JP2012149765A - ピストンリング及びピストンリングの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本件発明の課題は、長期に渡ってピストンリングに対するアルミ凝着防止の効果を維持することができ、アルミ凝着防止に係るコストを低減することのできるピストンリング及びピストンリングの製造方法を提供することである。
【解決手段】上述の課題を解決するために、シリンダと摺動する外周摺動面、ピストンリング溝と接する上下面、及び内周面を備え、自己潤滑性粒子、又は、硬質の炭化物粒子から成る硬質粒子が分散粒子120として鋼中に分散する鋼材から成り、その上下面110において、当該鋼材の表面から当該分散粒子を突出させたピストンリング100を採用した。
【選択図】図3

Description

本件発明は、内燃機関に使用されるピストンリング及び当該ピストンリングの製造方法に関し、特に、ピストンリングへのアルミニウム凝着(溶着)現象を効果的に防止することのできるピストンリング及び当該ピストンリングの製造方法に関する。
内燃機関に使用されるピストンリングは、ピストンに形成されたピストンリング溝に嵌め込まれる合口部を有する特殊な略円形状のリングである。内燃機関には、通常、2本の圧縮リングと1本のオイルリングとが用いられる。圧縮リングは、高圧の燃焼ガスが燃焼室側からクランク室側へ流出する(ブローバイ)現象を防止する機能を有している。また、オイルリングは、ピストンが下降した際に、シリンダー内周面に付着した潤滑油を掻き集めて、ピストンリング溝に形成されたオイル戻し孔からオイルパン側に戻す機能を有している。
ピストンがシリンダー内を高速で往復移動する際に、ピストンリングはシリンダーライナーの内周面に対して密着しながらピストンと共に高速で往復移動する。従来、ピストンリングは、線材(鋼材)を用いて形成され、耐摩耗性を向上するため、外周摺動面には、硬質クロムメッキ処理、溶射処理、窒化処理等の耐摩耗性処理が施されてきた。
ところで、近年、軽量化及び出力向上等の観点から、アルミ合金製のピストンが採用されている。しかしながら、耐摩耗性処理を施した鋼製のピストンリングをアルミ合金製のピストンに装着した場合、特に、トップリング(第一圧力リング)において、燃焼室からの燃焼ガスの影響を受けてピストンリング側にアルミが凝着し、ピストンリング溝の摩耗(溝荒れ)が増大するという問題が生じていた。ピストンリング溝の摩耗が増大すると、ピストンリングによるガスシール機能が低下して、ブローバイが増加し、内燃機関の出力低下を招いていた。
そこで、アルミ凝着を防止するため、例えば、リン酸塩被膜処理、めっき処理、或いは、デフリックコート(登録商標)、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール等を用いた樹脂コーティング処理等の各種の表面処理をピストンリングの上下面に施すことが行われている。当該表面処理を施すことにより、ピストンリング溝の内壁面とピストンリングの上下面とにおいて互いの金属が直接的に面接触することを防止でき、ピストンリングに対するアルミ凝着の防止が可能になる。また、本件出願人等は、アルミ凝着を防止するため、ピストンリングの上下面に、固体潤滑剤を含有する樹脂被膜を設けたり(例えば、「特許文献1」参照)、金属粉末を含有する樹脂被膜を設けること(例えば、「特許文献2」参照)等を提案してきた。
特開平7−63266号公報 特開2009−74539号公報
しかしながら、上述した各種の表面処理による方法では、ピストン使用時の初期段階においては、ピストンリングに対するアルミ凝着防止の効果はあるものの、長期的に当該効果を維持することができない場合があった。また、固体潤滑剤或いは金属粉末を含有する樹脂被膜を設ける方法は、長期的にも当該効果を維持することができるものの、樹脂被膜を形成するには処理費用が高価であり、コスト的な課題があった。
以上のことから、本件発明の課題は、長期に渡ってピストンリングに対するアルミ凝着防止の効果を維持することができ、アルミ凝着防止に係るコストを低減することのできるピストンリング及びピストンリングの製造方法を提供することである。
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の構成を有するピストンリング及びピストンリングの製造方法を採用することで、上述した課題を解決するに到った。以下、本件発明に関して説明する。
本件発明に係るピストンリングは、内燃機関に用いられるピストンリングであって、シリンダと摺動する外周摺動面、ピストンリング溝と接する上下面、及び内周面を備え、自己潤滑性粒子、又は、硬質の炭化物粒子から成る硬質粒子が分散粒子として鋼中に分散した鋼材から成り、前記上下面において、当該鋼材の表面から前記分散粒子が突出していることを特徴とする。
本件発明に係るピストンリングにおいて、前記鋼材の少なくとも前記上下面に相当する面に化成処理が施されていることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングにおいて、前記自己潤滑性粒子は、粒径が0.5μm〜500μmの硫化物粒子又は炭硫化物粒子であり、前記上下面において当該自己潤滑性粒子が占める面積率(%)が2%〜10%であることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングにおいて、前記硬質粒子は、粒径が0.5μm〜20μmのCr、V、Ti、Al、Mo及びWから成る群から選択される少なくとも一種の元素の炭化物粒子であり、前記上下面において当該硬質粒子が占める面積率(%)が2%〜30%であることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングにおいて、前記鋼材は窒化処理層を備えることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングは、前記鋼材として、C含有量が0.6質量%〜1.0質量%、Si含有量が1.0質量%以下、Mn含有量が1.0質量%以下、Cr含有量が13.0質量%〜18.5質量%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成のステンレス鋼材を用いて得られたものであることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングは、Moを0.2質量%〜1.3質量%の範囲で含む前記ステンレス鋼材を使用して得られたものであることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングは、V含有量を0.05質量%〜0.15質量%の範囲で含む前記ステンレス鋼材を使用して得られたものであることが好ましい。
