JP2013068285A - 回転軸支持構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】始動時の抵抗トルク(初期トルク)を低減して始動性を向上した、回転軸支持構造を提供する。
【解決手段】スラストカラー5を有する回転軸1の支持構造である。回転軸1をラジアルフォイル軸受8一つで回転可能に支持するとともに、回転軸1のスラストカラー5を一つあるいは一対のスラストフォイル軸受9で回転可能に支持する。スラストフォイル軸受9は、スラストカラー5に対向して配置される円環状の軸受部と、軸受部の、スラストカラー5に対向する面と反対側の面に対向して配置されて、回転軸1の回転時に軸受部を支持する円環状のベース部と、を備えているのが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、回転軸支持構造に関する。
従来、高速に回転する回転軸を支持する支持構造では、ラジアル軸受二つとスラスト軸受一対(二つ)とを用い、ラジアル方向とスラスト方向の両方の動きを制限しつつ、軸周りの回転を許容している。ラジアル軸受やスラスト軸受としては、一般には軸受面が剛な軸受が用いられるが、油潤滑以外も視野に入れると、フォイル軸受の適用が考えられる。
すなわち、スラスト軸受としては、軸振動や衝撃を吸収するために柔軟なフォイル、例えば厚さ100μm前後の金属製薄板で軸受面(トップフォイル)を形成し、この軸受面の下に該軸受面を柔軟に支持するためのフォイル構造を有したスラストフォイル軸受が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、テーパ形状の軸受面を波板形状のフォイル(バンプフォイル)で支持した構造が開示されている。
また、ラジアル軸受としては、軸受面を形成する薄板状のトップフォイルと、このトップフォイルを弾性的に支持するバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備えたラジアルフォイル軸受がよく知られている。ラジアルフォイル軸受のバックフォイルとしては、側面視円弧状の山部と平坦面からなる谷部とが交互に配置されるように薄板を波板状に成形した、バンプフォイルが主に用いられている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
特表2008−513701号公報 特開2008−261496号公報 特開2011−017385号公報
ところで、前記支持構造において前記のフォイル軸受(スラストフォイル軸受、ラジアルフォイル軸受)は、回転軸の停止時にはスラストカラーや回転軸を締付けた状態、すなわち予荷重(予圧)をかけた状態で支持している。したがって、回転停止状態から回転軸が浮上する(軸受面から離間する)までの間では、回転軸と軸受面との間に十分な流体潤滑膜が形成されず、回転軸と軸受面との間が固体潤滑状態になっているため、抵抗トルクが大きくなっている。よって、始動時に強い駆動力が得られない回転機械(例えば車両用過給機など)では、即座に始動(回転)できないといった問題や、低速回転が維持できず停まってしまうなどの問題が生じている。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、始動時の抵抗トルク(初期トルク)を低減して始動性を向上した、回転軸支持構造を提供することにある。
本発明の回転軸支持構造は、スラストカラーを有する回転軸の支持構造であって、前記回転軸をラジアルフォイル軸受一つで回転可能に支持するとともに、該回転軸のスラストカラーを一つあるいは一対のスラストフォイル軸受で回転可能に支持することを特徴とする。
この回転軸支持構造によれば、回転軸を支持するラジアルフォイル軸受については、従来二つで支持していたのに対して一つで支持するようにしたので、ラジアルフォイル軸受一つ分の初期トルクが低減し、始動性が向上する。また、一つのラジアルフォイル軸受で回転軸を支持しているので、従来のように二つで支持していた場合の、ラジアルフォイル軸受間での芯ズレ(ミスアライメント)が無くなるため、この芯ズレに起因する抵抗トルクも無くすことができる。
また、前記回転軸支持構造において、前記スラストフォイル軸受は、前記スラストカラーに対向して配置される円環状の軸受部と、前記軸受部の、前記スラストカラーに対向する面と反対側の面に対向して配置されて、前記回転軸の回転時に前記軸受部を支持する円環状のベース部と、を備えることが好ましい。
このように、ベース部によって軸受部を支持しているため、回転軸にこれが傾く軸振動(コニカル振動)が起きた際、この軸振動による荷重を受けたスラストフォイル軸受は、例えば軸受部とこれを支持するベース部との間で摩擦を生じ、これによってエネルギーを散逸して減衰効果を発揮し、振動抑制効果を奏する。したがって、ラジアルフォイル軸受についてはこれ一つで回転軸を支持しているものの、スラストフォイル軸受で回転軸の軸振動(コニカル振動)を抑制できるので、回転軸支持構造全体としては、回転軸の軸振動(コニカル振動)を充分に抑制することが可能になる。
また、前記回転軸支持構造において、前記スラストフォイル軸受は、前記回転軸の停止時において、該回転軸の前記スラストカラーに対して非接触であることが好ましい。
このようにすれば、回転軸が停止状態から回転状態に移る始動時において、スラストフォイル軸受は実質的に抵抗トルク(初期トルク)がないため、始動性をより向上する。
また、前記回転軸支持構造においては、前記軸受部の前記スラストカラーに対向する面には、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝が形成され、前記ベース部は、前記軸受部側に配置された弾性体と、該弾性体を保持するベース板とを有して構成され、前記ベース板の前記軸受部に対向する面側と、前記軸受部の前記ベース板に対向する面側との少なくとも一方には、その周方向に沿って連続する凹部が設けられ、前記凹部の深さが、前記ベース板又は前記軸受部の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成され、前記凹部には、該凹部を埋めた状態に前記弾性体が設けられていることが好ましい。
このようにすれば、スラストフォイル軸受の軸受部のスラストカラーに対向する面に、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝が形成されているので、このスパイラル溝によって形成される流体潤滑膜の動圧に、スラストフォイル軸受の内周側の圧力が外周側の圧力より高くなる圧力分布が生じる。
そこで、このスラストフィル軸受では、ベース板と軸受部との少なくとも一方に凹部を形成し、この凹部の深さを、前記ベース板又は前記軸受部の内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成し、前記凹部に、該凹部を埋めた状態に弾性体を設けているので、前記動圧が高くなる内周側では外周側に比べて弾性体の厚さが相対的に薄くなり、したがって内周側では動圧が低くなる外周側に比べて撓み量(弾性変形量)が小さくなる。よって、この動圧が高くなる部位では弾性体が必要以上に大きく撓むことがないため、この部位でも流体潤滑膜に所望の動圧が発生され易くなり、軸受の軸受負荷能力の低下が抑制される。これにより、このスラストフォイル軸受にあっては、回転軸が傾くような振れ回り振動が起こり、スラストカラーに傾き(面振れ)が生じても、この傾きをより良好に吸収し、したがって回転軸の軸振動(コニカル振動)を充分に抑制することができる。
また、前記回転軸支持構造において、前記軸受部は、複数のフォイルが積層されてなるとともに、該複数のフォイルのうちの前記スラストカラー側に位置するフォイルの、前記スラストカラーに対向する面に、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝を形成してなり、前記ベース部の前記軸受部に対向する面側には、その周方向に沿って連続する凹部が設けられ、前記凹部の深さが、前記ベース部の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されていることが好ましい。
