JP2012164440A - 鉛蓄電池用極板の製造方法 - Google Patents

鉛蓄電池用極板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鉛蓄電池用極板の熟成不良を低減し、鉛蓄電池の性能の向上に寄与する。
【解決手段】鉛を主成分とする鉛合金製の基板11にペースト状活物質PTを充填した鉛蓄電池用極板を製造し、あるいは、鉛を主成分とする鉛合金製の基板11にペースト状活物質PTを充填し、その両面にペースト紙62,63を貼り付けた鉛蓄電池用極板を製造し、次いで、予熱乾燥炉14を一定速度で通過させて予熱乾燥を施し、さらに熟成、乾燥を施す鉛蓄電池用極板の製造方法において、予熱乾燥直後のペースト状活物質PTの表面あるいはペースト紙62の表面に計測用光LMと参照用光LRを含む近赤外光を照射し、その反射光を受光して、受光光量を計測し、あらかじめ記憶した受光光量とペースト状活物質の含水率との関係に基づく検量線から、前記予熱乾燥直後のペースト状活物質の内部の含水率を算出し、算出した含水率が所定範囲内に収まるように、予熱乾燥炉14における乾燥温度を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉛蓄電池用極板の製造方法に関する。
従来、鉛蓄電池用極板の製造においては、酸化鉛と金属鉛からなる鉛紛と水、希硫酸を混練したもの、またはそれらに繊維などの補強剤を混練したもの(以下、ペースト状活物質という。)を鉛合金製の基板に充填し、その後、予熱乾燥、熟成、乾燥を行い未化成のペースト状活物質式極板を製造し、正負の両極板としていた。
そして、熟成、乾燥工程を経て製造された未化成の正負極板の間にセパレータを挟んで交互に積層することにより極板群を形成し、この極板群を電槽に収納し、この電槽に注液口を設けた蓋を熱溶着して封口し、この鉛蓄電池内に電解液である希硫酸を注液して、通電し電槽化成を行い鉛蓄電池が製造される。
さて、鉛蓄電池用極板の製造工程において、基板に充填直後(予熱乾燥前)のペースト状活物質の含水率は12〜16%程度であり、加圧ローラ等によって余分な水分を除去するとともに、ペースト状活物質の表面を整える。
そして、ペースト状活物質を充填した直後に極板表面を予熱乾燥炉により予熱乾燥し、ペースト状活物質中の含水率を10%程度としていた。
これは、ペースト状活物質に過剰な水分が含まれる条件で、ペースト状活物質が充填された基板(以下、充填済基板という。)同士を接触させた状態で予熱乾燥後の後工程である熟成を行うと、充填済基板同士が貼り付いてしまったり、ペースト状活物質の表面にひびが入ってしまったりする可能性が高くなるからである。また、電池製造工程における極板の取扱性の向上や電池使用中の耐ショート性の向上を目的として、予熱乾燥前のペースト状活物質の表面に直後の工程でパルプ等セルロースに代表される多糖類系の材料、若しくは、ポリオレフィン繊維の不織布などの薄膜から成るペースト紙を貼り付けるタイプの極板を製造する場合においても貼り付けたペースト紙が剥がれやすくなってしまう可能性が高くなるからである。
いずれの場合でも、予熱乾燥工程後の工程で、製造装置の稼働率や、鉛蓄電池極板の歩留り率を低下させたり、製造された鉛蓄電池の性能に影響を与えたりすることが知られている。
このため、従来、含水率を計測しながら、基板に充填されたペースト状活物質全体の含水率を制御する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平1−149364号公報
上記従来のペースト状活物質の含水率の制御においては、ペースト状活物質内部の含水率を単純に制御できれば、製造装置の稼働率や、鉛蓄電池用極板の歩留り率を向上させたり、製造された鉛蓄電池の性能の向上がなされたりするものと考えられていた。
しかしながら、ペースト状活物質内部の含水率の計測または検出方法については、従来は破壊的な計測を用いる他はなく、破壊操作を伴うために抜取り検査を行わなければならなかった。このため、抜取り、破壊、計測の操作全体を終了するまでの時間が必要であり、一般的な計測を行うと計測時間として1分から数分以上必要である。
したがって、例えば、短時間(例えば、数秒)の計測によって得られた含水率を用いて関連装置の迅速な電気的制御を行うことや、製造した鉛蓄電池用極板の内部の含水率を全数計測することは不可能であった。例えば自動化された鉛蓄電池用極板の製造装置では1秒間に数枚以上の製造を行う場合があり、内部の含水率を計測し、それらの計測値に基づいて、それらをフィードバックさせ、不良品が発生する状態から、それらが発生しない状態へ復帰させる時間の長さは、計測時間の長さに比例し、ひいてはその間に発生する不良品数に比例することから、計測時間を長くても数秒程度に短縮することが要求される。さらに抜取り検査より精度の高い全枚検査を実現するためには非破壊非接触の計測方法を用いることが要求される。
さらには、基板に充填されたペーストに同程度の熱量を与えながら予熱乾燥炉の雰囲気をより高温にし、充填済基板を高速で予熱乾燥させた場合には、予熱乾燥直後のペースト状活物質の表面と内部とで含水率に大きく差が出てしまうことがあり、ペースト状活物質内部の含水率を制御したとしてもペースト状活物質の表面(表面の含水率をWSとする)では、乾燥し過ぎたり、乾燥不足になったりして、必ずしもペースト状活物質のひび割れあるいは貼り付けられたペースト紙の剥離等を防止することに有効ではなく、ひいては、製造装置の稼働率や、鉛蓄電池用極板の歩留り率の向上や、製造された鉛蓄電池の性能の向上に必ずしも良い結果をもたらさないことがわかった。
また、ペースト状活物質を充填する環境の温度(気温)やペースト状活物質の練り上がりから充填までに要した時間により、予熱乾燥前のペースト状活物質の温度が変動し、ペースト状活物質内部の含水率が同一であっても、ペースト状活物質表面の含水率が大きく変動することもあり、このような場合にも同様の問題が生じ得る。
また、前記予熱乾燥後のペースト状活物質の表面に直後の工程でセルロースなどのペースト紙を貼り付けるタイプの極板を製造する場合においては、表面に貼り付けた薄膜の水分とペースト状活物質の間には違いがあり、表面に貼り付けたペースト紙の表面の水分を計測することも要求される。
これらペースト状活物質の表面の含水率と内部の含水率の差は、充填後もしくはその後に続く予熱乾燥後十分な時間が経過すると平衡化し解消する傾向にあり、充填後もしくはその後に続く予熱乾燥後十分長い時間を経過すれば表面の含水率と内部の含水率はよく一致するので、計測時間を充填後もしくはその後に続く予熱乾燥後十分遅くすれば、表面部分の含水率と内部の含水率はよく一致する。
また、予熱乾燥後すぐの平衡に達していない状態でも、計測条件、例えば予熱乾燥後の計測タイミングを一律にすることにより、製品ごと再現性のある法則を得ることが可能で、近似的に表面の含水率WSから内部の含水率を推定することは可能で、実績のある内部の水分を計測していた従来法とよく対応づけられた制御も可能である。
非破壊非接触計測で、かつ短い計測時間で鉛蓄電池極板表面の含水率を計測する装置を実現し、同時に表面の水分から正しく内部の含水率を推定できる計測方法が実現し、これらを用いた制御方法を確立すれば、これらの要求は全て一度に満たされ、鉛蓄電池用極板の熟成不良を低減することが実現する。
そこで、本発明の目的は、鉛蓄電池用極板の熟成不良を低減し、ひいては、鉛蓄電池の性能の向上に寄与することが可能な鉛蓄電池用極板の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、鉛を主成分とする鉛合金の基板にペースト状活物質を充填した鉛蓄電池用極板を作製し、あるいは、鉛を主成分とする鉛合金の基板にペースト状活物質を充填し、その両面にペースト紙を貼り付けた鉛蓄電池用極板を作製し、次いで、乾燥温度を制御可能な予熱乾燥炉により予熱乾燥を施し、さらに熟成、乾燥を施す鉛蓄電池用極板の製造方法において、前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面に近赤外光を照射し、その反射光を受光して、受光光量を計測し、あらかじめ記憶した受光光量と前記ペースト状活物質の含水率との関係に基づいて、前記ペースト状活物質の含水率を算出し、算出した含水率が所定範囲内に収まるように、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度を制御する、ことを特徴とする。