また、本件発明に係るピストンリングは、前記鋼材として、C含有量が0.5質量%〜0.6質量%、Si含有量が0.1質量%〜1.6質量%、Mn含有量が0.5質量%〜1.0質量%、S含有量が0.01質量%〜0.3質量%、Cr含有量が0.1質量%〜3.0質量%、Ni含有量が1.0質量%以下、残部はFeおよび不可避的不純物からなるバネ鋼を用いて得られたものであることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングは、Ti含有量および/またはZr含有量が合計で0.2質量%〜2.0質量%を含むバネ鋼を用いて得られたものであることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングは、Cuを1.0質量%以下の範囲で含むバネ鋼を用いて得られたものであることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングは、Alを0.2質量%〜0.5質量%の範囲で含むバネ鋼を用いて得られたものであることが好ましい。
本件発明に係るピストンリングの製造方法は、内燃機関に用いられるピストンリングを製造するためのピストンリングの製造方法であって、自己潤滑性粒子又は硬質粒子が鋼中に分散した鋼材を用いてピストンリング状に成形する成形工程と、成形された鋼材の少なくとも上下面に相当する面に化成処理を施す化成処理工程とを備えることを特徴とする。
本件発明に係るピストンリングの製造方法において、前記化成処理工程を行う前に、前記鋼材に窒化処理を施すことが好ましい。
本件発明によれば、鋼材に分散する自己潤滑性粒子又は硬質粒子を、鋼材の表面から突出させる構成を採用することにより、ピストンリング溝と、ピストンリングの上下面とにおいて互いの金属が直接的に面接触することを防止している。このため、初期なじみ後も表面処理被膜が消失することがなく、ピストン使用の初期段階から、長期的にアルミ凝着防止の効果を維持することができる。また、自己潤滑性粒子又は硬質粒子が分散粒子として鋼中に分散する鋼材を使用することにより、通常の鋼材を用いてピストンリングを製造する場合と比べると、鋼材に関する材料コストは僅かに上昇するものの、ピストンリングの長寿命化を図ることができ、全体的なコストを低減することができる。よって、本件発明によれば、ピストンリングに対するアルミ凝着を長期的に防止することができ、長期の使用安定性に優れたピストンリングの提供が可能になる。
本件発明の実施の形態のピストンリングの外観構成の一例を示す斜視図である。 本件発明の実施の形態のピストンリングの使用態様の一例を示す断面図である。 本件発明の実施の形態のピストンリングの上下面の構成を説明するための模式図である。但し、(a)は使用初期段階における当該上下面の状態、(b)は使用中期又は使用後期段階における当該上下面の状態を示している。 本件発明において使用した線材表面における分散粒子の分散状態を説明するための図である。 本件発明の実施の形態における化成処理工程を説明するための図である。但し、(a)は化成処理前におけるピストンリングの上下面の状態、(b)は化成処理を行っているときの当該上下面の状態、(c)は化成処理完了後における当該上下面の状態を示している。 実施例1において製造したピストンリングの上下面における自己潤滑性粒子の分散状態を示す金属顕微鏡観察像である。 実施例2において製造したピストンリングの上下面における硬質粒子の面積率を測定するために撮影した電子顕微鏡のCOMP像(反射電子像)である。 本件発明の実施例において、アルミ凝着防止効果を評価するために用いた測定装置の概略構成を示す図である。
以下、図面を参照して本件発明に係るピストンリング及びピストンリングの製造方法に関する実施の形態を説明する。
<ピストンリング>
まず、図1及び図2を参照して、本件発明の実施の形態のピストンリング100(10、20、30)の外観構成例及び使用態様例について説明する。図1は、本実施の形態のピストンリング100として、トップリング10、セカンドリング20及びオイルリング30の外観構成例を示したものであり、図2は当該ピストンリング100の使用態様例を示したものである。本件発明に係るピストンリング100は内燃機関に用いられるものであり、ピストン40に形成されたピストンリング溝50に装着されて使用される。ピストン40がシリンダー60内を往復移動する際に、ピストンリング100もピストン40と共に往復移動する。図2に示すように、ピストン40のクラウン(頭部)側から順に、トップリング10、セカンドリング20、オイルリング30が各ピストンリング溝50(51、52、53)に装着される。本件発明は、トップリング10、セカンドリング20及びオイルリング30のうち、特に、燃焼室からの燃焼ガスの影響を受けてピストンリング側にアルミが凝着しやすい圧力リング(トップリング10及び/又はセカンドリング20)に適用することが好適であり、特に、アルミが凝着しやすいトップリング10に適用することが好適である。以下、本件明細書では、ピストンリング100と称した場合、主として、トップリング10及び/又はセカンドリング20を指すものとする。また、本件明細書では、ピストン40の往復移動方向を上下方向とし、ピストン40のクラウン側を上側と定義する。
圧力リング: 次に、トップリング10及びセカンドリング20の形状及び機能について説明する。トップリング10及びセカンドリング20は、断面形状を除いては、互いに略同様の形状を有している。トップリング10及びセカンドリング20は、それぞれ平板状のリング状に形成されており、合口と称される切れ目11、21が形成されている。トップリング10及びセカンドリング20の外径は、それぞれピストン40の外径よりも僅かに大きくなっており、この合口11、21を利用して、ピストンリング溝50に装着される。図2に示すように、トップリング10及びセカンドリング20は、ピストン40の外周面41と、シリンダー60の内周面61との間の僅かな隙間をシールして、高圧の燃焼ガスが燃焼室側からクランク室側へ流出する(ブローバイ)現象を防止する機能を有している。
<ピストンリング100の材料的構成>
