注入層として、フッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなる条件で真空製膜した。
−陰極−
前記電子注入層上に、陰極として、アルミニウム(Al)を、厚みが100nmとなる条件で真空製膜した。
作製した積層体を、Nガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の封止接着剤(商品名:XNR5516、長瀬ケムテック株式会社製)を用いて封止することにより、実施例1の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例1の層構成は、陽極/正孔輸送層(第1の層)/発光層(第2の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
(試験例1:溶媒揮発の評価)
吐出液を構成する溶媒が、吐出後、正孔輸送層へ着弾するまでに、揮発する程度を、感油紙を用いて評価した。
即ち、吐出液をスプレーするノズルの直下に、前記第1の溶媒群又は第2の溶媒群が付着すると着色される感油紙(スイス・Syngenta社製)を設置し、該感油紙の着色の程度を目視にて確認した。このときの感油紙とノズルとの距離(ノズルワーク距離)は、実施例1の発光層の形成における正孔輸送層とノズルとの距離を表す。
結果を図2A及び図2Bに示す。図2A及び図2Bは、前記溶媒揮発の評価結果を、ノズルワーク距離(mm)にしたがって横に並べ、吐出液流量(mL/分間)にしたがって縦に並べた図である。この結果より、ノズルワーク距離が長いほど、また吐出液流量が少ないほど着色が少なく、図2A及び図2Bより、第1の溶媒群であるTHFは概ね揮発するが、第2の溶媒群であるジイソブチルケトンは概ね着弾する条件が存在することが確認された。
このことは、有機化合物Bと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群と、を少なくとも含有する吐出液において、前記第1の溶媒群が、該有機化合物Bを溶解し低沸点(沸点が100℃未満)であり、前記第2の溶媒群が、有機化合物Aを溶解しなく高沸点(沸点が100℃以上)である場合、該吐出液を吐出した後に、前記第1の溶媒群は揮発するが、前記第2の溶媒群は揮発せず、結果として前記第2の溶媒群と前記有機化合物Bが、前記有機化合物Aを溶解することなく該有機化合物Aを含む第1の層上に着弾するという、本発明のコンセプトが実現可能であることを証明する結果である。
<有機積層薄膜の構造評価>
実施例1の有機EL素子の発光層(有機積層薄膜)の構造及び表面粗さを下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
−積層構造の評価−
実施例1の有機EL素子の作製において、発光層を製膜した時点で、D−SIMS法(Dynamic Secondary Ion−microprobe Mass Spectrometer)により積層構造を確認し、下記評価基準に基づいて評価した。
なお、一次イオン種はCs、一次イオンエネルギ−は3keV、二次イオン極性はNegativeとした。評価にはITO蒸着層がない領域を使用した。
[評価基準]
○:積層構造が形成された
×:第1の層が溶解し、積層構造を形成することができなかった
実施例1のD−SIMS法による結果を図3に示す。有機EL素子の表面から基板方向へエッチングを行っていくにつれて、F元素が検出されS元素が検出されない領域、F元素が検出されずS元素が検出される領域、Si元素が検出される領域に分かれた。F元素のピークはFirpic由来、S元素のピークはPTPDES由来、Si元素のピークはガラス由来であることから、実施例1で作製した有機EL素子は、表面から順に、Firpic層、PTPDES層、ガラス基板の順で積層構造となっていることが分かった。
−表面粗さの評価−
実施例1の有機EL素子の作製において、発光層を製膜した時点で、光学式プロファイラ(商品名:Wyco、Veeco社製)を用いて表面粗さ(面状(Ra nm))を評価した。評価に用いた面積は、1.8mm×2.5mmの領域であった。
なお、実施例1において、発光層形成前の正孔輸送層についても、前記発光層と同様の方法で表面粗さを評価した。
発光層の光学式プロファイラの結果を図4Aに、正孔輸送層の光学式プロファイラの測定結果を図4Bに示す。図4A及び図4Bより、発光層は正孔輸送層に均一に塗布され、表面平滑性に優れるものであることがわかった。
<有機EL素子の特性の評価>
実施例1の有機EL素子の特性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
−発光効率−
作製した有機EL素子をソ−スメジャ−ユニット2400型(KEITHLEY製)を用いて、直流電圧を発光素子に印加し、輝度1,000cd/mに発光させた。その発光スペクトルと光量とを輝度計(商品名:SR−3、トプコン社製)を用いて測定し、測定した発光スペクトル及び光量と、測定時の電流とから外部量子効率(発光率(Cd/A))を計算した。
−駆動電圧−
作製した有機EL素子をソ−スメジャ−ユニット2400型(KEITHLEY製)を用いて、直流電圧を発光素子に印加し、発光輝度1,000cd/mに到達する電圧を駆動電圧(V)として評価した。
−耐久性−
作製した有機EL素子をソ−スメジャーユニット2400型(KEITHLEY製)を用いて、直流電圧を発光素子に印加し、初期輝度1,000cd/mの条件で連続駆動試験を行い、輝度が半減した時間(輝度が500cd/mとなるまでの時間)を耐久時間(時間)として求めた。
(実施例2)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例2の層構成は、陽極/正孔輸送層(第1の層)/発光層(第2の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
