JP2012157885A - 摩擦攪拌接合装置及びそれを用いた摩擦攪拌接合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】オフセット動作において、接合ツールの没入又は没入速度を抑えることのできる摩擦攪拌接合装置及びそれを用いた摩擦攪拌接合方法を提供する。
【解決手段】接合ツール1を回転させながら、加圧軸を駆動してワークWの表面に接合ツールの先端のツールピン1cを押し付け、所定の深さまでツールピンを没入させるという押し込み動作を行った後、接合ツールを回転させながら、ワークの表面に沿って接合ツールを移動させるというオフセット動作を行う。押し込み動作時の加圧力よりも低い加圧力でオフセット動作を行なうか又は加圧軸を停止した状態でオフセット動作を行なうとともに、押し込み動作からオフセット動作に移行する際、加圧力変化に伴うアームの弾性変形量分だけ接合ツールを後退させてからオフセット動作を行う。
【選択図】図6

Description

本発明は、接合ツールの回転による摩擦熱を利用してワークを接合する摩擦攪拌接合装置及びそれを用いた摩擦攪拌接合方法に関する。
特許文献1には、接合ツールをワークに押し付けつつ回転させることにより、接合ツールとワークの接触点に摩擦熱を発生させて接触点の周囲の材料を軟化させると共に攪拌し、それによりワークを接合する摩擦撹拌接合方法が開示されている。
特許文献2には、接合ツールをワークに対して傾斜させて摩擦攪拌接合を行う例が開示されている。また、特許文献3には、接合ツールを回転させながらワークの表面に沿って移動させる動作(オフセット動作)を行う際に、接合ツールをワークに押し付ける力(オフセット動作時加圧力)が一定になるようにする技術が開示されている。また、特許文献4には、オフセット動作において、オフセット動作時加圧力あるいは接合ツールの移動方向にワークから受ける力(オフセット荷重)をある大きさに制御することで、押し込み量が一定になるようにする技術が開示されている。さらに、特許文献5には、オフセット動作において、接合ツールの移動速度(オフセット速度)を可変とし、オフセット荷重を基準範囲内に制御する技術が開示されている。また一方、特許文献6には、薄板同士の重ね合わせ接合を行う際に、多関節ロボットの先端に摩擦攪拌接合装置の基体を設け、基体から延ばしたアームの先端に微小変位機構及び裏当て部材を設け、接合ツールの押し込み動作を行った後、接合ツールが微小距離だけオフセット動作を行う摩擦攪拌接合方法が開示されている。
特許第2712838号公報 特許第2792233号公報 特開2000−135577号公報 特開2001−198683号公報 特開2004−50234号公報 特開2005−313227号公報
特許文献1〜特許文献5に開示されている従来の摩擦攪拌接合方法では、ワークを定盤のような剛性の高いテーブルの上にのせて接合するのが一般的であった。このため、接合ツールを回転させながら所定の押し込み量まで没入させる押し込み動作の後、比較的長い距離オフセット動作を行う場合に、押し込み動作時加圧力とオフセット動作時加圧力が異なっていても、ワーク側の剛性が高いので、押し込み動作とオフセット動作とで押し込み量はそれほど変化しなかった。そのため、押し込み動作時加圧力とオフセット動作時加圧力の違いが問題となることはなかった。
一方、特許文献6に記載の技術のように、定盤などに比べて剛性が低いアームの先端に、ワークを挟むための裏当て部材を取り付けている場合、アームが加圧力に応じて撓むために、アームに設けた裏当て部材が接合ツールの押し込み動作に対して逃げてしまう。よって、接合ツールを目標の押し込み量まで押込むためには、アーム弾性変形量分を補正して、接合ツールの位置決め動作を行うという手法が一般的に用いられている。特に、特許文献6では、押し込み動作時加圧力とオフセット動作時加圧力を同じにすることで、一連の接合動作における押し込み量補正量が同じになるようにしている。押し込み動作時加圧力とオフセット動作時加圧力を同じにするためには、オフセット動作において、押し込み動作と同じ荷重で押圧するように加圧軸を制御すればよい。
ここで、押し込み動作時加圧力と同じ加圧力でオフセット動作を行なうと、接合ツールの没入速度(以下、ツール没入速度とも呼ぶ。)が大きいので、オフセット動作開始点でのツール押し込み量より、オフセット動作終点でのツール押し込み量が大きくなってしまう。また、接合ツールを傾斜させて、特許文献4で述べられているように接合ツールを押し込み方向に対して押し戻す力(以下、浮力と呼ぶ。)を得たとしても、浮力に比べてオフセット動作時加圧力が大きいとツール没入速度を抑えることは難しい。
オフセット動作開始点でのツール押し込み量より、オフセット動作終点でのツール押し込み量がより大きくなると、特に薄肉のワークを接合する場合や、比較的長い距離を接合ツールが移動する場合には、オフセット動作終点でのツール押し込み量が大きくなり、ワーク残厚(裏当て部材〜ツール間距離)が減少し、条件によってはワークを突き抜けてしまうという問題が生じる。
また、ワーク突き抜けを防止するために、オフセット動作開始点での押し込み量を小さくすると、押し込み量の減少に伴い、接合強度が低下するので、十分な接合強度が得られない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オフセット動作において、接合ツールの没入又は没入速度を抑えることのできる摩擦攪拌接合装置及びそれを用いた摩擦攪拌接合方法を提供することにある。
本発明は以下の態様を提供する。
(1)接合すべき板状のワークの裏面を支持する裏当て部材と、
前記ワークの表面側に、前記裏当て部材との間に前記ワークを挟むように位置する接合ツールと、
前記接合ツールを保持するツール保持部と、
