JP2012155956A - 電線 - Google Patents

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Abstract

【課題】導体を被覆する被覆材自体の性能を大幅に変えることなく、耐摩耗性および低摩擦性を向上した電線を提供する。
【解決手段】ハロゲン系ポリマからなるエラストマに対し芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを分散させた組成物を最外層に被覆した電線である。前記組成物は、前記エラストマ100質量部に対し前記芳香族高分子繊維若しくは前記芳香族高分子パウダを5〜50質量部の範囲で分散させる。また、前記芳香族高分子繊維の繊維径が10〜150μmであり、さらに繊維長が50〜500μmの範囲であり、前記芳香族高分子パウダの粒径が10〜150μmの範囲である。
【選択図】なし

Description

本発明は、しゅう動環境下において耐摩耗性および低摩擦性に優れる電線に関するものである。
導体を絶縁被覆材で被覆した電線は、配線・布設時に電線管、ダクトなどの中を通したり、引きずりまわされたりする。また使用時には電線同士や他の部材と接触し、しゅう動させ使用される場合がある。このため耐摩耗性に優れることは勿論のこと、滑り性の良好な低摩擦性被覆材が要望されている。
これらを実現する手法として、グラファイト、二硫化モリブデン、4フッ化エチレン樹脂、シリコーン樹脂、滑剤などの固体潤滑剤を被覆材の組成物に混和する方法が一般的であるが、引張強さなどの機械的強度の大幅な低下を招くという欠点がある。
特開平9−320352号公報 特開2001−31903号公報 特開2003−7144号公報 特開2008−218061号公報
このような欠点を補うため様々な手法が検討されているが、必ずしも十分とは言えない状況にある。例えば混和する固体潤滑剤を微粉化する、シランカップリング剤により被覆材を表面処理する、などの方法が検討されているが、その効果は十分なものではない。このためこれらの手法では、その利用範囲が制限されることが多かった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、導体を被覆する被覆材自体の性能を大幅に変えることなく、耐摩耗性および低摩擦性を向上した電線を提供するものである。
上記目的を達成するために創案された本発明は、ハロゲン系ポリマからなるエラストマに対し芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを分散させた組成物を最外層に被覆した電線である。
前記組成物は、前記エラストマ100質量部に対し前記芳香族高分子繊維若しくは前記芳香族高分子パウダを5〜50質量部の範囲で分散させると良い。
前記組成物は、前記エラストマ100質量部に対し官能基含有化合物を1〜20質量部の範囲で分散させると良い。
前記芳香族高分子繊維若しくは前記芳香族高分子パウダが芳香族ポリアミドからなると良い。
前記芳香族高分子繊維若しくは前記芳香族高分子パウダがパラ型芳香族ポリアミドからなると良い。
前記芳香族高分子繊維の繊維径が10〜150μmであり、さらに繊維長が50〜500μmの範囲であると良い。
前記芳香族高分子パウダの粒径が10〜150μmの範囲であると良い。
本発明によれば、導体を被覆する被覆材自体の性能を大幅に変えることなく、耐摩耗性および低摩擦性を向上した電線を提供できる。
本発明者らは上記の目的を達成するため、エラストマに対し芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを分散させた組成物を電線またはケーブルの最外層として被覆することにより、被覆材自体の性能を大幅に変えることなく、耐摩耗性および低摩擦性を電線に付与することが可能となることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、ハロゲン系ポリマからなるエラストマに対し芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを分散させた組成物を最外層に被覆した電線である。ここで電線とは、導体を絶縁体で被覆した長尺体を有するものをいい、絶縁電線(導体を絶縁体で被覆した長尺体)の外周にシース層を有するケーブルを含むものである。
