(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態は、1シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用した一例である。図1に示すように、本実施形態の圧縮機1は、密閉ケーシング2と、密閉ケーシング2内に配置される圧縮機構10および駆動機構6を備えている。なお、図1は、駆動機構6の断面を示すハッチングを省略して表示している。この圧縮機1は、例えば、空調装置などの冷凍サイクルに組み込まれて使用され、吸入管3から導入された冷媒(本実施形態では、CO2)を圧縮して排出管4から排出する。図1の上下方向を単に上下方向として、圧縮機1について以下説明する。
密閉ケーシング2は、両端が塞がれた円筒状の容器であり、その上部には、圧縮された冷媒を排出するための排出管4と、駆動機構6の後述する固定子7bのコイルに電流を供給するためのターミナル端子5が設けられている。なお、図1では、コイルとターミナル端子5とを接続する配線は省略して表示している。また。密閉ケーシング2の側部には、圧縮機1に冷媒を導入するための吸入管3が設けられている。また、密閉ケーシング2内の下部には、圧縮機構10の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油Lが貯留されている。密閉ケーシング2の内部には、駆動機構6と、圧縮機構10とが上下に並んで配置されている。
駆動機構6は、圧縮機構10を駆動するために設けられており、駆動源となるモータ7と、このモータ7に取り付けられたシャフト8とから構成されている。
モータ7は、密閉ケーシング2の内周面に固定されている略円環状の固定子7bと、この固定子7bの径方向内側にエアギャップを介して配置される回転子7aとを備えている。回転子7aは磁石(図示省略)を有し、固定子7bはコイルを有している。モータ7は、コイルに電流を流すことによって発生する電磁力によって、回転子7aを回転させる。また、固定子7bの外周面は、全周にわたって密閉ケーシング2の内周面に密着しているわけではなく、固定子7bの外周面には、上下方向に延び且つモータ7の上下の空間を連通させる複数の凹部(図示省略)が、周方向に並んで形成されている。
シャフト8は、モータ7の駆動力を圧縮機構10に伝達するために設けられており、回転子7aの内周面に固定されて、回転子7aと一体的に回転する。また、シャフト8は、後述する圧縮室31内となる位置に、偏心部8aを有している。偏心部8aは、円柱状に形成されており、その軸心がシャフト8の回転中心から偏心している。この偏心部8aには、圧縮機構10の後述するローラ41が装着されている。
また、シャフト8の下側略半分の内部には、上下方向に延在する給油路8bが形成されている。この給油路8bの下端部には、シャフト8の回転に伴って潤滑油Lを給油路8b内に吸い上げるための螺旋羽根形状のポンプ部材(図示省略)が挿入されている。さらに、シャフト8には、給油路8b内の潤滑油Lをシャフト8の外側に排出するための複数の排出孔8cが形成されている。
圧縮機構10は、密閉ケーシング2の内周面に固定されるフロントヘッド(第1端板部材)20と、フロントヘッド20の上側に配置されるマフラー11と、フロントヘッド20の下側に配置されるシリンダ30と、シリンダ30の内部に配置されるピストン40と、シリンダ30の下側に配置されるリアヘッド(第2端板部材)50とを備えている。詳細は後述するが、図2に示すように、シリンダ30は、略円環状の部材であって、その中央部に圧縮室31が形成されている。シリンダ30は、リアヘッド50と共に、フロントヘッド20の下側にボルトにより固定されている。なお、図2は、シリンダ30に形成されているボルト孔は省略して表示している。
図1および図3に示すように、フロントヘッド20は、略円環状の部材であって、その中央部に、シャフト8が回転可能に挿通される軸受け孔21が形成されている。フロントヘッド20の外周面は、密閉ケーシング2の内周面にスポット溶接などによって固定されている。フロントヘッド20の下面は、シリンダ30の圧縮室31の上端を閉塞している。フロントヘッド20には、圧縮室31において圧縮された冷媒を吐出するための吐出孔22が形成されている。吐出孔22は、上下方向から視て、シリンダ30の後述するブレード収容部33の近傍に形成されている。図示は省略するが、フロントヘッド20の上面には、圧縮室31内の圧力に応じて吐出孔22を開閉する弁機構が取り付けられている。また、フロントヘッド20のシリンダ30よりも径方向外側の部分には、複数の油戻し孔23が周方向に並んで形成されている。フロントヘッド20は、金属材料で形成されており、その製造方法としては、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しなどが挙げられる。
リアヘッド50は、略円環状の部材であって、その中央部にシャフト8が回転可能に挿通される軸受け孔51が形成されている。リアヘッド50は、シリンダ30の圧縮室31の下端を閉塞している。リアヘッド50は、金属材料で形成されており、その製造方法としては、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しなどが挙げられる。
マフラー11は、フロントヘッド20の吐出孔22から冷媒が吐出される際の騒音を低減するために設けられている。マフラー11は、フロントヘッド20の上面にボルトによって取り付けられ、フロントヘッド20との間にマフラー空間Mを形成している。また、図示は省略するが、マフラー11には、マフラー空間M内の冷媒を排出するためのマフラー吐出孔が形成されている。
図1および図2に示すように、シリンダ30には、上述した圧縮室31と、圧縮室31内に冷媒を導入するための吸入孔32と、ブレード収容部33が形成されている。なお、図2(a)は、図1のA−A線断面図であって、フロントヘッド20の吐出孔22は本来表れないが、説明の便宜上表示している。シリンダ30は、金属材料で形成されており、その製造方法としては、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しなどが挙げられる。
吸入孔32は、シリンダ30の径方向に延在して形成されており、その端部(圧縮室31と反対側の端部)には、吸入管3の先端が内嵌されている。
ブレード収容部33は、シリンダ30を上下方向に貫通しており、圧縮室31と連通している。ブレード収容部33は、圧縮室31の径方向に延在している。ブレード収容部33は、上下方向から視て、吸入孔32とフロントヘッド20の吐出孔22との間の位置に形成されている。このブレード収容部33内には、一対のブッシュ34が配置されている。一対のブッシュ34は、略円柱状の部材を半分割した形状に形成されている。この一対のブッシュ34の間にブレード42が配置されている。一対のブッシュ34は、その間にブレード42が配置された状態で、ブレード収容部33内において周方向に揺動可能となっている。
図4に示すように、ピストン40は、円環状のローラ41と、このローラ41の外周面から径方向外側に延在するブレード42とから構成されている。図2に示すように、ローラ41は、偏心部8aの外周面に相対回転可能に装着されて、圧縮室31内に配置されている。ブレード42は、ブレード収容部33に配置された一対のブッシュ34の間に進退可能に配置されている。
図2(b)〜図2(d)に示すように、ブレード42がブレード収容部33から圧縮室31側に出ている状態では、ローラ41の外周面と圧縮室31の周壁面との間に形成される空間は、ブレード42によって低圧室31aと高圧室31bに区画される。
