JP2012126955A - 乾式伸線性に優れた高炭素鋼線材およびその製造方法 - Google Patents

乾式伸線性に優れた高炭素鋼線材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】乾式伸線工程の生産性を著しく向上させた、優れた伸線性を有する高炭素鋼線材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】乾式伸線に供される特定組成の高炭素鋼線材をパーライト組織とし、このパーライト組織における、平均ラメラ間隔L、ラメラのうちで間隔が120nm以下の微小なラメラの領域、平均ノジュール径D、平均ノジュール径Dと平均ラメラ間隔Lとの関係を各々特定範囲とし、乾式伸線性を優れさせる。
【選択図】図1

Description

本発明は、乾式伸線に供される、伸線性に優れた高炭素鋼線材およびその製造方法に関するものである。
タイヤ補強用のスチールコード、ビードワイヤ、ソーワイヤ、ベルトコードなどに使用される極細鋼線は、素材である高炭素鋼線材を必要な線径に伸線加工することによって製造される。この際、良好な伸線性を得るため、高炭素鋼線材の乾式伸線工程の途中で、1〜2回中間パテンティング処理を施すことが行われている。この中間パテンティング処理を含む乾式伸線工程は、主としてサイズ調整のための工程であり、この伸線時に断線すると、極細鋼線の生産性が著しく阻害されるためである。この乾式伸線後に、最終のパテンティング処理を経て施される湿式伸線が、極細鋼線の要求品質を決定する。
このような極細鋼線の素材である前記高炭素鋼線材にも、当然ながら良好な伸線性が求められる。この素材である高炭素鋼線材は、熱間圧延によって製造されるが、従来から、この熱間圧延後に、熱延線材を水冷し、衝風冷却することによって、線材組織を、良好な伸線性が得られる、微細パーライトにしている。
前記した通り、サイズ調整のための工程である乾式伸線工程は、品質よりも、生産性向上や生産コストの低減などの課題が主である。具体的には、より細い線径への伸線、伸線中の断線抑制、中間パテンティングの省略、伸線ダイスの寿命向上、伸線速度の上昇、伸線機モータの負荷軽減による消費電力の削減などが課題となる。したがって、これらを実現可能にした素材高炭素鋼線材が従来から求められている。
かかる要求に対して、従来から、高炭素鋼線材のパ−ライト組織の制御によって伸線性を向上させる技術が多数紹介されている。
例えば、特許文献1は、高炭素鋼線材のパ−ライトブロックの大きさを鋼のオ−ステナイト結晶粒度番号で6〜8番に、初析セメンタイトの生成量を体積率で0.2%以下に、パ−ライト中のセメンタイト厚さを20nm以下に、そしてこのセメンタイト中に含まれるCrの濃度を1.5%以下に調整することによって、乾式伸線時の中間パテンティング処理を省略する。
特許文献2は、前記特許文献1と同様に、高炭素鋼線材のオーステナイト結晶粒度制御や、パーライトコロニーサイズ制御、初析フェライト、初析セメンタイトの形状制御等により、乾式伸線時の中間パテンティング処理を省略する。
特許文献3は、高炭素鋼線材の線材横断面に存在する粒内変態上部ベイナイトの生成面積を30%以上、その粒内ベイナイトの成長サイズを2μm以上として、熱間圧延線材の生引き性を向上させる。
ここで、前記パーライト組織は周知であって、図1に前記パーライト組織を模式的に示す。なお、この図1は、高橋らの「共析パーライト鋼の延性支配因子」日本金属学会誌、vol42、1978、708頁に開示のパーライト組織図をベースとしている。この図1に示す通り、前記パーライト組織は、オーステナイト粒界から生まれて成長する、硬いセメンタイト相と柔らかいフェライト相との層状組織であり、加工性と強度とを併せ持つ。このフェライト相を間に挟むセメンタイト相同士の幅(間隔)がラメラ間隔Lであり、ラメラ間隔が均一で狭いほど、高強度化が図れる。前記パーライトのコロニーとは、パーライトのラメラの方向が揃った(同じ)領域をいう。このように、互いに隣り合い、前記ラメラの方向が互いに異なるコロニーの複数によって、フェライト結晶方位が一定の領域であるパーライトノジュール(パーライトブロックともいう)が形成される。
近年、特に、前記中間パテンティングの省略、伸線ダイスの寿命向上、伸線速度の上昇などの課題に対する特徴的な対応として、素材高炭素鋼線材が軟質化される傾向にある。これは乾式伸線加工に伴う鋼線の強度上昇によって、鋼線の引抜抵抗が上昇し、伸線機モータの負荷が上昇して消費電力が増加するとともに、加工発熱の増大により、潤滑が不十分となり、鋼線の脆化による断線が起こる傾向が高まったためである。素材高炭素鋼線材の軟質化=鋼線強度の低下によって、伸線時の加工発熱が低下し、鋼線の脆化が抑制される。これによって、これまでは制約されていた、前記中間パテンティングの省略や伸線速度の上昇も可能になる。
このような観点で、高炭素鋼線材のパ−ライト組織に更に注目し、パ−ライトの前記ラメラ間隔や前記ノジュール径などを制御して、前記中間パテンティングの省略や更なる伸線速度の上昇を図る技術が提案されている。
例えば、特許文献4は、高炭素鋼線材のパーライトの平均コロニー径を150μm 以下とし、平均ラメラ間隔を0.1〜0.4μm とすることにより、伸線性を向上させる技術が紹介されている。なお、熱間圧延後の高炭素鋼線材は、この特許文献4に記載されているように、水冷により巻き取り温度を調節し、引き続きステルモアコンベアやローラーコンベアなどの調整冷却装置により衝風量を調整することにより製造される。
特許文献5では、組織が95面積%以上のパーライトの平均ラメラ間隔Sを100nm以上に広げるとともに、平均ノジュール径Pを30μm 以下として粗大化を防止することによって、耐断線性を保ちながら、伸線ダイス寿命の向上や更なる伸線速度の上昇を図る技術が提案されている。
