以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明を適用した太陽光発電モジュールの第1の実施の形態の構成例を示す図である。
図3に示すように、太陽光発電モジュール21Aは、20個のセル10−1乃至10−20が直列に接続され、その両端にバイパスダイオード22が接続されている点で、図2の太陽光発電モジュール21と同様に構成されている。但し、太陽光発電モジュール21Aは、セル10−1乃至10−20それぞれに対応するバイパススイッチ23−1乃至23−20を備える点で、図2の太陽光発電モジュール21と異なる構成となっている。
即ち、太陽光発電モジュール21Aでは、バイパススイッチ23−1が、セル10−1のプラス電極とマイナス電極との間を開閉可能なように配置される。また、バイパススイッチ23−2が、セル10−2のプラス電極とマイナス電極との間を開閉可能なように配置されており、以下、同様に、バイパススイッチ23−20が、セル10−20のプラス電極とマイナス電極との間を開閉可能なように配置されている。
セル10−1乃至10−20およびバイパススイッチ23−1乃至23−20は、太陽光発電モジュール21Aの筐体の内部に封入されており、バイパススイッチ23−1乃至23−20は、その筐体の外部からの磁力によって接点が接続される構造となっている。例えば、太陽光発電モジュール21Aでは、バイパススイッチ23−1乃至23−20それぞれに外部から磁石を近接させる操作をユーザが行うことで、セル10−1乃至10−20のプラス電極とマイナス電極とが個別に短絡されるように構成されている。ここで、バイパススイッチ23−1乃至23−20のそれぞれ区別する必要がない場合、以下、適宜、バイパススイッチ23と称する。
このように、太陽光発電モジュール21Aは、いずれかのセル10に不具合が発生した場合、そのセル10に対応するバイパススイッチ23にユーザが外部から磁石を近接させることで、不具合が発生したセル10をバイパスさせることができる。これにより、不具合が発生したセル10を迂回して、他のセル10により発電された電力を太陽光発電モジュール21Aから出力することができ、太陽光発電モジュール21A全体の出力が低下することを回避することができる。即ち、太陽光発電モジュール21Aの発電特性の低下を抑制することができる。
次に、バイパススイッチ23の構成について説明する。
バイパススイッチ23としては、一般的な磁気近接スイッチを使用してもよいが、太陽光発電モジュール21Aの内部にバイパススイッチ23を配置することを考慮すると、バイパススイッチ23の高さは、可能な限りセル10と同程度にすることが望ましい。即ち、バイパススイッチ23の高さは数mm以内の低背タイプのものが望ましい。一方、バイパススイッチ23の面積に対しての自由度は大きいことから、近接される磁石に引き付けられる磁性体(鉄やニッケルなど)の接点は大きくすることができる。従って、磁性体を大きくすることで、バイパススイッチ23は、強力な磁石を使用することなく動作することができる。
図4は、バイパススイッチ23の構成例を示す図である。図4Aには、開放状態のバイパススイッチ23が示されており、図4Bには、接続状態のバイパススイッチ23が示されている。
図4に示すように、バイパススイッチ23は、コイルばね31、固定接触部32−1および32−2、可動接触部33−1および33−2、並びに、磁性部材34を備えて構成される。
また、バイパススイッチ23は、セル10を封入する筐体として太陽光発電モジュール21Aの背面側に配置されるバックシート41の内壁面に固定される。即ち、バックシート41に対して固定接触部32−1および32−2が固定されるとともに、コイルばね31の一端が、固定接触部32−1と32−2との間に固定される。また、コイルばね31の他端には磁性部材34が取り付けられており、磁性部材34の両端近傍には、可動接触部33−1および33−2が固定されている。そして、可動接触部33−1および33−2は、固定接触部32−1および32−2に向かい合うように磁性部材34の両端近傍に配置される。
固定接触部32−1には、例えば、セル10のプラス端子に接続される配線42−1が電気的に接続されており、固定接触部32−2には、例えば、セル10のマイナス端子に接続される配線42−2が電気的に接続されている。磁性部材34は、鉄などの磁力に反応する材質で構成されるとともに、バックシート41は、樹脂やガラスなどの磁力を遮らない材質により構成される。
