JP2012131683A - 汚れ防止コート層付き透光性基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた防汚性能を有し、該防汚性能が高温高湿環境下においても劣化しにくい汚れ防止コート層付き透光性基材の提供。
【解決手段】透光性基材と、該透光性基材上に下式(a)で表される化合物およびその部分縮合体から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有するコート液を塗布し、硬化させてなる汚れ防止コート層とを備える汚れ防止コート層付き透光性基材。RO(CFCFO)CF−(Q)(−(CH−SiL3−e…(a)。R:炭素数1〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数2〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基であって、−OCFO−構造を有さず、かつ隣接する酸素原子とともに−OCFO−構造を形成しない基。d:2〜6の整数。L:加水分解性基。e:1〜3の整数。
【選択図】なし

Description

本発明は、汚れ防止コート層付き透光性基材に関する。
透光性基材としてのガラスは、その優れた透明性、硬度、意匠性を利用して、多くの用途で化粧基材、筐体基材として用いられている。具体的には、シャワーブースなどにおけるパーティション、キッチン表面の保護材等が挙げられる。また、建造物や移動車両の採光部材としても用いられている。近年では、構造壁、欄干など、従来は非透光性基材が用いられていた用途でも積極的な採用がなされている。
しかし、ケイ素を主原料とするガラスの表面には水酸基をはじめとする活性基が多数存在していることから有機物や無機塩などの汚染物質が吸着しやすく、曇りや無機塩の析出が発生してガラス元来の透明性が損なわれる問題がある。
従来、ガラス表面への汚染物質の吸着を抑制するために、ガラス表面を含フッ素化合物でコートし、ガラス表面の活性基を減少させるとともに撥水撥油性を付与することが行われている。該含フッ素化合物としては、ケイ素原子に塩素原子、アルコキシ基等の加水分解性基が結合したシリル基(以下、加水分解性シリル基ということがある。)と、含フッ素有機基とを有するフッ素化シランが知られている。該フッ素化シランをガラス表面にコートし、加水分解させるとシラノール基が生じる。このシラノール基がガラス表面の水酸基と脱水縮合反応して強固な化学結合が形成されるとともに、含フッ素有機基が大気側に配列して撥水撥油性を発揮する。また、フッ素化シランが1分子中に加水分解性基を1基以上有する場合、シラノール基同士が縮合することによってオリゴマー(部分縮合体)を生成し、強固な膜を形成する。
前記フッ素化シランとしては、たとえば、加水分解性シリル基のケイ素原子に、ペルフルオロアルキル基を含む含フッ素炭化水素基が結合したものが提案されている(特許文献1〜3参照)。このようなフッ素化シランとして、たとえば下記化合物(1)が挙げられる。
CF(CF(CH−SiCl …(1)。
しかし、このようなフッ素化シランを用いて形成されたコート層は、温度上昇によって性能が低下しやすい問題がある。すなわち、含フッ素炭化水素基部分の結晶性によって分子が配列しているため、その結晶温度を超える温度にさらされる用途においては該配列が崩壊し、撥水撥油性が著しく低下する。
前記の課題を解決するために、結晶性を低減し、運動性の高い構造を有するフッ素化シランとしてペルフルオロポリエーテル基を有するものも提案されている。具体的には、下記化合物(2)〜(5)等が提案されている(特許文献4〜5参照)。各式中のp、q、r、s、t、uはそれぞれ1以上の整数を示す。
CFCFCFO−(CFCFCFO)−CFCF(CHSi(OCH …(2)。
CFCFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)(CHSi(OCH …(3)、
(CHO)Si(CHCFO−(CFCFO)−(CFO)−CF(CHSi(OCH …(4)
(CHO)Si(CHOCHCF(OCFCF(OCFOCFCHO(CHSi(OCH …(5)
特開2002−145645号公報 特開平9−286639号公報 特許第2981043号公報 特開2000−094567号公報 国際公開第2008/038782号
山根正之著、内田老鶴舗編、セラミック基礎講座4、6 化学的耐久性、p.99−110 J.Scheirs著、「Modern Fluoropolymers」、John Wiley & Sons Ltd.,1997年、p.443−444、454−455、463、466−468 C.Tonelli、外2名、「Linear perfluoropolyalkylether difunctional oligomers:chemistry,properties and applications」、Journal of Fluorine Chemistry、第95巻、1999年、p.51−70 P.H.Kasai、「Perfluoropolyethers:Intramolecular disproportionation」、Macromolecules、第25巻、1992年、p.6791
建築材料用ガラスや移動車両用ガラスは、様々な条件下で使用される。そのため、前記コート層を設けた透光性基材をこのような用途に用いる場合、撥水撥油性、油脂汚れの除去性等の防汚性能に優れることはもちろん、該防汚性能が長期間、様々な条件下において持続可能であることが望まれる。
特に重要となるのが、高温高湿環境下での持続性である。たとえば撥水撥油性が低下し、コート層を水分が通過してガラス基材に到達すると、ガラスに含まれるナトリウム等の金属イオン等を溶出させる。これらの金属イオンが溶解した水はアルカリ性であるため、前記シラノール基の縮合で生じたシロキサン結合を加水分解させてしまう。該加水分解が進むと、コート層の剥落が生じ、防汚性能が低下する。特に長時間、中〜高温の水にさらされる用途においては、該反応は加速度的に進行する(非特許文献1参照)。
しかしながら、前記化合物(2)〜(5)を用いて形成されたコート層では、以下の問題がある。
化合物(2)を用いて形成されたコート層は、化合物(1)を用いた場合に比べて撥水撥油性が低く、その持続性も充分なレベルに達しているとはいえない。pの値を大きくすれば撥水撥油性は向上するが、融点が高くなる、有機溶媒に溶けにくくなる等により、コート液の調製が難しくなり、ガラス表面への密着性も低下してしまう。さらに、化合物(2)のペルフルオロポリエーテル基は、2,2,3,3−テトラフルオロオキセタンの開環重合を経て合成される(非特許文献2のp.443−444参照)が、該開環重合は、ルイス酸触媒の存在下、Fイオンで行っている。そのため、化合物(2)の分子量の制御が困難である、分子量分布が大きくなる等の問題もある。
化合物(3)は、ペルフルオロポリエーテル基の側鎖に−CFが存在することから分子の運動性が制限されており、ガラス表面の被覆率が低い問題がある。そのため形成されるコート層は、油脂汚れの除去性が不充分である。
つまり、ガラス表面に対する被覆性は、フッ素化シラン分子の運動性によって発現し、該運動性は、炭素原子−炭素原子間を分断する酸素原子の存在によってもたらされるが、化合物(3)においては、酸素原子の近傍に−CFが存在し、−CFの立体障害によってペルフルオロポリエーテル基の運動性が制限されている。たとえば、側鎖に−CFが存在するペルフルオロポリエーテル基を有する化合物と、側鎖に−CFが存在しないペルフルオロポリエーテル基を有する化合物とでは、絶対粘度、粘度の温度依存性が大きく異なる(非特許文献2のp.454−455参照)。
化合物(4)〜(5)は分子の両末端に加水分解性基を有するため、両末端がガラス表面に固定される。そのため、分子の運動性が制限され、しかもペルフルオロポリエーテル基がガラス表面の近くに、かつ該表面に沿って存在している。そのため、化合物(4)または(5)を用いて形成されたコート層は、撥水撥油性、油脂汚れの除去性が充分に発揮されない。
また、化合物(4)〜(5)においては、その合成上、ペルフルオロポリエーテル基中に、−OCFCF−構造の数とほぼ同等の−OCFO−構造が含まれる。−OCFO−構造を有するペルフルオロポリエーテル基は、酸、塩基触媒の存在下、特に高温条件下にて極めて容易に分解が進行することが報告されている(非特許文献2のp.463、466−468、非特許文献3、4参照)。化合物(4)または(5)を用いて形成されたコート層は、該条件下で急激に性能が劣化する問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、優れた防汚性能を有し、該防汚性能が高温高湿環境下においても劣化しにくい汚れ防止コート層付き透光性基材を提供する。
