JP2012128946A - 燃料電池用電極の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】三相界面の面積が大きく触媒粒子表面利用率が高い、燃料電池用電極の製造方法を提供する。
【解決手段】燃料電池用電極の製造方法は、電解質前駆体溶液を調製する工程と、炭素粒子からなる多孔体S11と触媒粒子で構成される触媒多孔構造体に電解質前駆体を塗布する工程S12と、触媒多孔構造体に塗布された電解質前駆体を重合することで上記多孔構造体中において電解質層を形成する工程S13と、を有する。高分子電解質が導入できない細孔構造中の触媒粒子近傍まで、低分子状態の電解質前駆体は隈無く配置され、その後重縮合反応を経由した電解質前駆体の高分子量化が進行し、プロトン輸送パスとなる電解質層を触媒粒子近傍まで高密度高分散形成することができるので、三相界面の面積が大きくなり、触媒粒子表面利用率が高くなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池用電極の製造方法に係り、特に高分子電解質型燃料電池用電極の製造方法に関するものである。
燃料電池は、水素などプロトンを生成可能な燃料と、空気など酸素を含有する酸化剤とを、電気化学的に反応させることで、電力を発生させるものである。
燃料電池のカソード極において、触媒粒子表面では気体の酸素と液体のプロトンと固体である導電性微粉末からの電子とにより水が生成する触媒反応が起きている。
前記触媒反応が起こっている反応中心は三相界面と一般に呼ばれ、この三相界面の面積はプロトンが効率的に接している触媒粒子の有効面積であり、この面積が大きいほど触媒の利用率が向上し、電池の性能が向上する。
一般的に燃料電池電極の触媒層は、高分子電解質と、触媒粒子の担持された導電性微粉末とを攪拌混合することで作製する方法がとられている(特許文献1)。
しかしながら、通常、触媒粒子の担持された導電性微粉末と高分子電解質材料を攪拌混合して形成した触媒層中では、触媒表面は埋もれて、三相界面の面積が小さくなってしまうという課題を有していた。
そこで、触媒粒子を最表面に出すために多孔質触媒電極層を形成した後、この触媒電極層上に高分子電解質の分散液を塗布することで、触媒層を形成する方法が提案されている(特許文献2および3)。燃料電池用電解質膜ならびに電極中の電解質層として、Nafion(R)(DuPont社製商品名)に代表されるパーフルオロスルホン酸系高分子電解質が一般的に使用されている。
これらの高分子電解質材料では、分散溶媒中での粒子径が大きくて多孔質電極層のもつ小さな空隙まで充填されない。そのため、触媒微粒子の近傍にまでプロトンを供給する電解質材料が届かなくて、三相界面の面積が小さくなってしまう、すなわち触媒粒子表面の利用率が低いという課題の解決には至っていない。
このように触媒粒子に近いところでのプロトン濃度が低いことにより、前記三相界面の面積が小さく、結果触媒粒子の有効面積が小さいという課題がある。
特開2006-075709号公報 特開2008-104424号公報 特許第3686364号公報 特開2007-123259号公報 特開2005-026005号公報
このように前記従来の構成では、高分子電解質と触媒粒子との混ざり方が不十分であったり、高分子電解質が触媒多孔構造体中に分散しないことによって、触媒粒子の近傍にプロトンが十分に供給されなかった。そのため、触媒表面の利用率が低くなってしまうことが課題であった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、三相界面の面積を大きくして触媒粒子表面の利用率を向上させるための燃料電池用電極の電極製造方法を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の燃料電池用電極の製造方法は、触媒粒子が炭素微粉末からなる触媒多孔構造体を形成する工程と、溶媒と、少なくとも電解質材料と、により電解質前駆体を調製する工程と、前記触媒多孔構造体に前記電解質前駆体を塗布する工程と、前記触媒多孔構造体に前記電解質前駆体を塗布することにより、触媒電解質複合前駆体を形成する工程と、前記触媒電解質複合前駆体に対して、減圧乾燥処理および加熱乾燥処理を行うことにより前記触媒電解質複合前駆体中に電解質層を形成する工程を行う。
