JP2012127444A - スラスト軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転軸の軸方向への動きを十分に制限することができ、さらにスラストカラーの振動による傾きをより良好に吸収できるスラスト軸受を提供する。
【解決手段】回転軸1に設けられたスラストカラー4に対向して配置されるスラスト軸受3である。スラストカラー4に対向して配置される円環状の軸受部8と、軸受部8を支持する円環状のベース板9とを備える。軸受部8は、複数のフォイル10、11、12が積層されてなるとともに、複数のフォイル10、11、12のうちのスラストカラー4側のフォイル10の軸受面10aに動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝を形成している。ベース板9の軸受部8に対向する面側には、その周方向に沿って連続する凹部14が形成されている。凹部14の深さは、ベース板9の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】回転軸1に設けられたスラストカラー4に対向して配置されるスラスト軸受3である。スラストカラー4に対向して配置される円環状の軸受部8と、軸受部8を支持する円環状のベース板9とを備える。軸受部8は、複数のフォイル10、11、12が積層されてなるとともに、複数のフォイル10、11、12のうちのスラストカラー4側のフォイル10の軸受面10aに動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝を形成している。ベース板9の軸受部8に対向する面側には、その周方向に沿って連続する凹部14が形成されている。凹部14の深さは、ベース板9の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、スラスト軸受に関する。
従来、高速回転体用の軸受として、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されるスラスト軸受が知られている。このようなスラスト軸受のうち、動圧効果を利用するスラスト動圧軸受では、例えば軸受面にスパイラル溝を形成し、スラストカラーと軸受面との間に流体潤滑膜を形成することで、該潤滑膜を介して回転軸を支持している。
ところで、このようなスラスト動圧軸受としては、軸振動や衝撃を吸収するために柔軟なフォイル、例えば厚さ100μm前後の金属製薄板で軸受面を形成し、この軸受面の下に該軸受面を柔軟に支持するためのフォイル構造を有したものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
すなわち、特許文献1では、テーパ形状の軸受面を波板形状のフォイル(バンプフォイル)で支持した構造が開示されている。
すなわち、特許文献1では、テーパ形状の軸受面を波板形状のフォイル(バンプフォイル)で支持した構造が開示されている。
また、特許文献2では、スパイラル溝を形成したフォイルを軸受面とし、軸受面の下に複数枚のフォイルを挿入した構造が開示されている。この構造においては、軸受板の下に挿入された各フォイルにそれぞれエッチング溝が形成されており、溝が互い違いになるようにフォイル同士が重ね合わされ、バネのように機能するようになっている。
したがって、特許文献1や特許文献2に開示された軸受にあっては、いずれも軸受面が柔軟なため、振動や衝撃によって発生する回転軸の動き、すなわちスラストカラーの軸方向の動きと、スラストカラーの振動(面振れ)による傾きとをある程度吸収できるようになっている。
したがって、特許文献1や特許文献2に開示された軸受にあっては、いずれも軸受面が柔軟なため、振動や衝撃によって発生する回転軸の動き、すなわちスラストカラーの軸方向の動きと、スラストカラーの振動(面振れ)による傾きとをある程度吸収できるようになっている。
しかしながら、特許文献1の構造では、軸受面全体がメインプレートに柔軟に支持されているため、スラスト荷重(静荷重)が増えると軸受面全体がメインプレート側に移動し、これによって回転軸もその軸方向へ移動することにより、この回転軸が外側の静止部に接触してしまう可能性がある。例えば、この軸受をターボ機械のインペラを有する回転軸に適用した場合に、回転軸がその軸方向へ移動することで、インペラがその外側のハウジング(静止部)と接触を起こす可能性がある。
このような接触を避けるには、回転軸とハウジング(静止部)との隙間(軸方向隙間)を広くする必要があるが、ターボ機械のようにインペラを有する回転機械ではチップクリアランス(インペラ先端と静止部との隙間)を拡げることになるため、効率が低下してしまう。
