JP2012150982A - 酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導線材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、基材11と中間層と酸化物超電導層と銀層14とがこの順に積層されてなる超電導積層体5と、超電導線積層体5よりも幅広の第1金属テープ1および第2金属テープ2を準備する第1工程と、超電導積層体5の基材11側に第1金属テープ1を配し、銀層14側に第2金属テープ2を配して、第1金属テープ1と第2金属テープ2により超電導積層体5を挟む第2工程と、第1金属テープ1と第2金属テープ2の幅方向端部1a、2aが重ね合わされるように成形する第3工程と、第1金属テープ1と第2金属テープ2の幅方向端部1a、2aをレーザ溶接する第4工程を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導線材およびその製造方法に関する。
近年になって発見されたRE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度以上で超電導性を示し、電流損失が低いため、実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体あるいは磁気コイル等として使用することが要望されている。この酸化物超電導体を線材に加工するための方法として、金属基材テープ上に酸化物超電導層を形成する方法が研究されている。
酸化物超電導線材にあっては、酸化物超電導層上に薄い銀の安定化層を形成し、その上に銅などの良導電性金属材料からなる厚い安定化層を設けた2層構造の安定化層を積層する構造が採用されている。前記銀の安定化層は、酸化物超電導層を酸素熱処理する際に酸素量の変動を調節する目的のためにも設けられており、銅の安定化層は、酸化物超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたとき、該酸化物超電導層の電流を転流させるバイパスとして機能させるための目的で設けられている。
2層構造の安定化層を形成する技術の一例として、酸化物超電導層の上にスパッタリングにより薄い銀の安定化層を設けた後、線材全体を硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬し、電気めっきにより銀の安定化層上に銅の安定化層を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。また、酸化物超電導層の上に銀の安定化層を設けた線材と銅製の安定化材テープとをはんだを介して重ね合わせて加熱・加圧ロールに通すことによって、銀の安定化層上に銅の安定化層を形成する技術も知られている(特許文献2参照)。
特開2007−80780号公報 特開2009−48987号公報
RE−123系酸化物超電導層の特定組成のものは水分により劣化しやすく、線材を水分の多い環境に保管した場合や、線材に水分が付着した状態のまま放置した場合に、酸化物超電導層に水分が浸入すると、超電導特性が低下する要因となる。
引用文献1のようにめっき処理して銅の安定化層を形成した構造では、銅めっき部に欠陥があるとめっき欠陥部から水分が浸入して酸化物超電導層に達し、酸化物超電導層が劣化してしまう虞がある。
引用文献2のように銀の安定化層上に銅製の安定化材テープを積層して銅の安定化層を形成する技術では、銅の安定化層にめっき欠陥部が形成される問題はない。しかし、銀の安定化層の上面のみが銅の安定化層で保護される構造であるため、水分によりダメージを受けやすい酸化物超電導層の側面が外部に露呈しているため、製造工程中などに水分が浸入することにより超電導特性の低下を引き起こす虞がある。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みなされたものであり、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、基材と中間層と酸化物超電導層と銀層とがこの順に積層されてなる超電導積層体と、該超電導線積層体よりも幅広の第1金属テープおよび第2金属テープを準備する第1工程と、前記超電導積層体の前記基材側に前記第1金属テープを配し、前記銀層側に前記第2金属テープを配して、前記第1金属テープと前記第2金属テープにより前記超電導積層体を挟む第2工程と、前記第1金属テープと前記第2金属テープの幅方向端部が重ね合わされるように成形する第3工程と、前記第1金属テープと前記第2金属テープの幅方向端部をレーザ溶接する第4工程を備えることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、超電導積層体を第1金属テープおよび第2金属テープで挟み、第1金属テープと第2金属テープの端部をレーザ溶接して連続的に接合する構成である。そのため、第1金属テープと第2金属テープの端部を隙間なく接合することができ、超電導積層体の周面全てが外部から遮蔽された構造の酸化物超電導線材を製造できる。従って、本発明の酸化物超電導線材の製造方法によれば、酸化物超電導層への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる酸化物超電導線材を提供できる。また、レーザ溶接により第1金属テープと第2金属テープを接合することにより、形成されるレーザ溶接部の接合強度が強いので、機械的強度が高い酸化物超電導線材を提供できる。
また、本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、レーザ溶接により第1金属テープ1と第2金属テープ2の端部同士を局所的に加熱して溶接することができるため、レーザ溶接時の熱が酸化物超電導層まで伝熱することがなく、溶接時に酸化物超電導層が熱により劣化することがない。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記第4工程のレーザ溶接時にレーザが照射される側の金属テープのレーザ照射面の表面粗さRaを10μm以上とすることが好ましい。
レーザ溶接時にレーザ照射される金属テープの表面粗さRaを10μm以上とすることにより、金属テープが銅等の反射率の高い金属材料より構成される場合にも、汎用のレーザーを使用して、良好な製造速度で溶接を行うことができる。また、金属テープにより反射されるレーザ光を低減できるので、レーザ加工機へのレーザ光の反射も低減され、レーザ加工機がレーザ光により劣化しやすくなることを抑制できる。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法において、前記銀層上に導電性の接合層を介して良導電性材料よりなる前記第2金属テープを配することもできる。
