JP2012143817A - 孔開口部における仕上げ加工工具及び仕上げ加工装置並びに仕上げ加工方法 - Google Patents

孔開口部における仕上げ加工工具及び仕上げ加工装置並びに仕上げ加工方法 Download PDF

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茂雄 梶本
Kazutaka Ogi
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  • Grinding And Polishing Of Tertiary Curved Surfaces And Surfaces With Complex Shapes (AREA)
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Abstract

【課題】加工コストを抑制して、安定した加工精度を得る。
【解決手段】孔の開口部に形成された末広がり面を仕上げ加工するための仕上げ加工装置であって、孔の壁面を仕上げ加工するための研磨部1と、該研磨部1を孔の軸線に沿った回転軸線Pを中心として回転させながら該回転軸線Pに沿って移動させる駆動部3とを備える。研磨部1は、回転軸線Pに対する拡がり角度の大きい状態と拡がり角度の小さい状態との間で姿勢変化可能に設けられている。孔への進入量が小さいときには、末広がり面における手前側の部分に研磨部1が当接するように、研磨部1は拡がり角度の大きい状態となる。孔への進入量が大きいときには、末広がり面における奥側の部分に研磨部1が当接するように、研磨部1は拡がり角度の小さい状態となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、孔の開口部近傍を仕上げ加工するための仕上げ加工工具及び仕上げ加工装置並びに仕上げ加工方法に関する。
孔の開口部に孔の奥側から手前側に向かって徐々に直径が大きくなっていくような末広がり面を形成することがある。該末広がり面には、曲面や多断面、あるいはテーパ面(円錐台面)など、種々の形状があるが、このような末広がり面を高い加工精度で仕上げ加工したい場合には、例えばローラバニシング加工を行うということが考えられる(下記特許文献1参照)。ローラバニシング加工では、末広がり面の例えば曲面形状に合致した形状のローラを備えた工具を準備して、該ローラを末広がり面に押圧することによって微小な凸部を押しつぶして平滑にしていくことになる。そのため、末広がり面には転圧量とも称される数十ミクロン程度の加工代(取り代)が必要になる。しかしながら、仕上げ加工を施す前の下孔の加工精度がそれほど高くない場合には、末広がり面においてローラが接触しない部分が生じる。従って、ローラバニシング加工によって孔開口部の仕上げ加工を行う場合には、下孔を精密に加工しておくことが必要になり、下孔を加工するための加工装置には高い加工精度が要求され、その結果として、下孔の加工コストが高くなるという問題がある。
また、砥粒ブラシによる加工方法も考えられる。この方法は、線材の先端部に砥粒が設けられたブラシを回転させて、機械加工後の孔の内面を仕上げ加工するというものである。しかしながら、先端部の砥粒によって研磨する方法であるので、孔の開口部の仕上げ加工に用いると研磨ムラが起こりやすく、加工にも時間がかかるという問題がある。
更に、孔開口部の仕上げ形状に合わせた形状を有する砥石を用いて仕上げ加工するという方法も考えられる。しかしながら、加工を繰り返すことによって砥石が局所的に摩耗する、即ち偏摩耗するので、継続的に安定した加工精度が得られないという問題がある。
実開平4−118969号公報
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、加工コストを抑制することができ、安定した加工精度が得られる、孔開口部における仕上げ加工工具及び仕上げ加工装置並びに仕上げ加工方法を提供することを課題とする。
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る孔開口部における仕上げ加工工具は、加工工具を回転軸線を中心として回転させながら該回転軸線に沿って移動させることによって被加工物を加工する加工装置に取り付けられて、孔の開口部に形成された、孔の奥側から手前側に向かって直径が大きくなる末広がり面を仕上げ加工するための仕上げ加工工具であって、孔の壁面を仕上げ加工するための研磨部を備え、該研磨部は、回転軸線に対する拡がり角度の大きい状態と拡がり角度の小さい状態との間で姿勢変化可能に設けられ、孔への進入量が小さいときには、末広がり面における手前側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の大きい状態となり、孔への進入量が大きいときには、末広がり面における奥側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の小さい状態となることを特徴とする。尚、孔開口部には、段付き孔における大径の孔と小径の孔との間の段差部において、小径の孔が大径の孔側に開口している開口部も含まれる。また、回転軸線に対する拡がり角度とは、研磨部が回転したときの軌跡である円錐台状の周面の、回転軸線に対する傾斜角度である。
