JP2012128106A - 液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズ - Google Patents

液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズ Download PDF

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Abstract

【課題】適切に液晶の屈折率を把握することによって、所望のレンズパワーを有する光学構造体の形状を決定することが可能な液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズを提供する。
【解決手段】フレネルレンズ構造(116)が配置された透明基板間に配置された液晶層(130)と、液晶層に電圧を印加するための透明電極(115、125)を有する液晶フレネルレンズ(100)の製造方法であって、電圧非印加時及び電圧印加時の内の何れか一方における液晶層の第1の平均屈折率を求め、フレネルレンズ構造の屈折率が第1の平均屈折率となるように材料を決定し、電圧非印加時及び電圧印加時の内の他の一方における液晶層の第2の平均屈折率を求め、第1及び第2の平均屈折率に基づいてフレネルレンズ構造の形状を決定するステップを有することを特徴とする液晶フレネルレンズの製造方法、及びそのような液晶フレネルレンズ。
【選択図】図8

Description

本発明は、液晶レンズの製造方法及び液晶フレネルレンズに関し、特に、眼鏡フレームに装着して眼鏡用レンズ等として利用することが可能な液晶レンズの製造方法及び液晶フレネルレンズに関する。
所定の電圧を印加することによって着色された色が消える着消色機構を有するレンズを、眼鏡フレームに組み込み、眼鏡フレーム内に別途配置された電源と接続させる構造を有する眼鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
CDとDVDといった異なる厚みを有するディスクに対して信号の読み書きを1つの光ヘッドで行う場合に、基板にレンズ形状を形成することによって焦点距離が変更可能な液晶レンズを利用することが知られている(例えば、特許文献2参照)。前記光ヘッドでは、液晶レンズがオフ状態(電圧を印加しない状態)では、液晶レンズの基板の屈折率と液晶の屈折率が等しいので光は屈折せずにほぼ直進し、液晶レンズがオン状態(電圧が印加された状態)では、液晶レンズの基板の屈折率と液晶の屈折率が一致しないことから光は屈折し、液晶レンズは凹レンズとして機能する。
ここで、液晶レンズの基板の屈折率は、液晶の常光屈折率と異常光屈折率との中間に設定され、液晶レンズがオン状態の場合の液晶の屈折率は常光屈折率と同じになるとされている。また、液晶レンズがオフ状態の場合、液晶レンズでは各基板付近では液晶分子が基板とほぼ平行になるように配向されている90°ツイストネマチック液晶を利用していることから、ねじれた液晶の屈折率は、液晶の常光屈折率と異常光屈折率との中間値にほぼ等しいとされている。
実開平3−35523号公報(図1、図3) 特開平10−124910(図1)
光学構造体を有する液晶レンズでは、液晶へ電圧を印加した場合には(又は印加しない場合)、光学構造体がレンズパワーを有しないように設定され(光学構造体の屈折率と液晶の屈折率がほぼ等しい状態)、液晶へ電圧を印加しない場合(又は印加した場合)には、光学構造体の屈折率と液晶の屈折率との屈折率差によって、光学構造体が所定のレンズパワーを生じるように設定される。
したがって、求められるレンズパワー、印加可能な電圧、液晶の特性等を考慮した上で、電圧の印加によって変更される液晶の屈折率に対応して、適切な光学構造体の材質(即ち、屈折率)及び形状を定める必要がある。
前述した特許文献2では、レンズ形状が形成された基板の屈折率を液晶の常光屈折率と異常光屈折率との中間に設定している。これは、特許文献2において、液晶レンズに電圧が印加されない場合の液晶の屈折率が、液晶の常光屈折率と異常光屈折率との中間に等しいと予測しているからと考えられる。
しかしながら、液晶が封止される基板に光学構造体が形成されていると、液晶分子が配向される面は、必ずしも平坦な状態ではない。また、液晶分子が配向される面が平坦ではないと、液晶分子の状態が変化し、それによって基板法線方向に対する見かけの液晶の屈折率が変化してしまう。
図1は、液晶分子の挙動の一例を示す図であり、図1(a)は透明基板上に光学構造体が存在しない場合を示し、図1(b)は透明基板上に光学構造体が存在する場合を示している。
図1(a)に示すように、透明基板a1側の液晶分子m1及び透明基板a2側の液晶分子m2は、配向膜等の作用によってプレチルト角ωの角度だけの傾きを持って配列されている。これに対して、図1(b)に示すように、透明基板a2側に光学構造体bが形成されている場合には、透明基板a2側の液晶分子m2´は、光学構造体bの角度θとプレチルト角ωの和だけの傾きを持って配列されることとなる。
したがって、液晶が封入される基板に形成される光学構造体の形状を考慮しないと、一分子ではなく液晶層としての基板法線方向に対する見かけの液晶の屈折率を正確に把握することができず、液晶の屈折率を正確に把握することができないと、適切な光学構造体の屈折率を選択することができず、適切な光学構造体の屈折率が選択できないと、所望のレンズパワーを得るための適切な光学構造体の形状を決定することができない、という不具合があった。
なお、適切な光学構造体の屈折率を選択していないと、液晶レンズ中において、所望のレンズパワーを出せず、光学構造体と液晶との境目が目立ってしまい、特に液晶レンズを眼鏡レンズとして利用する場合に見た目に違和感が生じるという不具合もあった。
本発明は、上記の不具合を解消することを可能とする液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズを提供することを目的とする。
