JP2012128353A - 微細構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】入射光の反射率及び回折光を低減できる微細構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の微細構造体1は、基材11と、基材11主面から上方に突出する複数の凸部13を含み基材11上に設けられた微細構造層12とを具備し、複数の凸部13が基材11主面内のY軸方向においてピッチP1で配列されて凸部列13−1〜13−Nを構成し、凸部列13−1〜13−NがY軸方向と直交するX軸方向にピッチP2で並設されており、隣接する第1凸部列13−1及び第2凸部列13−2間のY軸方向におけるシフト量α1と、第2凸部列13−2及び第2凸部列13−2に隣接する第3凸部列13−2間のY軸方向におけるシフト量α2とが互いに異なることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、表面に微細構造を有する微細構造体に関し、例えば、反射防止用の光学素子として用いられる微細構造体に関する。
従来、可視光以下のナノオーダーの微細構造(微細凹凸構造)を表面に付与されたいわゆる微細構造体により、低反射率を実現できることが知られている(非特許文献1)。このような微細構造体は、低反射率を有することから注目を集めており、LCDやレンズなどの光学用途に広く適用が見込まれている。
表面に微細構造を付与された微細構造体が低反射率となるのは、次のように説明される。一般に互いに屈折率の異なる2つの光透過性材料101、102が積層されてなる光透過性部材100に光が入射すると、光透過性材料101、102の界面での屈折率差により、入射した光の一部が反射する。この際の入射光の反射率は、屈折率の差が大きいほど大きくなる(図12参照)。
一方で、光透過性材料101、102間の界面に微細構造層103を設けると、界面における入射光の反射率が大幅に低減する。この場合、光透過性材料101、102間における有効媒質近似により、界面での屈折率の変化に段差が生じず屈折率が徐々に変化する(図13参照)。このため、実質的に屈折率の差が異なる界面が存在しないことになり、入射光の反射率が低減される。
微細構造体においては、上記メカニズムで入射光の反射率を低減しているため、微細構造の形状としては、その断面形状において光の入射方向に対して垂直な平面(平滑面)を有しないことが重要である。光の入射方向に対して垂直な平面を有すると、それだけ屈折率変化が大きくなるためである。そのため、微細構造体においては、表面に付与する微細構造の充填率を高めて、屈折率がなだらかに変化するように形成することが重要となる。
微細構造体において、入射光の反射率を低減するための微細構造としては、例えば、凸状部を複数列のトラックをなすように配設した六方格子パターン、又は四方格子パターンが提案されている(特許文献1)。
特許文献1においては、微細構造が六方格子パターン、又は四方格子パターンで構成されるため、表面における微細構造の充填率が高まり、入射光の反射率を低減することが可能となる。しかしながら、微細構造が規則的であるため、最小繰り返しパターンに由来するピッチ以外に、高次の繰り返しによるピッチが存在する。そのため、平面パターンに対する特定角度において、回折光が観察されるという問題がある。
例えば、図14に示す単純正方格子においては、X軸方向において隣接する凸部103a、b間における最小ピッチC1以外に、XY平面内における斜め方向において凸部103aと凸部103cとの間にピッチC2、及び凸部103aと凸部103dとの間にピッチC3を有する繰り返し単位が存在する。また、図15に示す六方格子においても、凸部104aと、凸部104aの周囲に配設される6つの凸部104bとの間における最小ピッチH1以外に、凸部104aと、凸部104bを介して凸部104aと隣接する凸部104cとの間におけるピッチH2の繰り返し単位が存在する。このため、これらの例においては、例えば、凸部104aと凸部104cとを結ぶ直線と同一方向から光が入射した場合には、繰り返し単位が大きくなるために、回折光の発生及び入射光の反射率が増大することになる。
一方で、隣接する凸部頂部のピッチが不揃いとなるよう形成した微細構造(特許文献2)、及びピッチがランダムとなるように形成した微細構造が提案されている(特許文献3)。特許文献2、又は特許文献3においては、微細構造に繰り返し単位が存在せず、ピッチに規則性を持たせないランダムな微細構造により、回折光及び入射光の反射率を低減している。
特開2009−230132号公報 特開2008−203812号公報 特開2003−114316号公報
「光技術コンタクト」 43(11),630(2005)
しかしながら、微細構造の凸部頂部のピッチを不揃いにした場合や、ピッチに規則性を持たせないランダムな微細構造とした場合には、ある平均ピッチPavを中心としたある頻度分布でピッチが存在する(図16参照)。そのため、平均ピッチPavよりも大きいピッチが一定の確率で存在することになり、その分、反射率が増大することになる。