図5(a)は、出荷時の圧縮機1を示している。図5(a)に示すように、出荷時のピストン40の上下方向長さH1は、圧縮室31の上下方向長さH2よりも僅かに小さく、その差は例えば5〜15μmである。また、ローラ41の外径は、偏心部8aに装着された状態でローラ41の外周面と圧縮室31の周壁面との間に、例えば5〜30μm程度の微小な隙間d1(以下、この隙間を径方向隙間d1という)が生じるような大きさとなっている。
<樹脂層>
図4、図5(a)および図6に示すように、本実施形態のピストン40は、金属材料からなる基材43と、基材43の表面を被覆する薄膜状の樹脂層44a、44bとから構成されている。基材43の外形は、ほぼピストン40の外形を構成している。基材43は、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しによって製造されており、表面には研磨加工が施されている。
樹脂層44a、44bは、それぞれ、基材43の上面と下面を被覆している。つまり、樹脂層44a、44bは、ピストンの上端面と下端面に形成されている。また、圧縮機1の出荷時には樹脂層44a、44bはほとんど膨潤しておらず(僅かに膨潤しているか、全く膨潤していない)、このときの樹脂層44a、44bの膜厚は、例えば、10〜20μmである。なお、膜厚はこの厚さに限定されるものではない。
図6(a)、(b)に示すように、樹脂層44a、44bは、4つの層を積層することによって構成されており、基材43に最も近い第1層と、その外側に向かって順に積層された第2層、第3層、第4層とを有している。つまり、第4層は、基材43から最も離れている。したがって、第2層及び第3層は、第1層と第4層との間に配置されており、第1層と第4層とを接続している。また、第1層〜第3層の厚さt1は等しく、第4層の厚さt2は、第1層〜第3層の厚さt1よりも小さい。これにより、第4層の厚さt2は、樹脂層44a、44b全体の厚さT1(=3×t1+t2)の50%以下となっている。なお、図6(a)、(b)において、樹脂層44a、44bの各層内にかっこ書きで示した符号L1〜L4は、それぞれ、第1層〜第4層の硬度を示している。
図7は、樹脂層44a、44bに配合される2種類の硬い材料と柔らかい材料の配合比率(%)の一例を示している。より具体的には、硬い材料として、PAI(ポリイミドアミド)、及び、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)のいずれか、又は、これらを配合したものが使用される。また、柔らかい材料として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、グラファイト、及び、MoS2(二硫化モリブデン)のいずれか、又は、これらを配合したものが使用される。
図7に示すように、硬い材料と柔らかい材料の配合比率は、基材43から離れるにつれて、層数と同じ4つの段階に変化している。つまり、硬い材料の配合比率は、第1層が75%、第2層が55%、第3層が35%、第4層が15%となっており、基材43から離れるにつれて減少している。一方、柔らかい材料の配合比率は、第1層が25%、第2層が45%、第3層が65%、第4層が85%となっており、基材43から離れるにつれて増加している。これにより、樹脂層44a、44bの各層の硬度L1〜L4は基材43から離れるにつれて小さくなる。また、樹脂層44a、44bにおいて隣り合う2つの層の硬度差である、第1層と第2層の硬度差ΔL12(=L1−L2)、第2層と第3層の硬度差ΔL23(=L2−L3)、第3層と第4層の硬度差ΔL34(=L3−L4)は、いずれも、基材43から最も離れた第4層の硬度L4と、基材43に最も近い第1層の硬度L1との硬度差ΔL14(=L1−L4)よりも小さくなっている。ここで、隣り合う2つの層間の密着強度は、それらの硬度差が小さいほど強くなることから、本実施形態では、第1層と第2層の間の密着強度、第2層と第3層の間の密着強度、及び、第3層と第4層の間の密着強度は、いずれも、第1層の表面に第4層を形成した場合における第1層と第4層の間の密着強度より強くなっている。
また、基材43から最も離れた第4層は、フロントヘッド20およびリアヘッド50を構成する金属材料よりも硬度が低い。なお、本実施形態では、残りの3つの層の硬度も、フロントヘッド20およびリアヘッド50を構成する金属材料よりも低い。また、樹脂層44a、44bを構成する各層の曲げ弾性率は、基材43、フロントヘッド20およびリアヘッド50を構成する金属材料のヤング率よりも小さい。なお、「樹脂層を挟むように設けられた2つの部材」とは、ピストン40の上面に設けられた樹脂層44aについては基材43とフロントヘッド20のことであり、ピストン40の下面に設けられた樹脂層44bについては、基材43とリアヘッド50のことである。
<圧縮機の動作>
次に、本実施形態の圧縮機1の動作について、図2(a)〜図2(d)を参照して説明する。図2(a)は、ピストン40が上死点にある状態を示しており、図2(b)〜図2(d)は、図2(a)の状態から、それぞれ、シャフト8が、90°、180°(下死点)、270°回転した状態を示している。
吸入管3から吸入孔32を介して圧縮室31に冷媒を供給しつつ、モータ7の駆動によりシャフト8を回転させると、図2(a)〜図2(d)に示すように、偏心部8aに装着されたローラ41は、圧縮室31の周壁面に沿って移動する。これにより、圧縮室31内で冷媒が圧縮される。冷媒が圧縮される工程について、以下、詳細に説明する。
図2(a)の状態から偏心部8aが図中の矢印方向に回転すると、図2(b)に示すように、ローラ41の外周面と圧縮室31の周壁面とによって形成される空間が、低圧室31aと高圧室31bに区画される。さらに偏心部8aが回転すると、図2(b)〜図2(d)に示すように、低圧室31aの容積が大きくなるため、吸入管3から吸入孔32を介して低圧室31a内に冷媒が吸い込まれていく。同時に、高圧室31bの容積が小さくなるため、高圧室31bにおいて冷媒が圧縮される。
そして、高圧室31b内の圧力が所定の圧力以上になった時点で、フロントヘッド20に設けられた弁機構が開弁して、高圧室31b内の冷媒が吐出孔22を介してマフラー空間Mに吐出される。その後、図2(a)の状態に戻り、高圧室31bからの冷媒の吐出が完了する。この工程を繰り返すことにより、吸入管3から圧縮室31に供給された冷媒が連続的に圧縮されて排出される。
マフラー空間Mに吐出された冷媒は、マフラー11のマフラー吐出孔(図示省略)から圧縮機構10の外に吐出される。圧縮機構10から吐出された冷媒は、固定子7bと回転子7aとの間のエアギャップなどを通過した後、最終的に、排出管4から密閉ケーシング2の外に排出される。
このとき、シャフト8の排出孔8cから圧縮室31内に供給された潤滑油Lの一部は、冷媒と共に吐出孔22からマフラー空間Mに吐出された後、マフラー11のマフラー吐出孔(図示省略)から圧縮機構10の外に吐出される。圧縮機構10の外に吐出された潤滑油Lの一部は、フロントヘッド20の油戻し孔23を通って密閉ケーシング2の下部の貯留部に戻される。また、圧縮機構10の外に吐出された潤滑油Lの他の一部は、冷媒と共に固定子7bと回転子7aとの間のエアギャップを通過した後、固定子7bの外周面に形成された凹部(図示省略)と密閉ケーシング2の内周面との間と、フロントヘッド20の油戻し孔23とを通って、密閉ケーシング2の下部の貯留部に戻される。
上述したように、ピストン40の上下方向長さは、圧縮室31の上下方向長さよりも僅かに小さく設定されている。そのため、圧縮機1の通常運転時には、図5(a)に示すように、ピストン40の上端面とフロントヘッド20との間、および、ピストン40の下端面とリアヘッド50との間の微小な隙間D1、D2(以下、この隙間を軸方向隙間D1、D2という)に、シャフト8の排出孔8cから排出された潤滑油Lが存在する。
また、上述したように、ローラ41の外径は、偏心部8aに装着された状態でローラ41の外周面が、圧縮室31の周壁面との間に微小な径方向隙間d1を形成するような大きさとなっている。そのため、圧縮機1の通常運転時には、図5(a)に示すように、この径方向隙間d1には、シャフト8の排出孔8cから排出された潤滑油Lが存在する。