次に、本件発明に係るピストンリング100の材料面における特徴を述べる。図3に示す本件発明に係るピストンリング100は、自己潤滑性粒子、又は、硬質の炭化物粒子からなる硬質粒子を分散粒子として鋼中に分散した鋼材から成り、その上下面110において、当該鋼材の表面から当該分散粒子が突出していることを特徴とする。但し、本件発明において、ピストンリング100の上下面110とは、主として、ピストンリング100がピストンリング溝50の内壁面50a、50bと接する上下面のうち、少なくともいずれか一方の面を指す。より具体的には、ピストンリング100がピストンリング溝50の内壁面50a、50bと摺接する面又は部分を指す。例えば、ピストンリング100がトップリング10又はセカンドリング20を指す場合は、本件発明にいう上下面110とは、その上面10a、20a又は下面10b、20b、或いはその両面10a、10b、20a、20bを指す。
図3に、ピストンリング100の上下面110を模式的に表した図を示す。図3(a)は、ピストンリング100の使用開始前、あるいは使用初期段階におけるピストンリング100の上下面110を模式的に表したものである。また、図3(b)はピストンリング100の使用中期段階又は使用後期段階におけるピストンリング100の上下面110を模式的に表したものである。図3(a)及び図3(b)に示すように、ピストンリング100の上下面110において、母材である鋼材の表面から分散粒子120を突出させることにより、ピストンリング溝50の内壁面50a、50bとピストンリング100の上下面110とが分散粒子120を介して接触し、互いの金属が直接的に面接触するのを防止することができる。これにより、アルミ合金製のピストン40に、当該ピストンリング100を装着した場合でも、ピストンリング100の上下面110にアルミ凝着を防止することができる。
自己潤滑性粒子: ここで、鋼中に分散させることが好適な自己潤滑性粒子として、硫化物粒子又は炭硫化物粒子が挙げられる。硫化物粒子又は炭硫化物粒子を採用することにより、これらの粒子の自己潤滑性を利用して、相対移動するピストンリング溝50の内壁面50a、50bとピストンリング100の上下面110との損傷を防止することができる。このような自己潤滑性の硫化物粒子として、例えば、Mn(マンガン)等のうち、少なくとも一種の元素を含む硫化物からなる粒子を挙げることができる。また、自己潤滑性の炭硫化物粒子として、例えば、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等のうち、少なくとも一種の元素を含む炭硫化物からなる粒子を挙げることができる。ここで、自己潤滑性粒子として、硫化物粒子及び炭硫化物粒子のいずれも好適に用いることができるが、炭硫化物粒子を自己潤滑性粒子として採用することが好ましい。発明者等の実験結果に基づけば、炭硫化物粒子を採用した場合の方が、硫化物粒子を採用した場合と比較して、アルミ凝着防止効果をより長期に渡って持続することが可能だからである。
自己潤滑性粒子の粒径: 本件発明では、鋼中に分散する分散粒子120が自己潤滑性粒子である場合、その粒径は、ピストンリング100の上下面110の周方向において、0.5μm〜500μmであることが好ましい。粒径が0.5μm〜500μmの硫化物粒子又は炭硫化物粒子を採用することにより、後述する化成処理を施したときに、上下面110において、母材である鋼材表面から当該自己潤滑性粒子が相対的に突出する量(高さ)を適正な範囲内にすることができる。自己潤滑性粒子の突出する量を適正な範囲内にすることにより、ピストンリング溝50の内壁面50a、50bとピストンリング100の上下面110とにおいて、互いの金属が直接的に面接触するのを防止して、アルミ凝着を防止するという本件発明が目的とする効果を有効に得ることができる。一方、粒径が0.5μm未満である場合、粒径が小さく、後述する化成処理を施した場合に母材表面から自己潤滑性粒子が相対的に突出する量が小さくなり、本件発明の目的とする効果を長期に渡って持続することができない。これに対して、粒径が500μmを超えると、後述する面積率が所定の範囲内であっても、鋼材の表面に自己潤滑性粒子を均一に分散させることが困難になる。このため、本件発明の目的とする効果が十分得られない場合がある。なお、ここで言う自己潤滑性粒子であるMnS等の軟質粒子の場合は、線引き加工、圧延加工等による塑性変形を受けると、同時に塑性変形する。よって、ここで言う自己潤滑性粒子の粒径は、塑性変形を受けた後の鋼材の組織内における長径を意味している。これに対し、Ti及び/又はZrを含む炭硫化物の場合には、線引き加工、圧延加工等による塑性変形を受けても、当該粒子が破砕されない限り、粒径に変動はないが、組織全体が塑性変形を受けた場合は、加工方向に分散して存在するようになる。
粒径の測定方法: ここで、上述の粒径は、鋼材の表面を研磨し、光学顕微鏡にて組織を確認し、写真撮影を行い、粒子の長径をスケールにて測定したものを指す。但し、粒径の測定方法は、当該方法に限定する趣旨ではない。また、長径とは、粒子が球形状である場合はその直径を指し、粒子が楕円形状である場合にはその長径を指す。さらに、粒子が不定形状である場合には、ピストンリング100の上下面110の表面において、粒子の任意の端部を結んで端部間距離を測定したときに、最長距離を示す端部間を結んだ直線を長径とする。当該粒径の測定方法は、硬質粒子についても同様である。
自己潤滑性粒子の面積率(%): また、本件発明において、鋼中に分散する分散粒子120が自己潤滑性粒子である場合、上下面110において当該自己潤滑性粒子が占める面積率(%)が2%〜10%であることが好ましい。当該自己潤滑性粒子の分散状態は、JISの非金属介在物の形で分類されているA系(図4(a)参照)、B系(図4(b)参照)、若しくはA系及びB系の混合した状態のいずれかの分散状態となる。すなわち、当該ピストンリングの原材料である線材が引き抜き加工で製造されているため、自己潤滑性粒子は上下面110において筋状に分布するように分散する。このとき、自己潤滑性粒子が上下面110に占める面積率を2%〜10%の範囲内とすることにより、自己潤滑性粒子を鋼材表面に略均一に分布させることができる。その結果、上下面110全体において、ピストンリング溝50の内壁面50a、50bとピストンリング100の上下面110とにおいて互いの金属が直接的に面接触して、アルミ凝着が起こるのを防止することができる。一方、当該面積率(%)が2%未満である場合、上下面110における自己潤滑性粒子の分布する密度が低くなる。この場合、自己潤滑性粒子が上下面110において局所的に分布し、本件発明の目的とする効果を上下面110の全面において得ることが困難になる。また、当該面積率(%)が10%を超える場合、上下面110における自己潤滑性粒子の分布する密度が高くなる。反言すれば、母材である鋼材においてFe成分が占める割合が低下することから、ピストンリング100の強度上の問題が生じる恐れがある。なお、面積率は、上下面110の表面を電子顕微鏡等で撮影して得たCOMP像(反射電子像)等に基づいて、測定することができる。