本発明に使用するエラストマとしては、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどのゴム系被覆材が挙げられるが、このようなポリマの中で特にクロロプレンゴム、ふっ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン系ポリマが望ましい。その理由は、高分子相互間の分子間力が高く、耐摩耗性などの機械特性に優れるためである。これらを単独あるいは他のポリマとブレンドして用いてもよい。またこれらの改質を目的に、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマ、エチレンエチルアクリレートコポリマなどのプラスチックをブレンドすることも可能である。
本発明では上記のエラストマに対し、芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを混和(分散)することにより、耐摩耗性が著しく向上ししかも摩擦係数を顕著に低減できる。
芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダとしては、芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミドイミド繊維、芳香族イミド繊維、芳香族ポリアミド繊維およびこれらのパウダなどが挙げられるが、特に耐摩耗性および低摩擦性に効果の大きい芳香族ポリアミド繊維若しくは芳香族ポリアミドパウダが好ましい。さらに芳香族ポリアミド繊維若しくは芳香族ポリアミドパウダとしてはパラ型およびメタ型の2種類に大別されるが、低摩擦化には前者のパラ型を用いるのが望ましい。
本発明では、芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダは併用することも可能であり、本明細書では、「芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを分散させた組成物」とは、芳香族高分子繊維および芳香族高分子パウダの、一方若しくは双方を分散させた組成物をいう。
このような芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを、エラストマ100質量部に対し5〜50質量部の範囲で混和する。限定値未満では目的とする低摩擦化への効果が小さく、また限定値を超えると成形性や伸びの低下が大きくなるためである。本発明の芳香族高分子繊維の繊維径は10〜150μmの範囲内で、さらに繊維長が50〜500μmの範囲であることが望ましく、限定値未満では凝集し分散性の著しい低下により押出外観の平滑性や機械的強度の低下が大きく、また限定値を超えると機械的強度の著しい低下を招く。一方、芳香族高分子パウダの粒径は10〜150μmの範囲とすることが望ましく、芳香族高分子繊維の場合と同様、限定値未満では凝集し分散性の著しい低下により押出外観の平滑性や機械的強度の低下が大きく、また限定値を越えると機械的強度の著しい低下を招く。
上記エラストマと芳香族高分子繊維とは親和性が必ずしも良いとは言えず、混和により引張強さや伸びなどの低下を招く場合が多い。このため両者の親和性を向上させるため鋭意検討した結果、官能基含有化合物を混和することが有効なことを見出した。官能基含有化合物(例えば、カルボン酸化合物)はエラストマ100質量部に対し、1〜20質量部の範囲で混和することが望ましいと言え、限定値未満では混和効果が小さく、また限定値を超えると表面にブルームアウトし成形外観を著しく低下させるという問題がある。ここで官能基含有化合物とはアクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウムなどの低分子量化合物や無水マレイン酸グラフトエチレン酢酸ビニルコポリマ、無水マレイン酸−エチレン−酢酸ビニルコポリマ、アクリル酸グラフトエチレン酢酸ビニルコポリマ、アクリル酸グラフトエチレンエチルアクリレートコポリマ、グリシジルメタクリレートグラフトエチレン酢酸ビニルコポリマなどに代表される分子内にC=O結合を有する変性ポリマが挙げられる。
本発明では上記組成に加え架橋させるため、架橋剤を加えることが一般的である。更には架橋助剤安定剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、着色剤、滑剤、軟化剤、可塑剤などの配合剤を適宜加えることも可能である。なお、これらの被覆材表面を効率よく改質するため架橋助剤安定剤としては、トリメチロールプロパントリメリテート、メタクリレートモノマ、フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレートなどの多官能モノマが有効である。
このような組成からなる被覆材を導体あるいは電線コア上に押出被覆後、加熱蒸気、高周波、遠赤外線などによる加熱、電子線などの電離性放射線などの照射、シランカップリング剤をエラストマにグラフトし、この脱水縮合によるシラン架橋などの架橋方法により架橋させることで、電線が製造される。