本構成によって、触媒粒子近傍まで、低分子状態の電解質前駆体が隈無く配置され、その場で重縮合反応を経由した電解質前駆体の高分子量化が進行し、プロトン輸送パスとなる電解質層を触媒粒子近傍まで高密度高分散形成することができる。
本発明の、燃料電池用電極およびその製造方法によれば、三相界面の面積を大きくして触媒粒子表面の利用率を向上させることができる。
本発明の実施の形態1における燃料電池用電極の製造方法に示した工程図 本発明の実施の形態1における電解質層の形成方法を示した工程図 本発明の実施例1の燃料電池用電極の触媒反応面積評価において測定されたサイクリックボルタモグラムを示すグラフ
以下本発明の実施の形態について、図面を参照にしながら説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態においては、炭素微粉末からなる多孔体と触媒粒子で構成される触媒多孔構造体と、電解質層からなる燃料電池用電極の製造方法について説明する。本発明の燃料電池用電極の製造方法に関わる工程図を、図1において示す。
まず本実施における触媒多孔構造体(S12)は、炭素微粉末からなる多孔体(S11)に対して、触媒粒子を担持することにより、作製される。本実施における電解質層(S25)は、分子内に重合性官能基とイオン性官能基(特にスルホン酸基)を有する低分子電解質材料(S23)と、重合性官能基を持つがイオン性官能基は持たない低分子スペーサー材料とを有機溶媒へ混合した溶液を電解質前駆体(S24)として用いる。
つぎに、前記電解質前駆体(S24)を、炭素微粉末からなる多孔体(S11)と触媒粒子により構成される触媒多孔構造体(S12)へ含浸塗工する。その後、乾燥工程により溶媒等の低分子揮発成分を除去することで、前記触媒多孔構造体(S12)に対して、重合反応を経由して電解質層(S25)が均一分散塗布された燃料電池用電極(S14)を作製できる。
なお、本実施の形態1における第2工程<電解質前駆体の含浸塗工(S12→S13)>と第3工程<減圧乾燥および加熱乾燥による電解質層の形成(S13→S14)>の順序を入れ替えて作製された燃料電池用電極は、本願発明の有する効果を奏さない。これは、重合した電解質層の粒子を触媒多孔構造体へ均一導入できないためである。
なお、本実施の形態における触媒多孔構造体(S12)に対して、高分子状態の電解質を含浸塗工しても、多孔体の孔径より高分子の固まりのほうが大きいために均一分散塗布することはできない。
次に、電解質原料(S21)から電解質前駆体(S23)を経由して電解質層(S25)を形成する方法について説明する。本発明の電解質層の形成方法に関わる工程図を、図2において示す。
本実施における電解質層(S25)の形成方法は、まず電解質原料(S21)を、有機溶剤により希釈した後、酸化剤を用いて酸化することで、分子内に重合性官能基とイオン性官能基を有する低分子電解質材料(S23)へ変換する。続いて前記電解質材料(S23)に、重合性官能基を持つがイオン性官能基は持たない低分子スペーサー材料を混合し、電解質前駆体(S24)とする。そして前記電解質前駆体(S24)を、乾燥することで重合反応を経由して、電解質層(S25)が形成する。
なお、本実施における電解質原料を混合希釈するために使用する有機溶媒は、低極性溶媒であることが望ましい(S21→S22)。
なお、本実施における電解質前駆体(S24)において、低分子電解質材料(S23)はイオン性官能基としてスルホン酸基を有することが望ましい。
また、本実施における電解質前駆体(S24)において、分子内に水への可溶性と重合性を有する低分子電解質材料(S23)を、水への不溶性を付与するために、水への不溶性と重合性を有する低分子スペーサー材料と混合した低分子量の有機化合物溶液としての形態をとる。
