JP2012144981A - レール圧制御及びコモンレール式燃料噴射制御装置 - Google Patents

レール圧制御及びコモンレール式燃料噴射制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高圧ポンプの吐出特性が、高圧本ポンプの回転数によって変化する場合であっても適切なレール圧制御を可能とする。
【解決手段】コモンレール1へ高圧燃料を圧送する高圧ポンプ2への燃料流入量を調整可能に設けられた流入量調整用の電磁弁24を、コモンレール1の実レール圧と目標レール圧との偏差に応じたPIDフィードバック制御によって駆動制御することにより目標レール圧を得られるよう構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置において、高圧ポンプ2の吐出量に応じて、PID制御におけるPID定数の切り替えを行い、高圧ポンプ2の吐出特性の変化に対応可能として、安定性、信頼性の高いレール圧制御を可能としたものである。
【選択図】図3

Description

本発明は、コモンレール式燃料噴射制御装置におけるレール圧制御に関し、特に、レール圧制御の安定性、信頼性の向上等を図ったものに関する。
車両用内燃機関のためのコモンレール式燃料噴射制御装置は、コモンレールに蓄積された高圧燃料を、所定の噴射タイミングで燃料噴射弁により内燃機関の気筒内に噴射するよう構成されてなるものであり、近年、広く実用に供されている。
かかるコモンレール式燃料噴射制御装置において、コモンレール圧(レール圧)の制御は、燃料噴射特性の良否に直接に関係するため、如何に安定性、信頼性のある制御を行うか重要であり、そのような観点などから種々の制御方法が提案されている。
例えば、コモンレールの上流側に設けられた高圧ポンプのプランジャ室へ送り込む燃料の流量を、電磁比例式バルブによって制御できるようにし、エンジンが要求する燃料圧力となるように高圧ポンプのプランジャ室への燃料の流量を、その電磁比例式バルブによって調整することで所望のレール圧が得られるようにした方式等が種々提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
ところで、上述のように電磁比例式バルブを用いて高圧ポンプのプランジャ室へ送り込む燃料の流量を調整することで、レール圧を制御するように構成された燃料噴射制御装置においては、電磁比例式バルブの通電電流に対する高圧ポンプの燃料の吐出量の変化特性の代表的なものをマップ化して標準特性として記憶し、これに基づいて、走行状態などから要求されるレール圧となるよう電磁比例式バルブへの通電を制御する方式などが採られる。さらに、この場合、電磁比例式バルブの通電制御をいわゆるPID制御で行うようにすると共に、PID制御に学習制御を適用することで、上述のマップ化された標準特性と、実際の電磁式比例バルブの通電流に対する高圧ポンプの吐出量の変化特性のばらつきに対処できるようにするなどの手法も比較的良く用いられている。
特開2005−113704号公報(第4−8頁、図1−図6)
しかしながら、高圧ポンプの駆動条件が、マップ化された標準特性における駆動条件と極端に異なる状況となった場合や、高圧ポンプ自体のばらつき等によって、実際の電磁式比例バルブの通電流に対する高圧ポンプの吐出量の変化特性が標準特性と大きくことなる虞があり、最悪時には、十分なレール圧制御が得られなくなるという問題がある。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、高圧ポンプの吐出特性が、高圧本ポンプの回転数によって変化する場合であっても適切なレール圧制御を可能とするレール圧制御方法及びコモンレール式燃料噴射制御装置を提供するものである。
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るレール圧制御方法は、
コモンレールへ高圧燃料を圧送する高圧ポンプへの燃料流入量を調整可能に設けられた流入量調整用の電磁弁を、前記コモンレールのレール圧を目標レール圧とすべく、前記コモンレールの実レール圧と目標レール圧との偏差に応じたPIDフィードバック制御によって駆動制御することにより前記高圧ポンプの吐出量を制御して前記コモンレールのレール圧を目標レール圧に制御可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置におけるレール圧制御方法であって、