このような接触を避けるには、回転軸とハウジング(静止部)との隙間(軸方向隙間)を広くする必要があるが、ターボ機械のようにインペラを有する回転機械ではチップクリアランス(インペラ先端と静止部との隙間)を拡げることになるため、効率が低下してしまう。
また、特許文献2の構造では、フォイルに形成するエッチング溝の深さを調整することにより、軸方向の移動量を少なくすることができる。しかしながら、軸受面全体が概ね均等な剛性で支持されているため、前記の流体潤滑膜の動圧に分布がある場合、この動圧が高くなる部位(例えば、ポンプイン形のスパイラル溝が形成されている場合には内周側)が大きく撓むことになる。すると、この動圧が高くなる部位において所望の動圧が発生され難くなり、結果として軸受の軸受負荷能力が低下してしまう。
さらに、スラスト軸受が例えば過給機のように高温に晒される回転機械に用いられる場合には、その構成部材の材質として、ゴムや樹脂などの耐熱性の低いものを用いることはできない。したがって、このような高温環境下で使用される回転機械にも適用されるスラスト軸受では、その構成要素の材質について制限がより厳しくなっている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、回転軸の軸方向への動きを十分に制限することができ、さらにスラストカラーの振動(面振れ)による傾きをより良好に吸収でき、しかも高温環境下で使用される回転機械にも適用可能なスラスト軸受を提供することにある。
本発明のスラスト軸受は、回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されるスラスト軸受であって、前記スラストカラーに対向して配置される円環状の軸受部と、前記軸受部の、前記スラストカラーに対向する面と反対側の面に対向して配置されて、該軸受部を支持する円環状のベース板とを備え、前記軸受部は、複数のフォイルが積層されてなるとともに、該複数のフォイルのうちの前記スラストカラー側に位置するフォイルの、前記スラストカラーに対向する面に、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝を形成してなり、前記ベース板の前記軸受部に対向する面側には、その周方向に沿って連続する凹部が形成され、前記凹部の深さが、前記ベース板の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されていることを特徴としている。
このスラスト軸受によれば、軸受部の、スラストカラー側に位置するフォイルのスラストカラーに対向する面に、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝が形成されているので、このスパイラル溝によって形成される流体潤滑膜の動圧に、スラスト軸受の内周側の圧力が外周側の圧力より高くなる圧力分布が生じる。
そこで、このスラスト軸受では、ベース板の軸受部に対向する面側に、その周方向に沿って連続する凹部を形成し、この凹部の深さを、前記ベース板の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成しているので、軸受部は、前記凹部を形成したベース板に支持されることにより、前記動圧が高くなる内周側では動圧が低くなる外周側に比べて曲げ剛性が高く、相対的に強いバネとして機能するようになる。よって、内周側でスラストカラー側に位置するフォイルが必要以上に大きく撓むことがないため、この部位でも流体潤滑膜に所望の動圧が発生され易くなり、軸受の軸受負荷能力の低下が抑制される。
そこで、このスラスト軸受では、ベース板の軸受部に対向する面側に、その周方向に沿って連続する凹部を形成し、この凹部の深さを、前記ベース板の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成しているので、軸受部は、前記凹部を形成したベース板に支持されることにより、前記動圧が高くなる内周側では動圧が低くなる外周側に比べて曲げ剛性が高く、相対的に強いバネとして機能するようになる。よって、内周側でスラストカラー側に位置するフォイルが必要以上に大きく撓むことがないため、この部位でも流体潤滑膜に所望の動圧が発生され易くなり、軸受の軸受負荷能力の低下が抑制される。
また、ベース板の、凹部を形成した面における内周端は、この凹部を形成した面より凹んでいないため、軸受部が前記内周端を押圧しても、軸受部に曲げ変形が生じない。したがって、例えばスラスト荷重(静荷重)が増えても、前記の内周端によって軸受部がベース板側に移動するのが抑制され、これによって回転軸がその軸方向に移動するのが制限されるようになる。
さらに、ベース板には外周側へ向かって深くなるように凹部が形成されているので、回転軸が傾くような振れ回り振動が起こり、スラストカラーに傾き(面振れ)が生じても、軸受部はその傾きに追従するように傾斜可能であり、その際、複数の積層されたフォイルから成る軸受部においてフォイルどうしが互いに擦れ合うことにより、その摩擦によって前記振れ回り振動を減衰させるように作用する。