前記ツール保持部をその回転軸線まわりに回転駆動する回転駆動手段と、
前記ツール保持部を前記ワークの表面の法線方向に沿って変位駆動することで、前記接合ツールを前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動させて、回転する前記接合ツールの先端を前記ワークの表面に押し付け、摩擦熱で軟化した前記ワークの材料の内部に前記接合ツールの先端を押し込む押し込み動作を行うと共にその押し込み量を調節する加圧軸と、
前記ツール保持部を前記ワークの表面方向に沿って移動させるオフセット動作を行うオフセット軸と、
前記ツール保持部を回転自在および前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動自在かつ前記ワークの表面方向に沿った方向に移動自在に支持する基体と、
該基体から延設されて、先端に前記裏当て部材が設けられたアームと、
前記回転駆動手段、前記加圧軸、およびオフセット軸を駆動制御する制御手段と、
を備えた摩擦攪拌接合装置であって、
前記制御手段は、押し込み動作時の加圧力よりも低い加圧力でオフセット動作を行なうか又は前記加圧軸を停止した状態でオフセット動作を行なうとともに、押し込み動作からオフセット動作に移行する際、加圧力変化に伴う前記アームの弾性変形量分だけ前記接合ツールを後退させてからオフセット動作を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
(2)前記接合ツールの軸線が、前記ワークの表面の法線方向に対して、オフセット動作における前記接合ツールの進行方向に該接合ツールの先端が先行するように僅かに傾斜していることを特徴とする(1)に記載の摩擦攪拌接合装置。
(3)前記制御手段は、オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット速度を一定に制御することを特徴とする(2)に記載の摩擦攪拌接合装置。
(4)前記制御手段は、オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット荷重を一定に制御することを特徴とする(2)に記載の摩擦攪拌接合装置。
(5)前記制御手段は、オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット速度を可変制御することを特徴とする(2)に記載の摩擦攪拌接合装置。
(6)前記制御手段は、オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット荷重を可変制御することを特徴とする(2)に記載の摩擦攪拌接合装置。
(7)接合すべき板状のワークの裏面を支持する裏当て部材と、
前記ワークの表面側に、前記裏当て部材との間に前記ワークを挟むように位置する接合ツールと、
前記接合ツールを保持するツール保持部と、
前記ツール保持部をその回転軸線まわりに回転駆動する回転駆動手段と、
前記ツール保持部を前記ワークの表面の法線方向に沿って変位駆動することで、前記接合ツールを前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動させて、回転する前記接合ツールの先端を前記ワークの表面に押し付け、摩擦熱で軟化した前記ワークの材料の内部に前記接合ツールの先端を押し込む押し込み動作を行うと共にその押し込み量を調節する加圧軸と、
前記ツール保持部を前記ワークの表面方向に沿って移動させるオフセット動作を行うオフセット軸と、
前記ツール保持部を回転自在および前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動自在かつ前記ワークの表面方向に沿った方向に移動自在に支持する基体と、
該基体から延設されて、先端に前記裏当て部材が設けられたアームと、を備えた摩擦攪拌接合装置を用いた摩擦攪拌接合方法であって、
押し込み動作時の加圧力よりも低い加圧力でオフセット動作を行なうか又は前記加圧軸を停止した状態でオフセット動作を行なうとともに、押し込み動作からオフセット動作に移行する際、加圧力変化に伴う前記アームの弾性変形量分だけ前記接合ツールを後退させてからオフセット動作を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
(8)前記接合ツールの軸線が、前記ワークの表面の法線方向に対して、オフセット動作における前記接合ツールの進行方向に該接合ツールの先端が先行するように僅かに傾斜していることを特徴とする(7)に記載の摩擦攪拌接合方法。
(9)オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット速度を一定に制御することを特徴とする(8)に記載の摩擦攪拌接合方法。
(10)オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット荷重を一定に制御することを特徴とする(8)に記載の摩擦攪拌接合方法。
(11)オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット速度を可変制御することを特徴とする(8)に記載の摩擦攪拌接合方法。
(12)オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット荷重を可変制御することを特徴とする(8)に記載の摩擦攪拌接合方法。
