JP2012127807A - バイオチップ及びバイオチップの作製方法 - Google Patents

バイオチップ及びバイオチップの作製方法 Download PDF

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倫子 瀬山
Emi Tamechika
恵美 為近
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勉 堀内
Takeshi Hayashi
剛 林
Junichi Takahashi
淳一 高橋
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弦 岩崎
Tatsu Miura
達 三浦
Suzuyo Inoe
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Abstract

【課題】多種の成分を測定対象とする測定領域と参照領域とを有するバイオチップにおいて、参照領域の汚染を抑制して、より正確かつ感度の高い測定を可能とする。
【解決手段】ターゲット分子を特異的に捕捉する捕捉分子により形成した測定領域11をアレイ状に基板の平面上に配置したバイオチップにおいて、測定領域11に隣接して、ターゲット分子および試料溶液中に含まれる夾雑物質の吸着を妨げるブロッキング剤により形成した参照領域12を配置し、測定領域11および参照領域12を形成した基板上にブロッキング剤を吸着させ、ブロッキング剤の主成分は測定対象の主成分と異なるものとする。
【選択図】図3

Description

本発明は、抗体やDNA、酵素といった特異性を有する捕捉分子を固定し、生化学的反応に基づき、サンプル内に存在する分子を分析可能なバイオチップ及びバイオチップの作製方法に関する。
この種のチップは、人や家畜の健康管理や食品や医薬品などの製造管理、環境測定、医療現場での計測などへの応用が期待されている。バイオチップには、一つのチップに捕捉分子を多数アレイ化しておくもの(以下、捕捉分子アレイと呼ぶ)がある。このように一つのチップに捕捉分子を多数アレイ化しておくと、一度に多数の分析対象を検出することができる。多数の分析対象の分子を検出できると、単に多くの指標を得られるだけでなく、応答のパターン解析により、より高度な情報としてサンプルを回収元の人や家畜の状態や疾病の進行度などの情報に変換することも可能になってくる。
バイオチップを用いるセンサとして表面プラズモンを利用するものがあり、表面プラズモンを利用した屈折率センサ(SPRセンサ)では、特異分子との反応について蛍光や発光を起こす分子によるラベル化を必要とせず、サンプル中の測定対象分子との直接的な結合のみで特異的な信号を得ることができる(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、SPRセンサで用いるバイオチップは、金属薄膜を有する基板上に固定化された捕捉分子と、サンプル溶液を導入する機能の二つを要する。本願発明者らは、すでに、使い捨ても可能なチップに適用できる液体サンプルの自動導入機構を実現している。SPRセンサを用いると、抗原抗体反応を例に取れば、抗原と抗体とが結合する吸着速度の測定が可能であり、分単位の短い時間で抗原を定量し、測定終了となる。よって、短時間測定が可能な使い捨てチップを実現できることから、オンサイト(現場)向けのバイオチップ技術として期待されている。
図16は、本願発明者らが開発した従来のバイオチップの概略構成を示した図である。このバイオチップ100では、基板101上に金属薄膜102が形成され、金属薄膜102上に捕捉分子から形成される測定領域103がアレイ状に配置されている(なお、測定領域の集合を「捕捉分子アレイ」と呼ぶ)。基板101上には、測定領域を外側に臨ませる開口を有するシート体104が設けられ、シート体104上には蓋体105が設けられている。蓋体105には、測定領域103に連通する通路106が形成され、この通路106から捕捉分子アレイに対してサンプル液を導入することができる。
バイオセンサ用の上記のような捕捉分子アレイでは、バイオセンサのシグナルは、捕捉分子の安定的な固定化以外に、測定中の温度変化や、フロー系の測定においてはセル内の流れの変化、バッチ系の測定においては振とう環境など、測定系に関わる多くの因子の影響を受ける。それらの影響を最小化するための技術が特許文献2に開示されている。これによれば、測定領域に対して設けられた参照領域から得られるシグナルを用い、その参照シグナルを測定シグナルから差し引くことで、高感度かつ正確な測定が可能になる。
またバイオセンサ用の捕捉分子アレイでは、参照領域の安定性がセンサの感度に大きく影響してくる。すなわち、測定領域に対して設けられた参照領域とのより正確な差分結果を得るためには、理想的な参照領域の作製が、捕捉分子そのもののアレイの作製と同レベルで重要といえる。バイオセンサにおける捕捉分子アレイについては、捕捉分子ごとにセルを設ける方法と設けない方法との二つがある。捕捉分子の種類毎にセルを設けて、サンプル溶液が混ざらないようにする方法の場合、(1)参照領域には同じく捕捉分子が固定化されているが、サンプル溶液に測定対象物が入っていない緩衝溶液などを適用して測定する、あるいは、(2)捕捉分子を固定化しないセルとして、同じサンプル溶液を測定することで参照シグナルを得ることができる。