このようにすれば、スラストフォイル軸受の軸受部の、スラストカラー側に位置するフォイルのスラストカラーに対向する面に、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝が形成されているので、このスパイラル溝によって形成される流体潤滑膜の動圧に、スラストフォイル軸受の内周側の圧力が外周側の圧力より高くなる圧力分布が生じる。
そこで、このスラストフォイル軸受では、ベース板の軸受部に対向する面側に、その周方向に沿って連続する凹部を形成し、この凹部の深さを、前記ベース板の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成しているので、軸受部は、前記凹部を形成したベース板に支持されることにより、前記動圧が高くなる内周側では動圧が低くなる外周側に比べて曲げ剛性が高く、相対的に強いバネとして機能するようになる。よって、内周側でスラストカラー側に位置するフォイルが必要以上に大きく撓むことがないため、この部位でも流体潤滑膜に所望の動圧が発生され易くなり、軸受の軸受負荷能力の低下が抑制される。
また、ベース板には外周側へ向かって深くなるように凹部が形成されているので、回転軸が傾くような振れ回り振動が起こり、スラストカラーに傾き(面振れ)が生じても、軸受部はその傾きに追従するように傾斜可能であり、その際、複数の積層されたフォイルからなる軸受部においてフォイルどうしが互いに擦れ合うことにより、その摩擦によって前記振れ回り振動を減衰させるように作用する。したがって、このスラストフォイル軸受にあっては、回転軸の軸振動(コニカル振動)を充分に抑制することができる。
また、前記回転軸支持構造において、前記ラジアルフォイル軸受は、前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルとを備え、前記トップフォイルの前記回転軸と対向する面には、前記回転軸の回転方向後方から前方に向かうとともに、該トップフォイルの軸方向の中心部から両方の端縁側にそれぞれ向かう斜方溝が複数形成され、該斜方溝間、および該斜方溝の前記端縁側の端部と該端縁との間には、それぞれランド部が形成されていることが好ましい。
このようにすれば、トップフォイルの回転軸と対向する面に斜方溝を複数形成しているので、回転軸の回転によってトップフォイルの始端と終端との間から引き入れられた周囲流体が、斜方溝の長さ方向に沿って軸受の軸方向中央部から両側端縁に向けて流れるようになる。したがって、軸方向中央部から両側端縁に向けて排出された潤滑流体が、ランド部を乗り越える際に強い流体潤滑膜圧を発生するため、該両側端部において負荷能力が良好に発揮されるようになる。そして、このように両側端部で強い流体潤滑膜圧が発生することで、軸方向中央部でトップフォイルが大きく凹むことがなく、流体潤滑膜の圧力が両側端部に分散されることにより、トップフォイルは両側端部で少しずつ凹むようになる。よって、両側端部において負荷能力が良好に発揮されるようになり、軸受に対する回転軸の相対的な傾きに対して、剛性が強くなる。すなわち、回転軸の軸振動(コニカル振動)を充分に抑制することが可能になる。
さらに、トップフォイルの、回転軸と対向する面に斜方溝を複数形成しているので、回転軸の始動時にはすでに斜方溝内に周囲流体が存在しているため、昇速途上で回転軸の回転速度が低い段階でも流体潤滑膜が容易に形成されるようになる。したがって、回転軸が停止状態から回転状態に移る始動時において、抵抗トルク(初期トルク)が即座に低下するため、始動性がより向上する。
本発明の回転軸支持構造によれば、従来に比べてラジアルフォイル軸受一つ分の初期トルクを低減し、始動性を向上しているので、例えば車両用過給機などの始動時に強い駆動力が得られない回転機械に適用した場合に、始動(回転)をより迅速に行うことができ、また、低速回転を良好に維持できる等の優れた効果を奏する。
さらに、ラジアルフォイル軸受については一つで回転軸を支持しているため、二つで支持していた従来に比べて回転軸の長さを短くすることが可能となり、支持構造の小型化が可能になるなど、回転軸を含めた支持構造の設計自由度を高めることができる。
本発明の回転軸支持構造の一実施形態の概略構成を示す模式図である。 (a)は本発明に係るスラストフォイル軸受の第1の例の概略構成を示す側断面図、(b)は(a)に示したスラストフォイル軸受の作用説明図、(c)は(a)に示したスラストフォイル軸受の変形例を示す図である。 図2(a)に示したスラストフォイル軸受に係る図であって、(a)はスパイラル溝を形成した軸受面の平面図、(b)は流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフ、(c)、(d)はスラストフォイル軸受の要部側断面図である。 (a)は本発明に係るスラスト軸受の第2の例の概略構成を示す側断面図、(b)は(a)に示したスラストフォイル軸受の作用説明図、(c)は(a)に示したスラストフォイル軸受の変形例を示す図である。 図4(a)に示したスラストフォイル軸受に係る図であって、(a)はスパイラル溝を形成した軸受面の平面図、(b)は流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフ、(c)、(d)はスラスト軸受の要部側断面図である。 図4(a)に示したスラストフォイル軸受の要部拡大図である。 (a)は本発明に係るスラストフォイル軸受の第3の例の概略構成を示す斜視図、(b)は(a)の要部側断面図である。 本発明に係るラジアルフォイル軸受の一例の概略構成を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。 図8に示したラジアルフォイル軸受に係る図であって、(a)は回転軸に設けられたトップフォイルを示す斜視図、(b)はトップフォイルの内面の展開図である。 図8(a)に示したラジアルフォイル軸受の縦断面図と、これに対応する流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフとを示す図である。
以下、図面を参照して本発明のスラスト軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の回転軸支持構造の一実施形態の概略構成を示す図であり、図1中符号1は回転軸、2はこの回転軸1を支持する回転軸支持構造である。
回転軸支持構造2は、例えばターボ機械の回転軸を支持する構造に適用されたものである。すなわち、本実施形態では回転軸1の先端部にインペラ3が設けられ、後端部にタービン翼車4が設けられている。また、回転軸1には、インペラ3が形成された側にスラストカラー5が固定されている。なお、インペラ3は静止側となるハウジング6内に配置されており、ハウジング6との間にチップクリアランス7を有している。
回転軸支持構造2は、前記回転軸1をラジアルフォイル軸受8一つで回転可能に支持するとともに、該回転軸1のスラストカラー5を一対のスラストフォイル軸受9、9で回転可能に支持している。
従来では、二つ(一対)のラジアルフォイル軸受で回転軸を支持しているのに対し、本実施形態では、一つのラジアルフォイル軸受8で回転軸1を支持している。したがって、本実施形態の回転軸支持構造2では、回転軸1にこれが傾く軸振動(コニカル振動)が起き易く、また、起きた際にはこの軸振動が長く続いてしまう懸念がある。そこで、本実施形態の回転軸支持構造2では、特に回転軸1にこれが傾く軸振動(コニカル振動)が起きた際、この軸振動によるエネルギーを減衰させて振動抑制効果を発揮する、ラジアルフォイル軸受8、スラストフォイル軸受9、9を用いるのが望ましい。
具体的には、スラストフォイル軸受9として、例えば図2(a)〜(c)に示すような構造のものが好適に用いられる。図2(a)〜(c)は、本実施形態に係るスラストフォイル軸受9の第1の例を示す図である。なお、図2(a)〜(c)では、このスラストフォイル軸受を符号9Aで示す。このスラストフォイル軸受9Aは、図1においてインペラ3側に配置されたものである。ただし、図1においてインペラ3側に配置されたスラスト軸受9(9A)も、図1においてスラストカラー5を挟んでその反対側、すなわちタービン翼車4側に配置されたスラスト軸受9(9A)も、同一の構成からなっている。