上記(1)及び(7)に記載の発明によれば、オフセット動作時においてオフセット動作時加圧力が押し込み動作時加圧力より低いか又は加圧軸を停止した状態でオフセット動作を行なうので、オフセット動作時の接合ツールの没入又は没入速度を抑えることができる。ただし、従来のようにワークを定盤のような剛性の高いテーブルの上にのせて接合する場合と異なり、剛性の低いアームを用いてワークを挟んでいるため、加圧力が変化するとアームの撓みも大きく変化し、接合ツールがワークを突き抜けてしまうという問題が生じるので、加圧力変化に伴うアーム弾性変形量分だけ接合ツールを後退させてからオフセット動作を行なうことで接合ツールがワークから突き抜けることを防止している。
上記(2)及び(8)に記載の発明によれば、接合ツールが傾斜しているので、接合ツールの進行方向のワーク母材が、接合ツールの先端のショルダー部にクサビ状に流入することになり、このワーク母材の流入が動圧を発生させ、浮力が発生する。接合ツールの傾斜角に応じた浮力が発生することによって、オフセット動作時加圧力又はアームの弾性変形によって保持されていた加圧力をある程度打ち消すことができる。よって、定盤などに比べて剛性が低いアームを用いた構成においても、接合ツールの傾斜角が0°の場合に比べ、接合ツールを傾斜させることによって、接合ツールの先端が過度にワーク内部に押し込まれることを抑制することができる。これにより、薄肉のワークを接合する場合や、比較的長い距離をツールが移動する場合においても接合ツールがワークを突き抜けてしまうおそれが低減される。また、オフセット動作開始点での押し込み量を大きく設定でき接合強度を向上させることができる。
上記(3)、(4)、(9)及び(10)に記載の発明によれば、オフセット動作時加圧力とオフセット動作での浮力が釣り合うことになるから、オフセット動作において接合ツールの押し込み量が増加することがより抑制される。よって、オフセット動作開始点での押し込み量を大きく設定でき接合強度を向上させることができる。
上記(5)、(6)、(11)及び(12)に記載の発明によれば、オフセット動作時加圧力が一定であるからアームの弾性変形量はオフセット動作中一定であり、加圧軸位置を検出することでツール押し込み量を推定することができる。特に、数点の接合を短時間で行う場合、接合ツールの温度上昇によって最適なオフセット速度あるいはオフセット荷重は変化してくるが、そのような場合でも加圧軸位置を検出し、加圧軸位置がオフセット中に押し込み方向に増加している場合にはオフセット速度あるいはオフセット荷重をあげることで接合ツールに作用する抵抗が増し、押し込み量の増加を回避できる。従って、多点接合を行う場合であっても押し込み量を安定させることができる。よって、オフセット動作開始点での押し込み量を大きく設定でき接合強度を向上させることができる。
本発明の第1実施形態の摩擦撹拌接合装置の側面図である。 図1の摩擦撹拌接合装置に組み込まれている2軸駆動ユニットの平面図である。 図2の2軸駆動ユニットの側面図である。 図2の2軸駆動ユニットに使用されているボールねじ一体型直動案内ユニットの断面図である。 摩擦撹拌接合装置の正面図であり、接合ツールが傾斜していることを示す図である。 同実施形態の作用説明用の拡大図で、(a)はワークの表面に接合ツールを回転させながら接近させている状態を示す図、(b)はワークの内部に接合ツールの先端のツールピンを没入させている押し込み動作時の状態を示す図、(c)は加圧力変化に伴うアームの弾性変形量分だけ接合ツールを後退させている動作を示す図であり、(d)は接合ツールをワークの表面方向に沿って移動させるオフセット動作を行っている状態を示す図、(e)はオフセット動作終了後にワークから接合ツールを退避させている状態を示す図である。 本発明の第2実施形態の摩擦撹拌接合装置を示す正面図であり、接合ツールが傾斜していないことを示す図である。 同実施形態の摩擦撹拌接合装置を用いて、比較例として、押し込み動作時加圧力と同じ加圧力でオフセット動作を行なった場合の作用説明用の拡大図で、(a)はワークの内部に接合ツールの先端のツールピンを没入させている押し込み動作終了時点の状態を示す図、(b)は接合ツールをワークの表面方向に沿って移動させるオフセット動作を行っている状態を示す図である。
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明の一実施形態の摩擦撹拌接合装置の側面図、図2は図1の摩擦撹拌接合装置に組み込まれている2軸駆動ユニットの平面図、図3は図2の2軸駆動ユニットの側面図、図4は図2の2軸駆動ユニットに使用されているボールねじ一体型直動案内ユニットの断面図、図5は摩擦撹拌接合装置の正面図である。
図1に示すように、この摩擦撹拌接合装置Mには、摩擦撹拌接合のための接合ツール1をワークに接近/離間させる加圧軸2と、接合ツール1を加圧軸2と略直交する方向に移動させるオフセット軸3と、接合ツール1をその中心軸Q(図5参照)まわりに回転させる旋回軸4とが設けられている。ここで、加圧軸2は、互いに直交するX軸とY軸のうちのX軸として設定され、オフセット軸3はY軸として設定されている。これら加圧軸2とオフセット軸3は、2軸駆動ユニット5の互いに直交する2軸をなしている。
図2及び図3に示すように、2軸駆動ユニット5は、第1のボールねじ一体型直動案内ユニット10Aと第2のボールねじ一体型直動案内ユニット10Bとを、両者の軸線方向を互いに直交する関係に設定して組み合わせることで構成されている。
加圧軸2(X軸)を構成する第1のボールねじ一体型直動案内ユニット10A及びオフセット軸3(Y軸)を構成する第2のボールねじ一体型直動案内ユニット10Bは、それぞれ、例えば図4に示すように、直動案内軸受11とボールねじ12の組み合わせで構成されている。