硬質粒子: 次に、硬質粒子について説明する。鋼中に分散させることが好適な硬質粒子として、具体的には、Cr(クロム)、V(バナジウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Mo(モリブデン)及びW(タングステン)から成る群から選択される少なくとも一種の元素の炭化物粒子が挙げられる。このような硬質粒子を上下面110の表面から突出させることにより、アルミ合金製のピストン40を採用した場合にも、ピストンリング溝50の摩耗を防止するとともに、母材が直接ピストンリング溝50の内壁面50a、50bと摺接してピストンリング100の上下面110が摩耗するのを防止することができる。
硬質粒子の粒径: 本件発明では、鋼中に分散する分散粒子120が硬質粒子である場合、その、平均粒径が0.5μm〜20μmであることが好ましい。粒径がこの0.5μm〜20μmの範囲の硬質粒子を採用することにより、後述する化成処理を施したときに、母材である鋼材表面から当該硬質粒子が突出する量(高さ)を適正な範囲内にすることができ、自己潤滑性粒子の場合と同様に、ピストンリング溝50の内壁面50a、50bとピストンリング100の上下面110とにおいて互いの金属が直接的に面接触して、アルミ凝着が生じるのを防止することができる。一方、平均粒径が上述の範囲から外れる場合についても、自己潤滑性粒子の場合と同様に、粒径が小さく、後述する化成処理を施した場合に母材表面から自己潤滑性粒子が相対的に突出する量が小さくなり、本件発明の目的とする効果を長期に渡って持続することができない。これに対して、粒径が20μmを超えると、相手攻撃性が高くなる点、硬質粒子が脱落するという点などから好ましくない。自己潤滑性粒子の場合と同様の理由から、鋼中に分散する分散粒子120の粒度分布が狭い方が好ましく、硬質粒子の粒径は、1μm〜15μmの範囲がより好ましく、1.5μm〜10μmの範囲が更に好ましい。但し、分散粒子120の種類に応じて、適宜、適切な粒径にすることが好ましいのは勿論である。なお、ここで言う硬質粒子の粒径は、粒子の長径を言う。この硬質粒子は、線引き加工、圧延加工等による塑性変形を受けても、粒子自体が破砕されない限り、粒径に変動はないが、組織全体が塑性変形を受けた場合には、加工方向に分散して存在するようになる。
硬質粒子の面積率(%): また、本件発明において、鋼中に分散する分散粒子120が硬質粒子である場合、上下面110において当該硬質粒子が占める面積率(%)が2%〜30%であることが好ましい。当該硬質粒子の分散状態は、JISの非金属介在物の形で分類しているC系(図4(c)参照)に分類される。すなわち、鋼材表面において、これらの硬質粒子が一様に点在するように分布する。このため、自己潤滑性粒子が上下面110に占める面積率を2%〜10%の範囲内とすることにより、硬質粒子を鋼材表面に略均一に分布させることができる。その結果、上下面110全体において、ピストンリング溝50の内壁面50a、50bとピストンリング100の上下面110とにおいて互いの金属が直接的に面接触して、アルミ凝着が起こるのを防止することができる。一方、当該面積率(%)が2%未満である場合、上下面110における自己潤滑性粒子の分布する密度が低くなる。この場合、自己潤滑性粒子が上下面110において局所的に分布し、本件発明の目的とする効果を上下面110の全面において得ることが困難になる。また、当該面積率(%)が10%を超える場合、上下面110における自己潤滑性粒子の分布する密度が高くなる。このため、母材である鋼材においてFe分が占める割合が低下し、ピストンリング100の強度上の問題が生じる場合がある。
化成処理層: ここで、本実施の形態のピストンリング100には、少なくともその上下面110に化成処理が施されていることが好ましい。化成処理が施されているとは、図3(a)に示すようにピストンリング100の上下面110上に化成処理層130を備える場合、及び、図3(b)に示すようにピストンリング100の使用に伴い当該化成処理層130が消失した場合のいずれの場合をも意味する。図3(a)に示すように化成処理層130が存在する間は、すなわち、ピストンリング100の使用初期段階においては、上下面110から相対的に突出した上述の分散粒子120と共に当該化成処理層130によりピストンリング100の上下面110と、ピストンリング溝50の内壁面50a、50bとが直接的に面接触するのを防止することができる。また、使用と共に徐々に化成処理層130が消失した場合でも、上述の分散粒子120は上下面110から突出した状態で維持されることから、ピストンリング100の使用中期又は使用後期段階においても、当該分散粒子120により、ピストンリング溝50の内壁面50a、50bとピストンリング100の上下面110とにおいて互いの金属が直接的に面接触するのを防止して、アルミ凝着効果を長期に渡って継続することができる。
化成処理として、具体的には、リン酸塩処理(リン酸マンガン処理、リン酸亜鉛処理)などが挙げられる。これらの化成処理を施すことにより、化成処理完了時には上下面110の表面にリン酸塩皮膜(リン酸マンガン皮膜、リン酸亜鉛塩皮)、四三酸化鉄皮膜が形成される。
窒化処理層: ここで、上下面110において、鋼材は窒化処理層(図示略)を備えてもよい。窒化処理層は、鋼材の表面に窒化処理を施すことにより形成される。このとき、鋼材中に分散した分散粒子120が窒化されることで、上述した分散粒子120が窒化物又は炭窒化物として存在していてもよい。特に、ピストンリング100の上下面110に対して化成処理を直接施すことが困難な場合に、ピストンリング100の上下面110に対して窒化処理を施して窒化処理層を形成した上で、化成処理を施すことで、上下面110から相対的に分散粒子120を突出させることができ、且つ、上下面110の母材部分に化成処理層130を形成することができる。
<ピストンリング100の製造方法>
次に、以上において説明した本件発明に係るピストンリング100の製造方法を説明する。本件発明に係るピストンリング100の製造方法は、成形工程と、化成処理工程とを備え、必要に応じて窒化処理工程が設けられる。窒化処理工程を行う場合には、化成処理工程の前に実施される。以下、(1)成形工程、(2)窒化処理工程、(3)化成処理工程の順に説明する。
(1)成形工程