図2(a)に示すようにスラストフォイル軸受9Aは、回転軸1に固定された円板状のスラストカラー5に対向して配置された円環状(円筒状)のもので、回転軸1に外挿されて設けられたものである。このスラストフォイル軸受9Aは、スラストカラー5に対向して配置されるトップフォイル(軸受部)10と、このトップフォイル10の、前記スラストカラー5に対向する面と反対側の面に対向して配置されたベース部11とを備えて構成されている。ベース部11は、トップフォイル10の、スラストカラー5に対向する面と反対側の面に対向して配置されたベース板12と、これらトップフォイル10とベース板12との間に配置された二種類の弾性体、すなわち第1弾性体13と第2弾性体14とを備えて構成されている。なお、本発明の請求項4に係る弾性体は第1弾性体13からなっている。
トップフォイル10は、回転軸1を挿通するための貫通孔10aを有した円環板状のもので、スラストカラー5に対向する面を軸受面10bとしたものである。この軸受面10bには、図3(a)に示すように動圧発生用のスパイラル溝15が形成されている。スパイラル溝15は、公知のポンプイン形のもので、多数の螺旋形溝(スパイラル状の溝)15aを周方向に沿って等間隔に配置したものであり、本例では螺旋形溝15aが全て同一の流入角を有して形成されている。ただし、必ずしも螺旋形溝15aが全て同一の流入角を有しておらず、例えば一部の螺旋形溝15aで異なっていたり、さらには一つの螺旋形溝15a内において異なる流入角を有しているような動圧発生用のスパイラル溝であっても、本発明に係る動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝であるものとする。
図3(a)に示すように螺旋形溝15aは、軸受面10bの外周端から、前記貫通孔10aの周囲に設けられた円環状のランド15bにまで延びて形成されている。ランド15bは、螺旋形溝15aの底面に対して相対的に高い位置(外側の位置)に外面を有したものである。なお、螺旋形溝15a、15a間もランド(図示せず)となっている。
このような構成によってスパイラル溝15(螺旋形溝15a)は、スラストカラー5に対して軸受面10bが相対的に回転した際(実際にはスラストカラー5が回転する)、軸受面10bの外周側から螺旋形溝15aに沿って内周側に軸受周囲の流体を引き込み、これによってスラストカラー5と軸受面10bとの間に流体潤滑膜を形成するようになっている。また、スパイラル溝15(螺旋形溝15a)によって引き込まれた流体は、ランド15bに衝突することでその流れが遮られ、動圧が保持されるため、特にトップフォイル10の内周側で圧力が高くなるようになっている。すなわち、スパイラル溝15(螺旋形溝15a)によって形成される流体潤滑膜は、軸受面10bの外周側に比べ、内周側で高くなるような圧力分布を有するものとなっている。
図3(b)は、このような流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフである。図3(b)中横軸は、図3(a)に示した軸受面10bにおける、中心からの半径方向の距離(位置)を示し(右側に行くほど中心から遠くなる)、縦軸は流体潤滑膜の圧力(動圧)を示している(上側に行くほど高くなる)。また、図3(b)のグラフにおける(1)は、図3(a)中のランド15bの内周縁での圧力を示し、(2)は同じくランド15bの外周縁での圧力を示し、(3)は軸受面10bの外周縁での圧力を示している。
図2(a)に示すようにベース板12は、回転軸1を挿通するための貫通孔12aを有した円環板状(略円筒状)のもので、トップフォイル10における軸受面10bと反対側の面に対向して配置されたものである。このベース板12は、図示しないケーシング等に螺子等で固定されており、これによって固定された状態で保持されている。
また、このベース板12の、トップフォイル10に対向する面は、その外周側に配置されて凹部16を形成する第1面部12bと、該第1面部12bより内周側に配置された第2面部12cとを有している。凹部16は、ベース板12の周方向に沿って周全体で連続して形成されている。すなわち、この凹部16は、平面視円環状に形成されている。また、この凹部16は、その深さが、ベース板12の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されている。したがって、このベース板12は、凹部16によってテーパ面を形成したものとなっている。また、凹部16の内周側の端縁16aは、凹部16を形成した面の内周端17aより外周側に位置している。したがって、前記第2面部12c(凹部16を形成した面の内周端17aから凹部16の内周側の端縁16aまでの間)は、平坦面17となっている。
そして、この平坦面17上には第2弾性体14が設けられており、前記凹部16には、該凹部16を埋めた状態に第1弾性体13が設けられている。ただし、第1弾性体13は、凹部16を埋め、さらにその表面(凹部16側を向く面と反対の側の面)が第2弾性体14の表面と面一になるように、凹部16の深さより第2弾性体14の厚さ分、厚く形成されている。ここで、第2弾性体14の厚さは、スラストフォイル軸受9Aの寸法によっても異なるものの、例えばスラストフォイル軸受9Aの直径が40mm〜50mm程度である場合、数十μm程度とされる。また、第1弾性体13の最大厚、すなわちベース板12の最外周部での厚さは、数百μm程度とされる。
これら第1弾性体13、第2弾性体14は、いずれもゴムや軟質樹脂などによって形成されたもので、例えばシリコーンゴムやシリコーン樹脂などによって形成されている。また、第2弾性体14としては、第1弾性体13より剛性が高いものが用いられている。すなわち、第2弾性体14を形成するゴムや軟質樹脂などは、例えばその硬度が、第1弾性体13を形成するゴムや軟質樹脂などに比べて高くなっている。よって、第2弾性体14は、第1弾性体13に比べて同じ荷重がかかった際の弾性変形量が小さくなり、したがって撓み量が少なくなるようになっている。
ここで、ベース板12の、トップフォイル10に対向する面における、第1面部12bの幅(ベース板12の半径方向の長さ)と、第2面部12cの幅(ベース板12の半径方向の長さ)とについては、以下のようにして設計するのが好ましい。
後述するようにスラストフォイル軸受9Aによる軸受負荷能力を優先させる場合には、平坦面17の幅(半径方向の長さ)を広くして動圧分布図である図3(b)内の(2)の周辺を広く支持し、この(2)周辺での支持剛性を高くする。
また、後述するようにスラストカラー5に対する軸受面10bの追従性を優先し、減衰効果をより高めたい場合には、平坦面17の幅(半径方向の長さ)を狭くしてトップフォイル10が傾き易くなるようにする。
特に、スラストカラー5に対する軸受面10bの追従性を最優先としたい場合には、平坦面17を形成することなく、トップフォイル10に対向する面全体を、凹部16としてもよい。その場合にも、凹部16の内周端(ベース板12の内周端)が凹部16中の他の部位より凹んでいないため、該内周端によって軸受負荷能力が発揮されるようになる。
なお、図2(a)に示した構成のスラストフォイル軸受9Aの要部を、図3(c)として、先に示した流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフである図3(b)とともに示す。図3(b)、(c)に示すように、凹部16と平坦面17との境界が、図3(b)に示す(2)の位置、すなわち図3(a)に示すランド15bの外周縁の位置となる。
さらに、図3(d)には、平坦面17を形成することなく、トップフォイル10に対向する面全体を、凹部16とした場合の、スラストフォイル軸受9Aの要部を示す。この図3(d)では、図3(b)に示す(2)の位置より外側に第1弾性体13を配置し、(2)の位置より内側に第2弾性体14を配置している。
図2(a)に示した構成からなるスラストフォイル軸受9Aを形成するには、例えば凹部16を形成したベース板12に対して、その平坦面17上に第2弾性体14の形成材料を、また、凹部16上(内)に第1弾性体13の形成材料をそれぞれ所定量配し、さらに適宜な圧力で加圧しつつ加熱することにより、第1弾性体13の形成材料、第2弾性体14の形成材料を共に硬化させる。これにより、第1弾性体13、第2弾性体14を形成するとともに、これら第1弾性体13、第2弾性体14をベース板12に接着する。すなわち、第1弾性体13及び第2弾性体14とベース板12とが一体化されてなる、ベース部11を形成する。その後、これら第1弾性体13、第2弾性体14上にスパイラル溝15を形成したトップフォイル10を載せる。