なお、前記電解質前駆体(S24)から重合反応を経由して電解質層(S25)を形成し、これらは水に不溶性である。
なお、上記構成の電解質層(S25)は従来材料のNafion(R)と同程度、もしくはそれ以下のEW値を持つ必要があり、これから外れるとイオン伝導度が低下する。
そして上記構成の電解質層(S25)について、EW値が1000以下かつ水に不溶性であるには、低分子電解質材料(S23)と低分子スペーサー材料の混合溶液中でのモル比1:nは、通常nが0.25以上5以下の範囲であることが望ましい。特に0.5以上3以下の範囲内であることがより好ましい。
なお電解質層を形成する際に経由する重合反応は、特に減圧あるいは加熱乾燥による縮合反応を経由するのがより望ましい。
なお、上記触媒多孔構造体は最小で数nmサイズの細孔が存在し、本実施の形態における工程を経ることで、これらの細孔までも電解質層を形成できる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明する。
電解質層の形成
電解質層の形成は、実施の形態1で説明した方法に従って、まず電解質原料の希釈溶液を酸化剤で処理することにより、イオン性官能基を有する電解質材料へと変換する。その後、ここに水に不溶性の低分子材料をスペーサー分子として加えて混合して電解質前駆体とする。最後に乾燥により溶媒等の揮発成分を除去することで共重合反応を経由して、水に不溶な電解質層をえるというものである。
具体的には、以下の手順の通りである。分子中にチオール基を持つトリアルコキシシラン化合物((MeO)3Si-(CH2)3-SH)15mmolを、t-BuOHで希釈して、10wt%溶液を調製する。このチオール化合物溶液に30%過酸化水素水を加え、窒素雰囲気下室温で15時間攪拌混合させた。その後、(MeO)3Si-Me 15mmolを加えて15分間攪拌し、さらに超純水を加えて混合することで電解質前駆体が無色透明均一な溶液として調製できた。この工程により、分子内のチオール基が酸化されスルホン酸基に変換されたシラン化合物((RO)3Si-(CH2)3-SO3H, (RO=HO, MeO))と(MeO)3Si-Meのモル比1:1混合の均一溶液が得られる。
なお、上記の電解質前駆体の調製法として次のような方法も考えられる。例えば、あらかじめt-BuOHを溶媒として、チオール基を持つトリアルコキシシラン化合物((MeO)3Si-(CH2)3-SH)と(MeO)3Si-Meを所望のモル比で混合した溶液に、30%過酸化水素水を加える。溶液と過酸化水素水との酸化反応によりチオール基をスルホン酸基に変換することができる。
次に、電解質前駆体である上記溶液を容器上に展開したのち、減圧下で溶媒等の揮発成分を徐々に留去することで重合反応が進行し、結果、膜状物質として水に不溶性の電解質層を得た。上記物質はシロキサン(Si-O-Si)骨格を有すると思われる。
膜状物質として得られた上記電解質層の水への不溶性を確認するために、水にこの膜状物質を浸漬させ1昼夜攪拌した。上澄み液を取って水を減圧留去したが、ポリシロキサン膜状物質は確認されなかった。
また、合成したこの膜状物質について固体NMR測定を行ったところ、13C-DDMAS-NMR(single pulse & 1H decouple)および29Si-CPMAS-NMR(1H→13C cross polarization & 1H decouple)において実測されたシグナルピークの化学シフト値が、その分子構造から予想される理論値と良い一致をし、合成した膜状物質が目的の分子構造を有する共重合物であることがわかった。
なお、上記の電解質前駆体の調製法を利用することで、(RO)3Si-(CH2)3-SO3Hと(MeO)3Si-Meの各種モル比1 : n(n=0,0.5,1,2,3)で混合した電解質前駆体を調製可能である。各電解質前駆体をシャーレへ展開後、溶媒の減圧留去による重合反応を経て膜状物質の電解質層を得た。