前記高圧ポンプの吐出量に応じて、前記PID制御におけるPID定数の切り替えを行い、前記高圧ポンプの吐出特性の変化に対応可能に構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るコモンレール式燃料噴射制御装置は、
コモンレールへ高圧燃料を圧送する高圧ポンプへの燃料流入量を調整可能に設けられた流入量調整用の電磁弁を、制御ユニットにより、前記コモンレールのレール圧を目標レール圧とすべく、前記コモンレールの実レール圧と目標レール圧との偏差に応じたPIDフィードバック制御により駆動制御し、前記高圧ポンプの吐出量を制御して前記コモンレールのレール圧を目標レール圧に制御可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
前記制御ユニットは、前記高圧ポンプの吐出量に応じて、前記PID制御におけるPID定数の切り替えを行うよう構成されてなり、前記高圧ポンプの吐出特性の変化に対応可能に構成されてなるものである。
本発明によれば、PID定数を吐出量によって切り替えるように構成することで、高圧ポンプの吐出特性が本来予定していた特性から大きく変化した場合に不適切なPID定数がそのまま用いられてレール圧制御が実行されるようなことが回避でき、適切なPID定数を用いたレール圧制御が可能となり、従来に比して、安定性、信頼性の高いレール圧制御を得ることができるという効果を奏するものである。
本発明の実施の形態におけるレール圧制御方法が適用されるコモンレール式燃料噴射制御装置の構成例を示す構成図である。 図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置の電子制御ユニットによって実行されるレール圧制御の基本手順を示すサブルーチンフローチャートである。 図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置の電子制御ユニットによって実行される本発明の実施の形態におけるレール圧制御処理の手順を示すサブルーチンフローチャートである。 図1に示されたコモンレール式燃料噴射制御装置の電子制御ユニットによって実行される本発明の実施の形態のレール圧制御処理におけるPID定数の設定に用いられる高圧ポンプの吐出特性例を示す特性線図である。 本発明の実施の形態におけるレール圧制御処理に用いられるPID定数の設定例を示す表である。 従来装置における高圧ポンプの吐出特性の一例を示す特性線図である。 従来装置におけるPID定数の設定例を示す表である。 本発明の実施の形態の第2の構成例における高圧ポンプの吐出特性例を示す特性線図である。
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4及び図8を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における内燃機関の燃料噴射制御方法が適用される燃料噴射制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態の燃料噴射制御装置Sは、内燃機関としてのディーゼルエンジン10を備えた自動車両において、ディーゼルエンジン10への燃料の噴射供給を制御するためのコモンレール式式燃料噴射制御装置が構成されてなるものである。
すなわち、本発明の実施の形態の燃料噴射制御装置Sは、高圧燃料が蓄積されるコモンレール1と、このコモンレール1へ高圧燃料を供給する高圧ポンプ2と、コモンレール1に蓄積された高圧燃料をディーゼルエンジン10の各気筒11−1〜11−Nへ噴射する複数の燃料噴射弁3−1〜3−Nと、制御ユニット(図1においては「ECU」と表記)6を主たる構成要素として構成されてなるものである。