これにより、トップフォイル10とベース部11とを備えてなる、図2(a)に示した構造のスラストフォイル軸受9Aが得られる。ベース部11は、回転軸1の回転時に、トップフォイル(軸受部)10をその径方向に傾斜可能に支持し、かつ、弾性的に支持できるようになっている。また、このスラストフォイル軸受9Aは、トップフォイル(軸受部)10に動圧発生用のスパイラル溝15を形成しているため、回転軸1の停止時においては、スラストカラー5に対して非接触タイプのものとなっている。
次に、このような構成からなるスラストフォイル軸受9Aの作用について説明する。
回転軸1の停止時においては、スラストフォイル軸受9Aはそのトップフォイル10がスラストカラー5に対して非接触の状態に配置されている。この停止状態から、タービン翼車4に駆動力が与えられて回転軸1が回転し始め、高速回転に進むと、スラストカラー5とトップフォイル10の軸受面10bとの間に、スパイラル溝15で形成された動圧によって流体潤滑膜が形成され、これによってスラストフォイル軸受9Aは、形成された流体潤滑膜を介してスラストカラー5を支持するようになる。その際、スラストフォイル軸受9Aは回転軸1の停止時においてスラストカラー5に対して非接触の状態となっていたため、このスラストフォイル軸受9Aは実質的に始動時の抵抗トルク(初期トルク)を生じていない。
なお、形成された流体潤滑膜の動圧は、前述したようにスラストフォイル軸受9Aの内周側で高く、外周側で低くなっている。
また、回転軸1は、回転軸が有する不釣合い、外部環境の影響および運転状態などによってその回転が回転中心から僅かながらぶれて振動することがあり、その場合にはこれに固定されているスラストカラー5も僅かながら振動して面振れし、図2(b)に示すように瞬間的には傾いた状態となる。
その際、本例のスラストフォイル軸受9Aにあっては、ベース板12に凹部16を形成し、この凹部16の深さを内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成し、さらに凹部16には第1弾性体13を設け、内周側の平坦面17上には第1弾性体13より剛性が高い第2弾性体14を設けている。
したがって、前記動圧が高くなる内周側では外周側に比べて第2弾性体14の厚さが第1弾性体13に比べて相対的に薄くなり、しかも第2弾性体14は第1弾性体13より剛性が高いため、内周側の第2弾性体14は動圧が低くなる外周側の第1弾性体13に比べて撓み量(弾性変形量)が小さくなる。また、第1弾性体13についても、内周側では外周側に比べて厚さが薄くなるため、内周側ではその撓み量(弾性変形量)が小さくなる。
よって、この動圧が高くなる内周側では第2弾性体14や第1弾性体13が必要以上に大きく撓むことがないため、動圧が高くなる内周側においても、流体潤滑膜に所望の動圧が発生されるようになり、スラストフォイル軸受9Aはその軸受負荷能力の低下が抑制されたものとなる。また、外周側の第1弾性体13は内周側よりも撓み易くなっているので、軸受面10bはスラストカラー5に良好に追従し、図2(b)の左側に示すように、スラストカラー5とトップフォイル10の軸受面10bとの間の流体潤滑膜の厚さ(スラストカラー5とトップフォイル10の軸受面10bとの隙間)が一定に保たれ、流体潤滑膜が破断し難くなる。すなわち、外周側が撓み易くなっているのでスラストカラー5の傾きに追従できる。
また、凹部16の内周側には平坦面17が形成されており、この平坦面17に設けられた第2弾性体14は第1弾性体13より剛性が高いため、この第2弾性体14が設けられた内周端側は、トップフォイル10に押圧されてもほとんど弾性変形が生じない(撓まない)ことになる。したがって、例えばスラスト荷重(静荷重)が増えても、内周端側(平坦面17側)によってトップフォイル10がベース板12側に移動するのが抑制され、これによって回転軸1がその軸方向に移動するのが制限されるようになる。
したがって、本実施形態に係るスラストフォイル軸受9Aによれば、スラスト荷重(静荷重)が増えても、前述したようにトップフォイル10がベース板12側に移動するのが抑制されているので、回転軸1がその軸方向に移動するのが十分に制限される。よって、図1に示したようにこのスラストフォイル軸受9A(9)をターボ機械のインペラ3を有する回転軸1に適用した場合に、回転軸1がその軸方向に沿って図1中矢印方向に移動することで、インペラ3がその外側のハウジング(静止部)6に接触してしまうおそれが無くなる。
また、流体潤滑膜の動圧が高くなる内周側では、第2弾性体14が必要以上に大きく撓むことがなく、したがってこの内周側でも前記流体潤滑膜に所望の動圧が発生されるため、軸受9Aの軸受負荷能力の低下を抑制することができ、また、内周側に比べると外周側は撓み易くなっているので、スラストカラー5の振動(面振れ)による傾きをより良好に吸収することができる。すなわち、このスラストフォイル軸受9Aにあっては、回転軸1が傾くような振れ回り振動が起こり、スラストカラー5に傾き(面振れ)が生じても、この傾きをより良好に吸収し、したがって回転軸1の軸振動(コニカル振動)を充分に抑制することができる。
さらに、ベース板12のトップフォイル(軸受部)10に対向する面側に凹部16を形成し、トップフォイル10には凹部を形成していないので、このトップフォイル10を比較的薄く形成することができ、これによって軽量に形成することが可能になる。したがって、トップフォイル10を軽量に形成することで、その軸受面10bのスラストカラー5に対する動的な追従性を高めることができる。
なお、前記例では、図2(a)、(b)に示したように、凹部16の底面を平坦な傾斜面としたが、凹部16はその深さがベース板12の内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されていれば、図2(c)に示すように湾曲してなる湾曲面であってもよい。この湾曲面の形状については、例えばスラストフォイル軸受9(9A)の形状や寸法、回転軸1の運転条件などに基づいたシミュレーションにより、図3(b)に示したようなグラフを求めておき、このグラフから得られる半径方向の距離と動圧との関係に対応して、設計するのが好ましい。
また、前記例では、ベース板12のトップフォイル(軸受部)10に対向する面側に凹部16を形成したが、トップフォイル側に凹部を形成し、該凹部内に弾性体(第1弾性体)を埋設し、さらに、凹部の内周側の平坦面に第2弾性体を設けた構成としてもよい。このような構成としても、図2(a)に示した例と同様、回転軸1の軸方向への動きを十分に制限することができ、また、スラストカラー5の振動(面振れ)による傾きをより良好に吸収することができる。
次に、図1に示したスラストフォイル軸受9の第2の例を、図4(a)〜(c)に示す。なお、図4(a)〜(c)では、このスラストフォイル軸受を符号9Bで示す。このスラストフォイル軸受9Bも、図1においてインペラ3側に配置されたものとする。ただし、本例でも第1の例と同様に、図1においてスラストカラー5を挟んだ両方のスラストフォイル軸受9(9B)は、同一の構成からなるものとする。
図4(a)に示すようにスラストフォイル軸受9Bは、回転軸1に固定されたスラストカラー5に対向して配置された円環状(円筒状)のもので、回転軸1に外挿されて設けられたものである。このスラストフォイル軸受9Bは、スラストカラー5に対向して配置される軸受部20と、この軸受部20の、前記スラストカラー5に対向する面と反対側の面に対向して配置されたベース板(ベース部)21と、を備えて構成されたものである。
軸受部20は、本例では円環薄板状の3枚のフォイル22、23、24が、積層配置されて全体が円環板状に形成されたもので、回転軸1を挿通するための貫通孔20aを有したものである。3枚のフォイルは、その平面形状が全て同じ大きさ・寸法に形成されたもので、前記スラストカラー5側から順に、トップフォイル22、第1バックフォイル23、第2バックフォイル24となっており、トップフォイル22のスラストカラー5に対向する面が、軸受面22aとなっている。
軸受面22aには、図5(a)に示すように動圧発生用のスパイラル溝25が形成されている。スパイラル溝25は、図3(a)に示したスパイラル溝15と同様のもので、多数の螺旋形溝(スパイラル状の溝)25aを周方向に沿って等間隔に配置したものである。すなわち、図5(a)に示すように螺旋形溝25aは、軸受面22aの外周端から、前記貫通孔20aの周囲に設けられた円環状のランド25bにまで延びて形成されている。ランド25bは、螺旋形溝25aの底面に対して相対的に高い位置(外側の位置)に外面を有したものである。なお、螺旋形溝25a、25a間もランド(図示せず)となっている。