このようにバイパススイッチ23は構成されており、通常の状態(外部からの操作が行われない状態)では、図4Aに示すように、コイルばね31の付勢力によって固定接触部32−1および32−2と可動接触部33−1および33−2とが接触しない状態を維持しており、バイパススイッチ23は開放状態とされる。
そして、図4Bに示すように、太陽光発電モジュール21Aの外側から、バイパススイッチ23が配置されている箇所のバックシート41の外壁面に、ユーザが磁石43を近接させると、磁石43の磁力により磁性部材34が引き寄せられる。これにより、固定接触部32−1および32−2と可動接触部33−1および33−2とが接触する状態となって磁性部材34を介して電流を流すことが可能となり、バイパススイッチ23は接続状態とされる。
このように磁石43を近接させてバイパススイッチ23を接続状態とすることにより、セル10のプラス端子とマイナス端子とを短絡することができる。これにより、例えば、不具合が発生したセル10に対応するバイパススイッチ23を接続状態とすることで、そのセル10をバイパスして、太陽光発電モジュール21A全体から出力が行われなくなることを回避することができる。
即ち、太陽光発電モジュール21Aでは、バイパススイッチ23が筐体に封入された状態で施工された後であっても、外部からバイパススイッチ23に対する操作を行うことができ、不具合が発生したセル10をバイパスすることができ、そのメンテナンスを行うことができる。即ち、通常、太陽光発電モジュールは、樹脂などで含浸処理されるため、完成後はセル単位での補充は困難であり太陽光発電モジュール全体を交換する必要があったのに対し、太陽光発電モジュール21Aでは、セル10ごとにメンテナンスを行うことで全体を交換することが回避される。従って、太陽光発電モジュール21Aを建材用に使用した場合でも、施工後に不具合が発生した場合のリスクを最小限に軽減することができる。
また、バイパススイッチ23では、付勢手段としてコイルばね31のような単純な部品を採用することにより、シンプルな構造かつ低コストで構成することができる。なお、付勢手段として、コイルばね31以外の部品を採用してもよい。
即ち、図5には、バイパススイッチ23の変形例が示されている。図5Aには、開放状態のバイパススイッチ23’が示されており、図5Bには、接続状態のバイパススイッチ23’が示されている。
図5に示すように、バイパススイッチ23’は、板ばね35、固定接触部32’、可動接触部33’、および磁性部材34’を備えて構成される。即ち、バイパススイッチ23’では、図4のバイパススイッチ23のコイルばね31に替えて、板ばね35が使用される。
固定接触部32’には、例えば、セル10のプラス端子に接続される配線42−1が電気的に接続されており、板ばね35の一端には、例えば、セル10のマイナス端子に接続される配線42−2が電気的に接続されている。また、板ばね35の他端には、可動接触部33’および磁性部材34’が取り付けられている。
バイパススイッチ23’では、通常の状態では、図5Aに示すように、板ばね35の付勢力によって固定接触部32’と可動接触部33’とが接触しない状態が維持され、バイパススイッチ23’は開放状態とされる。そして、図5Bに示すように、ユーザが磁石43を近接させると、磁石43の磁力により磁性部材34’が引き寄せられ、固定接触部32’と可動接触部33’とが接触する状態となって板ばね35を介して電流を流すことが可能となり、バイパススイッチ23’が接続状態とされる。
なお、図4および図5では、太陽光発電モジュール21Aの背面側からバックシート41を介してバイパススイッチ23および23’に対する操作を行うような構成となっているが、太陽光発電モジュール21Aの表面からバイパススイッチ23に対する操作を行うような構成とすることができる。
ここで、図3に示した太陽光発電モジュール21Aのように、太陽光発電モジュール21Aを構成する全てのセル10−1乃至10−20に対してバイパススイッチ23−1乃至23−20が備えられる構成が理想的である。しかしながら、内部の配線が煩雑になることや、製作コストの低減、製作時における作業性の向上などの観点から、太陽光発電モジュール21Aの構成を簡略化することが望ましい。
次に、図6は、太陽光発電モジュールの第2の実施の形態の構成例を示す図である。