直動案内軸受11は、断面が略U字状に形成された案内レール13と、案内レール13のU字状の凹部内に配置されたスライダ14と、案内レール13とスライダ14の間に配置された複数の転動体15と、を備えている。案内レール13は、スライダ14と対向配置される各袖部13Aの内側面に転動面16Aを有し、スライダ14は、案内レール13の転動面16Aに対向配置される転動面16Bを有しており、案内レール13の転動面16Aとスライダ14の転動面16Bとの間に転動体(図ではコロ)15が介在され、それにより、スライダ14と案内レール13とが相対的に直線移動可能とされている。
この場合、案内レール13の転動面16Aとスライダ14の転動面16Bとの間には、転動体15の移動する転動通路16が左右それぞれ上下に二列、即ち全体で二対四列形成される。スライダ14には、転動体15の戻し通路16Dと、戻し通路16Dと転動通路16とを連通する方向転換路(図示略)とが形成され、転動体15が、転動通路16と方向転換路と戻し通路16Dとから構成される無限循環路を循環するようになっている。
また、ボールねじ12は、案内レール13と平行に形成されたボールねじナット17と、ボールねじナット17を貫通するボールねじ軸18と、ボールねじナット17の螺旋溝とボールねじ軸18の螺旋溝との間に配置された複数のボール19と、を備えている。そして、ボールねじ一体型直動案内ユニット10A、10Bは、ボールねじ12の要素であるボールねじナット17を直動案内軸受11の要素であるスライダ14に直接形成することにより、ボールねじ12と直動案内軸受11とを一体に備えた機構部品として構成されている。
また、2軸駆動ユニット5は、図3に示すように、第1、第2の2つのボールねじ一体型直動案内ユニット10A、10Bを、各ユニット10A、10Bの直動案内軸受11の案内方向(軸線方向)が互いに交差(本実施形態では略直交する)する2軸となるように、各ユニット10A、10Bのスライダ14を、互いのフランジ14a同士がボルト等の結合手段により結合して互いに組み合わせることにより構成されている。なお、2つのスライダ14は、最初から一体に成形してあってもよい。
第1、第2の2つのボールねじ一体型直動案内ユニット10A、10Bは、図2に示すように、X軸(加圧軸2)側の第1のボールねじ一体型直動案内ユニット10Aのスライダ14のスライダ中心PA(以下、「加圧軸スライダ中心」とも言う)と、Y軸(オフセット軸3)側の第2のボールねじ一体型直動案内ユニット10Bのスライダ14のスライダ中心PB(以下、「オフセット軸スライダ中心」とも言う)の位置を互いにずらしたうえで、両スライダ14同士を結合することにより、互いに組み合わせられており、2つのスライダ中心PA、PB間の距離(ずれ量Ls)は任意に設定されている。ここで、スライダ中心とは、スライダ上面から見て、長手軸方向に沿った有効長の中心且つスライダ断面の中心にある点である。
この場合、オフセット軸スライダ中心PBは、加圧軸スライダ中心PAに対して、オフセット軸3の軸線に沿って位置がずれている。すなわち、加圧軸スライダ中心PA上をオフセット軸3の軸線が通っており、そのオフセット軸3の軸線上にオフセット軸スライダ中心PBが位置している。しかも、オフセット軸スライダ中心PBは、加圧軸スライダ中心PAに対して、接合ツール1のオフセット動作時の進行方向YA(図2及び図5の紙面右方向)と逆の方向に位置がずれている。
図1に示すように、このように2軸駆動ユニット5を用いて加圧軸(X軸)2とオフセット軸(Y軸)3を構成した摩擦撹拌接合装置Mは、接合ツール1をワーク(図示略)に押し付けつつ回転させることにより、接合ツール1とワークの接触点に摩擦熱を発生させて当該接触点の周囲の材料を軟化させると共に撹拌し、それにより接合ツール1をワークに没入させ、没入後、接合ツール1をワークの表面方向に移動させることで、ワークを線状に接合するものである。
その際、接合ツール1は、ワークの表面側に、後述する裏当て部材52との間にワークを挟むように位置する。加圧軸2は、接合ツール1を加圧軸2の軸線方向に移動させてワークに接近/離間させる。すなわち、接合ツール1をワークの表面の法線方向に移動させて、回転する接合ツール1の先端をワークの表面に押し付け、摩擦熱で軟化したワークの材料の内部に接合ツール1の先端を押し込む押し込み動作を行なうと共に、その押し込み量を調節する役目を果たす。
また、オフセット軸3は、接合ツール1を加圧軸2と直交する方向であるワークの表面方向(Y軸)に移動させるオフセット動作を実行する役目を果たす。
加圧軸2を構成する第1のボールねじ一体型直動案内ユニット10Aの案内レール13は、摩擦攪拌接合装置Mの基体をなすもので、この案内レール13の下面には、プレート58を介して、C字形のアーム50の基端が固定されている。アーム50の先端は、片持状態で接合ツール1の先端に対向する位置の近くまで延びている。
また、オフセット軸3を構成する第2のボールねじ一体型直動案内ユニット10Bの案内レール(基体)13に、接合ツール1を回転自在に装着したスピンドル(ツール保持部)30が固定されている。従って、加圧軸2のスライダ14及びオフセット軸3の案内レール13は、それぞれ加圧軸2のボールねじ12及びオフセット軸3のボールねじ12によって駆動される。なお、加圧軸2のボールねじ12及びオフセット軸3のボールねじ12は、それぞれベルト41A、41Bを介して、加圧軸モータ42及びオフセット軸モータ43によって駆動される。加圧軸モータ42には、エンコーダ等の回転検出器が設けられており、加圧軸2のスライダ14の位置が検出可能に構成される。
接合ツール1は、旋回軸4を構成するスピンドル30によってツールホルダ35を介して回転自在に保持されたツール本体1aの先端面に、ツール本体1aよりも小径なツールピン1cを突設し、ツール本体1aの先端面におけるピン1cの取付部の周辺をショルダー部1bとして構成したものである。