なお、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度の制御は、算出した内部の含水率WRが所定含水率範囲の最大含水率を超えている場合には、これを減少させるように予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号により予熱乾燥炉の設定温度または設定出力を上げる制御を行い、一方、算出した内部の含水率WRが所定含水率範囲の最小含水率よりも低い場合には、これを増加させるように予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号により予熱乾燥炉の設定温度または設定出力を下げる制御を行い、再度内部の含水率WRの変化を計測して、設定温度または設定出力を再調整し、必要に応じてこの動作を繰り返すことによって制御する、ことを特徴とする。
上記構成によれば、予熱乾燥後の熟成および乾燥工程に移行させるに際し、ペースト状活物質の表面あるいはペースト紙の表面の含水率WSを安定させてから移行させることができ、良好な熟成が行え、ひいては、鉛蓄電池の性能の向上が図れる。
この場合において、直接的に計測しているのは表面の含水率WSであるが、条件を定めれば表面の含水率WSとペースト状活物質内部の含水率WRには関連性が生じ、表面の含水率WSからペースト状活物質内部の含水率WRを推定すれば、従来の計測方法を内包することができる。
しかし、極板の厚みによって、前記表面の含水率WSと前記内部の含水率WRとの関係は異なってしまう。そこで、予熱乾燥前(充填直後)のペースト状活物質の内部の含水率WRも算出し、表面の含水率WSの結果も合わせて、より精度良く極板の乾燥具合を調整することが可能となる。また、予熱乾燥前の計測結果を受けて乾燥具合を予測可能とでき、極板が予熱乾燥炉を通過する前に乾燥条件を最適化することも可能となり、歩留りを維持しつつ、極板の乾燥状態を安定化させることができる。
また、前記ペースト状活物質充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面に計測用光と参照用光を含む近赤外光を照射し、その反射光を受光して、第2の受光光量を計測し、あらかじめ記憶した第2の受光光量と前記ペースト状活物質の含水率との関係に基づく検量線から、前記ペースト状活物質充填直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率を算出し、算出した前記充填直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率と、算出した前記予熱乾燥直後のペースト状活物質の内部の含水率との関係に基づく予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率が所定範囲内に収まるように、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度を制御するようにしても良い。
上記構成によれば、予熱乾燥直後のペースト状活物質の内部の含水率だけではなく、充填直後のペースト状活物質の内部の含水率も考慮して、予熱乾燥炉における乾燥温度を制御することとなり、より確実、かつ、迅速に含水率を制御することが可能となる。
また、前記ペースト状活物質充填直後のペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の含水率を算出するとともに、ペースト状活物質充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の温度を計測し、前記ペースト状活物質の充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の含水率、前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質表面あるいは前記ペースト紙の表面の含水率に加えて、前記ペースト状活物質の充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の温度、および基板または極板の厚みの関係に基づいて予熱乾燥炉の炉内温度を算出し、前記基板または極板の厚みを考慮して、算出した余熱乾燥炉の炉内温度をフィードバックして、前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率が所定範囲内に収まるように、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度を制御するようにしても良い。
上記構成によれば、より精度良く極板の乾燥具合を調整することができる。また、ペースト状活物質充填直後の含水率の計測結果を受けて乾燥具合を予測可能となり、極板予熱乾燥炉を通過する前に乾燥条件を最適化でき、歩留りを維持しつつ、極板の乾燥状態を安定化させることができる。
この場合において、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度の制御は、算出した含水率が所定含水率範囲の最大含水率を超えている場合には、予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号により予熱乾燥炉の設定温度または設定出力を上げる制御を行い、一方、算出した含水率が所定含水率範囲の最小含水率よりも低い場合には、予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号により設定温度または設定出力を下げる制御を行うようにしてもよい。
上記構成によれば、上記制御工程により、製造された極板を不良品と判断して次工程に搬送するのを中止することもできる。この場合は、上記制御工程により、製造された極板について、算出された内部含水率WRが、所定含水率範囲に含まれようになるまで次工程への搬送を中止することが望ましい。これにより、不良品発生を抑えることができる。
この場合において、前記近赤外光を照射して計測を行う際に、前記近赤外光を受光する受光部および表面の含水率WSの計測対象領域に乾燥空気を吹き付けるようにしてもよい。
上記構成によれば、予熱乾燥により、ペースト状活物質の表面あるいはペースト紙の表面の温度が高いことによって生じる、これらの表面からの蒸気および光ファイバ端面に生じる結露などが、計測値に加算されることによって与えられる、これら表面の含水率WSの計測への影響をなくし、確実にペースト状活物質の表面あるいはペースト紙の表面の含水率WSを計測することができる。
また、前記近赤外光は、水のν(OH)とδ(HOH)の結合振動に対応する1.94μm(5150cm-1)付近に最大値を持つ吸収バンドの範囲、すなわち波長1.85〜2.1μmの波長帯域に属する波長を有し、水分子による吸光度の高い計測用光と、波長1.6〜1.82μmの波長帯域に属する波長を有し、水分子による吸光度の低い参照用光と、を含むようにしてもよい。
前記近赤外光の構成のうち、さらに好ましい計測用光は最も分子吸光係数の大きい波長1.93〜1.95μmに波長帯域に属する波長を有するものであり、さらに好ましい参照用光は、ベースラインの波長領域による変動を最小にするために計測用光の波長1.85〜2.1μmの波長帯域に近い1.75〜1.82μmに属する波長を有するものである。
これらの波長を用いることで、環境光などの周囲環境におけるノイズの影響や、水以外の成分の影響を受けることなく確実にペースト状活物質の表面あるいはペースト紙の表面の含水率WSを計測することができる。
また、前記予熱乾燥直後のペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の含水率は8〜10%となるように、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度を制御することが好ましい。
表面の含水率が8%より小さいと、予熱乾燥工程の後に行われる塾生乾燥工程において、熟成反応が十分に進行しないからである。一方、表面の含水率が10%より大きいと、熟成乾燥工程後でも乾燥が完了しなかったり、場合によっては、極板同士を重ね合わせた状態で熟成乾燥した場合に、極板同士が固着してしまったりするからである。
また、予熱乾燥温度は150〜250℃とすることが好ましい。
予熱乾燥温度が150℃未満であると、予熱乾燥に要する時間が長くなって、生産性が低下するからである。一方、予熱乾燥温度が250℃より高いと、比較的短い時間に高温に制御された乾燥炉に入れられるために、極板の表面には微小クラックが発生しやすくなり、さらには、基板温度が活物質ペースト温度より高くなり過ぎると基板と活物質との界面に水分蒸発の経路ができ、密着性低下、割れや剥がれが生じるからである。
本発明によれば、鉛蓄電池用極板の熟成不良発生を抑制し、極板製造の歩留りが向上し、極板製造における不良品発生率を低減し、ひいては、鉛蓄電池の性能の向上に寄与できるという効果を奏する。