平均ピッチPavより大きいピッチによる反射率の増大を抑制するためには、対象とする入射光の波長に対して平均ピッチPavを大幅に小さくし、かつピッチのバラツキを抑える必要がある。このような微細構造の形成には、過大な生産技術を要し、製造コストの低減が困難になるという問題がある。このように、従来の微細構造体においては、入射光の反射率、及び回折光を必ずしも十分に低減できない問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、入射光の反射率及び回折光を低減できる微細構造体を提供することを目的とする。
本発明の微細構造体は、基材と、前記基材主面から上方に突出する複数の凸部を含み前記基材上に設けられた微細構造層とを具備し、複数の凸部が前記基材主面内の第1方向においてピッチP1で配列されて凸部列を構成し、前記凸部列が前記第1方向と直交する第2方向にピッチP2で並設されており、隣接する第1凸部列及び第2凸部列間の前記第1方向におけるシフト量α1と、前記第2凸部列及び前記第2凸部列に隣接する第3凸部列間の前記第1方向におけるシフト量α2とが互いに異なることを特徴とする。
この構成によれば、微細構造層の複数の凸部間におけるピッチの規則性が低減されるので、入射光の反射率及び回折光を低減することができる。
本発明の微細構造体においては、前記微細構造層において、シフト量α1及びシフト量α2の差分が一定でないことが好ましい。
本発明の微細構造体においては、前記ピッチP1、及び前記ピッチP2が、可視光の波長以下であることが好ましい。この構成により、反射光及び回折光をより低減でき、光学素子として好適に用いることが可能となる。この構成により、入射光の反射率及び回折光をさらに低減することができる。
本発明の微細構造体においては、隣接する前記複数の凸部間に設けられた微小凸部を有することが好ましい。
本発明によれば、入射光の反射率及び回折光を低減できる微細構造体を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る微細構造体の模式的な斜視図である。 本発明の実施の形態に係る微細構造体の微細構造層の平面模式図である。 本発明の実施の形態に係る微細構造体の模式的な斜視図である。 本発明の実施の形態に係る微細構造体のシフト量αの説明図である。 本発明の実施の形態に係る微細構造体の他の構成例を示す模式的な斜視図である。 本発明の実施の形態に係る微細構造体の他の構成例を示す模式的な斜視図である。 本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造方法の説明図である。 本発明の実施例1に係る円筒モールドの微細構造の平面視におけるSEM写真である。 本発明の実施例1に係る円筒モールドの微細構造の斜視におけるSEM写真である。 本発明の実施例1に係る円筒モールドの微細構造のX軸方向からの斜視におけるSEM写真である。 本発明の実施例2に係る円筒モールドの微細構造の斜視におけるSEM写真である。 一般的な光透過性材料の界面における屈折率の変化を示す概念図である。 界面に微細構造を有する光透過性材料の界面における屈折率の変化を示す概念図である。 正方格子パターンにおけるピッチの一例を示す模式図である。 六方格子パターンにおけるピッチの一例を示す模式図である。 ランダムパターンにおけるピッチの頻度分布の概略図である。
以下に本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照して本実施の形態に係る微細構造体の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る微細構造体1の模式的な斜視図である。図1に示すように、本実施の形態に係る微細構造体1は、透明材料(光透過性材料)を主体とする基材11と、この基材11の一主面上に設けられた微細構造層12とを備える。微細構造層12は、基材11主面から上方に向けて突出する複数の凸部13を有する。本実施の形態に係る微細構造体1においては、基材11主面に設けられた複数の凸部13により、入射光の反射率及び回折光を低減できる。
図2は、本実施の形態に係る微細構造体1の平面模式図である。図2に示すように、複数の凸部13は、基材11主面内のY軸方向(第1方向)と、基材11主面内においてY軸方向と直交するX軸方向(第2方向)とを含むXY平面内に設けられる。複数の凸部13は、Y軸方向において所定のピッチP1で配列されて複数の凸部列13−1〜13−Nを構成している。凸部列13−1〜13−Nは、X軸方向において所定のピッチP2で並設されており、隣接する凸部列13−1〜13−N間にY軸方向においてシフト量α(位置差)が生じるように配列される。
本実施の形態に係る微細構造体1においては、微細構造層12は、X軸方向において隣接する第1凸部列13−1及び第2凸部列13−2との間のY軸方向におけるシフト量α1と、第2凸部列13−2及びこの第2凸部列13−2に隣接する第3凸部列13−3間のシフト量α2とが互いに異なるように設けられる。この構成により、XY平面内における斜め方向の複数の凸部13間のピッチ(ピッチP3〜P5など)が不規則(ランダム)となり、繰り返しパターンの周期性が低減されるので、反射率及び回折光が低減された微細構造体を実現することができる。また、本実施の形態に係る微細構造体1においては、シフト量α1及びシフト量α2の差分が一定でないことが好ましい。この構成により、複数の凸部13による繰り返しパターンの周期性が更に低減されるので、反射率及び回折率を更に低減することが可能となる。