スピンドル30は、オフセット軸3方向(図1のY軸方向)から見てワークの表面の法線方向に沿うように設定された回転軸線(接合ツール1の中心軸Qと一致)を有し、該回転軸線と同軸に接合ツール1を保持するものである。なお、この回転軸線は後述するようにオフセット軸3と加圧軸2に直交する方向(図5のZ軸方向)から見た場合、ワークの表面の法線方向に対し傾斜している。スピンドル30は、複数の軸受31を収容するスピンドルハウジング32と、軸受31と、軸受31によって回転可能に保持されたスピンドルシャフト33とによって構成され、スピンドルシャフト33の接合ツール1側には、接合ツール1を着脱可能に保持するツールホルダ35が設けられている。スピンドルシャフト33は、プーリ46とベルト47を介して旋回軸モータ(回転駆動手段)44によって駆動される。なお、スピンドル30と旋回軸モータ44は、旋回軸ブラケット48を介して、オフセット軸3の案内レール13の取り付け面13aに固定されている。
上述のようにベルト47を介してスピンドルシャフト33を駆動するようにしたことで、接合ツール1と旋回軸モータ44は芯違いになっており、芯違いとしたことで、接合ツール1の高さ、つまりは、2軸駆動ユニット5にとっての外部荷重の作用点を、取り付け面13a(オフセット軸3の案内レール13に旋回軸ブラケット48を固定している面)の法線方向(矢印Z方向、以下取り付け面法線方向とも呼ぶ。)に低く抑えることができるようになる。
これにより、加圧軸2のスライダ14に作用するピッチングモーメント及びオフセット軸3のスライダ14に作用するローリングモーメントを小さく抑えることができ、その結果、転動体15に作用する面圧を低減できるようになる。
また、オフセット軸3のスライダ14と加圧軸2のスライダ14を結合したことで、オフセット軸3の案内レール13がスピンドル30を支持する部材となるので、スピンドル30の取り付け面積を大きくとれると共に、接合ツール1からの加圧力をオフセット3の案内レール13の側面13bの大きな面積で受けることができるようになる。
旋回軸ブラケット48とオフセット軸3の案内レール13の側面13bとの間には、傾斜付与部材49が設けられおり、オフセット軸3と加圧軸2に直交する方向(図5のZ軸方向)から見て接合ツール1の中心軸Qが加圧軸2の軸線に対して傾斜している。傾斜の方向は、オフセット動作において、接合ツール1をオフセット(進行)させる方向である。つまり、接合ツール1の軸線(中心軸Q)は、図6に示すように、ワークWの表面の法線方向Hsに対して、オフセット動作における接合ツール1の進行方向YAに接合ツール1の先端が先行するように僅かに、例えば1°〜6°傾斜している。
図1に戻って、加圧軸2の案内レール13に基端部が固定されたC字形のアーム50の先端には、加圧力検出手段51及び裏当て部材52が設けられている。裏当て部材52は、図6に示すように、接合すべき板状のワークWの裏面を支持するもので、接合ツール1と裏当て部材52の間にワークWを挟むことで、ワークWに対して接合ツール1により加圧力を作用させることができるようになっている。
接合の際に、ワークWは、2枚以上の薄板を重ね合せて配置される。また、ワークWの最表面とオフセット軸3の案内レール13が平行となるように設定される。なお、ワークWは、表裏が平行な薄板同士であることが多いため、裏当て部材52のワーク接触面とオフセット軸3の案内レール13を平行に配置しているが、ワークWの形状によって適宜変えてもよい。例えば、ワークWがある角度をもった傾斜部材である場合には、裏当て部材52とオフセット軸3の案内レール13を傾斜部材の角度だけ傾けて配置してもよい。
また、この摩擦攪拌接合装置Mは、上述した旋回軸モータ44、加圧軸モータ42及びオフセット軸モータ43を駆動制御するための制御手段(図示略)を有している。この制御手段は、次のように制御を実行する。
まず、図6(a)のように、接合ツール1を回転させながら加圧軸2の駆動によって接合ツール1を押し込み方向XAに移動させ、接合ツール1をワークW1、W2を上下に重ね合わせたワークW表面に接触させる。次に、加圧軸2を一定の加圧力(押し込み動作時加圧力)で押圧制御し、接合ツール1の先端のツールピン1cとワークW間の摩擦によってワークWを軟化させ、図6(b)のように、ツールピン1cをワークWの中に回転させながら没入させ、接合ツール1を回転させながら、所定の押し込み量まで没入させるという押し込み動作を行う。
この押し込み動作では、アーム50が押し込み動作時加圧力に応じて撓むため、裏当て部材52が接合ツール1の押し込み動作に対して逃げてしまう。よって接合ツール1を目標の押し込み量まで押込むために、アーム50の弾性変形量δ分を補正して接合ツール1の位置決め動作を行なっている。
ワークWにショルダー部1bを接触させ、目標位置まで接合ツール1を没入させた後、図6(d)に示すように、接合ツール1を回転させながら、ワークWの表面に沿って接合ツール1を移動させるオフセット動作を行うが、図6(d)のオフセット動作時のオフセット動作時加圧力は、図6(b)の押し込み動作時の押し込み動作時加圧力よりも低く設定される。これに伴って、押し込み動作により目標位置まで接合ツール1を没入させた後、押し込み動作からオフセット動作に移行する際、加圧力変化に伴うアーム弾性変形量(図中、t)分だけ接合ツール1を後退(上昇)させる。このように接合ツール1を後退させた後、図6(d)に示すように、接合ツール1を回転させながら、押し込み動作時加圧力よりも低く設定されたオフセット動作時加圧力でワークWの表面に沿って接合ツール1を押圧しながら移動させるオフセット動作を行う。
そして、目標距離だけオフセット動作を行った後に、図6(e)に示すように、加圧軸2を押し込み動作の時と逆方向(XB方向)に駆動させて、接合ツール1をワークWより退避させる。