第1実施形態の鉛蓄電池用極板の製造装置の一部の説明図である。 ペースト充填機の概要構成説明図である。 予熱乾燥炉の概要構成説明図である。 プローブ部を計測対象の充填済基板側から見た場合の概要説明図である。 検量線の一例の説明図である。 含水率検出装置およびブロワ装置の概要説明ブロック図である。 第1実施形態の動作フローチャートである。 搬送装置により搬送されている充填済基板をプローブ部側から見た図である。 第2実施形態の鉛蓄電池用極板の製造装置の一部の説明図である。 第2実施形態の動作フローチャートである。 設定温度とWR1,WR2の関係を示す図である。 第3実施形態の鉛蓄電池用極板の製造装置の一部の説明図である。 正極板製造時の実施例と比較例の比較結果の説明図である。 負極板製造時の実施例と比較例の比較結果の説明図である。
次に、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の鉛蓄電池用極板の製造装置の一部の説明図である。
鉛蓄電池用極板の製造装置10は、鉛を主成分とする鉛合金製の基板11を搬送ベルト12Aにより搬送する搬送装置12と、搬送装置12により搬送されている基板11にペースト状活物質PTを充填して充填済基板11Aとするペースト充填機13と、充填済基板11Aを加熱して予熱乾燥を行う予熱乾燥炉14と、プローブ部15A、本体部15B及びプローブ部15Aと本体部15Bとの間を光学的に接続するケーブル部15Xを有し、予熱乾燥温度をフィードバック制御を実現するための含水率検出装置15と、ペースト状活物質PTの表面の含水率の検出に影響を与えない程度に低湿化された乾燥空気を送風管16Aを介してプローブ部15Aに供給するブロワ装置16と、を備えている。
ここで、含水率検出装置15は、予熱乾燥後の充填済基板11Aに充填されているペースト状活物質PTの表面の含水率WSに対応する吸光度を計測してペースト状活物質PTの内部の含水率WRを検出する。
そして、検出したペースト状活物質PTの内部の含水率WRに応じて、内部の含水率WRを減少させて所定の含水率範囲に収めようとするときは、予熱乾燥炉14の乾燥温度を上昇させ連続的に搬送されている複数の充填済基板11A内部の含水率WRの変化を計測して、フィードバック信号FBを予熱乾燥炉14の図示しないコントローラに出力してフィードバック制御を行う。
また、検出したペースト状活物質PTの含水率WRに応じて、内部の含水率WRを増加させて所定の含水率範囲に収めようとするときは、予熱乾燥炉14の乾燥温度を下降させ、連続的に搬送されている複数の充填済基板11A内部の含水率WRの変化を計測して、フィードバック信号FBを予熱乾燥炉14の図示しないコントローラに出力してフィードバック制御を行う。
図2は、ペースト充填機の概要構成説明図である。
この場合において、ペースト充填機13のペースト充填対象である基板11は、枠体に格子状の充填部が形成されており、この格子状の充填部にペーストが充填されることとなる。
ペースト充填機13は、大別すると、ペースト状活物質PTの原材料が投入されるホッパー部21と、ホッパー部21内のペースト状活物質PTの原材料を均一に混練してペースト状活物質PTとするために撹拌する撹拌はね22と、撹拌はね22により均一状態とされたペースト状活物質を、充填口23を介して押し出して基板11に充填するための複数の充填ローラ24A、24Bと、を備えている。さらに充填口23に対向する位置には、基板11を支持する受けローラ25が配置されている。
これによりホッパー部21にペースト状活物質PTの原材料が投入されると、撹拌はね22が回転し、原材料を均一にして、ペースト状活物質PTとする。
ホッパー部21内のペースト状活物質PTが均一になったと判断されると操作者により、搬送ベルト12Aが搬送ローラ12Bにより駆動され、基板11が搬送される。搬送された基板11がペースト充填機13の充填口23に対向する位置に至ると、受けローラ25により基板11が支持された状態で、充填ローラ24A、24Bが駆動されて、充填口23を介して基板11にペースト状活物質が搬送方向前方から順次充填される。
このとき、ホッパー部21に設けられた図示しないペースト厚み調整板は、格子状の充填部に充填されたペースト状活物質PTに接触して余分なペースト状活物質PTを掻き落とすことにより、格子体に充填されたペースト状活物質PTの厚みをほぼ均一にするように調整する。
図2においては、基板11の搬送方向前方側(図2中、右側)の一部にペースト状活物質PTが充填された状態を示している。
そして、基板11が充填口23に対向する位置を通過した時点で、基板11はペースト状活物質PTが完全に充填された状態となり、充填済基板11Aとされる。
図3は、予熱乾燥炉の概要構成説明図である。
予熱乾燥炉14は、上下方向にそれぞれ熱風ブロア31A、31Bが配置され、充填済基板11Aが両熱風ブロア31A、31Bにより上下方向から熱風HWが供給される位置を通過可能なようにネットチェーン32上に載置されて搬送される。
この場合において、予熱乾燥炉14の炉内温度は、標準で200℃、充填済基板11Aが炉14を通過するのに要する炉通過時間は、標準で15秒となっている。充填済基板11Aの内部の含水率を調整するに際し、原則的には、流れ作業におけるスループットを一定に保つため炉通過時間は一定にして、炉内温度のみの変更制御を行っている。この条件の下では、含水率制御は、より簡単な制御によって実現される。
図4は、プローブ部を計測対象の充填済基板側から見た場合の概要説明図である。
含水率検出装置15のプローブ部15Aは、ケーブル部15Xを介して近赤外線検出光を充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面に照射し、ペースト状活物質PTの表面により反射された近赤外線検出光を受光して、伝送する光ファイバ部41と、搬送装置12により搬送されている充填済基板11Aのペースト状活物質の表面(の計測対象領域)および光ファイバ部41の端面に乾燥空気を送る送風口42と、計測に影響を与える外光を遮断する遮光板43と、を備えている。
ここで、光ファイバ部41は、光ファイバ部41の中心部側に配置されて計測用光LMおよび参照用光LRを出射する照射用ファイバ44と、光ファイバ部41の周縁部に配置されて充填済基板11Aのペースト状活物質の表面により反射された計測用光LMおよび参照用光LRを受光する受光用ファイバ45と、を備えている。照射用ファイバ44および受光用ファイバ45のいずれも、詳細は後述するが、用いる計測光LMと参照用光LRの波長の光を透過し、高効率で伝送することのできる材料で作られている必要がある。また試料形状や計測領域を調整するために、レンズや絞り穴やピンホールを用いても構わない。
この場合において、プローブ部15Aは、充填済基板11Aに対しておよそ1cm程度離間された位置に配置されている。プローブ部15Aと充填済基板11Aとの離間距離DP(図1参照)は、充填済基板11Aの搬送時の振動に伴うぶれなどを考慮して、プローブ部15Aと充填済基板11Aとが接触しない位置となるように設定されるとともに、できる限り近い位置に設定されている。具体的には、1cm〜5cm程度とされる。
プローブ部15Aは、計測用光LMおよび参照用光LRの反射光の変化に基づき充填済基板(極板)15Aが進入してきたことを検知し、この検知タイミングから充填済基板11Aの計測対象エリア(ペースト状活物質PTが充填されている部分)上に完全に照射スポットが照射された状態に至るまでの時間は、充填済基板11Aの搬送速度から算出できる。
したがって、含水率検出装置15は、充填済基板11Aの計測対象エリア上に完全に照射スポットが照射されている期間(この期間は、搬送速度及び搬送方向の充填済基板11Aの長さから算出される)に、所定回数(例えば、100回/1計測)の繰り返しサンプリングを行い、データを収集する。
続いて、充填済基板11Aごとにサンプリングデータ及びあらかじめ用意した検量線データ(あるいは検量線式)から充填済基板11Aの内部の含水率WRを算出する。
ここで、あらかじめ行う検量線データの作成について説明する。
まず、基板11に充填するペースト状活物質PTと水分以外が同組成の乾燥粉末を用意し、この乾燥粉末に任意量の水を添加し、常温(室温20℃程度)で混練し、ペースト状活物質とする。
続いて得られたペースト状活物質の表面を平均して、室温(=20℃)、相対湿度80%RHの雰囲気中でペースト状活物質の表面の計測箇所を変更しつつ、数点サンプリングして、表面の含水率計測を行う。
その後、従来の破壊式の含水率計測方法により含水率計測を行う。
これらの結果、サンプリングによる含水率計測値の平均値と、従来の方法により計測したペースト状活物質PTの内部の含水率と、に基づいて、検量線を求める。