該構成の孔開口部における仕上げ加工工具にあっては、孔への進入量が小さいときには、研磨部が拡がり角度の大きい状態となって末広がり面における手前側の部分に当接してその部分を研磨する。そして、孔への進入量が大きくなると、研磨部が拡がり角度の小さい状態となって末広がり面における奥側の部分に当接してその部分を研磨する。即ち、研磨部が末広がり面の形状に対応してその姿勢を変化させながら末広がり面を研磨していく。
特に、研磨部を拡がり角度の大きい状態に向けて付勢する付勢部材を備え、研磨部が孔に進入していく際に、研磨部が末広がり面に押されることにより付勢部材の付勢力に抗して拡がり角度の小さい状態となることが好ましい。この構成では、末広がり面から受ける反力を利用して研磨部が孔の進入に伴って拡がり角度の小さい状態へと自動的に姿勢変化するので、研磨部を姿勢変化させるための機構が簡素なもので済む。
更に、前記回転軸線を中心線とする主軸と、該主軸の先端側に一端部が回動可能に支持されて他端部が主軸の基端側に位置すると共に前記回転軸線を含む平面上を回動する回動部材とを備え、該回動部材に前記研磨部が設けられ、該回動部材の他端部が主軸から離れるように前記付勢部材が回動部材に付勢力を付与することが好ましい。回動部材が回動することによって研磨部がその姿勢を変化させることになるので、研磨部を容易に姿勢変化させることができ、また、付勢部材の付勢力も回動部材を介して研磨部に容易に付与することができる。
特に、研磨部は回動部材の一端部側に設けられていることが好ましい。研磨部を回動部材の他端部側に設けることも可能であるが、回動部材の一端部側に設けることにより、孔への進入が容易になって、小径の孔にも容易に対応できる。
また、回動部材はその回動半径の方向に伸びる形状を有して第1のリンクを構成し、該第1のリンクの他端部に第2のリンクの一端部が回動可能に連結され、主軸にはスライダが回転軸線に沿ってスライド可能に設けられ、該スライダに第2のリンクの他端部が回動可能に連結され、前記付勢部材はスライダを主軸の先端側に向けて付勢することが好ましい。例えば付勢部材によって回動部材を主軸の中心側から外方に向けて付勢する構成とすることもできるが、回動部材を第1のリンクとして構成して、第2のリンクとスライダを介して第1のリンクを付勢することにより、付勢部材の配置が容易になって、小径の孔の場合でも容易に進入して仕上げ加工することができる。
更に、第1及び第2のリンクが主軸の周方向に間隔をあけて複数組設けられ、スライダに複数の第2のリンクの他端部がそれぞれ回動可能に連結され、スライダに対して主軸の基端側には付勢部材としてのコイルバネが設けられていることが好ましい。第1及び第2のリンクを主軸の周方向に間隔をあけて複数組設けることにより、複数の研磨部によって効率良く、しかもより高い仕上げ精度で末広がり面を研磨することができる。そして、一つのスライダに複数の第2のリンクがそれぞれ連結されているので、このスライダを付勢することによって複数の研磨部に付勢力を容易に付与することができる。
また、本発明に係る孔開口部における仕上げ加工装置は、孔の開口部に形成された、孔の奥側から手前側に向かって直径が大きくなる末広がり面を仕上げ加工するための仕上げ加工装置であって、孔の壁面を仕上げ加工するための研磨部と、該研磨部を孔の軸線に沿った回転軸線を中心として回転させながら該回転軸線に沿って移動させる駆動部とを備え、研磨部は、回転軸線に対する拡がり角度の大きい状態と拡がり角度の小さい状態との間で姿勢変化可能に設けられ、孔への進入量が小さいときには、末広がり面における手前側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の大きい状態となり、孔への進入量が大きいときには、末広がり面における奥側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の小さい状態となることを特徴とする。