なお、図1及び図2に示した例においては、微細構造層12の微細構造が、凸部13で構成された例について説明したが、微細構造は、凹部15(図3参照)で構成してもよく、凸部13と凹部15とが混在するようにして設けてもよい。
図3は、本実施の形態に係る微細構造体1において、凸部13に代えて凹部15を設けた例の模式的な斜視図である。図3に示した微細構造体1は、透明材料(光透過性材料)を主体とする基材11と、この基材11の一主面上に設けられた微細構造層14とを備える。微細構造層14は、微細構造層14の表面から基材11主面側に向けて陥没した複数の凹部15(凹部列15−1〜15−N)を有する。この微細構造体1においては、基材11主面に設けられた複数の凹部15により、入射光の反射率及び回折光を低減できる。
また、微細構造体1は、平板形状であってもよく、円筒状に巻き取られた形状(以下、リール形状、ロール形状などと呼ぶことがある。)であってもよい。
本実施の形態に係る微細構造体1において、ピッチP1、P2とは、X軸方向及びY軸方向において隣接して設けられた凸部13間の距離である。また、ピッチP1、P2とは、微細構造層12の微細構造が、凸部13で構成される場合には凸部13頂点間の距離であり、凹部15で構成される場合には凹部15谷頂点間の距離で定義される。凸部13頂点は、平面視における凸部13形状が点対称な場合にはその中心点であり、非対称な場合には平面視における凸部13の重心位置で定義される。凹部15谷点は、平面視における凹部15形状が点対称な場合にはその中心点であり、非対称な場合には平面視における凹部15の重心位置で定義される。また、シフト量αとは、X軸方向において隣接して配列された凸部列13−1〜13−Nを構成する凸部13間のY軸方向の位置差(距離差)で定義される。
凸部13及び凹部15の形状としては、本発明の効果が得られるもの範囲であれば特に限定されず、用途に応じて適時変更可能である。凸部13及び凹部15の形状としては、例えば、ピラー形状又はホール形状や、円錐形状、角錐形状、楕円錘形状などを用いることができる。また、凸部13及び凹部15の形状としては、微細構造体1の用途や、適用する波長に応じて設計することができる。これらの中でも、凸部13及び凹部15の形状としては、隣接する凸部13及び凹部15間の距離が小さく、凸部13及び凹部15の高さが大きいことが好ましい。
本実施の形態に係る微細構造体1において、凸部13のピッチP1、及びピッチP2は、可視光の波長以下とすることが好ましい。可視光の波長以下とすることにより、反射光及び回折光をより低減でき、光学素子として好適に用いることが可能となる。
凸部13のピッチP1、P2は、微細構造体1の用途に応じて、適宜変更することができる。例えば、ディスプレイ用途などで要求される可視光領域(400nm〜780nm)において反射率を抑え透過率を上げたい場合、ピッチP1、P2は、1nm以上300nm以下が好ましく、1nm以上150nm以下がより好ましい。ピッチP1、P2が150nm以下であれば、可視光領域で回折光を生じることなく、反射率の角度依存性も抑制することができる。ピッチP1、P2が1nm以上であれば、反射率を低減できるため好ましい。また、ピッチP1、P2が1nm以上であれば、微細構造体1の反射率を低減するために十分な高さの凸部13を工業的に容易に形成することが可能となる。なお、凸部13の高さは大きいことが好ましいが、ピッチP1、P2と高さの比であるアスペクト比が3以下とすることにより、微細構造体1の各製造工程における転写時において離型が容易となる。また、凸部13の高さは1nm以上1000nm以下が好ましく、100nm以上500nm以下がより好ましい。
また、例えば、結晶系シリコン太陽電池の分光感度は、近赤外領域(700nm〜1000nm)にピークトップを持つため、太陽電池用最表面部材においては、この波長領域で優れた透過率を有することが求められる。近赤外領域において反射率を抑え透過率を上げたい場合、ピッチP1、P2は300nm以上2000nm以下が好ましく、500nm以上1000nm以下がより好ましい。また、凸部13の高さは、1nm以上5000nm以下が好ましく、1000nm以上5000nm以下がより好ましい。
本実施の形態に係る微細構造体1においては、ピッチP2がピッチP1よりも小さいことが好ましい。本実施の形態に係る微細構造体1においては、凸部列13−1〜13−N間におけるY軸方向のシフト量αは、ピッチP1の位相(0〜±π)の範囲となる。このため、ピッチP2がピッチP1より小さい場合には、隣接して配列された凸部13間の距離が小さくなるので、微細構造(凸部13)の充填率が増大する。
例えば、図4にシフト量αが最大にずれた状態を示す。この場合、P2=P1×sin(60度)=0.866×P1の関係となる。図4に示す例においては、凸部13同士の重なりがなく、シフト量αが最大の状態であるので、この2つの凸部列13−1、13−2間については六方細密充填となり凸部13に周期性が生じる。このため、ある程度凸部13同士の重なりを生じさせ、充填率をあげられる範囲で、適宜、P1に対しP2を決定することにより、パターンの規則性を低減することができ、入射光の回折及び反射率を低減することが可能となる。