このような構成によってスパイラル溝25(螺旋形溝25a)は、図3(a)に示したスパイラル溝15と同様に、スラストカラー5に対して軸受面22aが相対的に回転した際(実際にはスラストカラー5が回転する)、軸受面22aの外周側から螺旋形溝25aに沿って内周側に軸受周囲の流体(例えば空気)を引き込み、これによってスラストカラー5と軸受面22aとの間に流体潤滑膜を形成する。また、スパイラル溝25(螺旋形溝25a)によって引き込まれた流体は、ランド25bに衝突することでその流れが遮られ、動圧が保持されるため、特に軸受部20(軸受面22a)の内周側で圧力が高くなるようになっている。すなわち、スパイラル溝25(螺旋形溝25a)によって形成される流体潤滑膜は、軸受面22aの外周側に比べ、内周側で高くなるような圧力分布を有するものとなっている。
図5(b)は、このような流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフである。図5(b)中横軸は、図5(a)に示した軸受面22aにおける、中心からの半径方向の距離(位置)を示し(右側に行くほど中心から遠くなる)、縦軸は流体潤滑膜の圧力(動圧)を示している(上側に行くほど高くなる)。また、図5(b)のグラフにおける(1)は、図5(a)中のランド25bの内周縁での圧力を示し、(2)は同じくランド25bの外周縁での圧力を示し、(3)は軸受面22aの外周縁での圧力を示している。
図5(b)に示すように、軸受面22aの外周縁(3)からランド25bの外周縁(2)までの範囲内においては、外周側から内周側に行くに連れて流体潤滑膜の圧力(動圧)は連続的に高くなるように変化している。また、軸受面22a全体で見ても、ランド25bの外周縁(2)、すなわちスパイラル溝25が形成された領域の内周端で、流体潤滑膜の圧力(動圧)が最も高くなっている。
図5(a)に示すように軸受部20を構成するトップフォイル22は、例えばステンレスやインコネル(Inconel[登録商標])などの合金や金属からなるもので、厚さが0.1mm〜0.3mm程度の薄板状のものである。また、第1バックフォイル23、第2バックフォイル24は、銅等の金属や制振合金からなるもので、厚さが0.05mm〜0.1mm程度の薄板状のものである。なお、第1バックフォイル23、第2バックフォイル24には、その表面をコーティングして摩擦による減衰効果を高めるようにしてもよい。
ベース板21は、回転軸1を挿通するための貫通孔21aを有した円環板状(略円筒状)のもので、ステンレス等の合金や金属からなる耐熱性のものであり、軸受部20の第2バックフォイル24に対向して配置されたものである。このベース板21は、図示しないケーシング等に螺子等で固定されており、これによって固定された状態で保持されている。
また、このベース板21の、前記第2バックフォイル24に対向する面は、その外周側に配置されて凹部26を形成する第1面部21bと、該第1面部21bより内周側に配置された第2面部21cとを有している。凹部26は、ベース板21の周方向に沿って周全体で連続して形成されている。すなわち、この凹部26は、平面視円環状に形成されている。また、この凹部26は、その深さが、ベース板21の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されている。したがって、このベース板21は、凹部26によってテーパ面を形成したものとなっており、その厚さが、内周側から外周端に向かって連続的に薄くなるように形成されている。
また、凹部26の内周側の端縁26aは、凹部26を形成した面の内周端27aより外周側に位置している。したがって、前記第2面部21c(凹部26を形成した面の内周端27aから凹部26の内周側の端縁26aまでの間)は、平坦面27となっている。
このような構成のもとに軸受部20は、その第2バックフォイル24が、通常は平坦面27にのみ接した状態でベース板21に支持されている。すなわち、ベース板(ベース部)21は、回転軸1の回転時に、第2バックフォイル24を含む軸受部20をその径方向に傾斜可能に支持し、かつ、弾性的に支持できるようになっている。
ここで、ベース板21の、第2バックフォイル24に対向する面における、第1面部21bの幅(ベース板21の半径方向の長さ)と、第2面部21cの幅(ベース板21の半径方向の長さ)とについては、以下のようにして設計するのが好ましい。
後述するようにスラストフォイル軸受9Bによる軸受負荷能力を優先させる場合には、平坦面27の幅(半径方向の長さ)を広くして動圧分布図である図5(b)内の(2)の周辺を広く支持し、この(2)周辺での支持剛性を高くする。
また、後述するようにスラストカラー5に対する軸受面22aの追従性を優先し、減衰効果をより高めたい場合には、平坦面27の幅(半径方向の長さ)を狭くして軸受部20が傾き易くなるようにする。
特に、スラストカラー5に対する軸受面22aの追従性を最優先としたい場合には、平坦面27を形成することなく、第2バックフォイル24に対向する面全体を、凹部26としてもよい。その場合にも、凹部26の内周端(ベース板21の内周端)が凹部26中の他の部位より凹んでいないため、該内周端によって軸受負荷能力が発揮されるようになる。
なお、図4(a)に示した構成のスラストフォイル軸受9Bの要部を、図5(c)として、先に示した流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフである図5(b)とともに示す。図5(b)、(c)に示すように、凹部26と平坦面27との境界が、図5(b)に示す(2)の位置、すなわち図5(a)に示すランド25bの外周縁の位置となる。
さらに、図5(d)には、平坦面27を形成することなく、第2バックフォイル24に対向する面全体を、凹部26とした場合の、スラストフォイル軸受9Bの要部を示す。
また、本例では、図6に示すようにベース板21の内周側端部に、円筒状の保持筒28を形成し、この保持筒28を軸受部20の貫通孔20a(図4参照)内に挿入することにより、フォイル22、23、24の側端面を保持することで各フォイル22、23、24の内周側端部をベース板21の内周側端部に保持している。すなわち、本例では、トップフォイル22についてはその内周端側に庇状の係合部29を形成し、この係合部29を保持筒28の上端部に係合させるとともに、該係合部29で保持筒28の上端面を覆っている。このような構成のもとにベース板(ベース部)21は、前記したように回転軸1の回転時に、軸受部20をその径方向に傾斜可能に支持し、かつ、弾性的に支持できるようになっている。
次に、このような構成からなるスラストフォイル軸受9Bの作用について説明する。
回転軸1の停止時においては、第1の例のスラストフォイル軸受9Aと同様にスラストフォイル軸受9Bは、軸受部20のトップフォイル22がスラストカラー5に対して非接触の状態に配置されている。この停止状態から、タービン翼車4に駆動力が与えられて回転軸1が回転し始め、高速回転に進むと、スラストカラー5と軸受部20の軸受面22aとの間に、スパイラル溝25で形成された動圧によって流体潤滑膜が形成され、これによってスラストフォイル軸受9Bは、形成された流体潤滑膜を介してスラストカラー5を支持するようになる。その際、スラストフォイル軸受9Bは回転軸1の停止時においてスラストカラー5に対して非接触の状態となっていたため、このスラストフォイル軸受9Bは実質的に始動時の抵抗トルク(初期トルク)を生じていない。
なお、形成された流体潤滑膜の動圧は、前述したようにスラストフォイル軸受9Bの内周側で高く、外周側で低くなっている。
また、回転軸1は、回転軸が有する不釣合い、外部環境の影響および運転状態などによってその回転が回転中心から僅かながらぶれて振動することがあり、その場合にはこれに固定されているスラストカラー5も僅かながら振動して面振れし、図4(b)に示すように瞬間的には傾いた状態となる。
その際、本例のスラストフォイル軸受9Bにあっては、ベース板21に凹部26を形成し、この凹部26の深さを内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成しているので、軸受部20は、凹部26を形成したベース板21に支持されることにより、流体潤滑膜の動圧が高くなる内周側では動圧が低くなる外周側に比べて曲げ剛性が高く、相対的に強いバネとして機能するようになる。すなわち、軸受部20はその内周側のみがベース板21に保持された片持ち状になっているため、外周側では力が弱いバネとして機能しているのに対し、内周側では力が強いバネとして機能するようになっている。