実施例2について、実施例1と同様の方法で有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行った結果を表1に示す。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%THF、並びに、第2の溶媒群としての10重量%シクロヘキサノン、及び40重量%トルエンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液2を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
(実施例3)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例3の層構成は、陽極/正孔輸送層(第1の層)/発光層(第2の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
実施例3について、実施例1と同様の方法で有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行った結果を表1に示す。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%THF、並びに、第2の溶媒群としての25重量%トルエン、及び25重量%p−キシレンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液3を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
(実施例4)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例4の層構成は、陽極/正孔輸送層(第1の層)/発光層(第2の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
実施例4について、実施例1と同様の方法で有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行った結果を表1に示す。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%クロロホルム、並びに、第2の溶媒群としての5重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、35重量%ジイソプロピルケトン(DIPK)、1.25重量%デカン、及び8.75重量%オクタンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液4を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
(実施例5)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例5の層構成は、陽極/正孔輸送層(第1の層)/発光層(第2の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
実施例5について、実施例1と同様の方法で有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行った結果を表2に示す。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%THF、並びに、第2の溶媒群としての10重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、及び40重量%オクタンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液5を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液5を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
(実施例6)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例6の層構成は、陽極/正孔輸送層(第1の層)/発光層(第2の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
実施例6について、実施例1と同様の方法で有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行った結果を表2に示す。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%THF、並びに、第2の溶媒群としての50重量%ジイソブチルケトン(DIBK)を混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液6を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液6を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
(実施例7)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例7の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例7の層構成は、陽極/正孔輸送層(第1の層)/発光層(第2の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
実施例7について、実施例1と同様の方法で有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行った結果を表2に示す。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%THF、並びに、第2の溶媒群としての3.75重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、26.25重量%ジイソプロピルケトン(DIPK)、1.25重量%デカン、8.75重量%オクタン、1.25重量%メシチレン、及び8.75重量%トルエンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液7を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液7を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
