JP2012149358A - 製紙用フェルト - Google Patents
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Abstract
【課題】 基布を巻回積層した基体にバット繊維層をニードリングした製紙用フェルトにおいて、搾水性や耐久性を損ねることなく、基布マークや基布端部マークが生じ難い製紙用フェルトを提供する。
【解決手段】 経糸11と12とを交絡させて形成した帯状の基布2を、環状に巻回積層して形成した基体3と、基体にニードリングされたバット繊維層4とを有する製紙用フェルト1であって、経糸は、2〜6本の直径が0.13mm〜0.32mmのフィラメントを撚り数6回/25.4mm以下で撚り合わせた撚り糸であり、外層側端部17は、その外層側端縁19が基体の幅方向に対して5°〜30°の角度をなし、内層側端部18は、その内層側端縁20が外層側端縁と平行になると共に、基体の丈方向において、外層側端部と10mm以内の範囲で重なる、または、外層側端部から5mm以内の範囲で離間していることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 経糸11と12とを交絡させて形成した帯状の基布2を、環状に巻回積層して形成した基体3と、基体にニードリングされたバット繊維層4とを有する製紙用フェルト1であって、経糸は、2〜6本の直径が0.13mm〜0.32mmのフィラメントを撚り数6回/25.4mm以下で撚り合わせた撚り糸であり、外層側端部17は、その外層側端縁19が基体の幅方向に対して5°〜30°の角度をなし、内層側端部18は、その内層側端縁20が外層側端縁と平行になると共に、基体の丈方向において、外層側端部と10mm以内の範囲で重なる、または、外層側端部から5mm以内の範囲で離間していることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、製紙用フェルトに係り、より詳細には、基布を巻回積層してなる基体にバット繊維層をニードリングした製紙用フェルトに関する。
従来、製紙機(抄紙機)で使用する製紙用フェルトとして、経糸及び緯糸を互いに織り上げた帯状の基布を環状に巻回積層して基体を形成し、この外面(製紙側面)及び内面(走行側面)にバット繊維層をニードリングによって結合させたものがある(例えば、特許文献1)。このような抄紙用フェルトは、基布の丈方向における端部が基体の外面上で段部を形成するため、運搬する湿紙に基布端部マーク(基布の丈方向端部による段部によって湿紙に転写される痕)を生じさせる問題がある。また、段部がロールを通過する際に振動が発生すると共に、段部から基布の捲れが生じるという問題がある。この問題に対して、特許文献1に係る製紙用フェルトでは、基布の丈方向端部に配置される緯糸を抜き去り、段部を鈍らせる処置を行っている。
しかしながら、基布の丈方向端部から緯糸を抜き去っても、端部には経糸が未だ存在しており、経糸には緯糸よりも硬くかつ直径が大きい糸が用いられることが多いため、段部は依然として存在し、湿紙に基布端部マークを生じさせる虞がある。また、従来の、基布を巻回積層してなる基体を用いた製紙用フェルトでは、連続した基布が全領域において均質な構造(経糸及び緯糸の材質、径、密度及び織り構造等)を有するため、基布が積層された状態(すなわち、基体が厚い状態)で、搾水性を確保するために、基布の糸密度が低くなる。そのため、基体の製紙面が粗くなり、基布マーク(経糸及び緯糸のナックル部によって湿紙に転写される痕)が生じやすいという問題があった。従来の多層の製織基布やラミネート基布等では、積層される基布が別体に織り上げられるため、層間で互いに異なる構造を有することができ、製紙面の表面平滑性と搾水性とを両立することが可能であるが、基布を巻回積層してなる基体を用いた製紙用フェルトではこのような設計自由度がなかった。
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、基布を巻回積層した基体にバット繊維層をニードリングした製紙用フェルトにおいて、搾水性を損ねることなく、基布マークや基布端部マークが生じ難い製紙用フェルトを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、丈方向に延在する経糸(11)と幅方向に延在する緯糸(12)とを交絡させて形成した帯状の基布(2)を、環状に巻回積層して形成した基体(3)と、前記基体にニードリングされたバット繊維層(4)とを有する製紙用フェルト(1)であって、前記経糸は、2〜6本の直径が0.13mm〜0.32mmのフィラメントを撚り数6回/25.4mm(1インチ)以下で撚り合わせた撚り糸であり、前記基布の丈方向における一端部(17)は、その端縁(19)が前記基体の幅方向に対して5°〜30°の角度をなし、前記基布の丈方向における他端部(18)は、その端縁(20)が前記一端部の端縁と平行になると共に、前記基体の丈方向において、前記一端部と10mm以内の範囲で重なる、または、前記一端部から5mm以内の範囲で離間していることを特徴とする。