[第1実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機1では、樹脂層44a、44bが形成された基材43の表面において、基材43から最も離れた第4層を柔らかくできる。従って、圧縮機1の高速始動時や吐出される冷媒の温度と吸入される冷媒の温度の温度差が大きい条件での運転時などにピストン40の熱膨張量がシリンダ30の熱膨張量よりも大きくなったり、図5(b)に示すように樹脂層44a、44bが冷媒や潤滑油Lを吸収して膨潤したりすることで、基材43から最も離れた第4層がフロントヘッド20やリアヘッド50と接触して摺動しても、基材43から最も離れた第4層が容易に削られるか、たとえ削れなくても容易に変形する。これにより、接触面間の面圧が低減するため、摩擦ロスを低減することができ、圧縮機1の効率の低下を抑制することができる。また、基材43に最も近い第1層の硬度L1を、基材43から最も離れた第4層の硬度L4よりも大きくすることにより、基材43に最も近い第1層の硬度L1を基材43の硬度に近づけることができるので、樹脂層44a、44bと基材43との間の密着強度を向上させることができる。また、本実施形態の圧縮機1では、樹脂層44a、44bを4つの層で構成し、隣り合う2つの層の硬度差(ΔL12、ΔL23、ΔL34)を、基材43から最も離れた第4層と基材43に最も近い第1層の硬度差ΔL14よりも小さい範囲に収めることによって、摩擦ロスを低減すると共に樹脂層44a、44bと基材43との間の密着強度を向上させつつ、樹脂層44a、44bに含まれる層(第1層〜第4層)が剥離するのを防止できる。
また、本実施形態の圧縮機1では、基材43に最も近い第1層よりも柔らかい第4層の厚さt2を樹脂層44a、44bの厚さT1の50%以下に抑えることで、樹脂層44a、44bの全体を第4層と同じ柔らかい層とした場合と比べて、摩耗粉等のゴミによって樹脂層44a、44bが削り取られる量を少なく抑えることができる。従って、樹脂層44a、44b全体の損傷を小さく抑えることができる。
また、本実施形態の圧縮機1では、基材43から最も離れた第4層の硬度は、フロントヘッド20およびリアヘッド50の硬度よりも低いため、樹脂層44a、44bの膨潤などによって樹脂層44a、44bがフロントヘッド20またはリアヘッド50と接触して摺動した際、基材43から最も離れた第4層が容易に削られる。
また、本実施形態の圧縮機1では、樹脂層44a、44bを構成する4つの層の曲げ弾性率が小さいため、樹脂層44a、44bの膨潤などによって樹脂層44a、44bがフロントヘッド20またはリアヘッド50と接触して摺動した際、樹脂層44a、44bが弾性変形しやすい。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の圧縮機は、ピストン40に樹脂層を設けるのではなく、フロントヘッドやリアヘッドに樹脂層を設けた点で、第1実施形態の圧縮機と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態で説明した要素と同一の要素について同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
<樹脂層>
図8及び図9(a)に示すように、本実施形態のフロントヘッド220の下面には、薄膜状の樹脂層244が形成されている。また、図8では図示を省略したが、リアヘッド250の上面にも、薄膜状の樹脂層245が形成されている(図9(a)、(b)参照)。図8に示すように、樹脂層244は、ピストン40の上面が摺動する領域を含んだ領域(図中のハッチング部分)に形成されている。同様に、樹脂層245は、ピストン40の下面が摺動する領域を含んだ領域に形成されている。
図10(a)、(b)に示すように、樹脂層244、245は、3つの層を積層することによって形成されており、フロントヘッド220またはリアヘッド250に最も近い第1層と、その外側に向かって順に積層された第2層、第3層とを有している。つまり、第3層は、フロントヘッド220またはリアヘッド250の基材から最も離れている。したがって、第2層は、第1層と第3層との間に配置されており、第1層と第3層とを接続している。また、第1層及び第2層の厚さt21は等しく、第3層の厚さt22は、第1層及び第2層の厚さt21よりも小さい。これにより、第3層の厚さt22は、樹脂層244、245の厚さT2(=2×t21+t22)の50%以下となっている。なお、図10(a)、(b)において、樹脂層244、245の各層内にかっこ書きで示した符号L21〜L23は、それぞれ、第1層〜第3層の硬度を示している。
図11に示すように、樹脂層244、245は、上記の硬い材料と柔らかい材料の配合比率を層数と同じ3つの段階に変化している。つまり、硬い材料の配合比率は、第1層が75%、第2層が55%、第3層が35%となっており、フロントヘッド220またはリアヘッド250の基材から離れるにつれて減少している。一方、柔らかい材料の配合比率は、第1層が25%、第2層が45%、第3層が65%となっており、フロントヘッド220またはリアヘッド250の基材から離れるにつれて増加している。これにより、樹脂層244、245の各層の硬度L21〜L23はフロントヘッド220またはリアヘッド250の基材から離れるにつれて小さくなる。また、樹脂層244、245において隣り合う2つの層の硬度差である、第1層と第2層の硬度差ΔL12(=L21−L22)、第2層と第3層の硬度差ΔL23(=L22−L23)は、いずれも、基材から最も離れた第3層の硬度L23と、基材に最も近い第1層の硬度L21との硬度差ΔL13(=L21−L23)よりも小さくなっている。本実施形態では、第1層と第2層の間の密着強度、及び、第2層と第3層の間の密着強度は、いずれも、第1層の表面に第3層を形成した場合における第1層と第3層の間の密着強度より強くなっている。
また、基材から最も離れた第3層は、ピストン40を構成する金属材料よりも硬度が低い。なお、本実施形態では、残りの2つの層の硬度も、ピストン40を構成する金属材料よりも低い。また、樹脂層244、245を構成する各層の曲げ弾性率は、フロントヘッド20の基材、リアヘッド50の基材、およびピストン40を構成する金属材料のヤング率よりも小さい。なお、「樹脂層を挟むように設けられた2つの部材」とは、フロントヘッド20の下面に設けられた樹脂層244については、フロントヘッド20の基材とピストン40のことであり、リアヘッド50の上面に設けられた樹脂層245については、リアヘッド50の基材とピストン40のことである。
[第2実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機では、第1実施形態と同様に、摩擦ロスを低減すると共に樹脂層244、245と基材との間の密着強度を向上させつつ、樹脂層244、245に含まれる層(第1層〜第3層)が剥離するのを防止できる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の圧縮機は、ピストン40の基材43の上面または下面に樹脂層を設けるのではなく、ピストン40の基材43の外周面(ブレードの取り付け面を除く)に樹脂層344を設けた点で、第1実施形態の圧縮機と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態で説明した要素と同一の要素について同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
<樹脂層>