n=1,2,3,4,5の電解質層について水への不溶性を有することがわかった。一方n=0, 0.5では、容易に水に溶解してしまい、燃料電池用触媒電極中の電解質層として使用するには不適である。
また、上記の電解質層(n=1,2,3)の有機溶剤への溶解性を検討したところ、アセトンならびにエチルアルコールならびに含塩素系溶媒ならびにジメチルアセトアミドに、上記の電解質層を浸漬させ一昼夜攪拌した。しかし、全く溶解せず沈殿物のみを与える結果となった。
また、(RO)3Si-(CH2)3-SO3HとC6のアルキル鎖を有する(MeO)3Si-C6H13を、モル比1 : nで混合して調製した電解質前駆体を、乾燥して重合反応することにより電解質層を得た。n=0.50,0.75,1,2,3の電解質層は、アセトンならびにエチルアルコールならびに含塩素系溶媒ならびにジメチルアセトアミドに一昼夜浸漬攪拌したが、全く溶解せず沈殿物のみを与える結果となった。
また、(RO)3Si-(CH2)3-SO3HとC10のアルキル鎖を有する(MeO)3Si-C10H21を、モル比1 : nで混合して調製した電解質前駆体を、乾燥して重合反応することにより電解質層を得た。n=0.50,0.75,1,2,3の電解質層は、アセトンならびにエチルアルコールならびに含塩素系溶媒ならびにジメチルアセトアミドに一昼夜浸漬攪拌したが、全く溶解せず沈殿物のみを与える結果となった。
上記の電解質前駆体を調製可能な溶媒は、t-BuOH以外では、アセトン、エタノールなどの低級アルコール、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
触媒多孔構造体の作製
直径約50nmのアセチレンブラック4.0g(電気化学工業)、ポリアクリロニトリル2.0g(シグマアルドリッチ)およびジメチルアセトアミド(和光純薬)をボールミルにより混合した。この混合分散液を面積19.6cm2のカーボンペーパー上に1.69g滴下し、室温のもと真空容器中で溶媒を蒸発させた。次に恒温真空乾燥器を用いて、前記カーボンペーパーを120℃で2時間加熱処理した。最後にこのカーボンペーパーをアルゴン雰囲気下の赤外線イメージ炉内に移し、毎秒20℃で室温から昇温させていき、到達温度800℃で30分間の加熱処理を行った。以上により、炭素微粉末をカーボン薄膜で結着した層を形成したカーボンペーパーを得た。
塩化白金酸(IV)・6水和物(和光純薬)0.95g、ポリアミド酸溶液7.85g、ジメチルアセトアミド(和光純薬特級)17.5gを混合して調製される含白金ポリアミド酸溶液を、前記で得られたカーボンペーパー上に1.26g滴下し、真空中で溶媒を除去した。次に恒温真空乾燥器を用いて、200℃で2時間カーボンペーパーを乾燥した。最後にアルゴン雰囲気下の赤外線イメージ炉内で、昇温速度毎秒10℃、到達温度800℃で加熱を30分間行った。以上により、炭素微粉末からなる多孔体に対して、白金ナノ粒子が高分散固定された構造を有する触媒多孔構造体を作製した。
なお前記ポリアミド酸溶液は、4,4’ジアミノジフェニルエーテル(東京化成)5.00gとピロメリット酸無水物(東京化成)5.45gとを、溶媒ジメチルアセトアミド120gを用いて重合反応して調製したものである。
(実施例1)燃料電池用電極A〜Gの製造
まず電解質層の形成で述べた方法により得られる電解質前駆体を用いて、燃料電池用電極を作製する方法について述べる。まず(表1)に示したように、電解質前駆体を7種類調製した。この7種類の電解質前駆体は、電解質材料(RO)3Si-(CH2)3-SO3Hと低分子スペーサー材料(MeO)3Si-R (R:直鎖アルキル基)の3種類のれぞれを所定のモル比で含有する。(表1)にあげた電解質材料と低分子スペーサー材料とそれらの混合比については、前述電解質層の形成における水不溶性を有する材料範囲のなかで、触媒電極として電流―電圧特性を有する適当な組成をを選択しているが、この限りではない。この電解質前駆体に含有される(RO)3Si-(CH2)3-SO3H/(MeO)3Si-R (R:直鎖アルキル基)の各成分は、低分子状態で溶媒和されている。