特許文献6では、パーライトの面積分率が95%以上であり、ラメラー間隔が0.08〜0.35μmであり、非拡散性水素量が0.5ppm以下であること高強度極細鋼線の製造において、中間パテンティングの省略を可能にし、伸線加工工程及び撚り線工程の断線率の低下を図る技術が提案されている。
特許文献7では、金属組織の80%以上がパーライト組織からなるとともに、高炭素鋼線材の平均引張強さTSと平均ラメラ間隔λとの間に、TS≦8700/√(λ/Ceq)+290の関係を持たせ、ラメラセメンタイトの機械的な性質を軟質化することで、線材を一層軟質化する技術が提案されている。
特開2004−91912号公報 特開2001−181789号公報 特開平8−295930号公報 特開2000−63987号公報 特許第3681712号公報 特開2008−261028号公報 特開2005−206853号公報
しかしながら、近年の環境負荷軽減の動向から、乾式伸線工程の生産性向上、コスト低減のために、高炭素鋼線材の伸線性向上に対する要求は高まるばかりである。これに対して、従来のように、高炭素鋼線材の前記軟質化技術だけでは、伸線性向上効果が不十分となってきている。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、乾式伸線工程の生産性を著しく向上させた、優れた伸線性を有する高炭素鋼線材およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための、本発明高炭素鋼線材の要旨は、乾式伸線に供される高炭素鋼線材であって、質量%で、C:0.68〜0.86%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜0.8%を各々含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるとともに、組織が95面積%以上のパーライトを有し、このパーライトの平均ラメラ間隔Lが150〜300nmの範囲であり、かつ、このパーライトのラメラのうちで間隔が120nm以下のラメラの領域が30%以下であり、かつ、ラメラ間隔の標準偏差が50nm以下であり、更に、このパーライトの平均ノジュール径Dが40μm 以下であり、かつ、この平均ノジュール径Dと前記平均ラメラ間隔LとがD<−0.1×L+60の関係を満たすこととする。
また、上記目的を達成するための、本発明高炭素鋼線材の製造方法の要旨は、乾式伸線に供される高炭素鋼線材の製造方法であって、質量%で、C:0.68〜0.86%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜0.8%を各々含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、加熱して仕上温度1050〜900℃で熱間圧延を行い、この熱間圧延における仕上圧延終了後、直ちに950〜800℃の範囲内の温度に水冷し、引き続き30℃/s以上の平均冷却速度にて640〜580℃の範囲内の温度に急冷した後、この温度範囲から2秒以内に650〜720℃の範囲内の温度に50℃/s以上の平均昇温速度で急速に加熱し、更に、この650〜720℃の温度範囲内に0.5℃/s未満(0℃/sを含む)の昇温速度あるいは降温速度で保持しながらパーライト変態を完了させた線材とし、この線材の組織を、95面積%以上のパーライトを有し、このパーライトの平均ラメラ間隔Lが150〜300nmの範囲であり、かつ、このパーライトのラメラのうちで間隔が120nm以下のラメラの領域が30%以下であり、かつ、ラメラ間隔の標準偏差が50nm以下であり、更に、このパーライトの平均ノジュール径Dが40μm 以下であり、かつ、この平均ノジュール径Dと前記平均ラメラ間隔LとがD<−0.1×L+60の関係を満たす組織とすることである。
本発明者は、前記乾式伸線工程における断線抑制のためには、前記高炭素鋼線材のパーライトのラメラ間隔(平均ラメラ間隔L)をある程度広くし、線材の強度を下げ、脆化を軽減することが必須であるとの認識に立った。そして、このような前提のもとで、前記乾式伸線工程における鋼線の脆化を更に軽減させる伸線性向上策について研究した。
この結果、このような前提のもとでは、結晶粒として物理的意味のある、前記パーライトのノジュール径(平均ノジュール径D)が、伸線性、特に、乾式伸線時の耐脆化特性に大きく影響していることを知見した。この結果、鋼線の脆化軽減にはパーライトラメラ間隔の均一粗大化が有効であることを知見した。すなわち、パーライト平均ラメラ間隔を適正に制御しつつ、微細なラメラ組織の生成を抑制し、更に線材内のラメラ間隔の分布を均一化することで鋼線の耐脆化特性が向上する。
即ち、前記パーライトのラメラ間隔が微細な領域を低減し、パーライトのラメラ間隔ばらつきを低減して均一化を図ることで、耐脆化特性が向上し、乾式伸線時の耐断線性が大幅に向上し、優れた伸線性が得られることを知見した。本発明によれば、前記した乾式伸線時の生産性向上や生産コストの低減など(より細い線径への伸線、伸線中の断線抑制、中間パテンティングの省略、伸線ダイスの寿命向上、伸線速度の上昇、伸線機モータの負荷軽減による消費電力の削減など)を図ることができる。
高炭素鋼線材の組織を示す模式図である。 本発明高炭素鋼線材の組織規定を示す説明図である。 本発明高炭素鋼線材の製造方法を示す説明図である。
化学成分組成:
まず、本発明高炭素鋼線材の化学成分組成の限定理由について説明する。本発明高炭素鋼線材の化学成分組成は、乾式伸線に供される高炭素鋼線材として、後述する鋼線材組織とするための前提となる。また、乾式伸線工程の生産性向上、やコスト低減のための伸線性向上や、本発明の対象とするタイヤ補強用などの極細鋼線として要求される強度などの機械的特性を確保するための前提となる。