本実施形態では、オフセット動作時においてオフセット動作時加圧力が押し込み動作時加圧力より低くなるように制御手段が加圧軸2を押圧制御しているので、オフセット動作時の接合ツール1の没入又はツール没入速度を抑えることができる。ただし、従来のようにワークWを定盤のような剛性の高いテーブルの上にのせて接合する場合と異なり、剛性の低いアーム50を用いてワークWを挟んでいるため、加圧力が変化するとアーム50の撓みも大きく変化し、接合ツール1がワークWを突き抜けてしまうという問題が生じるので、加圧力変化に伴うアーム弾性変形量分だけ接合ツール1を後退させてからオフセット動作を行なうことで接合ツール1がワークWから突き抜けることを防止している。
例えば、押し込み動作時加圧力5kNが作用した際のアーム弾性変形量が2mmのアームを用いるとすると、オフセット動作時加圧力4kNの場合、アーム弾性変形量は1.6mmとなるから、加圧力変化に伴うアームの弾性変形量分である0.4mmだけ接合ツールを後退させる。板厚2mm、2枚のアルミ板を重ね合わせ接合を行なう場合、ツール〜裏当て部材間距離、つまり、ワーク残厚は0.4〜0.5mm程度とするのがよく、接合ツールを加圧力変化に伴うアーム弾性変形量分、後退させなければ接合ツールはワークを突き抜けてしまう。
なお、上記実施形態では、オフセット動作時においてオフセット動作時加圧力を押し込み動作時加圧力より低くなるように加圧軸2を押圧制御したが、加圧軸2を停止した状態でオフセット動作を行なってもよい。この場合でも、加圧力変化に伴うアーム弾性変形量分だけ接合ツール1を後退させてからオフセット動作を行なうことで接合ツール1がワークWから突き抜けることを防止できる。
また、本実施形態では、接合ツール1が傾斜しているので、オフセット動作において接合ツール1の進行方向のワーク母材が接合ツール1の先端のショルダー部1bにクサビ状に流入し、このワーク母材の流入が動圧を発生させ、接合ツール1を押し込み方向に対して押し戻す浮力を発生させる。接合ツール1の傾斜角に応じた浮力が発生することによって、オフセット動作時加圧力をある程度打ち消すことができる。よって、接合ツール1を傾斜させることにより後述する第2実施形態のような傾斜角0°の場合に比べて接合ツール1の没入をより抑えることができる。
また、オフセット動作の際、制御手段は、オフセット動作中の接合ツール1の押し込み量が一定となるようにオフセット動作時の速度(オフセット速度)、または、オフセット動作時の荷重(オフセット荷重)を一定に制御することが好ましい。これにより、オフセット動作時加圧力とオフセット動作での浮力が釣り合うことになるから、オフセット動作において接合ツール1の押し込み量が増加することがない。よって、オフセット動作開始点での押し込み量を大きく設定でき接合強度を向上させることができる。
また、制御手段は、オフセット動作中の加圧軸位置(加圧軸2のスライダ14の位置)を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット速度又はオフセット荷重を可変制御してもよい。オフセット動作時加圧力が一定であるからアーム50の弾性変形量はオフセット動作中一定であり、加圧軸2のスライダ14の位置を検出することで接合ツール1の押し込み量を推定することができる。特に、数点の接合を短時間で行う場合、接合ツール1の温度上昇によって最適なオフセット速度あるいはオフセット荷重は変化してくるが、そのような場合でも加圧軸2のスライダ14の位置を検出し、スライダ14の位置がオフセット中に押し込み方向に増加している場合にはオフセット速度あるいはオフセット荷重をあげることで、押し込み量が増加するのが抑制される。これは、接合ツール1の温度が上昇すると、これに伴ってワークWが軟化しやすくなり接合ツール1の移動時の抵抗が減少するが、オフセット速度又はオフセット荷重をあげることで接合ツール1に作用する抵抗が増すからである。従って、多点接合を行う場合であっても押し込み量を安定させることができる。よって、オフセット動作開始点での押し込み量を大きく設定でき接合強度を向上させることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。図7は、本発明の第2実施形態の摩擦撹拌接合装置を示す正面図である。本実施形態の摩擦攪拌接合装置Mは、図5に示す第1実施形態の摩擦攪拌接合装置Mと比べて明らかなように、スピンドル30の回転軸線(接合ツール1の中心軸Qと一致)はオフセット軸3と加圧軸2に直交する方向(図7のZ軸方向)から見た場合、ワークの表面の法線方向に対し傾斜していない。その他の構成については、第1実施形態の摩擦攪拌接合装置Mと同一の構成を有する。
本実施形態においても、オフセット動作時においてオフセット動作時加圧力が押し込み動作時加圧力より低くなるように制御手段が加圧軸2を押圧制御することで、オフセット動作時のツール没入速度を抑えることができる。また、加圧力変化に伴うアーム弾性変形量分だけ接合ツール1を後退させてからオフセット動作を行なうことで接合ツール1がワークWから突き抜けることが防止される。
次に、比較のため、第2実施形態の摩擦接合装置を用いて、押し込み動作時加圧力と同じ加圧力でオフセット動作を行なった場合について説明する。
図8は、比較例として、押し込み動作時加圧力と同じ加圧力でオフセット動作を行なった場合の作用説明用の拡大図で、(a)はワークの内部に接合ツールの先端のツールピンを没入させている押し込み動作終了時点の状態を示す図、(b)は接合ツールをワークの表面方向に沿って移動させるオフセット動作を行っている状態を示す図である。
押し込み動作では、上記実施形態と同様に、接合ツール1を回転させながら所定の押し込み量まで没入させる(図8(a))。