また、軸受部を複数のフォイル(耐熱性を有する金属薄板)によって形成しているので、ベース板も金属等の耐熱性材料によって形成することにより、高温環境下で使用される回転機械にも適用可能なスラスト軸受となる。
さらに、ベース板には外周側へ向かって深くなるように凹部が形成されているので、回転軸が傾くような振れ回り振動が起こり、スラストカラーに傾き(面振れ)が生じても、軸受部はその傾きに追従するように傾斜可能であり、その際、複数の積層されたフォイルから成る軸受部においてフォイルどうしが互いに擦れ合うことにより、その摩擦によって前記振れ回り振動を減衰させるように作用する。
また、軸受部を複数のフォイル(耐熱性を有する金属薄板)によって形成しているので、ベース板も金属等の耐熱性材料によって形成することにより、高温環境下で使用される回転機械にも適用可能なスラスト軸受となる。
また、前記スラスト軸受においては、前記凹部が設けられた面は、その外周側に配置されて前記凹部を形成する第1面部と、該第1面部より内周側に配置された第2面部とを有しているのが好ましい。
このようにすれば、前記第2面部は凹部を形成する第1面部に対して凹んでいないため、この凹んでいない内周側では、軸受部はほとんど撓むことがない。したがって、例えばスラスト荷重(静荷重)が増えても、前記の内周側によって軸受板がベース板側に移動するのが抑制され、これによって回転軸がその軸方向に移動するのが制限されるようになる。
また、前記の内周側は流体潤滑膜の動圧が高くなるものの、この内周側では軸受部が撓むことがないため、前述したように軸受負荷能力の低下が抑制される。
このようにすれば、前記第2面部は凹部を形成する第1面部に対して凹んでいないため、この凹んでいない内周側では、軸受部はほとんど撓むことがない。したがって、例えばスラスト荷重(静荷重)が増えても、前記の内周側によって軸受板がベース板側に移動するのが抑制され、これによって回転軸がその軸方向に移動するのが制限されるようになる。
また、前記の内周側は流体潤滑膜の動圧が高くなるものの、この内周側では軸受部が撓むことがないため、前述したように軸受負荷能力の低下が抑制される。
また、前記スラスト軸受において、前記複数のフォイルは、それぞれの内周側端部が保持手段によって前記ベース板の内周側端部に保持されているのが好ましい。
このようにすれば、回転軸の振れ回り振動等に起因して軸受部の内周端が回転軸に接触してしまうことが、確実に防止される。
このようにすれば、回転軸の振れ回り振動等に起因して軸受部の内周端が回転軸に接触してしまうことが、確実に防止される。
本発明のスラスト軸受によれば、スラスト荷重(静荷重)が増えても、前述したように軸受部がベース板側に移動するのが抑制されているので、回転軸がその軸方向に移動するのが十分に制限される。したがって、例えばこのスラスト軸受をターボ機械のインペラを有する回転軸に適用した場合に、回転軸がその軸方向へ移動することで、インペラがその外側のハウジング(静止部)に接触してしまうおそれが無くなる。これにより、インペラ先端と静止部との間のチップクリアランスを小さくすることができ、ターボ機械の効率を高めることができる。
また、流体潤滑膜の動圧が高くなる内周側では、フォイル(軸受部)が必要以上に大きく撓むことがなく、したがってこの部位でも所望の動圧が発生され易くなるため、軸受の軸受負荷能力の低下を抑制することができる。
一方、軸受部の外周側は撓み易くなっているので、不釣合いや外乱等により回転軸が傾くような振れ回り振動を起こしても、それによって生じるスラストカラーの傾き(面振れ)を軸受部が良好に吸収する。また、その際、軸受部を構成する複数の積層されたフォイルが互いに擦れ合うことにより、回転軸の振れ回り振動を減衰させるように作用する。したがって、軸受機能をより安定して発揮することができる。
また、高温環境下で使用される回転機械にも適用可能となっているため、例えばこのスラスト軸受を過給機にも適用することができる。
また、流体潤滑膜の動圧が高くなる内周側では、フォイル(軸受部)が必要以上に大きく撓むことがなく、したがってこの部位でも所望の動圧が発生され易くなるため、軸受の軸受負荷能力の低下を抑制することができる。
一方、軸受部の外周側は撓み易くなっているので、不釣合いや外乱等により回転軸が傾くような振れ回り振動を起こしても、それによって生じるスラストカラーの傾き(面振れ)を軸受部が良好に吸収する。また、その際、軸受部を構成する複数の積層されたフォイルが互いに擦れ合うことにより、回転軸の振れ回り振動を減衰させるように作用する。したがって、軸受機能をより安定して発揮することができる。
また、高温環境下で使用される回転機械にも適用可能となっているため、例えばこのスラスト軸受を過給機にも適用することができる。