この場合、製造される酸化物超電導線材は、銀層と金属テープが接合層により電気的および機械的に接合され、且つその接合が強固となるので、接続抵抗が低下して酸化物超電導を安定化する効果が向上する。
上記課題を解決するため、本発明の酸化物超電導線材は、基材と中間層と酸化物超電導層と銀層とがこの順に積層されて超電導積層体が構成され、前記超電導積層体が前記基材側に配され該超電導積層体より幅広の第1金属テープと前記銀層側に配され該超電導積層体より幅広の第2金属テープにより挟まれており、前記第1金属テープと前記第2金属テープの幅方向端部がレーザ溶接部により接合されてなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導線材は、超電導積層体が第1金属テープおよび第2金属テープで挟み込まれ、第1金属テープと第2金属テープの端部がレーザ溶接によるレーザ溶接部により連続的に接合された構成である。そのため、第1金属テープと第2金属テープの端部が隙間なく接合されており、超電導積層体の周面全てが外部から遮蔽された構造が実現できる。このような構成にすることで、酸化物超電導層への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。また、レーザ溶接により第1金属テープと第2金属テープが接合されているため、接合強度が強く、機械的強度が高い酸化物超電導線材となる。よって、例えば、超電導コイル形成のためにコイル加工を行っても接合部が破れることがない。
本発明の酸化物超電導線材において、前記第2金属テープが良導電性材料よりなり、前記銀層上に導電性の接合層を介して前記第2金属テープが配されてなることが好ましい。
この場合、第2金属テープが良導電性材料より構成されるので、酸化物超電導層が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたときに、第2金属テープが銀層とともに、酸化物超電導層の電流が転流するバイパスとして機能する。さらに、第2金属テープと銀層が導電性の接合層により電気的および機械的に接続されることにより、銀層と第2金属テープとの接合が強固となり、接続抵抗が低下するため、酸化物超電導を安定化する効果を向上できる。
本発明によれば、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができる酸化物超電導線材及びその製造方法が提供される。
本発明に係る酸化物超電導線材の一実施形態を示す断面斜視図である。 図1に示す酸化物超電導線材に組み込まれている超電導積層体の一例構造を示す断面斜視図である。 図3(a)は本発明に係る酸化物超電導線材のレーザ接合部の構造の一例を示す断面模式図であり、図3(b)は本発明に係る超電導線材のレーザ接合部の構造の他の例を示す断面模式図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法の一実施形態の工程を説明するための工程説明図である。 本発明に係る酸化物超電導線材の他の実施形態を示す断面図である。 実施例および比較例1、2の酸化物超電導線材の耐久試験結果を示すグラフである。
以下、本発明に係る酸化物超電導線材の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る酸化物超電導線材の一実施形態を模式的に示す概略断面図であり、図2は図1に示す酸化物超電導線材に組み込まれている超電導積層体の一例構造を示す断面斜視図である。
図2に示す超電導積層体5は長尺テープ状の基材11の上に、中間層12と酸化物超電導層13と銀層14を順次積層してなる。図1に示す酸化物超電導線材10は、超電導積層体5の基材11側の面を覆うように第1金属テープ1が配され、超電導積層体5の銀層14側の面を覆うように第2金属テープ2が配され、第1金属テープ1と第2金属テープ2により超電導積層体5が挟まれた構造となっている。第1金属テープ1および第2金属テープ2は、超電導積層体5よりも幅広(幅方向の長さが長い)であり、第1金属テープ1と第2金属テープ2は、それらの幅方向の両側の端部1a、2aがレーザ溶接部7により接合されている。第2金属テープ2は、銀層14側から超電導積層体5の側面側へと曲げ部2Kで曲げられており、その端部2aにおいて平面形状の第1金属テープ1の端部1aと重ね合わせられて、レーザ溶接部7により接合されている。
基材11は、通常の超電導線材の基材として使用し得るものであれば良く、長尺のプレート状、シート状又はテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。耐熱性の金属の中でも、合金が好ましく、ニッケル(Ni)合金又は銅(Cu)合金がより好ましい。中でも、市販品であればハステロイ(商品名、ヘインズ社製)が好適であり、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。また、基材11としてニッケル(Ni)合金などに集合組織を導入した配向金属基材を用い、その上に中間層12および酸化物超電導層13を形成してもよい。
基材11の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。下限値以上とすることで強度が一層向上し、上限値以下とすることでオーバーオールの臨界電流密度を一層向上させることができる。
中間層12は、酸化物超電導層13の結晶配向性を制御し、基材11中の金属元素の酸化物超電導層13への拡散を防止するものである。さらに、基材11と酸化物超電導層13との物理的特性(熱膨張率や格子定数等)の差を緩和するバッファー層として機能し、その材質は、物理的特性が基材11と酸化物超電導層13との中間的な値を示す金属酸化物が好ましい。中間層12の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物が例示できる。
中間層12は、単層でも良いし、複数層でも良い。例えば、前記金属酸化物からなる層(金属酸化物層)は、結晶配向性を有していることが好ましく、複数層である場合には、最外層(最も酸化物超電導層13に近い層)が少なくとも結晶配向性を有していることが好ましい。