しかしながら、バッチ系およびフロー系いずれにおいても、捕捉分子の種類ごとにセルを設けると、セルの加工精度がアレイの最高密度を決定することになる。密度の高いセルを作製すると、加工精度の高いものが要求されるためセルのコストが高くなる。また、フロー系においては、セルが増えれば、セルごとに溶液を接続する必要があり、測定時の作業性が悪くなる。また、セルごとに溶液を別々に注ぐ必要があり、注入されるサンプル液体容量の誤差が、測定誤差の影響因子にもなる。
そこで、もう一つの方法として、捕捉分子ごとにセルを設けるのではなく、基板の上に、測定対象に応じた参照領域を作製する方法がある。基板の上には捕捉分子が存在する測定領域と、捕捉分子が応答しない参照領域とが混在しており、シグナルのデータ処理の段階において、測定領域からのシグナルから、対応する参照領域からのシグナルを差し引けばいい。こちらの方法では、基板の上に多数のセルを作製する場合に比べ、捕捉分子および参照領域の作製可能な密度が、最高密度となる。
捕捉分子や参照領域の作製は、スポッター装置やアレイヤー装置を利用することで、10マイクロメートル程度の分解能で形成が可能である。また、加工精度が高いためにコストも高くなるセルも必要なくなり、特にフロー系においては、コストや測定上の作業性の面で大きく有利となる。
バイオチップにおいて基板上に捕捉分子と参照領域とを混在させる基板を作製する際、従来は、通常ブロッキング工程を実施して作製する方法がとられていた。ブロッキング工程とは、捕捉分子の固定の後に、タンパク質や非タンパク質の捕捉分子の特異性を失わない程度の物質からなるブロッキング剤を吸着させることで、捕捉分子への非特異的な吸着を防ぐと同時に、バックグラウンド・シグナルともなる参照領域への測定対象物の吸着を妨げるために行うものである。
さらに、通常ではブロッキング工程の後には洗浄工程があり、ノイズの原因ともなりえる固定化が不十分な捕捉分子を洗い流す過程が含まれる。捕捉分子を固定した後、ブロッキング工程と洗浄工程を実施すれば、最初から捕捉分子の存在しない部分は、ブロッキング剤のみが吸着しているため、図17に示すXのような部分は参照領域としての扱いが可能と考えられていた。なお、図中Yは捕捉分子から形成された測定領域(捕捉分子)を示している。
特開2005−24456号公報、「表面プラズモン共鳴センサ及びバイオセンサ」 特開2010−8361号公報、「病原体検出チップ及び病原体検出方法」
しかしながら、捕捉分子のアレイ化作製技術である、ピンを押し付けるタイプのアレイヤーやインクジェット型や圧力式のスポッター装置の高度化により、より微細な捕捉分子のスポッティングによるドット状のスポット形成が可能になってくると、ブロッキング工程および洗浄工程による参照領域の汚染が問題になってきた。ブロッキング工程時には、ブロッキング剤溶液を捕捉分子が固定化された基板に流し込むのであるが、そのときに緩く固定化されていた捕捉分子が流れ出し、本来参照領域となるべき部分に吸着して汚染を引き起こし、さらには、種類の異なる捕捉分子のスポット部分の端にまで達してしまうことがある。このように、捕捉分子アレイにおける間隔が小さくなってくると、捕捉分子で汚染されていない参照領域が得られなくなり、参照領域と考えていた部分でも、特異的な捕捉分子が機能したシグナルが得られている場合がある。
その場合には、測定領域からのシグナルから参照領域からのシグナルを差し引いても、想定していた差分結果よりも小さい応答の差となり、バイオセンサとしての感度が低くなることや測定誤差が生じる問題が生じる可能性がある。そこで、捕捉分子アレイにおけるそれぞれのスポットの大きさや、スポット間隔を小さくしていった場合でも、安定して参照領域が得られる手法の開発が必要であった。
さらに、センサの高感度化が求められてきている中で、特に基板表面での感度が高い測定原理が用いられてきている。基板表面での測定感度が高くなってくると、夾雑物の吸着の影響を正確に差分により除去する際にも精度が求められてくる。したがって、高感度測定を実施するためには、参照領域への夾雑物の吸着により生じるシグナルが、捕捉分子の部分に吸着するシグナルと同等レベルとなる調整が必要となってきていた。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、多種の成分を測定対象とする測定領域と参照領域とを有するバイオチップであって、参照領域の汚染を抑制して、より正確かつ感度の高い測定を可能とするバイオチップ及びその作製方法の提供を目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、ターゲット分子を特異的に捕捉する捕捉分子により形成した測定領域をアレイ状に基板平面上に配置したバイオチップにおいて、前記測定領域に隣接して、前記ターゲット分子および試料溶液中に含まれる夾雑物質の吸着を妨げるブロッキング剤により形成した参照領域が配置され、前記測定領域および前記参照領域を形成した前記基板平面上が前記ブロッキング剤で吸着されており、前記ブロッキング剤の主成分が測定対象の主成分と異なることを特徴とするバイオチップを提供する。
請求項2に記載の発明は、前記捕捉分子が、抗体、酵素、DNA、又は、DNA及びRNAのうちのいずれかからなるアプタマーであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、ターゲット分子を特異的に捕捉する捕捉分子により形成したスポット状の測定領域をアレイ状に基板表面上に配置するバイオチップの作製方法であって、前記捕捉分子により形成される測定領域と、前記ターゲット分子および試料溶液中に含まれる夾雑物質の吸着を妨げるブロッキング剤により形成されるスポット状の参照領域とを隣接して形成する形成工程と、前記基板表面を洗浄する洗浄工程と、前記測定領域および前記参照領域を形成した前記基板平面上を前記ブロッキング剤で吸着させる吸着工程とを含むことを特徴とするバイオチップの作製方法を提供する。