この構成によれば、経糸につぶれ易い、すなわち扁平化しやすい撚り糸を用いたため、基布の丈方向端部が形成する段部を鈍らせることができ、段差を低くすることができる。これにより、基布端部マークの発生を抑制することができる。また、基布の丈方向における端縁を基体の幅方向に対して傾斜させたため、製紙用フェルトが一対のロール間を通過する場合において、段部の全てが同時にロール間を通過することが避けられるため、基布の丈方向端部からの捲れが抑制されるともに段部による基布端部マークが発生し難くなる。
また、本発明の他の側面は、前記緯糸は、前記基布の丈方向において、材質、直径、糸形状及び配置密度の少なくとも1つが異なることを特徴とする。
この構成によれば、基布を巻回積層してなる基体の各層の性質を変更することができる。
また、本発明の他の側面は、前記緯糸は、前記基体の最外層側(14)に配置されるものほど、直径が小さく、かつ配置密度が大きいことを特徴とする。
この構成によれば、基体の最外層(製紙面を構成する層)の糸密度を緻密にし、表面平滑性を向上させて基布マークを防止すると共に、他の層の糸密度を最外層より粗くして搾水性を向上させることができる。
また、本発明の他の側面は、前記基体の複数の層は、織組織が異なる2種類以上の層を含むことを特徴とする。ここで、織組織とは、上下に組み合わさって平面を形成している経糸及び緯糸の上がり・下がり(跨ぎ・潜り)の規則性を有する基本単位(繰り返し単位)をいう。
この構成によれば、織組織を変化させることで、基体の各層の性質を変更することができる。
また、本発明の他の側面は、前記基体の各層において、前記緯糸の30〜80重量%が低融点熱可塑性糸で構成されていることを特徴とする。ここでの低融点熱可塑性糸とは、融点が150℃以下の高分子材料から形成された糸をいう。
この構成によれば、熱セットによって基体の各層が互いに結合するため、構造的に安定した製紙用フェルトを得ることができる。
また、本発明の他の側面は、当該製紙用フェルトは、その幅方向における端部に耳部(24)を有し、前記耳部には、丈方向において前記基布の前記一端部及び前記他端部を跨ぎ、かつ前記基布の各層及び前記バット繊維層を一体に縫着する縫製糸(25)が縫い込まれていることを特徴とする。
この構成によれば、基布の一端部及び他端部の捲れを効果的に防止することができる。通常、基布の一端部及び他端部の捲れは、製紙用フェルトの幅方向における端部から生じることが多いため、耳部を縫製糸によって逢着することで捲れを効果的に防止することができる。なお、耳部は、製紙の製品部分に関係しないため、縫製糸が製紙の品質を低下させることはない。
以上の構成によれば、基布を巻回積層した基体にバット繊維層をニードリングした製紙用フェルトにおいて、搾水性や耐久性を損ねることなく、基布マークや基布端部マークが生じ難くすることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態に係る製紙用フェルトは、製紙機において抄紙を運搬する搬送手段として用いられ、抄紙の加圧脱水工程等に使用される。
図1〜図3に示すように、実施形態に係る製紙用フェルト(以下、単にフェルトという)1は、帯状の基布2を環状に巻回積層して形成した環状の基体3に、ニードリングによってバット繊維層4を積層一体化したものである。フェルト1(基体3)の長手方向を丈方向といい、長手方向に直交する方向を幅方向という。また、基布2のみに関しても、長手方向を丈方向といい、長手方向に直交する方向を幅方向という。フェルト1は、使用時において製紙機のロールに巻き掛けられ、丈方向に走行する。図1において、フェルト1の外面は湿紙が載る製紙面5を構成し、内面は製紙機のロール等に当接する走行面6を構成する。
図4に示すように、基体3を構成する基布2は、展開された状態で帯状をなす。基布2は、丈方向に沿って延在する経糸11と、幅方向に沿って延在する緯糸12とが互いに交絡した織布である。基布2は、少なくとも2重に巻回積層されて基体3を形成する。本実施形態では、基布2は3重に巻回積層され、基体3に外層14、中間層15及び内層16の3層を形成する。