中間層12は、基材11側にベッド層が介在された複数層構造でもよい。ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層は、必要に応じて配され、例えば、イットリア(Y)、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al、「アルミナ」とも呼ぶ)等から構成される。このベッド層は、例えばスパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜200nmである。
さらに、本発明において、中間層12は、基材11側に拡散防止層とベッド層が積層された複数層構造でもよい。この場合、基材11とベッド層との間に拡散防止層が介在された構造となる。拡散防止層は、基材11の構成元素拡散を防止する目的で形成されたもので、窒化ケイ素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、あるいは希土類金属酸化物等から構成され、その厚さは例えば10〜400nmである。なお、拡散防止層の結晶性は問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すればよい。
このように基材11とベッド層との間に拡散防止層を介在させることにより、中間層12を構成する他の層や酸化物超電導層13等を形成する際に、必然的に加熱されたり、熱処理される結果として熱履歴を受ける場合に、基材11の構成元素の一部がベッド層を介して酸化物超電導層13側に拡散することを効果的に抑制することができる。基材11とベッド層との間に拡散防止層を介在させる場合の例としては、拡散防止層としてAl、ベッド層としてYを用いる組み合わせを例示することができる。
また中間層12は、前記金属酸化物層の上に、さらにキャップ層が積層された複数層構造でも良い。キャップ層は、酸化物超電導層13の配向性を制御する機能を有するとともに、酸化物超電導層13を構成する元素の中間層12への拡散や、酸化物超電導層13積層時に使用するガスと中間層12との反応を抑制する機能等を有するものである。
キャップ層は、前記金属酸化物層の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層は、前記金属酸化物層よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等が例示できる。キャップ層の材質がCeOである場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
中間層12の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、0.1〜5μmである。
中間層12が、前記金属酸化物層の上にキャップ層が積層された複数層構造である場合には、キャップ層の厚さは、通常は、0.1〜1.5μmである。
中間層12は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層13やキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、蒸着時に、結晶の蒸着面に対して所定の角度でイオンビームを照射することにより、結晶軸を配向させる方法である。通常は、イオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、GdZr、MgO又はZrO−Y(YSZ)からなる中間層12は、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
酸化物超電導層13は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。
酸化物超電導層13は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等で積層でき、なかでもレーザ蒸着法が好ましい。
酸化物超電導層13の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。
酸化物超電導層13の上に積層されている銀層14は、スパッタ法などの成膜法により形成され、その厚さを1〜30μm程度とされる。
酸化物超電導層13上に銀層14を備える構成とする理由としては、銀は良導電性かつ酸化物超電導層13と接触抵抗が低くなじみの良い点、及び、酸化物超電導層13に酸素をドープするアニール工程においてドープした酸素を酸化物超電導層13から逃避し難くする性質を有する点を挙げることができる。
第1金属テープ1および第2金属テープ2は、長尺の金属テープより構成される。
本実施形態の超電導線材10において、銀層14側に配された第2金属テープ2が良導電性材料より構成されることが好ましい。
第2金属テープ2が良導電性材料より構成される場合、酸化物超電導層13が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたときに、第2金属テープ2が銀層14とともに、酸化物超電導層13の電流が転流するバイパスとして機能する。第2金属テープ2が良導電性材料より構成されることにより、酸化物超電導線材10が安定化され好ましい。
第2金属テープ2を構成する良導電性材料としては、Cu、黄銅(Cu−Zn合金)、Cu−Ni合金等の銅合金、ステンレス等の比較的安価な材質からなるものを用いることが好ましく、中でも高い導電性を有し、安価であることからCuが好ましい。
第2金属テープ2の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であるが、第2金属テープ2が良導電性材料より構成される場合、その厚さを10〜300μmとすることが好ましい。下限値以上とすることにより酸化物超電導層13を安定化する一層高い効果が得られ、上限値以下とすることにより酸化物超電導線材10を薄型化できる。
第1金属テープ1は、耐熱性の金属材料からなる金属テープからなり、上記した良導電性材料より構成されるか、または、ステンレス鋼、ニッケル合金、Ni−Cr合金より構成される。
第1金属テープ1が上記良導電性材料より構成される場合、酸化物超電導層13を安定化する効果が向上するので好ましい。
第1金属テープ1の厚さは特に限定されず、適宜調整可能であり、例えば、10〜300μm程度とされる。
なお、酸化物超電導線材10を超電導限流器に使用する場合は、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両方が、抵抗金属材料より構成されることが好ましい。超電導限流器は、超電導状態と常電導状態の導体電気抵抗の差を利用して限流動作を行うので、使用する超電導線材には常電導状態における高い導体抵抗が求められるためである。この場合、第1金属テープ1と第2金属テープ2を構成する材料としては、ステンレス鋼、ニッケル合金、Ni−Cr合金等が挙げられる。この場合、第1金属テープ1および第2金属テープ2の材質は同一であっても異なっていてもよい。