請求項4に記載の発明は、前記洗浄工程に、水を主成分とする溶液を使った洗浄のみで、前記形成工程で形成した前記測定領域および前記参照領域の犠牲層を除去し、前記測定領域および前記参照領域から前記犠牲層を除去した固定層のみを残す工程が含まれることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記形成工程において、前記参照領域の密度を前記測定領域の密度と同一以上、又は、前記参照領域の高さを前記測定領域の高さと同一以上で形成することを特徴とする。
請求項1,2に係る発明によれば、捕捉分子により形成される測定領域を高密度で形成した場合でも、バイオチップとして組み上げ、サンプル溶液を添加すると、それぞれの捕捉分子(測定領域)に特異的な応答が得られると同時に、参照領域には特異的な応答が現れないため、参照領域からのシグナルとの差分により、感度が高くかつ明確な特異的応答が得られ、正確かつ感度の高い測定が可能となる。
請求項3に係る発明によれば、捕捉分子により形成される測定領域と隣接して、ブロッキング剤により形成される参照領域を形成し、洗浄工程およびブロッキング剤の吸着工程を実施することで、ブロッキング剤のみが存在する理想的な参照領域が得られる。また、測定領域では、異種の捕捉分子が吸着しない領域を形成することできる。したがって、正確かつ感度の高い測定が可能なバイオチップを容易に得ることができる。また、安価な使い捨てチップの製作に際して重要となる成形技術により、低コストで大量生産可能なプラスチック部品にも捕捉分子を設けてバイオチップを作製できるようになる。
請求項4に係る発明によれば、形成工程で形成したスポット状の測定領域及び参照領域に犠牲層部分を設ける場合において、犠牲層部分を除去する過程が水を主とする、有機溶媒を含まない液による洗浄で実施することで、プラスチックなどからなる部品(基板)の表面の荒れなどの損傷を起こさないにすることができる。さらに、有機物からなる捕捉分子は有機溶媒や強力な界面活性剤を含む溶液で洗浄すると、立体構造が変形して活性が失われることから、水を主とする液での洗浄により活性も維持される。
また、犠牲層が除去され、固定層が残された参照領域は、測定領域と同様に、凝集した表面を持ち、同じような吸着を促す参照領域が理想的であることを考えると、非特異的な吸着に対する参照として、単にブロッキング剤溶液を吸着させたものに比べてより優れた参照領域が得られる。
さらに、固定層として残った参照領域は、基板表面と比べて、屈折率として、捕捉分子により形成される測定領域と同等あるいは似た状態のスポット状で残る。このようにして、捕捉分子による測定領域とブロッキング剤による参照領域とをスポット状の固定層として残るようにすることで、夾雑物吸着により生じるノイズレベルが、捕捉分子による測定領域とブロッキング剤による参照領域とで同等になるよう調整し、信号に含まれるノイズ成分を差分により除去することができるバイオチップを確実に得ることができる。
つまり、全反射型の光学系に代表されるような基板表面での屈折率感度が高い測定系をバイオチップに用いる場合、スポット状となっていないブロッキング剤で保護された参照領域に吸着する夾雑物については、捕捉分子により形成される測定領域上に吸着する場合に比べ、物理的により基板に近接していることから、より大きなシグナル変化を生じさせる。その場合には、捕捉分子の測定領域の上に同様の夾雑物が吸着した場合、スポット形状となっていないブロッキング剤で保護された参照領域への吸着の信号に対する影響がより大きくなり、信号に含まれるノイズ成分の差分ができなくなる。その結果、測定感度および測定精度が下がってしまう。本発明によれば、このような問題を解消できるバイオチップを確実性をもって得られる。
請求項5に記載の発明によれば、洗浄工程などの作製工程において、不安定に固定化された捕捉分子が基板表面に広がる際に、ブロッキング剤から形成される参照領域そのものが物理的障害となることから、理想的な参照領域を形成すると同時に捕捉分子同士の混合を妨げる効果がある。
本発明の実施形態に係るバイオチップを模式的に示した図である。 上記バイオチップを組み上げた屈折率センサ(SPRセンサ)を模式的に示した図である。 上記バイオチップの測定領域及び参照領域の拡大断面図である。 上記バイオチップの測定領域及び参照領域の配列を模式的に示した図である。 本発明の実施形態の変形例に係る定領域及び参照領域の配列を模式的に示した図である。 上記バイオチップの基板に対して測定領域及び参照領域を形成するスポッター装置を示した図である。 上記バイオチップの測定領域及び参照領域の作製手順を説明する図である。 基板上に形成したスポットを電子顕微鏡で撮影した写真である。 図8Aのスポットをさらに拡大して電子顕微鏡で撮影した写真である。 本発明の実施例1に係るバイオチップの屈折率プロファイルを示した図である。 実施例1に対応するフローセルを示した図である。 実施例1に係る牛乳由来のブロッキング剤で作製した参照領域を用いた測定領域による差分を示した図である。 実施例1に対する比較例を説明する図であり、ブロッキング剤スポットのない測定領域のブロッキング工程後の屈折率プロファイルを示した図である。 実施例1に対する比較例を説明する図であり、捕捉分子スポットからの捕捉分子の流出・吸着の影響を説明する図である。 実施例2に係る、魚由来の簿ロッキング材で作製したバイオチップの屈折率プロファイルを示した図である。 実施例2に係る魚由来のブロッキング剤で作製した参照領域を用いた測定領域による差分を示した図である。 従来のセンサチップの概略構成を示した図である。 従来のセンサチップの測定領域及び参照領域を模式的に示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るバイオチップ1を模式的に示しており、図1(A)は、バイオチップ1の上面図を示し、図1(B)は、図1(A)のS−S線に沿う断面図を示している。