また、駆動部を制御する制御部を備え、該制御部は、回転軸線に沿った研磨部の移動速度を研磨部の孔への進入量に応じて変化させることができるように構成されていることが好ましい。特定の箇所において移動速度を遅くしたり、あるいは、移動速度をゼロとして研磨部を回転運動のみさせたりすることもでき、テーパ面(円錐台状の壁面)やそのテーパ面が連続する多断面にも容易に対応することができる。
また、駆動部を制御する制御部を備え、該制御部は、末広がり面に続いて該末広がり面の奥側に位置する孔のストレート部分の壁面に、研磨部のうち少なくとも末広がり面に当接した部位が当接するように駆動部を制御することが好ましい。末広がり面の研磨に引き続いてストレート部分の壁面に研磨部を当接させることにより、そのストレート部分の壁面において研磨部の表面を自生作用によって整えることができる。従って、孔への進入前あるいは進入後において研磨部の表面を整えるための別途の工程が不要になり、効率良く仕上げ加工することができる。また、孔に進入していく際の往路において末広がり面を研磨すると共に孔から出て行く際の復路においても末広がり面を研磨する場合には、往路の後にストレート部分の壁面で一旦研磨部の表面が整えられた後、復路において末広がり面を再度研磨することができるので、復路においても良好に研磨することができる。
また、本発明に係る孔開口部における仕上げ加工方法は、上記仕上げ加工装置を使用して、コモンレールシステムにおけるデリバリーパイプの噴射孔の孔開口部を仕上げ加工することを特徴とする。尚、噴射孔とは、デリバリーパイプの軸線に対して直交する交差孔であって、分岐孔とも称される。
以上のように、孔への進入に伴って研磨部が姿勢変化して末広がり面に当接する部分を変えながら末広がり面を研磨していくので、研磨部の特定の部分が集中して末広がり面に当接するということがなく、研磨部の偏摩耗が抑制されて長期に亘って安定した加工精度が得られる。また、研磨部が孔に進入しながら末広がり面の手前側の部分から奥側の部分へと研磨していくので、ローラバニシング加工のように末広がり面の形状に合わせたローラを押しつける場合に比して、下孔の加工精度は高くなくても済み、下孔の加工コストが抑制される。
本発明の一実施形態における孔開口部における仕上げ加工装置を示す概略構成図。 同実施形態における仕上げ加工装置の仕上げ加工工具の要部を示す正面図。 同実施形態における仕上げ加工工具の要部を示す正面図であって、図2の状態から研磨部が姿勢変化した状態を示している。 仕上げ加工の対象となる被加工物の一例を示す要部断面図。 同実施形態における仕上げ加工装置を用いて図4の被加工物を仕上げ加工する工程を示した断面図であって、(a)は孔への進入開始状態、(b)は(a)から孔に所定量進入した状態、(c)は研磨部が孔のストレート部に到達した状態をそれぞれ示している。 仕上げ加工の対象となる被加工物の他の例を示す要部断面図。 同実施形態における仕上げ加工装置を用いて図6の被加工物を仕上げ加工する工程を示した断面図であって、(a)は孔への進入開始状態、(b)は(a)から孔に所定量進入した状態、(c)は(b)から更に孔に所定量進入した状態、(d)は研磨部が孔のストレート部に到達した状態をそれぞれ示している。 同実施形態における仕上げ加工装置を用いて仕上げ加工を行った後の図6の被加工物を示し、(a)は孔開口部近傍の拡大断面図、(b)は(a)のA部拡大図。
以下、本発明の一実施形態にかかる孔開口部における仕上げ加工工具及び仕上げ加工装置について図1〜図8を参酌しつつ説明する。本実施形態における孔開口部における仕上げ加工装置は、孔開口部に形成された末広がり面、即ち、孔の奥側から手前側に向かって直径が大きくなるような壁面を仕上げ加工するための仕上げ加工装置である。該仕上げ加工装置は、図1に示すように、孔の壁面を仕上げ加工するための研磨部1を有する仕上げ加工工具2と、該仕上げ加工工具2を孔の軸線に沿った回転軸線Pを中心として回転させながら該回転軸線Pに沿って移動させる駆動部3と、該駆動部3を制御する制御部4とを備えている。該仕上げ加工装置は縦型であって、回転軸線Pの方向は上下方向であり、従って、仕上げ加工工具2は、その先端側を下向きと、その基端側を上向きとして、上下方向に移動しながら回転する。
仕上げ加工工具2は、図2及び図3に示しているように、回転軸線Pを中心線とする丸棒状の主軸10と、該主軸10に上下方向にスライド可能に設けられたスライダ11と、下端部が主軸10の下端部(先端部)に回動可能に支持されて回転軸線Pを含む平面上を回動する第1のリンク12と、下端部が第1のリンク12の上端部に回動可能に連結され、上端部がスライダ11に回動可能に連結された第2のリンク13と、スライダ11を下方に付勢する付勢部材としてのコイルバネ14とを備えている。尚、第1のリンク12と第2のリンク13をそれぞれ概念的に線で示している。