高圧ポンプ2は、ディーゼルエンジン10によって駆動される高圧ポンプ本体21と、フューエルメタリングユニット22と、インレットバルブ25と、アウトレットバルブ26とに大別されて構成されたもので、これらが一体に組み立てられてなるものである。なお、高圧ポンプ2は、ディーゼルエンジン10と直結されているが、回転数の比率は、高圧ポンプ2の設定によって必ずしも1:1となるものではない。
フューエルメタリングユニット22には、燃料タンク4からの燃料がフィードポンプ5によって供給されるようになっている。
フューエルメタリングユニット22は、電磁式比例バルブを用いてなるもので、フィードポンプ5から供給された燃料油を高圧ポンプ本体21内のプランジャ室へ送り込むためのもので、そのプランジャ室への燃料油の送り込みは、フューエルメタリングユニット22内に設けられた電磁弁24の開閉制御によって行われるものとなっている。
すなわち、電磁弁24の開閉制御により、高圧ポンプ本体21からコモンレール1へ流れる高圧燃料の流量が調整され、その流量調整によってコモンレール1内の高圧燃料の圧力を所定の圧力(目標レール圧)に制御できるようになっている。
かかる電磁弁24の開閉制御は、制御ユニット6によって生成される駆動制御信号SVXによって行われるようになっており、制御ユニット6においては、レール圧制御処理の実行により、コモンレール1における燃料圧力が、ディーゼルエンジン10の動作状況に対応した要求噴射量に応じた圧力となるように駆動制御信号SVXが生成されるものとなっている。
なお、フューエルメタリングユニット22の燃料油は、インレットバルブ25へ送り込まれ、アウトレットバルブ26により、高圧ポンプ2のプランジャ室(図示せず)に送出され、プランジャ室で高圧にされた後、コモンレール1へ供給されるようになっている。
一方、燃料噴射弁3−1〜3−Nは、それぞれ噴射制御用の電磁弁V1〜VNを備えており、これら電磁弁V1〜VNは、制御ユニット6から出力される開閉成信号SV1〜SVNに応じてそれぞれ独立して開閉制御されて、対応する気筒内に高圧燃料が所要のタイミングで所要量だけ噴射されるよう動作制御されるものとなっている。
制御ユニット6は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を有すると共に、電磁弁V1〜VNの開閉成制御のための開閉成信号SV1〜SVNを生成、出力する回路(図示せず)や、電磁弁24の駆動制御信号SVXを生成、出力する回路等を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
この制御ユニット6には、回転センサ7により検出されたディーゼルエンジン10の回転数に対応した回転信号Nや、アクセルセンサ8により検出されたアクセル(図示せず)の踏み込み量(アクセル開度)に対応したアクセル開度信号A、さらには、圧力センサ9によって検出されたコモンレール1内の燃料圧力PAなどが入力されて、これら種々の入力信号に基づいて燃料噴射制御や本発明の実施の形態におけるレール圧制御(詳細は後述)が実行されるようになっている。
図2には、制御ユニット6により実行されるレール圧制御の全体の概略処理手順がサブルーチンフローチャートに示されており、以下、同図を参照しつつ、レール圧制御の概略処理手順について説明する。
制御ユニット6においては、エンジン回転数と指示噴射量Qに基づいて、コモンレール1における目標レール圧が演算算出されるものとなっている(図2のステップS100参照)。なお、指示噴射量Qは、エンジン回転数とアクセル開度に基づいて所定の演算式により算出されるものとなっている。
次いで、目標レール圧と実レール圧の差(偏差)が演算算出され(図2のステップS200参照)、算出された偏差が零となるよう電磁弁24の開度をPIDフィードバック制御するためPID制御演算が行われ、電磁弁24をその演算結果に応じた開度に制御すべく制御駆動信号SVXが生成されることとなる(図2のステップS300参照)。
そして、上述のようにして生成された駆動制御信号SVXによって電磁弁24が駆動制御され(図2のステップS400)、コモンレール1内の燃料圧力(実レール圧)が目標レール圧となるようフィードバック制御が実現されるものとなっている。
図3には、上述したPID制御演算の実行に先立って行われるPID定数設定処理の手順がサブルーチンフローチャートに示されており、以下、同図を参照しつつ、その内容について説明する。