微細構造体1においては、ピッチP1に対するピッチP2の比が、85%〜100%の範囲であることが好ましい。ピッチP1に対するピッチP2の比が、85%以上であれば、隣接する凸部13又は凹部15間の重なりが小さくなるため好ましく、100%以下であれば、凸部13の充填率が向上するため好ましい。ピッチP1に対するピッチP2の比は、90%〜95%の範囲であることがより好ましい。
本実施の形態に係る微細構造体1においては、所望の波長において、回折を生じない範囲にピッチP1、P2を設定することにより、微細構造層12における長周期の繰り返し構造(例えば、XY平面内における斜め方向における繰り返し構造)が形成されず、不要な回折光は発生を抑制することができる。さらに、完全な不規則構造(ランダム配置)ではないために、転写用モールドを用いて製造することも可能となる。これにより、凸部13を過大に微細なピッチP1、P2に形成せずとも、十分な低反射率を実現することができ、製造時の不要なコスト増を防止することができる。
図5は、本実施の形態に係る微細構造体の他の構成例を示す模式的な斜視図である。図5に示すように、微細構造体2においては、隣接して設けられた凸部13間に設けられ凸部13より小さい微小凸部21をさらに有する。このように、凸部13より小さい微小凸部21をさらに設けることにより、さらに入射光の反射率を低減することが可能となる。なお、図5においては、凸部13より小さい微小凸部21を設けた例について説明したが、微小凹部22(図6参照)を設ける構成としてもよい。
図6は、本実施の形態に係る微細構造体2において、凸部13に代えて凹部15を設けると共に、微小凸部21に代えて微小凹部22を設けた構成を示す模式的な斜視図である。図6に示すように、微細構造体2においては、隣接して設けられた凹部15間に設けられ凹部15よりも小さい微小凹部22をさらに有する。このように凹部15よりも小さい微小凹部22をさらに設ける場合においても、図6に示した微小凸部22を設けた例と同様、さらに入射光の反射率を低減することが可能となる。なお、図6においては、凹部15よりも小さい微小凹部22を設けた例について説明したが、さらに微小凸部21を設ける構成としても良い。
本実施の形態に係る微細構造体2において、微小凸部21(微小凹部22)により、反射率が低下するメカニズムは不明だが、以下のように推定される。微小凸部21を設けることにより、図13に示したような微細構造層12における有効屈折率の変化が、凸部13のみで微細構造層12を構成した場合よりも更に滑らかな曲線を示すようになるためと推定される。微小凸部21の高さとしては、凸部13の1/2以下であることが反射率の低下の観点から好ましい。また、微小凸部21の高さが凸部13の1/5以下であれば、さらに反射率が低下するため好ましい。
本実施の形態に係る微細構造体1おいて、基材11としては、所望の波長光において、実質的に透明であれば、特に限定されるものではなく、無機基材、樹脂基材などを適時選択可能である。また、基材11としては、用途に応じて、板、シート、フィルム、薄膜、織物、不織布、その他任意の形状、及びこれらを複合化したものを使用できる。
無機基材としては、ソーダ板ガラス、石英ガラス基板、サファイア基板、シリコン基板などの無機材料を主体とするものを用いることができる。光学特性は特に限定されないが、用途に応じて、適宜選択することができる。例えば、400nm〜780nmの可視光領域で光学的に透明な基材は、さまざまな光学用途に用いることができるため好ましい。紫外光領域において用いる場合には、紫外線の透過率が高い石英ガラスやサファイアガラスを含む基材を用いることが好ましい。
また、基材11として、屈曲性を有し連続生産性に優れたシート、フィルム、織物、不織布などを使用する場合、樹脂基材などの有機材料を使用できる。樹脂基材に用いられる有機材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン(COP)樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。また、基材11として、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラスなどの無機基板、熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂などとを組み合わせて用いてもよく、これらの有機材料又は無機材料を単独で用いて基材21を構成してもよい。
本実施の形態に係る微細構造体1において、微細構造層12としては、所望の波長において、透明性を有していれば特に限定されるものではなく、無機材料、有機材料等を用いることができる。
微細構造層12においては、基材11との界面における屈折率が実質的に同一であることが好ましい。微細構造層12による屈折率変化により微細構造層12での反射を抑制できても、基材11との界面において屈折率に差があると、そこでの反射が発生するためである。