図5は、検量線の一例の説明図である。
図5に示す検量線を与える実験式は、例えば、モル濃度と吸光係数の比例関係と、拡散反射率と吸光係数の関係と、に基づいて理論的に導出する。
より具体的には、本実施形態の場合、計測用光LMの反射光量SLMと参照用光LRの反射光量SLRとの比(=SLR/SLM)を縦軸の計測値とした場合に、式(1)により表される内部の含水率WR(%)を示したものを用いている。
WR=a0+a1・log10(SLR/SLM) …(1)
ここで、a0、a1は定数である。
この場合において、さらに、計測環境の温度、湿度、計測材料の表面荒さ、材料の粉体粒径等に基づいた種々の補正を行うようにしてもよい。
また、ペースト状活物質PTの充填完了タイミングに基づく計測のタイミング(充填完了からの経過時間)を一定にしたり、充填後あるいは予熱乾燥後、十分に長い時間間隔を置いたりなど再現よく表面の含水率WSと内部の含水率WRの関係が求められる条件を整えれば、表面含水率WSから、搬送中の鉛蓄電池用極板の内部の含水率WRを算出(推定)することが可能である。
図6は、含水率検出装置およびブロワ装置の概要説明ブロック図である。
含水率検出装置15の本体部15Bは、波長1.85〜2.1μmの波長帯域に属する波長を有し、水分子による吸光度が比較的高い計測用光LM及び波長1.6〜1.82μmの波長帯域に属する波長を有し、水分子による吸光度が比較的低い参照用光LRを含む赤外光を出射することのできる光源51(本実施形態では、タングステン光源であるが、ハロゲン光源でも可)と、プローブ部15Aにケーブル部15Xおよび光ファイバ部41を介して伝送され、充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面により反射されて光ファイバ部41により受光され、ケーブル部15Xを介して伝送された計測用光LM及び参照用光LRを分光する分光器52と、を備えている。
さらに本体部15Bは、分光器52により分光された計測用光LM及び参照用光LRのそれぞれの受光光量を検出する図示しない光センサを備え、光量検出信号を出力するセンサ部53と、センサ部53により出力された光量検出信号に基づいて、計測用光LM及び参照用光LRのそれぞれの受光光量SLM、SLRを比較し、比較結果である計測値に基づいてあらかじめ記憶していた検量線(データ)に基づいて、ペースト状活物質PTの内部の含水率(含水率WR%)を求める演算部54と、演算部54により求められた含水率WR%に基づいて、予熱乾燥炉14のフィードバック制御を行うためのフィードバック信号FBを生成し、予熱乾燥炉14に出力する結果出力部55と、を備えている。
フィードバック信号FBは、予熱乾燥炉14の乾燥温度設定を制御するために供給され、含水率WS%をあらかじめ定めた所定の範囲から逸脱しないように、アルゴリズムでフィードバック信号FBが設定される。アルゴリズムの一例を図6に示す。
この場合において、分光器52は、単一の狭い波長領域を選別することのできる光学フィルタ(例えば干渉フィルタ)として構成することも可能である。
次に、第1実施形態の動作について説明する。
図7は、第1実施形態の動作フローチャートである。本フローチャートは、基板1枚ごとに搬送することによって、本発明を実施することを前提としているが、図1〜図3に示す装置では、その変形として基板の連続投入による流れ作業を行って、連続製造することも可能である。
まず、オペレータは、ペースト充填機13にペースト状活物質の原材料を投入し、原材料を混練して均一にして、ペースト状活物質PTとする(ステップS11)。
そして、オペレータは、ペースト充填機13内のペースト状活物質が均一になると、搬送装置12を動作させ、鉛を主成分とする鉛合金製の基板11をペースト充填機13の設置位置まで搬送する(ステップS12)。
これによりペースト充填機13の受けローラ25により基板11が支持された状態で、充填ローラ24A、24Bが駆動されて、充填口23を介して基板11にペースト状活物質が搬送方向前方から順次充填され、図示しないペースト厚み調整板により格子状の充填部に充填されたペースト状活物質PTに接触して余分なペースト状活物質PTを掻き落とすことにより、格子体に充填されたペースト状活物質PTの厚みをほぼ均一にするように調整して、充填済基板11Aとする(ステップS13)。
さらに充填済基板11Aは、予熱乾燥炉14内に搬送されて、予熱乾燥が行われる(ステップS14)。
具体的には、予熱乾燥炉14内において、充填済基板11Aは、ネットチェーン32上に載置されて搬送され、その間に熱風ブロア31A、31Bにより上下方向から熱風HWが供給されて乾燥され、予熱乾燥炉14から搬出される。
このときの予熱乾燥炉14内の温度は、フィードバック信号FBにより含水率検出装置15の本体部15Bによりフィードバック制御され、最適な含水率WR%となるように制御されている。
すなわち、予熱乾燥炉14から搬出された充填済基板11Aは、含水率検出装置15により、充填済基板11Aの内部の含水率WR%が検出される(ステップS15)。
具体的には、含水率検出装置15の本体部15Bは、光源51を駆動して、計測用光LM及び参照用光LRを含む赤外光を出射させる。
これにより、光源51を出射した計測用光LM及び参照用光LRを含む赤外光は、ケーブル部15Xおよび光ファイバ部41を介してプローブ部15Aに伝送される。
そして、充填済基板11Aに充填されたペースト状活物質PTの表面に照射され、反射される。
充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面により反射された計測用光LM及び参照用光LRは、光ファイバ部41により受光され、ケーブル部15Xを介して再び本体部15Bに伝送される。
本体部15Bの分光器52は、計測用光LM及び参照用光LRを分光し、分光器52により分光された計測用光LMの受光光量SLM及び参照用光LRの受光光量SLRは、センサ部53の図示しない複数の光センサ(計測用光受光光センサおよび参照用光受光光センサ)によりそれぞれ検出されて、複数の光量検出信号が演算部54に出力される。
この結果、演算部54は、センサ部53により出力された複数の光量検出信号に基づいて、計測用光LM及び参照用光LRのそれぞれの受光光量を比較し、計測用光LMの反射光量SLMと参照用光LRの反射光量SLRとの比(=SLR/SLM)に対する内部の含水率WR(%)の関係を表す検量線に対応する関係式から、充填済基板11Aに充填されたペースト状活物質PTの内部の含水率WR(%)を求めることとなる。
続いて、含水率検出装置15は、算出した充填済基板1Aのペースト状活物質PTの内部の含水率WR(%)がその後の工程に適しているとされている所定含水率範囲を超えているかあるいは所定含水率範囲未満であるかを判別する(ステップS16)。
ステップS16の判別において、算出されたペースト状活物質PTの内部の含水率WR(%)が所定含水率範囲の最大含水率を超えている場合には、乾燥が不足しているということであるので、予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号FBにより予熱乾燥炉の設定温度(設定出力)を上げる制御を行う(ステップS17)。
一方、ステップS16の判別において、算出された内部含水率が所定含水率範囲の最小含水率よりも低い場合には、過剰に乾燥させてしまったということであるので、予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号FBにより設定温度(設定出力)を下げる制御を行う(ステップS18)。
さらにステップS16の判別において、算出された内部含水率が所定含水率範囲内である場合には、後工程に最適な含水率であると判断されて、設定温度(設定出力)の変更は行われず、そのまま、次工程に搬送装置12により搬送されることとなる。
ステップS17又はステップS18の後に、処理の終了の判定が行われ(ステップS19)、終了でないときには、ステップS12の処理に戻る。
本実施例においては、ステップS16の判別において、算出された内部含水率が、所定含水率範囲の最小含水率より低い場合および所定含水率範囲の最大含水率より高い場合は、上記制御工程により、製造された極板を不良品と判断して次工程に搬送するのを中止することもできる。この場合は、上記制御工程により、製造された極板について、算出された内部含水率WRが、所定含水率範囲に含まれようになるまで次工程への搬送を中止することが望ましい。