最初に、本発明の実施の形態におけるPID定数設定処理について概略的に説明する。
先に説明したように本発明の実施の形態のレール圧制御においては、従来同様、PID制御を用いたフィードバック制御が行われるようになっている。
すなわち、実際のレール圧と目標レール圧の偏差に応じた電磁弁24に対する制御量がPID演算処理によって定められるようになっている。
PID演算処理においては、実際のレール圧と目標レール圧の偏差に応じてPID演算によって算出された制御量で電磁弁24が制御されるようになっている。
PID定数を、どのように設定するかは、個々の装置の具体的な条件等によって適宜選択されるものである。
このようなPID定数は、従来装置にあっては、次述するように設定された一種類の固定値が用いられていた。
まず、レール圧制御のためのPID定数を設定するにあたっては、電磁弁24の通電電流に対する高圧ポンプ2からの燃料油の吐出量の変化特性が考慮される。
図6には、従来装置における高圧ポンプの吐出特性の一例が示されている。
これは、従来装置において、本発明の実施の形態における電磁弁24に相当する電磁弁の通電電流に対する高圧ポンプ(本発明の実施の形態における高圧ポンプ2に相当)の燃料油の吐出量の変化特性を示すもので、同図において、横軸は電磁弁の通電電流を、縦軸は高圧ポンプの吐出量を、それぞれ表している。
高圧ポンプの吐出量の変化特性は、高圧ポンプの最大回転数(ドライブシャフトの回転数)を如何なる大きさに設定して用いるかによって異なる傾向にある。
例えば、図6の例において、符号g6−1が付された特性線は、高圧ポンプの最大回転数Npをnmax/4に設定して使用した場合の電磁弁の通電電流に対する吐出量の変化を示すものである。
また、図6の例において、符号g6−2が付された特性線は、高圧ポンプの最大回転数Npをnmax/2(nmax/2>nmax/4)に設定して使用した場合の電磁弁の通電電流に対する吐出量の変化を示すものである。
さらに、図6の例において、符号g6−3が付された特性線は、高圧ポンプの最大回転数Npをnmax(nmax>nmax/2>)に設定して使用した場合の電磁弁の通電電流に対する吐出量の変化を示すものである。
この例の場合、これら3つの特性g6−1〜g6−3は、その一部が互いに重複する領域があり、その領域は比較的広いものとなっている。すなわち、電磁弁の通電電流で言えば、Imaxから大凡I1(I1<Imax)付近まで、吐出量で言えば、零から大凡Va付近までの範囲は、3つのいずれの特性g6−1〜g6−3もほぼ重複する範囲となっており、この重複範囲における電流変化に対する吐出量の変化は、ほぼ直線的なものとなっている(図6の符号l1の範囲参照)。
ここで、電磁弁の通電電流I1、高圧本ポンプの吐出量Vaとなる箇所は、特性g6−1において、電磁弁の通電電流に対する吐出量の変化がほぼ比例する範囲から曲線的な変化に変わりつつある位置、いわば変曲点にほぼ近い位置となっている。
次いで、電磁弁の通電電流で言えば、I1からI2(I1<I2)付近まで、吐出量で言えば、Vaから大凡Vb(Vb>Va)付近までの範囲は、特性g6−2及びg6−3がほぼ重複する範囲となっている。そして、この重複範囲における電流変化に対する吐出量の変化は、ほぼ直線的なものとなっている(図6の符号l2の範囲参照)。
ここで、電磁弁の通電電流I2、高圧本ポンプの吐出量Vbとなる箇所は、特性g6−2において、電磁弁の通電電流に対する吐出量の変化がほぼ比例する範囲から曲線的な変化に変わりつつある位置、いわば変曲点にほぼ近い位置となっている。
そして、電磁弁の通電電流で言えば、I2からI3(I2<I3)付近まで、吐出量で言えば、Vbから大凡Vc(Vc>Vb)付近までの範囲は、特性g6−3のみが、電流変化に対する吐出量の変化がほぼ直線的なものとなっている(図6の符号l3の範囲参照)。
ここで、電磁弁の通電電流I3、高圧本ポンプの吐出量Vcとなる箇所は、特性g6−3において、電磁弁の通電電流に対する吐出量の変化がほぼ比例する範囲から曲線的な変化に変わりつつある位置、いわば変曲点にほぼ近い位置となっている。