次に、触媒多孔構造体の作製で述べた方法により得られる、炭素微粉末からなる多孔体に白金ナノ粒子が担持された触媒多孔構造体に対して、上記電解質前駆体を滴下し1時間浸漬・静置した。その後、減圧下で揮発成分の除去および加熱下のもと真空乾燥を経て、電解質層を含む燃料電池用電極A〜Gを作製した。
なお、一般的にポリシロキサンの合成反応例にならい80℃・2時間の真空乾燥条件で、電解質層の形成を行ったが、この限りではない。
(表1)本発明の実施例1と比較例1における燃料電池用電極の作製条件および評価結果
Figure 2012128946
(比較例1)比較電極aの製造
また、市販の高分子電解質である、EW値1100のパーフルオロスルホン酸系電解質Nafion(R)のエタノール分散液を用いて、比較電極aを作製した。作製手順は、以下のとおりである。触媒多孔構造体の作製で述べた方法により得られる、炭素微粉末からなる多孔体に白金ナノ粒子が担持された触媒多孔構造体を、シャーレの上に静置した。上記触媒多孔構造体に対して、パーフルオロスルホン酸系電解質Nafion(R)のエタノール分散液を滴下し1時間浸漬・静置した。その後、減圧下で揮発成分の除去および加熱下のもと真空乾燥を経て、Nafion(R)電解質層を含む比較電極aを作製した。
(比較例2)比較電極bの製造
また、上記電解質前駆体から乾燥工程を経て重合した電解質層を用いて比較電極bの作製を試みた。具体的には、まず電解質材料(RO)3Si-(CH2)3-SO3Hと低分子スペーサー材料(MeO)3Si-Meを、モル比1:3で混合して得られるEW値380の電解質前駆体を調製した。テフロン(登録商標)製シャーレ上に、上記電解質前駆体を展開したのち、減圧下で揮発成分の除去および加熱下での真空乾燥を経て、固体粉状の電解質層を合成した。この固体粉状の電解質層を前記触媒多孔構造体へと含浸塗工することを試みたが、上記電解質層は各種溶媒に不溶性であり、分散溶液を調製できなかった。このために、一旦電解質前駆体から重合反応を経由して合成した固体塊状の電解質層を、再度分散溶液化したうえで触媒多孔構造体に対して含浸塗布できず、比較電極bは作製できなかった。このように、燃料電池用電極Bを構成するものと同様の電解質前駆体を用いたとしても、(図1)燃料電池用電極の製造の工程図における第2工程<電解質前駆体の含浸塗工(S12→S13)>と第3工程<減圧乾燥および加熱乾燥による電解質層の形成(S13→S14)>の順序を入れ替えると本願発明の効果は奏さない。
(比較例3)比較電極cの製造
また、低分子スペーサー材料を全く含有しない電解質前駆体を用いて、比較電極cの作製を試みた。具体的には、電解質材料(RO)3Si-(CH2)3-SO3Hのみで構成される電解質前駆体を調製して、比較電極cを作製した。なお、それ以外の作製条件は、実施例1と同様である。次に、触媒多孔構造体中に電解質層を形成した比較電極cを60℃熱水中に2時間浸漬処理したところ、形成された電解質層が水に溶けて、触媒多孔構造体中から除去された。そのため、適当な電流―電圧特性を有さず、燃料電池用電極として利用不可であった。
燃料電池用電極の触媒反応面積評価
上記の方法で作製した各電極をカソード極として燃料電池セルに組み込んだ上、サイクリックボルタンメトリー法により触媒反応面積を評価した。アノード極としてPt2.0mg/cm2担持カーボンペースト電極を用いた。アノード極に水素ガス(65℃、100%RH)およびカソード極に窒素ガス(65℃、100%RH)を供給しながら、サイクリックボルタンメトリー測定を行った。このとき、掃印速度を10mV/sec、掃印電位幅を下限:自然電位から上限:1.0Vまでとした。なお自然電位は、上記のような両極でのガス条件下で開回路状態での極間電位のことである。(図3)には、燃料電池用電極G(実線)および比較電極a(破線)についての測定で得られたサイクリックボルタモグラムを示している。各電極について得られたボルタモグラムから白金上でのプロトン脱吸着に関与する電荷量を見積もり、さらに電荷量から単位白金量当たりの触媒反応面積を見積もった。たとえば、比較電極aにおける電荷量は、破線のサイクル上部曲線と実線の水準線で囲まれた斜線領域の面積から見積もる。(表1)には各電極についての触媒反応面積と自然電位の結果をまとめた。