このため、本発明高炭素鋼線材は、質量%で、C:0.68〜0.86%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜0.8%を各々含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学成分組成とする。
なお、以下の元素含有量の単位は全て質量%だが、単に%と表記する場合もある。
これら以外のその他の元素は、基本的には不可避的不純物であり、通常の高炭素鋼線材の不純物含有量 (許容量) レベルとする。但し、本発明の対象とするタイヤ補強用などの極細鋼線として供するにあたり、延靭性確保のために、P、S、Nや、断線原因となる酸化物制御のために、Al、Oなどの含有量は少ない方が良い。
以下に、各主要元素の含有量と、その限定理由(意義)について説明する。
C:0.68〜0.86質量%
Cは高炭素鋼線材の強度を確保するための基本元素であり、C含有量が少なすぎると、本発明の対象とするタイヤ補強用などの極細鋼線として要求される強度を確保できない。また、鋼線材の製造過程でパーライト主体の組織にならず、伸線性に悪影響を及ぼす場合がある。一方、C含有量の増加は、強度増加に直結するが、過度の添加は延性を劣化させるし、初析セメンタイトが生成して、伸線性を阻害するようになる。このため、C含有量は0.68〜0.86%の範囲とする。
Si:0.05〜0.5質量%
Siは脱酸作用とパーライト組織の安定化に寄与する。また、固溶強化により強度を高める作用を有する。本発明の対象とするタイヤ補強用などの極細径に伸線加工された極細鋼線では、Siを脱酸剤として添加し、硬質なアルミナ系介在物の生成を防止することが、強度などの機械的特性を確保するために重要となる。Si含有量が少な過ぎるとこれらの効果が不足するが、一方で過度の添加は、酸化物の粗大化、線材の強度上昇、剥離しがたいスケールを生成、フェライトを固溶強化し過ぎするなど、伸線性を阻害する。このため、Si含有量は0.05〜0.5%の範囲とし、下限値は好ましくは0.07%、より好ましくは0.10%、更に好ましくは0.15%とする。また、上限値は好ましくは0.45%、より好ましくは0.40%、更に好ましくは0.35%とする。
Mn:0.1〜0.8質量%
Mnは脱酸、脱硫作用と、固溶強化による強度向上作用があり、パーライト組織の安定化に寄与する。Mn含有量が少な過ぎるとこれらの効果が不足するが、一方で過度の添加は、偏析による組織の均−性の低下(不均一化)や、硫化物の粗大化を生じて伸線性を劣化させる。また、フェライトを固溶強化しすぎて伸線性を低下させるようにもなる。このため、Mn含有量は0.1〜0.8質量%の範囲とし、下限値は好ましくは0.15%、より好ましくは0.20%、更に好ましくは0.25%とする。また、上限値は好ましくは0.75%、より好ましくは0.70%、更に好ましくは0.60%とする。
Al:
Alは有効な脱酸元素として知られるが、硬質なアルミナ系介在物は極細径に伸線加工される線材では断線原因になり、伸線性を低下させる。また、極細鋼線の機械的な特性も低下させる。このために、Al含有量は不可避的不純物として少ないほど好ましく、具体的には0.0050%以下に規制する。厳しい伸線条件でも伸線性を確保するためには、一層の低減が必要であり、好ましくは0.0035%以下、更に好ましくは0.0025%以下とする。
P:
Pは不可避的不純物元素であり、特にフェライトを固溶強化するため、伸線性を著しく劣化させるなど影響が大きい。また、過度に含有すると鉄鋼材料の靭延性が劣化するので、含有量は少ないほど好ましい。具体的には、P含有量は0.02%以下とし、厳しい伸線条件でも伸線性を確保するためには、一層低減して、好ましくは0.010%以下、更に好ましくは0.007%以下とする。
S:
Sも不可避的不純物元素であり、過度に含有すると、硫化物のサイズ、量が増加し、延性が劣化する。また、介在物MnSを生成して伸線性を阻害する。このため、含有量は少ないほど好ましく、具体的には、S含有量は0.020%以下とし、厳しい伸線条件でも伸線性を確保するためには、一層低減して、好ましくは0.010%以下、更に好ましくは0.007%以下とする。
N:
Nも不可避的不純物元素であり、フェライトに固溶して、伸線時に発熱による時効硬化やひずみ時効硬化させ、鋼線の強度を上昇させて靭延性を劣化させ、伸線性の低下への影響が大きい。このため、含有量は少ないほど好ましく、具体的には0.0040%以下とする。厳しい伸線条件でも伸線性を確保するためには、一層低減して、好ましくは0.0030%以下、更に好ましくは0.0025%以下とする。
O:
Oも不可避的不純物元素であり、鋼中酸素量の増加は粗大酸化物を招き、断線原因となる。このため、含有量は少ないほど好ましく、具体的には0.0030%以下とする。厳しい伸線条件でも伸線性を確保するためには、一層の低減が必要であり、上限を好ましくは0.0020%以下、更に好ましくは0.0015%以下とする。
Mg、Ca、REM:
これらも基本的には不可避的不純物元素であるが、微量の含有は、酸化物や硫化物を微細化し、耐断線性を向上させる効果もある。したがって、具体的には、これらの元素の合計の含有量で0.02%以下(0%を含む)の含有は許容するが、厳しい伸線条件でも伸線性を確保するためには、好ましくは0.010%以下、更に好ましくは0.007%以下(いずれも0%を含む)とする。
組織:
次に、本発明の高炭素鋼線材の組織について説明する。先ず、組織と伸線性との関係について説明して、本発明組織の各要件の限定理由について明確化する。
本発明では、前記した組成の高炭素鋼線材の組織について、前提として、95面積%以上のパーライトを有するパーライト主体の組織とする。95面積%以上のパーライトを有さないと、前記した組成としても、基本特性となる伸線性が低下する。