また、本発明は、液晶が封入される基板の片面もしくは両面に光学構造体が形成される場合であっても、適切に液晶の屈折率を把握することによって、所望のレンズパワーを有する光学構造体の形状を決定することが可能な液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズを提供することを目的とする。
本発明に係る液晶フレネルレンズの製造方法では、第1の透明基板とフレネルレンズ構造が配置された第2の透明基板との間に配置された液晶層と、液晶層に電圧を印加するための透明電極を有する液晶フレネルレンズの製造方法であって、電圧非印加時及び電圧印加時の内の何れか一方における前記液晶層の第1の平均屈折率を求め、フレネルレンズ構造の屈折率が第1の平均屈折率となるようにフレネルレンズ構造の材料を決定し、電圧非印加時及び電圧印加時の内の他の一方における液晶層の第2の平均屈折率を求め、第1及び第2の平均屈折率に基づいて、フレネルレンズ構造の形状を決定するステップを有することを特徴とする。
本発明に係る液晶フレネルレンズでは、第1の透明基板と、フレネルレンズ構造が配置された第2の透明基板と、第1及び第2の透明基板間に配置された液晶層と、液晶層に電圧を印加するための透明電極を有し、フレネルレンズ構造の屈折率が電圧非印加時及び電圧印加時の内の何れか一方における液晶層の第1の平均屈折率と等しくなるように設定され、フレネルレンズ構造の形状が電圧非印加時及び電圧印加時の内の他の一方における液晶層の第2の平均屈折率に基づいて決定されていることを特徴とする。
本発明に係る液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズでは、光学構造体の形状を考慮した上で、液晶層の屈折率を求め、求められた液晶層の屈折率に基づいて光学構造体の屈折率を決定するので、液晶層と光学構造体の屈折率をほぼ等しく設定することが可能となった。
また、本発明に係る液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズでは、光学構造体の形状を考慮した上で、液晶層の屈折率を求め、求められた液晶層の屈折率に基づいて光学構造体の屈折率を決定するので、所望のレンズパワーを有する液晶フレネルレンズを容易に構成することが可能となった。
液晶分子の挙動の一例を示す図である。 電子眼鏡1の部分概略図である。 フィニッシュドレンズ100´及びエッジングレンズ100を説明するための図である。 ブランクレンズ100´´を構成する2枚の透明基板を示す図である。 ブランクレンズ100´´の断面図である。 エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続状態を示す図である。 液晶レンズ構造によるフレネルレンズ面の構造を説明するための図である。 フレネルレンズ構造116の形状を決定するためのフローチャートの一例を示す図である。 液晶分子の配向状態を示す図である。 液晶層130の平均屈折率を求める経路を説明するための図である。 フレネルレンズ構造の具体例を示す図である。 液晶レンズの製造工程を示すフロー図である。 液晶レンズの製造工程を説明するための図(1)である。 液晶レンズの製造工程を説明するための図(2)である。 液晶レンズの製造工程を説明するための図(3)である。
以下図面を参照して、本発明に係る液晶フレネルレンズの製造方法及び液晶フレネルレンズについて説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
また、以下において、研磨加工する前の「ブランクレンズ」、「フィニッシュドレンズ」及び「セミフィニッシュドレンズ」を「エッジング前レンズ」と言い、「エッジング前レンズ」をエッジングしたものを「エッジングレンズ」と言うものとする。ここで、両面を所望のレンズ形状に研磨加工したものを「フィニッシュドレンズ」と言い、片面のみ研磨加工したものを「セミフィニッシュドレンズ」と言う。さらに、液晶フレネルレンズ構造を含む「ブランクレンズ」、「フィニッシュドレンズ」、「セミフィニッシュドレンズ」及びエッジングレンズを、総称して「液晶フレネルレンズ」と言うものとする。
図2は、エッジングレンズを利用する例としての電子眼鏡1の部分概略図である。
図2(a)に示す様に、電子眼鏡1は、眼鏡フレーム2、ヨロイ部3、蝶番4、テンプル5、ブリッジ6、パッド7を含み、眼鏡フレーム2には、エッジングレンズ100が組み込まれている。ヨロイ部3には、エッジングレンズ100の液晶レンズ構造50と導通するためのスプリングコネクタ10及び20、スプリングコネクタ10及び20と接続された電源部としての電池を含む電圧供給部30、デッィプスイッチ31等が内蔵されている。
図2(b)は、眼鏡フレーム2の内側からスプリングコネクタ10及び20の方向を示す図である。図2(b)に示す様に、スプリングコネクタ10及び20が、後述するエッジングレンズ100の第1凹部113及び第2凹部123に挿入可能に配置されている。また、眼鏡フレーム2の内側には、エッジングレンズ100のヤゲンが嵌り込む溝部を設けるようにしても良い。なお、「ヤゲン」とは、眼鏡フレーム2に装着する際に、眼鏡フレーム2の内側の溝部に嵌り込むように形成された凸部であって、通常0.5〜1mm程度の高さを有している。
エッジングレンズ100の中心部分には、後述する様に、フレネルレンズ面上に配置された第1透明電極111及び第1透明電極111に対向する第2透明電極121を含む液晶レンズ構造50が形成されている。第1透明電極111及び第2透明電極121間に電圧が印加されない場合には、液晶レンズ構造50は動作せず、電子眼鏡1はエッジングレンズ100が本来有するレンズパワーを得ることができる。第1透明電極111及び第2透明電極121間に電圧供給部20から所定の電圧が印加されると、液晶レンズ構造50は所定のパワーを有するレンズとして動作するので、エッジングレンズ100の液晶レンズ構造50がある部分では、エッジングレンズ100が本来有するレンズの焦点距離を液晶レンズ構造50が可変するように動作する。