図15に示すように、樹脂層344は、4つの層を積層することによって形成されており、基材43の外周面に最も近い第1層と、その外側に向かって順次に積層された第2層、第3層及び第4層とを有している。つまり、第4層は、基材43から最も離れている。また、第1層〜第3層の厚さt31は等しく、第4層の厚さt32は、第1層〜第3層の厚さt31よりも小さい。これにより、第4層の厚さt32は、樹脂層344の全体の厚さT3(=3×t31+t32)の50%以下となっている。なお、図15において、樹脂層344の各層内にかっこ書きで示した符号L31〜L34は、それぞれ、第1層〜第4層の硬度を示している。
樹脂層344は、第1実施形態の樹脂層44a、44bと同じく、上記の硬い材料と柔らかい材料の配合比率(%)を層数と同じ4つの段階に変化させたものであって、樹脂層344において隣り合う2つの層の硬度差である、第1層と第2層の硬度差(=L31−L32)、第2層と第3層の硬度差(=L32−L33)、第3層と第4層の硬度差(=L33−L34)は、いずれも、基材43から最も離れた第4層の硬度L34と、基材43に最も近い第1層の硬度L31との硬度差(=L31−L34)よりも小さくなっている。本実施形態では、第1層と第2層の間の密着強度、第2層と第3層の間の密着強度、及び、第3層と第4層の間の密着強度は、いずれも、第1層の表面に第4層を形成した場合における第1層と第4層の間の密着強度より強くなっている。
また、基材43から最も離れた第4層は、シリンダ30を構成する金属材料よりも硬度が低い。なお、本実施形態では、残りの3つの層の硬度も、シリンダ30を構成する金属材料よりも低い。また、樹脂層344を構成する各層の曲げ弾性率は、基材43およびシリンダ30を構成する金属材料のヤング率よりも小さい。なお、本実施形態では、「樹脂層を挟むように設けられた2つの部材」とは、基材43とシリンダ30のことである。
[第3実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機では、第1実施形態と同様に、摩擦ロスを低減すると共に樹脂層344と基材43との間の密着強度を向上させつつ、樹脂層344に含まれる層(第1層〜第4層)が剥離するのを防止できる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の圧縮機は、ピストン40に樹脂層を設けるのではなく、シリンダ30の内周面(冷媒吸入穴やブレード収容溝の開口部分を除く)に樹脂層444を設けた点で、第1実施形態の圧縮機と相違している。なお、本実施形態では、第1実施形態で説明した要素と同一の要素について同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
<樹脂層>
樹脂層444は、3つの層を積層することによって形成されており、シリンダ30の基材の内周面に最も近い第1層と、その外側に向かって順次に積層された第2層及び第3層とを有している。つまり、第3層は、シリンダ30の基材から最も離れている。したがって、第2層は、第1層と第3層との間に配置されており、第1層と第3層とを接続している。また、第1層及び第2層の厚さは等しく、第3層の厚さは、第1層及び第2層の厚さよりも小さい。これにより、第3層の厚さは、樹脂層444の厚さの50%以下となっている。
樹脂層444は、第2実施形態の樹脂層244、245と同じく、上記の硬い材料と柔らかい材料の配合比率(%)を層数と同じ3つの段階に変化させたものであって、樹脂層444において隣り合う2つの層の硬度差である、第1層と第2層の硬度差、第2層と第3層の硬度差は、いずれも、基材から最も離れた第3層の硬度と、基材に最も近い第1層の硬度との硬度差よりも小さくなっている。本実施形態では、第1層と第2層の間の密着強度、及び、第2層と第3層の間の密着強度は、いずれも、第1層の表面に第3層を形成した場合における第1層と第3層の間の密着強度より強くなっている。
また、基材から最も離れた第3層は、ピストン40を構成する金属材料よりも硬度が低い。なお、本実施形態では、残りの2つの層の硬度も、ピストン40を構成する金属材料よりも低い。また、樹脂層444を構成する各層の曲げ弾性率は、シリンダ30の基材およびピストン40を構成する金属材料のヤング率よりも小さい。なお、本実施形態では「樹脂層を挟むように設けられた2つの部材」とは、シリンダ30の基材とピストン40のことである。
[第4実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機では、第1実施形態と同様に、摩擦ロスを低減すると共に樹脂層444と基材との間の密着強度を向上させつつ、樹脂層444に含まれる層(第1層〜第3層)が剥離するのを防止できる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、2シリンダ型のロータリ圧縮機に本発明を適用した一例である。図17に示すように、本実施形態の圧縮機501は、シャフト508および圧縮機構510の構成が上記第1実施形態と異なっている。また、本実施形態の圧縮機501では、2本の吸入管3が、密閉ケーシング2の側部に上下に並んで設けられている。その他の構成は上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
シャフト508は、2つの偏心部508a、508dを有している。2つの偏心部508a、508dの軸心は、シャフト508の回転軸を中心として180°ずれている。また、シャフト508は、上記第1実施形態のシャフト8と同じく、給油路508bと、複数の排出孔508cを有している。
圧縮機構510は、シャフト508の軸方向に沿って上から下に向かって順に、フロントマフラー511と、フロントヘッド520と、シリンダ530およびピストン540と、ミドルプレート550と、シリンダ560およびピストン570と、リアヘッド580と、リアマフラー512とを有する。なお、フロントヘッド520およびミドルプレート550は、ピストン540の上下端に配置されており、本発明の第1端板部材および第2端板部材に相当する。また、ミドルプレート550およびリアヘッド580は、ピストン570の上下端に配置されており、本発明の第1端板部材および第2端板部材に相当する。
フロントマフラー511は、上記第1実施形態のマフラー11と同様の構成を有し、フロントヘッド520との間にマフラー空間M1を形成している。
フロントヘッド520には、軸受け孔521と、吐出孔522(図18参照)と、油戻し孔523とが形成されている。さらに、フロントヘッド520は、上下方向に貫通する貫通孔(図示省略)が形成されている。この貫通孔は、リアヘッド580とリアマフラー512とによって形成されるマフラー空間M2内の冷媒を、マフラー空間M1に排出するための流路の一部を構成している。フロントヘッド520は、この貫通孔を有する点以外、第1実施形態のフロントヘッド20と同様の構成である。
図18に示すように、シリンダ530には、圧縮室531と、吸入孔532と、ブレード収容部533とが形成されている。さらに、シリンダ530には、圧縮室531の外周側部分に、後述するマフラー空間M2内の冷媒をマフラー空間M1に排出するための貫通孔535が形成されている。シリンダ530は、この貫通孔535を有する点以外、第1実施形態のシリンダ30と同様の構成である。
ピストン540は、上記第1実施形態のピストン40と同様の構成であって、ローラ41と、ブレード42とから構成されている。ローラ41は、偏心部508aの外周面に回転可能に装着されており、ブレード42は、シリンダ530のブレード収容部533に配置された一対のブッシュ34の間に進退可能に配置されている。
ミドルプレート550は、円環状の板部材であって、シリンダ530とシリンダ560との間に配置され、シリンダ530の圧縮室531の下端を閉塞すると共に、シリンダ560の圧縮室531の上端を閉塞している。また、ミドルプレート550には、後述するマフラー空間M2内の冷媒をマフラー空間M1に排出するための貫通孔(図示省略)が形成されている。ミドルプレート550は、金属材料で形成されており、その製造方法としては、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しなどが挙げられる。
