JP2012127466A - 転がり軸受の密封装置 - Google Patents

Abstract

【課題】耐水性の向上を図ることができる転がり軸受の密封装置を提供する。
【解決手段】固定輪としての内輪３０と、回転輪としての外輪４０との間の環状空間を密封するシール部材８０を備える。シール部材８０は、外輪４０、又は外輪４０と一体状に回転する回転部材２０に固定される固定部８１と、固定部８１から径方向内方へ延出された弾性体よりなる径方向延在部８５と、径方向延在部８５から突出されて内輪３０の端面、又は内輪３０に固定される内輪側固定部材に摺接するリップ部８６、８７とを備える。径方向延在部８５のリップ部８６、８７よりも外径側に位置する部分には、屈曲変形可能な薄肉部８８が形成される。薄肉部８８の屈曲点Ｐから径方向延在部８５のリップ部８６、８７を含む内径端まで間における内径側部分８９の重心Ｑの位置が、屈曲点Ｐよりも内輪３０端面側に位置する軸方向内方に設定されている。
【選択図】図３

Description

この発明は転がり軸受の密封装置に関する。

従来、例えば、車両のエンジン補機に掛け渡されるベルトに対するアイドラプーリ等に使用される転がり軸受の密封装置において、シール部材の外径側部分には、外輪に固定される固定部が形成され、内径側部分には、内輪の端面に摺接するリップ部が形成された構造のものが知られている。
また、例えば、特許文献１に開示されているように、シール部材に対し、内径側リップと外径側リップとをそれぞれ形成し、内径側リップが所定量摩耗された後に、初めて外径側リップを内輪の端面に接触させるように構成した転がり軸受の密封装置が知られている。
また、密封効果を高めるために、内輪の端部外周面、あるいは、軸部材の外周面に、ラビリンスを形成するスリンガ等の非接触のシール部材を配設している。

特開平１０−２６１４３号公報

ところで、特許文献１に開示された転がり軸受の密封装置において、内輪の端部外周面、あるいは、軸部材の外周面に、ラビリンスを形成する非接触のシール部材を配設することで、車両走行時等において、泥水等の浸入を抑制することができる。
しかしながら、車両走行時等において、非接触のシール部材によるラビリンスに対し、泥水等が不測に浸入することがあり、この場合には、ラビリンスに浸入した泥水等が排出され難くなる。そして、ラビリンスに滞留した泥水成分によってリップの摩耗が著しくなることが想定される。

この発明の目的は、前記問題点に鑑み、耐水性の向上を図ることができる転がり軸受の密封装置を提供することである。

前記課題を解決するために、この発明の請求項１に係る転がり軸受の密封装置は、固定輪としての内輪と、回転輪としての外輪との間の環状空間を密封するシール部材を備えた転がり軸受の密封装置であって、
前記シール部材は、前記外輪、又は前記外輪と一体状に回転する回転部材に固定される固定部と、
前記固定部から径方向内方へ延出された弾性体よりなる径方向延在部と、
前記径方向延在部から突出されて前記内輪の端面、又は前記内輪に固定される内輪側固定部材に摺接するリップ部とを備え、
前記径方向延在部の前記リップ部よりも外径側に位置する部分には、前記内輪の端面又は前記内輪側固定部材に向けて屈曲変形可能な薄肉部が形成され、
前記薄肉部の屈曲点Ｐから前記径方向延在部のリップ部を含む内径端まで間における内径側部分の重心Ｑの位置が、前記屈曲点Ｐよりも前記内輪端面側に位置する軸方向内方に設定されていることを特徴とする。

前記構成によると、軸受回転時の遠心力の作用によって、シール部材の径方向延在部に形成された薄肉部で屈曲変形すると共に、リップ部が軸方向内方に変位して内輪の端面、又は内輪側固定部材に摺接する。
また、回転が高速にしたがって遠心力が増大するため、内輪の端面、又は内輪側固定部材に対するリップ部の接触圧が高くなる。これによって、密封性を良好に確保することができ、耐水性の向上を図ることができる。

請求項２に係る転がり軸受の密封装置は、請求項１に記載の転がり軸受の密封装置であって、
薄肉部は、径方向延在部の内輪側の一側面から反対面側へ向けて窪む環状の凹部によって形成されていることを特徴とする。

前記構成によると、シール部材の径方向延在部の内輪側の一側面から反対面側へ向けて窪む環状の凹部によって薄肉部を形成することで、内径側部分の重心Ｑの位置を、薄肉部の屈曲点Ｐよりも内輪端面側に位置する軸方向内方に容易に設定することができる。