(実施例8)
実施例1において、正孔輸送層(第1の層)の上に第2の層として第2の正孔輸送層を以下の方法で製膜し、該第2の正孔輸送層の上に発光層(実施例1における第2の層)を第3の層として製膜したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例8の有機EL素子を作製した。
即ち、実施例8の層構成は、陽極/第1の正孔輸送層(第1の層)/第2の正孔輸送層(第2の層)/発光層(第3の層)/正孔ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極となる。
実施例8について、実施例1と同様の方法で有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行った結果を表2に示す。
−第2の正孔輸送層−
第1の溶媒群としての50重量%テトラヒドロフラン(THF)、並びに、第2の溶媒群としての5重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、35重量%ジイソプロピルケトン(DIPK)、1.25重量%デカン、及び8.75重量%オクタンを混合した溶媒に対して、正孔輸送材料N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPD)が1.0重量%となるように溶解し、吐出液8を調製した。
スプレー装置(商品名:STS−200、YDメカトロニクス社製)を用いて、吐出液流量(2mL/分間)、ノズル移動速度(100mm/秒間)、ノズル−ワーク距離(50mm)、Nキャリアガス流量(3L/分間)の条件にて、正孔輸送層上に前記吐出液8をスプレー塗布し、厚み10nmの第2の正孔輸送層(第2の層)を製膜した。
なお、スプレー塗布する際のノズル外部の雰囲気は、温度25℃、常圧であった。
(比較例1)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の有機EL素子を作製した。
なお、比較例1は、正孔輸送層(第1の層)上に発光層(第2の層)を積層する際、正孔輸送層が溶解してしまい、有機EL素子の特性の評価を行うことができなかった。下記表3において「−」で示した。
−発光層−
第1の溶媒群としての100重量%THFに対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液9を調製した。
吐出液9を用いて正孔輸送層上に、スピンコート(2,500rpm、20sec)を行うことで、厚み40nmの発光層を製膜した。
(比較例2)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2の有機EL素子を作製した。
なお、比較例2は、正孔輸送層(第1の層)上に発光層(第2の層)を積層する際、正孔輸送層が溶解してしまい、有機EL素子の特性の評価を行うことができなかった。下記表3において「−」で示した。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%THF、並びに、第2の溶媒群としての5重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、35重量%ジイソプロピルケトン(DIPK)、1.25重量%デカン、及び8.75重量%オクタンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液10を調製した。
吐出液10を用いて正孔輸送層上に、スピンコート(2,500rpm、20sec)を行うことで、厚み40nmの発光層を製膜した。
(比較例3)
発光層の製膜に用いる溶液を以下の方法で調製した。
なお、比較例3は、下記に示すとおり、発光層を形成する吐出液を調製することができなかったため、有機積層薄膜の構造評価及び有機EL素子の特性の評価を行うことができなかった。下記表3において「−」で示した。
−発光層−
第2の溶媒群としての10重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、70重量%ジイソプロピルケトン(DIPK)、2.5重量%デカン、及び17.5重量%オクタンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように混合し、吐出液11を調製した。
この吐出液11は、前記ホスト材料を溶解することができず、発光層を形成する吐出液として使用することができなかった。
(比較例4)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4の有機EL素子を作製した。
なお、比較例4は、正孔輸送層(第1の層)上に発光層(第2の層)を積層する際、正孔輸送層が溶解してしまい、有機EL素子の特性の評価を行うことができなかった。下記表3において「−」で示した。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%シクロヘキサノン、並びに、第2の溶媒群としての5重量%ジイソブチルケトン(DIBK)、35重量%ジイソプロピルケトン(DIPK)、1.25重量%デカン、及び8.75重量%オクタンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液12を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液12を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
(比較例5)
実施例1において、発光層を以下の方法で製膜したこと以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5の有機EL素子を作製した。