本発明は、下記[1]〜[11]の発明である。
[1]透光性基材と、該透光性基材上に下式(a)で表される化合物およびその部分縮合体から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有するコート液を塗布し、硬化させてなる汚れ防止コート層とを備える汚れ防止コート層付き透光性基材。
O(CFCFO)CF−(Q)(−(CH−SiL3−e …(a)
ただし、式(a)中の記号は以下の意味を示す。
:炭素数1〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数2〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基であって、−OCFO−構造を有さず、かつ隣接する酸素原子とともに−OCFO−構造を形成しない基。
a:1〜200の整数。
b:0または1。
Q:bが0である場合には存在せず、bが1である場合には2または3価の連結基。
c:Qが存在しないまたは2価の連結基である場合には1であり、Qが3価の連結基である場合には2。
d:2〜6の整数。
L:加水分解性基。
R:水素原子または1価炭化水素基。
e:1〜3の整数。
[2]前記化合物(A)が、下式(a1)で表される化合物およびその部分縮合体から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
O(CFCFO)CF−X …(a1)
ただし、式(a1)中の記号は以下の意味を示す。
およびa:前記と同じ意味を示す。
X:下式(X1)〜(X7)で表される基からなる群から選ばれるいずれかの基(ただし、L、Rおよびeは前記と同じ意味を示す。)。
−C(O)NHCHCHCHSiL3−e …(X1)、
−CHOC(O)NHCHCHCHSiL3−e …(X2)、
−CHOCHCHCHSiL3−e …(X3)、
−CFOCHCHCHSiL3−e …(X4)、
−CHCHSiL3−e …(X5)、
−CHCHCHSiL3−e …(X6)、
−C(O)N(CHCHCHSiL3−e …(X7)。
[3]前記汚れ防止コート層の厚みが少なくとも8オングストロームである、[1]または[2]に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[4]前記コート液が、さらに、前記化合物(A)以外の加水分解性シリル基有するシラン化合物を含有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[5]前記コート液が、さらに、フッ素化アルカン、フルオロアルキルエーテル、ならびに水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[6]前記コート液が、さらに、水と、酸または塩基とを含有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[7]前記コート液が、さらに、金属酸化物粒子を含有する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[8]前記コート液の塗布が、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、グラビアコート法または蒸着法により行われる、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[9]前記透光性基材がガラス基材である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[10]前記透光性基材と前記汚れ防止コート層との間に、それらの接着性を向上させるための無機コート層が設けられている、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
[11]建築材料用または移動車両用である、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
本発明によれば、優れた防汚性能を有し、該防汚性能が高温高湿環境下においても劣化しにくい汚れ防止コート層付き透光性基材を提供できる。
本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材は、透光性基材と、該透光性基材上に設けられた汚れ防止コート層とを備える。
なお、本明細書においては、式(a)で表される化合物を化合物(a)と記し、他の式で表される化合物も同様に記す。また、式(X)で表される基を基(X)と記し、他の式で表される基も同様に記す。
<透光性基材>
本明細書において、「透光性基材」とは、透光性を有する無機または有機物品を意味し、「透光性を有する」とは、JIS R 3106に準じた垂直入射型可視光透過率が25%以上であることを意味する。
透光性基材としては、ガラス基材、透明石材基材、透明樹脂基材等が挙げられる。加工性、平坦性の点で、ガラス基材が好ましい。ガラス基材としては、ソーダ石灰ガラス、ほう珪酸ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、石英ガラス等が挙げられる。コストの点からは、ソーダ石灰ガラスが好ましく、化学的安定性の点からは、ほう珪酸ガラスが好ましい。透明樹脂基材としては、ポリカーボネート等が挙げられる。
透光性基材の形状は特に限定されず、汚れ防止コート層付き透光性基材の用途に応じて適宜設定でき、たとえば板状、レンズ状、半円状等が挙げられる。
<汚れ防止コート層>
汚れ防止コート層(以下、単にコート層ということがある。)は、透光性基材上に、化合物(a)およびその部分縮合体から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有するコート液を塗布し、硬化させてなるものである。
<コート液>
コート液は化合物(A)を含み、必要に応じて、加水分解性シリル基有するシラン化合物(B)、添加剤、および有機溶剤を含む。
コート液に含まれる化合物(A)は、化合物(a)のみであっても、その部分縮合体のみであっても、それらの混合物であってもよい。
本発明においては、塗布前のコート液に含まれる化合物(A)は、塗布膜の均一性の点で、化合物(a)のみであることが好ましい。
(化合物(a))
化合物(a)は下式(a)で表される化合物である。
O(CFCFO)CF−(Q)(−(CH−SiL3−e …(a)
は、炭素数1〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数2〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基である。ペルフルオロ1価飽和炭化水素基の炭素数は1〜16が好ましく、1〜4が特に好ましい。
なお、ペルフルオロ1価飽和炭化水素基とは、1価飽和炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の全てがフッ素原子に置換した基をいう。1価飽和炭化水素基とは、炭素原子と水素原子からなる基であり、炭素原子−炭素不飽和結合を持たない基をいう。
ペルフルオロ1価飽和炭化水素基は、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよく、環状構造であってもよく、直鎖構造および環状構造を部分的に有する構造であってもよく、分岐構造および環状構造を部分的に有する構造であってもよいが、直鎖構造のペルフルオロ1価飽和炭化水素基、つまり直鎖構造のペルフルオロアルキル基であるのが特に好ましい。
ペルフルオロ1価飽和炭化水素基の具体例としては、CF(CF−、CyF−(CF−、AdF−(CF−等が挙げられる。
ここで、xは0〜19の整数を示し、0〜15の整数が好ましく、0〜6の整数が特に好ましい。CyFはペルフルオロシクロヘキシル基を示し、yは0〜14の整数を示す。AdFはペルフルオロアダマンタンチル基を示し、ペルフルオロ(1−アダマンタンチル)基が好ましい。zは0〜10の整数を示す。
なかでも、CF(CF−が好ましく、CF−、CFCF−、CF(CF−またはCF(CF−がより好ましい。これらのうち、撥水撥油性の点からは、CF(CF−が特に好ましく、化合物(a)の製造工程の一つである液相直接フッ素化における収率の点からは、CF−またはCFCF−が特に好ましい。