以下、図面を参照して本発明のスラスト軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明のスラスト軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図であり、図1中符号1は回転軸、2は回転軸の先端部に設けられたインペラ、3は本発明に係るスラスト軸受である。
図1は、本発明のスラスト軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図であり、図1中符号1は回転軸、2は回転軸の先端部に設けられたインペラ、3は本発明に係るスラスト軸受である。
回転軸1には、インペラ2の形成された側にスラストカラー4が固定されており、このスラストカラー4の両側には、このスラストカラー4に対向してそれぞれの側にスラスト軸受3が配置されている。
また、インペラ2は静止側となるハウジング5内に配置されており、ハウジング5との間にチップクリアランス6を有している。
また、回転軸1には、スラストカラー4より中央側に、ラジアル軸受7が設けられている。
また、インペラ2は静止側となるハウジング5内に配置されており、ハウジング5との間にチップクリアランス6を有している。
また、回転軸1には、スラストカラー4より中央側に、ラジアル軸受7が設けられている。
図2(a)は、このような構成のターボ機械に適用されたスラスト軸受の一実施形態を示す図である。本実施形態のスラスト軸受3は、図1においてインペラ2側に配置されたものである。なお、本実施形態では、図1においてインペラ2側に配置されたスラスト軸受3も、図1においてスラストカラー4を挟んでその反対側、すなわちラジアル軸受7側に配置されたスラスト軸受3も、同一の構成からなっている。
スラスト軸受3は、回転軸1に固定された円板状のスラストカラー4に対向して配置された円環状(円筒状)のもので、回転軸1に外挿されて設けられたものである。このスラスト軸受3は、スラストカラー4に対向して配置される軸受部8と、この軸受部8の、前記スラストカラー4に対向する面と反対側の面に対向して配置されたベース板9と、を備えて構成されたものである。
軸受部8は、本実施形態では円環薄板状の3枚のフォイル10、11、12が、積層配置されて全体が円環板状に形成されたもので、回転軸1を挿通するための貫通孔8aを有したものである。3枚のフォイルは、その平面形状が全て同じ大きさ・寸法に形成されたもので、前記スラストカラー4側から順に、トップフォイル10、第1バックフォイル11、第2バックフォイル12となっており、トップフォイル10のスラストカラー4に対向する面が、軸受面10aとなっている。
この軸受面10aには、図3(a)に示すように動圧発生用のスパイラル溝13が形成されている。スパイラル溝13は、公知のポンプイン形のもので、多数の螺旋形溝(スパイラル状の溝)13aを周方向に沿って等間隔に配置したものであり、本実施形態では螺旋形溝13aが全て同一の流入角を有して形成されたものである。ただし、本発明においては、必ずしも螺旋形溝13aが全て同一の流入角を有しておらず、例えば一部の螺旋形溝13aで異なっていたり、さらには一つの螺旋形溝13a内において異なる流入角を有しているような動圧発生用のスパイラル溝であっても、本発明における動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝であるものとする。
図3(a)に示すように螺旋形溝13aは、軸受面10aの外周端から、前記貫通孔8aの周囲に設けられた円環状のランド13bにまで延びて形成されている。ランド13bは、螺旋形溝13aの底面に対して相対的に高い位置(外側の位置)に外面を有したものである。なお、螺旋形溝13a、13a間もランド(図示せず)となっている。
図3(a)に示すように螺旋形溝13aは、軸受面10aの外周端から、前記貫通孔8aの周囲に設けられた円環状のランド13bにまで延びて形成されている。ランド13bは、螺旋形溝13aの底面に対して相対的に高い位置(外側の位置)に外面を有したものである。なお、螺旋形溝13a、13a間もランド(図示せず)となっている。
このような構成によってスパイラル溝13(螺旋形溝13a)は、スラストカラー4に対して軸受面10aが相対的に回転した際(実際にはスラストカラー4が回転する)、軸受面10aの外周側から螺旋形溝13aに沿って内周側に軸受周囲の流体(例えば空気)を引き込み、これによってスラストカラー4と軸受面10aとの間に流体潤滑膜を形成するようになっている。また、スパイラル溝13(螺旋形溝13a)によって引き込まれた流体は、ランド13bに衝突することでその流れが遮られ、動圧が保持されるため、特に軸受部8(軸受面10a)の内周側で圧力が高くなるようになっている。すなわち、スパイラル溝13(螺旋形溝13a)によって形成される流体潤滑膜は、軸受面10aの外周側に比べ、内周側で高くなるような圧力分布を有するものとなっている。