シリンダ560は、上述したシリンダ530と同様の構成であって、圧縮室561と、吸入孔562と、一対のブッシュ34が配置されたブレード収容部(図示省略)と、貫通孔(図示省略)とを有する。
ピストン570は、上記第1実施形態のピストン40と同様の構成であって、ローラ41と、ブレード42とから構成されている。ローラ41は、偏心部508dの外周面に回転可能に装着されており、ブレード42は、シリンダ560のブレード収容部(図示省略)に配置された一対のブッシュ34の間に進退可能に配置されている。
リアヘッド580は、シリンダ560の下側に配置され、シリンダ560の圧縮室531の下端を閉塞している。リアヘッド580は、略円環状の部材であって、その中央部に、シャフト508が回転可能に挿通される軸受け孔581が形成されている。また、リアヘッド580には、シリンダ560の圧縮室561において圧縮された冷媒を、リアヘッド580とリアマフラー512との間に形成されるマフラー空間M2に吐出するための吐出孔(図示省略)が形成されている。さらに、リアヘッド580には、マフラー空間M2内の冷媒をマフラー空間M1に排出するための貫通孔(図示省略)が形成されている。また、リアヘッド580の下面には、圧縮室131内の圧力に応じて吐出孔を開閉する弁機構(図示省略)が取り付けられている。リアヘッド580は、金属材料で形成されており、その製造方法としては、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しなどが挙げられる。
リアマフラー512は、リアヘッド580の吐出孔(図示省略)から冷媒が吐出される際の騒音を低減するために設けられている。リアマフラー512は、リアヘッド580の下面にボルトによって取り付けられ、リアヘッド580との間にマフラー空間M2を形成している。マフラー空間M2は、リアヘッド580、シリンダ560、ミドルプレート550、シリンダ530およびフロントヘッド520にそれぞれ形成された貫通孔を介して、マフラー空間M1と連通している。
<樹脂層>
本実施形態の圧縮機では、第1実施形態と同様の樹脂層44a、44b(図4参照)を、ピストン540、570の上端面や下端面の全面又は一部に形成してもよい。また、第2実施形態と同様の樹脂層244、245(図8、9参照)を、フロントヘッド520の下端面、ミドルプレート550の上端面や下端面、リアヘッド580の上端面の全面又は一部に形成してもよい。また、第3実施形態と同様の樹脂層344(図12〜14参照)を、ピストン540、570のローラ41の外周面の全面又は一部に形成してもよい。また、第4実施形態と同様の樹脂層444(図16参照)を、シリンダ530、560の内周面の全面又は一部に形成してもよい。
<圧縮機の動作>
本実施形態の圧縮機501の動作について説明する。吸入孔532、562から圧縮室531、561に冷媒を供給しつつ、モータ7の駆動によりシャフト508を回転させると、偏心部508aに装着されたピストン540のローラ41は、圧縮室531の周壁面に沿って移動する。これにより、圧縮室531内で冷媒が圧縮される。これと並行して、偏心部508dに装着されたピストン570のローラ41は、圧縮室561の周壁面に沿って移動する。これにより、圧縮室561内で冷媒が圧縮される。
圧縮室531内の圧力が所定の圧力以上になった時点で、フロントヘッド520に設けられた弁機構が開弁して、圧縮室531内の冷媒がフロントヘッド520の吐出孔522からマフラー空間M1に吐出される。また、圧縮室561内の圧力が所定の圧力以上になった時点で、リアヘッド580に設けられた弁機構が開弁して、圧縮室561内の冷媒がリアヘッド580の吐出孔(図示省略)からマフラー空間M2に吐出される。マフラー空間M2に吐出された冷媒は、リアヘッド580、シリンダ560、ミドルプレート550、シリンダ530およびフロントヘッド520にそれぞれ形成された貫通孔を介して、マフラー空間M1に吐出される。
マフラー空間M1に吐出された冷媒は、フロントマフラー511のマフラー吐出孔(図示省略)から圧縮機構510の外に吐出されて、その後、固定子7bと回転子7aとの間のエアギャップを通過した後、最終的に、排出管4から密閉ケーシング2の外に排出される。
[第5実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機では、第1実施形態と同様に、摩擦ロスを低減すると共に樹脂層と基材との間の密着強度を向上させつつ、樹脂層に含まれる層が剥離するのを防止できる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態の圧縮機は、圧縮機構610の構成が上記第1実施形態と異なっている。その他の構成は上記第1実施形態と同様であるため、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
図19に示すように、圧縮機構610は、シリンダ630とシリンダ630の内部に配置される部材の構成が異なっており、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
シリンダ630は、圧縮室631と吸入孔632を有している。また、シリンダ630は、第1実施形態のブレード収容部33に代えて、ベーン収容部633を有しており、その他の構成は、上記第1実施形態のシリンダ30と同様である。ベーン収容部633は、シリンダ630を上下方向に貫通しており、圧縮室631に連通している。また、ベーン収容部633は、圧縮室631の径方向に延在している。
圧縮室631の内側には、円環状のローラ641が配置されている。ローラ641は、偏心部8aの外周面に相対回転可能に装着された状態で、圧縮室631内に配置されている。また、ローラ641の上下方向長さは、第1実施形態のピストン40の上下方向長さH1と同じである。また、ローラ641の外径は、第1実施形態のピストン40のローラ41の外径と同じである。
ベーン収容部633の内側には、ベーン644が配置されている。図20に示すように、ベーン644は、平板状の部材であって、その上下方向長さは、ローラ641の上下方向長さと同じである。ベーン644の圧縮室631の中心側の先端部(図19中の下側の先端部)は、上方から視て先細り状に形成されている。また、ベーン644は、ベーン収容部633内に設けられた付勢バネ647によって付勢されており、圧縮室631側の先端部が、ローラ641の外周面に押し付けられている。そのため、図19(a)〜図19(d)に示すように、シャフト8の回転に伴ってローラ641が圧縮室631の周壁面に沿って移動すると、ベーン644は、ベーン収容部633内で、圧縮室631の径方向に沿って進退移動する。また、図19(b)〜図19(d)に示すように、ベーン644が、ベーン収容部633から圧縮室631側に出ている状態では、ローラ641の外周面と圧縮室631の周壁面との間に形成される空間は、ベーン644によって低圧室631aと高圧室631bに区画される。
図20および図21に示すように、ローラ641は、金属材料からなる基材642と、基材642の表面を被覆する薄膜状の樹脂層643a〜643cとから構成されている。また、ベーン644は、金属材料からなる基材645と、基材645の表面を被覆する薄膜状の樹脂層646a、646bとから構成されている。
図20に示すように、基材642、645の外形は、それぞれ、ほぼローラ641とベーン644の外形を構成している。基材642、645は、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しによって製造されており、表面には研磨加工が施されている。
<樹脂層>