従来材料でよく利用されるパーフルオロスルホン酸系高分子電解質分散液を塗布した比較電極aについては、単位白金量当たりの触媒反応面積は23m2/gであり、カソード極の自然電位については、100mV(vs. SHE)程度で高くとどまる結果となった。ここで自然電位とは、白金表面でのプロトンの脱吸着反応に関する両極間での平衡電位である。すなわち正に大きい値を取る今回の場合は、カソード極においてプロトンが十分に白金表面に到達できていないためと考えられる。
これに対して、低分子量状態で電解質材料と低分子スペーサー材料とが分散している電解質前駆体を、塗布および乾燥重合して電解質層を形成した電極Gでは、飛躍的に反応面積が拡大し52m2/gという結果を与えた。また電極Gの自然電位が著しく低下し20mV(vs.SHE)程度となった。
また、(表1)に挙げた様に電極G以外の電極A〜Fについても、高分子電解質材料を用いた比較電極aと比較して、触媒反応面積の増大と自然電位の低下が起こった。
反応面積の拡大と自然電位の低下という二つの効果発現についての要因は以下のように考察する。
通常高分子電解質の分散液では、高分子のサイズが大きいために、小さいサイズ(数から数十nmオーダー)の細孔構造をもつ触媒構造体内に電解質を均一かつ十分に配置することはきわめて困難である。これに対して、低分子量状態の電解質前駆体を用いることで、触媒粒子が担持された細孔構造内への電解質前駆体の導入が容易におこり、更に塗布されたその場での重合反応を経由して固定化することによって、触媒粒子近傍へと十分な電解質層の形成が実現される。これにより白金近傍でのプロトン高濃度状態が作り出されて、三相界面面積の向上と自然電位の低下に繋がった。
本発明にかかる、燃料電池用電極の製造方法は、大きな三相界面面積と高い発電特性を有し、燃料電池用電極、並びにこれを用いた燃料電池に有用である。また、多孔質構造体中に微分散された電極粒子や触媒粒子への電解質の高密度固定化に有効であり、安価な電気化学電極等の用途にもひろく応用できる。

Claims (4)

  1. 触媒粒子が炭素微粉末からなる触媒多孔構造体を形成する工程と、
    溶媒と、少なくとも電解質材料と、により電解質前駆体を調製する工程と、
    前記触媒多孔構造体に前記電解質前駆体を塗布する工程と、
    前記触媒多孔構造体に前記電解質前駆体を塗布することにより、触媒電解質複合前駆体を形成する工程と、前記触媒電解質複合前駆体に対して、減圧乾燥処理および加熱乾燥処理を行うことにより前記触媒電解質複合前駆体中に電解質層を形成する工程を含む、燃料電池用電極の製造方法。
  2. 前記電解質前駆体として、分子内にイオン性官能基を有する低分子電解質材料と、イオン性官能基を持たない低分子スペーサー材料と、溶媒と、を混合して用いることを特徴とする、請求項1記載の燃料電池用電極の製造方法。
  3. 前記電解質材料が(RO)3Si-CH2CH2CH2SO3H(R=H, Me, Et)であり、前記低分子スペーサー材料が(RO)mSiR’n(m+n=4, m≧2)( R=H, Me, Et. R’=CkH2k+1(k=1〜10))であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用電極の製造方法。
  4. 前記電解質前駆体に含有される溶媒は、低極性の溶媒である、請求項1記載の燃料電池用電極の製造方法。
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