図3(b)は、このような流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフである。図3(b)中横軸は、図3(a)に示した軸受面10aにおける、中心からの半径方向の距離(位置)を示し(右側に行くほど長くなる)、縦軸は流体潤滑膜の圧力(動圧)を示している(上側に行くほど高くなる)。また、図3(b)のグラフにおける(1)は、図3(a)中のランド13bの内周縁での圧力を示し、(2)は同じくランド13bの外周縁での圧力を示し、(3)は軸受面10aの外周縁での圧力を示している。
図3(b)に示すように、軸受面10aの外周縁(3)からランド13bの外周縁(2)までの範囲内においては、外周側から内周側に行くに連れて流体潤滑膜の圧力(動圧)は連続的に高くなるように変化している。また、軸受面10a全体で見ても、ランド13bの外周縁(2)、すなわちスパイラル溝13が形成された領域の内周端で、流体潤滑膜の圧力(動圧)が最も高くなっている。
図2(a)に示すように軸受部8を構成するトップフォイル10は、例えばステンレスやインコネル(Inconel[登録商標])などの合金や金属からなるもので、厚さが0.1mm〜0.3mm程度の薄板状のものである。また、第1バックフォイル11、第2バックフォイル12は、銅等の金属や制振合金からなるもので、厚さが0.05mm〜0.1mm程度の薄板状のものである。なお、第1バックフォイル11、第2バックフォイル12には、その表面をコーティングして摩擦による減衰効果を高めるようにしてもよい。
図2(a)に示すようにベース板9は、回転軸1を挿通するための貫通孔9aを有した円環板状(略円筒状)のもので、ステンレス等の合金や金属からなる耐熱性のものであり、軸受部8の第2バックフォイル12に対向して配置されたものである。このベース板9は、図示しないケーシング等に螺子等で固定されており、これによって固定された状態で保持されている。
また、このベース板9の、前記第2バックフォイル12に対向する面は、その外周側に配置されて凹部14を形成する第1面部9bと、該第1面部9bより内周側に配置された第2面部9cとを有している。凹部14は、ベース板9の周方向に沿って周全体で連続して形成されている。すなわち、この凹部14は、平面視円環状に形成されている。また、この凹部14は、その深さが、ベース板9の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されている。したがって、このベース板9は、凹部14によってテーパ面を形成したものとなっており、その厚さが、内周側から外周端に向かって連続的に薄くなるように形成されている。
また、凹部14の内周側の端縁14aは、凹部14を形成した面の内周端15aより外周側に位置している。したがって、前記第2面部9c(凹部14を形成した面の内周端15aから凹部14の内周側の端縁14aまでの間)は、平坦面15となっている。
このような構成のもとに軸受部8は、その第2バックフォイル12が、通常は平坦面14にのみ接した状態でベース板9に支持されている。
このような構成のもとに軸受部8は、その第2バックフォイル12が、通常は平坦面14にのみ接した状態でベース板9に支持されている。
ここで、ベース板9の、第2バックフォイル12に対向する面における、第1面部9bの幅(ベース板9の半径方向の長さ)と、第2面部9cの幅(ベース板9の半径方向の長さ)とについては、以下のようにして設計するのが好ましい。
後述するようにスラスト軸受3による軸受負荷能力を優先させる場合には、平坦面15の幅(半径方向の長さ)を広くして動圧分布図である図3(b)内の(2)の周辺を広く支持し、この(2)周辺での支持剛性を高くする。
後述するようにスラスト軸受3による軸受負荷能力を優先させる場合には、平坦面15の幅(半径方向の長さ)を広くして動圧分布図である図3(b)内の(2)の周辺を広く支持し、この(2)周辺での支持剛性を高くする。
また、後述するようにスラストカラー4に対する軸受面10aの追従性を優先し、減衰効果をより高めたい場合には、平坦面15の幅(半径方向の長さ)を狭くしてフォイル8が傾き易くなるようにする。
特に、スラストカラー4に対する軸受面10aの追従性を最優先としたい場合には、平坦面15を形成することなく、第2バックフォイル12に対向する面全体を、凹部14としてもよい。その場合にも、凹部14の内周端(ベース板9の内周端)が凹部14中の他の部位より凹んでいないため、該内周端によって軸受負荷能力が発揮されるようになる。
特に、スラストカラー4に対する軸受面10aの追従性を最優先としたい場合には、平坦面15を形成することなく、第2バックフォイル12に対向する面全体を、凹部14としてもよい。その場合にも、凹部14の内周端(ベース板9の内周端)が凹部14中の他の部位より凹んでいないため、該内周端によって軸受負荷能力が発揮されるようになる。
