JP2012153965A - 高圧水電解装置の運転方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】温調用デバイスを不要することができ、システム全体の小型化及びシステム効率の向上を容易に図ることを可能にする。
【解決手段】水電解システム10の運転方法は、高圧水電解装置12に供給される循環水の温度を検出する工程と、前記循環水の温度が上昇する運転起動時に、定格運転時の電流密度よりも低い低電流密度で運転する工程と、前記循環水の温度が一定の温度範囲内に維持される際、前記定格運転に移行したと判断する工程と、前記定格運転時に、前記循環水の温度に基づいて予め設定された電流密度で運転する工程とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、供給される循環水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に前記酸素よりも高圧な水素を発生させる高圧水電解装置の運転方法に関する。
例えば、燃料電池を発電させるために、燃料ガスとして水素ガスが使用されている。一般的に、この水素ガスを製造する際に、水電解装置が採用されている。水電解装置は、水を分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜(イオン交換膜)を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、アノード側給電体及びカソード側給電体を配設してセルが構成されている。
そこで、複数のセルが積層(スタック)された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に循環水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素イオン(プロトン)と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってセルから排出される。
この種の水電解装置の起動時に、通常、供給される循環水の温度が低く、且つスタックの電気抵抗が高くなるとともに、高圧水素を生成するための昇圧エネルギを必要としている。このため、図5に示すように、水電解装置の起動時に、一定電流(定格運転時と同様の電流)を流すと、セル電圧の急激な上昇が惹起されてしまう。これにより、電源容量による閾値(セル電圧閾値)を超えるセル電圧が発生するという問題がある。
そこで、例えば、特許文献1に開示されている水電解装置が知られている。この水電解装置は、図6に示すように、高分子電解質膜を用いた水電解槽1を備えており、前記水電解槽1には、電力源(太陽電池)2から電力が供給されるようになっている。
水電解槽1の陽極側及び陰極側には、それぞれO気液分離器3及びH気液分離器4が接続されるとともに、前記O気液分離器3及び前記H気液分離器4には、下降管3a及び下降管4aが接続されている。下降管3a及び下降管4aは、途上で合流しており、その合流点と水電解槽1との間には、熱交換器5が配置されている。
熱交換器5には、冷却水の供給ライン6と温水の供給ライン7とが接続されるとともに、前記供給ライン6、7には、それぞれ開閉弁8a、8bが配置されている。
そして、水電解槽1の温度が規定値よりも低いと判断されると、温水の供給ライン7の開閉弁8bが開放され、熱交換器5に前記温水が供給されている。さらに、水電解槽1の温度が規定値以上に上昇すると、電力源2から水電解槽1に電力の供給が開始されるとともに、開閉弁8bが閉塞される一方、開閉弁8aが開放されて熱交換器5に冷却水が供給され、定格運転にはいる、としている。
特開平7−126883号公報
しかしながら、上記の特許文献1では、水電解槽1に供給される循環水の温度を調整するために、熱交換器5及び温水の供給ライン7等の温調用デバイスが設けられている。従って、システム全体が大型化するとともに、温調用デバイスの消費電力によるシステム効率の低下が惹起されるという問題がある。
本発明はこの種の問題を解決するものであり、温調用デバイスを不要することができ、システム全体の小型化及びシステム効率の向上を容易に図ることが可能な高圧水電解装置の運転方法を提供することを目的とする。
本発明は、電解質膜の両側に給電体が設けられ、供給される循環水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に前記酸素よりも高圧な水素を発生させる高圧水電解装置の運転方法に関するものである。
この運転方法では、循環水の温度を検出する工程と、前記循環水の温度が上昇する運転起動時に、定格運転時の電流密度よりも低い低電流密度で運転する工程と、前記循環水の温度が一定の温度範囲内に維持される際、前記定格運転時に移行したと判断する工程と、前記定格運転時に、前記循環水の温度に基づいて予め設定された電流密度で運転する工程とを有している。
また、この運転方法では、運転起動時における低電流密度は、循環水の温度の上昇を検知し、予め取得したデータのマップ制御により変化させることが好ましい。
さらに、この運転方法では、定格運転時における電流密度は、循環水の温度から、予め取得したデータのマップ制御により発電効率が最も高くなる電流密度に設定されることが好ましい。
本発明によれば、循環水温度が比較的低い運転起動時に、定格運転時の電流密度よりも低い低電流密度で運転するため、セル電圧の急激な上昇が惹起することを確実に阻止することができる。従って、電源容量を有効に小さく設定することが可能になり、前記電源のコンパクト化が図られる。しかも、温調用デバイスを不要することができ、システム全体の小型化及びシステム効率の向上を容易に図ることが可能になる。