において、エーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロ1価飽和炭化水素基は、−OCFO−構造を有さず、かつ隣接する酸素原子とともに−OCFO−構造を形成しない基である。つまり、RO中に−OCFO−構造は存在せず、したがって、化合物(a)中にも−OCFO−構造は存在しない。
−OCFO−構造は、化学的安定性が低く、分解しやすいため、有さない必要がある。
−OCFO−構造を有さないとは、通常の分析手法(19F−NMR等)では該構造の存在が検出できないことを意味する。−OCFO−構造の存在は、19F−NMR(溶媒:CDCl)においてδが−50.0〜−56.0ppmのピークの存在により確認できる(ただし、他の構造がこのピークと重複することもある)。また、−OCFO−構造を有する化合物は、分解促進触媒の存在下で容易に分解することより、その存在を確認することもできる。
なお、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロ1価飽和炭化水素基とは、前記のペルフルオロ1価飽和炭化水素基のうち炭素数が2以上であるものの炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基をいう。
において、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロ1価飽和炭化水素基が有するエーテル性酸素原子の数は、1〜7が好ましく、1〜4が特に好ましい。
エーテル性酸素原子が挿入される位置は、炭素原子−炭素原子の単結合間である。ただし挿入されるエーテル性酸素原子が複数の場合、該R中には−OCFO−構造は存在しない。つまり、複数のエーテル性酸素原子は、酸素原子の間に存在する炭素数が2以上となる位置に挿入される。また、エーテル性酸素原子は、Rの末端の炭素原子−炭素原子間には挿入されない。つまり、Rと該Rに隣接する酸素原子とが−OCFO−構造を形成しない位置に挿入される。
としては、上記の中でも、炭素数1〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基が好ましく、直鎖構造のペルフルオロアルキル基がより好ましい。その炭素数は1〜16が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜4が特に好ましい。
aは−(CFCFO)−単位の数を示し、1〜200の整数であり、2〜100が好ましく、3〜50がより好ましく、5〜25が特に好ましい。
bは0または1である。
Qは、bが0である場合は存在しない。つまりbが0である場合には、RO(CFCFO)CF−と−(CH−SiL3−eとが直接結合する。
bが1である場合には、Qは2または3価の連結基である。連結基とは、該基を介して原子または原子団を結びつける基である。
Qにおける連結基は、炭素原子を1以上有する有機連結基であることが好ましく、−(CH−に連結する末端に窒素原子またはエーテル性酸素原子を有する有機連結基であることが特に好ましい。
2価の連結基であるQ(以下、Qともいう。)としては、−CONH−、−CHOCONH−、−CHO−、−CFO−が好ましい。
3価の連結基であるQ(以下、Qともいう。)としては、−C(O)N=(ただし、Nからのびる=は二重結合ではなく、2つの単結合であることを意味する。)が好ましい。
cは、Qが存在しないまたはQが2価の連結基である場合には1であり、Qが3価の連結基である場合には2である。つまりbが0である場合にはcは1であり、bが1である場合にはcは1または2である。
bが0であり、cが1である化合物(a)は、下記化合物(a−1)である。bが1であり、cが1であり、Qが2価の連結基である化合物(a)は下記化合物(a−2)である(ただし、Qは2価の連結基を示す。)。bが1で、cが2であり、Qが3価の連結基である化合物(a)は下記化合物(a−3)である(ただし、Qは3価の連結基を示す。)。
O(CFCFO)CF−(CH−SiL3−e …(a−1)。
O(CFCFO)CF−Q−(CH−SiL3−e …(a−2)。
O(CFCFO)CF−Q(−(CH−SiL3−e …(a−3)。
dは、2〜6の整数であり、3〜6の整数が好ましく、3が特に好ましい。dの数が上記範囲の下限値以上であると、化合物(a)の分解温度が低くなり、dの数が上記範囲の上限値以下であると、耐候性が良好になる。
eは、1〜3の整数であり、2または3が好ましく、3が特に好ましい。分子中にLが複数存在することにより、化合物(a)が透光性基材の表面と強固に結合できる。
Lは、加水分解性基を示す。加水分解性基は、加水分解反応により水酸基となる基である。すなわち、化合物(a)の末端は、加水分解反応によりSi−OH基(シラノール基)となる。シラノール基は、さらに分子間で、または透光性基材表面のOH基と反応して、Si−O−Si結合を形成する。
Lとしては、モノオールから水酸基の水素原子を除いた有機基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアネート基、およびアミノ基等が挙げられる。モノオールから水酸基の水素原子を除いた有機基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
Lとしては、工業的な製造が容易な点から、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子またはイソシアネート基が好ましい。これらのうち、三次元的な縮合が進行し、機械強度に優れる点では、イソシアネート基が好ましい。塗布時のアウトガスの問題および保存安定性の点では、炭素数が1〜4のアルコキシ基またはイソシアネート基が好ましく、炭素数が1〜4のアルコキシ基がより好ましい。なかでも、長期の保存安定性が必要な場合はエトキシ基が特に好ましく、塗布時のエージング時間を短時間とする場合はメトキシ基が特に好ましい。
Rは、水素原子または1価炭化水素基であり、1価飽和炭化水素基が好ましい。1価飽和炭化水素基の炭素数は1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
1価炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、またはアリール基が挙げられ、合成の容易さの点から、アルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
化合物(a)において、−SiL3−eとして好ましいものとしては、−Si(OCH、−Si(OCHCH、−Si(NCO)、−SiCl、−Si(NHCl3−g等が挙げられる。ここで、gは1〜3の整数を示す。
化合物(a)としては、下記化合物(a1)が好ましい。
O(CFCFO)CF−X …(a1)
ただし、式(a1)中の記号は以下の意味を示す。
およびa:前記と同じ意味を示す。
X:下式(X1)〜(X7)で表される基からなる群から選ばれるいずれかの基(ただし、L、Rおよびeは前記と同じ意味を示す。)。
−C(O)NHCHCHCHSiL3−e …(X1)、
−CHOC(O)NHCHCHCHSiL3−e …(X2)、
−CHOCHCHCHSiL3−e …(X3)、
−CFOCHCHCHSiL3−e …(X4)、
−CHCHSiL3−e …(X5)、
−CHCHCHSiL3−e …(X6)、
−C(O)N(CHCHCHSiL3−e …(X7)。
化合物(a1)におけるRおよびaの好ましい態様は、化合物(a)におけるRおよびaの好ましい態様と同様である。
また、式(X1)〜(X7)中のL、Rおよびeの好ましい態様は、化合物(a)におけるL、Rおよびeの好ましい態様と同様である。
Xとしては、基(X1)、基(X3)、基(X4)または基(X5)が好ましく、基(X3)、基(X4)または基(X5)が特に好ましい。
Xが基(X1)である場合には、製造効率が良く化合物(a)の耐アルカリ性、耐酸性に優れる点で好ましい。Xが基(X3)または基(X4)である場合には、撥水性に優れる(水転落角が小さい)点で好ましく、Xが基(X4)である場合には、さらに化学的安定性に優れる点で好ましい。Xが基(X5)である場合には、透光性基材への付着性に優れる点で好ましい。
化合物(a1)としては、下記化合物(a11)〜(a17)が好ましい。
O(CFCFO)CFC(O)NHCHCHCHSiL3−e …(a11)、
O(CFCFO)CFCHOC(O)NHCHCHCHSiL3−e …(a12)、
O(CFCFO)CFCHOCHCHCHSiL3−e …(a13)、
O(CFCFO)CFCFOCHCHCHSiL3−e …(a14)、
O(CFCFO)CFCHCHSiL3−e …(a15)、
O(CFCFO)CFCHCHCHSiL3−e …(a16)、