このような従来特性の場合、図6において符号l3で表された直線部分(g6−3の直線部分)を、3つの特性g6−1〜g6−3の代表特性として記憶し、電磁弁(本発明の電磁弁24に相当)の通電電流を定めると共に、PID制御定数は、図7に一例が示されたように、高圧ポンプの主要な回転数に対して、それぞれ一つのPID定数が定められ、PID制御演算に用いられるものとなっていた。
ところが、常に図6に示されたような吐出特性が得られるとは限らず、例えば、図4に示されたような吐出特性となる場合もある。
このような吐出特性となるのは、例えば、本来予定している回転数を超える回転数で高圧ポンプが駆動された場合や、もともと最大回転数毎の吐出特性の重複する範囲が図6の例に比して比較的少ない場合などである。
同図において、符号g4−1が付された特性線は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax/4に設定して使用した場合の電磁弁24の通電電流に対する吐出量の変化を、符号g4−2が付された特性線は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax/2(nmax/2>nmax/4)に設定して使用した場合の電磁弁24の通電電流に対する吐出量の変化を、符号g4−3が付された特性線は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax(nmax>nmax/2>)に設定して使用した場合の電磁弁24の通電電流に対する吐出量の変化を、それぞれ示したものである。
このような吐出特性の場合、上述したと同様に、各特性g4−1〜g4−3との偏差が極力小さく、レール圧制御に用いることのできる適切な代表特性を一つ定めようとしても、現実的に無理がある。
また、仮に、最小二乗法などにより各特性g4−1〜g4−3との偏差が可能な範囲で極力小さい代表特性を定め、これに対してPID制御定数を定めてレール圧制御を行っても、実用に耐え得るレール圧制御特性を得ることは困難である。
本発明の実施の形態におけるレール圧制御方法は、こように高圧ポンプの回転数によって、電磁弁の通電電流に対する吐出量の変化特性の傾きが異なる場合であっても、安定したレール圧制御を可能とするもので、概括的には、高圧ポンプの吐出量について、しきい値を定めて、吐出量に応じてPID制御定数を切り替えるようにして、レール圧制御を実行するようにしたものである。
以下、図3を参照しつつ、具体的な処理手順について説明する。
制御ユニット6により、処理が開始されると、最初に、吐出量が第1の基準吐出量V1以下であるか否かが判定される(図3のステップS502参照)。
ここで、第1の基準吐出量V1について図4を参照しつつ説明する。
例えば、本発明の実施の形態において、高圧ポンプ2の吐出特性、すなわち、電磁弁24の通電電流の変化に対する吐出される燃料油量の変化特性は、回転数によって異なるものである。すなわち、高圧ポンプ2を如何なる最大回転数で用いるかによってその吐出特性が異なり、本発明の実施の形態においては、例えば、図4において符号g4−1〜g4−3が付された特性線で表されたように、3つの最大回転数に対する3種類の吐出特性が予め把握されていると仮定する。
なお、図4において、横軸は電磁弁24の通電電流を、縦軸は高圧ポンプ2の吐出量を、それぞれ表している。
図4において、符号g4−1が付された特性線(以下「特性線g4−1」と称する)は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax/4に設定して使用した場合の吐出特性であり、符号g4−2が付された特性線(以下「特性線g4−2」と称する)は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax/2(nmax/2>nmax/4)に設定して使用した場合の吐出特性であり、符号g4−3が付された特性線(以下「特性線g4−3」と称する)は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax(nmax>nmax/2>)に設定して使用した場合の吐出特性である。
そして、先の第1の基準吐出量V1は、図4の特性線g4−1において、電磁弁24の電流を最大値から減少させていった際に、特性線の傾きが変化する点(変曲点)における吐出量に相当する量である。