ここで、実質的に同一であるとは、光学的な用途として問題にならない反射率を示す屈折率差を有することである。例えば、基材11の屈折率が1.45であるときに、界面での反射率を0.1%以下とするためには、基材11界面における微細構造層12の屈折率が、1.37〜1.54の範囲であればよく、この範囲内において、実質的に同一であるといえる。これらの値は、必要とされる界面反射率により適宜調整されるものであり、例えば、0.05%以下の界面反射率が必要とされる場合は、1.39〜1.51の屈折率範囲であることが好ましい。
微細構造層12を形成する無機材料としては、ゾルゲル材料の硬化体であることが好ましい。微細構造層12をゾルゲル材料の硬化体とすることにより、無機材料を主体として微細構造層12を構成することができる。このため、耐環境性、耐候性、長期安定性に優れた微細構造体1を得ることができる。
本実施の形態において、ゾルゲル材料とは、熱や触媒などの作用により、加水分解重縮合が進行し、硬化する化合物群である。例えば、金属アルコキシド(金属アルコラート)、金属キレート化合物、ハロゲン化金属、液状ガラス、スピンオングラス、またはこれらの反応物であり、硬化を促進させる触媒を含むものであってもよい。金属アルコキシドの金属種としては、シリコン、チタン、アルミニウム、ゲルマニウム、ボロン、ジルコニウム、タングステン、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、スズが挙げられる。
金属アルコキシドとは、任意の金属種が、加水分解触媒などにより、水、有機溶剤と反応して得られる化合物群であり、任意の金属種と、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、イソプロピル基などの官能基とが結合した化合物群である。金属アルコキシドの金属種としては、シリコン、チタン、アルミニウム、ゲルマニウム、ボロン、ジルコニウム、タングステン、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、スズなどが挙げられる。
例えば、金属種がシリコンの金属アルコキシドとしては、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ジフェニルシランジオール、ジメチルシランジオールなどや、これら化合物群のエトキシ基が、メトキシ基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシ基などに置き換わった化合物群などが挙げられる。これらは、要求される物性に応じて、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
また、金属アルコキシドとしては、シルセスキオキサン化合物を用いることもできる。シルセスキオキサンとは、SiO1.5で表される化合物群の総称で、ケイ素原子一個に対し、一つの有機基と三つの酸素原子が結合した化合物である。
ハロゲン化金属とは、上記金属アルコキシドにおいて、加水分解重縮合する官能基がハロゲン原子に置き換わった化合物群である。なお、金属種は適宜変更可能である。
金属キレート化合物としては、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトネート、チタンテトラキスアセチルアセトネート、チタンジブトキシビスオクチレングリコレート、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムジブトキシモノアセチルアセトネート、亜鉛ビスアセチルアセトネート、インジウムトリスアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネートなどが挙げられる。
硬化を進行させる触媒としては、種々の酸、塩基を用いることができる。種々の酸には、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸だけでなく、各種カルボン酸、不飽和カルボン酸、酸無水物などの有機酸が含まれる。また、硬化が光硬化の場合には、樹脂材料において用いられるような光重合開始剤、光酸発生剤、光増感剤などを用いることができる。
液状ガラスとしては、シラグシタールシリーズ(新技術創造研究所社製)やTGAシリーズ(アポロリング社製)などが挙げられ、これに所望の物性に合わせて、その他ゾルゲル化合物を添加したものを用いることができる。スピンオングラスとしては、OCDシリーズ(東京応化社製)、ACCUGLASS(登録商標)シリーズ(Honeywell社製)などを用いることができる。
これらゾルゲル材料を重合し硬化体として、微細構造層12を形成する。ゾルゲル材料からの硬化体であると、耐久性に優れているため好ましく、基材11に無機材料を使用した場合は、微細構造体1が主に無機材料で構成されるため、耐久性に優れるためにさらに好ましい。
また、微細構造層12を構成する有機材料としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせた複合材料を用いてもよい。