バイオチップ1は、マルチチャンネル屈曲率センサ(以下、SPRセンサと呼ぶ)に搭載されるものとして構成され、図2はSPRセンサ20の概略構成を示している。SPRセンサ20においてバイオチップ1はプリズム21上にマウントされた状態で用いられる。このSPRセンサ20は、光源22からプリズム21を介してバイオチップ1に対して光を照射し、CCDカメラ23によってバイオチップ1により反射された反射光の強度を測定することで、バイオチップ1上に生じるエバネッセンス波と表面プラズモンとの共鳴角度を測定する。なお、図2において、符号24は、光源22からの光を透過するレンズ、符号25は、バイオチップ1から反射された反射光を透過するレンズを示している。
図1に示すように、バイオチップ1は、プラスチック又はガラス基板からなる基板2を有し、基板2上には金属薄膜3が形成されている。金属薄膜3によって光源22からの光が反射されるとともに、エバネッセンス波及び表面プラズモンが発生する。基板2の金属薄膜3とは反対の面になる部分には、SPRセンサ20のプリズム21と当接するマッチングシート4が形成されている。マッチングシート4をあらかじめ基板2の裏面に形成しておくことで、SPRセンサ20に対するバイオチップ1のマウント作業が容易になる。
なお、マッチングシート4や基板2をプラスチック基板とした場合は、水洗浄には十分耐えられるが、有機溶剤を用いる処理へ適用するとマッチングシート4およびプラスチック基板の劣化を招き、SPRセンサ20とバイオチップ1との光学的マッチングが悪くなり、SPRセンサ20としての感度を下げる原因にもなる。
バイオチップ1の金属薄膜3上には、金属薄膜3の中央領域に設定された観測領域5を外側に臨ませる開口が形成された両面テープ6が設けられ、両面テープ6にはポリジメチルシロキサン製の筐体7が固定されている。筐体7は観測領域5を覆っており、筐体7には、観測領域5と面する空間であるフローセル8と、フローセル8から外部に連通するインレット通路9と、アウトレット通路10とが設けられている。バイオチップ1では、インレット通路9からサンプル溶液を観測領域5に導入して、アウトレット通路10から排出することができる。
図3は、金属薄膜3の観測領域5を拡大して示しており、観測領域5には、捕捉分子により形成された測定領域11と、ブロッキング剤により形成された参照領域12とが固定されている。測定領域11及び参照領域12は、スポット状(斑点状で高さを有する形状)に形成されている。以下では、測定領域11を捕捉分子スポット11と、参照領域12をブロッキング剤スポット12と呼ぶものとする。
本実施形態では、捕捉分子スポット11が互いに異なる3種の捕捉分子からなり複数設けられている(捕捉分子スポット11a,11b,11c)。捕捉分子は、ターゲット分子を特異的に捕捉する物質であり、捕捉分子としては、抗体、酵素、DNA、又は、DNA及びRNAのうちのいずれかからなるアプタマー、又はタンパク質等が用いられる。なお、捕捉分子スポット11は、2種以上の捕捉分子を用いて互いに異なるものを複数設けることが好ましい。こうすることで、一度の測定で多数の検査対象の測定を行い測定の効率化を図れる。
捕捉分子スポット11は、アレイ状(一定距離を隔てて複数並ぶ状態)に配置され、ブロッキング剤スポット12は、捕捉分子スポット11にそれぞれ隣接して配置されている。本実施形態では、図4に示すように、隣り合う捕捉分子スポット11の間にブロッキング剤スポット12が一つ配置されて一列に並ぶが、観測領域を二次元上に広げて測定可能なSPRセンサを用いる場合には、図5に示すように、2次元上に広がるように複数配置された捕捉分子スポットに、ブロッキング剤スポットが隣接して配置されるような配列であってもよい。
そして、図3に示すように、本実施形態に係るバイオチップ1では、捕捉分子スポット11およびブロッキング剤スポット12が形成された後に、基板2上に非特異吸着を防ぐブロッキング処理が施され、捕捉分子スポット11およびブロッキング剤スポット12の上にブロッキング剤で形成されたブロッキング層13が形成される。このブロッキング層13が形成されることで、捕捉分子スポット11およびブロッキング剤スポット12の上にブロッキング剤が吸着した状態となっている。
ブロッキング剤スポット12を形成するブロッキング剤は、捕捉分子が捕捉するターゲット分子および試料溶液中に含まれる夾雑物質の吸着を妨げるものである。詳細は後述するが、ブロッキング剤スポット12はインクジェット型等のスポッター装置で形成されるものである。この点から、スポット状のブロッキング剤スポット12を形成するブロッキング剤としては、ブロッキング剤自身をスポットした際に、スポット形状が安定して形成できるものが望ましく、天然由来あるいは合成のタンパク質を含むものが望ましい。
また、ブロッキング剤スポット12を形成するブロッキング剤は、ブロッキング工程(ブロッキング層13を形成する工程)で使われるブロッキング剤溶液と同じものを使うのが望ましい。すなわち、スポット用のブロッキング剤を使って、そのままブロッキング工程を実施することが望ましい。しかしながら、センサの目的や検出原理にあわせて、ブロッキング工程で用いられる以外の参照用ブロッキング剤をスポットしてもよい。その場合においても、捕捉分子により形成された測定領域の上およびブロッキング剤により形成された参照領域の上に、非特異吸着防止用のブロッキング剤は吸着させる必要がある。