前記図1に示した通り、前記パーライト組織は、パーライトラメラ(以下、単にラメラとも言う)、パーライトコロニー(以下、単にコロニーとも言う)、パーライトノジュール(またはパーライトブロック、以下、単にノジュールとも言う)という組織単位で構成された、階層的な組織構造を持つ。前記ラメラはセメンタイトとフェライトの層状構造、コロニーは同一方向にラメラが並んだ組織単位、前記ノジュールはフェライトの結晶方位が同一の組織単位として定義される。
本発明は、このような図1の高炭素鋼線材の前記パーライト組織において、パーライトの平均ラメラ間隔Lが150〜300nmの範囲とし、かつ、このパーライトのラメラのうちで間隔が120nm以下のラメラの領域を30%以下とし、かつ、ラメラ間隔の標準偏差が50nm以下であり、更に、このパーライトの平均ノジュール径Dを40μm 以下とし、かつ、この平均ノジュール径Dと前記平均ラメラ間隔LとがD<−0.1×L+60の関係を満たすこととする。前記ノジュール径Dの測定方法は後述する実施例において説明する。
図2に、この本発明高炭素鋼線材の組織規定を示す。図2において、縦軸が平均ノジュール径D、横軸がパーライトの平均ラメラ間隔Lである。そして、図2の斜線の範囲が、本発明で規定するD<−0.1×L+60の関係を満たす範囲である。この斜線範囲の上限である斜めの線が、前記関係式のうちで、D=−0.1×L+60となるラインである。
この本発明組織規定の技術的な理由(意義)を、鋼線の脆化抑制と、延性の劣化の防止とを合わせた観点から、以下の通り説明する。
乾式伸線における鋼線の脆化は、伸線加工ひずみによって導入された多量の転位を、伸線時の鋼線の温度上昇によって炭素や窒素が固着する、いわゆるひずみ時効によって生じることが知られている。伸線時の鋼線の温度上昇は、加工発熱や摩擦によって生じるため、鋼線の軟質化(強度低下)は、前記伸線時の鋼線の温度上昇を軽減でき、鋼線の脆化を抑制できる。
このため、前記した通り、従来技術では伸線加工前の線材を軟質化することで、伸線加工後の鋼線強度を低下させ、引抜抵抗を低減、加工発熱を低減し、鋼線脆化を軽減し、伸線速度上昇を可能にしてきた。ここで乾式伸線工程での脆化抑制のための本質的な技術課題は、脆化しない鋼線材質を制御することであり、線材の軟質化により加工発熱抑制して時効脆化抑制することは手段の一つである。
ただ、線材の強度は、線材の主たる構成組織であるパーライトの強度因子であるラメラ間隔(平均ラメラ間隔L)で決定されるために、前記線材の軟質化の指針は、当然、このラメラ間隔(平均ラメラ間隔L)の拡大もしくは適正化となる。ただ、このラメラ間隔の拡大には限界があるため、前記パーライト組織の軟質化による鋼線の脆化抑制には自ずと限界があった。
また、効率化のために、伸線速度が上昇にするにつれて、例え線材を軟質化しても、脆化が生じてしまい、高炭素鋼線材の伸線性の向上には大きな限界がある問題があった。これらが、従来の高炭素鋼線材の前記軟質化技術では伸線性向上効果が不十分となっている理由である。
これに対して、本発明者らは、線材内部(組織)に脆弱部が存在しており、線材を軟質化しても、この脆弱部によって線材が伸線中に脆化すると考え、パーライト組織因子と脆化の関連性について鋭意研究を行った。
この結果、従来技術の製法によって製造された線材中のパーライト組織にはばらつきがあり、特にラメラ間隔のばらつきに、前記線材の脆化と相関する特徴があることを知見した。
すなわち、ラメラ間隔のばらつきは伸線加工時にミクロ的な材質不均一を生じせしめる。特に、線材軟質化のためにラメラ間隔を拡大しても、部分的にはラメラ間隔が微細な箇所が存在しており、このラメラ間隔が微細な箇所の存在が、前記線材の脆化要因となっている。また、ラメラ間隔が微細な箇所が少なくても、ラメラ間隔のばらつきが大きい場合は、塑性ひずみの不均一化が顕著になり、脆化要因となる。言い換えると、このようなラメラ間隔のばらつきがあると、例え高炭素鋼線材のラメラ間隔を拡大して軟質化しても、伸線速度が上昇にするにつれて脆化が促進される。
ラメラ間隔の微細な箇所の低減、ラメラ間隔のばらつき低減:
このような考えに基づき、本発明者らは、高炭素鋼線材のラメラ間隔を拡大して軟質化した場合に、必然的に生じる不均一なラメラ間隔箇所、即ち、前記ラメラ間隔が微細な領域の低減、ラメラ間隔の均一化によって、前記線材の脆化が低減できることを見出した。
したがって、本発明では、パーライトラメラのうち、ラメラ間隔が120nm以下の微細な箇所であって、その存在が、前記線材の脆化要因となっている、ラメラの領域を平均で30%以下と少なくし、かつ、ラメラ間隔の標準偏差が50nm以下にする。
ラメラ間隔が120nm以下の微小なラメラ領域を、30%以下に少なくし、かつ、ラメラ間隔の標準偏差が50nm以下にし、高炭素鋼線材のラメラ間隔を均一化することで、乾式伸線時の脆化を低減できる。本発明が、前記ラメラ間隔が120nm以下のラメラの領域(不均一なラメラ間隔箇所)が多く、ラメラ間隔分布が不均一な従来技術の場合よりも、乾式伸線時の脆化を低減できるのは、次の理由によると推考される。
1つは、パーライトラメラ間隔が120nm以下に微細になると、パーライト組織の強度上昇が急激に増大し、線材組織内の強度の不均一性が大きくなるためである。これに対して、パーライトラメラ間隔が120nm以下の微細ラメラ領域を低減することによって、前記線材の脆化の要因となる、前記線材組織内の強度の不均一を軽減できる。
また、乾式伸線の伸線ひずみ量は一般的には歪が3〜4程度であるが、線材のラメラ間隔が120nm以下の微細な場合、このような歪量の伸線後には、ラメラ間隔が、20nm程度と極めて微細になってしまう。このため、線材の伸線加工に伴って、この微細化した箇所で、局所的にセメンタイト分解を生じやすく、脆化しやすくなる。これに対して、パーライトラメラ間隔が120nm以下の微細ラメラ領域を低減することによって、局所的にセメンタイト分解を生じやすい前記ラメラ間隔の微細化促進箇所を減らすことができ、このような局所的な脆化部生成を軽減できる。