第1金属テープ1および第2金属テープ2の幅は特に制限されず、超電導積層体5の幅および厚みに合わせて適宜調整可能である。第1金属テープ1および第2金属テープ2の幅は、超電導積層体5の幅よりも大きく設定され、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両側の端部1a、2aがレーザ溶接部7で接合されたされた状態で、第1金属テープ1と第2金属テープ2の間に超電導積層体5が収納されるような幅であればよい。
第1金属テープ1の幅と、第2金属テープ2の幅は、同一でも異なっていてもよい。酸化物超電導線材の製造工程における成形工程(後述する第3工程)のし易さを考慮すると、成形用のローラーに接する金属テープの幅を、他の金属テープの幅よりも若干短くすることが好ましい。
図1においては、第1金属テープ1および第2金属テープ2の幅が、超電導積層体5の幅の2倍程度である例を示しているが、この例はレーザ溶接部7付近が見えやすいように誇張して描いたものである。実際には、レーザ溶接できる幅が確保されていればよい。酸化物超電導線材10をコイル加工して超電導コイルとする場合には、超電導コイルにおける超電導積層体5の割合が減少することを抑制するため、第1金属テープ1および第2金属テープ2の幅が、超電導積層体5の幅と比較して広くなり過ぎないように設定すること好ましい。一例として、超電導積層体5の幅が5mmの場合、第1金属テープ1の幅を6mm、第2金属テープ2の幅を5.5mmと設定できる。
第2金属テープ2と銀層14は導電性の接合層9を介して積層されていることが好ましい。特に、第2金属テープ2が前記した良導電性材料より構成されている場合、第2金属テープ2と銀層14が導電性の接合層9により電気的および機械的に接続されることにより、銀層14と第2金属テープ2との接合が強固となり、接続抵抗が低下するため、酸化物超電導層13を安定化する効果を向上できる。
また、第2金属テープ2が良導電性材料より構成されない場合にも、接合層9を介して第2金属テープ2と銀層14が積層されることにより、超電導積層体5と第2金属テープ2の接合構造が強固となるので好ましい。
なお、第1金属テープ1と基材11との積層は、接合層を介していてもよいし、接合層を介していなくてもよい。また、第1金属テープ1と基材11との間に接合層が介在される場合、該接合層は導電性または非導電性のどちらでもよい。
導電性の接合層9は、導電性を有する材料より構成され、第2金属テープ2と銀層14を接着固定している。導電性の接合層9は、半田、めっき、ろう材などより構成されている。
接合層9の厚さは、特に限定されず、適宜調整可能であるが、例えば、2〜20μm程度とすることができる。
接合層9は第2金属テープ2の銀層側の面全体に形成されていてもよく、銀層14と接する部分にのみ形成されていてもよい
導電性の接合層9が半田より構成される場合、従来公知の半田を使用することができ、例えば、Sn−Ag系合金、Sn−Bi系合金、Sn−Cu系合金、Sn−Zn系合金などの鉛フリー半田、Pb−Sn系合金半田、共晶半田、低温半田などが挙げられ、これらの半田を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、融点が300℃以下の半田を用いることが好ましい。これにより、300℃以下の温度で第2金属テープ2と銀層14を半田付けすることが可能となるので、半田付けの熱によって酸化物超電導層13の特性が劣化することを抑止することができる。
第1金属テープ1と第2金属テープ2はその両側の端部1a、2aが重ね合わせられ、レーザ溶接されており、レーザ溶接部7により接合されている。図3(a)は酸化物超電導線材10のレーザ接合部の一例構造を示す断面模式図であり、図3(b)は酸化物超電導線材10のレーザ接合部の他の例を示す断面模式図である。
図3(a)は、第2金属テープ2として、その片面にめっきなどの導電性の接合層9が形成されているものを使用した場合のレーザ接合部7の一例構造である。この場合、レーザ接合部7は第1金属テープ1と第2金属テープ2を構成する金属材料が溶融した溶接金属より形成されており、レーザ接合部7付近に位置していためっき等の接合層9はレーザ照射により気化して消滅するか、または、レーザ接合部7の側方に溶け出してレーザ溶接部7側方の第1金属テープ1と第2金属テープ2との隙間を埋めて、強固な接合構造となる。
図3(b)は、第1金属テープ1と第2金属テープ2の間に隙間4がある場合のレーザ接合部7の一例構造である。この場合、レーザ接合部7は前記同様、第1金属テープ1と第2金属テープ2を構成する金属材料が溶融した溶接金属より形成された強固な接合であり、レーザ接合部7の上面7aは隙間4を埋めた分だけ、窪んだ構造となる。なお、レーザ接合部7の構造例としては、第1金属テープ1と第2金属テープ2の間に隙間4がない場合もありうる。
レーザ溶接部7の幅は、使用するレーザのスポット径により適宜変更可能であるが、10〜150μm程度とすることが好ましい。レーザ溶接部7の幅が前記範囲の場合、レーザ溶接による加工面積を減らすことができ、線材幅を小さくすることができる。また、レーザ溶接部7の幅が前記範囲を超える場合、使用するレーザのスポット径が大きくなり過ぎてレーザ照射部のエネルギー密度が低くなり、加工パワーが余分に必要となる虞がある。
本実施形態の酸化物超電導線材10は、超電導積層体5がそれよりも幅広の第1金属テープ1および第2金属テープ2で挟み込まれ、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両側の端部1a、2aが重ね合わせられてレーザ溶接によるレーザ溶接部7により連続的に接合された構成である。そのため、第1金属テープ1と第2金属テープ2の端部1a、2aが隙間なく接合されており、超電導積層体5の周面全てが外部から遮蔽された構造を実現できる。このような構成にすることで、酸化物超電導層13への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層13が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。また、レーザ溶接により第1金属テープ1と第2金属テープ2が接合されているため、接合強度が強く、機械的強度が高い酸化物超電導線材10となる。よって、例えば、超電導コイル形成のためにコイル加工を行っても、接合部が破れることがない。