なお、図2(a)に示した構成のスラスト軸受3の要部を、図3(c)として、先に示した流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフである図3(b)とともに示す。図3(b)、(c)に示すように、凹部14と平坦面15との境界が、図3(b)に示す(2)の位置、すなわち図3(a)に示すランド12bの外周縁の位置となる。
さらに、図3(d)には、平坦面15を形成することなく、第2バックフォイル12に対向する面全体を、凹部14とした場合の、スラスト軸受3の要部を示す。
さらに、図3(d)には、平坦面15を形成することなく、第2バックフォイル12に対向する面全体を、凹部14とした場合の、スラスト軸受3の要部を示す。
また、本実施形態では、軸受部8を構成する前記3枚のフォイル10、11、12は、それぞれの内周側端部が、スラスト軸受3の要部拡大図である図4(a)に示すように、本発明における保持手段としてのピン16によってベース板9の内周側端部に保持されている。すなわち、ベース板9の前記平坦面15を形成した箇所には、図4(a)に示すように貫通孔17が形成されている。この貫通孔17は、図示しないものの、平面視円環状に形成された平坦面15の周方向に複数形成されている。
また、軸受部8の各フォイル10、11、12にも、前記貫通孔17と対応する位置に、保持孔18が形成されている。保持孔18は、第2バックフォイル12、第1バックフォイル11にそれぞれ形成された貫通孔18a、18bと、トップフォイル10に形成された孔18cとが、互いに連通して形成されたものである。なお、トップフォイル10に形成された孔18cは、トップフォイル10を貫通することなく、したがって軸受面10a側に開口することなく、第1バックフォイル11側にのみ形成されている。
そして、ベース板9の裏面側(軸受部8と反対の側)からピン16を挿入し、図4(a)に示すようにトップフォイル10の孔18c内にまで差し込むことにより、3枚のフォイル10、11、12のそれぞれの内周側端部を、ベース板9の平坦面15(内周側端部)上に保持している。ここで、例えばスラストカラー4とトップフォイル10との間の隙間を50μmとし、トップフォイル10の厚さを200μm(0.2mm)とし、孔18cの深さを100μmとすれば、トップフォイル10はスラストカラー4に干渉されることによってピン16から外れないようになり、したがってピン16を介してベース板9に保持された状態に保たれる。
なお、必要に応じて、高温での使用が可能な耐熱性の高い接着剤を保持孔18内に充填・硬化させ、ピン16によるベース板9への軸受部8の固定を強固にしてもよい。
このように軸受部8をベース板9に保持させることにより、軸受部8とベース板9とが一体化し、図2(a)に示した構造のスラスト軸受3が得られる。
このように軸受部8をベース板9に保持させることにより、軸受部8とベース板9とが一体化し、図2(a)に示した構造のスラスト軸受3が得られる。
次に、このような構成からなるスラスト軸受3の作用について説明する。
回転軸1が高速で回転すると、スラストカラー4と軸受部8の軸受面10aとの間に、スパイラル溝13で形成された動圧によって流体潤滑膜が形成され、これによってスラスト軸受3は、形成された流体潤滑膜を介してスラストカラー4を支持するようになる。なお、形成された流体潤滑膜の動圧は、前述したようにスラスト軸受3の内周側で高く、外周側で低くなっている。
回転軸1が高速で回転すると、スラストカラー4と軸受部8の軸受面10aとの間に、スパイラル溝13で形成された動圧によって流体潤滑膜が形成され、これによってスラスト軸受3は、形成された流体潤滑膜を介してスラストカラー4を支持するようになる。なお、形成された流体潤滑膜の動圧は、前述したようにスラスト軸受3の内周側で高く、外周側で低くなっている。
また、回転軸1は、回転軸が有する不釣合い、外部環境の影響および運転状態などによってその回転が回転中心から僅かながらぶれて振動することがあり、その場合にはこれに固定されているスラストカラー4も僅かながら振動して面振れし、図2(b)に示すように瞬間的には傾いた状態となる。
その際、本実施形態のスラスト軸受3にあっては、ベース板9に凹部14を形成し、この凹部14の深さを内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成しているので、軸受部8は、凹部14を形成したベース板9に支持されることにより、流体潤滑膜の動圧が高くなる内周側では動圧が低くなる外周側に比べて曲げ剛性が高く、相対的に強いバネとして機能するようになる。すなわち、軸受部8はその内周側のみがベース板9に保持された片持ち状になっているため、外周側では力が弱いバネとして機能しているのに対し、内周側では力が強いバネとして機能するようになっている。