よって、トップフォイル22はその内周側がほとんど撓まないため、この内周側でも流体潤滑膜に所望の動圧が発生されるようになり、スラストフォイル軸受9Bはその軸受負荷能力の低下が抑制されたものとなる。
また、凹部26の深さが内周側から外周端に向かって連続的に深くなっているので、軸受部20はその外周側がベース板21側に変形し易くなっており、したがって軸受面22aはスラストカラー5に良好に追従し、図4(b)の左側に示すように、スラストカラー5とトップフォイル22の軸受面22aとの間の流体潤滑膜の厚さ(スラストカラー5とトップフォイル22の軸受面22aとの隙間)が一定に保たれ、流体潤滑膜が破断し難くなる。すなわち、外周側が撓み易くなっているので、スラストカラー5の傾きに容易に追従できる。
また、ベース板21の、凹部26を形成した面には平坦面27が形成されており、この平坦面27に軸受部20は支持されているため、軸受部20が平坦面27を押圧しても軸受部20に曲げ変形が生じない(撓まない)ことになる。したがって、例えばスラスト荷重(静荷重)が増えても、前記の平坦面27によって軸受部20がベース板21側に移動するのが抑制されるため、回転軸1がその軸方向に移動するのが制限されるようになる。
さらに、3枚のフォイル22、23、24を積層することで軸受部20を構成しているので、不釣り合いや外乱等によって例えば図4(b)に示したように回転軸1が傾くような振れ回り振動をしても、スラストカラー5を介してこれに追従する軸受部20は、積層されたフォイルどうしが互いに擦れ合い、さらに、第2バックフォイル24(軸受部20)とベース板(ベース部)21も擦れ合うことにより、その摩擦によって前記振れ回り振動を減衰させるように作用する。
したがって、本例のスラストフォイル軸受9Bによれば、スラスト荷重(静荷重)が増えても、前述したように軸受部20がベース板21側に移動するのが抑制されているので、回転軸1がその軸方向に移動するのが十分に制限される。よって、図1に示したようにこのスラストフォイル軸受9Bをターボ機械のインペラ3を有する回転軸1に適用した場合に、回転軸1がその軸方向に沿って図1中矢印方向に移動することで、インペラ3がその外側のハウジング(静止部)6に接触してしまうおそれが無くなる。これにより、インペラ3の先端とハウジング6との間のチップクリアランス7を小さくすることができ、ターボ機械の効率を高めることができる。
また、流体潤滑膜の動圧が高くなる内周側では、軸受部20が必要以上に大きく撓むことがなく、したがってこの部位でも所望の動圧が発生され易くなるため、軸受9Bの軸受負荷能力の低下を抑制することができる。
さらに、ベース板21には凹部26が形成されているので、回転軸1が傾くように振れ回り振動し、スラストカラー5に傾き(面振れ)が生じても、軸受部20はその傾きに追従するように傾斜する。その際、軸受部20を構成するフォイル22、23、24間などに摩擦が生じ、これによって回転軸1の振動エネルギーが散逸するため、減衰効果が発揮され、これによって振動抑制効果が得られる。
なお、前記例では、図4(a)、(b)に示したように、凹部26の底面を平坦な傾斜面としたが、凹部26はその深さがベース板21の内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されていれば、図4(c)に示すように湾曲してなる湾曲面であってもよい。この湾曲面の形状については、例えばスラストフォイル軸受9(9B)の形状や寸法、回転軸1の運転条件などに基づいたシミュレーションにより、図5(b)に示したようなグラフを求めておき、このグラフから得られる半径方向の距離と動圧との関係に対応して、設計するのが好ましい。
さらに、前記の平坦面27を形成することなく、図5(d)に示したように凹部26を、ベース板21の内周端から外周端にかけて全体に形成してもよい。
次に、図1に示したスラストフォイル軸受9の第3の例を、図7(a)、(b)に示す。なお、図7(a)、(b)では、このスラストフォイル軸受を符号9Cで示す。このスラストフォイル軸受9Cも、図1においてインペラ3側に配置されたものとする。ただし、本例でも第1、第2の例と同様に、図1においてスラストカラー5を挟んだ両方のスラストフォイル軸受9(9C)は、同一の構成からなるものとする。
図7(a)に示すようにスラストフォイル軸受9Cは、回転軸1に固定されたスラストカラー5に対向して配置される円環板状(円筒状)のもので、回転軸1に外挿されて設けられるものである。すなわち、このスラストフォイル軸受9Cは、図7(b)に示すように円環板状のベース板30の表面側(スラストカラー5側)に、バックフォイル31を保持し、このバックフォイル31の表面側に円環板状のトップフォイル32を有したもので、図1に示したように回転軸1に外挿され、かつスラストカラー5に対向して配置されたものである。
トップフォイル32は、図7(a)に示すように円環をその周方向に8分割してなるトップフォイル片32aを、8個有して円環板状に形成されたもので、その周方向の一方の側縁部が溶接等によってベース30に固定されている。このような構成によってトップフォイル片32aは、周方向の一側縁側が固定端となり、他側縁側が自由端となっている。
バックフォイル31は、トップフォイル32の裏面側に配置されてこれを弾性的に支持するものである。したがって、このバックフォイル31も、トップフォイル32に対応して8個のバックフォイル片31aからなっている。すなわち、円環をその周方向に8分割してなるバックフォイル片31aが、ベース30の周方向に8個並べて配置されたことにより、円環板状のバックフォイル31が形成されている。これらバックフォイル片31aも、その周方向の一方の側縁部が溶接等によってベース30に固定されており、したがって一側縁側が固定端となり、他側縁側が自由端となっている。
バックフォイル片31aは、従来公知のバンプフォイルと同様、図7(b)に示すように山部33と谷部34とが周方向、すなわちトップフォイル32の周方向に沿って交互に形成されている。なお、本例では、トップフォイル32によって本発明に係る軸受部が形成され、バックフォイル31とベース板30とによって軸受部を支持するベース部が形成されている。
次に、このような構成からなるスラストフォイル軸受9Cの作用について説明する。
スラストフォイル軸受9Cは、トップフォイル32がスラストカラー5に対して接触した状態に配置されている。
この停止状態から、タービン翼車4に駆動力が与えられて回転軸1が回転し始め、高速回転に進むと、スラストカラー5とトップフォイル32との間に形成された動圧によって流体潤滑膜が形成され、これによってスラストフォイル軸受9Cは、形成された流体潤滑膜を介してスラストカラー5を支持するようになる。
また、回転軸1は、回転軸が有する不釣合い、外部環境の影響および運転状態などによってその回転が回転中心から僅かながらぶれて振動することがあり、その場合にはこれに固定されているスラストカラー5も僅かながら振動して面振れし、瞬間的には傾いた状態となる。その際、本例のバックフォイル31は、トップフォイル32から荷重を受けると、図7(b)に示す山部33が自由端側に延び、谷部34がベース板30上を滑ることで摩擦を生じる。
よって、本例のスラストフォイル軸受9Cにあっては、回転軸1が傾くように振れ回り振動し、スラストカラー5に傾き(面振れ)が生じ、これにトップフォイル32が追従した際、このトップフォイル32を支持するベース部のバックフォイル31がベース板30との間で摩擦を生じ、これによって回転軸1の振動エネルギーが散逸するため、減衰効果を発揮し、振動抑制効果を奏する。すなわち、回転軸1の軸振動に対して迅速に減衰効果を発揮することができ、これによって高い減衰能力を有するものとなる。
次に、図1に示したラジアルフォイル軸受8の好適なものとして、回転軸1にこれが傾く軸振動(コニカル振動)が起きた際、この軸振動によるエネルギーを減衰させて振動抑制効果を発揮し得る、ラジアルフォイル軸受の一例を説明する。