例えば、エッジングレンズ100自体を遠点に焦点が合うようなパワーを得られるレンズ形状とし、液晶レンズ構造50が動作しない場合には、電子眼鏡は遠点用の眼鏡として作用させ、液晶レンズ構造50が動作すると、電子眼鏡は近点用の眼鏡として作用するように設計することが考えられる。液晶レンズ構造50への電圧の印加のON/OFFを電子眼鏡1のディップスイッチ31によって行うようにすれば、ディップスイッチ31によって任意に切り替え可能な遠近両用の電子眼鏡1を提供することが可能となる。なお、エッジングレンズによって提供できる種類の眼鏡は上記のものに限定されず、様々な種類、例えば、遠視用のパワーを複数段で切り替え可能な遠視用電子眼鏡、近視用のパワーを複数段で切り替え可能な近視電子眼鏡等、乱視用又は老眼用等、視力回復トレーニング用等に適用することが可能である。
図3及び図4は、エッジングレンズ100を説明するための図である。
図3(a)は、図2に示す電子眼鏡1に装着されたエッジングレンズ100の外形を電子眼鏡1の眼鏡フレーム2に合わせ、点線Bにてエッジングする前のフィニッシュドレンズ100´の平面図であり、図3(b)は、エッジングレンズ100の側面図である。
図4(a)はブランクレンズを構成する第1透明基板110を示し、図4(b)はブランクレンズを構成する第2透明基板120を示す図である。第1透明基板110及び第2透明基板120は、円柱状の基板である。第1透明基板110及び第2透明基板120は、図5に示したシール材140及び液晶層130等を封止するようにして張り合わせた後に、外形がレンズ形状(例えば、凹レンズ)を有するように研磨加工されて、図3(a)に示すようにエッジング前のフィニッシュドレンズ100´となる。なお、製造方法の詳細については、後述する。
図4(a)に示す様に、第1透明基板110には、第2透明基板120と接続される側には、第1凹部113が形成されている。また、第1透明基板110上に配置されたフレネルレンズ構造上には、スパッタリング法によってITO(酸化インジウムスズ)を材料として形成された第1透明電極111、及び第1透明電極111と接続された第1接続ライン112が配置されている。
図4(b)に示す様に、第2透明基板120には、第1透明基板110と接続される側には、第2凹部123が形成されている。なお、第1凹部113は第2接続ライン122に対向する位置に配置され、第2凹部123は第1接続ライン112に対向する位置に配置されている。また、第2透明基板120上には、スパッタリング法によってITOを材料として形成された第2透明電極121、及び第2透明電極121と接続された第2接続ライン122が配置されている。
なお、透明電極等を形成する前の段階の、凹部を形成した第1透明基板110及び第2透明基板120の形状は同一であるので、各々の基板上に膜付けをする工程も同一な工程を用いることができ、後述するブランクレンズ100´´の形成は、容易且つ比較的安価に行うことが可能である。
図3(b)に示す様に、眼鏡フレーム2に設けられた第1スプリングコネクタ10は、エッジングレンズ100の端部側から第2凹部123に挿入され、第2凹部123の内側に配置される第1接続ライン112と接触する。第1スプリングコネクタ10が内蔵するスプリングバネによって、第1スプリングコネクタ10の先端部11側面が第2凹部123の内側に配置された第1接続ライン112に押し付けられるので、第1スプリングコネクタ10と第1接続ライン112との導通が確保される(図6参照)。
図3(b)に示す様に、眼鏡フレーム2に設けられた第2スプリングコネクタ20は、エッジングレンズ100の端部側から第1凹部113に挿入され、第1凹部113の内側に配置される第2接続ライン122と接触する。第2スプリングコネクタ20が内蔵するスプリングバネによって、第2スプリングコネクタ20の先端部21側面が第1凹部113の内側に配置された第2接続ライン122に押し付けられるので、第2スプリングコネクタ20と第2接続ライン122との導通が確保される(図6参照)。
なお、第1凹部113及び第2凹部123をそれぞれ長さw1の長方形に形成したが、第1凹部113及び第2凹部123の長さ及び形状は、これらに限定されるものではなく、例えば形状は円形、楕円形、三角形等の他の多角形状であっても良い。また、凹部の幅は、挿入されるスプリングコネクタの直径等に応じて適宜選択することが可能である。さらに、凹部は、開口部、即ち、第1透明基板110及び第2透明基板120の片面側から他方の面側まで貫通するように形成されていても良い。また、開口部の長さ及び形状も、凹部と同様に長さw1の長方形としても良いが、それらに限定されるものではなく、例えば形状は円形、楕円形、三角形等の他の多角形状であっても良い。
図5は、ブランクレンズ100´´の断面図である。図5において、点線はフィニッシュド100´の外形を示し、図3(a)のAA´断面に対応している。
図5に示すように、ブランクレンズ100´´は、第1透明基板110、第2透明基板120、第1及び第2透明基板110及び120の間に配置されるシール材140、充填層150及び液晶レンズ構造50等から構成される。
液晶レンズ構造50は、第1透明基板110、第2透明基板120、フレネルレンズ構造116、及びシール材140の間に封止された液晶層130等から構成される。液晶層130としては、ホモジニアス配向型の液晶が用いられるが、垂直配向型の液晶やツイステッドネマティック配向の液晶、ハイブリッド配向の液晶、ポリマー含有型液晶、コレステリック液晶など、電圧によって見かけの屈折を変化することができれば、どの液晶を用いても良い。
第1透明基板110上には、フレネルレンズ構造116、透明基板から発生するガスが液晶層130へ侵入しないようにするための第1ガスバリア層114(SiO2、膜厚200nm)、第1透明電極111(ITO、膜厚50nm)、第1透明電極111上に配置された第1配向膜115(膜厚50nm)等が配置されている。なお、フレネルレンズ構造116の下に第1ガスバリア層114を配置するように構成しても良い。