O(CFCFO)CFC(O)N(CHCHCHSiL3−e)2 …(a17)。
さらに、化合物(a1)としては、式(a11)〜(a17)中の−SiL3−eがそれぞれ−SiLであるものが好ましい。なかでもLが炭素数1〜4のアルコキシ基であるものが好ましく、Lがメトキシ基またはイソシアネート基であるものが特に好ましい。
これらの化合物およびその製造方法は国際公開第2009/008380号に記載されている。
化合物(a1)の具体例としては、下記の化合物、および該化合物の末端の−Si(OCH基を−Si(NCO)にした化合物が挙げられる。
CFO(CFCFO)CF−C(O)NHCHCHCHSi(OCH
CFCFO(CFCFO)CF−C(O)NHCHCHCHSi(OCH
CFCFCFO(CFCFO)CF−C(O)NHCHCHCHSi(OCH
CFO(CFCFO)CF−CHOC(O)NHCHCHCHSi(OCH
CFO(CFCFO)CF−CHOCHCHCHSi(OCH
CFO(CFCFO)CF−CFOCHCHCHSi(OCH
CFO(CFCFO)CF−CHCHSi(OCH
CFO(CFCFO)CF−CHCHCHSi(OCH
CFO(CFCFO)CF−C(O)N(CHCHCHSi(OCH
化合物(a)は、RO(CFCFO)CF−に対応する炭素骨格を有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等から、国際公開第02/004397号、国際公開第2009/008380号等に記載の方法と同様の方法によって製造できる。
原料となるポリエチレングリコールは、種々の構造、分子量のものが市販されており、安価にかつ容易に入手できる。また、ROHに相当する炭化水素骨格を有するアルコールにエチレンオキシドを開環重合させることによって容易に合成できる。同じ開環重合であっても、ポリエチレングリコールは、前述の化合物(2)とは異なり、分子量の制御が容易である。
化合物(a)は、1種の化合物であってもよく、2種以上の化合物の混合物であってもよい。該混合物としては、Rまたはaが異なる2種以上の化合物を含む混合物が挙げられる。該混合物におけるaの平均値は、1〜200の範囲内であり、好ましい範囲は前記aの好ましい範囲と同様であり、5〜20が特に好ましい。
化合物(a)の分子量は、800〜5,000が好ましく、1,000〜3,000が特に好ましい。化合物(a)が2種以上の化合物の混合物である場合、化合物(a)の分子量としては数平均分子量(Mn)が用いられる。該Mnは、800〜4,000が好ましく、1,000〜3,000が特に好ましい。また、化合物(a)が2種以上の化合物の混合物である場合の分子量分布(Mw/Mn)は、1.05〜1.3が好ましく、1.05〜1.15が特に好ましい。Mwは重量平均分子量を示す。化合物(a)の分子量および分子量分布が該範囲にあれば、化合物(a)の粘度が低く、蒸発成分が少なく、溶媒に溶解した際の均一性に優れる。
化合物(a)の数平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定でき、測定条件は、後述する実施例中に記載した条件とする。
化合物(a)は、−50℃以上の温度条件下では液状であることが好ましい。言い換えれば、化合物(a)の融点が−50℃以下であることが好ましい。そのような化合物(a)であれば、本発明においては、コート液を化合物(a)のみから構成することができる。
化合物(a)は、ペルフルオロポリエーテル基として運動性が高いRO(CFCFO)CF−を有するため、撥水撥油性に優れ、透光性基材表面の被覆率が高く、高温高湿環境耐性に優れたコート層を形成できる。また、−(OCFO)−構造を持たないため、高温高湿条件下において、酸またはアルカリが存在していても、得られるコート層の性能が劣化しにくい。
化合物(a)は、−SiL3−eと、RO(CFCFO)CF−とが直接結合することなく、−(CH−で表される基、または、−Q−(CH−で表される基と隔てられて連結する構造を有する。該構造を有することにより化合物(a)の熱分解温度が高くなり、得られるコート層の耐熱性が向上する利点がある。特に−SiL3−eのケイ素原子に−(CH−で表される2価炭化水素基が結合していることにより、コート層の耐候性を向上させることができ、特にdが3〜6、とりわけ3である場合に、耐候性が向上する利点がある。
化合物(a)は、−(CFCFO)−単位の数aが小さい場合でも、撥水撥油性に優れたコート層を形成できる。そのため、コート液の調製に非フッ素系溶媒を用いる場合、化合物(a)として、非フッ素系溶媒に溶けやすい−(CFCFO)−単位の数が少ないもの(たとえばaが1〜20)を用いることで、高濃度溶液の調製が容易となる。
化合物(a)を用いて形成されるコート層は、透光性基材の表面への密着性が高く、耐摩耗性にも優れている。
さらに、−(CFCFO)−単位を有する化合物(a)は、従来のフッ素シラン化合物に比べ、製造が容易であり、かつ分子量の制御が容易である。
(化合物(a)の部分縮合体)
化合物(a)の部分縮合体は、化合物(a)が複数のLを有する場合に、一部のLが加水分解により解離してOHとなり、これによって形成されたシラノール基が、他の化合物(a)分子のシラノール基と脱水縮合反応して形成されるオリゴマーである。該部分縮合体中には、少なくとも1つの加水分解性基Lまたはその加水分解により生じたOHが存在している。
化合物(a)の部分縮合体は、水および触媒の存在下、化合物(a)の加水分解性基の一部を加水分解処理することにより得られる。
加水分解処理に用いる触媒としては、酸触媒でも塩基触媒でもよく、また、無機触媒でも有機触媒でもよい。無機酸触媒としては、塩酸、硝酸等が挙げられる。有機酸触媒としては、カルボン酸基を有する化合物、スルホン酸基を有する化合物等が挙げられ、具体例としては、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。無機塩基触媒としては、アンモニア水溶液等が挙げられる。有機塩基触媒としては、フェニルアミン等が挙げられる。
膜厚分布制御のしやすい直線性架橋の観点では酸触媒が好ましく、機械強度に優れた三次元架橋の観点では塩基触媒が好ましい。塗膜中に残存を防止し長期の耐久性が発現させる点からは、塩酸、硝酸等の揮発性の高い無機触媒が好ましく、触媒効果の点からは有機触媒が望ましい。
水は、加水分解性基に対し、モル換算で、1〜3倍当量添加することが好ましい。上記範囲の下限値以上であると、加水分解が充分に進行する。上記範囲の上限値以下であると、化合物(a)および生じた部分縮合体と水とが相分離しにくくなる。
加水分解処理は、有機溶剤中にて行うことが好ましい。該有機溶剤としては、メタノール等のアルコール類が好ましい。
(加水分解性シリル基有するシラン化合物(B))
コート液は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(A)(化合物(a)、その部分縮合体)以外の他の成分を含有してもよい。
たとえば、コート液は、化合物(A)以外の加水分解性シリル基有するシラン化合物(B)(以下、化合物(B)ともいう。)を含有してもよい。該シラン化合物を配合することにより、コート層と透光性基材との密着性を向上させ得る。
加水分解性シリル基は、ケイ素原子に少なくとも1つの加水分解性基が結合したシリル基であり、加水分解性基としては、前記Lと同様のものが挙げられる。化合物(B)が有する加水分解性基の数は、1個以上であり、2〜4個が好ましい。
加水分解性シリル基の構造は、化合物(A)が有する加水分解性シリル基の構造と同一であっても異なっていてもよい。化合物(B)が有する加水分解性シリル基は、前記の式−SiL3−eにおけるLおよびRが化合物(A)におけるLおよびRと同一であり、かつeが同一または異なる基であることが好ましい。
化合物(B)としては、フッ素原子を含有する含フッ素シラン(B1)、フッ素原子を含有しない非フッ素含有シラン(B2)が挙げられる。
(含フッ素シラン(B1))
含フッ素シラン(B1)(以下、化合物(B1)ともいう。)が有する含フッ素有機基としては、炭素数1〜20のペルフルオロn価飽和炭化水素基、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数2〜20のペルフルオロn価飽和炭化水素基等が挙げられる。nは1〜4の整数であり、1または2が好ましく、1が特に好ましい。nが1である場合、ペルフルオロn価飽和炭化水素基としては前記Rで挙げたペルフルオロ1価飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。nが2〜4である場合、ペルフルオロn価飽和炭化水素基としては、前記Rで挙げたペルフルオロ1価飽和炭化水素基からフッ素原子を1〜3個除いたものが挙げられる。