図8(a)、(b)は、振動抑制効果を発揮し得るラジアルフォイル軸受の一例を示す図である。このラジアルフォイル軸受8は、回転軸1に外挿されて該回転軸1を支持する円筒状のもので、回転軸1に対向して配置される円筒状のトップフォイル40と、該トップフォイル40の径方向外側に配置されるバックフォイル41と、該バックフォイル41の径方向外側に配置される軸受ハウジング42とを備えて構成されている。
軸受ハウジング42は、ラジアルフォイル軸受8の最外部を構成する金属製で円筒状のもので、内部にバックフォイル41およびトップフォイル40を収容したものである。
バックフォイル41は、フォイル(薄板)で形成されてトップフォイル40を弾性的に支持するものである。このようなバックフォイル41としては、例えば、バンプフォイル、特開2006−57652号公報や特開2004−270904号公報などに記載されているスプリングフォイル、特開2009−299748号公報などに記載されているバックフォイルなどが用いられる。図8ではバンプフォイルを例に説明する。バンプフォイルは、図8(b)に示すようにフォイル(薄板)が波板状に成形され、さらに軸受ハウジング42の内周面に沿って円筒状に形成配置されたものである。ここで、波板状に成形されたバンプフォイル(バックフォイル)41は、ラジアルフォイル軸受8の周方向に沿って、トップフォイル40に接する山部と、軸受ハウジング42に接する谷部とを交互に形成している。これによってバックフォイル41は、ラジアルフォイル軸受8の軸方向に山部や谷部による流体の通路を形成している。
トップフォイル40は、その外面(裏面)にバックフォイル41を貼設したもので、図8(b)に示すようにフォイル始端40a側が外方に折曲して軸受ハウジング42に形成された係止溝(図示せず)に係止したことにより、軸受ハウジング42内を回転することなく、該軸受ハウジング42内に保持固定されている。また、フォイル終端40bは、フォイル始端40aに対して所定の隙間をあけてその近傍に配置されている、なお、バックフォイル41はトップフォイル40の外面に貼設されていることにより、該バックフォイル41もその始端と終端との間に、所定の隙間を有している。
また、トップフォイル40には、図9(a)、(b)に示すようにその内面、すなわち回転軸1と対向する面に、斜方溝43が複数形成されている。
斜方溝43は、トップフォイル40の外観を示す図9(a)、およびトップフォイル40の内面を展開した図9(b)に示すように、回転軸1の回転方向(矢印方向)後方から前方に向かうとともに、トップフォイル40の軸方向(回転軸1の回転方向と直交する方向)の中心部(本例では軸方向の中心線CL)から両方の端縁側にそれぞれ向かって形成されている。すなわち、軸方向の中心線CLを対称線として、斜方溝43は軸方向の一方の側と他方の側とに、線対称で形成配置されている。
これら斜方溝43は、ラジアルフォイル軸受8の大きさによっても異なるものの、周方向(回転軸1の回転方向)に中心線CLを挟んだ片側だけで例えば10〜30本程度、中心線CLを挟んだ両側では20〜60本程度形成されている。そして、隣り合う斜方溝43間は、非溝形成部、すなわち溝間ランド部44となっている。なお、斜方溝43は、金属製薄板状のトップフォイル40の内面が、エッチング等によって深さ数十μm程度の溝に形成されたものである。一方、溝間ランド部44は、トップフォイル40の内面によって構成されたもので、斜方溝43が形成されたことにより、相対的に形成されたものである。
これら斜方溝43と溝間ランド部44とは、特に限定されないものの、その幅の比が例えば2:1〜1:2程度となっている。
また、斜方溝43は、図9(b)に示すように軸方向に対する角度、すなわち中心線CLと直交するラインに対する傾斜角θが、10°〜35°程度に形成されているのが好ましく、15°〜20°程度に形成されているのがより好ましく、17°程度に形成されているのがさらに好ましい。10°以上にすることで、回転軸1の回転力に付勢された潤滑流体を、斜方溝43に沿って回転軸1の回転方向に向けて良好に流れさせることができ、ラジアルフォイル軸受8をより広範囲に冷却することが可能になる。一方、35°以下にすることで、潤滑流体が斜方溝43に沿って軸方向の端部側に向かって良好に流れるようになり、後述するように熱くなった潤滑流体をラジアルフォイル軸受8の外側に良好に排出することが可能になる。
また、斜方溝43は、それぞれ、トップフォイル40の一方の端縁側に向かって形成されているものの、該端縁にまで延びることなく、該端縁の手前で止まって形成されている。これにより、斜方溝43の端縁側の端部(閉止端)と該端縁との間には、端縁側ランド部45が形成されている。端縁側ランド部45も、前記溝間ランド部44と同様にトップフォイル40の内面によって構成されたもので、斜方溝43が形成されたことにより、相対的に形成されたものである。
中心線CLを挟んだ片側の斜方溝43の、軸方向における長さL1は、特に限定されないものの、トップフォイル40の軸方向の長さLに対して、例えば(2L/5)〜(L/4)程度とされる。したがって、端縁側ランド部45の、軸方向における幅L2(=L/2−L1)は、(L/10)〜(L/4)程度とされる。このような範囲で斜方溝43の長さL1や端縁側ランド部45の幅L2を形成することにより、斜方溝43を流れてきた流体は端縁側ランド部45で一旦せきとめられ、その後これを乗り越えるようになるため、高い膜圧を発生するようになる。
次に、このような構成からなるラジアルフォイル軸受8の作用について説明する。
回転軸1が停止した状態では、トップフォイル40はバックフォイル41によって回転軸1側に付勢されることで回転軸1に密着している。ただし、本例では、トップフォイル40の内面に斜方溝43が形成されているため、回転軸1が停止している状態でもすでに斜方溝43内に周囲流体(例えば空気)が存在している。
そして、タービン翼車4に駆動力を与えて回転軸1を始動させると、最初は低速で回転を始め、その後徐々に加速して高速で回転する。すると、トップフォイル40のフォイル始端40aとフォイル終端40bとの間から周囲流体が引き入れられ、トップフォイル40と回転軸1との間に流入することでここに流体潤滑膜を形成する。なお、トップフォイル40と回転軸1との間には、最初から斜方溝43内に周囲流体が存在していたため、回転軸1の回転速度が低い段階でも、斜方溝43内の周囲流体と流入してきた周囲流体とが合わさることにより、流体潤滑膜が容易に形成されるようになる。そして、この流体潤滑膜が十分な膜圧を発生すると、トップフォイル40が外側へ押し広げられ、回転軸1はトップフォイル40と非接触状態で回転するようになる。したがって、本例では、始動時における抵抗トルク(初期トルク)が充分に小さくなっている。
また、このようにして形成された流体潤滑膜は、回転軸1の回転が高速になるに連れ、回転軸1とトップフォイル40との間でせん断されることによって熱を生じる。しかし、本例では、トップフォイル40のフォイル始端40aとフォイル終端40bとの間から引き入れられた周囲流体が、斜方溝43の長さ方向に沿って中央線CLから両側端縁に向けて流れるようになる。したがって、軸受周囲の冷えた流体が軸方向中央部に流入して該中央部を冷却し、また該中央部の熱くなった潤滑流体が両側端縁に向けて排出されるようになるため、高い冷却効果が得られるようになる。
また、軸方向中央部から両側端縁に向けて排出された潤滑流体は、端縁側ランド部45を乗り越える際に強い流体潤滑膜圧を発生するため、該両側端部において負荷能力が良好に発揮されるようになる。図10は、本例のラジアルフォイル軸受8の、トップフォイル40と回転軸1との間に形成される流体潤滑膜の圧力(動圧)の分布を示すグラフである。図10中横軸は、トップフォイル40の軸方向の位置を示し、縦軸は流体潤滑膜の圧力(動圧)を示している(上側に行くほど高くなる)。
また、図10中において実線は、本例のラジアルフォイル軸受8による流体潤滑膜の圧力(動圧)を示し、破線は、斜方溝43を形成しない従来のラジアルフォイル軸受による流体潤滑膜の圧力(動圧)を示している。従来では、軸受中央部を頂点とした山形になっており、軸受中央部で高い負荷能力を発揮しているのに対し、本例では、前記したように斜方溝43を流れる潤滑流体が端縁側ランド部45を乗り越える際に強い流体潤滑膜圧を発生するため、ラジアルフォイル軸受8の両側端部においてそれぞれ負荷能力を良好に発揮するようになる。