本発明の実施形態に係る運転方法が適用される水電解システムの概略構成説明図である。 前記運転方法を説明する起動時の電流制御マップ及び定格時の電流制御マップの説明図である。 前記運転方法を説明するフローチャートである。 前記起動時及び前記定格時における電圧、電流、温度及び電圧閾値の説明図である。 従来の起動時におけるセル電圧の上昇の説明図である。 特許文献1に開示されている水電解装置の概略説明図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る運転方法が適用される水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって酸素及び高圧水素(酸素よりも高圧な水素)を製造する高圧水電解装置12と、前記水を前記高圧水電解装置12に循環させる水循環装置14と、前記高圧水電解装置12から排出されるガス成分(酸素ガス及び水素ガス)を、前記水循環装置14内の水から分離し、前記水を貯留する気液分離装置16と、前記気液分離装置16に市水から生成された純水を供給する水供給装置18と、コントローラ(制御用ECU)20とを備える。
高圧水電解装置12は、複数の単位セル24を積層して構成される。単位セル24の積層方向一端には、ターミナルプレート26a、絶縁プレート28a及びエンドプレート30aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル24の積層方向他端には、同様にターミナルプレート26b、絶縁プレート28b及びエンドプレート30bが外方に向かって、順次、配設される。エンドプレート30a、30b間は、一体的に締め付け保持される。
ターミナルプレート26a、26bの側部には、端子部34a、34bが外方に突出して設けられる。端子部34a、34bは、配線36a、36bを介して電源(直流電源)38に電気的に接続される。
単位セル24は、円盤状の電解質膜・電極構造体42と、この電解質膜・電極構造体42を挟持するアノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46とを備える。アノード側セパレータ44及びカソード側セパレータ46は、円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材又は金属板等で構成される。
電解質膜・電極構造体42は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜48と、前記固体高分子電解質膜48の両面に設けられるアノード側給電体50及びカソード側給電体52とを備える。
固体高分子電解質膜48の両面には、アノード電極触媒層50a及びカソード電極触媒層52aが形成される。アノード電極触媒層50aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層52aは、例えば、白金触媒を使用する。アノード側給電体50及びカソード側給電体52は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。
単位セル24の外周縁部には、積層方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔56と、反応により生成された酸素及び未反応の水(混合流体)を排出するための排出連通孔58と、反応により生成された高圧水素を流すための水素連通孔60とが設けられる。
アノード側セパレータ44の電解質膜・電極構造体42に向かう面には、第1流路62が設けられる一方、カソード側セパレータ46の前記電解質膜・電極構造体42に向かう面には、第2流路64が形成される。
水循環装置14は、高圧水電解装置12の水供給連通孔56に連通する循環配管66を備える。この循環配管66は、循環ポンプ68及びイオン交換器70を配置するとともに、気液分離装置16を構成する貯留器72の底部に設けられた導出口72aに接続される。貯留器72の底部に設けられた導入口72bには、戻り配管74の一端部が連通する一方、前記戻り配管74の他端部は、高圧水電解装置12の排出連通孔58に連通する。
貯留器72には、水供給装置18に接続された純水供給配管76と、希釈用空気を供給するブロア(送風部)78に接続された送風配管80と、前記貯留器72で純水から分離されたガス成分(酸素ガス及び水素ガス)を排出するための酸素排気配管82とが連結される。
高圧水電解装置12の水素連通孔60には、高圧水素配管84の一端が接続される。この高圧水素配管84の他端は、図示しない高圧水素供給部(燃料タンクや燃料電池自動車等)に接続される。
高圧水電解装置12には、循環供給される水(循環水)の温度を検出するための温度センサ86が設けられる一方、電源38には、電流値を検出するための電流計88が設けられる。温度センサ86及び電流計88の出力信号は、コントローラ20に送られる。
コントローラ20には、図2に示すように、運転起動時の電流値Astart-mapの制御マップと、定格運転の電流値Asteady-mapの制御マップとが、予め取得したデータから設定される。図2中、スタック効率とは、電圧効率×電流効率の値であり、発電効率(電力効率)ともいう。また、循環水温度T1℃<循環水温度T2℃<循環水温度T3℃の関係を有する。
運転起動時とは、循環水温度Tが上昇して前記循環水温度Tが一定の温度範囲内に維持されるまでの間をいい、定格運転時の電流密度よりも低い低電流密度で運転される。低電流密度は、循環水温度Tの上昇を検知し、予め取得したデータのマップ制御により変化させるものである。例えば、循環水温度Tにおける発電効率が最も高くなる電流密度に設定可能である。
定格運転時とは、循環水温度Tが一定の温度範囲内に維持された状態であり、電流密度は、前記循環水温度Tから、予め取得したデータのマップ制御により発電効率が最も高くなる電流密度に設定される。
このように構成される水電解システム10の制御方法について、図3のフローチャートに沿って、以下に説明する。