図7の一連の工程は、1枚ずつ極板を製造する手順を示したものであるが、本工程を流れ作業工程として実施する場合にも以下のように流用される。流れ作業においては、1枚の極板の予熱乾燥がS14において終了する前に、次の極板製造用の基板をS12工程により搬送して、基板を連続投入しても構わない。この場合は、製造される極板についてS15において算出される内部含水率が所定含水率範囲に含まれようになるまで、いくつかの不良品がやむを得ず製造されることになるが、これらを識別して次工程へ搬送しないなどの措置により、同様に連続工程全体における不良品発生を抑えることができる。
図8は、搬送装置により搬送されている充填済基板をプローブ部側から見た図である。
搬送装置12の搬送ベルト12Aによりプローブ部15Aの直下に搬送された充填済基板11Aは、図8に示すように、計測領域MAがペースト状活物質PTの表面に位置し、計測用光LM及び参照用光LRがペースト状活物質PTの表面に照射されることとなる。
このとき、図6に示したようにプローブ部15Aの下方の送風口42からは、ブロワ装置16により送られた乾燥空気Wが充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面に送られるとともに、光ファイバ部22を構成している照射用ファイバ44及び受光用ファイバ45の端面にも乾燥空気Wが送られることとなる。
この結果、予熱乾燥炉14による加熱直後の計測であることに起因して、充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面から発生する蒸気、あるいは、ペースト状活物質PTの表面あるいは光ファイバ部41(照射用ファイバ44及び受光用ファイバ45)の結露などに存在する水分子による影響がなくなり、確実に充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面を介して内部の含水率WR(%)を算出することが可能となる。
この場合において、充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面(層)の水による吸光度の計測は、充填済基板11Aに対して、非接触かつ非破壊な計測方法で実行されるので、搬送ベルト12Aを駆動したまま、すなわち、充填済基板11Aを搬送し続けた状態で表面(層)の水による吸光度を計測でき、鉛蓄電池用極板の製造装置10を稼働し続けることができるので、稼働率を向上することができる。
また、特別の操作を加えないまま、多数の充填済基板11Aを非接触かつ非破壊な計測方法で、連続して計測することが可能であり、製造する鉛蓄電池用極板の全数検査を行うことができる。
さらに、一つの充填済基板11Aに対し、複数箇所の表面含水率を検出することも可能である。
この後、通常の手順で、鉛蓄電池用極板の熟成、乾燥を行って、製造された未化成の正負極板の間にセパレータを挟んで交互に積層することにより極板群を形成し、この極板群を電槽に収納し、この電槽に注液口を設けた蓋を熱溶着して封口し、この鉛蓄電池内に電解液である希硫酸を注液して、通電し電槽化成を行い鉛蓄電池が製造されることとなる。
以上の説明のように、本第1施形態によれば、予熱乾燥後の充填済基板11Aのペースト状活物質Pの内部の含水率WR%を確実に検出して、その結果を、予熱乾燥炉14にフィードバックしているので、ペースト状活物質Pの表面の含水率を安定化させることができ、ひび割れなどを起こすことなく、極板品質の安定化、ひいては、鉛蓄電池の品質を安定化させることができる。
[2]第2実施形態
以上の第1実施形態においては、充填済基板11Aに充填されたペースト状活物質PTの含水率を予熱乾燥機の後段で計測するようにしていたが、基板11に充填された直後のペースト状活物質PTの含水率も計測することにより、より確実に含水率を制御する実施形態である。
図9は、第2実施形態の鉛蓄電池用極板の製造装置の一部の説明図である。
図9において、図1の第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付すものとする。
鉛蓄電池用極板の製造装置10Aは、鉛を主成分とする鉛合金製の基板11を搬送ベルト12Aにより搬送する搬送装置12と、搬送装置12により搬送されている基板11にペースト状活物質PTを充填して充填済基板11Aとするペースト充填機13と、充填済基板11Aを加熱して予熱乾燥を行う予熱乾燥炉14と、第1のプローブ部15A、本体部15B、第2のプローブ部15C、第1のプローブ部15Aと本体部15Bとの間を光学的に接続するケーブル部15X及び第2のプローブ部15Cと本体部15Bとの間を光学的に接続するケーブル部15Yを有し、予熱乾燥温度をフィードバック制御する含水率検出装置15と、ペースト状活物質の表面の含水率の検出に影響を与えない程度に低湿化された乾燥空気を第1のプローブ部15Aに送風管16A1を介して供給し、第2のプローブ部15Cに送風管16A2を介して供給するブロワ装置16と、を備えている。
ここで、含水率検出装置15は、第1のプローブ部15Aにより予熱乾燥後の充填済基板11Aに充填されているペースト状活物質PTの内部の含水率WR1を検出し、さかのぼって第2のプローブ部15Cにより予熱乾燥前の充填済基板11Aに充填されているペースト状活物質PTの内部の含水率WR2を検出し、検出した含水率WR1及び含水率WR2に応じて、ペースト状活物質PTの内部の含水率WR2を減少させるときは予熱乾燥炉14の乾燥温度を上昇させ、内部の含水率WR2を増加させるときは予熱乾燥炉14の乾燥温度を下降させ、順次継続して内部の含水率WR1、WR2の変化を計測して、フィードバック信号FBを予熱乾燥炉14の図示しないコントローラに出力して予熱乾燥温度をフィードバック制御する。
この場合において、フィードバック制御を行うためのフィードバック信号FBを生成するための制御関数は、予熱乾燥前の内部の含水率WR2および予熱乾燥後の含水率WR1をパラメータとした関数をあらかじめ実験的に求める。
次に、第2実施形態の動作について説明する。
図10は、第2実施形態の動作フローチャートである。本フローチャートも、図7と同様、基板1枚ごとに搬送することによって、本発明を実施することを前提としているが、図9に示す装置では、流れ作業による連続製造も可能である。
まず、オペレータは、ペースト充填機13にペースト状活物質の原材料を投入し、原材料を混練して均一にして、ペースト状活物質とし(ステップS21)、オペレータは、ペースト充填機13内のペースト状活物質が均一になると、搬送装置12を動作させ、鉛を主成分とする鉛合金製の基板11をペースト充填機13の設置位置まで搬送する(ステップS22)。
ペースト充填機13は、搬送されている基板11にペースト状活物質を充填して充填済基板11Aとする(ステップS23)。
次に、第1実施形態における含水率WR%の検出手順と同様の手順により、含水率検出装置15の第2のプローブ部15Cにより予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%を検出する(ステップS24)。
続いて、充填済基板11Aは、予熱乾燥炉14内に搬送されて、予熱乾燥が行われる(ステップS25)。
続いて、第1実施形態における含水率WR%の検出手順と同様の手順により含水率検出装置15により、予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%を検出する(ステップS26)。
続いて、含水率検出装置15は、算出した充填済基板11Aのペースト状活物質PTの内部の含水率WR1(%)がその後の工程に適しているとされている所定含水率範囲を超えているかあるいは所定含水率範囲未満であるかを判別する(ステップS27)。
ステップS27の判別において、算出されたペースト状活物質PTの内部の含水率WR1(%)が所定含水率範囲の最大含水率を超えている場合には、乾燥が不足しているということであるので、予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%および予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%をパラメータとして予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号FBにより予熱乾燥炉の設定温度(設定出力)を上げる制御を行う(ステップS28)。
定性的には予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%から予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%を減じた差が大きいほど、乾燥を促進するためにより高温の予熱乾燥炉の設定温度が必要であり、その設定温度はWR1%の値によって変動する。