ローラ641の樹脂層643a、643bは、それぞれ、基材642の上面と下面を被覆している。つまり、樹脂層643a、643bは、ローラ641の上端面と下端面に形成されている。また、樹脂層643cは、ローラ641の外周面に形成されている。また、ベーン644の樹脂層646a、646bは、それぞれ、基材645の上面と下面に形成されている。つまり、樹脂層646a、646bは、ベーン644の上端面と下端面に形成されている。樹脂層643a〜643c、646a、646bの材料および膜厚は、第1実施形態のピストン40の樹脂層44a、44bと同様である。
<圧縮機の動作>
次に、本実施形態の圧縮機の動作について説明する。図19(a)は、ローラ641が上死点にある状態を示しており、図19(b)〜図19(d)は、図19(a)の状態から、それぞれ、シャフト8が、90°、180°(下死点)、270°回転した状態を示している。
吸入管3から吸入孔632を介して圧縮室631に冷媒を供給しつつ、モータ7の駆動によりシャフト8を回転させると、図19(a)〜図19(d)に示すように、偏心部8aに装着されたローラ641は、圧縮室631の周壁面に沿って移動する。これにより、圧縮室631内で冷媒が圧縮される。冷媒が圧縮される工程について、以下、詳細に説明する。
図19(a)の状態から偏心部8aが図中の矢印方向に回転すると、図19(b)に示すように、ローラ641の外周面と圧縮室631の周壁面とによって形成される空間が、低圧室631aと高圧室631bに区画される。さらに偏心部8aが回転すると、図19(b)〜図19(d)に示すように、低圧室631aの容積が大きくなるため、吸入管3から吸入孔632を介して低圧室631a内に冷媒が吸い込まれていく。同時に、高圧室631bの容積が小さくなるため、高圧室631bにおいて冷媒が圧縮される。
そして、高圧室631b内の圧力が所定の圧力以上になった時点で、フロントヘッド20に設けられた弁機構が開弁して、高圧室631b内の冷媒が吐出孔22を介してマフラー空間Mに吐出される。マフラー空間Mに吐出された冷媒は、第1実施形態の圧縮機1と同様の経路を通り、最終的に、排出管4から密閉ケーシング2の外に排出される。
[第6実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機では、第1実施形態と同様に、摩擦ロスを低減すると共に樹脂層と基材との間の密着強度を向上させつつ、樹脂層に含まれる層が剥離するのを防止できる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。本実施形態は、スクロール圧縮機に本発明を適用した一例である。図22に示すように、本実施形態の圧縮機701は、密閉ケーシング702と、密閉ケーシング702の内部に配置される圧縮機構710および駆動機構706を備えている。図22は、駆動機構706の断面を示すハッチングを省略して表示している。図22の上下方向を単に上下方向として、圧縮機701について以下説明する。
密閉ケーシング702は、両端が塞がれた円筒状の容器であり、その上部には、冷媒を導入するための吸入管703が設けられている。密閉ケーシング702の側部には、圧縮された冷媒を排出するための排出管704と、駆動機構706の後述する固定子707bのコイルに電気を供給するためのターミナル端子(図示省略)とが設けられている。また、密閉ケーシング702内の下部には、圧縮機構710の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油Lが貯留されている。密閉ケーシング702の内部には、圧縮機構710と、駆動機構706とが上下に並んで配置されている。
駆動機構706は、駆動源となるモータ707と、このモータ707に取り付けられたシャフト708とを有する。モータ707と、モータ707の駆動力を圧縮機構710に伝達するためのシャフト708とを有する。
モータ707は、第1実施形態のモータ7とほぼ同様の構成であって、密閉ケーシング702の内周面に固定されている略円環状の固定子707bと、この固定子707bの径方向内側にエアギャップを介して配置される回転子707aとを備えている。また、固定子707bの外周面は、全周にわたって密閉ケーシング702の内周面に密着しているわけではなく、固定子707bの外周面には、上下方向に延び且つモータ707の上下の空間を連通させる複数の凹部(図示省略)が、周方向に並んで形成されている。
シャフト708は、モータ707の駆動力を圧縮機構710に伝達するために設けられており、回転子707aの内周面に固定されて、回転子707aと一体的に回転する。シャフト708は、その上端部に偏心部708aを有している。偏心部708aは、円柱状であって、その軸心がシャフト708の回転中心から偏心している。この偏心部708aには、可動スクロール740の後述する軸受部743が装着されている。
また、シャフト708の内部には、上下方向にシャフト708を貫通する給油路708bが形成されている。この給油路708bの下端部には、シャフト708の回転に伴って潤滑油Lを給油路708b内に吸い上げるためのポンプ部材(図示省略)が挿入されている。さらに、シャフト708には、給油路708b内の潤滑油Lをシャフト708の外部に排出するための複数の排出孔708cが形成されている。
圧縮機構710は、密閉ケーシング702の内周面に固定されるハウジング720と、ハウジング720の上側に配置される固定スクロール(第1スクロール)730と、ハウジング720と固定スクロール730との間に配置される可動スクロール(第2スクロール)740とを備えている。
ハウジング720は、略円環状の部材であって、密閉ケーシング702に圧入固定されており、その外周面が全周にわたって密閉ケーシング702の内周面に密着している。ハウジング720の中央部には、偏心部収容孔721と、この偏心部収容孔721よりも径の小さい軸受け孔722とが上下に並んで形成されている。偏心部収容孔721の内側には、シャフト708の偏心部708aが、可動スクロール740の軸受部743の内側に挿入された状態で収容されている。軸受け孔722は、筒状の軸受723を介して、シャフト708を相対回転可能に支持している。また、ハウジング720の上面の偏心部収容孔721の外周側には、環状溝724が形成されている。また、この環状溝724よりも外周側には、ハウジング720を上下方向に貫通する連通孔725が形成されている。
図22および図23に示すように、固定スクロール730は、略円盤状の部材であって、その下面の外周側部分がハウジング720の上面と密着するように、ボルト(図示省略)でハウジング720に固定されている。固定スクロール730の下面の中央部には、略円形状の凹部731が形成されている。また、この凹部731の底面には、下方に突出する渦巻状の固定側ラップ(第1ラップ)732が形成されている。固定スクロール730の下面(凹部731の底面を除く)と、固定側ラップ732の先端面とは略面一に形成されている。また、図23に示すように、固定側ラップ732の外周側端部(巻き終わり端部)は、凹部731の周壁面に連結されている。
また、図22に示すように、固定スクロール730には、その上面から固定スクロール730の下面近傍まで延在する吸入路733が形成されている。吸入路733は、凹部731内に冷媒を導入するために設けられている。吸入路733の上端には、吸入管703の下端が内嵌されている。図23に示すように、この吸入路733の下端は、凹部731の底面のうち、最も径の大きい部分に形成されている。