請求項３に係る転がり軸受の密封装置は、請求項１又は２に記載した転がり軸受の密封装置であって、
内輪側固定部材は、リップ部が摺動する径方向平坦面を有するスリンガによって構成されていることを特徴とする。

前記構成によると、内輪側固定部材としてのスリンガの径方向平坦面に対し、シール部材のリップ部が摺動することによって安定した密封性を確保することができる。

この発明の実施例１に係る転がり軸受の密封装置を示す縦断面図である。 同じく密封装置を拡大して示す縦断面図である。 同じく密封装置を構成するシール部材を拡大して示す縦断面図である。

この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。

この発明の実施例１を図面にしたがって説明する。
図１に示すように、この実施例１に係る転がり軸受は、車両のエンジン補機に掛け渡されるベルトに対するアイドラプーリ等のプーリ部材（この発明の回転部材に相当する）２０を軸部材１０に対し回転可能に支持するために、軸部材１０とプーリ部材２０との間に配設される。
プーリ部材２０は、内径側筒状部２１と、この内径側筒状部２１の一端部から径方向外方へ延出された外径側環状部２２と、この外径側環状部２２の外径端から内径側筒状部２１に向けて平行状に折り返されたプーリ部２３と、内径側筒状部２１の他端部から径方向内方へ延出された内径側環状部２４とを備えている。
また、内径側環状部２４の外側面には、後に詳述する第２のシール部材８０が組み付けられる凹部２５が形成されている。

図２に示すように、転がり軸受は、軸部材１０の外周面に嵌合（圧入固定）される固定輪としての内輪３０と、プーリ部材２０の内径側筒状部２１に嵌合（圧入固定）される回転輪としての外輪４０と、内輪３０の外周面の内輪軌道面３１と外輪４０の内周面の外輪軌道面４１との間に転動可能に配設されかつ保持器５５によって保持される複数の転動体５０とを備えている。

図２に示すように、内輪３０と外輪４０との間の環状空間を密封する密封装置は、内輪３０と外輪４０との左右両端部の間に配設される左右の両第１のシール部材６０と、内輪３０と外輪４０との間の左右の両第１のシール部材６０のうち、少なくとも一方（泥水が掛かりやすい側）の第１のシール部材６０の軸方向外側に位置して内輪３０に固定される内輪側固定部材７０と、この内輪側固定部材７０と協働して密封機能をなす第２のシール部材（この発明のシール部材に相当する）８０とを備えている。

図３に示すように、第１のシール部材６０は、外輪４０の内周面の端部に段差状に形成された外輪凹部４２に嵌込まれて固定される固定部６１と、この固定部６１から内輪３０の外周面の端部に段差状に形成された内輪凹部３２に向けて延出された径方向延在部６５と、この径方向延在部６５の内径端部から内輪凹部３２の段差面３３に摺接可能に突出されたシール部６６とを備えている。
また、第１のシール部材６０は、固定部６１から径方向延在部６５にわたって金属製（鋼板製）の芯金６２が配設され、ゴム等の弾性材料が芯金６２を覆うようにして設けられることで、固定部６１とシール部６６とがそれぞれ形成されている。

内輪側固定部材７０は、金属製（鋼板製）のスリンガ７１によって構成されている。
図３に示すように、スリンガ７１は、内輪３０の両内輪凹部３２のうち、一方の内輪凹部３２ａの外周面に嵌込まれて固定される円筒状の固定部７２と、この固定部７２の一端部外周面から径方向外方に突出された環状部７３とを備えている。そして、環状部７３の一側面には、次に詳述する第２のシール部材８０のリップ部８６、８７が摺接する径方向平坦面７３ａが形成されている。

第２のシール部材８０は、プーリ部材２０の内径側環状部２４の凹部２５に嵌込まれて固定される固定部８１と、この固定部８１から径方向内方へ延出された径方向延在部８５と、この径方向延在部８５の一側面から軸方向へ突出されてスリンガ７１の環状部７３一側面の径方向平坦面７３ａに摺接する単数又は複数のリップ部８６、８７とを備えている。
また、リップ部８６、８７は根元部が厚肉で先端部に向かってしだいに薄くなる断面三角形状に形成され、リップ部８６、８７の先端が線接触に近い状態でスリンガ７１の径方向平坦面７３ａに摺接する。これによって、リップ部８６、８７とスリンガ７１の径方向平坦面７３ａとの間に生じる摩擦力を軽減してトルク損失を抑制するようになっている。
また、第２のシール部材８０は、固定部８１から径方向延在部８５の一部にわたって金属製（鋼板製）の芯金８２が配設され、ゴム等の弾性材料が芯金８２を覆うようにして設けられることで、固定部８１と、径方向延在部８５と、リップ部８６、８７とがそれぞれ形成されている。