この変曲点について、図4において特性線g4−2を例に採り説明する。
図4において、丸数字の2が付された点線の直線は、特性線g4−2において、吐出量が零となる通電電流最大値の点を起点として、通電電流の減少と共に吐出量が増加し始めた特性線g4−2の立ち上がり部分に接する接線である(以下「接線2」と称する)。
また、図4において、特性線g4−2において、上述の接線2の傾き範囲からさらに吐出量が増加してゆくにつれて、特性線g4−2の傾きは小さくなる方向に変化しており、丸数字の1が付された点線の直線は、その特性線g4−2の新たな傾き部分に接する接線である(以下「接線1」と称する)。
そして、上述の接線1と接線2の交点が、特性線g4−2の変曲点の内、最も吐出量の小さい領域にある変曲点であり、この変曲点における吐出量が基準吐出量となる。
なお、変曲点は、特性線g4−1〜g4−3のいずれにおいても、上述のように求められた変曲点一つだけではないが、本発明の実施の形態においては、吐出量が零から増加してゆく過程で最初に現れる点のみを用いるものとした。
すなわち、丸数字の3が付された点線の直線は、上述の接線1と接線2の交点を通り、図4の横軸に対して平行する直線であるが、この直線を、図4の縦軸方向へ延長した際に縦軸との交点における吐出量が基準吐出量であり、特に、特性線g4−2における基準吐出量であることから”第2の基準吐出量”と称し、”V2”を以てその表記とする。
同様にして、特性線g4−1における基準吐出量を”第1の基準吐出量”と称し、”V1”を以てその表記とし、特性線g4−3における基準吐出量を”第3の基準吐出量”と称し、”V3”を以てその表記とする。
ここで、再び図3におけるレール圧制御処理手順の説明に戻ることとする。
しかして、ステップS502において、吐出量が第1の基準吐出量V1以下であると判定された場合(YESの場合)には、この吐出量の範囲に適するPID定数(以下便宜的に「第1のPID定数」と称する)の設定が行われることとなる(図3のステップS504参照)。
すなわち、特性線g4−1の内、第1の基準吐出量V1以下における吐出特性を基準として予め選定され、制御ユニット6の所定の記憶領域に記憶された第1のPID定数が読み出されて、この時点におけるPID制御に供されるPID定数として設定されてPID制御に用いられることとなる。
このようにしてステップS504の処理が実行された後は、メインルーチン(図2参照)へ一旦戻ることとなる。
ここで、PID定数の具体例について、図5を参照しつつ説明する。
図5においては、「10」は、第1の基準吐出量V1の具体数値例を、「40」は、第2の第1の基準吐出量V2の具体数値例を、「80」は、第3の基準吐出量V3の具体数値例を、また、「>80」は、吐出量が第3の基準吐出量V3以上であることを、それぞれ示し、各基準吐出量毎に、ディーゼルエンジン10の主要回転数に対するPID定数の例が示されている。
この例においては、回転数500(r.p.m)から回転数4500(r.p.m)間での間、回転数500(r.p.m)毎にPID定数が定められたものとなっており、本発明の実施の形態においては、説明の便宜上、第1の基準吐出量における各回転数に対するPID定数の総体を第1のPID定数、第2の基準吐出量における各回転数に対するPID定数の総体を第2のPID定数、第3の基準吐出量における各回転数に対するPID定数の総体を第3のPID定数と、また、第3の基準吐出量超える吐出量における各回転数に対するPID定数の総体を第4のPID定数と、それぞれ称することとする。
なお、図5に示された各定数は、あくまでも一例であり、PID定数は、エンジンの規模等の車両の具体的な条件によって最適値が異なるもので、かかる具体的条件を加味してシミュレーションや試験等の結果に基づいて最適値が選定されるべきものである。
ここで、再び図3におけるレール圧制御処理手順の説明に戻ることとする。
ステップS502において、吐出量が第1の基準吐出量V1以下ではないと判定された場合(NOの場合)には、吐出量が第1の基準吐出量V1を超え、第2の基準吐出量V2以下の範囲にあるか否かが判定される(図3のステップS506参照)。