化合物(B1)が有する加水分解性シリル基としては、前記式−SiL3−eで表される基が好ましい。
化合物(B1)は、化学的安定性に優れる点から、−OCFO−構造を有さないことが好ましい。
化合物(B1)としては、下記化合物(B11)〜(B13)等が好ましい。
F1−X11 …(B11)
12−CFO(CFCFO)CF−X12 …(B12)
[RF3O(CFCFO)−]Y[−O(CFCFO)CF−X13 …(B13)
11〜X13は、それぞれ独立に、前記基(X1)〜(X7)からなる群から選ばれるいずれかの基を示す。X11〜X13の好ましい態様は、前記式(a1)中のXで説明したものと同様である。
F1は炭素数1〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数2〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基であって−OCFO−構造を有さない基である。RF1としては、前記Rと同様のものが挙げられる。
hは、−(CFCFO)−単位の数を示し、1〜200の整数であり、2〜100が好ましく、3〜50がより好ましく、5〜25がとりわけ好ましい。
F3は、炭素数1〜20の1価飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された1価飽和炭化水素基であって、−OCFO−構造を有さず、かつ隣接する酸素原子とともに−OCFO−構造を形成しない基を示す。RF1としては、前記Rと同様のものが挙げられる。
Yは、(j+k)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロ化飽和炭化水素基であって、−OCFO−構造を有さず、かつ隣接する酸素原子とともに−OCFO−構造を形成しない基を示す。
jは、2以上の整数であり、kは、0以上の整数であり、かつj+kは3以上の整数である。
v、wはそれぞれ独立に、−(CFCFO)−単位の数を示し、3〜200の整数であり、3〜100の整数が好ましく、3〜70の整数がより好ましく、5〜50の整数が特に好ましい。
化合物(B11)としては、下記化合物(B11−1)〜(B11−2)が好ましい。
13CHCHSi(SiL3−e …(B11−1)
17CHCHSi(SiL3−e …(B11−2)
さらに、化合物(B11−1)〜(B11−2)は、−SiL3−e部分が−SiLである化合物が好ましく、Lが炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物がより好ましく、Lがメトキシ基またはエトキシ基である化合物が特に好ましい。
化合物(B12)としては、下記化合物(B12−1)〜(B12−7)が好ましい。
3−eSiCHCHCHNHC(O)−CFO(CFCFO)CF−C(O)NHCHCHCHSiL3−e …(B1−1)、
3−eSiCHCHCHNHC(O)OCH−CFO(CFCFO)CF−CHOC(O)NHCHCHCHSiL3−e …(B1−2)、
3−eSiCHCHCHOCH−CFO(CFCFO)CF−CHOCHCHCHSiL3−e …(B1−3)、
3−eSiCHCHCHOCF−CFO(CFCFO)CF−CFOCHCHCHSiL3−e …(B1−4)、
3−eSiCHCH−CFO(CFCFO)CF−CHCHSiL3−e …(B1−5)、
3−eSiCHCHCH−CFO(CFCFO)CF−CHCHCHSiL3−e …(B1−6)、
(R3−eSiCHCHCHNC(O)−CFO(CFCFO)CF−C(O)N(CHCHCHSiL3−e …(B1−7)。
さらに、化合物(B12−1)〜(B12−7)は、−SiL3−e部分が−SiLである化合物が好ましく、Lが炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物が特に好ましく、Lがメトキシ基またはエトキシ基である化合物がとりわけ好ましい。
化合物(B12)は、国際公開第2004/035656号等に記載の方法にならって、中間化合物を製造し、前記化合物(a)の製造方法と同様の方法によって得ることができる。
化合物(B13)は、Yにj個の−O(CFCFO)CF−X13およびk個のRF3O(CFCFO)−が結合した化合物であり、Yは(j+k)価の基である。(j+k)は3以上の整数であり、3〜20の整数が好ましく、3〜10の整数がより好ましく、合成の容易さの点から、3または4が特に好ましい。
jは、2以上の整数であり、3〜20の整数が好ましく、3〜10の整数がより好ましく、3または4が特に好ましい。
kは、0以上の整数であり、0〜17の整数が好ましく、0〜7の整数がより好ましく、0(すなわち基RF3O(CFCFO)−は存在しない。)または1が特に好ましい。
jが2以上である場合の基−O(CFCFO)CF−X13は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
kが2以上である場合の基RF3O(CFCFO)−は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Yは、(j+k)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロ化飽和炭化水素基であって、−OCFO−構造を有さず、かつ隣接する酸素原子とともに−OCFO−構造を形成しない基を示す。
炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロ化飽和炭化水素基において、エーテル性酸素原子が挿入される位置は、炭素原子−炭素原子の単結合間である。ただし挿入されるエーテル性酸素原子が複数の場合、該Y中には−OCFO−構造は存在しない。つまり、複数のエーテル性酸素原子は、酸素原子の間に存在する炭素数が2以上となる位置に挿入される。また、エーテル性酸素原子は、Yの末端の炭素原子−炭素原子間には挿入されない。つまり、Yと該Yに隣接する酸素原子(RF3O(CFCFO)−の末端の酸素原子および−O(CFCFO)CF−X13の末端の酸素原子)とが−OCFO−構造を形成しない位置に挿入される。
Yの炭素数は、1〜50が好ましく、1〜20がより好ましく、3〜5が特に好ましい。Yがエーテル性酸素原子を有する場合、該エーテル性酸素原子の数は、1以上であり、1〜3が好ましい。該エーテル性酸素原子は、炭素原子−炭素原子間に存在することから、Yの末端部分にはエーテル性酸素原子は存在しない。また、Yのエーテル性酸素原子は、Yの末端の炭素原子には結合しない。
Yとしては、エーテル性酸素原子を有さない(j+k)価のペルフルオロ化飽和炭化水素基が好ましく、3価または4価の該基が好ましい。
3価のYとしては、ペルフルオロアルカン−トリイル基が好ましい。該基の炭素数は1〜20が好ましく、3〜5が特に好ましい。
4価のYとしては、ペルフルオロアルカン−テトライル基が好ましい。該基の炭素数は1〜20が好ましく、3〜5が特に好ましい。
さらに、化合物(B13)は、kが0でありYが3価の基である化合物(B13−1)、kが1でありYが3価の基である場合の化合物(B13−2)、kが0でありYが4価の基である場合の化合物(B13−3)、kが1でありYが4価の基である場合の化合物(B13−4)が好ましい。
[−O(CFCFO)CF−X13 …(B13−1)。
[RF3O(CFCFO)−]Y[−O(CFCFO)CF−X13 …(B13−2)。
[−O(CFCFO)CF−X13 …(B13−3)。
[RF3O(CFCFO)−]Y[−O(CFCFO)CF−X13 …(B13−4)。
式中、Yはペルフルオロアルカン−トリイル基を示し、Yはペルフルオロアルカン−テトライル基を示す。w、v、RF3およびX13は、前記と同じ意味を示し、好ましい態様も同じである。
化合物(B13)の具体例としては、国際公開第2009/008380号に詳細な記載がある。また、化合物(B13)は、国際公開第2005/068534号等に記載の方法にならって、下記の化合物を製造し、該化合物から、前記化合物(a)の製造方法と同様の方法によって得ることができる。
化合物(B1)としては、化合物(A)と同じ式−SiL3−eで表わされる基を有する化合物を用いるのが好ましい。化合物(A)が前記基(X1)〜(X7)からなる群から選ばれるいずれかの基を有する化合物である場合には、該基と同じ基を有する化合物(B1)を用いるのが好ましく、同じ基(X1)〜(X6)を有する化合物(B11)を用いるのが好ましい。
(非フッ素含有シラン(B2))