第1のリンク12と第2のリンク13は、回転軸線Pと直交する水平方向の軸線回りに回動する。第1のリンク12は、下向きの傘が開くように、主軸10を中心として所定角度範囲で回動する。第1のリンク12は、図2に示す状態において最も主軸10から離れた状態にあり、即ち、回転軸線Pに対する拡がり角度が最も大きい状態となっている。この拡がり角度は45度以内とすることが好ましい。第1のリンク12がこれ以上主軸10から離れる方向に傾斜しないように、第1のリンク12と第2にリンクとの間には図示しない突っ張り部材が設けられている。該突っ張り部材が第1のリンク12と第2にリンクとの間の突っ張りとして機能することにより、第1のリンク12と第2のリンク13との間の角度は図1に示した角度よりも狭くならない。尚、突っ張り部材をネジなどによって構成し、該突っ張り部材を第1のリンク12と第2のリンク13のうちの一方のリンクに螺入してその先端を突出させて他方のリンクに当接させるように構成すれば、その突出量を調節することによって第1のリンク12と第2のリンク13との間の角度を調節できる。
第1のリンク12の下端側に研磨部1が設けられている。該研磨部1には種々の構成を採用可能であるが、例えば、所定形状に形成された砥石を用いることができる。砥石を用いる場合、該砥石を第1のリンク12の外面側に着脱可能に取り付けることにより、砥石が摩耗等した場合には容易にそれを取り替えることができる。研磨部1として電着砥石を使用してもよい。但し、電着は単層であるので、複層である砥石の方が面粗度を出しやすく、好ましい。また、第1のリンク12の内面側の中央付近には、主軸10に当接可能なストッパ15が設けられている。該ストッパ15は第1のリンク12とは別体に形成されたものを取り付けた構成としてもよく、また、第1のリンク12の内面に突部を一体的に形成して該突部をストッパ15としてもよい。図3に示したように、第1のリンク12が主軸10に近づく方向に回動したときに、ストッパ15が主軸10に当接してそれ以上第1のリンク12が主軸10側に回動しないようになっている。第1のリンク12は、図3に示す状態において最も主軸10に接近した状態にあり、即ち、回転軸線Pに対する拡がり角度が最も小さい状態となっている。この最小の拡がり角度は例えば0度である。
このように、第1のリンク12は、図2に示すような最大傾斜状態から、図3に示すような最小傾斜状態までの間を回動可能である。従って、第1のリンク12に設けられた研磨部1も同様に、回転軸線Pに対して例えば45度に傾斜した最大傾斜姿勢から、回転軸線Pと平行となるように起立した起立姿勢までの間で姿勢変化する。第1のリンク12はその下端部を支点として水平方向の軸線回りに回動するので、研磨部1は、その上端側が径方向外側になるように傾斜する。
第2のリンク13はその上端部を支点として水平方向の軸線回りに回動する。第2のリンク13は、図2に示した状態が最も主軸10から離れて傾斜した状態で、図3に示した状態が最も主軸10に接近した状態である。図3のように第2のリンク13が最も主軸10に接近した状態においては、第2のリンク13は主軸10と平行にはならずに、主軸10に対して小さい角度で傾斜した状態にある。即ち、その状態において、第2のリンク13の下端部は上端部よりも径方向外側に位置する。以上のような構成の第1のリンク12と第2のリンク13が複数組、具体的には180度対向して二組設けられている。
スライダ11は、円筒状や角筒状であって、その内周面が主軸10の周面と摺動する。コイルバネ14は、図示しないバネ受け座とスライダ11との間に配置されている。該コイルバネ14を主軸10が挿通していて、スライダ11が上昇することによってコイルバネ14の圧縮量が増加する。即ち、スライダ11と第2のリンク13を介して、第1のリンク12には、主軸10から離れる方向に向けてコイルバネ14から付勢力が付与される。図示しないバネ受け座は、スライダ11よりも上方に位置していて主軸10に固定されている。但し、バネ受け座の位置を上下方向に調節可能に構成することも有効である。バネ受け座の位置を調節することにより、図2に示したように第1のリンク12が最大傾斜状態にある場合におけるコイルバネ14の初期圧縮量を調節することができ、例えば、この初期圧縮量をゼロとしてコイルバネ14を自由長の状態で使用することもできる。
主軸10の上端部は図1に示す仕上げ加工装置のチャック部5に取り付け可能に形成されている。該主軸10の上端部をチャック部5に挿入して固定することにより、仕上げ加工工具2を仕上げ加工装置に取り付けることができる。