図6に示されている太陽光発電モジュール21Bは、20個のセル10’−1乃至10’−20が直列に接続され、その両端にバイパスダイオード22が接続されており、16個のバイパススイッチ23−1乃至23−16を備えて構成される。また、太陽光発電モジュール21Bで使用されているセル10’は、一方の側面近傍にプラス電極が配置され、他方の側面近傍にマイナス電極が配置されるように構成されている。
太陽光発電モジュール21Bでは、セル10’−1のマイナス電極とセル10’−2のプラス電極とが接続される一方、セル10’−1のプラス電極とセル10’−2のマイナス電極との間にバイパススイッチ23−1が配置される。また、セル10’−2のマイナス電極とセル10’−3のプラス電極とが接続される一方、セル10’−2のプラス電極とセル10’−3のマイナス電極との間にバイパススイッチ23−2が配置される。以下、同様に、太陽光発電モジュール21Bでは、セル10’のプラス電極と、隣接するセル10’のマイナス電極との接続において、交互にバイパススイッチ23が配置される。
このように太陽光発電モジュール21Bは構成されており、いずれかのセル10’に不具合が発生した場合、そのセル10’の両側のいずれか一方のバイパススイッチ23を接続状態とすることで、不具合の発生したセル10’をバイパスすることができる。その際、不具合の発生したセル10’に隣接する、接続状態としたバイパススイッチ23側のセル10’もバイパスされる。即ち、太陽光発電モジュール21Bでは、2つのセル10’単位でバイパスされる。なお、不具合の発生したセル10’に対してどちら側のバイパススイッチ23を接続状態とするかは、任意に選択することができる。
このように、太陽光発電モジュール21Bでは、2つのセル10’単位でバイパス可能なようにバイパススイッチ23が配置されて構成される。これにより、太陽光発電モジュール21Bでは、太陽光発電モジュール21Aよりも、配線をシンプルに構成することができるとともに、バイパススイッチ23の個数を20個から16個に削減することができる。
次に、図7は、太陽光発電モジュールの第3の実施の形態の構成例を示す図である。
図7に示されている太陽光発電モジュール21Cは、20個のセル10’−1乃至10’−20が直列に接続され、その両端にバイパスダイオード22が接続されている点で、図6の太陽光発電モジュール21Bと同様に構成されている。但し、太陽光発電モジュール21Cは、10個のバイパススイッチ23−1乃至23−10を備えており、バイパススイッチ23−1乃至23−10の接続構成が図6の太陽光発電モジュール21Bと異なっている。
即ち、太陽光発電モジュール21Cでは、セル10’−1のマイナス電極とセル10’−2のプラス電極とが接続される一方、セル10’−1のプラス電極とセル10’−2のマイナス電極との間にバイパススイッチ23−1が配置される。また、セル10’−2のマイナス電極とセル10’−3のプラス電極とが接続される。ここで、セル10’−2のプラス電極とセル10’−3のマイナス電極とは接続されない。
そして、太陽光発電モジュール21Cでは、セル10’−3のマイナス電極とセル10’−4のプラス電極とが接続される一方、セル10’−3のプラス電極とセル10’−4のマイナス電極との間にバイパススイッチ23−2が配置される。以下、同様に、太陽光発電モジュール21Cでは、隣り合う一組のセル10’ごとにバイパススイッチ23が配置される。
このように太陽光発電モジュール21Cは構成されており、いずれかのセル10’に不具合が発生した場合、そのセル10’と隣接するセル10’との間のバイパススイッチ23を接続状態とすることで、不具合の発生したセル10’をバイパスすることができる。その際、不具合の発生したセル10’に隣接するセル10’もバイパスされる。即ち、太陽光発電モジュール21Cは、バイパスされるセル10’の組み合わせが重複することなく、あるセル10’に不具合が発生した場合、そのセル10’とともにバイパスされるセル10’が予め決められた構成となっている。
このように、太陽光発電モジュール21Cでは、2つのセル10’単位でバイパス可能なようにバイパススイッチ23が配置されて構成される。これにより、太陽光発電モジュール21Cでは、太陽光発電モジュール21Aよりも、配線をシンプルに構成することができるとともに、バイパススイッチ23の個数を20個から10個に削減することができる。なお、バイパスするセル10’の設定は、1個ごとまたは複数個(2個以上でも可)ごとなど自由に設計可能であり、用途やコストに応じて使い分けることができる。