経糸11は、材質に特に限定はなく、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂材料から形成されたフィラメントを複数本撚り合わせた撚り糸である。経糸11は、例えば、1本の直径が0.13mm〜0.32mmのフィラメントの2〜6本を、撚り数が6回/25.4mm(1インチ)で撚り合わせた撚り糸である。この撚り糸は、2〜6本のフィラメントを同時に撚り合わせたものであってもよく、予め2本のフィラメントを撚り合わせて2本撚り糸を作成し、2組または3組の2本撚り糸を更に撚り合わせて撚り糸としたものであってもよく、予め3本のフィラメントを撚り合わせて3本撚り糸を作成し、2組の3本撚り糸を更に撚り合わせて撚り糸としたものであってもよい。2本撚り糸及び3本撚り糸の撚り数は、例えば6回/25.4mmである。経糸11の密度は、撚り糸を1本の糸として数えて幅方向に18〜50本/25.4mmである。
緯糸12は、材質に特に限定はなく、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂材料から形成されたモノフィラメント糸や、これらの材料からなるフィラメントの撚り糸を適用することができる。なお、外層14、中間層15及び内層16の各層において、緯糸12の30〜80重量%には、低融点熱可塑性糸が適用されることが好ましい。低融点熱可塑性糸は、融点が150℃以下の高分子材料から形成された糸であって、例えばポリアミドやポリエステル等から形成されている。緯糸12に低融点熱可塑性糸を適用し、後述する熱セットを行うことによって、巻回積層された基体3の各層14〜16を互いに結合させ、基体3の構造安定性を高めることができる。低融点熱可塑性糸は、芯鞘型複合繊維であってもよい。この場合の芯鞘型複合繊維は、鞘部の融点が芯部よりも低く、鞘部の融点が150℃以下であることが好ましく、例えば芯部が150℃で、鞘部が210℃である。緯糸12は、丈方向において13本〜30本/25.4mmの密度で配置されていることが好ましい。
また、緯糸12は、外層14、中間層15及び内層16の各層で表面性や耐久性、搾水性等の特性を変化させるために、基布2の丈方向において、材質、直径、糸形状(モノフィラメント糸や撚り糸、マルチフィラメント糸)及び配置密度の少なくとも1つが異なるように設定されている。例えば、緯糸12は、内層16、中間層15、外層14の順に直径が小さくなり、内層16、中間層15、外層14の順に丈方向における糸密度が大きくなるように設定される。これにより、外層14の表面性(表面性状)を中間層15及び内層16よりも緻密かつ平滑にすることができると共に、内層16及び中間層15の空隙率を外層14よりも増大させ、製紙用フェルト1全体の目詰まりを抑制すると共に、搾水性を高めることができる。また、緯糸12は、外層14に撚り糸を適用し、中間層15及び内層16にモノフィラメント糸を適用するようにしてもよい。また、緯糸12は、外層14に比較的可撓性が高い材料から形成された糸を適用し、中間層15及び内層16に外層14よりも可撓性が低い材料から形成された糸を適用してもよい。
経糸11と緯糸12とは、緯糸12が、経糸11を3本跨いだ(経糸11の表面側(製紙面側)を通過した)後、経糸11を1本潜る(経糸11の裏面側(走行面側)を通過する)という3/1組織で互いに編み込まれている。なお、経糸11と緯糸12との編み込み単位は、これに限定されるものではない。また、各層間において織組織を変更してもよい。例えば、外層14をヒラ組織(緯糸12が、経糸11を1本跨いだ後、経糸11を1本潜る)とし、中間層15及び内層16を1/3組織(緯糸12が、経糸11を3本潜った後、経糸11を1本跨ぐ)とする等、各層毎に織組織を変化させることで、外層14については表面平滑性を高める一方、内層16については裏面磨耗を低減する構造とすることができる。更に、外層14の緯糸12は細く、内層16の緯糸12は太くする等、緯糸12の特性を変化させることで、その効果はより大きくなる。
図4に示すように、基布2は、丈方向において、外層14側の端部となる外層側端部17と、内層16側の端部となる内層側端部18とを有している。外層側端部17及び内層側端部18は、基体3を形成するべく巻回積層された後において一部が切除され、その切除縁が外層側端縁19及び内層側端縁20を形成する。外層側端縁19及び内層側端縁20は、直線状かつ互いに平行となり、かつ基布2(基体3)の幅方向となす角度θが5°〜30°となるようになるように形成される。