また、ブロッキング剤スポット12を形成するブロッキング剤としては、測定対象物と同じものを主成分としていないことが重要である。すなわち、ブロッキング工程においてスポット形成後にブロッキング剤を吸着させると、サンプル測定する前に、ブロッキング剤に含まれる主成分によって捕捉分子に含まれる活性サイトが塞がってしまうためである。反対に主成分が測定対象物でなければ、ブロッキング剤として適用可能である。ブロッキング剤の主成分とは、総量とすると水中に0.1-5%含まれているタンパク、核酸、界面活性剤のことを示す。ただし、スポットとして形成させる場合には、スポッターの性能に適合させるために、ブロッキング剤濃度を薄めても、あるいは、濃縮して高い濃度として利用してもよい。なお、測定対象の主成分とは、捕捉分子を製造あるいは設計する際に、捕捉対象とする分子のことである。動物に免疫させて作製する抗体の場合には、その抗原となる分子が主成分である。また、人工的に設計するアプタマーの場合には、設計の際に使う捕捉対象分子のことである。
また、図3では、模式的にそれぞれのスポット(捕捉分子スポット11およびブロッキング剤スポット12)がブロッキング層13に被覆されたように表したが、補足分子スポット11の非特異吸着する部分に吸着している状態となる。巨視的に見て、補足分子スポット11の表面が被覆されているが、分子レベルでみると、捕捉分子における認識部位以外の部分に吸着している状態になっている。補足分子の認識部位については、特定な構造の分子に特異的に吸着するので、他の分子がいても、吸着しない。ブロッキング剤は、捕捉分子スポット11の非特異吸着部位に吸着させることで、サンプル溶液中の夾雑物の吸着を防ぐ効果がある。また、ブロッキング剤スポット12の上にさらにブロッキング剤が吸着することで、夾雑物の吸着の影響が捕捉分子スポット部分への吸着と類似性が高くなる。
上記のバイオチップ1をSPRセンサ20に搭載した場合の測定結果の表示においては、測定領域である捕捉分子スポット11からのシグナルに対応する参照領域であるブロッキング剤スポット12のシグナルを差し引くが、差し引き方としては、近接する一つの参照領域を選んで差し引く方法や、直線状に近接する2つの参照領域のシグナルを平均化してから測定領域からのシグナルから差し引く方法がある。また、捕捉分子スポット11およびブロッキング剤スポット12が2次元上に配列された場合は、近接する4つのブロッキング剤スポット(参照領域)のシグナルを平均化してから測定領域からのシグナルから差し引く方法がある。
以上に説明した本実施形態に係るバイオチップ1では、測定領域11に隣接して、ターゲット分子および試料溶液(サンプル溶液)中に含まれる夾雑物質の吸着を妨げるブロッキング剤により形成した参照領域12が配置され、測定領域11および参照領域12を形成した基板2平面上がブロッキング剤で吸着されており、ブロッキング剤の主成分を測定対象の主成分と異なるものものとしている。このようなバイオチップ1では、捕捉分子により形成される測定領域11を高密度で形成した場合でも、バイオチップ1として組み上げ、サンプル溶液を添加すると、それぞれの捕捉分子(測定領域11)に特異的な応答が得られると同時に、参照領域12には特異的な応答が現れないため、参照領域12からのシグナルとの差分により、感度が高くかつ明確な特異的応答が得られ、正確かつ感度の高い測定が可能となる。
次に、本実施形態におけるバイオチップ1の作製方法について説明する。本実施形態において、バイオチップ1は、測定領域と参照領域とを隣接して形成する形成工程と、基板2の表面を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後に、測定領域および参照領域を形成した基板2平面上をブロッキング剤で吸着させる吸着工程とを経て作製される。
先ず、形成工程では、基板2、すなわち、金属薄膜3上に形成したガラスあるいはプラスチック基板上に、抗体、酵素、タンパク質、DNA等である捕捉分子とブロッキング剤を、図6に示すようなインクジェット型のスポッター装置60を使った方法で、スポットとして形成する。図6において、61〜63はそれぞれ異なる捕捉分子を示し、64はブロッキング剤を示している。なお、本実施形態では、インクジェット型のスポッター装置60を用いるが、ピンを押し付けるタイプのアレイヤーや圧力式のスポッター装置を用いてもよい。
捕捉分子とブロッキング剤のスポット後の状態を図7(A)に示す。ここで、洗浄前の捕捉分子のスポットを洗浄前捕捉分子スポットとして符号71〜73で示し、洗浄前のブロッキング剤のスポットを洗浄前ブロッキング剤スポットとして符号74で示す。
図7(A)に示すように、捕捉分子およびブロッキング剤をスポットすると、基板2表面に薄く一層から数層、強固に吸着する固定層αが形成される。さらにその層の上には、捕捉分子同士およびブロッキング剤に含まれる分子同士の主に疎水性相互作用によって凝集した形状で層βが形成される。固定層αとこの凝集形状の層βが捕捉分子およびブロッキング剤の当初のスポット(71〜74)となる。捕捉分子については、疎水性相互作用以外の結合、例えば、共有結合やDNAの相補的結合を介して基板表面に固定化してもよい。疎水性相互作用により形成されたスポットの場合は、洗浄工程を経ても剥がれない固定層αが形成されると同時に、固定層αより上部の部分(凝集した形状)については、容易に洗浄工程にて流れ去る犠牲層βとなる。