非フッ素含有シラン(B2)(以下、化合物(B2)という。)は、加水分解性シリル基を有しかつフッ素原子を持たない化合物である。
化合物(B2)としては、ケイ素原子に加水分解性基が2つ以上結合した構造を有する化合物が好ましい。
加水分解性基としては、加水分解性基としては、前記Lと同様のものが挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基、塩素原子、イソシアネート基等が好ましい。三次元的な縮合が進行し、機械強度に優れる点ではイソシアネート基が好ましい。反応制御がしやすい点ではアルコキシ基が好ましい。
化合物(B2)が有する加水分解性基は、化合物(A)が有する加水分解性基Lと同じであることが好ましい。
化合物(B2)中の加水分解性基の数は、架橋反応が可能である点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4が特に好ましい。
化合物(B2)としては、SiL4−s(ただし、sは1〜4の整数を示し、2〜4が好ましく、4が好ましい。LおよびRは前記と同じ意味を示す。)で表される化合物、または該化合物の部分加水分解縮合物が好ましい。SiL4−sで表される化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソシアネートシラン、テトラクロロシラン、メチルシリケート、エチルシリケート等が好ましい。
化合物(B)は、1種のみであっても2種以上であってもよい。また、化合物(B1)であっても化合物(B2)であってもそれらの混合物であってもよい。
化合物(B)として1種を用いる場合には、化合物(B1)からなるのが好ましく、2種以上用いる場合には、化合物(B1)を必須とするのが好ましい。
化合物(B1)の割合は、化合物(A)の総質量に対して、0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜25質量%がより好ましい。
化合物(B2)は、化合物(A)および/または化合物(B1)の透光性基材への高密着化、化合物同士の架橋を促進する。そのため、化合物(B1)と化合物(B2)とを併用するのが好ましい。
化合物(B1)と化合物(B2)とを併用する場合、化合物(B2)の割合は、化合物(A)と化合物(B1)の合計量に対し、0.1〜10倍質量が好ましく、0.1〜4倍質量がより好ましく、2〜4倍質量が特に好ましい。該量範囲にすることにより、塗膜の高密着化、高架橋化の効果が充分に発揮され、かつ、塗膜の耐アルカリ性も向上する利点がある。
化合物(B)は、化合物(A)とは別の化合物として含まれていてもよく、化合物(A)との部分縮合体として含まれていてもよく、両方が含まれていてもよく、両方が含まれているのが好ましい。
化合物(A)と化合物(B)との部分縮合体は、有機溶媒中にて、水および触媒の存在下、化合物(A)と化合物(B)の加水分解性基の一部を加水分解処理することにより得られる。
化合物(B)が局所的に重合体を形成しないよう、化合物(A)と化合物(B)の加水分解性基の種類は同一にすることが好ましい。
なお、加水分解に用いる触媒や溶媒についての好ましい条件は、化合物(a)の部分縮合体の説明で挙げた好ましい条件と同様である。
(添加剤)
コート液は、さらに、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、目的に応じて公知の添加剤の中から適宜選択できる。
たとえばコート層の耐久性、機能の持続性等を高める目的で添加される添加剤として、シリカゾル、金属酸化物粒子、各種樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等。)等が挙げられる。金属酸化物粒子としては、酸化アルミニウム粒子、酸化マグネシウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子等が挙げられる。
塗膜形成の作業性を高める目的で添加される添加剤としては、界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の添加量は、コート液の総質量に対して0.01〜5質量%が好ましい。
上記の中でも、コート層の耐久性、機能の持続性等を高める目的で添加される添加剤を含有することが好ましく、屈折率調整、硬度向上の点で、金属酸化物粒子を含有することが特に好ましい。金属酸化物粒子の添加量は、コート液の総質量に対して1〜50質量%が好ましい。
コート液は、さらに、水と、酸または塩基とを含有してもよい。酸または塩基は加水分解反応、脱水縮合反応の触媒として作用し、シラノール基の生成、部分縮合体の形成、透光性基材表面への固着が促進される。
酸、塩基としては、それぞれ、前記化合物(a)の部分縮合体の説明で、加水分解処理に用いる触媒として挙げた酸触媒、塩基触媒と同様のものが挙げられる。
添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(有機溶剤)
コート液は、さらに、必要に応じて、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を配合することで、コート液の形態、粘度、表面張力等を調整でき、塗布方法に適した液物性に制御できる。
有機溶剤を含有する場合、コート液の形態は、溶液、懸濁液、乳化液のいずれであってもよく、溶液であることが好ましい。
有機溶媒としては、コート液の塗布方法に適した沸点を有する有機溶媒が好ましい。
有機溶剤としては、フッ素系有機溶剤、または、非フッ素系有機溶剤に分類できる。
フッ素系有機溶剤としては、フッ素化アルカン、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。フッ素化アルカンとしては、炭素数4〜8のものが好ましく、たとえばバートレル(デュポン社製)が挙げられる。フッ素化アルキルアミンとしては、たとえばペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。フルオロアルコールとしては、たとえば2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール等が挙げられる。フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4〜8のものが好ましく、たとえばフロリナート−7100、7200(3M社製)等が挙げられる。
これらのうち、フッ素化アルカン、フルオロアルキルエーテルは、表面張力が小さく、塗布膜の厚み斑を低減できる点で好ましい。ここで厚み斑とは、コート層の膜厚が不均一な状態をいう。具体的には、赤外線を利用した光の透過吸収方式や赤外二色性を利用して測定された膜厚が、測定箇所によって50%以上変動する。厚み斑は光の干渉斑を生じ、平面の視認性不均一の原因となる。コート液が有機溶剤を含有する場合、コート層は、i)コート液の基材への吸着とii)有機溶剤の揮発による化合物(A)の残留によって形成される。有機溶剤の表面張力が大きい場合、ii)による膜形成の割合が大きくなるため、厚み斑が生成しやすい。ディップコート法を例に挙げると、基材引き上げ速度が不均一性な場合、または、有機溶剤の揮発速度が変動する場合、厚み斑が生じやすい。有機溶剤の表面張力が小さい場合は、これら運転因子の変動が生じても厚み斑を生じにくい。
なお、コート液の調製後の加水分解処理を行う場合には、フルオロアルコールが好ましい。
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる溶媒が好ましく、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒が好ましい。
有機溶剤としては、フッ素化アルカン、フルオロアルキルエーテル、ならびに水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる溶媒からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
なかでも、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる溶媒を含有することが、コストの点で好ましい。
特に酢酸ブチル等のエステル系溶媒や、エーテル系溶媒は、化合物(A)または化合物(B)と反応しない点で望ましい。メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒は、コート液の調製後の加水分解処理を行う場合に好ましい。ただし、これらは上記化合物(A)または化合物(B)の元来の加水分解基と交換し、反応性を減少させる可能性があるため、使用にあたっては注意が必要である。