電子線照射では電子線加速器を用い空気中で照射することにより架橋は進行するが、より架橋を効率的に行うためには窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンなどの不活性ガス雰囲気下で照射することが好ましい。また照射温度は通常、常温で構わないが、高温とすることにより架橋をより促進することもできる。
以上要するに、本発明の電線では、ハロゲン系ポリマからなるエラストマに対し芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを分散させた組成物を最外層に被覆することで、被覆材自体の性能(引張特性など)を大幅に変えることなく、耐摩耗性および低摩擦性を向上することができる。
本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、種々の変更を加え得ることは勿論である。
表1に示す実施例及び比較例を基に、本発明を具体的に説明する。
被覆材については表1に示す配合組成に従い、100℃に保持した熱ロールで配合材を混合後、熱プレスにより180℃×10分の条件で架橋させ、厚さ1mm、縦150mm、横100mmのシートを作製した。次にこれらのシートの評価法について説明する。また、実施例、比較例においては、組成物の特性を評価するために試験材をシート状に成形し試験を行ったが、これらの電線またはケーブルの被覆材として最外層に用いた際にも同様の効果が得られる。
(1)耐摩耗性、摩擦係数(しゅう動特性)
試験にはスラスト摩耗試験装置を使用した。JIS K7218に準じ、シートサンプルを40mm角、厚さ1mmに裁断し試験片とし、相手材にはSUS304製の円筒リング(外径25.6mm、内径20.6mm、表面粗さRa0.2μm)を用いた。この円筒リングと改質した表面をしゅう動させ、試験を行った。
面圧0.1MPa、周速30m/分、測定時間60分、雰囲気はドライ中で、周囲温度は25℃とした。試験後、重量を測定し、重量変化から比摩耗量を算出すると共に、トルクから摩擦係数を計算した。この方法により各3点測定を行い、その算術平均を表1に示した。
(2)引張試験(引張特性)
JIS K3005に準拠し、冶具によりダンベル3号試験片をシートから各5本取った。引張試験は引張速度500mm/分、標線間距離20mmとし、温度20℃の雰囲気で行い、引張強さおよび破断伸びを測定した。表1には各5点の算術平均を示した。
表1に示すように、実施例1〜7はいずれも比摩耗量が小さく耐摩耗性に優れ、また摩擦係数も小さく優れたしゅう動特性を示す。
これに対し、芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを混和していない、あるいは混和量が限定値未満の比較例1,2は摩擦係数が高い。また芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダの混和量が限定値を越えている比較例3では摩擦係数は大幅に低下するが、引張強さの著しい低下を生じ強靱性に欠ける。また芳香族系以外の高分子パウダを用いた比較例4、および高分子繊維ではない炭素繊維を用いた比較例5ではいずれも摩擦係数が高く、低摩擦性に欠ける。
以上説明してきた本発明によれば、実施例と比較例の対比からも明らかなように、優れた耐摩耗性、低摩擦性を実現することが可能となり、電線の長寿命化および布設時および使用時のハンドリング性向上などに対し貢献するものである。

Claims (7)

  1. ハロゲン系ポリマからなるエラストマに対し芳香族高分子繊維若しくは芳香族高分子パウダを分散させた組成物を最外層に被覆したことを特徴とする電線。
  2. 前記組成物は、前記エラストマ100質量部に対し前記芳香族高分子繊維若しくは前記芳香族高分子パウダを5〜50質量部の範囲で分散させた請求項1記載の電線。
  3. 前記組成物は、前記エラストマ100質量部に対し官能基含有化合物を1〜20質量部の範囲で分散させた請求項2記載の電線。
  4. 前記芳香族高分子繊維若しくは前記芳香族高分子パウダが芳香族ポリアミドからなる請求項1〜3いずれか記載の電線。
  5. 前記芳香族高分子繊維若しくは前記芳香族高分子パウダがパラ型芳香族ポリアミドからなる請求項1〜4いずれか記載の電線。
  6. 前記芳香族高分子繊維の繊維径が10〜150μmであり、さらに繊維長が50〜500μmの範囲である請求項1〜5いずれか記載の電線。
  7. 前記芳香族高分子パウダの粒径が10〜150μmの範囲である請求項1〜5いずれか記載の電線。
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