次に、図8を参照して、太陽光発電モジュール21Aを実際に使用する場合において、メンテナンスを実施する例について説明する。図8Aには、太陽光発電モジュール21Aの表面が示されており、図8Bには、太陽光発電モジュール21Aの裏面が示されている。
太陽光発電モジュール21Aの表面は、ガラスやアクリル樹脂などの透明な板材からなるフロントシート44により覆われ、太陽光発電モジュール21Aの裏面は、図4および図5を参照して説明したようなバックシート41により覆われている。また、太陽光発電モジュール21Aの側面は、図示しない部材により囲われており、セル10−1乃至10−20は太陽光発電モジュール21Aの筐体内部に封入されている。
また、太陽光発電モジュール21Aは、図3に示したように、セル10−1乃至10−20それぞれに対応するバイパススイッチ23−1乃至23−20を備えている。そして、バックシート41には、太陽光発電モジュール21Aの内部に配置されているバイパススイッチ23−1乃至23−20に対応する箇所に、マーキング24−1乃至24−20が標記されている。
例えば、ユーザは、検査しようとする太陽光発電モジュール21Aの出力電圧および出力電流をモニタしながら、マーキング24−1乃至24−20に対して永久磁石を順次近接させる。そして、正常なセル10に対応するバイパススイッチ23のマーキング24に対して永久磁石を近接させ、そのセル10をバイパスさせる操作をした場合、そのセル10により発電されている電力量に応じて、太陽光発電モジュール21Aの出力電圧および出力電流が減少する。これに対し、不具合が発生したセル10に対応するバイパススイッチ23のマーキング24に対して永久磁石を近接させ、そのセル10をバイパスさせる操作をした場合、不具合が発生したセル10による電流の遮断が回避され、太陽光発電モジュール21Aの出力電流が増加する。
このように出力電流が増加することにより、ユーザは、セル10の出力電流が増加したときに操作の対象となったセル10に不具合が発生していることを容易に検知することができる。
従って、太陽光発電モジュール21Aに対する検査によって不具合が発生したセル10を検知した場合、ユーザは、例えば、そのセル10に対応するマーキング24の箇所に永久磁石を接着剤などで固定する処理を施すことができる。これにより、不具合が発生したセル10に対応するバイパススイッチ23によりそのセル10を常にバイパスすることができ、太陽光発電モジュール21Aの全体として特性が低下することを回避することができる。即ち、太陽光発電モジュール21Aは、不具合の発生したセル10のみを最小限に迂回して、他のセル10からの出力を維持することができる。このように、用意かつ確実にメンテナンスを実施することができる。
また、太陽光発電モジュール21Aの外部環境の変化により、例えば、設置場所の近隣に建造物が新たに建設されたことによって日照条件が変化することにより、太陽光発電モジュール21Aの一部のセル10に恒久的に太陽光が照射されなくなる場合がある。このような場合でも、ユーザは、恒久的に太陽光が照射されないセル10に対応するバイパススイッチ23により、そのセル10がバイパスされるように外部から操作をすることができる。これにより、太陽光発電モジュール21A全体として発電特性が低下することを抑制することができる。
なお、例えば、バックシート41が、透明な樹脂やガラスにより構成されていて、太陽光発電モジュール21Aの内部に配置されているバイパススイッチ23−1乃至23−20を、外部から視認することができる場合、マーキング24−1乃至24−20の標記は不要である。
なお、図3の太陽光発電モジュール21Aは、外部から磁石を近接させるとバイパススイッチ23−1乃至23−20が接続状態となるように構成されているが、バイパススイッチ23−1乃至23−20の開放と接続との切り替えを磁気コイルにより行ってもよい。例えば、マーキング24−1乃至24−20で標記されているように、太陽光発電モジュール21Aでは、バイパススイッチ23−1乃至23−20が配置される位置は決まっている。そこで、それぞれ対応する箇所に磁気コイルを配設して、それらの磁気コイルによりバイパススイッチ23−1乃至23−20を電気的に駆動させることができる。
図9には、バイパススイッチ23−1乃至23−20を駆動する駆動回路の配線図が示されている。
図9に示すように、駆動回路51は、20個の磁気コイル52−1乃至52−20、および4つの制御スイッチ53−1乃至53−4を備えて構成される。
磁気コイル52−1乃至52−20は、太陽光発電モジュール21Aの内部に配置されているバイパススイッチ23−1乃至23−20に対応する箇所(例えば、図8のマーキング24−1乃至24−20の箇所)に配設される。