有機溶剤中、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる溶媒の割合は、有機溶剤の総質量に対して40質量%以上が好ましく、40〜100質量%が特に好ましい。
有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合した混合溶剤として用いてもよい。混合溶剤に共沸組成が存在する場合、該組成で用いることが好ましい。混合溶剤とする場合、各有機溶剤の割合は特に規定されないが、全成分が相分離なく混合する割合に調整することが好ましい。
有機溶剤を配合する場合、その配合量は、塗布膜の厚み斑を低減できる点から、化合物(A)の量がコート液の総質量中に0.01〜50質量%となる量が好ましく、0.01〜20質量%となる量が特に好ましい。
コート液が有機溶剤を含む組成物である場合、コート液全質量中の化合物(A)および他の任意成分(化合物(B)および添加剤)の合計の濃度は、形成しようとするコート層の厚さによって調整することが好ましい。たとえば、厚さ250nmの塗膜を形成する場合、コート液の全質量中の化合物(A)および他の任意成分(化合物(B)および添加剤)の合計量は、1.5〜3.0質量%が好ましい。
<コート層の製造方法>
コート層は、透光性基材上に前記コート液を塗布し、硬化させることにより形成できる。
ここで「硬化」は、塗布されたコート液中に含まれる化合物(A)中の加水分解性基(L)の少なくとも一部がSi−O−Si結合を形成することをいう。たとえば透光性基材表面に水酸基が存在する場合、該水酸基と、加水分解性シリル基から形成するSi−OH基とが脱水縮合反応してSi−O−Si結合が形成される。またはコート液中の分子同志のSi−OH基が脱水縮合反応してSi−O−Si結合となり、架橋構造が形成される。これにより、透光性基材との密着性が高く、強固なコート層が形成される。
化合物(A)が1分子中に複数の加水分解性基(L)を有する場合、硬化は部分硬化であっても完全硬化であってもよい。「部分硬化」は、一部の加水分解性基がSi−O−Si結合を形成し、一部が加水分解性シリル基として残ることをいい、「完全硬化」は、加水分解性基の実質的に全てがSi−O−Si結合を形成する等の反応をおこし、Si−O−Si結合を形成する反応が進行できない状態になっていることをいう。
コート液の塗布方法としては、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、フローコート法、スキージーコート法、グラビアコート法、水上キャスト法、ダイコート法、ラングミュア−プロジェット法、蒸着法(真空蒸着法等)等が挙げられる。
これらの中でも、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、グラビアコート法または蒸着法が好ましい。スピンコート法、蒸着法は、均一な塗膜を形成できる点から好ましく、スプレーコート法、スキージーコート法は大量生産が容易である点から好ましい。実施の簡便さの点ではワイプコート法が好ましく、塗膜の均一性の点ではグラビアコート法が好ましい。
塗布後、形成された塗膜を、空気中、加湿環境下、50〜150℃で0.5〜100時間保持する硬化促進処理を行うことが好ましい。該硬化促進処理を行わなくても空気中の水分等により硬化は進行し得るが、該硬化促進処理を行うことで硬化が促進される。特に、透光性基材が表面に水酸基を有するもの(ガラス基材、水酸基を有する透明樹脂基材等)である場合、該透光性基材の表面の水酸基と、加水分解性シリル基の加水分解により生じたシラノール基とがシロキサン結合を形成し、かつ加水分解性シリル基を有する化合物(A)の間での反応、および該化合物(A)と他の化合物との反応も起こりうるため、透光性基材との密着性が高く、強固なコート層を形成できる。
なお、コート液塗布後の硬化促進処理の前に、有機溶剤の除去を目的として、50〜120℃で0.5〜10時間の加熱を行ってもよい。
また、コート液を塗布する前に、透光性基材の表面の前処理を行ってもよい。前処理方法としては、フッ酸、塩酸等による酸処理;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等によるアルカリ処理;フッ化セリウム、酸化セリウム等による研磨処理等が挙げられる。これらの前処理を行うことで、定着基となるシラノール基が増加し、コート液の耐久性が向上する。
上述のようにして、透光性基材上に、コート層が形成される。
コート層の厚みは、汚れ防止性能の点から、少なくとも8オングストローム(Å)であることが好ましく、8〜30Åがより好ましく、10〜50nmが特に好ましい。
コート層の表面粗さ(Ra)は、汚れ防止性能の点から、50nm以下が好ましく、20nm以下が特に好ましい。
本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、前記コート層以外の他の層を有していてもよい。
たとえば前記透光性基材と前記コート層との間に、それらの接着性を向上させるための無機コート層が設けられてもよい。
無機コート層としては、従来、コート特性を改善するためにガラス基材表面に設けられているものが適宜利用でき、たとえばシラザン膜、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを用いて前記コート液と同様に処理して得られるポリシロキサン膜等が挙げられる。
以上説明した本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材は、撥水撥油性、油脂汚れの除去性等の防汚性能に優れ、また、その防汚性能が、高温高湿環境下で、酸やアルカリが存在していても長期にわたって維持されるなど、劣化耐性にも優れたコート層を有している。そのため、本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材は、上記性能が要求される各分野の透光性基材として有用である。
本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材の用途としては、特に限定されないが、好適なものとして、水等の遅侵食液体に長時間さらされる建築材料、移動車両、デバイスにおける筐体が挙げられる。下地に意匠性を持つ非透光性基材の表面に設置される化粧板などもこれに含む。また、長時間温水にさらされるシャワーブースなどのパーティション、キッチン表面の保護材、建造物や移動車両の採光部材、構造壁、欄干等が挙げられる。これらの物品を本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材で構成すると、前記採光部材、構造壁、欄干等の、酸性雨にさらされる用途においても、長時間、汚れ防止性能を維持することができる。
また、汚れを水等で洗浄を行う物品も好ましく、具体例として、ショーウィンドウ、ガラスパーティション、ショーケース、棚板、家具類等が挙げられる。これらの物品を本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材で構成すると、皮脂、油性ペン、水性ペン、落書き等の汚れを落としやすく、拭き跡が残らず、水拭き等の簡易な洗浄で汚染物の除去が可能である。
本発明の汚れ防止コート層付き透光性基材は、特に建築材料用または移動車両用として有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は該実施例に限定されない。
以下に示す各例のうち、例1〜2は実施例であり、例3は比較例である。
各例で使用した略号、測定方法および評価方法を以下に示す。
(略号)
L:リットル。
Mn:数平均分子量。
Mw:質量平均分子量。
a:aは(CFCFO)単位の数であり、aを付した化合物は、a値が異なる2種以上の化合物からなる。aの平均値は、化合物のMn値から求めた値である。
(Mnの測定)
Mnは、GPCによって測定した。
GPCの測定は、特開2001−208736号公報に記載の方法にしたがった。具体的には、移動相として、R−225(旭硝子社製、アサヒクリンAK−225SECグレード1)およびヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)の混合溶媒(R−225/HFIP=99/1容量比)を用いた。分析カラムとして、PLgel MIXED−Eカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を2本直列に連結したものを用いた。分子量測定用標準試料として、分子量分布(Mw/Mn)が1.1未満である、分子量が2,000〜10,000のペルフルオロポリエーテル4種および分子量分布(Mw/Mn)が1.1以上である、分子量が1,300のペルフルオロポリエーテル1種を用いた。検出器として、蒸発光散乱検出器を用い、移動相流速を1.0mL/分とし、カラム温度を37℃としてGPCを測定した。