しかしながら、オフセット動作では、接合ツール1の傾斜角が0°なので、第1実施形態で説明したようなワーク母材の流入による浮力は発生しない。また、押し込み動作時加圧力とオフセット動作時加圧力とが同じなので、ツール没入速度も大きい。
よって、接合ツール1がワークWに押し込まれるに従って裏当て部材〜ツール間距離、つまりワーク残厚が減少する。よって、図8(b)のように、オフセット動作開始点での押し込み量より、オフセット動作終点での押し込み量が大きくなる。
オフセット動作開始点での押し込み量より、オフセット動作終点での押し込み量がより大きくなると、特に薄肉のワークWを接合する場合や、比較的長い距離を接合ツール1が移動する場合には、オフセット動作終点での押し込み量が大きくなり、ワーク残厚が減少し、条件によってはワークWを突き抜けてしまうという問題が生じる。また、ワーク突き抜けを防止するために、オフセット動作開始点での押し込み量を小さくすると十分な強度が得られない。
これに対し、本実施形態は、上述したように、オフセット動作時においてオフセット動作時加圧力が押し込み動作時加圧力より低くなるように制御手段が加圧軸2を押圧制御しているので、オフセット動作時の接合ツール1の没入又はツール没入速度を抑えることができ、さらに加圧力変化に伴うアーム弾性変形量分だけ接合ツール1を後退させてからオフセット動作を行なうことで接合ツール1がワークWから突き抜けることを防止することができる。
次に本発明の摩擦接合装置Mを用いた実施例について説明する。
《第1実施例》
第1実施例では、第1実施形態の摩擦接合装置においてオフセット動作中の接合ツールの押し込み量が一定となるようにオフセット速度を一定に制御した。
押し込み動作時加圧力5kNが作用した際のアーム弾性変形量が2mmのアームを用い、板厚2mm、2枚のアルミ板を重ね合せ接合を行うに際し、接合ツールショルダ径:8mm、接合ツール先端ピン:M3ねじ形状、接合ツール先端ピン高さ:3mm、接合ツール傾斜角:3°、押し込み時加圧力:5kN、オフセット動作時加圧力:4kN、接合ツール回転数:2000rpm、ツール後退量:0.4mm、オフセット開始点でのツール押し込み量:2.9mmにおいて、オフセット速度15mm/sとしたとき、加圧軸は押圧制御を行なっているが、オフセット動作時加圧力とワーク母材の流入によって発生した浮力とがほぼ釣り合っており、加圧軸はほぼ停止していた。よって、接合ツール〜裏当て部材間距離、つまり、ワーク残厚もほぼ一定であった。
《第2実施例》
第2実施例では、第1実施形態の摩擦接合装置においてオフセット動作中の接合ツールの押し込み量が一定となるようにオフセット荷重を一定に制御した。
押し込み動作時加圧力5kNが作用した際のアーム弾性変形量が2mmのアームを用い、板厚2mm、2枚のアルミ板を重ね合せ接合を行う場合、接合ツールショルダ径:8mm、接合ツール先端ピン:M3ねじ形状、接合ツール先端ピン高さ:3mm、接合ツール傾斜角:3°、押し込み時加圧力:5kN、オフセット動作時加圧力:4kN、接合ツール回転数:2000rpm、ツール後退量:0.4mm、オフセット開始点でのツール押し込み量2.9mmにおいて、オフセット荷重800Nとしたとき、加圧軸は押圧制御を行なっているが、オフセット動作時加圧力とワーク母材の流入によって発生した浮力とがほぼ釣り合っており、加圧軸はほぼ停止していた。よって、接合ツール〜裏当て部材間距離、つまり、ワーク残厚もほぼ一定であった。
上記第1実施例、第2実施例では、オフセット動作での浮力とオフセット動作時加圧力とがつりあうことになるから、オフセット動作において押し込み量が増加することがなかった。よって、オフセット動作開始点のツール押し込み量を大きく設定でき、接合強度を向上させることができる。
次に第3及び第4実施例では、多点接合を行なった。
《第3実施例》
第3実施例では、加圧軸モータのエンコーダ値をモニタし、加圧軸位置を検出した。1点目の接合においては第1実施例と同様の条件でオフセット速度を設定することで加圧軸は停止しているが、短時間で接合点数が増すにつれて加圧軸位置がオフセット中に押し込み方向に増加している様子が観察されたため、増加量がある閾値を超えた時点でオフセット速度を大きくした。
《第4実施例》
第4実施例では、加圧軸モータのエンコーダ値をモニタし、加圧軸位置を検出した。1点目の接合においては第2実施例と同様の条件でオフセット荷重を設定することで加圧軸は停止しているが、短時間で接合点数が増すにつれて加圧軸位置がオフセット中に押し込み方向に増加している様子が観察されたため、増加量がある閾値を超えた時点でオフセット荷重を大きくした。
上記第3実施例、第4実施例では、加圧軸のスライダの位置を検出し、スライダの位置がオフセット中に押し込み方向に増加している場合にはオフセット速度あるいはオフセット荷重をあげることで、多点接合においても押し込み量が増加することがなかった。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
例えば、加圧軸2のスライダ14の位置を検出するために加圧軸モータ42に設けられた回転検出器の代わりに、スライダ14の位置を直接検出可能なリニアスケールを設けてもよい。
M 摩擦撹拌接合装置
1 接合ツール
1a ツール本体
1b ショルダー部
1c ツールピン
2 加圧軸
3 オフセット軸
4 旋回軸
13 案内レール(基体)
30 スピンドル(ツール保持部)
42 加圧軸モータ
43 オフセット軸モータ
44 旋回軸モータ(回転駆動手段)
50 アーム
52 裏当て部材
W ワーク
Q 接合ツールの中心軸(回転軸線)

Claims (12)

  1. 接合すべき板状のワークの裏面を支持する裏当て部材と、
    前記ワークの表面側に、前記裏当て部材との間に前記ワークを挟むように位置する接合ツールと、