なお、フォイル始端40aとフォイル終端40bとの間から引き入れられた周囲流体の一部は、斜方溝43の長さ方向に沿うことなく、回転軸1の回転方向に沿ってトップフォイル40の周方向に流れる。したがって、斜方溝43から溝間ランド部44に流れ、さらにこれを乗り越える際、強い流体潤滑膜圧を発生するようになる。これにより、本例のラジアルフォイル軸受8は、図10に示したようにその両側端部においてそれぞれ高い負荷能力を発揮するものの、中央部においても負荷能力を発揮するようになっている。
このようなラジアルフォイル軸受8にあっては、ラジアルフォイル軸受8の両側端部において負荷能力を良好に発揮させるようにしたので、従来と異なり、軸方向中央部でトップフォイルが大きく凹むことがなく、流体潤滑膜の圧力が両側端部に分散されることにより、トップフォイル40は両側端部で少しずつ凹むようになる。例えば、図10中破線で示した従来のラジアルフォイル軸受では、発揮する負荷能力が設計上の50%程度になってしまうのに対し、図10中実線で示した本例のラジアルフォイル軸受8では、発揮する負荷能力が設計上の80%程度となり、負荷能力の低下が大幅に抑制される。
そして、従来のラジアルフォイル軸受が軸方向中央部で負荷能力を主に発揮しており、したがって1箇所で回転軸1を支持していたのに対し、本例のラジアルフォイル軸受8では両側端部においてそれぞれに負荷能力を良好に発揮し、したがって2箇所で回転軸1を支持しているので、回転軸1の傾きに対してラジアルフォイル軸受8の支持剛性が強くなり、回転軸1が振れ回り(歳差運動)を起こした場合でも回転軸1の傾きを最小限に抑えることができる。これにより、回転軸1に対する軸受の相対的な傾きに対して剛性が強くなり、回転軸の軸振動(コニカル振動)を充分に抑制することが可能になる。
また、始動時には斜方溝43内に周囲流体が存在しており、昇速途上で回転軸1の回転速度が低い段階でも流体潤滑膜が容易に形成されるようになる。したがって、回転軸1が停止状態から回転状態に移る始動時において、抵抗トルク(初期トルク)が即座に低下するため、始動性がより向上する。
また、斜方溝43によって高い冷却効果が得られるようになっているので、その焼き付きが良好に防止されたものとなる。
以上に説明したように、本実施形態の回転軸支持構造2にあっては、回転軸1を支持するラジアルフォイル軸受については、従来二つで支持していたのに対して一つで支持するようにしたので、ラジアルフォイル軸受一つ分の初期トルクが低減し、始動性が向上する。また、一つのラジアルフォイル軸受で回転軸を支持しているので、従来のように二つで支持していた場合の、ラジアルフォイル軸受間での芯ズレ(ミスアライメント)が無くなるため、この芯ズレに起因する抵抗トルクも無くすことができる。したがって、例えば車両用過給機などの始動時に強い駆動力が得られない回転機械に適用した場合に、始動(回転)をより迅速に行うことができ、また、低速回転を良好に維持できる等の優れた効果を奏する。
さらに、ラジアルフォイル軸受については一つで回転軸を支持しているため、二つで支持していた従来に比べて回転軸の長さを短くすることが可能となり、支持構造の小型化が可能になるなど、回転軸を含めた支持構造の設計自由度を高めることができる。
また、従来の構造に比べてラジアルフォイル軸受を一つ減らせることができるため、コストダウンを図ることができ、したがって特に量産品とした場合に有利になる。
また、従来に比べて回転軸の長さを短くすることで、回転軸を軽量化することができ、したがって慣性量(慣性マス)が低減することで応答性(レスポンス)が向上する。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、図1に示した実施形態では回転軸1を水平方向に配置する横置き型としたが、回転軸を鉛直方向に配置する縦置き型の支持構造にも本発明を適用することができる。その場合、縦置き型では通常スラストフォイル軸受をスラストカラーの下方側にのみ配置する。したがって、このような縦置き型に本発明の支持構造を適用した場合、図1に示した実施形態と異なり、スラストフォイル軸受を一対(二つ)設けることなく、一つのみでスラストカラーを支持するようにしてもよい。その場合にも、前記した第1〜第3の例のスラストフォイル軸受9A〜9Cが好適に用いられる。
また、例えばスラストフォイル軸受として前記の第1〜第3の例のスラストフォイル軸受9A〜9Cを用いた場合、ラジアルフォイル軸受については、トップフォイル40に斜方溝43を形成しない、一般的なラジアルフォイル軸受を用いることができる。同様に、ラジアルフォイル軸受として図8〜図10に示したものを用いた場合、スラストフォイル軸受については、第1〜第3の例に示したもの以外の、一般的なラジアルフォイル軸受を用いることができる。
1…回転軸、2…回転軸支持構造、5…スラストカラー、8…ラジアルフォイル軸受、9、9A、9B、9C…スラストフォイル軸受、10…トップフォイル(軸受部)、11…ベース部、12…ベース板、13…第1弾性体(弾性体)、15…スパイラル溝、16…凹部、20…軸受部、21…ベース板(ベース部)、22…トップフォイル、22a…軸受面、23…第1バックフォイル、24…第2バックフォイル、25…スパイラル溝、26…凹部、27…平坦面、30…ベース板、31…バックフォイル、32…トップフォイル、40…トップフォイル、41…バックフォイル、42…軸受ハウジング、43…斜方溝、44…溝間ランド部、45…端縁側ランド部

Claims (6)

  1. スラストカラーを有する回転軸の支持構造であって、
    前記回転軸をラジアルフォイル軸受一つで回転可能に支持するとともに、該回転軸のスラストカラーを一つあるいは一対のスラストフォイル軸受で回転可能に支持することを特徴とする回転軸支持構造。
  2. 前記スラストフォイル軸受は、前記スラストカラーに対向して配置される円環状の軸受部と、前記軸受部の、前記スラストカラーに対向する面と反対側の面に対向して配置されて、前記回転軸の回転時に前記軸受部を支持する円環状のベース部と、を備えることを特徴とする請求項1記載の回転軸支持構造。
  3. 前記スラストフォイル軸受は、前記回転軸の停止時において、該回転軸の前記スラストカラーに対して非接触であることを特徴とする請求項2記載の回転軸支持構造。
  4. 前記軸受部の前記スラストカラーに対向する面には、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝が形成され、
    前記ベース部は、前記軸受部側に配置された弾性体と、該弾性体を保持するベース板とを有して構成され、
    前記ベース板の前記軸受部に対向する面側と、前記軸受部の前記ベース板に対向する面側との少なくとも一方には、その周方向に沿って連続する凹部が設けられ、
    前記凹部の深さが、前記ベース板又は前記軸受部の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成され、
    前記凹部には、該凹部を埋めた状態に前記弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転軸支持構造。
  5. 前記軸受部は、複数のフォイルが積層されてなるとともに、該複数のフォイルのうちの前記スラストカラー側に位置するフォイルの、前記スラストカラーに対向する面に、動圧発生用のポンプイン形スパイラル溝を形成してなり、
    前記ベース部の前記軸受部に対向する面側には、その周方向に沿って連続する凹部が設けられ、
    前記凹部の深さが、前記ベース部の半径方向において、その内周側から外周端に向かって連続的に深くなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転軸支持構造。
  6. 前記ラジアルフォイル軸受は、前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルとを備え、
    前記トップフォイルの前記回転軸と対向する面には、前記回転軸の回転方向後方から前方に向かうとともに、該トップフォイルの軸方向の中心部から両方の端縁側にそれぞれ向かう斜方溝が複数形成され、
    該斜方溝間、および該斜方溝の前記端縁側の端部と該端縁との間には、それぞれランド部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転軸支持構造。
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