本実施形態の酸化物超電導線材10において、銀層14に積層される第2金属テープ2は、予めテープ状に加工されたものを使用している。そのため、従来の超電導線材のようにめっきにより安定化層が形成されている場合とは異なり、第2金属テープ2にめっき欠陥部などのピンホールが形成されることがないため、超電導積層体5を外部から完全に遮蔽することができ、酸化物超電導層13に水分が浸入して超電導特性が劣化することがない。
本実施形態の酸化物超電導線材10のように、超電導積層体が2枚の金属テープにより挟み込まれて保護される構造としては、2枚の金属テープの両端部を半田付けして接合する構造も考えられる。しかし、半田により2枚の金属テープが接合された構造の場合、線材の製造工程や加工工程において、何らかの理由により線材が半田の融点以上の高温環境に曝されたならば、半田が溶融してこの2枚の金属テープ間に形成された隙間より水分が浸入して酸化物超電導層13が劣化してしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態の酸化物超電導線材10は、第1金属テープ1と第2金属テープ2により超電導積層体5が挟みこまれ、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両側の端部1a、2aが重ね合わせられてレーザ溶接によるレーザ溶接部7により接合されている構造である。そのため、酸化物超電導線材10の製造工程や加工工程において、何らかの理由により酸化物超電導線材10が高温環境に曝された場合にも、レーザ接合部7の接合が強固であり接合構造が保たれるため、酸化物超電導層13に水分が浸入して超電導特性が劣化することがない。
次に、本発明に係る酸化物超電導線材10の製造方法の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図4は本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法の一実施形態の工程を説明するための工程説明図である。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法は、基材11と中間層12と酸化物超電導層13と銀層14とがこの順に積層されてなる超電導積層体5と、超電導線積層体5よりも幅広の第1金属テープ1および第2金属テープ2を準備する第1工程と、超電導積層体5の基材11側に第1金属テープ1を配し、銀層14側に第2金属テープ2を配して、第1金属テープ1と第2金属テープ2により超電導積層体5を挟む第2工程と、第1金属テープ1と第2金属テープ2の幅方向端部1a、2aが重ね合わされるように成形する第3工程と、第1金属テープ1と第2金属テープ2の幅方向端部1a、2aをレーザ溶接する第4工程を備える。
まず、第1工程では、前述した長尺の酸化物超電導積層体5と、前述した材質、幅および厚さの長尺テープ状の第1金属テープ1および第2金属テープ2を準備する。
次に、図4(a)に示す如く第1金属テープ1の上に超電導積層体5を基材11を下にした状態で積層し、超電導積層体5の銀層14の上に第2金属テープ2を積層する(第2工程)。これにより、超電導積層体5が第1金属テープ1と第2金属テープ2により挟まれた状態となる。
ここで、第1金属テープ1および第2金属テープ2の幅は、超電導積層体5よりも幅広(幅方向の長さが長い)のものを使用し、第1金属テープ1および第2金属テープ2の両側の端部1a、2aが超電導積層体5の外側に位置するように配置する。また、第1金属テープ1の幅と、第2金属テープ2の幅は、同一でも異なっていてもよい。後述する第3工程におけるローラーによる成形のし易さを考慮すると、成形用のローラーに接する金属テープの幅を、他の金属テープの幅よりも若干短くすることが好ましい。図4に示す例では、上方に位置する金属テープである第2金属テープ2の幅が、第1金属テープ1の幅よりも若干短いことが好ましい。
第2工程において、第2金属テープ2としてその表面に半田、めっき、ろう材などの導電性の接合層9が形成されているものを使用する場合、予め、超電導積層体5の銀層14上に接合層9を介して第2金属テープ2を積層させた状態で、加熱・加圧ロールを通過させることにより、銀層14と第2金属テープ2を接合層9により電気的および機械的に接合することが好ましい。これにより、超電導積層体5と第2金属テープ2の接合構造が強固となり、特に、第2金属テープ2が前記した良導電性材料より構成されている場合、接続抵抗が低下するため、酸化物超電導13を安定化する効果を向上できる。
なお、場合によっては、第1金属テープ1として、その表面に基材11との接合が可能な接合層が形成されたものを用い、該接合層を介して第1金属テープ1と基材11とを予め接合させてもよい。
第2工程において、超電導積層体5の銀層14側に前記した良導電性材料より構成された第2金属テープ2を配すことが好ましい。この場合、製造される酸化物超電導線材10の銀層14に良導電性材料よりなる第2金属テープ2が積層された構成となる。そのため、酸化物超電導線材10において、酸化物超電導層13が超電導状態から常電導状態に遷移しようとしたときに、第2金属テープ2が銀層14とともに、酸化物超電導層13の電流が転流するバイパスとして機能することができ、酸化物超電導線材10が安定化されるので好ましい。さらに、第1金属テープ1および第2金属テープ2が銅等の良導電性材料よりなる構成とする場合、酸化物超電導層13を安定化する効果が一層向上する。
なお、酸化物超電導線材10を超電導限流器に使用する場合は、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両方が、ステンレス鋼、ニッケル合金、Ni−Cr合金等の抵抗金属材料より構成されることが好ましい。
次に、図4(a)に示す如く第1金属テープ1と超電導積層体5と第2金属テープ2を積層した積層体を、第1金属テープ側を下にして、水平面を有する台座(図示略)の上にセットする。次いで、図4(b)に示すように、第2金属テープ2の端部2aの上方から成形用のローラー等の成形具20を押し当て、程度に加圧することにより、第2金属テープ2を第1金属テープ1側へと折り曲げて、曲げ部2Kを形成し、かつ、第1金属テープ1の端部1aと第2金属テープ2の端部2aが重なり合った状態となるように成形する(第3工程)。このように各金属テープ1、2の端部1a、2aを成形することにより、後述する第4工程においてレーザ溶接がし易くなる。