水電解システム10の起動前には、水供給装置18を介して市水から所定量の純水を生成するためのアイドリング運転が行われる(ステップS1)。アイドリング運転時には、水供給装置18により生成された純水は、気液分離装置16を構成する貯留器72に供給される。そして、水電解システム10が起動されたと判断されると(ステップS2中、YES)、ステップS3に進んで循環水温度Tが検出される。
水電解システム10の起動時には、循環水温度Tが低温から上昇しており、運転起動時の電流値Astart-mapの制御マップ(図2参照)に沿って、水電解処理が遂行される。
図1に示すように、水循環装置14では、循環ポンプ68の作用下に、貯留器72内の水が循環配管66を介して高圧水電解装置12の水供給連通孔56に供給される。また、ターミナルプレート26a、26bの端子部34a、34bには、電気的に接続されている電源38を介して電圧が付与される。
このため、各単位セル24では、水供給連通孔56からアノード側セパレータ44の第1流路62に水が供給され、この水がアノード側給電体50内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層50aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜48を透過してカソード電極触媒層52a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
これにより、カソード側セパレータ46とカソード側給電体52との間に形成される第2流路64に沿って水素が流動する。この水素は、水供給連通孔56よりも高圧に維持されており、水素連通孔60を流れて高圧水電解装置12の外部に高圧水素配管84を介して取り出し可能となる。
一方、第1流路62には、反応により生成した酸素と、未反応の水とが流動しており、これらの混合流体が排出連通孔58に沿って水循環装置14の戻り配管74に排出される。さらに、第2流路64の水素は、第1流路62の混合流体よりも高圧に維持されており、前記水素の一部が固体高分子電解質膜48を透過して前記第1流路62にリークする。
未反応ガスの水及びガス成分(酸素ガスと透過した水素ガス)は、貯留器72に導入されて気液分離された後、水は、循環ポンプ68を介して循環配管66からイオン交換器70を通って水供給連通孔56に導入される。水から分離されたガス成分は、ブロア78から供給される希釈用空気によって希釈された後、酸素排気配管82から外部に排出される。
この場合、循環水温度Tが比較的低い運転起動時には、定格運転時の電流密度よりも低い低電流密度で運転されている。すなわち、図2に示すように、運転起動時の電流値Astart-mapの制御マップにより運転制御されている。その際、循環水温度Tの上昇に伴って低電流密度が変更される。
このため、図4に示すように、セル電圧の急激な上昇が惹起することを確実に阻止することができる。従って、電源38の容量を有効に小さく設定することが可能になり、前記電源38のコンパクト化が図られる。しかも、温調用デバイスを不要することができ、水電解システム10全体の小型化及びシステム効率の向上を容易に図ることが可能になるという効果が得られる。
次に、ステップS5に進んで、循環水温度Tが一定の温度範囲内に維持されると判断されると(ステップS5中、YES)、定格運転に移行したと判断されてステップS6に進む。このステップS6では、図2に示すように、定格運転の電流値Asteady-mapの制御マップにより運転制御される。
ここで、定格運転の電流値Asteady-mapは、検出された循環水温度Tにおける発電効率が最も高くなる電流密度に設定されている。これにより、各単位セル24は、効率的な発電が遂行され、高圧水電解装置12による水素製造作業が効率的に行われるという利点が得られる。
10…水電解システム 12…高圧水電解装置
14…水循環装置 16…気液分離装置
18…水供給装置 20…コントローラ
24…単位セル 38…電源
42…電解質膜・電極構造体 44…アノード側セパレータ
46…カソード側セパレータ 48…固体高分子電解質膜
50…アノード側給電体 52…カソード側給電体
56…水供給連通孔 58…排出連通孔
60…水素連通孔 62、64…流路
66…循環配管 68…循環ポンプ
72…貯留器 74…戻り配管
76…純水供給配管 78…ブロア
82…酸素排気配管 84…高圧水素配管
86…温度センサ 88…電流計

Claims (3)

  1. 電解質膜の両側に給電体が設けられ、供給される循環水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に前記酸素よりも高圧な水素を発生させる高圧水電解装置の運転方法であって、
    前記循環水の温度を検出する工程と、
    前記循環水の温度が上昇する運転起動時に、定格運転時の電流密度よりも低い低電流密度で運転する工程と、
    前記循環水の温度が一定の温度範囲内に維持される際、前記定格運転時に移行したと判断する工程と、
    前記定格運転時に、前記循環水の温度に基づいて予め設定された電流密度で運転する工程と、
    を有することを特徴とする高圧水電解装置の運転方法。
  2. 請求項1記載の運転方法において、前記運転起動時における前記低電流密度は、前記循環水の温度の上昇を検知し、予め取得したデータのマップ制御により変化させることを特徴とする高圧水電解装置の運転方法。
  3. 請求項1又は2記載の運転方法において、前記定格運転時における前記電流密度は、前記循環水の温度から、予め取得したデータのマップ制御により発電効率が最も高くなる電流密度に設定されることを特徴とする高圧水電解装置の運転方法。
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