成形工程は、自己潤滑性粒子又は硬質粒子が分散粒子120として鋼中に分散する鋼材を用いて、ピストンリング形状に加工する工程である。
鋼材の種類: 本件発明において使用可能な鋼材は、自己潤滑性粒子及び硬質粒子が適正に含有し、ピストンリングの構成素材として使用可能であれば、その種類に限定は無い。
ここで、自己潤滑性粒子が分散粒子120として鋼中に分散する鋼材とは、上述の自己潤滑性粒子が鋼中に分散した鋼材そのものを指す。そして、自己潤滑性粒子については、上述の通りであるため、ここでは説明を省略する。以下、本件発明において使用可能な鋼材を具体的に例示する。
硬質粒子が分散粒子120として鋼中に分散する鋼材とは、例えば、硬質の炭化物を形成するCr、V、Al、Mo、W等の合金元素を含むマルテンサイト系ステンレス鋼材や、炭化物が硬質粒子として合金鋼中に分散した鋼材を指す。マルテンサイト系ステンレス鋼材として、具体的には、C含有量が0.6質量%〜1.0質量%、Si含有量が1.0質量%以下、Mn含有量が1.0質量%以下、Cr含有量が13.0質量%〜18.5質量%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成の13Cr系のステンレス鋼材、17Cr系のステンレス鋼材を採用することが好ましい。
なお、この組成中にMo含有量を0.2質量%〜1.3質量%の範囲で含ませることも好ましい。Moは、硬質の炭化物を形成し、鋼材の耐摩耗性を向上させる。また、Moは、組織中に固溶して、鋼材の強度を向上させる。しかし、Mo含有量が0.2質量%未満の場合には、鋼材の強度向上は図れず、炭化物量も少なすぎて耐摩耗性を向上させ得ない。一方、Mo含有量が1.3質量%を超えると、鋼材の靭性が損なわれ、摺動特性が低下するため好ましくない。
更に、上記組成中に、V含有量を0.05質量%〜0.15質量%の範囲で含ませることも好ましい。Vも、硬質の炭化バナジウムVを形成し、鋼材の耐摩耗性を向上させる。V含有量が0.05質量%未満の場合には、炭化物量が少なすぎて、鋼材の耐摩耗性を向上させ得ない。一方、V含有量が0.15質量%を超えると、鋼材の靭性が損なわれるため、ピストンリング用途の鋼材として好ましくない。以下の表1には、ここで使用可能な13Cr系のステンレス鋼材及び17Cr系ステンレス鋼材の組成の一例を示す。
また、硬質粒子が分散粒子120として鋼中に分散する鋼材として、Ti、Zrを含有する合金組成として、WO2009/119388に開示された「C含有量が0.3質量%〜0.8質量%、Si含有量が0.1質量%〜3.0質量%、Mn含有量が0.1質量%〜3.0質量%、S含有量が0.01質量%〜0.3質量%、Cr含有量が0.1質量%〜2.0質量%、Ti含有量および/またはZr含有量が合計で0.05質量%〜2.0質量%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなる内燃機関用ピストンリング材」を用いることも好ましい。この組成の鋼材は、いわゆる「バネ鋼」である。
このときの合金成分としてのTiおよびZrは、溶融した鋼中でSと結合し硫化物を形成する。一方で、安定な炭化物を形成すると、その炭化物を形成した炭素の一部がSと置換または結合して、炭硫化物が形成される。このSを含む硫化物及び炭硫化物は、自己潤滑剤として機能するため、これらの分散粒子を含有する鋼材は、耐摩耗性と自己潤滑性とを同時に備えることになる。
そして、上述のバネ鋼組成の中でも、ピストンリング製造用の鋼材は、C含有量が0.5質量%〜0.6質量%、Si含有量が0.1質量%〜1.6質量%、Mn含有量が0.5質量%〜1.0質量%、S含有量が0.01質量%〜0.3質量%、Cr含有量が0.1質量%〜3.0質量%、Ni含有量が1.0質量%以下、残部はFeおよび不可避的不純物からなるバネ鋼であることが好ましい。この組成バランスを用いることで、ピストンリング材として良好な加工性能を備え、ピストンリングに加工して以降は、良好な摺動特性、耐摩耗性能を発揮する。
また、バネ鋼の場合、Ti含有量および/またはZr含有量が合計で0.2質量%〜2.0質量%を含むことが好ましい。Ti含有量および/またはZr含有量が合計で0.2質量%未満の場合には、鋼材の組織内で硫化物を生成する量が少なく、最終的に得られる固体潤滑性のある炭硫化物の生成量が少なくなり、ピストンリングに加工したときの摺動特性が向上せず好ましくない。一方、Ti含有量および/またはZr含有量が合計で2.0質量%を超える場合には、固体潤滑性の向上効果が飽和してしまい、むしろ、鋼材の靭性を著しく低下するため、ピストンリング材として良好な加工性能が損なわれ、ピストンリングに加工して以降は、良好な摺動特性、耐摩耗性能を発揮出来なくなるため、好ましくない。
そして、バネ鋼を用いる場合には、前記鋼材中に、Cu含有量を1.0質量%以下の範囲で含むものを用いることも好ましい。Cuは、鋼材の耐食性能、靭性を向上させ、ピストンリング材として良好な加工性能を付与するために用いられる。このとき、Cu含有量が1.0質量%を超える添加量としても、鋼材の耐食性能及び靭性の向上効果は飽和し、むしろ強度の低下(軟化)を招くため好ましくない。
更に、バネ鋼を用いる場合には、前記鋼材中に、Al含有量を0.2質量%〜0.5質量%の範囲で含むことも好ましい。このAlは、溶鋼の湯流れを向上させるための成分であり、更に、Cuと同様に、鋼材の靭性を向上させ、ピストンリング材として良好な加工性能を付与するために用いられる。Al含有量が0.2質量%未満の場合には、鋼材の靭性を向上させる効果は得られない。一方、Al含有量が0.5質量%を超えるものとしても、溶鋼の湯流れは向上せず飽和し、鋼材としての靭性の向上効果も飽和するため、資源の無駄遣いとなり好ましくない。
(2)窒化処理工程
次に、窒化処理工程について説明する。窒化処理工程は、化成処理工程を行う前に鋼材に施される工程であり、必要に応じて行われる。特に、前述の13Cr系のステンレス鋼材及び17Cr系ステンレス鋼材に関しては、窒化処理を施すことにより鋼材表面に窒素を拡散して窒化物や炭窒化物が生成した窒化処理層を形成し、鋼材表面の耐摩耗性や耐疲労性を向上することができる。また、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼材を用いてピストンリング100を形成する場合には、当該鋼材の表面に直接化成処理を施しても、化成処理被膜を形成することができない。この場合、窒化処理層を鋼材表面に形成した上で、化成処理を施すことで、化成処理被膜を上下面110に形成することが可能になる。従って、化成処理を施す上で、必要な場合には当該窒化処理工程が必須の工程となる。