微細構造層12としては、屈折率制御、強度向上などの機能性付与のために機能性微粒子を含むものを用いてもよい。機能性微粒子としては、金属酸化物、金属微粒子、炭素系微粒子などが挙げられる。金属酸化物としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫などが挙げられる。炭素系微粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンが挙げられる。微粒子の形状としては、球状、粒状、棒状、針状、中空状、ランダム形状などがあり、これらは、微粒子表面に対しシランカップリング剤などの表面修飾をされていてもよい。
さらに、機能性微粒子の微細構造層12における濃度は、微細構造層12表面から、基材11との界面に向けて徐々に減少する、あるいは、徐々に増加する濃度勾配を有しているとより好ましい。微細構造層12は、上述したように、界面の屈折率を徐々に変化させる機能がある。しかし、微細構造層12のみモスアイ構造をとっても、基材11との界面に屈折率差があると、その界面での反射が増加し、透過率を上げることができない。そこで、微細構造層12のみでなく、内部の機能性微粒子によっても屈折率変化をつけることでより、有効なモスアイ構造をとることができる。同様のメカニズムで、誘電率、導電率、磁化率なども機能性微粒子の濃度傾斜をとり、膜性能の傾斜性を発現することができる。
(微細構造体のパターンの製造方法)
次に、本実施の形態に係る微細構造体の製造方法について説明する。本実施の形態に係る微細構造体の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の製造方法を一例として挙げることができる。図7に示すように、まず、基材の表面に熱反応性レジスト(レジスト層)を均一に成膜した円筒型モールド31を作製する。次に、この円筒型モールド31を回転させながら、レーザー照射部32からパルスレーザーを照射する。次に、レーザー照射部32からのパルスレーザーを照射しながら、円筒モールド31の筒軸方向に向けて走査する。円筒型モールド31の回転数及びパルスレーザーの周波数から、回転方向(円筒型モールド31の外周面のレジスト層)に任意のピッチでパターン33が記録される。これが、微細構造体1におけるY軸方向のピッチP1となる。さらに、円筒型モールド31の筒軸方向に走査しているため、任意の速度から円筒型モールド31が1周すると、レーザー照射部32が筒軸方向にずれることになる。これが微細構造体1におけるX軸方向のピッチP2となる。円筒型モールド31の周長に比較して、パターン33のピッチP1、P2は、光の波長以下と非常に小さいので、X軸方向のピッチP1を維持しながら、筒軸方向でみるとY軸方向のシフト量がずれた列状パターンを形成することができる。さらに、上述したように、パターン33のピッチP1、P2は、円筒型モールド31の周長に比較して非常に小さいので、X軸方向とY軸方向は実質的に直交することとなる。
レーザー照射によって形成されたパターン33を凹部、又は凸部とした円筒モールド31からパターン33を転写することにより、基材11表面に微細構造層12を有する微細構造体1を得ることができる。
モールドからの転写の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、直接ナノインプリント法が挙げられる。直接ナノインプリント法としては、所定温度で加熱しながらモールド内部に熱硬化性樹脂を充填し、モールドを冷却してから硬化した熱硬化性樹脂を離型して転写する熱ナノインプリント法や、モールド内部に充填した光硬化性樹脂に所定の波長の光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させてから、モールドから硬化した光硬化性樹脂を離型して転写する光ナノインプリント法が挙げられる。
また、モールドからの転写の方法としては、パターンを転写した樹脂から電鋳により電鋳モールドを作成し、この電鋳モールドから熱ナノインプリント法、又は光ナノインプリント法により転写する電鋳モールド方法を用いてもよい。さらに、レーザー照射により得られた円筒モールド、又は電鋳モールドから転写した樹脂モールドを元型とし、直接、熱ナノインプリント法、又は光ナノインプリント法により転写する樹脂モールド法を用いてもよい。これらの中でもレーザー照射により得られたモールドの利用効率を高め、製造コストを低減させる効果が大きいことから、樹脂モールド法が好ましい。
さらに、樹脂モールド法においては、繰り返し転写が容易であるため好ましい。ここでの「繰り返し転写」とは、(1)凸凹パタン形状を有する樹脂モールド(+)から、転写反転した凹凸パタン転写物を複数製造すること、及び/又は(2)特に硬化性樹脂組成物を転写剤として用いる場合において、樹脂モールド(+)から反転した転写体(−)を得て、次に転写体(−)を樹脂モールド(−)として、反転転写した転写体(+)を得る、凸凹/凹凸/凸凹/凹凸/・・・/を繰り返しパタン反転転写することを意味する。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例をもとに本発明をより詳細に説明する。なお、下記実施の形態における材料、使用組成、処理工程などは例示的なものであり、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜変更して実施することが可能である。そのため、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(円筒モールドの作製)