また、磁気コイル52−1乃至52−20の一端は、電源VLに接続されているとともに、それらの他端は、制御スイッチ53−1乃至53−4を介して接地されている。即ち、磁気コイル52−1乃至52−5の他端は、制御スイッチ53−1を介して接地され、磁気コイル52−6乃至52−10の他端は、制御スイッチ53−2を介して接地され、磁気コイル52−11乃至52−15の他端は、制御スイッチ53−3を介して接地され、磁気コイル52−16乃至52−20の他端は、制御スイッチ53−4を介して接地されている。
例えば、ユーザは、制御スイッチ53−1乃至53−4を操作することで、磁気コイル52−1乃至52−20それぞれを個別に選択して接地させ、その選択された磁気コイル52に電流を流すことができる。これにより、選択された磁気コイル52に電磁力が発生し、その磁気コイル52の配設箇所にあるバイパススイッチ23が閉鎖状態となって、閉鎖状態のバイパススイッチ23に対応するセル10をバイパスすることができる。
このように、駆動回路51を利用することにより、ユーザは、任意のバイパススイッチ23を自由に選択して開閉することができる。従って、上述したように磁石を近接させるような検査方法よりも、より容易に太陽光発電モジュール21Aを検査することができる。
なお、磁気コイル52−1乃至52−20は、予め太陽光発電モジュール21Aの背面に固定しておくことができる他、必要に応じて取り外しができるような構造とすることができる。また、太陽光発電モジュール21Aを検査する際にのみ磁気コイル52−1乃至52−20を取り付けることが好ましい。この場合、例えば、磁気コイル52−1乃至52−20の配置を固定するフレームなどに磁気コイル52−1乃至52−20を取り付け、そのフレームごと太陽光発電モジュール21Aの背面に磁気コイル52−1乃至52−20を配設するような構成を採用することができる。
また、セル10をバイパスするバイパス手段としては、バイパススイッチ23のようなスイッチを使用する他、例えば、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を使用することができる。
次に、図10は、本発明を適用した太陽光発電モジュールの第4の実施の形態の構成例を示す図である。図10には、太陽光発電モジュール21Dの配線図が示されている。
図10に示されている太陽光発電モジュール21Dは、20個のセル10−1乃至10−20およびバイパスダイオード22を備える点で、図3の太陽光発電モジュール21Aと同様に構成される。
一方、太陽光発電モジュール21Dは、20個のFET61−1乃至61−20、4つの入出力ポート(I/O)62−1乃至62−4、および絶縁回路63を備える点で、太陽光発電モジュール21Aと異なる構成となっている。即ち、太陽光発電モジュール21Dでは、太陽光発電モジュール21Aのバイパススイッチ23−1乃至23−20に替えて、FET61−1乃至61−20がセル10−1乃至10−20それぞれに対応して設けられている。
FET61−1乃至61−20のソースは、それぞれ対応するセル10−1乃至10−20のプラス電極に接続され、FET61−1乃至61−20のドレインは、それぞれ対応するセル10−1乃至10−20のマイナス電極に接続される。また、FET61−1乃至61−5のゲートは、入出力ポート62−1を介して、絶縁回路63に接続され、FET61−6乃至61−10のゲートは、入出力ポート62−2を介して、絶縁回路63に接続される。また、FET61−11乃至61−15のゲートは、入出力ポート62−3を介して、絶縁回路63に接続され、FET61−16乃至61−20のゲートは、入出力ポート62−4を介して、絶縁回路63に接続される。
絶縁回路63には、例えば、FET61−1乃至61−20のいずれかを選択することを示すスイッチ選択シリアルデータが供給される。絶縁回路63は、スイッチ選択シリアルデータに従い、それぞれ対応する入出力ポート62−1乃至62−4を介して、FET61−1乃至61−20を個別に絶縁する。これにより、スイッチ選択シリアルデータで選択されたFET61に対応するセル10がバイパスされる。
このように、太陽光発電モジュール21Dでは、セル10−1乃至10−20のバイパス手段として、FET61−1乃至61−20を採用することにより、機械的な接点を有するスイッチと比較して、酸化や腐食などの心配がないことから、長期間の保存または使用に優れている。また、FET61−1乃至61−20は、ON抵抗やバラツキが少ない点でも優れている。
