JP2012127864A - 脈動流の流量測定方法およびガス流量測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラミナー式流量計2を用いた流量測定方法であって、測定前に、脈動周波数を複数設定するとともに、流量が一定であり、かつ、既知である複数の基準流量Qaを設定し、各脈動周波数と各基準流量Qaとを組み合わせた各パターンのガスの流れを、脈動振幅xを変化させながら、ラミナー式流量計2によって測定(測定流量yを取得)し、各パターンにおいて、ラミナー式流量計2による測定流量yと脈動振幅xとの関係を表す関数を算出しておき、測定において、当該測定の測定条件に最も近似するパターンを各パターンから選択するとともに、選択したパターンにおける関数を用いて、ラミナー式流量計2による測定流量yを補正する。
【選択図】図4
Description
ハーゲン・ポアズイユの法則は、体積流量をQ(m3)、円管直径をd(m)、圧力測定点間の距離をL(m)、圧力測定点間の差圧をΔP(Pa)、流体の粘度をμ(Pa・s)と規定するとき、以下に示す数式1の関係が成立するというものである。
特許文献1に開示された従来技術では、排気管の直後にラミナー式流量計を配置して、該ラミナー式流量計によって、自動車(エンジン)から排出される排気ガスの全流量を測定する構成としている。
そして、ラミナー式流量計を低圧損化および小型化した場合には、低圧損化および小型化をしない場合に比して、ラミナー式流量計を通過する流体の流速が増大する。
このため、ラミナー式流量計の低圧損化および小型化を図ってエンジンに実装をした場合には、ラミナー式流量計の測定対象たるEGRガスの流れが、レイノルズ数の十分に小さい層流ではなくなってしまうため、ラミナー式流量計によって、EGRガスの流量を正確に測定することが困難になるという問題があった。
ラミナー式流量計では、上流側と下流側に一定の距離(距離L、数式1参照)だけ離間した位置で測定した各圧力の差圧に基づいて流量を算出するようにしている。この上流側と下流側の各圧力は、厳密には同じ時刻における同じガスの流れの圧力ではなく、上流側と下流側の各圧力には位相差が存在している。
定常流の流量測定においては、この位相差は測定誤差を生じさせる要因とはならないが、脈動流の流量測定においては、この位相差に起因して測定誤差が生じるものと考察できる。
上流側と下流側の各圧力の位相差を考慮して、差圧ΔPを机上においてシミュレーションすると、差圧ΔPは以下に示す数式2のように表すことができる。
尚、以下に示す数式2では、上流側の圧力測定部における圧力をP1、下流側の圧力測定部における圧力をP2、位相差をα、脈動周波数をf、脈動振幅をA・B、差圧ΔPのDC成分(オフセット値)をΔPDCと規定している。
この図9(b)では、真の流量Zに対して、算出した流量が少ない値として算出される傾向が示されており、この傾向は、図9(a)に示すラミナー式流量計により脈動流を実際に測定した場合の測定結果における傾向と良く一致している。
さらに、脈動振幅の大きさを種々変更してシミュレーションを行った場合にも、脈動振幅がより大きいモデル波形の場合に、平均流量の値がより小さくなることが確認された。
即ち、ラミナー式流量計による脈動流の流量測定において生じる測定誤差は、脈動振幅の大きさに影響を受けているものと考察される。
まず始めに、本発明の一実施形態に係るガス流量測定装置の全体構成について、図1を用いて説明をする。
図1に示す如く、本発明の一実施形態に係るガス流量測定装置1は、管内を流れるガスの流量を測定するための装置であって、ラミナー式流量計2、差圧検出部3、コントローラ4等を備えている。
さらにラミナー式流量計2について詳述すると、ラミナー式流量計2は、その内部にエレメント2aを備えている。また、ラミナー式流量計2は、エレメント2aを通過するガスのエレメント2aの上流側における圧力P1を検出するための部位である上流側圧力検出部2bと、該圧力検出部2bから軸心方向に距離Lだけ離間した位置においてエレメント2aの下流側における圧力P2を検出するための部位である下流側圧力検出部2cを備えている。