円筒状金型の基材としては、石英ガラスを用いた。半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により微細構造(微細凹凸構造)を石英ガラス表面に形成した。この石英ガラス表面の微細構造上にスパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施した。成膜後のレジスト層の膜厚は20nmであった。エッチング層としては、基材の石英ガラスを使用した。以上のように作製した円筒状金型を回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
露光レーザーパワー:3.5mW
X軸方向ピッチP2:150nm
Y軸方向ピッチP1:130nm
次に、レジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いて、240sec処理とした。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSFを用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間5分の条件で実施した。次に、表面に微細構造が付与された円筒状金型から、残さのレジスト層のみをpH1の塩酸で6分間の条件で剥離して円筒モールド(転写用モールド)を作製した。
作成した円筒モールド(転写用モールド)の表面を下記電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡写真を図8から図10に示す。図8においては、平面視における微細構造の電子顕微鏡写真を示し、図9においては、微細構造表面から30度方向からの斜視における電子顕微鏡写真を示し、図10においては、X軸方向からの斜視における微細構造の電子顕微鏡写真を示している。
装置;HITACHI s−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
図8から分かるように、この微細構造においては、Y軸方向(奥行方向)において設定したピッチP1で凸部が列状に配列されている。また、この列状の凸部は、X軸方向(左右方向)において所定のピッチP2で繰り返し設けられていることが分かる。また、X軸方向において、隣接して配列された列状の凸部間において、シフト量αが不規則であることが分かる。
次に、微細構造を形成した石英ガラスロール表面(転写用モールド)に対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置、微細凹凸パターンを固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施して円筒モールドを作製した。
(リール状樹脂モールドの作製)
次に、得られた円筒モールドからリール状樹脂モールドを作製した。OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合して光硬化性樹脂を調製した。次に、この光硬化性樹脂をPETフィルム(A4100、東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。
次いで、円筒モールド(円筒状金型)に対し、光硬化性樹脂を塗布したPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cmとなるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射して連続的に光硬化を実施して、表面に微細構造が反転転写されたリール状樹脂モールド(長さ200m、幅300mm)を得た。
(反射防止フィルムの作製)
次に、得られたリール状樹脂モールドを用いて反射防止フィルムを作製した。上記同様の条件で、PETフィルム上に上記光硬化性樹脂を塗布し、PETフィルムの両面に微細構造を転写して円筒モールド表面と同様の微細構造を転写した反射防止フィルムを得た。反射防止フィルムの表面を電子顕微鏡で観察したところ、図8と同様の微細構造が表面に形成されていた。
次に、反射防止フィルムを任意に30mm四方に裁断して評価試料とし、分光光度計(島津製作所社製、UV−2450大型試料室:MPC−2200設置モデル)により、入射角5°の正反射率、入射角8°の拡散反射(正反射を含む)の平均値を測定した。500nmで1.1%、600nmで0.9%、700nmで1.0%の低い反射率であった。また、種々の方向から観察しても、回折光は観察されなかった。
[実施例2]
(リール状樹脂モールドの作製)
実施例1と同様の方法で、リール状樹脂モールドを作製した。リール状樹脂モールドの微細表面凹凸形成面側に、マイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、ACCUGLASS311(Honeywell社製)を膜厚3μmになるように連続的に塗布した。次に、80℃で10分乾燥を実施した後、リール状に巻き取り微細構造積層体を得た。上記微細構造積層体から、表面に微細構造が転写された無機基板を作成した。