成形具20として加圧ローラーを用いる場合は、加圧ローラーで第1金属テープ1の端部1aと第2金属テープ2の端部2aを重ね合わせて加圧しながら、加圧ローラーを超電導積層体5の長手方向に沿って回転走行させることにより、第1金属テープ1と第2金属テープ2の幅方向の端部1a、2aを連続的に重ね合わせることができる。なお、成形具20としては加圧ローラーに限定されず、第1金属テープ1と第2金属テープ2の端部1a、2aが重なり合った状態に加圧、成形することができるものであれば特に限定されず、従来公知の成形具を使用できる。また、図4(b)に示す例では、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両側の端部を同時に成形具20により成形しているが、一方の端部を成形した後に、他方の端部を成形してもよい。
成形具20による加圧力は、第1金属テープ1および第2金属テープ2の材質や厚さによって適宜調整すればよい。例えば、第1金属テープ1として厚さ50μmの銅製テープを、第2金属テープ2として厚さ50μmの銅製テープを使用する場合、圧力10〜20MPa程度で加圧することにより成形することができる。
第3工程の成形工程において、後述する第4工程のレーザ溶接時にレーザが照射される側の金属テープのレーザ照射面の表面粗さRaが10μm以上となるように、金属テープの表面を加工することが好ましい。すなわち、図4に示す例では、第2金属テープ2の端部2aの表面粗さを10μm以上とすることが好ましい。なお、本発明において、表面粗さRaとは、算術表面粗さRa(JIS B0601−1994)を表す。
第2金属テープ2および第1金属テープ1が前記した良導電性材料よりなる場合、銅などの反射率の高い金属や合金より構成された金属テープをレーザ溶接するには、レーザの出力を高く設定したり、レーザ照射時間を長く設定する必要がある。例えば、銅の反射率は、波長280nmで33.0%、波長400nmで47.5%、波長700nmで97.5%、波長1000nmで98.5%とされている。このように銅は、YAGレーザや半導体レーザ(ファイバーレーザ)等の波長1000nm付近の反射率が非常に高いため、レーザが反射されてしまい溶接加工し難いという問題がある。
そこで、本実施形態においては、レーザ溶接時にレーザ照射する金属テープの表面粗さRaを10μm以上とすることにより、銅等の金属テープの反射率を低下させて、確実にレーザ溶接できるようにすることができる。レーザ照射される側の金属テープの表面粗さRaの上限は特に限定されないが、100μm程度とすることがレーザ溶接後のレーザ溶接部7の表面形状が良好になるため好ましい。金属テープの表面粗さが100μmを超える場合、溶接後のレーザ溶接部7の表面形状が悪化する可能性がある。レーザ照射される側の金属テープの表面粗さRaは10μm以上50μm以下の範囲とすることがより好ましい。
レーザ溶接時にレーザ照射される金属テープの表面粗さRaを10μm以上とすることにより、金属テープが銅等の反射率の高い金属材料より構成される場合にも、汎用のレーザーを使用して、良好な製造速度で溶接を行うことができる。また、金属テープにより反射されるレーザ光を低減できるので、レーザ加工機へのレーザ光の反射も低減され、レーザ加工機がレーザ光により劣化しやすくなることを抑制できる。
第3工程において、後述の第4工程のレーザ溶接時にレーザ照射される側の金属テープのレーザ照射面(図4に示す例では第2金属テープ2の端部2aの表面)の表面粗さRaを10μm以上に加工する方法としては、特に限定されず、型押し、鑢がけなど、従来公知の方法が適用できる。具体的には、例えば、前記した成形具20による成形工程において、成形具20としてその表面に凹凸加工が施されたものを使用することにより、成形具20により接触加圧される第2金属テープ2の端部2aの表面を、成形具20表面の凹凸形状が反転した凹凸形状に加工し、所望の表面粗さRaの第2金属テープ2とすることができる。このような加工方法は、第1金属テープ1と第2金属テープ2の端部1a、2aの成形と、第2金属テープ2の端部2aの表面加工を同時に行うことができるため、製造工程が簡略化でき好ましい。
次に、重なり合うように成形された第1金属テープ1の端部1aと第2金属テープ2の端部2aにレーザを照射してレーザ溶接する(第4工程)。レーザ溶接に使用できるレーザとしては、YAGレーザ、半導体レーザ、COレーザ、およびこれらのレーザ光を光ファイバにより伝送するファイバーレーザ等が挙げられる。中でも、連続波であるため、ファイバーレーザが好ましい。パルスレーザの場合は1パルスのエネルギーが大きすぎるために、レーザ照射部分が気化してしまい溶接部が形成されない場合がある。YAGレーザを使用する場合は、銅の反射率が低くなる第2高調波(532nm)を使用することができる。
図4(c)に示すように、レーザ加工機21の先端から集光レンズ22で集光されたレーザ光Lが射出されて、第2金属テープ2の端部2aに照射され、第2金属テープ2およびその下の第1金属テープ1が局部的に溶融・凝固されることにより、レーザ溶接されてレーザ接合部7が形成される。レーザ加工機は、外部のアシストガス供給装置に接続されたガス供給口23から窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスが供給され、この不活性ガスGがレーザ加工機21の先端部よりレーザ光Lの照射部へと吹き付けられる構成となっている。このように、溶接部に窒素などの不活性ガスを吹き付けながら溶接することにより、溶接される金属テープが酸化することを防ぐことができる。
レーザ溶接時のレーザのスポット径は特に制限されず、例えば、10〜100μm程度とされる。このようなレーザのスポット径でレーザ溶接を行うことにより、形成されるレーザ溶接部7の幅も10〜150μm程度となる。このように、レーザ溶接により第1金属テープ1と第2金属テープ2の端部同士を局所的に加熱して溶接することができるため、レーザ溶接時の熱が酸化物超電導層13まで伝熱することがなく、溶接時に酸化物超電導層13が熱により劣化することがない。
レーザ溶接時のレーザの出力および波長は特に制限されず、使用するレーザ種や溶接する第1金属テープ1および第2金属テープ2の材質および厚さにより適宜調整すればよい。例えば、第1金属テープ1として厚さ50μmの銅製テープを、第2金属テープ2として厚さ50μmの銅製テープを用いる場合、レーザ照射面である第2金属テープ2の端部2aの表面粗さRaを50μm程度とし、波長1065nmのファイバーレーザを用い、スポット径20μm、出力250W、加工速度10m/分でレーザ溶接することができる。