なお、上記のように、洗浄前捕捉分子スポット71〜73及び洗浄前ブロッキング剤スポット74において固定層α及び犠牲層βを形成する場合には、スポットの形成時に、固定層αとなる部分よりも多くの捕捉分子及びブロッキング剤をスポットとして形成する。ここで、洗浄前ブロッキング剤スポット74の高さや密度を洗浄前捕捉分子スポット71〜73と同程度あるいはそれ以上にしておくと、すなわち、洗浄前ブロッキング剤スポット74の密度を洗浄前捕捉分子スポット71〜73の密度と同一以上、又は、洗浄前ブロッキング剤スポット74の高さを洗浄前捕捉分子スポット71〜73の高さと同一以上で形成すると、洗浄工程などの作製工程において不安定に固定化された捕捉分子が基板表面に広がる際にブロッキング剤スポットそのものが物理的障壁となることから、理想的な参照領域を形成すると同時に捕捉分子同士の混合を妨げる効果もある。
また、スポッターやアレイヤーを用いて作製した捕捉分子のスポットは、スポットされたと同時に乾燥する。スポット形状として形成され、乾燥と同時に凝集が起こって形成され、固定層αとなった部分の表面は分子の再配置がおこっている。これに対する理想的な参照領域を考慮すると、単に溶液から基板表面に吸着させたブロッキング剤ではなく、捕捉分子と同様の凝集を生じた表面が望ましい。そのためには、捕捉分子のスポット形成とブロッキング剤のスポット形成を同じ工程で行うことによって可能となる。
次に、洗浄工程では、犠牲層βを除去するための洗浄を行う。この洗浄工程後の基板2上の様子を図7(B)に示す。この状態では、図3に示した測定領域である捕捉分子スポット11および参照領域であるブロッキング剤スポット12が形成されることになる。
ここで、洗浄工程において犠牲層β部分を除去する過程が水を主とする、有機溶媒を含まない液による洗浄で実施することが好ましい。洗浄に用いる水については、ブロッキング剤とは反対に、90%以上水を含む溶液とする。この場合、プラスチックなどからなる部品(基板)の表面の荒れなどの損傷を起こさないにすることができる。さらに、有機物からなる捕捉分子は有機溶媒や強力な界面活性剤を含む溶液で洗浄すると、立体構造が変形して活性が失われることから、水を主とする液での洗浄により活性も維持される。また、犠牲層βが除去され、固定層αが残されたブロッキング剤スポット12は、捕捉分子スポット11と同様に、凝集した表面を持ち、同じような吸着を促す参照領域が理想的であることを考えると、非特異的な吸着に対する参照として、単にブロッキング剤溶液を吸着させたものに比べてより優れた参照領域が得られる。
さらには、固定層αとして残ったブロッキング剤スポット12は、基板2表面と比べて、屈折率として、捕捉分子により形成される捕捉分子スポット11と同等あるいは似た状態のスポット状で残る。このようにして、捕捉分子スポット11とブロッキング剤スポット12とをスポット状の固定層αとして残るようにすることで、夾雑物吸着により生じるノイズレベルが、捕捉分子スポット11とブロッキング剤スポット12とで同等になるよう調整し、信号に含まれるノイズ成分を差分により除去することができるバイオチップを確実に得ることができる。
またここで、金属薄膜2上に形成されるタンパク質のスポットの代表的な例を図8A,図8Bに示す。この写真は、約2マイクロメートル程度の高さを持つ抗体からなるスポットを形成した後、水洗浄を行った後に観測した電子顕微鏡写真である。図8Bは、図8Aで表されたスポットを400倍としたものである。なお、図8A,Bにおいて、Gはガラス基板を示し、Mは金属薄膜を示し、Pはスポットを示している。
洗浄を行った後でも、図8Aに示すように抗体のタンパク質は強固に金属薄膜の表面上に吸着している。図8Bに示すように、400倍まで倍率を上げると、スポットの端に当たる部分は均一で、真ん中のあたりはところどころ斑のある形状であることも確認できる。さらに倍率を上げて確認したところ、白く見える部分においても抗体の吸着は存在しており、さらに吸着している抗体層の厚さを確認したところ、この例では、10から20ナノメートルであった。実際に測定に用いる際は、固定層は水溶液中で膨潤することから、この数倍以上の高さで数100ナノメートル以下となる。タンパク質を含む溶液をスポッター装置によりスポットとして形成すると、スポットされた溶液の乾燥に伴い、界面部分にタンパク質が凝集して密度が高くなり、洗浄後は薄膜として基板表面には固定された固定層を形成し、界面部分の密度の高い部分も履歴として残った形で形成される。
そして、吸着工程では、上記のような洗浄工程の後に、基板2上に非特異吸着を防ぐブロッキング処理(吸着工程)を施す。これにより、図7(C)に示すように、ブロッキング層13が形成され、捕捉分子スポット11、ブロッキング剤スポット12、及びこれらが形成される部位以外の金属薄膜3がブロッキング剤で吸着されバイオチップが作製される。
上記のように、捕捉分子により形成される測定領域11(正確には、上記洗浄前捕捉分子スポット71〜73)と隣接して、ブロッキング剤により形成される参照領域12(正確には、上記洗浄前ブロッキング剤スポット74)を形成し、洗浄工程およびブロッキング剤の吸着工程を実施した場合、ブロッキング剤のみが存在する理想的な参照領域12が得られる。また、測定領域11では、異種の捕捉分子が吸着しない領域を形成することできる。したがって、正確かつ感度の高い測定が可能なバイオチップを容易に得ることができる。また、安価な使い捨てチップの製作に際して重要となる成形技術により、低コストで大量生産可能なプラスチック部品にも捕捉分子を設けてバイオチップを作製できるようになる。