第2透明基板120上には、透明基板から発生するガスが液晶層130へ侵入しないようにするための第2ガスバリア層124(SiO2、膜厚200nm)、第1透明電極111と対向した透明平面電極である第2透明電極121(ITO、膜厚50nm)、第2透明電極121上に配置された第2配向膜125(膜厚50nm)等が配置されている。なお、不用意な上下の透明電極間のショートを防ぐために、第1透明電極111、第2透明電極121の少なくとも一方の上に絶縁膜層を設けても良い。
第1透明電極111と第2透明電極121との間隔を一定に保つために、シール材140中には、樹脂やシリカで構成されたスペーサ材141(直径10.5μm)が複数混入されている。また、第1透明電極111と第2透明電極121との間隔を一定に保つために、更に、透明性樹脂による充填層150が、シール材140の外側であって、第1透明電極111と第2透明電極121との間に形成されている。
第1及び第2透明基板110及び120は、厚さ5mmの円柱状のポリカーボネイトを材料として用いているが、その厚さに限定されないし、その他のプラスチック材であるアクリルやウレタンでも良いし、ガラスを材料として用いても良い。また、図面上は平板基板であるが、張り合わせにおける基板間のギャップが重要であり、ギャップが出れば平板に限定されず曲面基板同士の張り合わせとしても良い。
フレネルレンズ構造116は、アクリルを材料として用いているが、環状オレフィン系の透明樹脂、ラジカル重合型のアクリル系光硬化樹脂、カオチン又はアニオン重合型のエポキシ系熱硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、無機−有機ハイブリッド材料等の光学材料を用いても良い。フレネルレンズ構造116を光硬化性樹脂を用いて形成する場合には、少なくとも紫外線が照射される側の基板は、紫外線を透過する特性を有する必要がある。なお、フレネルレンズ構造116の形状及び屈折率の決定に関しては後述する。
図5において、w2は液晶レンズ構造50の液晶層部分の幅を示し、図5の例では、w2=20mmであり、w3はブランクレンズ100´´及びフィニッシュドレンズ100´の外形寸法を示し、図5の例ではw3=75mmである。しかしながら、上記の値は一例であって、他の値を採用することも可能である。
図5においては、説明の便宜上、各基板や層の厚さの縮尺を変更して記載している場合がある点に留意されたい。また、図5において、眼鏡フレーム2に装着するための、エッジングレンズ100の外形を一点鎖線で示している。
図6は、エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続状態を示す図である。
図6では、エッジングレンズ100の点線Dで囲われた部分の拡大図を示している。前述したように、第1スプリングコネクタ10が内蔵するスプリングバネによって、第1スプリングコネクタ10の側面が第2凹部123の内側に配置された第1接続ライン112に押し付けられて、第1スプリングコネクタ10と第1接続ライン112との導通が確保される。同様に、第2スプリングコネクタ20が内蔵するスプリングバネによって、第2スプリングコネクタ20の側面が第1凹部113の内側に配置された第2接続ライン122に押し付けられるので、第2スプリングコネクタ20と第2接続ライン122との導通が確保される。なお、エッジングレンズ100とスプリングコネクタとの接続方法は、上記の方法に限定されるものではなく、他の方法を採用しても良い。
上述したフィニッシュドレンズ100´では、図3(a)に示す第1凹部113及び第2凹部123の幅w1の間のどこで加工してエッジングレンズ100としても、エッジングレンズ100の端部側から、スプリングコネクタとの接続を得ることが可能となる(図6参照)。したがって、エッジングレンズ100の外形を予め定めることなく、様々な形状の眼鏡フレームに対応することが可能となった。
以下、図7〜図10を用いて、フレネルレンズ構造116の形状及び屈折率の決定について説明する。
図7は、液晶レンズ構造によるフレネルレンズ面の構造を説明するための図である。図7(a)は、フレネルレンズ構造116のサグ(段差で区切られたz軸方向の輪帯の高さに相当)の値を一定にした場合を示し、図7(b)はフレネルレンズ構造116のピッチ(段差で区切られたr軸方向の輪帯の幅に相当)を一定にした場合を示している。
図7(a)及び(b)では、フレネルレンズ面の頂点OA(すなわち、光軸上のレンズ面の点)を原点に半径r方向のフレネルレンズ面の断面を表している。また、図7(a)及び(b)における線Cは、フレネルレンズ構造116が有するレンズ特性の元となるレンズ面を表している。レンズ面は、一般のレンズと同様に、光軸に対して中心対象の連続局面として設計される。そこで、レンズ面の光軸に沿った位置が頂点と同じ位置となるように、レンズ面に段差を設けることにより、図7(a)及び(b)に示すフレネルレンズ構造116及び116´のような断面形状を得る。これによって、段差で区切られた輪帯を複数有するフレネルレンズ面が形成される。
図7(a)では6つの輪帯を有するフレネルレンズ構造116を示し、図7(b)では7つの輪帯を有するフレネルレンズ構造116´を示しているが、輪帯の数は一例であって、これに限定されるものではない。なお、以下の説明では、図7(a)に示すサグの値を一定にした場合を例にして説明する。
図8は、フレネルレンズ構造116の形状を決定するためのフローチャートの一例を示す図である。
最初に、フレネルレンズ構造116の初期角度θ0(deg)を設定する(S10)。初期角度θ0は経験値に基づいて定めたものである。例えば、図7(a)に示したように、各輪帯の傾斜部分は、本来レンズ面Cの一部であることから、直線ではないが、直線に近時して以下の説明を行う。また、各輪帯の傾斜部分を直線に近時したとしても、各輪帯の傾斜部分の角度は一定ではない。しかしながら、以下の説明では、各輪帯の傾斜部の角度の平均値をもって、フレネルレンズ構造116の角度と考えることとする。なお、全ての輪帯の角度の単純平均を平均値としても良いし、各輪帯の傾斜部分の断面積によって各輪帯の角度に重み付けを行って平均値を算出しても良い。