また、固定スクロール730の上面の略中央部には、窪み部734が形成されており、この窪み部734を覆うようにカバー部材735が固定スクロール730に取り付けられている。また、窪み部734の底面には、下方に延びて凹部731に連通する吐出孔736が形成されている。吐出孔736の下端は、凹部731の底面のほぼ中央部に形成されている。また、固定スクロール730には、凹部734とカバー部材735とによって囲まれた空間と、ハウジング720に形成された連通孔725とを連通させるための連通孔737が形成されている。なお、図23では、固定スクロール730に形成されているボルト孔および後述する連通孔737は省略して表示している。また、固定スクロール730は、金属材料で形成されており、その製造方法としては、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しなどが挙げられる。
可動スクロール740は、円盤状の平板部741と、この平板部741の上面から上方に突出する渦巻き状の可動側ラップ742と、平板部741の下面から下方に突出する円筒状の軸受部743とから構成されている。軸受部743の内側には、シャフト708の偏心部708aが相対回転可能に挿入されている。
平板部741は、固定スクロール730の下面と、偏心部収容孔721の周壁部の上端と間に挟まれている。また、平板部741は、環状溝724内に配置されたオルダムリング750を介して、ハウジング720に支持されている。オルダムリング750は、可動スクロール740の自転運動を阻止するための部材であって、その上下面に突起(図示省略)を有している。この突起が、ハウジング720および可動スクロール740に形成された互いに直交する方向の直線状の溝(図示省略)に係合しており、これにより、オルダムリング750は、ハウジング720および可動スクロール740に対して、それぞれの溝に沿った方向(即ち、直交する2方向)に相対移動可能となっている。そのため、可動スクロール740は、その向き(角度)が一定のまま、ハウジング720に対して水平方向に移動可能となっている。平板部741がオルダムリング750を介してハウジング720に支持されていることと、軸受部743内に偏心部708aが相対回転可能に挿入されていることによって、偏心部708a(シャフト708)が回転すると、可動スクロール740は、自転することなく、シャフト708の回転軸を中心に円を描くように移動(旋回)する。
また、平板部741には、凹部731内の圧縮された冷媒の一部を、ハウジング720の偏心部収容孔721内に導くための小孔(図示省略)が形成されている。そのため、圧縮機701の運転時に、平板部741は、偏心部収容孔721内の高圧冷媒から上向きの力を受けて、平板部741の上面は、固定スクロール730の下面に押し付けられる。これにより、凹部731内の高圧冷媒によって、可動スクロール740が下方に押圧されて、後述する軸方向隙間D3、D4が大きくなるのを防止している。
また、図23に示すように、可動スクロール740の可動側ラップ742は、固定スクロール730の固定側ラップ732とほぼ対称な形状であって、固定側ラップ732と噛み合うように平板部741に配置されており、固定側ラップ732の側面および凹部731の周壁面と、可動側ラップ742の側面との間には、略三日月状の空間が複数個形成される。
図24は、出荷時の圧縮機701を示している。図24(b)に示すように、可動側ラップ742は、可動スクロール740の旋回時に、その側面が、固定側ラップ732の側面および凹部731の周壁面に複数箇所において例えば10〜30μmの微小な隙間d2(以下、この隙間を径方向隙間d2という)を空けて近接した状態で、固定側ラップ732の側面に沿って移動するように形成されている。また、図24(a)に示すように、可動スクロール740の平板部741の上面と、固定側ラップ732の先端面との間、および、固定スクロール730の凹部731の底面と、可動側ラップ742の先端面との間には、例えば10〜30μm程度の微小な隙間D3、D4(以下、この隙間を軸方向隙間D3、D4という)が形成されている。
図24に示すように、本実施形態の可動スクロール740は、金属材料からなる基材745と、基材745の表面を被覆する薄膜状の樹脂層746a〜746dとから構成されている。基材745の外形は、ほぼ可動スクロール740の外形を構成している。基材745は、金属粉の焼結や、鋳造や、削り出しによって製造される。
<樹脂層>
図24(a)に示すように、樹脂層746aは、可動側ラップ742の先端面に形成されている。また、樹脂層746bは、平板部741の上面のうち、凹部731の底面と対向する領域(固定側ラップ732の先端面と対向する領域)に形成されている。また、図24(a)および図24(b)に示すように、樹脂層746c、746dは、それぞれ、可動側ラップ742の外周面と内周面に形成されている。樹脂層746a〜746dの材料および出荷時の膜厚は、上記第1実施形態のピストン40の樹脂層44a、44bと同様である。なお、上記第1実施形態と同じく、出荷時の樹脂層746a〜746dはほとんど膨潤していない。
<圧縮機の動作>
次に、本実施形態の圧縮機701の動作について、図23(a)〜図23(d)を参照して説明する。図23(b)〜図23(d)は、図23(a)の状態から、それぞれ、シャフト708が、90°、180°、270°回転した状態を示している。
吸入管703から吸入路733を介して凹部731に冷媒を供給しつつ、モータ707の駆動によりシャフト708を回転させると、図23(a)〜図23(d)に示すように、偏心部708aに装着された可動スクロール740は、自転することなく旋回する。これに伴って、可動側ラップ742の側面と、固定側ラップ732の側面および凹部731の周壁面とによって形成される複数の略三日月状の空間は、中心に向かって移動しつつ、その容積が小さくなる。これにより、凹部731内で冷媒が圧縮される。
図23(a)において、最も外周側に位置する略三日月状の空間(図中でドットのハッチングで表した空間)に着目して、冷媒が圧縮される工程について以下説明する。図23(a)に示す状態では、この略三日月状空間には、吸入路733から冷媒が供給されている。この状態からシャフト708が回転すると、図23(b)に示すように、その容積が大きくなるため、吸入路733から冷媒が吸い込まれていく。この状態からシャフト708が回転すると、図23(c)および図23(d)に示すように、中心に向かって移動して、吸入路733と連通しなくなると共に、その容積が縮小する。そのため、この空間内において冷媒が圧縮される。その後も、シャフト708の回転に伴って、この空間は中心側に移動して縮小する。そして、シャフト708が2回転した時点では、図23(a)中、格子のハッチングで示した位置まで移動する。さらにシャフト708が回転すると、図23(c)に、格子のハッチングで示すように、この空間は、可動側ラップ742の内周面と、固定側ラップ732の外周面とによって囲まれる空間と合わされると共に、吐出孔736と連通する。これにより、空間内の圧縮された冷媒が吐出孔736から吐出される。
吐出孔736から吐出された冷媒は、固定スクロール730の連通孔737と、ハウジング720の連通孔725とを通過して、ハウジング720の下方の空間に排出された後、最終的に、排出管704から密閉ケーシング702の外へ吐出される。
上述したように、固定側ラップ732の先端面と、可動スクロール740の平板部741の上面との間、および、可動側ラップ742の先端面と、固定スクロール730の凹部731の底面との間には、軸方向隙間D3、D4が形成されている(図24参照)。そのため、圧縮機701の通常運転時には、軸方向隙間D3、D4には、シャフト708の排出孔708cから排出された潤滑油Lが存在する(図示省略)。
また、上述したように、可動側ラップ742の側面と、固定側ラップ732の側面および凹部731の周壁面との間には、複数箇所において、径方向隙間d2が形成されている(図24参照)。そのため、圧縮機701の通常運転時には、径方向隙間d2には、シャフト708の排出孔708cから排出された潤滑油Lが存在する。