そして、吐出量が第1の基準吐出量V1を超え、第2の基準吐出量V2以下の範囲にあると判定された場合(YESの場合)には、第2のPID定数の設定が行われることとなる(図3のステップS508参照)。
すなわち、特性線g4−2の内、吐出量が第1の基準吐出量V1を超え、第2の基準吐出量V2以下の範囲における吐出特性を基準として予め選定され、制御ユニット6の所定の記憶領域に記憶された第2のPID定数が読み出されて、この時点におけるPID制御に供されるPID定数として設定されてPID制御に用いられることとなる。
このようにしてステップS508の処理が実行された後は、メインルーチン(図2参照)へ一旦戻ることとなる。
一方、ステップS506において、吐出量は第1の基準吐出量V1を超え、第2の基準吐出量V2以下の範囲にないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS510の処理へ進み、吐出量が第2の基準吐出量V2を超え、第3の基準吐出量V3以下の範囲にあるか否かが判定される。
そして、吐出量が第2の基準吐出量V2を超え、第3の基準吐出量V3以下の範囲にあると判定された場合(YESの場合)には、第3のPID定数の設定が行われることとなる(図3のステップS512参照)。
すなわち、特性線g4−3の内、吐出量が第2の基準吐出量V2を超え、第3の基準吐出量V3以下の範囲における吐出特性を基準として予め選定され、制御ユニット6の所定の記憶領域に記憶された第3のPID定数が読み出されて、この時点におけるPID制御に供されるPID定数として設定されてPID制御に用いられることとなる。このようにしてステップS512の処理が実行された後は、メインルーチン(図2参照)へ一旦戻ることとなる。
一方、ステップS510において、吐出量が第2の基準吐出量V2を超え、第3の基準吐出量V3以下の範囲にないと判定された場合(NOの場合)には、吐出量が第3の基準量V3を超えているとして、第4のPID定数の設定が行われることとなる(図3のステップS514参照)。
すなわち、特性線g4−3の内、吐出量が第3の基準吐出量V3を超える範囲における吐出特性を基準として予め選定され、制御ユニット6の所定の記憶領域に記憶された第4のPID定数が読み出されて、この時点におけるPID制御に供されるPID定数として設定されてPID制御に用いられることとなる。このようにしてステップS514の処理が実行された後は、メインルーチン(図2参照)へ一旦戻ることとなる。
このように、本発明の実施の形態においては、変化する高圧ポンプ2の吐出特性に合わせてPID定数を切り替えるようにしたので、不適切なPID定数を用いたレール圧制御が行われることを確実に回避することができ、安定性、信頼性の高いレール圧制御が得られることとなる。
次に、第2の構成例について、図8を参照しつつ説明する。
従来装置においては、高圧ポンプ2の吐出特性として、予め選定された一つ標準特性が制御ユニット6に記憶され、レール圧制御に用いられる構成が一般的である。これは、実際の吐出特性が標準特性から大きく変化しないことが前提であるが、実際には、回転により吐出特性が変化してしまう場合もあり得る。
第2の構成例は、このような場合に対処できるよう、複数の代表的な吐出特性を制御ユニット6内に記憶し、これら複数の吐出特性をレール圧制御に供するようにしたものである。
図8には、複数の吐出特性の例が示されており、以下、同図を参照しつつ説明する。
図8において、横軸は、電磁弁24の通電電流を、縦軸は高圧ポンプ2の吐出量を、それぞれ表している。
同図において、符号g8−1が付された特性線は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax/4に設定して使用した場合の吐出特性であり、符号g8−2が付された特性線は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax/2(nmax/2>nmax/4)に設定して使用した場合の吐出特性であり、符号g8−3が付された特性線は、高圧ポンプ2の最大回転数Npをnmax(nmax>nmax/2>)に設定して使用した場合の吐出特性である。