図３に示すように、第２のシール部材８０の径方向延在部８５のリップ部８６、８７よりも外径側に位置する部分には、スリンガ７１の径方向平坦面７３ａに向けて屈曲変形可能な薄肉部８８が形成される。
この実施例１において、薄肉部８８は、径方向延在部８５の内輪３０側の一側面から反対面側へ向けて円弧状をなして窪む環状の凹部８８ａによって形成されている。
また、薄肉部８８の屈曲点Ｐから径方向延在部８５のリップ部８６、８７を含む内径端まで間における内径側部分８９の重心Ｑの位置が、屈曲点Ｐよりも内輪３０端面側に距離Ｌだけ変位した軸方向内方に設定されている。

この実施例１に係る転がり軸受の密封装置は上述したように構成される。
したがって、軸受回転時の遠心力の作用によって、第２のシール部材８０は、その径方向延在部８５の薄肉部８８で屈曲変形すると共に、リップ部８６、８７が軸方向内方に変位してスリンガ（内輪側固定部材７０）７１の径方向平坦面７３ａに摺接する。
また、回転が高速になるにしたがって遠心力が増大するため、スリンガ７１の径方向平坦面７３ａに対するリップ部８６、８７先端部の接触圧が高くなる。これによって、密封性を良好に確保することができ、耐水性の向上を図ることができる。
このようにして、スリンガ７１の径方向平坦面７３ａに対し、第２のシール部材８０のリップ部８６、８７先端部が摺動することによって安定した密封性を確保することができる。

また、この実施例１において、第２のシール部材８０の径方向延在部８５の内輪３０側の一側面から反対面側へ向けて窪む環状の凹部８８ａによって薄肉部８８を形成することで、第２のシール部材８０の内径側部分８９の重心Ｑの位置を、薄肉部８８の屈曲点Ｐよりも内輪３０端面側に位置する軸方向内方に容易に設定することができる。

なお、この発明は前記実施例１に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。
例えば、前記実施例１においては、密封装置が第１のシール部材６０と、スリンガ７１と第２のシール部材８０とを備えた場合を例示したが、第１のシール部材６０は必ずしも設けなくてもこの発明を実施可能である。
また、前記実施例１においては、スリンガ７１を内輪３０端部の内輪凹部３２に固定する場合を例示したが、軸部材１０の外周面に固定してもよい。
また、第２のシール部材（この発明のシール部材に相当する）８０のリップ部８６、８７をスリンガ７１に摺接させるように構成したが、スリンガ７１以外の内輪側固定部材７０であってもよい。
また、第２のシール部材８０のリップ部８６、８７を内輪３０の端面に直接に摺接させるように構成してもこの発明を実施可能である。

１０ 軸部材
２０ プーリ部材（回転部材）
３０ 内輪
３１ 内輪軌道面
４０ 外輪
４１ 外輪軌道面
５０ 転動体
５５ 保持器
７０ 内輪側固定部材
７１ スリンガ
７３ 環状部
７３ａ 径方向平坦面
８０ 第２のシール部材（シール部材）
８１ 固定部
８５ 径方向延在部
８６、８７ リップ部
８８ 薄肉部
８９ 内径側部分
Ｐ 屈曲点
Ｑ 重心

Claims (3)

1. 固定輪としての内輪と、回転輪としての外輪との間の環状空間を密封するシール部材を備えた転がり軸受の密封装置であって、
   前記シール部材は、前記外輪、又は前記外輪と一体状に回転する回転部材に固定される固定部と、
   前記固定部から径方向内方へ延出された弾性体よりなる径方向延在部と、
   前記径方向延在部から突出されて前記内輪の端面、又は前記内輪に固定される内輪側固定部材に摺接するリップ部とを備え、
   前記径方向延在部の前記リップ部よりも外径側に位置する部分には、前記内輪の端面又は前記内輪側固定部材に向けて屈曲変形可能な薄肉部が形成され、
   前記薄肉部の屈曲点Ｐから前記径方向延在部のリップ部を含む内径端までの間における内径側部分の重心Ｑの位置が、前記屈曲点Ｐよりも前記内輪端面側に位置する軸方向内方に設定されていることを特徴とする転がり軸受の密封装置。
2. 請求項１に記載の転がり軸受の密封装置であって、
   薄肉部は、径方向延在部の内輪側の一側面から反対面側へ向けて窪む環状の凹部によって形成されていることを特徴とする転がり軸受の密封装置。
3. 請求項１又は２に記載した転がり軸受の密封装置であって、
   内輪側固定部材は、リップ部が摺動する径方向平坦面を有するスリンガによって構成されていることを特徴とする転がり軸受の密封装置。

Images