したがって、ラメラ間隔が120nm以下の微小なラメラ領域を、30%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、一層好ましくは実質的に無くす0%と、少なくするか、無くすことで、前記線材の脆化が抑えられる。また、ラメラ間隔が極端に微細な領域が少なくても、ラメラ間隔のばらつきが大きいと脆化を招く。ラメラ間隔が比較的広い、軟質な部分に塑性ひずみが集中、偏在を促進し、脆化に至ると考えられる。
平均ラメラ間隔L:
一方、平均ラメラ間隔Lは150〜300nmの範囲とする。平均ラメラ間隔Lが微細化したとしても、150nmまではパーライトの強度上昇が比較的緩やかとなる。また、乾式伸線による局所的なセメンタイトの分解も生じにくい。このため、平均ラメラ間隔Lが150nmまで微細化したとしても、前記前記線材の脆化の要因となる、前記線材組織内の強度の不均一や、前記線材組織内の局所的な脆化部生成は抑制できる。
しかし、平均ラメラ間隔Lが下限の150nmを超えて、更に微細化した場合には、前記した線材組織内の強度の不均一や、前記線材組織内の局所的な脆化部生成を抑制できず、前記線材の脆化が抑えられない。したがって、平均ラメラ間隔Lの下限は150nmとし、好ましくは165nm以上、更に好ましくは180nm以上、一層好ましくは200nm以上とする。
一方、線材を軟質化させて強度低下させるには、前記した通り、平均ラメラ間隔Lが粗大な(大きな)方がよいが、過度に粗大化させると、ラメラ内にボイドが生成しやすくなり、延性が劣化し、伸線中に、延性不足による断線が生じる。したがって、平均ラメラ間隔Lの上限は300nmとし、好ましくは280nm以下、更に好ましくは260nm以下、一層好ましくは240nm以下とする。このように、平均ラメラ間隔Lの上下限値をより限定することで更に伸線性は向上する。
ノジュール径(ノジュールサイズ):
本発明では、更にパーライトの平均ノジュール径Dは40μm 以下とし、かつ、この平均ノジュール径Dと前記平均ラメラ間隔LとがD<−0.1×L+60の関係を満たすこととする。
前記ラメラ間隔Lの粗大化にともない、一般的に、ノジュール径Dが粗大化する傾向にあるが、延性不足による断線という観点からは、従来から指摘されているように、ノジュール径Dを制御し、粗大化を抑制することも重要である。ノジュール径Dの延性に対する影響は、前記ラメラ間隔Lとは異なる。加工時にラメラ内で発生したボイドが連結し、クラックとして成長する際に、ノジュール界面がクラック成長の抵抗となる。このため、線材のノジュール径Dが微細なほど、前記クラックの成長が抑制され、延性に優れる。
よって、線材の延性を考慮する場合、ボイド生成抑制という点におけるラメラ間隔Lと、クラック成長抑制という点でのノジュール径Dとのバランスをとることが大きなポイントとなる。
このため、本発明では、更に、これらの平均ノジュール径Dと、前記平均ラメラ間隔Lとが、D<−0.1×L+60の関係(式)を満たすこととする。この関係(式)を満たすことが、上記のようにラメラ間隔を粗大化させる際の延性確保の必要条件となる。このため、この関係(式)を好ましくはD<−0.1×L+55、更に好ましくはD<−0.1×L+45とする。このように、この関係(式)をより限定することで、更に伸線性は向上する。
因みに、前記関係式は、前記特許文献5が示す平均ノジュール径Dと前記平均ラメラ間隔Lとの関係式を必ずしも満足していない(外れている)。それでいて、従来技術で関係式を満足しない場合に指摘されているような延性不足には、後に実施例で示すように、本発明の前記関係式を満足すれば、決して陥らない。これは、これら従来技術で考慮されていなかった、前記微細ラメラ間隔領域を低減し、線材内の強度不均一を軽減することが、強度差の大きな組織境界における局所的なひずみの集中、ボイド、クラックの生成を抑制し、延性向上に大きく寄与したものと考えられる。
ただ、前記平均ラメラ間隔Lが前記下限値に近い場合は、微細ラメラ間隔領域が比較的多くなり、延性不足になる可能性がある。このため、前記関係式に加えて、平均ノジュール径Dの上限を40μm 以下とする。この平均ノジュール径Dの上限は好ましくは35μm 以下、更に好ましくは30μm 以下、一層好ましくは25μm 以下する。このように、この平均ノジュール径Dの上限値をより限定することで、更に伸線性は向上する。
製造方法:
本発明の要旨は、前記した通り、ラメラ間隔を粗大化するとともに、このラメラ間隔のうちの微細な領域を低減して、ラメラ間隔を均一化することである。
ラメラ間隔は鋼線材の変態温度に依存して変化し、変態温度が低いほどラメラ間隔は微細化する。よって、鋼線材の低温域での変態を抑制し、高温域で変態させるプロセス制御によって、ラメラ間隔の粗大なパーライトを安定的に成長させる必要がある。一方、ノジュールサイズは、核生成速度よって決まり、旧γ粒径が小さいほど、温度が低いほど、核生成速度が高くなるためノジュールサイズは微細化する。よって、ノジュールサイズ微細化には、旧γ粒径を微細化する制御と、前記変態のための温度を低くする制御が必要である。
前記特許文献5では、圧延後急冷する第1段冷却によって旧γ粒径を微細化し、第2段冷却の冷却速度と温度範囲(620〜680℃)の制御が、ラメラ間隔粗大化とノジュールサイズ微細化のバランスに必要な条件を整え、続く第3段目の冷却で成長させることで、バランスを達成している。この手法によれば、確かに平均ラメラ間隔は粗大化し、線材は軟質化している。しかしながら、前記第3段目の冷却のパーライト成長過程で連続的に冷却しているため、変態温度が低下して変態が進むほど、ラメラ間隔は微細になっていく。また、変態温度域が比較的低いこととも相まって、前記したラメラ間隔が120nm以下の微小なラメラ領域が増加し、とても本発明のように、30%以下にはできない。