これらの特性は、それぞれいわゆるマップ化したものを制御ユニット6の所定の記憶領域に予め記憶し、運転状態における高圧ポンプ2の最大回転数によって、適合するマップを選択し、選択されたマップに基づいて電磁弁24の通電制御を行うようにすると好適である。
1…コモンレール
2…高圧ポンプ
3−1〜3−N…燃料噴射弁
6…制御ユニット
10…ディーゼルエンジン

Claims (4)

  1. コモンレールへ高圧燃料を圧送する高圧ポンプへの燃料流入量を調整可能に設けられた流入量調整用の電磁弁を、前記コモンレールのレール圧を目標レール圧とすべく、前記コモンレールの実レール圧と目標レール圧との偏差に応じたPIDフィードバック制御によって駆動制御することにより前記高圧ポンプの吐出量を制御して前記コモンレールのレール圧を目標レール圧に制御可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置におけるレール圧制御方法であって、
    前記高圧ポンプの吐出量に応じて、前記PID制御におけるPID定数の切り替えを行い、前記高圧ポンプの吐出特性の変化に対応可能とすることを特徴とするレール圧制御方法。
  2. PID定数の切り替えは、高圧ポンプの吐出特性の傾きの変化が生ずる箇所における吐出量を判定基準として行われ、
    予め選定された少なくとも2つの異なる吐出特性において、吐出量の増加に沿って最初に現れる吐出特性の傾きの変化が生ずる箇所における吐出量を判定基準とし、前記2つの吐出特性の内、流入量調整用の電磁弁の同一の通電電流における前記高圧ポンプの吐出量が少ない方の吐出特性を第1の吐出特性とし、当該第1の吐出特性における前記判定基準となる吐出量を第1の基準吐出量とする一方、他方の吐出特性を第2の吐出特性とし、当該第2の吐出特性における前記判定基準となる吐出量を第2の基準吐出量とし、
    前記高圧ポンプの吐出量が前記第1の基準吐出量を超えるまでは、前記第1の吐出特性に基づいて定められたPID定数を選択し、前記高圧ポンプの吐出量が前記第1の基準吐出量を超え、前記第2の基準吐出量を超えない範囲においては、前記第2の吐出特性に基づいて定められたPID定数に切り替えることを特徴とする請求項1記載のレール圧制御方法。
  3. コモンレールへ高圧燃料を圧送する高圧ポンプへの燃料流入量を調整可能に設けられた流入量調整用の電磁弁を、制御ユニットにより、前記コモンレールのレール圧を目標レール圧とすべく、前記コモンレールの実レール圧と目標レール圧との偏差に応じたPIDフィードバック制御により駆動制御し、前記高圧ポンプの吐出量を制御して前記コモンレールのレール圧を目標レール圧に制御可能に構成されてなるコモンレール式燃料噴射制御装置であって、
    前記制御ユニットは、前記高圧ポンプの吐出量に応じて、前記PID制御におけるPID定数の切り替えを行うよう構成されてなり、前記高圧ポンプの吐出特性の変化に対応可能としたことを特徴とするコモンレール式燃料噴射制御装置。
  4. 制御ユニットは、
    PID定数の切り替えを、高圧ポンプの吐出特性の傾きの変化が生ずる箇所における吐出量を判定基準として実行し、
    予め選定された少なくとも2つの異なる吐出特性において、吐出量の増加に沿って最初に現れる吐出特性の傾きの変化が生ずる箇所における吐出量を判定基準とし、前記2つの吐出特性の内、流入量調整用の電磁弁の同一の通電電流における前記高圧ポンプの吐出量が少ない方の吐出特性を第1の吐出特性とし、当該第1の吐出特性における前記判定基準となる吐出量を第1の基準吐出量とする一方、他方の吐出特性を第2の吐出特性とし、当該第2の吐出特性における前記判定基準となる吐出量を第2の基準吐出量とし、
    前記高圧ポンプの吐出量が前記第1の基準吐出量を超えるまでは、前記第1の吐出特性に基づいて定められたPID定数を選択し、前記高圧ポンプの吐出量が前記第1の基準吐出量を超え、前記第2の基準吐出量を超えない範囲においては、前記第2の吐出特性に基づいて定められたPID定数に切り替えるよう構成されてなることを特徴とする請求項3記載のコモンレール式燃料噴射制御装置。
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