この場合において、予熱乾燥炉制御テーブルは、あらかじめ以下のような実験により作成される。予熱乾燥炉の条件を一定として、予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%を変化させた場合の、予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%との関係に基づいて作成される。
このテーブルをグラフ状に示したものを、図11に例示する。このグラフにおいて、予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%における目標とする数値は9.5−10.5%の範囲、予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%は12−19%の範囲とした。実際には、予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%を横軸に読み、その目盛りの垂線が設定したいWR1%値のグラフと交わる点の数値を設定温度として読み取り、その設定温度を制御装置に対して指示を行う。
一方、ステップS27の判別において、算出された内部含水率WR1%が所定含水率範囲の最小含水率よりも低い場合には、過剰に乾燥させてしまったということであるので、予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%および予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%をパラメータとして予熱乾燥炉制御テーブル(図11にグラフ化したもの)を参照して、フィードバック信号FBにより設定温度(設定出力)を下げる制御を行う(ステップS29)。
さらにステップS27の判別において、算出された内部含水率が所定含水率範囲内である場合には、後工程に最適な含水率であると判断されて、設定温度(設定出力)の変更は行われず、そのまま、次工程に搬送装置12により搬送されることとなる。
ステップS28又はステップS29の後に、処理の終了の判定が行われ(ステップS30)、終了でないときには、ステップS22の処理に戻る。
本実施例においても、ステップS26の判別において、算出された予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%が、所定含水率範囲の最小含水率より低い場合および所定含水率範囲の最大含水率より高い場合は、上記制御工程により、製造された極板を不良品と判断して次工程に搬送するのを中止することもできる。この場合は、上記制御工程により、製造された極板について、算出された内部含水率が、所定含水率範囲に含まれようになるまで次工程への搬送を中止することが望ましい。
図10の一連の工程は、1枚ずつ極板を製造する手順を示したものであるが、本工程を流れ作業工程として実施する場合にも以下のように流用される。流れ作業においては、1枚の極板の予熱乾燥がS24において終了する前に、次の極板製造用の基板11をS22工程により搬送して連続投入しても構わない。この場合は、製造される極板についてS25において算出される予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%が所定含水率範囲に含まれようになるまで、いくつかの不良品がやむを得ず製造されることになるが、これらを識別して次工程へ搬送しないなどの措置により、同様に連続工程全体としての不良品発生を抑えることができる。
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、予熱乾燥前の充填済基板11Aの内部の含水率WR2%および予熱乾燥後の充填済基板11Aの内部の含水率WR1%をパラメータとして予熱乾燥炉14のフィードバック制御を行うので、より確実に充填済基板11Aの内部の含水率管理を行うことができる。
[2.1]第2実施形態の変形例
以上の第2実施形態においては、ペースト状活物質PTの充填直後の内部の含水率WR2%および予熱乾燥直後の含水率WR1に基づいて予熱乾燥炉の温度を制御していたが、本第2実施形態の変形例は、基板(極板)の厚みと、充填直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WNと、充填直後のペースト状活物質PTの表面の温度と、予熱乾燥直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WSと、を用いて予熱乾燥炉の温度を制御する場合のものである。
上記各実施形態においては、基板(極板)の厚みは考慮していなかったが、厳密には基板(極板)の厚みによって、充填直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WNと予熱乾燥直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WNとの関係は異なることとなる。
そこで、本変形例では、基板11の厚みを考慮して、より確実に予熱乾燥直後のペースト状活物質PTの内部の含水率WR1が所望の値となるようにしている。
この場合において、第2のプローブ部15Cにおいては、ペースト状活物質PT表面の温度Tpを計測する温度センサを設ける。
そして、充填直後のペースト状活物質PT表面の温度Tp、予熱乾燥炉の炉内温度Tf及び予熱乾燥路内の充填済基板11Aの通過時間Ttをパラメータとし、充填直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WN及び予熱乾燥直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WSの差を係数とする基板11の厚みHを表す関数Gを次式のように定め、あらかじめ求めておく。
H=G(Tp,Tf,Tt)・(WN−WS)
そして、逆に基板11の厚みH、充填直後のペースト状活物質PT表面の温度Tp、充填直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WN及び予熱乾燥直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WSに基づいて予熱乾燥炉の炉内温度Tfを算出し、フィードバック制御を行う。
この結果、基板11の厚さHを考慮して予熱乾燥炉の炉内温度Tfを制御することができ、より確実な制御が行え、ひいては、充填済基板11Aの歩留り向上を確実に図ることが可能となる。
具体的には、以下のようになる。
(1)温度Tp=40℃、炉内温度Tf=200℃、通過時間Tt=15秒の場合
厚さH(mm) WN−WS(%)
1.0 1.10
1.5 1.00
2.0 0.90
2.5 0.85
(2)温度Tp=40℃、炉内温度Tf=200℃、通過時間Tt=8秒の場合
厚さH(mm) WN−WS(%)
1.0 0.70
1.5 0.65
2.0 0.60
2.5 0.55
(3)温度Tp=30℃、炉内温度Tf=200℃、通過時間Tt=15秒の場合
厚さH(mm) WN−WS(%)
1.0 1.00
1.5 0.90
2.0 0.85
2.5 0.80
(4)温度Tp=30℃、炉内温度Tf=250℃、通過時間Tt=15秒の場合
厚さH(mm) WN−WS(%)
1.0 1.30
1.5 1.20
2.0 1.00
2.5 0.95
上記各具体例によれば、充填直後のペースト状活物質PT表面の温度Tpが高い場合、予熱乾燥炉の炉内温度Tfが高い場合及び予熱乾燥路内の充填済基板11Aの通過時間Ttが長い場合の方が、含水率の減少が大きいことがわかる。
従って、製造対象の基板11の厚さHが定まった場合に、充填直後のペースト状活物質PT表面の温度Tp及び充填直後のペースト状活物質PTの表面の含水率WNに基づいて、予熱乾燥炉の炉内温度Tf(及び必要に応じて予熱乾燥炉内の充填済基板11Aの通過時間Tt)を制御すれば、所望の含水率WSを有する充填済基板11Aを確実に得ることが可能となる。
[3]第3実施形態
以上の各実施形態は、予熱乾燥したペースト状活物質PTが充填された充填済基板11Aをそのまま熟成、乾燥させる場合のものであったが、本第3実施形態は、予熱乾燥前の充填済基板11Aのペースト状活物質PTの表面にペースト紙を貼り付けた鉛蓄電池用極板を製造する場合の実施形態である。ペースト紙は電池製造工程における極板の取扱性の向上や電池使用中の耐ショート性の向上を目的として用いられる。このような極板における本発明の計測は、ペースト状活物質の表面ではなく、その表面に貼り付けたペースト紙の表面状態を計測することになるが、ここに示す第3の実施形態によって、そのようなペースト紙を貼り付けた形態の電極に対して適用することができるので、本発明の第3の実施形態として示す。