窒化処理の方法には特に限定はなく、ガス窒化、プラズマ窒化等の従来既知の方法を採用することができる。また、鋼材の表面に窒素と同時に炭素も拡散させる軟窒化処理を行ってもよい。軟窒化処理としては、ガス窒化、塩浴軟窒化、プラズマ軟窒化、浸硫窒化などの方法を採用することができる。また、浸炭窒化を行ってもよい。鋼材の種類等に応じて、適切な方法を採用すればよい。
(3)化成処理工程
化成処理工程は、成形された鋼材の少なくとも上下面110に相当する面に化成処理を施す工程である。ここで、化成処理とは、金属表面に化学的に非金属物質を被覆する処理を指す。具体的には、化成処理の一例として、リン酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられる。また、リン酸塩処理としては、リン酸亜鉛処理、リン酸鉄処理、リン酸マンガン処理などが挙げられる。これらの化成処理は、市販されている化成処理液を用いて、従来工程の手法により適宜行うことができる。
ここで、図5を参照して、化成処理の進行と共に化成処理を施した面において起こる変化について説明する。化成処理では、成膜反応のエネルギーを電気化学的なアノード反応によって得ている。鋼材に対して化成処理を施すと、Fe成分のアノード反応(Fe→Fe2++2e)が起こり、これによりFe成分が溶解して鋼材の表面が薄く剥ぎ取られる。一方、上述の例示した分散粒子120は硫化物、炭硫化物、炭化物、窒化物、炭窒化物のいずれかから成る粒子であるため、当該アノード反応には関与しない。従って、図5(a)に示すように、化成処理開始前は鋼材の内側に存在していた分散粒子120の一部が、化成処理の初期反応において鋼材の表面が薄く剥ぎ取られる結果、図5(b)に示す様に鋼材の表面から分散粒子120が相対的に突出する。そして、化成処理の進行と共に、図5(c)に示すように、鋼材の表面には化成処理被膜が生成される。なお、図5(c)に示すように、表面から突出した分散粒子120上には化成処理被膜は生成されない。また、図5(b)、図5(c)において、上下面110の表面から内側に向かうくさび形状の凹部は、鋼材の表面が化成処理の初期反応によって内側に浸食された状態を示したものである。
当該化成処理工程において、化成処理反応を円滑に進行させるため、適宜、前処理を行ってよいのは勿論である。化成処理前に行う処理として、例えば、脱脂処理、酸洗処理、表面調整処理等がある。脱脂処理は、化成処理を施す面に化成処理液が十分接液できるように表面の油脂分を除去するために行う処理である。また、酸洗処理は、常温の塩酸や加熱した硫酸水溶液などを用いて、化成処理を施す面に付着した酸化スケールを除去するために行う処理である。鋼材に対して、浸炭処理などの表面硬化熱処理が施されている場合に、当該酸洗処理を要する。表面調製処理は、化成処理を施す面において、Fe成分のアノード反応性を向上させるために適宜行われる処理である。また、脱脂処理、酸洗処理の後にそれぞれ水洗処理を行ってもよいのは勿論である。さらに、化成処理後には、水洗処理、乾燥処理などを行ってもよい。
以上説明した本実施の形態のピストンリング100及びピストンリング100の製造方法によれば、鋼材に分散する自己潤滑性粒子又は硬質粒子を、鋼材の表面から突出させる構成を採用することにより、ピストンリング溝50と、ピストンリング100の上下面110とにおいて、互いの金属が直接的に面接触することを防止している。このため、表面処理被膜を上下面110上に形成する方法と異なり、使用と共に表面処理被膜が消失することがなく、ピストン40使用の初期段階から、長期的にアルミ凝着防止の効果を維持することができる。さらに、本実施の形態のピストンリング100は、化成処理が施されたものであるため、当該ピストンリング100の使用初期段階においては、化成処理被膜によってもピストンリング溝50と、ピストンリング100の上下面110とにおいて、互いの金属が直接的に面接触することをより有効に防止することができる。また、上下面110に対して、化成処理被膜のみを設けた構成では、ピストンリング100の使用と共に、化成処理被膜が摩耗により徐々に消失する。しかしながら、本実施の形態では、分散粒子120が化成処理被膜よりも突出するように設けることが可能であり、分散粒子120により化成処理被膜自体がピストンリング溝50の内壁面50a、50bと直接的に面接触し難くすることが可能であり、より長期にわたってアルミ凝着防止効果を得ることができる。
また、自己潤滑性粒子又は硬質粒子が分散粒子120として鋼中含む鋼材を使用することにより、これらの分散粒子120を含まない通常の鋼材を用いてピストンリング100を製造する場合と比べると、鋼材に掛かる材料コストは僅かに上昇する場合がある。しかしながら、固体潤滑剤或いは金属粉末を含有する樹脂被膜を上下面110に設ける方法に比して、アルミ凝着防止に掛かるコストを大幅に低減することができる。また、ピストンリング100の長寿命化を図ることができる。このため、ピストンリング100に掛かる全体的なコストを低減することができる。よって、本件発明によれば、アルミ凝着を長期的に防止することができ、アルミ凝着を防止するためのコストを低減することができる。
但し、上述の実施の形態は本件発明の一態様に過ぎず、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。また、図1及び図2に例示したピストンリング100の外観形状は一例であって、当該外観形状に限定されるものではない。本件発明に係るピストンリング100は、ピストンリング100としての機能を有する限り、如何なる外観形状を呈してもよく、ピストンリング100の形状、その断面形状、合口の形状等に特に限定はない。また、本件発明に係るピストンリング100として、主に、圧力リング(トップリング10、セカンドリング20)を例に挙げて説明したが、オイルリング30に対して本件発明を適用することを妨げる趣旨ではない。
以下、実施例を挙げて、本件発明をより具体的に説明するが、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1では、本件発明に係る分散粒子120として、粒径が0.5μm〜500μmの炭硫化物から成る自己潤滑性粒子が鋼中に分散した線材を用いて、ピストンリング100を製造した。ここで、ピストンリングの仕様は、d1:φ80mm、h1:1.2mm、a1:2.35mm、摺動面:バレル形状とした。また、当該線材の化学成分組成については、表2に示す。