また、エレメント2aの内部には、温度センサ8・9が挿入されており、エレメント2aを通過するガスの温度Tを検出する構成としている。
そして、コントローラ4には、差圧検出部3から差圧ΔPに係る信号と、各温度センサ8・9からは、各温度T1・T2に係る信号が入力される。また、コントローラ4には、ラミナー式流量計2の入口において検出した絶対圧力Pinも入力される。
尚、以下に示す数式3〜数式7においては、ガス質量流量をGe(g/L)、ガス温度をT(K)、ガス密度をρEX(g/L)、実体積流量をQope(g/L)、20℃・1atmの状態に換算した標準換算体積流量をQstp、20℃における空気の粘性係数をμ20(Air)、T(K)におけるガスの粘性係数をμT(EX)、20℃における流量係数をK20、ラミナー式流量計2の入口におけるガスの絶対圧力をPin(kPa)、と規定している。
また、数式4中に示すaおよびbは、各ラミナー式流量計2に固有の定数であり、ラミナー式流量計2の校正により求められる値である。
本発明の一実施形態に係るガス流量測定装置1は、ラミナー式流量計2を用いて測定した流量が脈動振幅と相関関係にあるという考察結果に着目し、この相関関係を利用して測定流量を補正するものであり、これによって、ガスの流れがレイノルズ数の十分に小さい層流ではなく、かつ脈動流であっても、精度良く流量の測定を行うことを可能にするものである。
尚、本実施形態では、図2に示すような検定装置20を用いる場合を例示して説明をする。
ブロア22は、例えば、回転数をインバータ制御等することにより送風量を変更することができる送風機である。
回転バルブ23は、弁体を回転させることによって、流路の開状態と閉状態を周期的に切り換えることができる弁装置であり、弁体の回転数を変更することによって、ガスの流れの脈動周波数を調整することができる。
絞りバルブ24は、測定対象たるガスの流路における管内抵抗を調整するための弁装置であり、絞りバルブ24の開度を変更することによって、ガスの流れの脈動振幅を調整することができる。
さらに、検定装置20は、ラミナー式流量計2による測定対象たる流れ場の温度条件を整えるためのヒータ26等も備えている。
そして、検定装置20は、測定対象たるガスの平均流量、脈動周波数、脈動振幅等の各条件を変化させることができ、測定対象たるガスの真の流量を把握しつつ、脈動周波数や脈動振幅が異なる種々のパターンのガスの流れを再現することができる。
まず、回転バルブ23の回転数(即ち、脈動周波数R)を、一定とする。例えば、図3では、回転数を1000(rpm)(即ち、脈動周波数R=66.67(Hz))に固定した場合を例示している。
ここでは、絞りバルブ24の設定により、ガスの流れを定常流(即ち、脈動振幅が「0」)としておく。
そして、基準流量計21の測定値により流量を確認しながら、ブロア22の送風量を変更する。
この状態で、ラミナー式流量計2による測定を行い、差圧ΔPと測定流量yとの関係を得ておく。
そして、この測定結果から、ラミナー式流量計2に固有の各定数a・b(数式4参照)が得られる。例えば、本実施形態において各係数a、bは、a=18.53、b=−0.2411として導出される。
尚、以下では、基準流量計21の測定値を基準流量Qaと呼ぶ。
また、基準流量Qaのステップ幅をどの程度に設定するかは、ラミナー式流量計2の使用条件や使用目的等に応じて適宜設定する。
本実施形態では、脈動振幅xを、1〜3(kPa)の範囲で、0.5(kPa)ずつステップ状に変化させるようにしている。
また、脈動振幅の変更(ステップ)幅をどの程度に設定するかは、ラミナー式流量計2の使用条件や使用目的等に応じて適宜設定する。
これにより、脈動周波数Rが66.67(Hz)で、かつ、基準流量Qaが、1(L/S)であって、脈動振幅が異なる各状態におけるラミナー式流量計2の測定流量が得られ、図3中に示す基準流量Qaが1(L/S)である場合のグラフを生成することができる。