図3示すように、製紙用フェルト1は、幅方向において、中央部23と、その両側方の耳部24とを有している。製紙面5側の中央部23は、ロール等により製紙用フェルト1がプレスされる範囲であり、製品となる抄紙を保持し、製紙面5側の耳部24は、ロール等によるプレスされる範囲外であり、抄紙に影響を与えない部分である。図3及び図5に示すように、両耳部24には、外層14、中間層15、内層16及びバット繊維層4を一体に縫着するための縫製糸25が縫いこまれている。縫製糸25は、製紙用フェルト1の丈方向に延在し、丈方向において外層側端縁19及び内層側端縁20を跨ぐ(通過する)ように配置されている。縫製糸25の製紙用フェルト1の丈方向における長さL2は、30cm以上であることが好ましく、製紙用フェルト1の丈方向において全周にわたって設けられてもよい。本実施形態では、各耳部24に対して1本の縫製糸25を配置するようにしたが、縫製糸25の数は、任意に選択してよい。縫製糸25は、公知の様々な材質から形成されてよく、モノフィラメント糸や撚り糸等の様々な形態であってよい。縫製糸25は、耳部24に配置されているため、抄紙の製品部分に痕を発生させることがない。
基布2から基体3を作成する方法について説明する。最初に、基布2の内層側端部18から基布2の表面が製紙面側に配置されるように巻き回し、内層側端部18を内層16と中間層15との境界部に水溶性接着材等を用いて接着し、内層16を環状に形成する。水溶性接着剤は、製紙用フェルト1の完成後における水洗時に、溶けて消滅するものであることが好ましい。他の実施形態では、水溶性接着剤に代えて、水溶性繊維で内層側端部18を内層16と中間層15との境界部に縫着してもよい。このとき内層側端部18は、後に一部を切除して内層側端縁20を形成できるように切除代を残して接着する。次に、内層16の外面側に中間層15を巻き回し、中間層15を環状にするとともに、中間層15を内層16上に積層する。続いて、中間層15の外面側に外層14を巻き回し、外層14を環状にするとともに、外層14を中間層15上に積層する。そして、外層側端部17を、内層側端部18と同じく切除代を残して、中間層15と外層14との境界部に水溶性接着剤等を用いて結合する。
次に、外層側端部17及び内層側端部18の一部を切除して、直線状かつ互いに平行となり、かつ基体3(基布2)の幅方向となす角度θが5°〜30°となる外層側端縁19及び内層側端縁20を形成する。このとき、図2及び図3に示すように、外層側端部17と内層側端部18とが、基体3の丈方向においてオーバーラップするように外層側端縁19と内層側端縁20とを形成する。外層側端縁19と内層側端縁20とがオーバーラップする範囲は、外層側端縁19と内層側端縁20との基体3の丈方向における距離L1が10mm以内となるように設定するとよい。なお、他の実施形態では、図6に示すように、外層側端部17と内層側端部18とが、基体3の丈方向において、オーバーラップしないように離間させてもよい。この場合には、外層側端縁19と内層側端縁20との基体3の丈方向における距離L1が5mm以内となるように設定するとよい。
外層側端縁19及び内層側端縁20を形成した後は、外層側端縁19及び内層側端縁20付近に存在する経糸を抜き去り、外層側端縁19及び内層側端縁20に経糸のみが露出するようにしてもよい。その後、外層側端部17及び内層側端部18を水溶性接着剤で、基布2の表面に接着してもよい。なお、水溶性接着剤で接着しなくても後のバット繊維層4のニードリングによって外層側端部17及び内層側端部18は基布2の表面に結合される。
基体3の製紙面側(外層14側)及び走行面側(内層16側)には、バット繊維層4がニードリングによって結合されている。バット繊維層4は、繊維集合体であり、その材料にはポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等が適用される。また、バット繊維層4には、芯部と、芯部を被覆する鞘部とからなる芯鞘複合型繊維を適用してもよい。この場合の芯鞘型複合繊維は、鞘部の融点が芯部よりも低く、鞘部の融点が150℃以下であることが好ましい。バット繊維層4に、鞘部が低融点の芯鞘型複合繊維を適用することで、後述する熱セットによって基体3との結合を高めることができるとともに、緯糸12に用いる低融点熱可塑性糸の割合を低減又は0とすることができる。