よって、微細なラメラ組織が生成しない高温域で成長させることが、前記したラメラ間隔が120nm以下の微小なラメラ組織低減に必要である。しかし、一方で、たとえば等温保持のように、高温で核生成させると、ノジュールサイズが粗大化する。この問題に対し、本発明では、変態の温度制御の中に、冷却と昇温を組み合わせることで、問題を解消した。すなわち、ノジュールサイズ微細化のために、急速冷却して旧γ粒径の粗大化を防止しつつ、比較的低温まで冷却して核生成を促進させた後、成長が進行して微細ラメラが増加しないうちに、急速加熱により高温域で保持することで、粗大なラメラ組織を安定的に成長させるものである。
以上の検討を元にした、本発明の具体的な製造方法を以下に説明する。ここで、図3に、本発明高炭素鋼線材の製造方法における、熱間圧延後のヒートパターンを示す。
前記した組成の鋼片を、加熱して仕上温度1050〜900℃で熱間圧延を行い、この熱間圧延における仕上圧延終了後、この圧延線材を直ちに950〜800℃の範囲内の温度に水冷する。
その後、この温度範囲から、圧延線材を引き続き、衝風冷、ミスト冷却、水冷などの冷却手段を用いて、30℃/s以上の平均冷却速度にて640〜580℃の範囲内の温度に急冷して、核生成(変態開始)させる。
続いて、この急冷によって核生成(変態開始)させた圧延線材を、前記640〜580℃の温度範囲に到達後(この急冷後)2秒以内に、この温度範囲から650〜720℃の範囲内の温度に50℃/s以上の平均昇温速度で急速に加熱する。そして、更に、この650〜720℃の温度範囲内で0.5℃/s未満の範囲の緩やかな平均昇温速度か平均降温速度かで、核生成温度域に保持し続け(等温保持)、この温度範囲内で(温度域で)変態完了まで保持する。このような急速加熱と緩やかな昇温か降温かによる保持(等温保持)とを組み合わせたヒートパターンの熱処理の過程で、圧延線材のパーライト変態を完了させる。
この急速加熱と等温保持との組み合わせによる、変態完了までの保持が本発明の製造方法の特徴である。常法であれば、前記30℃/s以上の平均冷却速度による640〜580℃の範囲内の温度までの急冷による、核生成(変態開始)までは条件が重複する。しかし、これ以降は、線材の生産効率もあって、この本発明のような急速加熱と等温保持との組み合わせは行わずに、そのまま常温まで徐冷する。したがって、本発明の組織には必然的にならない。
以上の製造方法のより具体化や製造条件の限定理由について、以下に説明する。
鋼片:
鋼片(ビレット)は、常法により、上記化学成分組成の高炭素鋼溶製後の連続鋳造により作製するか、あるいはその鋳造された鋼塊を更に分塊圧延して作製する。
熱間圧延:
この鋼片を加熱して熱間圧延する際には、圧延の仕上温度を1050℃以下の低温にすることにより、オーステナイトの回復、再結晶、粒成長を抑制して、強度上昇を抑制し、ノジュールを微細化することができる。仕上温度の下限は、低温過ぎると圧延機への負荷が過大となるため、900℃以上とする。
熱間圧延後の水冷:
この熱間圧延における仕上圧延終了後、この圧延線材を直ちに950〜800℃の範囲内の温度に水冷するが、この場合の平均冷却速度は50℃/s以上であることが好ましい。この水冷による到達温度範囲は、線材に適正な脱スケール性を具備させるための規定である。到達温度が800℃未満では、伸線前のスケール剥離工程でスケールが剥離しにくく、950℃以上では、スケールが剥がれ易すぎるため、圧延後の搬送中にスケールが剥離してしまい、剥離部に薄厚の低温スケールやさびが生成する。そして、これらの低温スケールやさびは伸線前のスケール剥離工程で剥離しないため、伸線された鋼線の疵となったり断線の原因となる。
この点、水冷による前記到達温度の下限は、好ましくは830℃、更に好ましくは850℃、一層好ましくは870℃とする。一方、水冷による前記到達温度の上限は、好ましくは940℃、更に好ましくは930℃、一層好ましくは920℃とする。
急冷による核生成:
次に、この温度範囲から、圧延線材を引き続き、衝風冷、ミスト冷却、水冷などの冷却手段を用いて急冷して、核生成(変態開始)させるが、この急冷の際の平均冷却速度が30℃/s未満だと、旧γ粒径が粗大化する。この点、この急冷の際の平均冷却速度の下限は、好ましくは40℃/s以上、更に好ましくは50℃/s以上、一層好ましくは70℃/s以上である。
そして、この急冷による高炭素鋼線材の到達温度は640〜580℃の範囲内の温度にして、高炭素鋼線材の組織を核生成させることで、核生成速度が高くなり、ノジュールサイズは微細化する。この到達温度が580℃未満では、更にノジュールサイズが微細化する。しかし、反面、前記した高炭素鋼線材の場合、580℃未満ではパーライトの成長速度が速いため変態が進行しやすく、かつ、核生成速度が高いため、微細ラメラ領域の増加を避けることが困難である。一方、この到達温度が640℃を超えた場合は、核生成速度が低くなり、ノジュールサイズが粗大化してしまう(微細化できない)ために、やはり本発明で規定する組織とできない。
この点、この急冷による高炭素鋼線材の到達温度の下限は、好ましくは590℃、更に好ましくは600℃、一層好ましくは610℃とする。一方、この急冷による到達温度の上限は、好ましくは625℃、更に好ましくは630℃、一層好ましくは635℃とする。
急速加熱による変態進行の抑制:
続いて、この急冷によって核生成(変態開始)させた高炭素鋼線材を、直ちに急速に加熱して、低温での変態進行を抑制(軽減)する。このためには、前記640〜580℃の温度範囲に到達後(この急冷後)2秒以内に、この温度範囲から650〜720℃の範囲内の温度に50℃/s以上の平均昇温速度で高炭素鋼線材を急速に加熱する必要がある。前記したラメラ間隔が120nm以下の微小なラメラを低減するためには、核生成(変態開始)後、高温域まですばやく昇温する必要がある。