よって、トップフォイル10はその内周側がほとんど撓まないため、この内周側でも流体潤滑膜に所望の動圧が発生されるようになり、スラスト軸受3はその軸受負荷能力の低下が抑制されたものとなる。
よって、トップフォイル10はその内周側がほとんど撓まないため、この内周側でも流体潤滑膜に所望の動圧が発生されるようになり、スラスト軸受3はその軸受負荷能力の低下が抑制されたものとなる。
また、凹部14の深さが内周側から外周端に向かって連続的に深くなっているので、軸受部8はその外周側がベース板9側に変形し易くなっており、したがって軸受面10aはスラストカラー4に良好に追従し、図2(b)の左側に示すように、スラストカラー4とトップフォイル10の軸受面10aとの間の流体潤滑膜の厚さ(スラストカラー4とトップフォイル10の軸受面10aとの隙間)が一定に保たれ、流体潤滑膜が破断し難くなる。すなわち、外周側が撓み易くなっているので、スラストカラー4の傾きに容易に追従できる。
また、ベース板9の、凹部14を形成した面には平坦面15が形成されており、この平坦面15に軸受部8は支持されているため、軸受部8が平坦面15を押圧しても軸受部8に曲げ変形が生じない(撓まない)ことになる。したがって、例えばスラスト荷重(静荷重)が増えても、前記の平坦面15によって軸受部8がベース板9側に移動するのが抑制されるため、回転軸1がその軸方向に移動するのが制限されるようになる。
さらに、3枚のフォイル10、11、12を積層することで軸受部8を構成しているので、不釣り合いや外乱等によって例えば図2(b)に示したように回転軸1が傾くような振れ回り振動をしても、スラストカラー4を介してこれに追従する軸受部8は、積層されたフォイルどうしが互いに擦れ合うことにより、その摩擦によって前記振れ回り振動を減衰させるように作用する。
したがって、本実施形態のスラスト軸受3によれば、スラスト荷重(静荷重)が増えても、前述したように軸受部8がベース板9側に移動するのが抑制されているので、回転軸1がその軸方向に移動するのが十分に制限される。よって、図1に示したようにこのスラスト軸受3をターボ機械のインペラ2を有する回転軸1に適用した場合に、回転軸1がその軸方向に沿って図1中矢印方向に移動することで、インペラ3がその外側のハウジング(静止部)5に接触してしまうおそれが無くなる。これにより、インペラ3の先端とハウジング5との間のチップクリアランス6を小さくすることができ、ターボ機械の効率を高めることができる。
また、流体潤滑膜の動圧が高くなる内周側では、軸受部8が必要以上に大きく撓むことがなく、したがってこの部位でも所望の動圧が発生され易くなるため、軸受3の軸受負荷能力の低下を抑制することができる。
さらに、ベース板9には凹部14が形成されているので、回転軸1が傾くように振れ回り振動し、スラストカラーに傾き(面振れ)が生じても、軸受部8はその傾きに追従するように傾斜し、その際、軸受部8を構成するフォイル10、11、12間に生じる摩擦が回転軸1の振れ回り振動を減衰させるように作用するので、軸受機能をより安定して発揮することができる。
また、高温環境下で使用される回転機械にも適用可能となっているため、例えばこのスラスト軸受3を過給機にも適用することができる。
また、ピン16を軸受部8に形成した保持孔18に挿通することで、各フォイル10、11、12の内周側端部をベース板9の内周側端部に保持しているので、回転軸1の振れ回り振動等に起因して軸受部8の内周端が回転軸1に接触してしまうことを、確実に防止することができる。
さらに、ベース板9には凹部14が形成されているので、回転軸1が傾くように振れ回り振動し、スラストカラーに傾き(面振れ)が生じても、軸受部8はその傾きに追従するように傾斜し、その際、軸受部8を構成するフォイル10、11、12間に生じる摩擦が回転軸1の振れ回り振動を減衰させるように作用するので、軸受機能をより安定して発揮することができる。
また、高温環境下で使用される回転機械にも適用可能となっているため、例えばこのスラスト軸受3を過給機にも適用することができる。
また、ピン16を軸受部8に形成した保持孔18に挿通することで、各フォイル10、11、12の内周側端部をベース板9の内周側端部に保持しているので、回転軸1の振れ回り振動等に起因して軸受部8の内周端が回転軸1に接触してしまうことを、確実に防止することができる。
なお、前記実施形態では、図2(a)、(b)に示したように、凹部14の底面を平坦な傾斜面としたが、本発明はこれに限定されることなく、凹部14はその深さがベース板9の内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されていれば、図2(c)に示すように湾曲してなる湾曲面であってもよい。この湾曲面の形状については、特に限定されないものの、例えばスラスト軸受3の形状や寸法、回転軸1の運転条件などに基づいたシミュレーションにより、図3(b)に示したようなグラフを求めておき、このグラフから得られる半径方向の距離と動圧との関係に対応して、設計するのが好ましい。