図4(c)に示すように、第1金属テープ1と第2金属テープ2の端部にレーザ光Lを照射しながら、レーザ加工機21を超電導積層体5の長手方向に沿って走査する、あるいは、被溶接体である第1金属テープ1、第2金属テープ2および超電導積層体5の積層体を移動させることにより、レーザ光Lの照射位置を移動させて、第1金属テープ1の端部1aと第2金属テープ2の端部2aを連続的に溶接することができる。第1金属テープ1と第2金属テープ2の一方の端部をレーザ溶接した後、同様の手法で第1金属テープ1と第2金属テープ2の他方の端部をレーザ溶接する。
以上の工程により、図4(d)に示す如く第1金属テープ1と第2金属テープ2の両側の端部1a、2aがレーザ溶接部7により接合され、超電導積層体5が第1金属テープ1および第2金属テープ2により被覆された酸化物超電導線材10を製造できる。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法は、超電導積層体5を第1金属テープ1および第2金属テープ2で挟み、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両側の端部1a、2aを重ね合わせてレーザ溶接して連続的に接合する構成である。そのため、第1金属テープ1と第2金属テープ2の端部1a、2aを隙間なく接合することができ、超電導積層体5の周面全てが外部から遮蔽された構造の酸化物超電導線材を製造できる。従って、本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法によれば、酸化物超電導層13への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層13が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる酸化物超電導線材を提供できる。また、レーザ溶接により第1金属テープ1と第2金属テープ2を接合することにより、形成されるレーザ溶接部7の接合強度が強いので、機械的強度が高い酸化物超電導線材を提供できる。
本実施形態の酸化物超電導線材の製造方法は、予めテープ状に加工された金属テープ1、2を使用している。そのため、金属テープ1、2にはピンホールなどの欠陥部は無いので、製造される酸化物超電導線材は、超電導積層体5を外部から完全に遮蔽することができ、酸化物超電導層13に水分が浸入して超電導特性が劣化することがない。
本実施形態の超電導線材の製造方法において、レーザ溶接時にレーザ照射される金属テープの表面粗さRaを10μm以上にすることにより、金属テープが銅等の反射率の高い金属よりなる場合にも、金属テープの反射率を低下させて、汎用のレーザで良好な加工速度でレーザ溶接することが可能となる。
以上、本発明の酸化物超電導線材およびその製造方法の実施形態について説明したが、上記実施形態において、酸化物超電導線材の各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施形態では、超電導積層体5の銀層14側に配された第2金属テープ2が超電導積層体5の側面側に曲げられた構造の酸化物超電導線材10を例示したが、本発明はこの例に限定されない。図5は本発明に係る酸化物超電導線材の他の実施形態を示す断面図である。図5において、上記実施形態の酸化物超電導線材10と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
図5に示す酸化物超電導線材10Bは、超電導積層体5の基材11側に配された第1金属テープ1が超電導積層体5の側面側に曲げられて平面形状の第2金属テープ2の端部2aにレーザ溶接されている点で、上記実施形態の酸化物超電導線材10とは異なっている。
このような構成の酸化物超電導線材10Bも、上記第1実施形態の酸化物超電導線材10と同様に、酸化物超電導層13を含む酸化物超電導積層体5の周面全てが外部から遮蔽された構成が実現できるため、酸化物超電導層13への水分の浸入を抑え、酸化物超電導層13が水分によりダメージを受けて超電導特性が劣化することを防ぐことができる。
本実施形態の酸化物超電導線材10Bは、図4に示す製造工程において、超電導積層体5と第1金属テープ1と第2金属テープ2が積層された積層体を上下逆の状態とし、第1金属テープ1が成形具20に接触加圧される状態で成形し、第1金属テープ1にレーザ光を照射してレーザ溶接を行うことにより製造できる。
また、本発明の酸化物超電導線材は、上記した酸化物超電導線材10、10Bに限定されず、第1金属テープ1と第2金属テープ2の両方が超電導積層体5の側面側に曲げられている構造でもよい。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
「実施例」
幅10mm、厚さ0.1mmのハステロイC276(米国ヘインズ社製商品名)製の金属基材の上に、IBAD法により1.2μm厚のGdZr(GZO)なる組成の中間層を形成し、さらにこの中間層の上にPLD法により1.0μm厚のCeOなる組成のキャップ層を成膜した。次に、このキャップ層の上にPLD法により1.0μm厚のGdBaCu7−xなる組成の酸化物超電導層を形成し、さらにこの酸化物超電導層の上にスパッタ法により10μm厚の銀層を形成した。得られた積層体を長手方向に沿って裁断することにより、幅5mm、長さ10m、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=100Aの超電導積層体を作製した。
次に、第1金属テープとして厚さ50μm、幅6.0mmの銅製テープを用い、第2金属テープとして片面に厚さ5μmのスズめっき(融点230℃、接合層)が形成された厚さ50μm、幅5.5mmの銅製テープを用い、図4(a)に示すように、第1金属テープである銅製テープ上に基材を下にして上記で作成した超電導積層体を積層し、この超電導積層体の銀層上に第2金属テープである銅製テープを積層した。なお、第2金属テープである銅製テープは、予め、超電導積層体の銀層上にスズめっきを介して積層させて240℃で加熱し、銅製テープ(第2金属テープ)と銀層を接合層を介して接合させた。
続いて、図4(b)に示すように、第1金属テープ(銅製テープ)と第2金属テープ(銅製テープ)の幅方向の両側の端部を、表面に凹凸加工された加圧ローラーにより圧力10〜20MPaで加圧しながら、長手方向に回転走行させて、第1金属テープと第2金属テープの幅方向の両側の端部が重ね合わせた。成形後の第2金属テープの端部の表面粗さRaは50μmであった。次に、図4(c)に示すように、第1金属テープと第2金属テープの両端部を、レーザ溶接することにより、図4(d)に示す構造の酸化物超電導線材を作製した。なお、レーザ溶接は次の条件で行った。