前記急冷による変態開始後、2秒を超えて、前記640〜580℃の核生成温度域に保持し続けると、高炭素鋼線材の変態が進行して、前記したラメラ間隔が120nm以下の微小なラメラが増加する。また、平均昇温速度が50℃/s未満の場合も、昇温中に変態が進行して、前記したラメラ間隔が120nm以下の微小なラメラが増加する。また、前記急速加熱による到達温度が650℃未満では、平均ラメラ間隔が150nm以上に粗大化できない。また、この到達温度が720℃を超えると、平均ラメラ間隔が300nmを超えて粗大化してしまうことになる。
この点、前記急速加熱による高炭素鋼線材の到達温度の下限は、好ましくは660℃以上、更に好ましくは670℃以上、一層好ましくは680℃以上とする。一方で、前記急速加熱による到達温度の上限は、好ましくは710℃以下、更に好ましくは700℃以下、一層好ましくは690℃以下とする。
変態完了までの温度保持:
そして、更に、高炭素鋼線材を、この650〜720℃の温度範囲内で0.5℃/s未満の範囲の緩やかな平均昇温速度か平均降温速度かで保持しながら、この温度範囲内で(温度域で)変態完了まで保持する。このような急速加熱と等温保持とを組み合わせたヒートパターンの熱処理の過程で、圧延線材のパーライト変態を完了させる。ここで、前記平均昇温速度が0.5℃/sを超すと、ラメラ間隔のばらつきが大きくなる(標準偏差が増加する)。これは、高温ではわずかな温度変化でラメラ間隔が顕著に変化するためである。ラメラ間隔のばらつき低減の観点からは、ラメラ成長時の変態温度変化が小さいほうが好ましい。
なお、0.5℃/s未満の範囲の緩やかな平均昇温速度か平均降温速度かの保持では、平均昇温速度と平均降温速度とを0として、全く等温で、前記650〜720℃の温度範囲内で保持しても良い。
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
表1に示す成分組成の高炭素鋼熱延線材の、熱延後の熱処理条件を表2に示す通り変えることによって、共通してパーライト組織だが、平均ラメラ間隔L、ラメラのうちで間隔が120nm以下の微小なラメラの領域、平均ノジュール径D、平均ノジュール径Dと平均ラメラ間隔Lとの前記関係が種々異なる線材を実験室的に作製した。そして、これらの伸線性を断線の有無や変形抵抗などから評価した。この結果を表2に示す。
これらの高炭素鋼熱延線材の具体的な製造条件を以下に説明する。表1に示す線材の化学成分組成となるように、高炭素鋼をして転炉で溶製し、その鋼塊を分解圧延して155mm角のビレットを作製し、1150℃程度に加熱後、圧延の仕上(終了)温度が1050〜1000℃の範囲で熱間圧延を行い、直径5.5mmの線材を得た。なお、前記表1の線材の化学成分組成において、Mg、Ca、REMの不純物元素は、各例とも、これらの合計の含有量で0.007%未満の検出限界量以下であった。
前記熱間圧延終了後の線材は、圧延ライン上に設けた冷却帯にて、冷却水をノズル噴射して直ちに950〜800℃の範囲に冷却した。この際、水量と水冷時間を変化させて到達温度を制御した。更に、引き続き、線材を衝風冷もしくはミスト冷却(冷却水をミスト状に噴霧)して、640〜580℃の範囲に冷却した。衝風冷では風量を、ミスト冷却では、気水比(エアと水の比率)と噴霧時間を変化させることで、冷却速度、到達温度を制御した。今回は衝風冷、ミスト冷却を用いたが、別の冷却方法でも構わない。その後、本発明製造方法の特徴である前記急速加熱や緩やかな昇温の組み合わせの熱処理を行って、パーライト変態を完了させた線材とした。加熱・昇温工程では、コンベア上での風冷を停止した上で、線材搬送コンベア上に設置したヒーターを用いて線材を加熱し、ヒーター条件によって昇温速度や到達温度を制御した。
これによって、パーライト組織だが、平均ラメラ間隔L、ラメラのうちで間隔が120nm以下の微小なラメラの領域、平均ノジュール径D、平均ノジュール径Dと平均ラメラ間隔Lとの前記関係が種々異なる線材を作製した。
組織の測定:
上記線材から供試材を採取して、パーライトの面積率、パーライトの平均ノジュール径D、平均ラメラ間隔L、パーライトのラメラのうちで間隔が120nm以下のラメラの領域の割合を測定した。観察は供試材の任意の10箇所で行い、測定値の平均を各々の値(平均値)とした。
パーライト面積率は、線材を切断して横断面を鏡面研磨した試料を硝酸とエタノールの混合溶液でエッチングし、線材横断面の表面と中心との間の中央位置における組織をSEM(走査型電子顕微鏡、倍率1500)によって任意の5視野観察し、点算方によって求めた。この結果、発明例、比較例を含めて、No8(鋼種I)を除いた全ての例の組織で、パーライトの面積率は95面積%以上であり、他の初析フェライト、初析セメンタイト、残留オーステナイト、あるいはベイナイトやマルテンサイトなどのパーライト以外の組織は5面積%未満であった。
平均ノジュール径Dは、上記と同様にして試料を調整し、光学顕微鏡(倍率200)にて組織観察を行い、線材横断面の表面と中心との間の中央位置における前記ノジュールの円相当径を、フェライト粒度の測定方法(JISG0552)に準拠して粒度番号Gを小数点以下第1位まで求め、次の式によってμmの単位に換算することによって求められた。
ノジュール径D(μm)=10×2(10-G)/2
平均ラメラ間隔Lは、上記と同様に鏡面研磨し、上記と同様の方法でエッチングした線材横断面の表面と中心との間の中央位置をSEMで観察し、6視野で3000倍の写真を撮影し、ラメラが観察面に対して垂直に近い箇所で測定するため、各視野の写真を用いて視野内で一番目〜五番目まで微細なコロニー5つにおいて、ラメラに直角に線分を引き、その線分の長さとそれを横切るラメラの数からラメラ間隔(nm)を求め、すべての線分のラメラ間隔を平均することによって求めた。そして、同時に、前記ラメラ間隔測定の際に、測定したラメラ間隔データ(N=30)を元に、120nm以下のデータ数を、全データ数(N=30)で割ることで、微細ラメラの割合を求めた。
上記各線材の伸線性を、以下の伸線条件で伸線試験することにより、耐断線性と引抜抵抗の増加の程度によって評価した。伸線試験では、1トンの5.5mmφの圧延材を1.0mmφまで乾式伸線を行った。耐断線性は1トン伸線した際の断線の有無によって評価した。