尚、脈動周波数の変更範囲や変更単位をどの程度に設定するかは、ラミナー式流量計2の使用条件や使用目的等に応じて適宜設定する。
具体的には、図4に示す如く、例えば基準流量Qaが、9(L/S)であるグラフの各測定点を通過する近似曲線K9を求める。この近似曲線K9は、脈動振幅が「0」であるときには、流量が9(L/S)になるという条件の元で、例えば、多項式近似を行うことによって算出できる。
そして、近似曲線K9は、例えば、次数を4次として求めた場合には、数式8のように表される。
このようにして、脈動周波数Rが66.67(Hz)であって、かつ、基準流量Qaが9(L/S)である場合の、測定流量yと脈動振幅xの相関を表す関数が算出できる。
そして、本発明の一実施形態に係る脈動流の流量測定方法では、このようにして算出した、測定流量yと脈動振幅xの相関を表す各関数を用いて、ラミナー式流量計2の測定流量yを補正する。
また、測定流量yと脈動振幅xの相関を表す各関数を算出するために、測定条件を変更しつつ行うこのような運転を学習運転と呼ぶ。
尚、近似曲線を表す近似式を算出する際には、必ずしも一旦グラフ化をする必要はなく、各測定パターンにおける基準流量Qaごとの一群の測定データから、直接近似式を算出することも可能である。
脈動周波数Rが66.67(Hz)である(図3が適用できる)測定パターンで、例えば、ラミナー式流量計2による流量の測定値が、5.0(L/S)であって、そのときの脈動振幅が、3.0(kPa)である場合を例示して説明をする。
数式8に、脈動振幅x=3(kPa)を代入したときの値は、約4.8(L/S)であり、測定値との誤差dが、およそ0.2(L/S)存在している。
この場合の測定値は、近似曲線K9上に位置していないため、数式8に脈動振幅x=0(kPa)を代入したときの値を基準値として、さらにその基準値に誤差dを加算して、ラミナー式流量計2の測定流量を補正するようにしている。
具体的には、数式8に脈動振幅x=0(kPa)を代入したときの基準値(9(L/S))に、誤差d(0.2(L/S))を加算して、補正値を9.2(L/S)を算出する。
本実施形態では、図5に示すように、エンジン10が備えるEGRライン11においてEGRガスのガス質量流量Geを測定する用途にガス流量測定装置1を使用する場合を例示して説明をする。
また、EGRライン11は配管部材5・5によってEGRガスの流路を形成しており、該配管部材5・5の中途部にはEGRバルブ15およびEGRクーラー16を備えている。そして、EGRバルブ15の開度を変更することによって、排気ポート13aから吸気ポート13bに還流させる排気ガス(EGRガス)の流量を調整する構成としている。
EGRバルブ15の開度は、エンジン10の回転数および負荷に応じて制御されているため、EGRライン11における排気ガスの流れは、エンジン10の回転数(即ち、脈動周波数)および負荷の変化に応じて、流量が変化している。さらにエンジン10から排出される排気ガスのような脈動流では、脈動振幅が成り行きで変化している。
ガス流量測定装置1をエンジン10に実装した状態で検定を行う場合には、EGRバルブ15の開度を調整して、排気ガスの流れを定常流としておく。
また、エンジン10の回転数(即ち、脈動周波数)を一定に保持するとともに、エンジン10に対する負荷を調整して、基準流量Qaである排気ガスを流通させる。
そして、このような運転状態において、ラミナー式流量計2による測定を行い、図3に示すものと同様の流量と差圧の関係を得る。そして、このようにして得た流量と差圧の関係から各係数a、bを導出しておく。
EGR率は、例えば、以下の数式9により算出することができる。
尚、数式9では、EGRガス質量流量をGe、吸入空気質量流量をGaと規定している
例えば、EGRライン11の各部においてCO2濃度を測定すれば、以下の数式10に基づいてEGR率を算出することができる。