駆動部3は、チャック部5を回転させると共に上下方向に移動させることにより、チャック部5に取り付けられた仕上げ加工工具2を回転させ且つ上下方向に移動させる。該駆動部3には種々の公知のものが採用可能である。制御部4は、駆動部3の作動、停止と共に回転速度や上下方向の移動速度を制御する。例えば、仕上げ加工工具2の回転速度は一定とし、上下方向の移動速度を可変とすることができる。回転速度は数百rpm(例えば300rpm)である。上下方向の移動速度は0.1m/min〜2m/minであり、特に0.1m/min〜0.5m/minが好ましい。移動速度が速すぎると、研磨部1が末広がり面に追従できずにムラや研磨残しが発生する可能性があり、逆に、移動速度が遅すぎるとスムーズな移動が得られない。尚、末広がり面の手前側における移動速度よりも奥側における移動速度を速くすることが好ましい。尚、移動速度は、被加工物の末広がり面の形状や大きさ等に応じて予めプログラミングしておく。回転速度についても同様に予めプログラミングしておいてもよい。また、加工の前にオペレータが入力してもよい。
次に、上記構成の仕上げ加工装置を用いて孔開口部を仕上げ加工する方法について説明する。被加工物の孔開口部における末広がり面の形状には様々なものがある。例えば、図4に示す被加工物50では、孔51の下側部分に径一定のストレート部分の壁面52があり、その上側に末広がり面53が形成されている。該末広がり面53は、上下二本の二点鎖線で示している範囲の内側凸の曲面部53aと、その上側に僅かに形成されたテーパ面部53bとからなり、曲面部53aとテーパ面部53bは連続し、曲面部53aはストレート部分の壁面52にも連続している。即ち、曲面部53aとテーパ面部53bとの境界、及び、曲面部53aとストレート部分の壁面52との境界にはエッジが存在していない。尚、テーパ面部53bは回転軸線Pに対して45度の傾斜面である。但し、テーパ面部53bの回転軸線Pに対する傾斜角度は45度には限られない。
図4に示した被加工物50における末広がり面53を仕上げ加工する際には、仕上げ加工工具2を回転させながら下降させていって、図5(a)のように被加工物50の孔開口部に当接させる。末広がり面53におけるテーパ面部53bは回転軸線Pに対して45度の傾斜面であるので、仕上げ加工工具2を下降させていくと研磨部1がテーパ面部53bに面接触してそのままテーパ面部53bを研磨する。このテーパ面部53bには、研磨部1のうち中央領域あるいは上部領域が当接する。尚、研磨部1がテーパ面部53bに当接した後に、仕上げ加工工具2の下降動作を所定時間停止して回転動作のみさせてもよい。そして、図5(b)に示すように仕上げ加工工具2を更に下降させていく。仕上げ加工工具2を下降させていくと、研磨部1がテーパ面部53bから曲面部53aに移っていくが、研磨部1は曲面部53aに当接しながら徐々にその姿勢を起立方向へと変化させていく。即ち、コイルバネ14による付勢力によって研磨部1は曲面部53aに当接し続ける一方、研磨部1が曲面部53aから反力を受けることにより、第1のリンク12が自動的に主軸10に向けて回動していき、第2のリンク13がスライダ11を押し上げてコイルバネ14を圧縮していく。この曲面部53aには、研磨部1のうち下部領域が当接する。そして、下降動作に伴って、研磨部1は連続的に曲面部53aを研磨していく。その後更に仕上げ加工工具2を下降させて孔51への進入量を増していくと、研磨部1は最小傾斜姿勢である起立姿勢となってそのまま曲面部53aからストレート部分の壁面52へと移動して末広がり面53に続いてストレート部分の壁面52も研磨する。このストレート部分の壁面52には研磨部1のほぼ全領域が当接する。従って、ストレート部分の壁面52において研磨部1の表面が自生作用によって整えられることになる。即ち、仕上げ加工の工程中に研磨部1の表面を整えるための工程が存在することになる。その後、仕上げ加工工具2を上昇させていくのであるが、孔51から出て行く復路においても孔51に進入していく往路と同様に末広がり面53を研磨部1で研磨する。復路における研磨部1の姿勢変化は往路における研磨部1の姿勢変化とは逆向きであって、研磨部1は上昇していくほどその姿勢を傾斜させていく。このようにして研磨部1を上下に複数回往復動させて、一つの下孔における末広がり面53を研磨する。但し、一つの下孔に対して、研磨部1を上下に一回のみ往復動させる、いわゆるワンパス加工によって研磨してもよい。