(水接触角)
コート層付きガラス基板を水平に保持し、そのコート層表面に、2μLの水滴を5滴置き、その接触角(水接触角)を測定し、5つの値の平均値を求めた。水接触角が大きいほど撥水性に優れる。なお、未処理のソーダライムガラス板の水接触角は約30度である。
(水転落角)
コート層付きガラス基板を水平に保持し、そのコート層の表面に50μLの水滴を滴下した後、コート層付きガラス基板を徐々に傾け、水滴が転落しはじめた時のコート層付きガラス基板と水平面との角度(水転落角)を測定した。水転落角が小さいほど水滴滑落性に優れる。
(油脂汚れの除去性の評価)
コート層付きガラス基板のコート層の表面に、オレイン酸で人工的に油脂汚れを付着させた後、一定荷重でセルロース製不織布(旭化成社製、ペンコットM−3)で拭き取り、油脂汚れの除去しやすさを目視で判定した。判定基準は、下記の通りとした。
○(良好):油脂汚れを完全に拭き取ることができる。
△(可):油脂汚れの拭き取り跡が残る。
×(不良):油脂汚れを拭き取ることができない。
(耐久試験)
コート層付きガラス基板を60℃のpH13の水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬した。該コート層付きガラス基板を水洗、乾燥した後、前記と同じ手順で水接触角および水転落角の測定ならびに油脂汚れの除去性の評価を行った。
〔例1〕
(1−1)
国際公開第2009/008380号に記載の例2に従い、構造式CFO(CFCFO)CFC(O)NHCHCHCHSi(OCHで表される化合物(11)を得た。19F−NMRより計算した(CFCFO)単位数aの平均値は8.5であり、GPCで測定した分子量(Mn)は1,120、分子量分布(Mw/Mn)は1.13であった。
(1−2)
酸化セリウムで表面を研磨洗浄し、乾燥した清浄なガラス基板(ソーダライムガラス板、100mm×100mm×3.5mm)に、化合物(11)をスピンコートによって塗布した後、室温(20〜25℃)、相対湿度40〜60%で24時間保持してコート層付きガラス基板を得た。
得られたコート層付きガラス基板について、接触角および水転落角の測定ならびに油脂汚れの除去性の評価を行った。しかる後に耐久試験を実施し、再度接触角および水転落角の測定ならびに油脂汚れの除去性の評価を行った。結果を表1に示す。
〔例2〕
国際公開第2009/008380号に記載の例3に従い、構造式CFO(CFCFO)CF−CHOCHCHCHSi(OCHで表される化合物(12)を得た。19F−NMRより計算した(CFCFO)単位数aの平均値は8.5であり、GPCで測定した分子量(Mn)は1,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。
化合物(11)の代わりに化合物(12)を用いた以外は例1の(1−2)と同様にしてコート層付きガラス基板を得て、製造直後、耐久試験後それぞれの接触角および水転落角の測定ならびに油脂汚れの除去性の評価を行った。結果を表1に示す。
〔例3〕
比較化合物として構造式CFCFCFCFCFCFCHCHSi(Cl)で表される化合物(13)を入手した(シンクエスト社製)。ガスクロマトグラフィーにより確認した純度は99%であった。
化合物(11)の代わりに化合物(13)を用いた以外は例1の(1−2)と同様にしてコート層付きガラス基板を得て、製造直後、耐久試験後それぞれの接触角および水転落角の測定ならびに油脂汚れの除去性の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2012131683
例1、2のコート層付きガラス基板は、撥水性、油脂汚れの除去性が高かった。また、高温のアルカリ水溶液で処理した耐久試験後においてもその性能が維持され、劣化耐性にも優れていた。
一方、例3のコート層付きガラス基板は、製造直後の時点で油脂汚れの除去性が不充分であり、耐久試験後には撥水性、油脂汚れの除去性ともに大きく低下していた。

Claims (11)

  1. 透光性基材と、該透光性基材上に下式(a)で表される化合物およびその部分縮合体から選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有するコート液を塗布し、硬化させてなる汚れ防止コート層とを備える汚れ防止コート層付き透光性基材。
    O(CFCFO)CF−(Q)(−(CH−SiL3−e …(a)
    ただし、式(a)中の記号は以下の意味を示す。
    :炭素数1〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基、または、炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された炭素数2〜20のペルフルオロ1価飽和炭化水素基であって、−OCFO−構造を有さず、かつ隣接する酸素原子とともに−OCFO−構造を形成しない基。
    a:1〜200の整数。
    b:0または1。
    Q:bが0である場合には存在せず、bが1である場合には2または3価の連結基。
    c:Qが存在しないまたは2価の連結基である場合には1であり、Qが3価の連結基である場合には2。
    d:2〜6の整数。
    L:加水分解性基。
    R:水素原子または1価炭化水素基。
    e:1〜3の整数。
  2. 前記化合物(A)が、下式(a1)で表される化合物およびその部分縮合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
    O(CFCFO)CF−X …(a1)
    ただし、式(a1)中の記号は以下の意味を示す。
    およびa:前記と同じ意味を示す。
    X:下式(X1)〜(X7)で表される基からなる群から選ばれるいずれかの基(ただし、L、Rおよびeは前記と同じ意味を示す。)。
    −C(O)NHCHCHCHSiL3−e …(X1)、
    −CHOC(O)NHCHCHCHSiL3−e …(X2)、
    −CHOCHCHCHSiL3−e …(X3)、
    −CFOCHCHCHSiL3−e …(X4)、
    −CHCHSiL3−e …(X5)、
    −CHCHCHSiL3−e …(X6)、
    −C(O)N(CHCHCHSiL3−e …(X7)。
  3. 前記汚れ防止コート層の厚みが少なくとも8オングストロームである、請求項1または2に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  4. 前記コート液が、さらに、前記化合物(A)以外の加水分解性シリル基有するシラン化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  5. 前記コート液が、さらに、フッ素化アルカン、フルオロアルキルエーテル、ならびに水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  6. 前記コート液が、さらに、水と、酸または塩基とを含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  7. 前記コート液が、さらに、金属酸化物粒子を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  8. 前記コート液の塗布が、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、グラビアコート法または蒸着法により行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  9. 前記透光性基材がガラス基材である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  10. 前記透光性基材と前記汚れ防止コート層との間に、それらの接着性を向上させるための無機コート層が設けられている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
  11. 建築材料用または移動車両用である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の汚れ防止コート層付き透光性基材。
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