リール状微細構造積層体を繰り出し、100mm角のソーダガラス基板に積層した。これを、窒素雰囲気下のオーブンで、再度100℃1時間で部分硬化した。次いで、室温でトルエンに5分浸漬させ、PETフィルム及び光硬化性樹脂をソーダガラス基板から剥離した。
PETフィルム及び光硬化性樹脂を剥離したソーダガラス基板を窒素雰囲気下のオーブンで、300℃で1時間加熱して完全硬化した。ソーダガラス基板の表面には、図8と同様の微細構造が形成されていた。同様の処理をソーダガラスの裏面にも施し、ソーダガラスの表面及び裏面に微細構造が転写された無機基板を得た。得られた無機基板の反射率を実施例1と同様に測定したところ、500nmで1.2%、600nmで1.0%、700nmで1.1%の低い反射率であった。また、種々の方向から観察しても、回折光は観察されなかった。
[実施例3]
(円筒モールドの作製)
実施例1と同様に円筒状金型の基材としては、石英ガラスを用いた。半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により微細構造(微細凹凸構造)を石英ガラス表面に形成した。この石英ガラス表面の微細構造上にスパッタリング法によりレジスト層を成膜した。スパッタリング法は、ターゲット(レジスト層)として、φ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用いて、RF100Wの電力で実施した。成膜後のレジスト層の膜厚は20nmであった。エッチング層としては、基材の石英ガラスを使用した。以上のように作製した円筒状金型を回転させながら、以下の条件で露光した。
露光用半導体レーザー波長:405nm
露光レーザーパワー:3.3mW
X軸方向ピッチP2:150nm
Y軸方向ピッチP1:130nm
次に、レジスト層を現像した。レジスト層の現像は、0.03wt%のグリシン水溶液を用いた。次に、現像したレジスト層をマスクとし、ドライエッチングによるエッチング層のエッチングを行った。ドライエッチングは、エッチングガスとしてSFを用い、処理ガス圧1Pa、処理電力300W、処理時間15分の条件で実施した。次に、表面に微細構造が付与された円筒モールドから、残さのレジスト層のみをpH1の塩酸で6分間の条件で剥離して円筒モールド(転写用モールド)を作製した。得られた円筒モールド表面を電子顕微鏡で観察した。結果を図11に示す。
実施例1と同様に、この微細構造においては、Y軸方向(奥行方向)において設定したピッチP1で凸部が列状に配列されている。また、この列状の凸部は、X軸方向(左右方向)において所定のピッチP2で繰り返し設けられていることが分かる。また、X軸方向において、隣接して配列された列状の凸部間において、シフト量αが不規則であることが分かる。さらに、ピッチP1、及びピッチP2を構成する凸部の間の谷部に、微小凸部があることがわかる。凸部の高さは205nm、微小凸部の高さは、30nmであった。
(反射防止フィルムの作製)
実施例1と同様に、得られた円筒モールドからリール状樹脂モールドを経由して、反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムの反射率は、500nmで0.7%、600nmで0.6%、700nmで0.7%の低い反射率であった。また、種々の方向から観察しても、回折光は観察されなかった。
本発明に係る微細構造体は、表面に微細構造を有する微細構造体において、回折光を低減でき、反射率が低く、しかも生産性に優れるので、LCDやレンズなどの光学部材として好適に用いることができる。
1、2 微細構造体
11 基材
12、14、103 微細構造層
13 凸部
13−1〜13−N 凸部列
15 凹部
15−1〜15−N 凹部列
21 微小凸部
22 微小凹部
31 円筒型モールド
32 レーザー照射部
33 パターン
101、102 光透過性材料

Claims (4)

  1. 基材と、前記基材主面から上方に突出する複数の凸部を含み前記基材上に設けられた微細構造層とを具備し、
    複数の凸部が前記基材主面内の第1方向においてピッチP1で配列されて凸部列を構成し、前記凸部列が前記第1方向と直交する第2方向にピッチP2で並設されており、隣接する第1凸部列及び第2凸部列間の前記第1方向におけるシフト量α1と、前記第2凸部列及び前記第2凸部列に隣接する第3凸部列間の前記第1方向におけるシフト量α2とが互いに異なることを特徴とする微細構造体。
  2. 前記微細構造層において、シフト量α1及びシフト量α2の差分が一定でないことを特徴とする請求項1記載の微細構造体。
  3. 前記ピッチP1、及び前記ピッチP2が、可視光の波長以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の微細構造体。
  4. 隣接する前記複数の凸部間に設けられた微小凸部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の微細構造体。
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