次に、第1配向膜115及び第2配向膜125のプレチルト角ω(deg)(S11)、液晶レンズ構造50に必要とされる焦点距離f(mm)(S12)、液晶レンズ構造50のレンズ有効径D(mm)(S13)を設定する。更に、フレネルレンズ構造116の角度θ=θ0と設定する(S14)。
次に、フレネルレンズ構造116の角度θ及びプレチルト角ωに基づいて、電圧非印加時の液晶層130の平均屈折率n1を演算によって求め(S15)、使用する場合の駆動電圧を決定して、フレネルレンズ構造116の角度θ及びプレチルト角ωに基づいて、決定された駆動電圧印加時の液晶層130の平均屈折率n2を演算によって求める(S16)。
図9は、液晶分子の配向状態を示す図である。図9(a)は、電圧印加時におけるフレネルレンズ構造116(一部のみ示す)が形成された第1透明基板110と第2透明基板120間の液晶分子m1〜m7の配向状態を示し、図9(b)は、液晶分子の長軸の傾き角度ψを示す図である。
図9(b)において、曲線Dは、電圧印加時における液晶分子の長軸の傾き角度ψを示し(図9(a)に対応)、曲線Eは、電圧非印加時における液晶分子の長軸の傾き角度ψを示している。
液晶分子の長軸が、光軸(第1透明基板110及び第2透明基板120に対してほぼ垂直な方向)に対して平行となる場合(液晶分子m4に相当)、その液晶分子の光軸方向における屈折率はほぼ異常光屈折率neに等しくなる。また、液晶分子の長軸が、光軸に対して垂直(第1透明基板110及び第2透明基板120とほぼ平行)な方向を向く場合には、その液晶分子の光軸方向における屈折率はほぼ常光屈折率noに等しくなる。また、液晶分子の長軸方向が、光軸に対して角度ψで傾く場合の光軸方向における屈折率nψは、以下の式1によって求めることができる。
Figure 2012128106
即ち、基板間の各液晶分子の長軸の配向方向をプレチルト角度ωとフレネルレンズ構造116の傾斜角θを考慮しながら求め(曲線D及びE)、それに応じて式1に基づいて、断面方向で分割した各々の領域での屈折率を求めて平均すれば、所定の経路における屈折率niを求めることができる。なお、異常光屈折率ne及び常光屈折率noの値は液晶材料ごとのバルクの特性であり、予め容易に求めることができる。なお、電圧非印加時における液晶分子の長軸の傾き角度ψは、両方基板に配置される配向膜が同じであれば、同じ配向規制力になり、曲線Eはそれぞれ界面での傾きを結んだ直線になる。しかしながら、図9の例では、第1の透明基板110側にフレネルレンズ構造116があることから、曲線Eは、第1の透明基板110側の傾きが大きくなっている。
図10は、液晶層130の平均屈折率を求める経路を説明するための図である。
液晶130の平均屈折率を求める場合には、図10の始点x0から終点xnまでの間にn+1個の経路を設定し、経路毎に、図9に示すように屈折率niを求め、求めたn+1個の屈折率niの平均値を平均屈折率とする。図8に示すフローチャートの場合、電圧非印加時の平均屈折率がn1であり(図9の曲線Eに相当)、電圧印加時の平均屈折率がn2である(図9の曲線Dに相当)。
ステップ15及び36では、上記にように液晶層130の平均屈折率n1及びn2を求めるので、第1透明基板110及び第2透明基板120における配向膜が相互に異なっていても、プレチルト角が相互に異なっていても、適切な平均屈折率を求めることが可能である。
次に、フレネルレンズ構造116を構成する樹脂の屈折率を、電圧非印加時の平均屈折率n1に決定する(S17)。即ち、液晶レンズ構造50に電圧を印加しない状態で、フレネルレンズ構造116と液晶層130の屈折率がほぼ同じとなるように設定する(ノーマリーオフ)。なお、フレネルレンズ構造116を構成する樹脂の屈折率を、電圧印加時の平均屈折率n2に決定しても良い。その場合には、液晶レンズ構造50に電圧を印加した状態で、フレネルレンズ構造116と液晶層130の屈折率がほぼ同じとなるように設定されることとなる(ノーマリーオン)。
次に、平均屈折率n1及びn2に基づいて、液晶レンズ構造50に求められる焦点距離fとなるように、フレネルレンズ構造の輪帯の(平均)傾斜角θ1を演算により求める(S18)。光学設計によって、フレネルレンズ構造116が有するレンズ特性の元となるレンズ面の曲率半径Rを定める。ここで、曲率半径Rを定めることは、以下の式2に示される光路差関数Φの係数C1を求めることと等しい。なお、式2において、l=10であっても良いが、l=3程度でも充分である。
Figure 2012128106
フレネルレンズ構造116のレンズ面が、球面レンズであるとすると、式2から以下の式3が導きだされ、式3を微分することによって式4が導きだされる。また、フレネルレンズ構造116の輪帯による傾斜角θ1による位相傾き(図7(a)参照)から以下の式5が導き出せる。さらに、焦点距離fは、光路差関数Φの係数C1を利用すると以下の式6のように表わすことができる。ここで、本発明においては、電圧印加による液晶層の平均屈折率差分(変化量)によって焦点を可変するので、実際にはこの平均屈折率の変化量Δnを考慮し、C1からΔnを割った値をC1として用いて設計を行う。なお、フレネルレンズ構造の場合、球面を端から中央に少しずらしながら輪切りにするようにして複数の輪帯を構成しているので、有効径Dが大きくなるほど、相対的に傾斜角θが大きくなる関係にある。
Figure 2012128106
また、式5におけるΔnは、電圧印加による液晶層の平均屈折率差分(変化量)でありフレネルレンズ構造116と液晶層130との位相差でもあるから、Δn=|n1−n2|である。以上より、フレネルレンズ構造116の輪帯による傾斜角θ1は、式3〜式6に基づいて、以下の式7のように表わすことが可能であり、式7に基づいて、平均屈折率n1及びn2、焦点距離fに基づいて、フレネルレンズ構造の輪帯の傾斜角θ1を演算によって求めることが可能である。
θ1 = arctan(2・|n1−n2|/f) ・・・(7)