[第7実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機では、第1実施形態と同様に、摩擦ロスを低減すると共に樹脂層と基材との間の密着強度を向上させつつ、樹脂層に含まれる層が剥離するのを防止できる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
上述した第1〜第7実施形態では、樹脂層において、各層の硬度が基材から離れるにつれて小さくなる例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されず、図25に示すように、5つの第1層〜第5層が積層された樹脂層844において、基材43から最も離れた第5層の硬度L05が基材43に最も近い第1層の硬度L01より小さく、且つ、隣り合う2つの層の硬度差(ΔL12、ΔL23、ΔL34、ΔL45)が、第1層と第5層との硬度差(ΔL15)より小さくなっていればよい。したがって、例えば、5つの第1層〜第5層の硬度が、基材から離れるにつれて小さくなり、その後、大きくなった後で小さくなってもよい。
上述した第1〜第7実施形態では、樹脂層を構成する全ての層の硬度が、樹脂層に対向する部品の金属材料の硬度よりも低い例について述べたが、基材から最も離れた層の硬度が、上記金属材料の硬度よりも低ければ、他の層の硬度は上記金属材料の硬度よりも高くてもよい。
上述した第1〜第7実施形態では、樹脂層を構成する全ての層の曲げ弾性率が、樹脂層を挟むように設けられた2つの部品のヤング率よりも小さい例について述べたが、樹脂層を構成する複数の層のうち、少なくとも1つの層の曲げ弾性率が、上記2つの部品のヤング率の一方よりも小さければ、他の層の曲げ弾性率は上記2つの部品のヤング率よりも大きくてもよい。
上述した第1実施形態では、樹脂層44a、44bが、それぞれ、基材43の上端面と下端面の全面に形成される例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されず、樹脂層44a、44bが、それぞれ、基材43の上端面と下端面の一部に形成されてもよい。
上述した第2実施形態では、樹脂層244が、フロントヘッド220の下面において、ピストン40の上面が摺動する領域を含んだ一部領域に形成されるとともに、樹脂層245が、リアヘッド250の上面において、ピストン40の下面が摺動する領域を含んだ一部領域に形成される例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されない。樹脂層244が、フロントヘッド220の下面の全面に形成されてもよく、樹脂層245が、リアヘッド250の上面の全面に形成されてもよい。
上述した第1〜第7実施形態では、樹脂層の層数が3又は4である例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されず、樹脂層の層数が5以上であってもよい。
上述した第1実施形態では、樹脂層44a、44bの第1層〜第3層の各厚さを等しくする例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されず、第4層の厚さt2が樹脂層44a、44b全体の厚さT1の50%以下となりさえすれば、第1層〜第3層の各厚さの大きさは特に限定されない。
上述した第1実施形態では、第4層の厚さt2を、第1層〜第3層の各厚さt1よりも小さくする例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されず、第4層の厚さt2が樹脂層44a、44b全体の厚さT1の50%以下となりさえすれば、第4層の厚さt2が、第1層〜第3層の各厚さt1より大きくなってもよく、第1層〜第3層の各厚さt1と等しくてもよい。
上述した第6実施形態では、ローラ641の上端面、下端面、外周面、ベーン642の上端面や下端面の全面に樹脂層を形成する例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されず、第2実施形態と同様の樹脂層244、245(図8、9参照)を、フロントヘッドの下面やリアヘッドの上面の全面又は一部に形成してもよい。また、第3実施形態と同様の樹脂層344(図12〜14参照)を、ローラ641の外周面の全面又は一部に形成してもよい。また、第4実施形態と同様の樹脂層444(図16参照)を、シリンダ630の内周面の全面又は一部に形成してもよい。
上述した第7実施形態では、可動側ラップ(第2ラップ)742の先端面や、平板部741の上面のうち、凹部731の底面と対向する領域(固定側ラップ(第1ラップ)732の先端面と対向する領域)や、可動側ラップ742の外周面と内周面に、樹脂層を形成する例について述べたが、本発明はかかる実施形態に限定されず、上記以外の箇所(具体的には、固定側ラップ732の先端面や、凹部731の底面の可動側ラップ742の先端面に対向した面や、固定側ラップ732の側面や、凹部731の周壁面に、同様の樹脂層を形成してもよい。
第1の発明に係る圧縮機は、圧縮室及び圧縮室に連通したブレード収容部を有するシリンダと、シリンダの軸方向両端に配置される第1端板部材及び第2端板部材と、圧縮室及び前記ブレード収容部の内側に配置されるピストンとを備え、ピストンは、圧縮室に配置された環状のローラと、ローラの外周面から延在し且つブレード収容部に対して進退可能に配置されたブレードとを有し、(1)ピストンの軸方向端面、(2)第1端板部材のピストンの軸方向端面に対向した面、(3)第2端板部材のピストンの軸方向端面に対向した面、(4)ローラの外周面、(5)圧縮室の周壁面、となる部分の少なくとも1つの全面又は一部には、3以上の層が積層された樹脂層が形成されており、前記3以上の層は、配合される樹脂材料の種類が同じで配合比率が異なっており、樹脂層において、基材から最も離れた層の硬度は、基材に最も近い層の硬度より小さいと共に、隣り合う2つの層の硬度の差は、基材から最も離れた層と基材に最も近い層との硬度の差より小さい。
第2の発明に係る圧縮機は、圧縮室及び圧縮室に連通したベーン収容部を有するシリンダと、シリンダの軸方向両端に配置される第1端板部材及び第2端板部材と、圧縮室の内側に配置される環状のローラと、ローラの外周面に押圧される先端を有し且つベーン収容部の内側を進退可能に配置されたベーンとを備え、(1)ローラの軸方向端面、(2)第1端板部材のローラの軸方向端面に対向した面、(3)第2端板部材のローラの軸方向端面に対向した面、(4)ベーンの軸方向端面、(5)ローラの外周面、(6)圧縮室の周壁面、となる部分の少なくとも1つの全面又は一部には、3以上の層が積層された樹脂層が形成されており、前記3以上の層は、配合される樹脂材料の種類が同じで配合比率が異なっており、樹脂層において、基材から最も離れた層の硬度は、基材に最も近い層の硬度より小さいと共に、隣り合う2つの層の硬度の差は、基材から最も離れた層と基材に最も近い層との硬度の差より小さい。
第3の発明に係る圧縮機は、凹部と凹部の底面から突出した渦巻き状の第1ラップを有する第1スクロールと、平板部から突出した渦巻き状の第2ラップを有する第2スクロールとを備え、第1スクロールと第2スクロールとは、凹部の底面と平板部とが対向し、且つ、第1ラップの側面と第2ラップの側面とが対向するように近接しており、(1)第1ラップの先端面、(2)平板部の第1ラップの先端面に対向した面、(3)第2ラップの先端面、(4)凹部の底面の第2ラップの先端面に対向した面、(5)第1ラップの側面、(6)第2ラップの側面、(7)凹部の周壁面、となる部分の少なくとも1つの全面または一部には、3以上の層が積層された樹脂層が形成されており、前記3以上の層は、配合される樹脂材料の種類が同じで配合比率が異なっており、樹脂層において、基材から最も離れた層の硬度は、基材に最も近い層の硬度より小さいと共に、隣り合う2つの層の硬度の差は、基材から最も離れた層と前記基材に最も近い層との硬度の差より小さい。