また、図6に示している被加工物60においても図4の被加工物50と同様に孔61の下側部分に径一定のストレート部分の壁面62があり、その上側に末広がり面63が形成されているが、末広がり面63が図4の被加工物50のそれとは異なっている。図6に示す被加工物60における末広がり面63は、複数のテーパ面部から構成される多断面形状であって、下側から順に、傾斜角度(拡がり角度)が小さい第1のテーパ面部63aと、該第1のテーパ面部63aよりも傾斜角度が大きい第2のテーパ面部63bと、該第2のテーパ面部63bよりも傾斜角度が大きい第3のテーパ面部63cとからなる。従って、研磨工程の前の下孔の状態では、図6のように、ストレート部分の壁面62と第1のテーパ面部63aとの境界、第1のテーパ面部63aと第2のテーパ面部63bとの境界、及び、第2のテーパ面部63bと第3のテーパ面部63cとの境界は連続しておらず、各境界にはそれぞれエッジ64が存在している。尚、第3のテーパ面部63cの傾斜角度は回転軸線Pに対して45度である。但し、第3のテーパ面部63cの回転軸線Pに対する傾斜角度は45度には限られない。
図6に示した被加工物60における末広がり面63を仕上げ加工する工程を図7に示しているが、工程の大きな流れは図5の場合と同様である。即ち、図7(a)に示すように、仕上げ加工工具2を下降させて研磨部1を第3のテーパ面部63cに面接触させて該第3のテーパ面部63cを研磨する。この第3のテーパ面部63cには、研磨部1のうち中央領域あるいは上部領域が当接する。その後、仕上げ加工工具2を下降させると、図7(b)に示すように、研磨部1は姿勢を変化させて第3のテーパ面部63cから第2のテーパ面部63bへと移動して該第2のテーパ面部63bに面接触して研磨する。この第2のテーパ面部63bには、研磨部1のうち中央領域あるいは下部領域が当接する。研磨部1が第3のテーパ面部63cから第2のテーパ面部63bへと移動する過程において、第3のテーパ面部63cと第2のテーパ面部63bとの間の境界におけるエッジ64が研磨部1によって研磨されて滑らかな曲面となる。その後、図7(c)のように研磨部1は第2のテーパ面部63bから第1のテーパ面部63aへと移動して該第1のテーパ面部63aに面接触して研磨する。この第1のテーパ面部63aには、研磨部1のうち下部領域が当接する。研磨部1が第2のテーパ面部63bから第1のテーパ面部63aへと移動する過程において、第2のテーパ面部63bと第1のテーパ面部63aとの間の境界におけるエッジ64が研磨部1によって研磨されて滑らかな曲面となる。そして更に仕上げ加工工具2を下降させていくと、図7(d)のように研磨部1は最小傾斜姿勢である起立姿勢となってストレート部分の壁面62へと移動してストレート部分の壁面62も研磨する。このストレート部分の壁面62には研磨部1のほぼ全領域が当接する。従って、ストレート部分の壁面62において研磨部1の表面が整えられることになる。研磨部1が第1のテーパ面部63aからストレート部分の壁面62へと移動する過程において、第1のテーパ面部63aとストレート部分の壁面62との間の境界におけるエッジ64が研磨部1によって研磨されて滑らかな曲面となる。研磨後の末広がり面63の状態を図8に示している。図8に示しているように、各境界におけるエッジ64がそれぞれ研磨されて、末広がり面63は滑らかな曲面が連続した形状となる。尚、図8において、二点鎖線で示している水平線は、加工前に存在していたエッジ64を仮想的に示したものである。
尚、仕上げ加工工具2の上下方向の移動速度は、図5(a)から図5(b)、図5(c)と進む程速くなるように予めプログラミングされていて、制御部4はそのプログラム内容に対応して、各進入量に応じた移動速度で仕上げ加工工具2を移動させる。これは、孔に進入していくときの往路のみならず、孔から出て行くときの復路においても同様である。但し、往路に対して復路の移動速度を全体的に速くしたりしてもよい。また、図6の場合においても同様である。尚、研磨部1が当接する箇所がテーパ面部である場合にはその高さで仕上げ加工工具2の下降動作を所定時間停止してもよい。
以上のように本実施形態における仕上げ加工装置においては、孔への進入に伴って研磨部1が姿勢変化して末広がり面に当接する部分を変えながら末広がり面を研磨していくので、研磨部1の特定の部分が集中して末広がり面に当接するということがない。従って、研磨部1の偏摩耗が抑制され、長期に亘って安定した加工精度が得られる。特に、末広がり面の研磨の後にストレート部分の壁面に研磨部1を当接させているので、一つの孔の仕上げ加工毎に研磨部1の表面が自生作用によって整えられることになり、連続した仕上げ加工が可能になる。しかも、研磨部1が1回上下動する間に研磨部1の表面を整える工程を含んでいるので、例えば、孔の外部において研磨部1の表面を整えるための工程が不要になり、連続して効率良く仕上げ加工を行うことができる。しかも、末広がり面のみならずストレート部分の壁面も合わせて研磨することができる。