そして、その後、化成処理としてリン酸マンガン処理を行った。リン酸マンガン処理には、市販のリン酸マンガン処理液を用いた。以上の工程により、自己潤滑性粒子として炭硫化物が鋼中に分散した鋼材から成り、その上下面110において、当該鋼材の表面から炭硫化物粒子が突出したピストンリング100(実施試料1−1〜実施試料1−3)が得られた。当該ピストンリング100の上下面110における自己潤滑性粒子の分散状態を図6(a)〜(c)に示す。当該ピストンリング100の上下面110において自己潤滑性粒子が占める面積率(%)は、3〜5%であった。
なお、本件発明に係る分散粒子120とは、自己潤滑性粒子、又は、硬質の炭化物粒子から成る硬質粒子を指し、詳細には上述の実施の形態で説明した通りである。また、自己潤滑性粒子(分散粒子120)の粒径とは、上述の実施の形態において説明した通り、その長径をスケールにて測定したものである。また、長径とは、分散粒子120が球形状である場合はその径を指し、分散粒子120が楕円形状である場合にはその長径を指す。さらに、分散粒子120が不定形状である場合には、ピストンリング100の上下面110の表面において、分散粒子120の任意の端部を結んで端部間距離を測定したときに、最長距離を示す端部間を長径とする。実施例2における硬質粒子についても同様である。
[比較例1]
この比較例1は、上述の実施例1との対比を行うためのものである。この比較例1では、実施例1で用いた表2に示す線材を用い、実施例1から化成処理(リン酸マンガン処理)を省略して、トップリングとしてのピストンリング(比較試料1−1〜比較試料1−3)を製造した。
実施例2では、実施例1で用いた線材の代わりに、硬質の炭化物を形成するCrを含むマルテンサイト系ステンレス鋼材を用い、窒化処理を行った上で、化成処理を施した以外は、実施例1と同様にしてトップリング10としてのピストンリング100−2を製造した。但し、当該実施例2で用いた鋼材の化学成分組成は表3に示す通りである。これにより、硬質粒子としてCrの炭化物が鋼中に分散した鋼材から成り、上下面110の表面には窒化処理層を備え、当該上下面110において、鋼材の表面から硬質粒子が突出したピストンリング100が得られた。当該ピストンリング100の上下面110における自己潤滑性粒子の分散状態を図7に示す。但し、硬質粒子の粒径は、0.5μm〜15μmであった。また、図7に示す電子顕微鏡のCOMP像に基づいて求めた当該ピストンリング100の上下面110において硬質粒子が占める面積率(%)は、10%であった。
[比較例2]
この比較例2は、上述の実施例2との対比を行うためのものである。この比較例2では、実施例2で用いた線材の代わりに、本件発明に係る分散粒子120が鋼中に分散していない鋼材を用いた点のみが異なる。即ち、鋼材を変更した以外は、実施例2と同様にしてトップリングとしてのピストンリングを製造した。比較例2で用いた鋼材の化学成分組成は表3に示す通りである。
<評価>
以上のようにして製造した実施例1及び実施例2のピストンリング100−1、100−2と、比較例のピストンリングについて、アルミ凝着防止効果を評価した。まず、評価方法を説明する。
(1)評価方法
実施例及び比較例で製造した各ピストンリングについて、摩耗試験を行い、アルミ凝着が発生するまでの時間を評価した。摩耗試験は、図8に示す摩耗試験装置200を用いて行った。
摩耗試験装置200: まず、摩耗試験装置200の構成について説明する。図8は、摩耗試験装置200の構成を模式的に示したものである。摩耗試験装置200は、図8に示すように、実機のピストン40及びシリンダー60に相当するピストン相当部210及びシリンダー相当部220を備えている。ピストン相当部210には図示しない往復駆動装置が接続されている。往復駆動装置は、ピストン相当部210を往復移動させる際に、駆動源としてのモーターの出力軸の回転運動を、偏心回転運動に変換した上で、この偏心回転運動を更に上下方向の往復運動に変換して、ピストン相当部210に伝達するようになっている。従って、往復駆動装置は、ピストン相当部210をシリンダー相当部220に対して上下方向に往復移動させるとともに、ピストン相当部210にピストン40スラップ運動と称される首振り運動を同時に行わせることができるように構成されている。
ピストン相当部210には、テストピースとなるピストンリング(100)が装着されるピストンリング溝211、212が二つ形成されている。一方、シリンダー相当部220には、この二つのピストンリング溝211、212の間に圧縮ガスを送り込むための圧縮ガス供給孔221がシリンダー相当部220を構成する壁面220を貫通するように設けられている。この圧縮ガス供給孔221には、圧縮ガスを貯留するガスタンク230が圧縮ガス供給管231を介して接続されている。ガスタンク230には流量調整弁232が設けられており、圧縮ガス供給管231にはガス流量を計測するためのガス流量計233が接続されている。そして、これらの構成により、ピストンリング溝211、212間に装着されたピストンリング(100)と、シリンダー相当部220の内周面222及びピストン相当部210の外周面213とによって囲まれた空間内に供給される圧縮ガスのガス圧を制御することができるようになっている。また、圧縮ガス供給孔221を介して、ピストン相当部210に形成された二つのピストンリング溝211、212の間に潤滑油を供給可能に構成されている。さらに、ピストン相当部210には、図示しないヒーターと、ピストンリング溝211、212の溝底の温度を測定するための熱電対とが設けられており、ピストンリング溝211、212の溝底の温度が一定の温度になるように制御することができる。従って、当該構成の摩耗試験装置200を用いることにより、テストピースとして用いるピストンリングを実機での使用状態と極めて近似した状態で摩耗試験を行うことができるようになっている。なお、摩耗試験装置200のより具体的な構成として、特開2008−76132に開示の摩耗試験装置の構成を採用することができる。
摩耗試験条件: 次に、摩耗試験条件について説明する。摩耗試験条件は次の通りとした。まず、駆動源の駆動周波数(みぞ摺り周波数)を33Hzとし、溝底温度が180℃になるように温度制御を行った。また、圧縮ガス供給孔221を介して供給する圧縮ガスのガス圧を0.5MPaになるように制御した。そして、潤滑油を1ml/30secの供給量で30分間供給した後は、1時間経過する毎に潤滑油の供給量を少なくしながら、潤滑油を継続して供給した。なお、摩耗試験時間は25時間としたが、25時間に達する前にブローバイが増加して、ブローバイ量の測定が不能になった時点で摩耗試験を終了した。
(2)評価結果
<評価結果1:実施例1と比較例1との対比>