さらに、前記の平坦面15を形成することなく、図3(d)に示したように凹部14を、ベース板9の内周端から外周端にかけて全体に形成してもよい。
さらに、前記の平坦面15を形成することなく、図3(d)に示したように凹部14を、ベース板9の内周端から外周端にかけて全体に形成してもよい。
また、前記実施形態では、軸受部8を構成するフォイルの数を3枚としたが、本発明はこれに限定されることなく、複数枚であれば、2枚であっても、4枚以上であってもよい。
さらに、前記実施形態では、本発明の保持手段としてピン16を用い、これを軸受部8に形成した保持孔18に挿通することで、各フォイル10、11、12の内周側端部をベース板9の内周側端部に保持させるようにしたが、本発明の保持手段としてはこれに限定されることなく、種々の構成を採用することができる。
さらに、前記実施形態では、本発明の保持手段としてピン16を用い、これを軸受部8に形成した保持孔18に挿通することで、各フォイル10、11、12の内周側端部をベース板9の内周側端部に保持させるようにしたが、本発明の保持手段としてはこれに限定されることなく、種々の構成を採用することができる。
例えば、図4(b)に示すようにベース板9の内周側端部に、円筒状の保持筒19を形成し、この保持筒19を軸受部8の貫通孔8a(図2参照)内に挿入することにより、フォイル10、11、12の側端面を保持することで各フォイル10、11、12の内周側端部をベース板9の内周側端部に保持するようにしてもよい。ただし、その場合には、トップフォイル10についてはその内周端側に庇状の係合部20を形成し、この係合部20を保持筒19の上端部に係合させるとともに、該係合部20で保持筒19の上端面を覆うようにする。
また、このような保持筒19や前記ピン16に代えて、単にベース板9の平坦面15上、及び該平坦面15に対応する各フォイル間に高温での使用が可能な耐熱性の高い接着剤を配し、硬化させることにより、各フォイル10、11、12の内周側端部をベース板9の内周側端部に保持するようにしてもよい。
このように保持手段を構成しても、回転軸1の振れ回り振動等に起因して軸受部8の内周端が回転軸1に接触してしまうことを、確実に防止することができる。
このように保持手段を構成しても、回転軸1の振れ回り振動等に起因して軸受部8の内周端が回転軸1に接触してしまうことを、確実に防止することができる。
1…回転軸、3…スラスト軸受、4…スラストカラー、8…軸受部、9…ベース板、9b…第1面部、9c…第2面部、10…トップフォイル、10a…軸受面、11…第1バックフォイル、12…第2バックフォイル、13…スパイラル溝、14…凹部、15…平坦面、16…ピン、17…貫通孔、118…保持孔、19…保持筒
Claims (3)
- 回転軸に設けられたスラストカラーに対向して配置されるスラスト軸受であって、
前記スラストカラーに対向して配置される円環状の軸受部と、
前記軸受部の、前記スラストカラーに対向する面と反対側の面に対向して配置されて、該軸受部を支持する円環状のベース板とを備え、
前記軸受部は、複数のフォイルが積層されてなるとともに、該複数のフォイルのうちの前記スラストカラー側に位置するフォイルの、前記スラストカラーに対向する面に、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝を形成してなり、
前記ベース板の前記軸受部に対向する面側には、その周方向に沿って連続する凹部が設けられ、
前記凹部の深さが、前記ベース板の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されていることを特徴とするスラスト軸受。 - 前記凹部が設けられた面は、その外周側に配置されて前記凹部を形成する第1面部と、該第1面部より内周側に配置された第2面部とを有していることを特徴とする請求項1記載のスラスト軸受。
- 前記複数のフォイルは、それぞれの内周側端部が保持手段によって前記ベース板の内周側端部に保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト軸受。
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- 2010-12-16 JP JP2010280556A patent/JP2012127444A/ja active Pending
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