本実施形態では、ポリアミド系の樹脂からなる太さ17dtexの繊維を、製紙面側に600g/m2、走行面側に100g/m2でニードリングし、バット繊維層4を形成した。このバット繊維層4のニードリングによって、基体3を構成する外層14、中間層15及び内層16にはバット繊維層4が交絡し、外層14、中間層15及び内層16は互いに結合される。
バット繊維層4を基体3に積層した後には、基体3をバット繊維層4ともに熱セットを行う。熱セットは約170℃程度で行われ、これによって各層14〜16中の低融点熱可塑性糸及びバット繊維層4が互いに溶着し、製紙用フェルト1の構造的安定性が高められる。次に、製紙用フェルト1の耳部24に、丈方向において外層側端縁19及び内層側端縁20を跨ぐように縫製糸25を縫い込み、基体3及びバット繊維層4を一体に縫着する。
以上のように構成した製紙用フェルト1は、外層側端縁19及び内層側端縁20が基体3の幅方向に対して傾斜しているため、製紙用フェルト1とその上に載置された湿紙とを共に加圧脱水する一対のロール間を通過する際に、外層側端縁19または内層側端縁20の大部分が同時にロール間を通過することが避けられる。そのため、ロールとの接触による抵抗が低減され、製紙用フェルト1に生じる振動が低減されるとともに、外層側端縁19及び内層側端縁20の基体3からの捲れが抑制される。この効果は、外層側端縁19及び内層側端縁20と基体3の幅方向とのなす角度θが5°以上で好適に発揮される。なお、角度θを大きくしても同様の効果が得られるが、基布2の加工性及び材料使用量(切除する部分の増大)の観点から角度θは30°以下であることが好ましい。
また、製紙用フェルト1の経糸11に、径方向に圧縮された際に扁平化可能な撚り糸を使用したため、外層側端縁19及び内層側端縁20が基体3の外面及び内面に形成する段部の高さを小さくすることができる。これにより、外層側端縁19及び内層側端縁20に起因する基布端部マークの発生を抑制することができる。
また、製紙用フェルト1は、外層14、中間層15及び内層16の各層の特性を変化させたことによって、表面性、搾水性及び耐摩耗性等の特性を同時に高めることができる。製紙用フェルト1は、緯糸12の性質や形状等を変化させることによって形成した複数の領域を備えた帯状の基布2を巻回積層するだけで、異なる性質を有する複数の層を基体3中に構成することができ、製造が容易であると共に基体の各層を複雑かつ精度良く構築することができる。
上記の実施形態における外層14、中間層15及び内層16の例としては以下のようなものがある。
第1の例としては、外層14の緯糸12の直径を小さくすると共に配置密度を大きくする一方、中間層15及び内層16の緯糸12を外層14の緯糸12よりも直径の大きいものにするともに配置密度を小さくする。これによれば、外層14が緻密になり、表面性が向上して基布マークの発生を抑制することができるとともに、中間層15及び内層16の空隙率を高めて、目詰まりや汚れを抑制し、搾水性を高めることができる。
第2の例としては、外層14の緯糸12における低融点可塑性糸の割合を高め(80%)、緯糸12が経糸11を跨ぐ割合を高めた編み込み組織(3/1組織等)とする。これによれば、熱セットにより、外層14の表面性が高められるため、湿紙となじみがよい(親和性が高い)製紙用フェルト1を得ることができる。
第3の例としては、内層16の緯糸12における低融点可塑性糸の割合を高め(80%)、緯糸12が経糸11を潜る割合を高めた編み込み組織(1/3組織等)とする。これによれば、熱セットにより、内層16の表面性が高められるともに層間の結合及びバット繊維層4との結合がより強固となるため、走行面6の耐摩耗性を高めることができる。
また、外層14及び内層16の緯糸12に、鞘部が低融点(150℃以下)の芯鞘複合型繊維を適用することで、熱セットによって外層側端部17及び内層側端部18が基体3の他の層に結合するため、捲れを抑制することができる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記の実施形態では、基布2の外層側端部17及び内層側端部18の一部を切除することによって、基体3の幅方向に対して傾斜した外層側端縁19及び内層側端縁20を形成したが、外層側端部17の幅方向における一端側を引っ張って伸張させ、その状態を維持したまま、外層側端部17を基体3の中間層に固定して、基体3の幅方向に対して傾斜した外層側端縁19を形成してもよい。この場合には、緯糸12が外層側端縁19と平行に延在するため、外層側端縁19付近の緯糸12を抜き去りやすい。内層側端縁20も外層側端縁19と同様の手法で形成することができる。また、外層側端部17及び内層側端部18の一部を切除することによって、外層側端縁19及び内層側端縁20を形成する場合には、外層側端縁19及び内層側端縁20を直線状ではなく、弧状やS字状等の曲線状や、ジグザグ(階段)状にしてもよい。