使用レーザ:ファイバーレーザ(波長1065nm、出力250W)、スポット径:20μm、溶接速度:10m/分、アシストガスとして窒素ガスを溶接部に吹きつけながら溶接を行った。
作製した酸化物超電導線材を、温度121℃、湿度100%、2気圧の雰囲気中で100時間保持した後、酸化物超電導線材の超電導特性を測定したところ、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icは100Aであり超電導特性は劣化していなかった。
「比較例1」
実施例と同様の方法で、幅5mm、長さ10m、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=100Aの超電導積層体を作製した。
次いで、作製した超電導積層体を硫酸銅水溶液のめっき浴に浸漬させて、電気めっきにより超電導積層体の外周に厚さ20μmの銅のめっき層を形成することにより、酸化物超電導線材を作製した。
作製した酸化物超電導線材を、温度121℃、湿度100%、2気圧の雰囲気中で72時間保持した後、酸化物超電導線材の超電導特性を測定したところ、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icは10Aであり超電導特性が劣化していた。比較例1の酸化物超電導線材のめっき層を観察したところ、ピンホール欠陥部が形成された箇所があり、この欠陥部から水分が浸入して酸化物超電導層が劣化したと考えられる。
「比較例2」
実施例と同様の方法で、幅5mm、長さ10m、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Ic0=100Aの超電導積層体を作製した。
次に、作成した超電導積層体の銀層の上に厚さ100μm、幅5mmの銅製テープを半田付けして貼り合わせることにより、酸化物超電導線材を作製した。
作製した酸化物超電導線材を、温度121℃、湿度100%、2気圧の雰囲気中で48時間保持した後、酸化物超電導線材の超電導特性を測定したところ、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icは0Aであり超電導特性が劣化していた。比較例2の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層の側面が露出していたため、この露出部から水分が浸入して酸化物超電導層が劣化したと考えられる。
実施例および比較例1、2の酸化物超電導線材の耐久試験結果を図6に示す。図6は、試験時間に対して、試験前の臨界電流値Ic0に対する試験後の臨界電流値Icの割合Ic/Ic0をプロットしたものである。縦軸Ic/Ic0が1.0に近いほど耐久性が高いことを示す。
図6の結果より、本発明に係る実施例の酸化物超電導線材は、酸化物超電導層への水分の浸入を抑えることができることが明らかである。
「比較例3」
レーザ溶接時にレーザ照射される第2金属テープの端部の表面を凹凸加工せず、その表面粗さRa<<10μmとしてレーザ溶接を行った以外は、実施例1と同様にして酸化物超電導線材を作製した。その結果、レーザの出力250Wでは銅テープの反射率が高いために、溶接されない場所が一部あった。そこで、レーザの出力を300Wにしたところ、レーザ溶接することができた。
「実施例2」
レーザ溶接時にレーザ照射される第2金属テープの端部の表面粗さを10μmとした以外は、実施例1と同様にして酸化物超電導線材を作製した。得られた酸化物超電導線材の幅方向端部は、連続的にレーザ溶接されていた。
作製した酸化物超電導線材を、温度121℃、湿度100%、2気圧の雰囲気中で100時間保持した後、酸化物超電導線材の超電導特性を測定したところ、液体窒素温度(77K)における臨界電流値Icは100Aであり超電導特性は劣化していなかった。
実施例1、2および比較例3の結果より、レーザ溶接時にレーザ照射される金属テープの表面粗さを10μm以上とすることにより、より低い出力でレーザ溶接できることが確認された。
本発明は、例えば超電導モータ、限流器など、各種電力機器に用いられる酸化物超電導線材に利用することができる。
1…第1金属テープ、1a…端部、2…第2金属テープ、2a…端部、5…超電導積層体、7…レーザ溶接部、9…接合層、10、10B…酸化物超電導線材、11…基材、12…中間層、13…酸化物超電導層、14…銀層、20…成形具、21…レーザ加工機、22…集光レンズ、L…レーザ光。

Claims (5)

  1. 基材と中間層と酸化物超電導層と銀層とがこの順に積層されてなる超電導積層体と、該超電導線積層体よりも幅広の第1金属テープおよび第2金属テープを準備する第1工程と、前記超電導積層体の前記基材側に前記第1金属テープを配し、前記銀層側に前記第2金属テープを配して、前記第1金属テープと前記第2金属テープにより前記超電導積層体を挟む第2工程と、前記第1金属テープと前記第2金属テープの幅方向端部が重ね合わされるように成形する第3工程と、前記第1金属テープと前記第2金属テープの幅方向端部をレーザ溶接する第4工程を備えることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 前記第4工程のレーザ溶接時にレーザが照射される側の金属テープのレーザ照射面の表面粗さRaを10μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 前記銀層上に導電性の接合層を介して良導電性材料よりなる前記第2金属テープを配することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 基材と中間層と酸化物超電導層と銀層とがこの順に積層されて超電導積層体が構成され、前記超電導積層体が前記基材側に配され該超電導積層体より幅広の第1金属テープと前記銀層側に配され該超電導積層体より幅広の第2金属テープにより挟まれており、前記第1金属テープと前記第2金属テープの幅方向端部がレーザ溶接部により接合されてなることを特徴とする酸化物超電導線材。
  5. 前記第2金属テープが良導電性材料よりなり、前記銀層上に導電性の接合層を介して前記第2金属テープが配されてなることを特徴とする請求項4に記載の酸化物超電導線材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105810360A (zh) * 2016-03-23 2016-07-27 苏州新材料研究所有限公司 一种rebco超导带材稳定层的制备方法

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