次に、上記バイオチップ1をより具体的に構成し、バイオチップ1をSPRセンサ20に搭載し測定を行った結果を検証した実施例1を説明する。上記実施形態の説明で用いた図面を適宜用いて説明を行う。なお、この実施例では、本発明に係る測定領域を捕捉分子スポットと呼び、本発明に係る参照領域をブロッキング剤スポットと呼んで説明する。
図1、図2を参照し、本実施例では、バイオチップ1の観測領域5を、全反射光学系の焦線方向に設定し、長手方向が約5ミリ、幅が光源22の収束幅に依存するが約0.3ミリメートル程度の領域とした。SPRセンサ20の観測領域5における分解能力は10マイクロメートル程度であり、よって観測領域5内に捕捉分子スポットとブロッキング剤スポットとを高密度にアレイ状に設けることで、多成分の同時分析が可能なものとした。なお、2次元SPRイメージング装置を用いれば、面領域のSPRシグナル変化を10×10点程度の2次元の領域において同時に測定できる。
基板2はプラスチックあるいはガラス基板(16×16×1ミリ)に、厚さ約50ナノメートルの金属薄膜3を形成した。そして、捕捉分子スポットとブロッキング剤スポットの形成の際には、捕捉分子とブロッキング剤について、図6に示したようなインクジェット型のスポッター装置を使った方法で、スポットとして形成した。なお、マッチングシート4には厚さ0.1ミリメートルのものを用い、両面テープ6としては厚さ70マイクロメートルのものを用い、筐体7は高さ3ミリメートルのものを用いた。
観測領域5の長手方向は上述のように約5ミリで、この間に捕捉分子およびブロッキング剤から形成される捕捉分子スポットとブロッキング剤スポットが収まるようにスポットを形成した。なお、本例において、SPRセンサ20の観測の分解能は10マイクロメートルであるが、10マイクロメートル以上であれば、長手方向のスポットの幅は任意に変化させてよい。
SPRセンサ20を用いると、アレイ状態の捕捉分子スポットとブロッキング剤スポット2を確認できる屈折率プロファイルを得ることができる。本実施例では、8種類の抗体と1種類の酵素を捕捉分子として捕捉分子スポットとブロッキング剤スポットとで19スポット作製し、バイオチップを構成した。
作製した捕捉分子スポットの屈折率プロファイルを図9に示す。図9において、横軸は観測領域5における長手方向に位置座標を示し、縦軸は屈折率を示している。CS1〜CS9は捕捉分子スポットを示し、BSはブロッキング剤スポットを示している。この屈折率プロファイルについて、基板2とフローセル8とを対応をさせると図10に示すようになる。なお、図10では、図1に示した要素を同一符号で示している。
スポット用のブロッキング剤としては牛由来のものを使い、ブロッキング工程(吸着工程)においても同じブロッキング剤溶液を使った。捕捉分子およびブロッキング剤スポットの平面上の大きさと、スポット間の間隔は、全てのスポットで略同じとした。図9において、SPRセンサ20の観測領域の長手方向の幅は200マイクロメートルで区切られており、捕捉分子スポットの中心点とブロッキング剤スポットの中心点との距離は概ね250マイクロメートルである。
図9において捕捉分子スポットの屈折率プロファイルで確認されるとおり、牛由来のブロッキング剤スポットの屈折率は、10個ともほぼ一定のレベルに形成されている。屈折率プロファイルは、高さと密度で定義されるものであり、一つ一つのスポット部分の両側に耳のように立っている部分については、図8Bの写真で示されていたような密度の高いスポットの端の状態を正確に観測している結果である。
そして、本実施例では、上述した耳のように立っている部分を避け、平坦になっている部分を参照領域として選択した。SPRセンサ20では、屈折率プロファイルが似ている状態のスポットに同量の物質が吸着すれば、同じシグナル変化を示す。さらなる理想状態としては、捕捉分子スポットと同じ屈折率プロファイルを持つブロッキング剤スポットを形成することであるが、基板表面に近傍ほど感度が高くなることを考慮すると、ブロッキング剤スポットとして緩衝部分を設けることで、参照領域への夾雑物によるシグナル変化を大きく検出する影響は抑えられるといえる。
この実施例に係る捕捉分子アレイを用いて作製したバイオチップのマルチチャンネルSPRセンサによる測定結果の例を図11に示す。図11において横軸は時間(秒)を示し、縦軸は屈折率を示している。この結果は参照領域との差分を行った後の結果である。このバイオチップでは、9種の捕捉分子はすべて異なる種類からなるため、サンプル溶液に対してそれぞれの応答を示しているが、捕捉分子のうち2つが明確な応答を示している(図中CS1、CS2)。そのほかのスポットについては、正の応答を示さなかった。
図12には、比較としてブロッキング剤スポットのないバイオチップを形成し、洗浄工程後に屈折率プロファイルを測定した例を示す。図12において、121〜123は、抗体からなる捕捉分子スポットを示している。各抗体はそれぞれ異なるものを用いている。124,127はブロッキング剤の吸着部分を示し、125は捕捉分子スポット121を形成した抗体の崩れた部分を示し、126は捕捉分子スポット126を形成した抗体の崩れた部分を示している。このように、捕捉分子スポットから流れ出し、スポットとスポットの間に捕捉分子の堆積していることが観測される。このように、ブロッキング剤スポットが無い場合、理想的な参照領域が形成されなかった。