また、実施形態では、経糸11、基布2の丈方向、基体3の丈方向が平行となり、緯糸12、基布2の幅方向、基体3の幅方向が平行となるようにしたが、これらは相違させてもよい。例えば、基布2において、経糸11と基布2の丈方向とが傾斜し、緯糸12と基布2の幅方向とが傾斜していてもよい。また、経糸11と基布2の丈方向とが平行になり、緯糸12と基布2の幅方向とが平行になった基布2を、基布2の丈方向と基体3の丈方向とが傾斜するようにして巻回積層して基体3を形成してもよい。
1…製紙用フェルト、2…基布、3…基体、4…バット繊維層、5…製紙面、6…走行面、11…経糸、12…緯糸、14…外層、15…中間層、16…内層、17…外層側端部、18…内層側端部、19…外層側端縁、20…内層側端縁、24…耳部、25…縫製糸
Claims (6)
- 丈方向に延在する経糸と幅方向に延在する緯糸とを交絡させて形成した帯状の基布を、環状に巻回積層して形成した基体と、前記基体にニードリングされたバット繊維層とを有する製紙用フェルトであって、
前記経糸は、2〜6本の直径が0.13mm〜0.32mmのフィラメントを撚り数6回/25.4mm以下で撚り合わせた撚り糸であり、
前記基布の丈方向における一端部は、その端縁が前記基体の幅方向に対して5°〜30°の角度をなし、
前記基布の丈方向における他端部は、その端縁が前記一端部の端縁と平行になると共に、前記基体の丈方向において、前記一端部と10mm以内の範囲で重なる、または、前記一端部から5mm以内の範囲で離間していることを特徴とする製紙用フェルト。 - 前記緯糸は、前記基布の丈方向において、材質、直径、糸形状及び配置密度の少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
- 前記緯糸は、前記基体の最外層側に配置されるものほど、直径が小さく、かつ配置密度が大きいことを特徴とする請求項2に記載の製紙用フェルト。
- 前記基体の複数の層は、織組織が異なる2種類以上の層を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の製紙用フェルト。
- 前記基体の各層において、前記緯糸の30〜80重量%が低融点熱可塑性糸で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の製紙用フェルト。
- 当該製紙用フェルトは、その幅方向における端部に耳部を有し、
前記耳部には、丈方向において前記基布の前記一端部及び前記他端部を跨ぎ、かつ前記基布の各層及び前記バット繊維層を一体に縫着する縫製糸が縫い込まれていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の製紙用フェルト。
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JP2011008278A JP2012149358A (ja) | 2011-01-18 | 2011-01-18 | 製紙用フェルト |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011008278A JP2012149358A (ja) | 2011-01-18 | 2011-01-18 | 製紙用フェルト |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2012149358A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112575609A (zh) * | 2019-09-27 | 2021-03-30 | 市川株式会社 | 抄纸用毛毡及其制造方法 |
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2011
- 2011-01-18 JP JP2011008278A patent/JP2012149358A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN112575609A (zh) * | 2019-09-27 | 2021-03-30 | 市川株式会社 | 抄纸用毛毡及其制造方法 |
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