図12は、第3実施形態の実施形態の鉛蓄電池用極板の製造装置の一部の説明図である。図12において、図1の第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付するものとする。
図12において、図1の第1実施形態と異なる点は、ペースト充填工程と、予熱乾燥工程と、の間にペースト紙貼付工程を設け、充填済基板にペースト紙の貼り付けを行うペースト紙貼付機61を設けた点である。
本第3実施形態においては、主に鉛粉及び希硫酸からなるペーストを充填機13にて鉛を主体とする基板11に充填し、充填済基板11Aとする。
続いて、充填済基板11Aの両面にペースト紙62を、ペースト紙貼付機61を構成するローラ63A、63Bで貼り付け、ペースト紙貼付充填済基板11Bとする。
次に第1実施形態における含水率WR%の検出手順と同様の手順により、含水率検出装置15の第2のプローブ部15Cにより予熱乾燥前のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR2%を検出する。
続いて、ペースト紙貼付充填済基板11Bは、予熱乾燥炉14内に搬送されて、予熱乾燥が行われる。
続いて、第1実施形態における含水率WR%の検出手順と同様の手順により含水率検出装置15により、ペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR1%を検出する。
続いて、含水率検出装置15は、算出したペースト紙貼付充填済基板11Bのペースト状活物質PTの内部の含水率WR1(%)がその後の工程に適しているとされている所定含水率範囲を超えているかあるいは所定含水率範囲未満であるかを判別し、算出されたペースト状活物質PTの内部の含水率WR1(%)が所定含水率範囲の最大含水率を超えている場合には、乾燥が不足しているということであるので、予熱乾燥前のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR2%および予熱乾燥後のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR1%をパラメータとして予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号FBにより予熱乾燥炉の設定温度(設定出力)を上げる制御を行う。
この場合において、予熱乾燥炉制御テーブルは、予熱乾燥炉の条件を一定として、予熱乾燥前のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR2%を変化させた場合の、予熱乾燥後のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR1%との関係に基づいて作成される。
一方、算出された内部の含水率WR1%が所定含水率範囲の最小含水率よりも低い場合には、過剰に乾燥させてしまったということであるので、予熱乾燥前のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR2%および予熱乾燥後のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR1%をパラメータとして予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号FBにより設定温度(設定出力)を下げる制御を行う。
また、算出された内部の含水率が所定含水率範囲内である場合には、後工程に最適な含水率であると判断されて、そのまま、次工程に搬送装置12により搬送されることとなる。
以上の説明のように、本第3実施形態によれば、予熱乾燥前のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR2%および予熱乾燥後のペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率WR1%をパラメータとして予熱乾燥炉14のフィードバック制御を行うので、ペースト紙62を貼り付けた場合であっても、確実にペースト紙貼付充填済基板11Bの内部の含水率管理を行うことができる。
次に本発明の実施例について説明する。
以下、具体的な実施例について説明する。
本実施例においては、図5に示したように、破壊的な計測方法を含む別法で計測したペースト状活物質の内部の含水率WR%と、近赤外線の反射光量(の比:SLR/SMR)との検量線を、例えば式(1)に基づいて作成しておく。検量線の作成に必要なWR%の実測値は、第1実施形態で示した従来の破壊式の方法で求める。
従来法により検出したペースト状活物質内部の含水率WR%を一定にするように、予熱乾燥炉14にフィードバックし、予熱乾燥温度を自動的にコントロールさせて得られた比較例と比較し、以下のように検討する。
図13は、正極板製造時の実施例と比較例の比較結果の説明図である。
まず、正極板製造時の条件を以下のA〜Dの4条件とした。
(条件A) 極板の厚みを1.5mm、予熱乾燥前のペースト温度を40℃とし、予熱乾燥炉通過時間を15秒とする。
(条件B) 極板の厚みを2.5mm、予熱乾燥前のペースト温度を40℃とし、予熱乾燥炉通過時間を15秒とする。
(条件C) 極板の厚みを1.5mm、予熱乾燥前のペースト温度を30℃とし、予熱乾燥炉通過時間を15秒とする。
(条件D) 極板の厚みを1.5mm、予熱乾燥前のペースト温度を40℃とし、予熱乾燥炉通過時間を8秒とする。
そして、上記各条件で得られた正極板および鉛蓄電池について実施例(実施例1及び実施例2)及び比較例(比較例1)についてそれぞれ比較した。
なお、実施例1、2及び比較例1のいずれも、それぞれの最適な予熱乾燥温度を設定しており、熟成時間については、いずれの場合でも必要な熟成時間を設けている。
上記条件において、各条件で予熱乾燥後の極板表面の含水率平均値が同等となるように、それぞれの条件A、B、C、Dの標準の予熱乾燥温度を決めている。
そして、予熱乾燥工程以降の工程は、第1実施形態と同様に、含水率計測プローブ15Aを予熱乾燥炉14の直後に設け、含水率計測結果を予熱乾燥炉14の制御にフィードバック信号FBを送り予熱乾燥温度を自動調整する場合を実施例1とした。
また、第2実施形態の変形例と同様に、予熱乾燥炉前後にそれぞれ含水率計測プローブ15Cと含水率計測プローブ15Aを設け、さらに基板(極板)の厚みと、充填直後のペースト状活物質の表面の含水率と、充填直後のペースト状活物質の表面の温度と、予熱乾燥直後のペースト状活物質の表面の含水率と、を用いて予熱乾燥炉の温度を算出し、フィードバック制御を行う場合を実施例2とした。
また、比較例1は予熱乾燥炉14の直後に含水率計測プローブ15Aを設けているが、フィードバックは行わず、含水率を計測するだけのものである。
それぞれの場合における予熱乾燥直後の平均含水率および標準偏差と、これらの極板を熟成及び乾燥させた後の極板からペースト紙の剥離に起因する極板の歩留り率が図13に示されている。
図13に示すように、実施例1の場合のように、予熱乾燥後だけの含水率計測による予熱温度制御だけでもペースト状活物質の表面の含水率を8〜8.3%(標準偏差0.2〜0.3%)とすることができ、ほぼ一定にできることがわかる。
すなわち、実施例1の手法によれば、充填済基板の製造方法および予熱乾燥の条件の影響をあまり受けずに安定して予熱乾燥が完了した鉛蓄電池用極板を得ることができ、熟成不良を低減し、ひいては、鉛蓄電池の歩留り率(=95〜99%)を比較例1の歩留り率(=90〜95%)と比較して向上でき、性能の向上に寄与することが可能となることがわかる。
さらに、実施例2の場合のように、予熱乾燥前後でペースト状活物質の表面の含水率を計測することに加え、充填直後(予熱乾燥前)のペースト状活物質の温度と基板(極板)の厚みから予熱乾燥炉の温度を算出し、フィードバック制御することにより、ペースト状活物質の表面の含水率を8〜8.1%(標準偏差0.2%)、また鉛蓄電池の歩留り率を99%と、より一層改善される。
これに対し、比較例1の手法では、ペースト状活物質の内部の含水率を一定にしているにも拘わらず、ペースト状活物質の表面の含水率が大きくばらつくこととなり、予熱乾燥が完了した時点の鉛蓄電池用極板の品質には大きくばらつきが生じ、熟成不良を招いて、鉛蓄電池の歩留り率(=90〜95%)と低くなり、さらには、鉛蓄電池の性能向上の妨げになり得ることがわかる。
以上のように、本発明の実施例1、2では予熱乾燥後の充填板表面の含水率、極板品質を安定化させることができ、ひいては、歩留り率を向上させて、鉛蓄電池の性能向上にも寄与できる。
図14は、負極板製造時の実施例と比較例の比較結果の説明図である。
まず、負極板製造時の条件を以下のE〜Hの4条件とした。