また、ローラバニシング加工のように末広がり面の形状に合わせたローラを押しつけるのとは異なり、研磨部1が姿勢変化しながら末広がり面の手前側の部分から奥側の部分へと研磨していくので、下孔の加工精度が悪くても仕上げ加工することができ、下孔の加工コストが抑制される。特に、コモンレールシステムのデリバリーパイプ(レール)における噴射孔のように、一つの部品に多数の孔が形成されている被加工物を大量に仕上げ加工する場合に好適である。例えばデリバリーパイプをその軸線方向に間欠送りさせて、仕上げ加工装置によってデリバリーパイプの各噴射孔の孔開口部を順次仕上げ加工することにより、大量のデリバリーパイプを効率良く低コストに仕上げ加工することができ、しかも高圧に耐えうる高い研磨精度で噴射孔の孔開口部を仕上げ加工することができる。尚、逆にデリバリーパイプを固定しておいて、仕上げ加工工具2を水平方向に間欠送りさせて複数の噴射孔の孔開口部を順次仕上げ加工してもよい。
また、コイルバネ14が第2のリンク13と第1のリンク12を介して研磨部1に付勢力を付与して末広がり面に研磨部1を押しつけ、研磨部1が末広がり面から受ける反力によって自動的にその姿勢を変化させていくので、第1のリンク12や第2のリンク13を回動させて研磨部1を姿勢変化させるための複雑な機構が不要となる。また、第1のリンク12の回動動作によって研磨部1を姿勢変化させるので、研磨部1のみを独立して回動動作させる構成に比して姿勢制御が容易である。更に、コイルバネ14の付勢力を第2のリンク13を介して第1のリンク12に付与しているので、コイルバネ14の付勢力を直接第1のリンク12に付与する構成に比して、コイルバネ14の配置が容易になり、仕上げ加工工具2を小型化することに適している。
また、第1のリンク12の回動支点である下端部の近傍に研磨部1を配置しているので、小径の孔にも容易に対応して研磨することができる。
更に、研磨部1を180度対向して一対設けているので回転バランスに優れ、高精度の仕上げ加工ができる。そのうえ、上方に配置した一つのコイルバネ14によって両研磨部1にまとめて付勢力を付与することができるので、仕上げ加工工具2を小型化することができると共に、コイルバネ14の付勢力を安定して両研磨部1に付与することができる。
また、制御部4によって仕上げ加工工具2の上下方向の移動速度が制御されるので、移動速度の設定も容易であって、一定の移動速度で上下させることもできる他、移動速度に変化をもたせることも容易で、様々な形状の末広がり面に対応することができる。
尚、本実施形態では、第1のリンク12の長さと第2のリンク13の長さを略同じにしたが、例えば第1のリンク12を第2のリンク13よりも短くしてもよい。第1のリンク12を第2のリンク13よりも短くすれば、末広がり面に対するバネ圧(押圧力)を均等にすることができる。尚、このリンクの長さとは、リンクの両回動支点の間を結ぶ直線距離である。従って、リンクは直線状の形状以外に、屈曲した形状や湾曲した形状であってもよい。
また、第1のリンク12のストッパ15が主軸10に当接する構成について説明したが、例えば主軸10に横孔を形成し、対向する両第1のリンク12の内面同士やストッパ15同士が当接することによって第1のリンク12がそれ以上内側に回動しないように構成してもよい。
また、第1のリンク12と第2のリンク13を180度対向して二組設けたが、例えば、120度間隔で三組設けたり、90度間隔で四組設けたりするなど、周方向に等間隔で複数組配置する種々の配置態様を採用可能である。但し、第1のリンク12と第2のリンク13を一組のみ設けてもよい。
尚、第1のリンク12と第2のリンク13を複数組設ける場合には、主軸10に摺動するスライダ本体に、上下方向に所定範囲内で移動可能に設けられた支持部材を複数備える構成とし、スライダ本体を上述したのと同様にコイルバネ14で下方に付勢すると共に各支持部材をそれぞれ独立したバネで下方に付勢して、各支持部材に第2のリンク13を回動可能に連結するようにしてもよい。この場合、複数の第1のリンク12がそれぞれ独立して回動できるので、被加工物の傾き精度や下孔の加工精度が悪くても、それらが吸収されて、より一層容易に対応することができる。
また、コイルバネ14として圧縮バネを用いたが、引っ張りバネであってもよい。更に、第2のリンク13を設けずに第1のリンク12を内側からバネで付勢するようにしてもよい。コイルバネ14ではなく板バネを用いてもよい。
また、コイルバネ14等の付勢部材を用いずに、アクチュエータを備えて該アクチュエータで研磨部1の姿勢制御を行うようにしてもよい。
また、一つの仕上げ加工装置に複数の仕上げ加工工具2を設けて複数の孔開口部を同時に仕上げ加工するようにしてもよい。その場合においても、ワンパス加工でも複数回の往復動作でもよい。
1 研磨部
2 仕上げ加工工具
3 駆動部
4 制御部
5 チャック部
10 主軸
11 スライダ