さらに、図13では、屈折率プロファイルと、捕捉分子アレイに特異的に吸着する分子との応答により増加した際の屈折率の時間変化率とを重ねて描いている。図13において、L1が特異分子の吸着により変化した屈折率の時間変化率を示し、L2が捕捉分子の基板上での固定化密度(屈折率)を示している。Aの捕捉分子スポットから溶出した捕捉分子が、ブロッキング剤スポットのないB領域に流れ出して吸着している様子と、それらの特異分子との反応の結果、ブロッキング剤スポットが形成されているC領域においてのみ、特異分子の吸着による屈折率の増加が生じていないことが明らかとなっている。
次に、実施例2では、魚由来のブロッキング剤と抗体からなる捕捉分子を用いた例を説明する。図14に、ブロッキング工程および洗浄工程後の屈折率プロファイルを示す。図14において、横軸はSPRセンサ20における観測領域の長手方向の位置座標を示し、縦軸は屈折率を示している。本例では、捕捉分子スポット(CS1〜CS6)が6個、ブロッキング剤スポット(BS)が7個となっており、捕捉分子スポットの幅が約200マイクロメートルであるのに対して、ブロッキング剤スポットは倍に近い幅で作製した。
ブロッキング剤の種類や、捕捉分子の種類によりスポッターを使ったスポット形状には差が生じることから、利用する捕捉分子やブロッキング剤の種類に応じたスポットのデザインはアレイ作製における重要なファクターである。また、捕捉分子は3種類とし、複数の同じ種類の捕捉分子スポットを形成している。同じ種類の捕捉分子については、屈折率プロファイルとしてもほぼ同様のプロファイルを示す。このように、同種類の捕捉分子スポットについて多重化することにより、測定の誤り率を低下させることが可能である。
本実施例に係る捕捉分子アレイを用いて作製したバイオチップのマルチチャンネルSPRセンサによる測定結果の例を図15に示す。図15においては、捕捉分子(CS1)において、もっとも感度の高い応答を示し、別の種類の応答が期待されるスポット(CS2,3)についても、感度は小さいものの、応答を示すことが確認できた。特異的な応答をしないことが想定されていた3スポット(CS4,5,6)については、理想的に応答が抑えられていた。なお、図15において横軸は時間(秒)を示し、縦軸は屈折率を示している。
以上で本発明を実施形態及び実施例により説明したが、本発明に係るバイオチップでは、金属薄膜以外に、SiO2やSiNなどの薄膜を形成した基板を用い、エリプソメーターを測定装置として同様のターゲット分子と捕捉分子との特異的な応答を検出することが可能である。ただし、原理的にマルチチャンネルSPRセンサのレベルの同時測定が難しいので、オンサイトでの測定には適していない。
また、本発明に係るバイオチップへサンプル溶液を添加し、さらに、捕捉されたターゲット分子を捕捉できる、いわゆるサンドイッチが可能かつ酵素でラベル化された捕捉分子を一品ずつ、あるいは、混合物として適用すると、SPRセンサやエリプソメーターを用いずに、酵素反応の結果生じる色素の発色の程度をプレートーリーダーなどの光度計や分光器で読み取って検出することも可能である。ただし、この場合には2種類の捕捉分子が必要で、反応時間も長くなることと、測定操作が煩雑となるので、オンサイトでの測定には適さなくなる。
多種の分析対象物を一度に測定するバイオチップが実現することから、人や家畜の健康管理や食品や医薬品などの製造管理、環境測定、医療現場での計測や、農作物で特に水耕栽培の環境管理や、養殖あるいは観賞用の魚類のための水槽の管理、役立てることができる。
1 バイオチップ
2 基板
11 測定領域(捕捉分子スポット)
12 参照領域(ブロッキング剤スポット)
20 屈曲率センサ(SPRセンサ)

Claims (5)

  1. ターゲット分子を特異的に捕捉する捕捉分子により形成した測定領域をアレイ状に基板平面上に配置したバイオチップにおいて、
    前記測定領域に隣接して、前記ターゲット分子および試料溶液中に含まれる夾雑物質の吸着を妨げるブロッキング剤により形成した参照領域が配置され、
    前記測定領域および前記参照領域を形成した前記基板平面上が前記ブロッキング剤で吸着されており、
    前記ブロッキング剤の主成分が測定対象の主成分と異なる
    ことを特徴とするバイオチップ。
  2. 前記捕捉分子は、抗体、酵素、DNA、又は、DNA及びRNAのうちのいずれかからなるアプタマーである
    ことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ。
  3. ターゲット分子を特異的に捕捉する捕捉分子により形成したスポット状の測定領域をアレイ状に基板表面上に配置するバイオチップの作製方法であって、
    前記捕捉分子により形成される測定領域と、前記ターゲット分子および試料溶液中に含まれる夾雑物質の吸着を妨げるブロッキング剤により形成されるスポット状の参照領域とを隣接して形成する形成工程と、
    前記基板表面を洗浄する洗浄工程と、
    前記測定領域および前記参照領域を形成した前記基板平面上を前記ブロッキング剤で吸着させる吸着工程とを含む
    ことを特徴とするバイオチップの作製方法。
  4. 前記洗浄工程には、水を主成分とする溶液を使った洗浄のみで、前記形成工程で形成した前記測定領域および前記参照領域の犠牲層を除去し、前記測定領域および前記参照領域から前記犠牲層を除去した固定層のみを残す工程が含まれる
    ことを特徴とする請求項3に記載のバイオチップの作製方法。
  5. 前記形成工程において、前記参照領域の密度を前記測定領域の密度と同一以上、又は、前記参照領域の高さを前記測定領域の高さと同一以上で形成する
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載のバイオチップの作製方法。
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