    前記接合ツールを保持するツール保持部と、
    前記ツール保持部をその回転軸線まわりに回転駆動する回転駆動手段と、
    前記ツール保持部を前記ワークの表面の法線方向に沿って変位駆動することで、前記接合ツールを前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動させて、回転する前記接合ツールの先端を前記ワークの表面に押し付け、摩擦熱で軟化した前記ワークの材料の内部に前記接合ツールの先端を押し込む押し込み動作を行うと共にその押し込み量を調節する加圧軸と、
    前記ツール保持部を前記ワークの表面方向に沿って移動させるオフセット動作を行うオフセット軸と、
    前記ツール保持部を回転自在および前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動自在かつ前記ワークの表面方向に沿った方向に移動自在に支持する基体と、
    該基体から延設されて、先端に前記裏当て部材が設けられたアームと、
    前記回転駆動手段、前記加圧軸、およびオフセット軸を駆動制御する制御手段と、
    を備えた摩擦攪拌接合装置であって、
    前記制御手段は、押し込み動作時の加圧力よりも低い加圧力でオフセット動作を行なうか又は前記加圧軸を停止した状態でオフセット動作を行なうとともに、押し込み動作からオフセット動作に移行する際、加圧力変化に伴う前記アームの弾性変形量分だけ前記接合ツールを後退させてからオフセット動作を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
  2. 前記接合ツールの軸線が、前記ワークの表面の法線方向に対して、オフセット動作における前記接合ツールの進行方向に該接合ツールの先端が先行するように僅かに傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合装置。
  3. 前記制御手段は、オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット速度を一定に制御することを特徴とする請求項2に記載の摩擦攪拌接合装置。
  4. 前記制御手段は、オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット荷重を一定に制御することを特徴とする請求項2に記載の摩擦攪拌接合装置。
  5. 前記制御手段は、オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット速度を可変制御することを特徴とする請求項2に記載の摩擦攪拌接合装置。
  6. 前記制御手段は、オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット荷重を可変制御することを特徴とする請求項2に記載の摩擦攪拌接合装置。
  7. 接合すべき板状のワークの裏面を支持する裏当て部材と、
    前記ワークの表面側に、前記裏当て部材との間に前記ワークを挟むように位置する接合ツールと、
    前記接合ツールを保持するツール保持部と、
    前記ツール保持部をその回転軸線まわりに回転駆動する回転駆動手段と、
    前記ツール保持部を前記ワークの表面の法線方向に沿って変位駆動することで、前記接合ツールを前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動させて、回転する前記接合ツールの先端を前記ワークの表面に押し付け、摩擦熱で軟化した前記ワークの材料の内部に前記接合ツールの先端を押し込む押し込み動作を行うと共にその押し込み量を調節する加圧軸と、
    前記ツール保持部を前記ワークの表面方向に沿って移動させるオフセット動作を行うオフセット軸と、
    前記ツール保持部を回転自在および前記ワークの表面の法線方向に沿った方向に移動自在かつ前記ワークの表面方向に沿った方向に移動自在に支持する基体と、
    該基体から延設されて、先端に前記裏当て部材が設けられたアームと、を備えた摩擦攪拌接合装置を用いた摩擦攪拌接合方法であって、
    押し込み動作時の加圧力よりも低い加圧力でオフセット動作を行なうか又は前記加圧軸を停止した状態でオフセット動作を行なうとともに、押し込み動作からオフセット動作に移行する際、加圧力変化に伴う前記アームの弾性変形量分だけ前記接合ツールを後退させてからオフセット動作を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
  8. 前記接合ツールの軸線が、前記ワークの表面の法線方向に対して、オフセット動作における前記接合ツールの進行方向に該接合ツールの先端が先行するように僅かに傾斜していることを特徴とする請求項7に記載の摩擦攪拌接合方法。
  9. オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット速度を一定に制御することを特徴とする請求項8に記載の摩擦攪拌接合方法。
  10. オフセット動作中のツール押し込み量が一定となるようにオフセット荷重を一定に制御することを特徴とする請求項8に記載の摩擦攪拌接合方法。
  11. オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット速度を可変制御することを特徴とする請求項8に記載の摩擦攪拌接合方法。
  12. オフセット動作中の加圧軸位置を検出し、該加圧軸位置の変化に応じてオフセット荷重を可変制御することを特徴とする請求項8に記載の摩擦攪拌接合方法。
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