なお、比較例5は、正孔輸送層(第1の層)上に発光層(第2の層)を積層する際、正孔輸送層が溶解してしまい、有機EL素子の特性の評価を行うことができなかった。下記表3において「−」で示した。
−発光層−
第1の溶媒群としての50重量%THF、並びに、第2の溶媒群としての40重量%メチルエチルケトン(MEK)、及び10重量%ヘキサンを混合した溶媒に対して、ホスト材料としてのCBP及び青色燐光材料としてのFirpic(CBP:Firpic=85:15(重量比))が1.0重量%となるように溶解し、吐出液13を調製した。
実施例1において、吐出液1に代えて、吐出液13を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で厚み40nmの発光層を製膜した。
本発明の有機積層薄膜の製造方法は、前記第1の層を溶解させることなく、該第1の層と溶解度の近い有機材料を3層以上積層することができ、材料の利用効率がよく、タクトタイムが短く、製膜レートに優れ、特殊な装置を用いることなく低コストであるため、有機EL素子の製造に好適に利用可能である。
本発明の有機積層薄膜の製造方法を利用して製造された有機EL素子は、層混合のない積層構造が実現されており、塗布面の表面平滑性に優れていることから、発光効率及び耐久性が高く、駆動電圧が低く、低コストで製造できるため、デジタルスチルカメラのディスプレイ、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い分野で応用される。
なお、本発明の有機積層薄膜の製造方法は、表面平滑性を向上させることができるため、積層膜の製造だけでなく、表面平滑性に優れる単層膜の製膜技術としても応用することができる。
2 基板
3 陽極
4 正孔輸送層
5 第1発光層
6 第2発光層
7 第3発光層
8 電子輸送層
9 陰極
10 有機EL素子

Claims (11)

  1. 有機薄膜上に有機薄膜を積層した有機積層薄膜の製造方法であって、
    有機化合物Aを含有する第1の層を形成する第1の層形成工程と、
    有機化合物Bと、第1の溶媒群と、第2の溶媒群と、を少なくとも含有する吐出液を調製する吐出液調製工程と、
    前記吐出液を液滴状に吐出させて該吐出液から前記第1の溶媒群を揮発させつつ前記第1の層へ着弾させて第2の層を形成する第2の層形成工程と、
    を含み、
    前記吐出液調製工程における前記第1の溶媒群が、前記有機化合物Bへの溶解度が0.5重量%以上であり沸点が100℃未満である少なくとも1種の溶媒種を含有し、
    前記吐出液調製工程における前記第2の溶媒群が、前記有機化合物Aへの溶解度が0.1重量%以下であり沸点が100℃以上である少なくとも1種の溶媒種を含有することを特徴とする有機積層薄膜の製造方法。
  2. 吐出液を液滴状に吐出させて該吐出液から第1の溶媒群を揮発させつつ第1の層へ着弾させる方法がスプレー塗布法である請求項1に記載の有機積層薄膜の製造方法。
  3. 第2の溶媒群が、アルカン類、ケトン類、シクロアルカン類、アリール類、及び環状ケトン類の中から選択される少なくとも2種類の溶媒類を含有する請求項1から2のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
  4. 第2の溶媒群における溶媒類同士の沸点又は平均沸点の差が10℃以内である請求項3に記載の有機積層薄膜の製造方法。
  5. 第1の溶媒群が、テトラヒドロフランを含む請求項1から4のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
  6. 第2の溶媒群が、ケトン類とアルカン類とを含む請求項3から5のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
  7. 第2の溶媒群が、アリ−ル類と環状ケトン類とを含む請求項3から6のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
  8. 有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層及びキャリア輸送層のいずれかに用いられる有機積層薄膜を製造する請求項1から7のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
  9. 第2の層形成工程が、吐出液をノズルからキャリアガスにより液滴状に吐出し、かつ該ノズルを移動させながら第2の層を形成する工程であり、
    前記ノズルと第1の層の距離を測定し、該ノズルに対する該第1の層と同じ距離に感油紙を設置し、
    前記吐出液の流量、前記ノズルの移動速度、前記キャリアガスの流量、前記ノズルの外部の温度、前記ノズルの外部の圧力を、前記第2の層を形成する際と同じ条件として、第1の溶媒群と第2の溶媒群とをそれぞれ吐出して着色させた前記感油紙の発色濃度を、それぞれ分光光度計で測定した反射率で検出した場合に、下記式1で算出した前記第1の溶媒群が付着した前記感油紙の発色濃度D1と、下記式2で算出した前記第2の溶媒群が付着した前記感油紙の発色濃度とD2との比(D2/D1)が、1.2以上となる条件で前記第2の層を形成する請求項1から8のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
    D1=log10(1/R1) ・・・(式1)
    D2=log10(1/R2) ・・・(式2)
    ただし、前記式1において、R1は、前記第1の溶媒群が付着した感油紙の反射率を表し、前記式2において、R2は、前記第2の溶媒群が付着した感油紙の反射率を表す。
  10. 第2の層形成工程の後、更に第2の層形成工程を繰り返し行い第2の層を厚膜化する厚膜化工程を含む請求項1から9のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
  11. 第2の層の上に、有機化合物Bとは異なる有機化合物を含有する層を複数層積層する複数層積層工程を更に含む請求項1から10のいずれかに記載の有機積層薄膜の製造方法。
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