また、太陽光発電モジュール21Dでは、FET61−1乃至61−20のためのゲート線を内部に配線したり電源ラインが必要となるが、それらの配線が煩雑とならないように、太陽光発電モジュール21Dは、太陽光発電モジュール21Dの出力を基準電源とし、FET61−1乃至61−20のゲートを制御側で絶縁して動作するように構成されている。
なお、スイッチ選択シリアルデータは、例えば、ユーザが太陽光発電モジュール21Dの出力を検査する際に、所定の検査機器を操作することにより絶縁回路63に供給される。または、太陽光発電モジュール21Dの出力電圧および出力電流を監視しながら、FET61−1乃至61−20を順次切り替えて自動的に検査を行う制御手段を設け、その制御手段からスイッチ選択シリアルデータが絶縁回路63に供給されるようにしてもよい。
次に、図11は、太陽光発電モジュールの自動検査システムの構成例を示すブロック図である。
図11に示すように、自動検査システム71は、太陽光発電モジュール21E、電圧測定部72、電流測定部73、制御回路74、絶縁回路75、および変換回路76を備えて構成される。
太陽光発電モジュール21Eは、例えば、図10に示す太陽光発電モジュール21Dと同様に、20個のセル10−1乃至10−20、バイパスダイオード22、および20個のFET61−1乃至61−20を備えて構成されている。即ち、太陽光発電モジュール21Eでは、セル10−1乃至10−20が電気的に直列に接続され、セル10−1とセル10−20との間にバイパスダイオード22が接続され、セル10−1乃至10−20ごとにFET61−1乃至61−20が設けられている。
電圧測定部72は、太陽光発電モジュール21Eから出力される電力の電圧(グランドレベルとの電位差)を測定しており、所定のタイミングで、制御回路74により電圧値がサンプリングされる。電流測定部73は、太陽光発電モジュール21Eから出力される電力の電流を測定しており、所定のタイミングで、制御回路74により電流値がサンプリングされる。
制御回路74は、電圧測定部72により測定された電圧値、および電流測定部73により測定された電流値を監視し、太陽光発電モジュール21Eが備えるFET61−1乃至61−20を順次選択するスイッチ選択シリアルデータを絶縁回路75に共有する。
絶縁回路75は、制御回路74からのスイッチ選択シリアルデータに従って、変換回路76を介して、FET61−1乃至61−20を順次絶縁する。絶縁回路75からFET61−1乃至61−20を絶縁するために出力される信号はシリアル信号であり、変換回路76は、その信号をパラレル信号に変換する。
上述したように、不具合が発生したセル10に対応するFET61を絶縁した場合、そのセル10がバイパスされるため、太陽光発電モジュール21Eから出力される電力の電流が増加する。従って、自動検査システム71では、制御回路74が電圧値および電流値をモニタリングしながら、FET61−1乃至61−20を順次絶縁することで、不具合が発生したセル10を検出することができる。
なお、図11の自動検査システム71では、セル10をバイパスするバイパス手段としてFET61を使用した例について説明したが、例えば、図3を参照して説明したようなバイパススイッチ23をバイパス手段として使用し、図9を参照して説明したような磁気コイル52を制御回路74により制御することで、バイパススイッチ23の開閉を制御してもよい。
次に、図12は、図11の自動検査システム71において太陽光発電モジュール21Eを検査する処理を説明するフローチャートである。
ステップS11において、制御回路74は、検査を行う初期設定として、検査対象となるセル10のアドレスを指定する変数nに1をセットし、初期段階(セル10をバイパスしない状態)での電圧値および電流値をサンプリングして、処理はステップS12に進む。
ステップS12において、制御回路74は、アドレスnのセル10―nが選択されたことを示すスイッチ選択シリアルデータを絶縁回路75に供給する。絶縁回路75は、スイッチ選択シリアルデータに従って変換回路76を介してFET61―nを絶縁し、これによりFET61―nがONになる。ステップS12の処理後、処理はステップS13に進む。
ステップS13において、制御回路74は、電圧測定部72により測定されている電圧値をサンプリングし、処理はステップS14に進み、制御回路74は、電流測定部73により測定されている電流値をサンプリングする。