次に、ステップ14で設定したフレネルレンズ構造116の傾斜角θ(例えば、S10で設定した初期値θ0)とステップ18で演算によって求められたθ1が等しいかを判断する(ステップ19)。なお、どの程度までを等しいとするかの許容範囲は、アプリケーションによって異なるが、例えば、|θ-θ1|≦0.2×θ1以内(小数点3桁目)を許容範囲と設定することが可能である(即ち、許容範囲をθ1の0.2%以内と設定)。フレネルレンズとしては回折光の影響があるために、影響がなるべく出ないように考慮して、波長λを400nm及びサグの量を10μmとした時に、λ/20以内を許容範囲とすると、精度は0.2%となる。
ステップ19において、ステップ14で設定したフレネルレンズ構造116の傾斜角θとステップ18で演算によって求められたθ1がほぼ等しい場合には、ステップ18で求めたθ1に基づいてフレネルレンズ構造116の形状を決定する(S20)。なお、前述したように、実際のフレネルレンズ構造116は(図7(a)参照)、各輪帯の傾斜角は各場所それぞれ異なるので、(平均)傾斜角θ1に合わせて、実際の各輪帯の傾斜角を定めることとなる。
次に、平均屈折率n1となるようなフレネルレンズ構造116の樹脂材料及び、平均屈折率n1となるような第1透明基板110及び第2透明基板120の樹脂材料を決定して(S21)、一連の作業を終了する。なお、前述したように、ノーマリーオンに設定した場合には、フレネルレンズ構造116、第1透明基板110及び第2透明基板120の樹脂材料は、平均屈折率n2となるように設定することとなる。
ステップ19において、ステップ14で設定したフレネルレンズ構造116の傾斜角θとステップ18で演算によって求められたθ1が等しくなかった場合には、θ=θ1として(S22)、再度ステップ15〜ステップ19を繰り返す。
上記のフローでは、フレネルレンズ構造116の形状が決まらないと、平均屈折率が定まらないが、一方で、平均屈折率が定まらないと所望の焦点距離fを有するフレネルレンズ構造116の形状が決まらないことから、一方を仮に定めておいて他方を演算によって求めることを繰り返しながら、徐々に所定の数値に収束し、両者を満足する値を求めるように演算を行う数値解方式を採用している。
上述した図8に示す、フレネルレンズ構造116の形状等を決定するフローチャートは、CPU、ROM、RAM、HD等を有するパーソナルコンピュータ等によって実行される。具体的には、ステップ10〜ステップ14を、キーボード及び/又はマウス等によって入力すると、HD等に予め記憶されているソフトウエアが実行され、ステップ14〜ステップ22を自動的に実行し、フレネルレンズ構造116の平均傾斜角θ1に及びフレネルレンズ構造116を構成する樹脂の屈折率n1(又は平均屈折率n2)等をディスプレイ上に表示する。
上記では、フレネルレンズ構造116のレンズ面が球面レンズであるとして、演算を行ったが、フレネルレンズ構造116のレンズ面は非球面レンズであっても良い。
フレネルレンズ構造116の初期構造(初期(平均)傾斜角θ0を7.000°)を表1のように設定し、配向膜のプレチルト角ωを6°(第1透明基板110及び第2透明基板120において同じ)、焦点距離fを500mm(2 diopter)、レンズ有効径Dを20mm、異常光屈折率ne=1.719、常光屈折率no=1.511(ne、noともに589nmの屈折率)、第1透明基板110と第2透明基板120間のセルギャップd=10.5μmと設定した場合、1回目の演算では、
1=1.717(電圧非印加時)
2=1.535(駆動電圧として10V印加時) となるので、
θ1=4.235°となる。
さらに図8のフローチャートに示す処理を繰り返すと、最終的にθ=4.170°で、ステップ19における許容度が満足される。
上記の方法に基づいて設定したθ=4.170°を利用して実際に形成したフレネルレンズ構造116の一例を図11に示す。
図11の例では、輪帯の数を55、各輪帯のサグの量が全て10μmとなるように設定したものである。図11において、「輪帯の位置」は、フレネルレンズ構造の中心から各輪帯の内側端までの距離(μm)を示し、「輪帯幅」は各輪帯の内側端から外側端までの距離(μm)を示し、「角度」は各輪帯において微小領域を0.001mmとして求めた傾斜角を示している。図11に示すフレネルレンズ構造は、焦点距離fを500mm(2 diopter)、レンズ有効径Dを20mm、n1=1.717(電圧非印加時)、n2=1.535(駆動電圧として10V印加時)である。
以下、図12〜図15を用いて、液晶フレネルレンズの製造工程を説明する。
最初に、円柱状(厚さ5mm)の第1透明基板110に第1凹部113を切削加工により形成し、円柱状(厚さ5mm)の第2透明基板120に第2凹部123を切削加工により形成する(S10)。なお、第1透明基板110及び第2透明基板120の樹脂材料の屈折率は、図8のステップ21で決定された値に従うものとする。
次に、第1透明基板110上に、フレネルレンズ構造116を形成する(S31)。フレネルレンズ構造116は、供給器200から第1透明基板110上に光硬化樹脂210を所定量滴下して(図13(a)参照)、モールド201によって光硬化樹脂210の形状を整えた後(図13(b)及び(c)参照)、第1透明基板110の裏側から紫外線(UV)を照射して(図13(c)参照)、光硬化樹脂210を硬化させることによって形成する(図13(d)参照)。図13(d)では、第1透明基板110の大きさに対して、フレネルレンズ構造116を含めた硬化した光硬化樹脂210の領域が小さい構成での説明となっているが、第1透明基板110全面に形成する構成としても良い。なお、フレネルレンズ構造116の形状及びそれを構成する樹脂材料の屈折率は、図8のステップ21で決定された値に従うものとする。
光硬化樹脂210としては、UV硬化性のアクリル樹脂を利用することができる。また、別途フレネルレンズ構造を形成し、完成したフレネルレンズ構造を第1透明基板110上に接着するようにしても良い。さらに、第1凹部113と同様に、第1透明基板を切削加工等することにより形成したり、キャスティングや射出成型で透明基板そのものと一体成型しても良い。