摩耗試験結果を述べる。上述のようにして製造したピストンリングを、ピストンに装着して、上述の摩耗試験装置で測定すると、アルミ凝着が発生した時点で、ブローバイ量の計測は不能になる。実施例1で製造したピストンリング100(実施試料1−1〜実施試料1−3)は、摩耗試験を開始してから、アルミ凝着が発生するまでの間に、約20時間〜約22時間を要した。一方、比較例1で製造したピストンリング(比較試料1−1〜比較試料1−3)は、摩耗試験を開始してから約3時間〜約5時間でアルミ凝着が発生した。
当該結果から、ピストンリング100を、単に分散粒子120が鋼中に分散した鋼材を用いて構成しただけでは、十分にアルミ凝着防止効果を発揮し得ないことが分かる。ピストンリング100について、十分にアルミ凝着防止効果を発揮させるためには、化成処理を施して、ピストンリング100の上下面110において、分散粒子120を鋼材の表面から突出させることで、アルミ合金製のピストン40に当該ピストンリング100を装着して使用しても、アルミ凝着防止効果を長期間、維持可能であると言える。
<評価結果2:実施例2と比較例2との対比>
実施例2で製造したピストンリング100は、摩耗試験を開始してから、アルミ凝着が発生するまでの間にそれぞれ約13時間を要した。一方、比較例2で製造したピストンリングは、摩耗試験を開始してから約3時間でアルミ凝着が発生した。当該結果から、ピストンリング100を、分散粒子120が鋼中に分散した鋼材を用いて構成し、上下面110において分散粒子120を鋼材の表面から突出させることにより、アルミ合金製のピストン40に当該ピストンリング100を装着して使用しても、アルミ凝着防止効果を従来に比して長期間、維持可能であることが分かる。
本件発明に係るピストンリングを採用することにより、ピストンリング溝と、ピストンリングの上下面とにおいて互いの金属が直接的に面接触することを防止している。このため、初期なじみ後も表面処理被膜が消失することがなく、ピストン使用の初期段階から、長期的にアルミ凝着防止の効果を維持することができる。従って、アルミ合金製のピストンが採用される場合が多い自動車等の内燃機関に特に好適に用いることができる。
また、本件発明に係るピストンリングの製造方法を採用することにより、本件発明に係るピストンリングを好適に製造することができる。更に、自己潤滑性粒子又は硬質粒子がピストンとして鋼中に分散する鋼材を使用することにより、通常の鋼材を用いてピストンリングを製造する場合と比べると、材料としての鋼材に要するコストは若干上昇する。しかしながら、固体潤滑剤或いは金属粉末を含有する樹脂被膜を設ける方法に比して、全体的なコストを低減することができる。
10・・・トップリング(ピストンリング)
20・・・セカンドリング(ピストンリング)
30・・・オイルリング(ピストンリング)
100・・・ピストンリング
110(10a、10b、20a、20b)・・・上下面
120・・・分散粒子
130・・・化成処理層

Claims (14)

  1. 内燃機関に用いられるピストンリングであって、
    シリンダと摺動する外周摺動面、ピストンリング溝と接する上下面、及び内周面を備え、
    自己潤滑性粒子、又は、硬質の炭化物粒子から成る硬質粒子が分散粒子として鋼中に分散した鋼材から成り、
    前記上下面において、当該鋼材の表面から前記分散粒子が突出していること、
    を特徴とするピストンリング。
  2. 前前記鋼材の少なくとも前記上下面に相当する面に化成処理が施されている請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記自己潤滑性粒子は、粒径が0.5μm〜500μmの硫化物粒子又は炭硫化物粒子であり、
    前記上下面において当該自己潤滑性粒子が占める面積率(%)が2%〜10%である請求項1又は請求項2に記載のピストンリング。
  4. 前記硬質粒子は、粒径が0.5μm〜20μmのCr、V、Ti、Al、Mo及びWから成る群から選択される少なくとも一種の元素の炭化物粒子であり、
    前記摺動面において当該硬質粒子が占める面積率(%)が2%〜30%である請求項1又は請求項2に記載のピストンリング。
  5. 前記鋼材は窒化処理層を備える請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のピストンリング。
  6. 前記鋼材は、C含有量が0.6質量%〜1.0質量%、Si含有量が1.0質量%以下、Mn含有量が1.0質量%以下、Cr含有量が13.0質量%〜18.5質量%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成のステンレス鋼材を用いて得られる請求項1に記載のピストンリング。
  7. 前記鋼材中に、Mo含有量が0.2質量%〜1.3質量%のステンレス鋼材を用いて得られる請求項6に記載のピストンリング。
  8. 前記鋼材中に、V含有量が0.05質量%〜0.15質量%のステンレス鋼材を用いて得られる請求項6又は請求項7に記載のピストンリング。
  9. 前記鋼材は、C含有量が0.5質量%〜0.6質量%、Si含有量が0.1質量%〜1.6質量%、Mn含有量が0.5質量%〜1.0質量%、S含有量が0.01質量%〜0.3質量%、Cr含有量が0.1質量%〜3.0質量%、Ni含有量が1.0質量%以下、残部はFeおよび不可避的不純物からなるバネ鋼を用いて得られる請求項1に記載のピストンリング。
  10. 前記鋼材中に、Ti含有量および/またはZr含有量が合計で0.2質量%〜2.0質量%のバネ鋼を用いて得られる請求項9に記載のピストンリング。
  11. 前記鋼材中に、Cu含有量を1.0質量%以下のバネ鋼を用いて得られる請求項9又は請求項10に記載のピストンリング。
  12. 前記鋼材中に、Al含有量が0.2質量%〜0.5質量%のバネ鋼を用いて得られる請求項9〜請求項11のいずれか一項に記載のピストンリング。
  13. 内燃機関に用いられるピストンリングを製造するためのピストンリングの製造方法であって、
    自己潤滑性粒子又は硬質粒子がピストンとして鋼中に分散する鋼材を用いてピストンリング状に成形する成形工程と、
    成形された鋼材の少なくとも上下面に相当する面に化成処理を施す化成処理工程と、
    を備えることを特徴とするピストンリングの製造方法。
  14. 前記化成処理工程を行う前に、前記鋼材に窒化処理を施す請求項13に記載のピストンリングの製造方法。
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