(条件E) 極板の厚みを1.2mm、予熱乾燥前のペースト温度を40℃とし、予熱乾燥炉通過時間を10秒とする。
(条件F) 極板の厚みを1.7mm、予熱乾燥前のペースト温度を40℃とし、予熱乾燥炉通過時間を10秒とする。
(条件G) 極板の厚みを1.2mm、予熱乾燥前のペースト温度を30℃とし、予熱乾燥炉通過時間を10秒とする。
(条件H) 極板の厚みを1.2mm、予熱乾燥前のペースト温度を40℃とし、予熱乾燥炉通過時間を7秒とする。
そして、上記各条件で得られた負極板および鉛蓄電池について実施例(実施例3及び実施例4)及び比較例(比較例2)についてそれぞれ比較した。
なお、実施例3、4及び比較例2のいずれも、それぞれの最適な予熱乾燥温度を設定しており、熟成時間については、いずれの場合でも必要な熟成時間を設けている。
上記条件において、各条件で予熱乾燥後の極板表面の含水率平均値が同等となるように、それぞれの条件E、F、G、Hの標準の予熱乾燥温度を決めている。
そして、予熱乾燥工程以降の工程は、第1実施形態と同様に、含水率計測プローブ15Aを予熱乾燥炉14の直後に設け、含水率計測結果を予熱乾燥炉14の制御にフィードバック信号FBを送り予熱乾燥温度を自動調整する場合を実施例3とし、第2実施形態と同様に、予熱乾燥炉前後にそれぞれ含水率計測プローブ15Cと含水率計測プローブ15Aを設け、実施例3と同様予熱乾燥炉14に含水率計測結果をフィードバックし、予熱乾燥温度を自動調整する場合を実施例4とした。
また、比較例は予熱乾燥炉14の直後に含水率計測プローブ15Aを設けているが、フィードバックは行わず、含水率を計測するだけのものである。
それぞれの場合における予熱乾燥直後の含水率の標準偏差と、これらの極板を熟成及び乾燥させた後の極板からペースト紙の剥離に起因する極板の歩留り率が図14に示されている。
図14に示すように、実施例3の場合のように、予熱乾燥後だけの含水率計測による予熱乾燥温度制御だけでも、歩留り率は大きく改善されていることがわかる。
さらに実施例4の場合のように、予熱乾燥前後で含水率を計測することにより、より一層歩留り率が改善される。
10 鉛蓄電池用極板の製造装置
11 基板
11A 充填済基板
11B ペースト紙貼付充填済基板
12 搬送装置
12A 搬送ベルト
12B 搬送ローラ
13 ペースト充填機
14 予熱乾燥炉
15 含水率検出装置
15A、15C プローブ部
15B 本体部
15X、15Y ケーブル部
16 ブロワ装置
16A、16A1、16A2 送風管
21 ホッパー部
22 撹拌はね
23 充填口
24A、24B 充填ローラ
25 受けローラ
31A、31B 熱風ブロア
32 ネットチェーン
41 光ファイバ部
42 送風口
43 遮光板
44 照射用ファイバ
45 受光用ファイバ
51 タングステン光源
52 分光器
53 センサ部
54 演算部
55 結果出力部
61 ペースト紙貼付機
62 ペースト紙
63A、63B ローラ
DP 離間距離
FB フィードバック信号
HW 熱風
LM 計測用光
LR 参照用光
MA 計測領域
PT ペースト状活物質
W 乾燥空気

Claims (8)

  1. 鉛を主成分とする鉛合金の基板にペースト状活物質を充填した鉛蓄電池用極板を作製し、あるいは、鉛を主成分とする鉛合金の基板にペースト状活物質を充填し、その両面にペースト紙を貼り付けた鉛蓄電池用極板を作製し、次いで、乾燥温度を制御可能な予熱乾燥炉により予熱乾燥を施し、さらに熟成、乾燥を施す鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面に近赤外光を照射し、その反射光を受光して、受光光量を計測し、あらかじめ記憶した受光光量と前記ペースト状活物質の含水率との関係に基づいて、前記ペースト状活物質の含水率を算出し、算出した含水率が所定範囲内に収まるように、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度を制御する、
    ことを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    前記ペースト状活物質充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面に計測用光と参照用光を含む近赤外光を照射し、その反射光を受光して、第2の受光光量を計測し、あらかじめ記憶した第2の受光光量と前記ペースト状活物質の含水率との関係に基づく検量線から、前記ペースト状活物質充填直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率を算出し、
    算出した前記充填直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率と、算出した前記予熱乾燥直後のペースト状活物質の内部の含水率との関係に基づく予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、
    前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率が所定範囲内に収まるように、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度を制御する、
    ことを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
  3. 請求項2に記載の鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    前記ペースト状活物質充填直後のペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の含水率を算出するとともに、ペースト状活物質充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の温度を計測し、
    前記ペースト状活物質の充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の含水率、前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の含水率に加えて、前記ペースト状活物質の充填直後の前記ペースト状活物質の表面あるいは前記ペースト紙の表面の温度、および基板または極板の厚みの関係に基づいて予熱乾燥炉の炉内温度を算出し、
    前記基板または極板の厚みを考慮して、算出した予熱乾燥炉の炉内温度をフィードバックして
    前記予熱乾燥直後の前記ペースト状活物質の内部の含水率が所定範囲内に収まるように、前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度を制御する、
    ことを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    前記予熱乾燥炉における前記乾燥温度の制御は、算出した含水率が所定含水率範囲の最大含水率を超えている場合には、予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号により予熱乾燥炉の設定温度または設定出力を上げる制御を行い、
    一方、算出した含水率が所定含水率範囲の最小含水率よりも低い場合には、予熱乾燥炉制御テーブルを参照して、フィードバック信号により設定温度または設定出力を下げる制御を行う、
    ことを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    前記近赤外光を照射して前記受光光量の計測を行う際に、前記近赤外光を受光する受光部および含水率の計測対象領域に乾燥空気を吹き付けながら前記計測を行うことを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    前記近赤外光は、波長1.93〜1.95μmの波長帯域に属する波長を有し、水分子による吸光度の高い計測用光と、
    波長1.6〜1.8μmの波長帯域に属する波長を有し、水分子による吸光度の低い参照用光と、を含むことを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    前記予熱乾燥直後のペースト状活物質の内部の含水率は8〜10%であることを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の鉛蓄電池用極板の製造方法において、
    予熱乾燥温度は150〜250℃であることを特徴とする鉛蓄電池用極板の製造方法。
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