次に、フレネルレンズ構造116が形成された第1透明基板110及び第2透明基板120上に、それぞれ、膜厚200nmのSiO2皮膜による第1ガスバリア層114及び第2ガスバリア層124を成膜する(S32)。
次に、第1透明基板110の第1ガスバリア層114の上から、ITO膜の形成及びパターンニングを行い、第1透明電極111及び第1接続ライン112を形成する。同様に、第2透明基板120の第2ガスバリア層124の上から、ITO膜の形成及びパターンニングを行い、第2透明電極121及び第2接続ライン122を形成する(S33)。
次に、第1透明基板110の第1透明電極111の上から、第1配向膜115を成膜し、ラビングを行う。同様に、第2透明基板120の第2透明電極121の上から、第2配向膜125を成膜し、ラビングを行う(S34)。
配向膜の形成は、例えば、供給器202から、膜構成材料211を所定量滴下し(図14(a)参照)、所定雰囲気で乾燥(焼成)後、ローラー203を用いてラビングを行う(図14(b)参照)。配向膜は、このようなラビング処理を行わず、無機物を蒸着して形成する蒸着膜や、光照射によって配向する光配向膜などを用いることができる。
次に、シール材140を形成するために、第1透明基板110上に、供給器204からスペーサ材141が混入された光硬化樹脂212を配置する(図14(c)参照)(S15)。なお、シール材140は、硬化した際に、第1透明基板110及び第2透明基板120とほぼ同じ屈折率を有するものを使用するのが好ましい。なお、図14(c)、図14(d)及び図15(a)〜図15(c)では、便宜上、第1ガスバリア層114、第1透明電極111及び第1配向層115と、第2ガスバリア層124、第2透明電極121及び第2配向層125は省略して記載している。
次に、光硬化樹脂212の内側に、供給器206から液晶214を所定量滴下する(S36、図14(d)参照)。即ち、ここでは、シール材に注入口を設けて、注入口から液晶を注入後に、注入口を封止する工法を用いずに、液晶滴下工法(ODF)を用いている。このため、エッジングレンズ100として利用する場合に、液晶を注入する経路が無く、自由にエッジングレンズ100の外形を選ぶことができ、レンズの光学的特性を良好に維持することができる。
次に、第1透明基板110の上から第2透明基板120をチャンバ208内の真空雰囲気下で重ね合わせて張り合わせる(図15(a)参照)(S37)。
次に、所定のチャンバ209中に配置して、真空雰囲気下で、シール材140の外側であって、第1透明基板110及び第2透明基板120の隙間に、毛細管現象を利用して、透明性接着剤216を充填させる(図15(b)参照)(S38)。なお、充填層150に用いられる透明性接着剤は、低粘度及び光硬化性であり、透明で、第1透明基板110及び第2透明基板120とほぼ同じ屈折率を有するものを使用する。これによって、界面での反射ロスを減少させている。
次に、液晶層130の部分をマスクしてUV照射を行い、光硬化樹脂212及び透明性接着剤216を硬化させ、シール材140及び充填層150を形成する(S39)。液晶層130の部分をマスクするのは、液晶材料によってはUVによって特性が変化してしまうため、それを防止するためである。また、充填層150は、レンズの透過率の向上と、研磨加工時に耐えられる接着力の確保と、研磨剤及び研磨液等が内部に侵入するのを防止する作用をも有している。
これによって、滴下された液晶214は、第1透明基板110、第2透明基板120及びシール材140によって封止されて液晶層130となる。なお、樹脂を硬化させてシール材140及び充填層150を形成する際には、UVの照射後に、高温雰囲気下で焼成するようにしても良い。これによって、例えば、図5に示すブランクレンズ100´´(レンズ外形形状が形成されていない状態)が完成する。
次に、ブランクレンズ100´´の外形を切削加工又は研磨加工して、レンズ形状とし、例えば、図5に点線で示すフィニッシュドレンズ100´を完成させる(S40)。なお、レンズ形状の形成は、片面ずつ行うが、片面のみ形成されているものをセミフィニッシュドレンズと言う。
次に、眼鏡フレーム2の形状に合わせて、フィニッシュドレンズ100´をエッジングし、例えば、図6に示す様に、エッジングレンズ100を完成させ(S41)、液晶レンズ構造50とスプリングコネクタ10及び20との導通を図るように、眼鏡フレーム2へ装着することによって、電子眼鏡1を完成させる(S42)。
ブランクレンズ100´´の状態(図5参照)では、液晶レンズ構造50の周囲にはスペーサ材141が混入されたシール材140が形成され、シール材140の外側であって第1及び第2透明基板110及び120間の隙間には充填層150が形成されている。したがって、液晶レンズ構造50のセルギャップは所定の厚さに維持される。また、その後の研磨加工が施されて、フィニッシュドレンズ100´(図5の点線部分参照)となる際にも、同様に、液晶レンズ構造50のセルギャップは、所定の厚さに維持される。
液晶レンズの製造過程において、最も液晶レンズ構造50に圧力が加わるのは、フィニッシュドレンズとするための研磨加工時であるので、その状態において、スペーサ材141が混入したシール材140及び充填層150が健在であれば、液晶レンズ構造50のセルギャップは所定の厚さに維持される。その後、エッジングレンズ100にエッジングされてしまうと、眼鏡フレーム2の形状に応じて、充填層150の外周部は切除されてしまうが、残存する充填層150とシール材140によって、充分に、液晶レンズ構造50のセルギャップは所定の厚さに維持される。
図12〜図15に示した液晶レンズの製造工程では、光硬化樹脂212及び透明性接着剤216を第1及び第2透明基板110及び120間に配置した後に、UV照射等を行い、シール材140及び充填層150を形成した。しかしながら、先に光硬化樹脂212のみにUV照射を行ってシール材140を形成し、その後、透明性接着剤216を第1及び第2透明基板110間に毛細管現象を利用して充填し且つそれにUV照射を行って充填層150を形成するような工程としても良い。UV照射を2回に分けて行うこととなるが、シール材140が既に形成された後に、透明性接着剤216を充填させる方が、張り合わせ後のアライメントズレに対して神経を使う必要がなく、透明性接着剤216の充填作業性が上がる。