ステップS14の処理後、処理はステップS15に進み、制御回路74は、アドレスnのセル10−nが正常であるか否かを判定する。例えば、制御回路74は、FET61―nをONにすることにより、太陽光発電モジュール21Eの出力電圧および出力電流が1つのセル10分だけ低下すると、セル10−nは正常であると判定する。一方、制御回路74は、FET61―nをONにすることにより、太陽光発電モジュール21Eの出力電流が増加すると、セル10−nは正常でない(異常が発生した)と判定する。
ステップS15において、制御回路74が、アドレスnのセル10−nが正常であると判定した場合、処理はステップS16をスキップしてステップS17に進む。
一方、ステップS15において、制御回路74が、アドレスnのセル10−nが正常でないと判定した場合、処理はステップS16に進む。ステップS16において、制御回路74は、例えば内蔵する記録領域に、正常でないと判定したセル10のアドレス、即ち、現在のアドレスnを記録し、処理はステップS17に進む。
ステップS17において、制御回路74は、全てのセル10に対する検査を行ったか否かを判定する。例えば、制御回路74は、太陽光発電モジュール21Eが備えるセル10の個数がNである場合、現在の変数nがN以上である場合、全てのセル10に対する検査を行ったと判定し、現在の変数nがN未満である場合、全てのセル10に対する検査を行っていないと判定する。
ステップS17において、制御回路74が、全てのセル10に対する検査を行っていないと判定した場合、処理はステップS18に進み、制御回路74は、変数nをインクリメント(n=n+1)し、処理はステップS12に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
一方、ステップS17において、制御回路74が、全てのセル10に対する検査を行ったと判定した場合、処理は終了される。
以上のように、制御回路74は、太陽光発電モジュール21Eが備える全てのセル10を順次バイパスして、それぞれのセル10が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定された、即ち、異常が発生したセル10を検出することができる。
制御回路74には、このような検査を行うプログラムが記録されており、一連の処理を自動的に行うことができ、制御回路74は、定期的に太陽光発電モジュール21Eを検査することができる。また、セル10の応答速度を考慮しても、1つのセル10あたり1秒以内で検査することができ、例えば、50個のセル10で構成される太陽光発電モジュール1枚の検査に要する時間は1分以内とすることができる。従って、太陽光発電モジュールの検査を毎日実施したとしても、一日の発電量に大きな影響を及ぼすことはない。
また、このような検査を、一日のうちに数回行うことにより、例えば、時間帯によって日照が遮られることにより、不良となるセル10を検出することができる。また、このような検査を、一年を通して行うことにより、季節によって日照が遮られることにより、不良となるセル10を検出することができる。このように、制御回路74には、時間帯や季節などの外部環境によって不良となるセル10の情報が蓄積され、その履歴を参照することで、セル10が不良となる時間帯や季節などにおいて、そのセル10をバイパスするように設定することで、太陽光発電モジュール21Eを最適に制御することができる。
次に、図13は、図11の自動検査システム71において太陽光発電モジュール21Eを最適に制御するための設定を行う処理を説明するフローチャートである。
ステップS21において、制御回路74は、設定を行う初期設定として、設定対象となるセル10のアドレスを指定する変数nに1をセットし、処理はステップS22に進む。
ステップS22において、制御回路74は、内蔵する記憶領域に記憶されているアドレスnのセル10−nの履歴を参照する。
ステップS22の処理後、処理はステップS23に進み、制御回路74は、ステップS22で参照した履歴に基づいて、アドレスnのセル10−nは、常に不良であるか否かを判定する。
ステップS23において、アドレスnのセル10−nは常に不良であると判定された場合、処理はステップS24に進み、制御回路74は、アドレスnのセル10−nは常にバイパスすると設定する。