前記伸線試験は、各線材を塩酸中に浸漬して予めスケールを除去した後に、線材表面に燐酸塩を皮膜形成させる潤滑処理を行い、その後、多段式の乾式伸線機(試験機)で直径1.0mmまで伸線した。伸線は、最終伸線速度が1000m/minの高速伸線によって行った。
なお、各例とも、前記伸線試験後にねん回試験を実施し、デラミネーションの有無を調査した。
各発明例は、表1、2の通り、化学成分組成や、熱延後の冷却やパーライト変態の処理条件が好ましい範囲内で行われている。このため、表2の通り、各発明例1〜5は、線材の組織が95面積%以上のパーライト(分率)を有し、パーライトの平均ラメラ間隔Lが150〜300nmの範囲であり、かつ、このパーライトのラメラのうちで間隔が120nm以下のラメラの領域が30%以下であり、更に、このパーライトの平均ノジュール径Dが40μm 以下であり、かつ、この平均ノジュール径Dと平均ラメラ間隔LとがD<−0.1×L+60の前記関係を満たしているパーライト組織を有する。この結果、前記各発明例は、鋼線の脆化が生じず、断線しないで伸線できるなど、優れた乾式伸線性を有する。
一方、表1、2の通り、各比較例No6〜11は化学成分組成が発明範囲内から外れており、組織要件を満足する如何に関わらず、断線が生じている。
比較例No12〜20は化学成分組成が発明範囲内であるものの、製造条件が発明範囲から外れており、線材の組織が95面積%以上のパーライトであるものの、平均ラメラ間隔L、ラメラのうちで間隔が120nm以下の微小なラメラの領域、ラメラ間隔の標準偏差、平均ノジュール径D、平均ノジュール径Dと平均ラメラ間隔Lとの前記関係の、いずれかが外れるパーライト組織となっている。この結果、これら各比較例は、デラミネーションが発生するか、断線するなどの乾式伸線性が劣っている。
すなわち、比較例No12は熱間圧延の仕上圧延終了後の水冷をした後の急冷の平均冷却速度が30℃/sを下回ってる。比較例No13はこの急冷による到達温度が640℃を超えており、高すぎる。比較例No14はこの急冷による到達温度が580℃未満であり、低すぎる。
比較例No15、16は急冷によって核生成(変態開始)させた圧延線材の前記640〜580℃の温度域での滞在(保持)時間が5秒を超えて長すぎる。比較例No17は前記640〜580℃の温度範囲からの急速加熱における平均昇温速度が50℃/s未満で小さすぎる。比較例No18はこの急速加熱による到達温度が650℃未満であり、低すぎる。比較例No19はこの急速加熱による到達温度が720℃を超えており、高すぎる。比較例No20は、続く650〜720℃の温度範囲内での0.5〜2℃/sの範囲の緩やかな平均昇温速度での加熱において、平均昇温速度が2℃/sを超えており、大きすぎる。
Figure 2012126955
Figure 2012126955
本発明の化学成分組成や熱延後の冷却やパーライト変態の処理条件、そして、これによって得られる前記規定からなる特定のパーライト組織の、優れた乾式伸線性に対する臨界的な意義が裏付けられる。
本発明によれば、乾式伸線工程の生産性を著しく向上させた、優れた伸線性を有する高炭素鋼線材およびその製造方法を提供することができる。このため、本発明は、タイヤ補強用のスチールコード、ビードワイヤ、ソーワイヤ、ベルトコードなどに使用される極細鋼線用の高炭素鋼線材として、好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. 乾式伸線に供される高炭素鋼線材であって、質量%で、C:0.68〜0.86%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜0.8%を各々含み、残部Feおよび不可避的不純物からなるとともに、組織が95面積%以上のパーライトを有し、このパーライトの平均ラメラ間隔Lが150〜300nmの範囲であり、かつ、このパーライトのラメラのうちで間隔が120nm以下のラメラの領域が30%以下であり、かつ、ラメラ間隔の標準偏差が50nm以下であり、更に、このパーライトの平均ノジュール径Dが40μm 以下であり、かつ、この平均ノジュール径Dと前記平均ラメラ間隔LとがD<−0.1×L+60の関係を満たすことを特徴とする、乾式伸線性に優れた高炭素鋼線材。
  2. 乾式伸線に供される高炭素鋼線材の製造方法であって、質量%で、C:0.68〜0.86%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.1〜0.8%を各々含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片を、加熱して仕上温度1050〜900℃で熱間圧延を行い、この熱間圧延における仕上圧延終了後、直ちに950〜800℃の範囲内の温度に水冷し、引き続き30℃/s以上の平均冷却速度にて640〜580℃の範囲内の温度に急冷した後、この温度範囲から2秒以内に650〜720℃の範囲内の温度に50℃/s以上の平均昇温速度で急速に加熱し、更に、この650〜720℃の温度範囲内に0.5℃/s未満(0℃/sを含む)の昇温速度あるいは降温速度で保持しながらパーライト変態を完了させた線材とし、この線材の組織を、95面積%以上のパーライトを有し、このパーライトの平均ラメラ間隔Lが150〜300nmの範囲であり、かつ、このパーライトのラメラのうちで間隔が120nm以下のラメラの領域が30%以下であり、かつ、ラメラ間隔の標準偏差が50nm以下であり、更に、このパーライトの平均ノジュール径Dが40μm 以下であり、かつ、この平均ノジュール径Dと前記平均ラメラ間隔LとがD<−0.1×L+60の関係を満たす組織とすることを特徴とする、乾式伸線性に優れた高炭素鋼線材の製造方法。
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