図12〜図15に示した液晶レンズの製造工程では、光硬化樹脂212及び透明性接着剤216を第1及び第2透明基板110及び120間に配置した後に、UV照射等を行い、シール材140及び充填層150を形成した。しかしながら、第1透明基板110と第2透明基板120を張り合わせる前に、第1透明基板110上に、光硬化樹脂212及び透明性接着剤216を配置し、その後に、第1透明基板110と第2透明基板120を張り合わせるような工程としても良い。この場合、透明性接着剤216も、供給器(不図示)から第1透明基板110上に適量だけ滴下することとなる。なお、その後、第1及び第2透明基板110及び120間に配置された光硬化樹脂212及び透明性接着剤216に対して、同時にUV照射等を行い、シール材140及び充填層150が形成される点は、図15(c)と同様である。
充填層150のための透明性接着剤216を充填する前に、第1透明基板110及び第2透明基板120の透明性接着剤216が充填される領域を予めプラズマ処理を施して置いたり、液晶の滴下後(S36参照)に、第1透明基板110及び第2透明基板120の透明性接着剤216が充填される領域の表面を洗浄したり、することによって、透明性接着剤216の塗れ性を向上させることが可能となる。また、第1透明基板110及び第2透明基板120の透明性接着剤216が充填される領域の下地に凹凸形状を形成して、接着面積を増加させることによって、接着性を強化することが可能となる。さらに、上記の例では、透明性接着剤216は、配向膜115及び125と接着するように構成されているが、ITO等との接着力が強ければ、充填層150の部分には配向膜115及び125を形成しなくても良い。
上記の説明では、第1透明基板にフレネルレンズ構造があり、第2透明基板にはフレネルレンズ構造のない構成を用いて説明したが、特にこれに限定されず、第1透明基板と第2透明基板の両方にフレネルレンズ構造を設ける構成であっても良い。さらに、透明基板へのフレネルレンズ構造の形成方法としては、基板内に樹脂を配置したインプリントだけに限定されず、透明基板への直接加工で形成しても良い。
また、第1透明基板及び第2透明基板の2枚の透明基板の厚みに関して、図面上は同じ厚みの基板となっているが、特にこれに限定されず、例えばフィルム状の薄い基板と厚い基板の組み合わせでも良いし、2枚の透明基板の材質が異なっていても良い。
本実施形態では、電子眼鏡用レンズを例に説明したが、本発明のエッジング前レンズ及びエッジングレンズは、液晶を注入後、レンズの一部(中央部)に液晶を封入し、最後に所望の形に外形カットする液晶レンズであれば、電子顕微鏡や電子カメラ、ピックアップレンズ等、光学レンズとしていかなる用途のものでも採用することが可能である。また、光学構造としてフレネルレンズを用いれば液晶レンズになるが、本発明は光学構造に特長を持っているわけではないので特にこれに限定されず、シリンドリカルレンズやプリズム、マイクロレンズアレイ等の光学構造を用いた液晶光学素子でも適用することができる。また、両方の基板内にフレネルレンズ構造などの光学構造を設けなくてもよい。例えば、基板間に形成された電極に電圧を印加し、光を制御する機能を有するものであっても、本発明を採用することができる。
1 電子眼鏡
2 眼鏡フレーム
10 第1スプリングコネクタ
20 第2スプリングコネクタ
50 液晶レンズ構造
100´´、101´´、102´´、103´´、104´´ ブランクレンズ
100´、101´、102´、103´ フィニッシュドレンズ
100、101、102、103、104、105 エッジングレンズ
110 第1透明基板
120 第2透明基板
130 液晶層
140 シール材
141 スペーサ
150 充填層

Claims (5)

  1. 第1の透明基板とフレネルレンズ構造が配置された第2の透明基板との間に配置された液晶層と、前記液晶層に電圧を印加するための透明電極を有する液晶フレネルレンズの製造方法であって、
    電圧非印加時及び電圧印加時の内の何れか一方における前記液晶層の第1の平均屈折率を求め、
    前記フレネルレンズ構造の屈折率が前記第1の平均屈折率となるように前記フレネルレンズ構造の材料を決定し、
    電圧非印加時及び電圧印加時の内の他の一方における前記液晶層の第2の平均屈折率を求め、
    前記第1及び第2の平均屈折率に基づいて、前記フレネルレンズ構造の形状を決定する、
    ステップを有することを特徴とする液晶フレネルレンズの製造方法。
  2. 前記第1及び第2の平均屈折率の差及び前記液晶フレネルレンズの所望の焦点距離に基づいて、前記フレネルレンズ構造の形状を決定する、請求項1に記載の液晶フレネルレンズの製造方法。
  3. 前記液晶層と前記フレネルレンズ構造との間のプレチルト角及び前記フレネルレンズ構造の形状に基づいて、前記第1及び第2の平均屈折率を求める、請求項1又は2に記載の液晶フレネルレンズの製造方法。
  4. 前記第1及び第2の透明基板の屈折率は、前記フレネルレンズ構造の屈折率と同じである、請求項1〜3の何れか一項に記載の液晶フレネルレンズの製造方法。
  5. 第1の透明基板と、
    フレネルレンズ構造が配置された第2の透明基板と、
    前記第1及び第2の透明基板間に配置された液晶層と、
    前記液晶層に電圧を印加するための透明電極と、を有し、
    前記フレネルレンズ構造の屈折率が、電圧非印加時及び電圧印加時の内の何れか一方における前記液晶層の第1の平均屈折率と等しくなるように設定され、
    前記フレネルレンズ構造の形状が、前記電圧非印加時及び電圧印加時の内の他の一方における前記液晶層の第2の平均屈折率に基づいて決定されている、
    ことを特徴とする液晶フレネルレンズ。
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