一方、ステップS23において、アドレスnのセル10−nは、常に不良でないと判定された場合、処理はステップS25に進み、制御回路74は、ステップS22で参照した履歴に基づいて、セル10−nは外部環境によって不良となるか否かを判定する。
ステップS25において、アドレスnのセル10−nは外部環境によって不良となると判定された場合、処理はステップS26に進み、制御回路74は、ステップS22で参照した履歴に基づいて、アドレスnのセル10−nをバイパスするタイミングを設定する。即ち、セル10−nが不良となる時間帯および季節によりをセル10−nをバイパスするように設定する。
ステップS24またはS26の処理後、あるいは、ステップS25においてアドレスnのセル10−nは外部環境によって不良とならない(常に正常である)と判定された場合、処理はステップS27に進む。
ステップS27において、制御回路74は、全てのセル10に対する設定を行ったか否かを判定し、全てのセル10に対する設定を行っていないと判定した場合、処理はステップS28に進む。ステップS28において、制御回路74は、変数nをインクリメント(n=n+1)し、処理はステップS22に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
一方、ステップS27において、制御回路74が、全てのセル10に対する設定を行ったと判定した場合、処理は終了される。
以上のように、制御回路74は、不具合が発生したセル10に対しては常にバイパスすると設定することができるとともに、外部環境によって不良となるセル10に対しては、そのセル10をバイパスするタイミング(時間帯および季節)を設定することができる。これにより、例えば、セル10が不良となる条件が整った場合に、FET61を積極的にONにすることにより、太陽光発電モジュール21Eの発電量が減少することを効率よく回避することができる。
また、太陽光発電モジュール21Eを最適に制御するための設定を行う処理を所定の間隔で行うことにより、外部環境の変化により、例えば、設置場所の近隣に建造物が新たに建設されたことによって日照条件が変化することにより、不良となるセル10が新たに発生したとしても、そのセル10が適切にバイパスされるように設定することができ、太陽光発電モジュール21Eの発電特性の低下を適切に抑制することができる。
なお、太陽光発電装置が複数の太陽光発電モジュール21を備えて構成される場合、図12および図13を参照して説明した処理は、太陽光発電モジュール21ごとに行うことができ、制御回路74には、太陽光発電モジュール21ごとの履歴が記録される。即ち、制御回路74は、太陽光発電モジュール21ごとに最適な制御を行うことができる。
なお、上述のフローチャートを参照して説明した各処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。また、プログラムは、1のCPUにより処理されるものであっても良いし、複数のCPUによって分散処理されるものであっても良い。
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
なお、上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
コンピュータでは、ROM(Read Only Memory)に記憶されているプログラムや、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部に記憶されているプログラムなどが、RAM(Random Access Memory)にロードされ、CPU(Central Processing Unit)により実行される。それにより、上述した一連の処理が行われる。
また、それらのプログラムは、あらかじめ記憶部に記憶させておく他、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部を介して、あるいは、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、または半導体メモリなどのリムーバブルメディアを駆動するドライブを介して、コンピュータにインストールすることができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。また、プログラムは、1つのCPUにより処理されるものであっても良いし、複数のCPUによって分散処理されるものであっても良い。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。