尚、以下の数式10においては、EGRがON時の吸気ポート13bにおけるCO2濃度を[CO2]m、EGRがOFF時の吸気ポート13bにおけるCO2濃度を[CO2]b、吸気OFF時の排気ポート13aにおけるCO2濃度を[CO2]eと規定している。
尚、以下の数式11においては、EGRがON時の空燃比を[A/F]w/EGR、EGRがOFF時の空燃比を[A/F]w/oEGR、EGRがON時の吸気ポート13bにおける圧力を[P]w/EGR、EGRがOFF時の吸気ポート13bにおける圧力を[P]w/oEGR、EGRがON時の吸気ポート13bにおけるガス温度を[T]w/EGR、EGRがOFF時の吸気ポート13bにおけるガス温度を[T]w/oEGR、と規定している。
このようにして算出したEGRガス質量流量Geを、検定に用いる基準流量Qa(真の流量)として採用する。
具体的には、エンジン10の回転数(即ち、脈動周波数)を一定に保持した状態で、エンジン10に所定の負荷を与えた状態(各基準流量Qa)において、EGRバルブ15の開度(脈動振幅x)を変更しながら、ラミナー式流量計2によって流量測定を行う。
そして、生成した(図3と同様の)各グラフから、排気ガスの測定流量yと脈動振幅xの相関を表す関数を算出する(STEP−3)。
補正前における測定流量yは、図9(a)に示すグラフと同様のものとなり、誤差が生じている。
そして、選択したグラフから、測定流量yおよび脈動振幅xの値が、どの基準流量Qaのグラフに最も近いかを判断する。
そして、選択した基準流量Qaに対応する補正式を用いて、測定流量yの補正を行う(STEP−5)。
このようにして各測定流量yを補正した場合の測定結果は、図7のように示される。
このような構成により、ラミナー式流量計2により、レイノルズ数が十分に小さい状態ではない脈動流の流量を精度良く測定することができる。
このような構成により、ラミナー式流量計2による測定流量yの補正値を、精度良く真の流量に近づけることができる。
2 ラミナー式流量計
2a エレメント
2b 圧力検出部(上流側)
2c 圧力検出部(下流側)
3 差圧検出部
4 コントローラ
5 配管部材
Claims (3)
- ラミナー式流量計を用いた脈動流の流量測定方法であって、
測定前の準備において、
測定の対象とする脈動周波数を複数設定するとともに、
流量が一定であり、かつ、既知である複数の基準流量を設定し、
設定した各脈動周波数と設定した各基準流量とを組み合わせた各測定パターンのガスの流れを、脈動振幅を変化させながら、前記ラミナー式流量計によって流量を測定し、
前記各測定パターンにおいて、前記ラミナー式流量計による測定流量と脈動振幅との関係を表す関数を算出しておき、
測定において、
当該測定の測定条件に最も近似する測定パターンを前記各測定パターンから選択するとともに、
選択した測定パターンにおいて算出された前記関数を用いて、
前記ラミナー式流量計により測定したガスの流量を補正する、
ことを特徴とする脈動流の流量測定方法。 - 測定において、
前記ラミナー式流量計により測定したガスの流量は、
前記関数に、脈動振幅を0として代入したときの値に基づいて補正する、
ことを特徴とする請求項1記載の脈動流の流量測定方法。 - ガス流量の測定を行うラミナー式流量計と、
測定の対象とする脈動周波数が複数設定されるとともに、流量が一定であり、かつ、既知である複数の基準流量が設定され、
設定された各脈動周波数と設定された各基準流量とを組み合わせた各測定パターンのガスの流れを、脈動振幅を変化させながら、前記ラミナー式流量計によって測定した結果に基づいて、前記各測定パターンにおいて、前記ラミナー式流量計による測定流量と脈動振幅との関係を表す関数を算出し、
測定時における測定条件に最も近似する測定パターンを前記各測定パターンから選択するとともに、選択した測定パターンにおいて算出された前記関数を用いて、前記ラミナー式流量計により測定したガスの流量を補正するコントローラと、
を備える、
ことを特徴とするガス流量測定装置。
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