12 第1のリンク(回動部材)
13 第2のリンク
14 コイルバネ(付勢部材)
15 ストッパ
50 被加工物
51 孔
52 ストレート部分の壁面
53 末広がり面
53a 曲面部
53b テーパ面部
60 被加工物
61 孔
62 ストレート部分の壁面
63 末広がり面
63a 第1のテーパ面部
63b 第2のテーパ面部
63c 第3のテーパ面部
64 エッジ
P 回転軸線

Claims (10)

  1. 加工工具を回転軸線を中心として回転させながら該回転軸線に沿って移動させることによって被加工物を加工する加工装置に取り付けられて、孔の開口部に形成された、孔の奥側から手前側に向かって直径が大きくなる末広がり面を仕上げ加工するための仕上げ加工工具であって、
    孔の壁面を仕上げ加工するための研磨部を備え、
    該研磨部は、回転軸線に対する拡がり角度の大きい状態と拡がり角度の小さい状態との間で姿勢変化可能に設けられ、
    孔への進入量が小さいときには、末広がり面における手前側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の大きい状態となり、
    孔への進入量が大きいときには、末広がり面における奥側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の小さい状態となることを特徴とする孔開口部における仕上げ加工工具。
  2. 研磨部を拡がり角度の大きい状態に向けて付勢する付勢部材を備え、研磨部が孔に進入していく際に、研磨部が末広がり面に押されることにより付勢部材の付勢力に抗して拡がり角度の小さい状態となる請求項1記載の孔開口部における仕上げ加工工具。
  3. 前記回転軸線を中心線とする主軸と、該主軸の先端側に一端部が回動可能に支持されて他端部が主軸の基端側に位置すると共に前記回転軸線を含む平面上を回動する回動部材とを備え、該回動部材に前記研磨部が設けられ、該回動部材の他端部が主軸から離れるように前記付勢部材が回動部材に付勢力を付与する請求項2記載の孔開口部における仕上げ加工工具。
  4. 研磨部は回動部材の一端部側に設けられている請求項3記載の孔開口部における仕上げ加工工具。
  5. 回動部材はその回動半径の方向に伸びる形状を有して第1のリンクを構成し、該第1のリンクの他端部に第2のリンクの一端部が回動可能に連結され、主軸にはスライダが回転軸線に沿ってスライド可能に設けられ、該スライダに第2のリンクの他端部が回動可能に連結され、前記付勢部材はスライダを主軸の先端側に向けて付勢する請求項3又は4記載の孔開口部における仕上げ加工工具。
  6. 第1及び第2のリンクが主軸の周方向に間隔をあけて複数組設けられ、スライダに複数の第2のリンクの他端部がそれぞれ回動可能に連結され、スライダに対して主軸の基端側には付勢部材としてのコイルバネが設けられている請求項5記載の孔開口部における仕上げ加工工具。
  7. 孔の開口部に形成された、孔の奥側から手前側に向かって直径が大きくなる末広がり面を仕上げ加工するための仕上げ加工装置であって、
    孔の壁面を仕上げ加工するための研磨部と、該研磨部を孔の軸線に沿った回転軸線を中心として回転させながら該回転軸線に沿って移動させる駆動部とを備え、
    研磨部は、回転軸線に対する拡がり角度の大きい状態と拡がり角度の小さい状態との間で姿勢変化可能に設けられ、
    孔への進入量が小さいときには、末広がり面における手前側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の大きい状態となり、
    孔への進入量が大きいときには、末広がり面における奥側の部分に研磨部が当接するように、研磨部は拡がり角度の小さい状態となることを特徴とする孔開口部における仕上げ加工装置。
  8. 駆動部を制御する制御部を備え、該制御部は、回転軸線に沿った研磨部の移動速度を研磨部の孔への進入量に応じて変化させることができるように構成されている請求項7記載の孔開口部における仕上げ加工装置。
  9. 駆動部を制御する制御部を備え、該制御部は、末広がり面に続いて該末広がり面の奥側に位置する孔のストレート部分の壁面に、研磨部のうち少なくとも末広がり面に当接した部位が当接するように駆動部を制御する請求項7記載の孔開口部における仕上げ加工装置。
  10. 請求項7乃至9の何れかに記載の孔開口部における仕上げ加工装置を使用して、コモンレールシステムにおけるデリバリーパイプの噴射孔の孔開口部を仕上げ加工することを特徴とする孔開口部における仕上げ加工方法。
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