JP2012122421A - ガスタービンシステム及びガスタービンの加湿制御方法 - Google Patents

ガスタービンシステム及びガスタービンの加湿制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明の課題は、加湿管でのドレン発生量を少なくして熱効率を高く維持できるガスタービンシステム及びガスタービンの加湿制御方法を提供することである。
【解決手段】
本発明のガスタービンの加湿制御方法は、圧縮機の出口圧力と入口圧力の圧力比及び加湿装置の出口温度を計測し、かつ、前記圧力比に対する前記加湿装置の出口温度目標値を予め設定し、前記計測された加湿装置の出口温度が、前記予め設定された加湿装置の出口温度目標値となるように、加湿装置へ供給する水系統の遮断弁の開閉を制御することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明はガスタービンシステム及びガスタービンの加湿制御方法に係り、特に、燃焼用空気に水分を添加して加湿する高湿分空気を利用したものに好適なガスタービンシステム及びガスタービンの加湿制御方法に関する。
一般に、高湿分空気を利用したガスタービン発電プラントにおいては、ガスタービン作動流体(燃焼用空気)に水分を添加して加湿し、この加湿空気によって、ガスタービン排ガスの持つ熱エネルギーを回収することで、出力及び発電効率の向上を図っているが、空気を加湿する加湿装置として増湿塔を用いる場合には、空気に添加される湿分は、常にほぼ飽和条件とすることができる。
従って、加湿開始前後の湿分変化は、大気の乾燥した湿度条件から飽和条件までと変化幅が大きいため、湿分によって大きく影響を受ける燃焼器の燃焼安定性を確保し、増湿塔の起動・停止を含めた広い運用負荷帯内での負荷追従運転を可能とする増湿塔への水量制御が必要となる。この水量制御手段について、特許文献1に開示されている。
一方、増湿塔の代わりに、スプレー噴霧によって加湿する噴霧加湿管方式を採用したプラントでは、上記した増湿塔方式よりも簡便に加湿が行える利点がある半面、噴霧量に応じて空気中の湿分が変化してしまう特徴がある。
この噴霧加湿管方式によって燃焼用空気を加湿するプラントにおいて、急速負荷追従運転時にも安定に湿分が制御可能な制御装置について、特許文献2及び特許文献3に開示されている。
ところで、燃焼器で発生するNOxは、天然ガスや灯油、軽油等の窒素含有量の少ない燃料を用いる場合、空気中の窒素が酸化されて発生するサーマルNOxが大部分であり、このサーマルNOxの生成は、温度依存性が高いことが知られている。従って、一般に、これらの燃料を使用するガスタービンでは、火炎温度を低減することが、低NOx燃焼法の基本思想である。
この火炎温度を低減する方策として、燃料と空気を予め混合した後に燃焼させる予混合燃焼が知られている。また、高湿分空気を利用したガスタービン発電プラントのように、再生熱交換器により燃焼用空気が高温化されている場合には、燃料の自発火を防止しつつ火炎温度を適度に制御して低NOx化を図る必要があり、それには、特許文献4に開示されているような、燃料と空気を多数の小径の同軸噴流として燃焼室に噴出する方法が有効である。
特開2007-107464号公報 特許第4131951号公報 特開2005-127203号公報 特開2008-175098号公報
高湿分空気を利用したガスタービンにおいては、作動流体である空気に添加される湿分が多いほど、即ち、飽和に近いほど再生熱交換器で回収される排ガスの熱量が多くなるため、熱効率が高くなる。
上述した増湿塔方式は、増湿塔内部に多量の水を循環させ、増湿塔内部に充填した充填物の表面に形成される水膜と作動流体である空気が接触することによって蒸発させるものであり、増湿塔を出た後の空気の湿分は常にほぼ飽和条件とすることができる。
それに対して、作動流体中に水をスプレー噴霧する噴霧加湿管方式は、噴霧された液滴の表面で水と空気が接触することによって蒸発させるものであり、増湿塔方式に比べて供給水量が少なく、かつ、設備も小型化することができる。
ところが、噴霧加湿管方式で蒸発し切れなかった噴霧液滴は、加湿管表面に衝突してドレンとして排出されるため、噴霧水量を増加させれば飽和に近づくがドレン量も増加する。そして、噴霧水量が過大となると、ドレンに持ち去られる熱量の割合が大きくなるため湿度が低下してしまい、熱効率が低下することから、噴霧水量には適正値が存在するといえる。
通常、最適な噴霧水量を噴霧した際の空気中の湿分は、飽和条件よりも小さく、空気はある程度の過熱度を保っている状態が噴霧水量の最適値となる。また、高湿分空気を利用したガスタービンにおいては、圧縮機の吸気部に多量の水を噴霧する吸気噴霧冷却を実施することによって、圧縮機吸い込み空気の温度を下げると共に、圧縮機内部での温度上昇を小さくして圧縮動力の低減を図ることで、熱効率を高めることができる。吸気噴霧冷却を実施すると、上述の噴霧加湿管へ流入する空気中の湿分が大きくなるため、加湿管へ噴霧する水量の最適値は小さい方へシフトする。
従って、簡易で低コストである噴霧加湿管方式の高湿分空気を利用したガスタービンにおいては、熱効率を高く維持すると共に、加湿管でのドレン発生量を少なくする噴霧水量の制御の仕方が求められる。特に、噴霧加湿管方式を吸気噴霧冷却と組み合わせて実施する場合には、吸気噴霧量を反映した制御が必要である。
本発明は、上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、加湿管でのドレン発生量を少なくして熱効率を高く維持できるガスタービンシステム及びガスタービンの加湿制御方法を提供することにある。
本発明のガスタービンの加湿制御方法は、圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼器で燃焼させ、該燃焼器からの燃焼ガスによってタービンを駆動する際に、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気が加湿装置に送られ、該加湿装置内の圧縮空気に噴霧水を噴霧することにより加湿し、その圧縮空気の加湿を制御するガスタービンの加湿制御方法において、前記加湿装置へ供給する水系統を複数有し、それぞれの系統ごとに遮断弁を備え、前記圧縮機の出口圧力と入口圧力の圧力比及び前記加湿装置の出口温度を計測し、かつ、前記圧力比に対する前記加湿装置の出口温度目標値を予め設定し、前記計測された加湿装置の出口温度が、前記予め設定された加湿装置の出口温度目標値となるように、前記水系統の遮断弁の開閉を制御することを特徴とする。
また、本発明のガスタービンシステムは、空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて個別に燃料が供給されて燃焼させる複数の燃焼部を有する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスによって駆動されるタービンと、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を噴霧水で加湿する加湿装置と、該加湿装置への噴霧水量を制御する制御装置とを備えたガスタービンシステムにおいて、前記制御装置は、前記圧縮機の出口圧力、又は圧縮機の出口圧力との入口圧力の圧力比と、前記加湿装置の出口温度から該加湿装置への噴霧量の目標値を設定し、この目標値に合うように前記加湿装置への噴霧量を制御する手段を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、高湿分空気を利用したガスタービンの加湿管への噴霧水量を最適にすることができるので、加湿管でのドレン発生量を少なくして熱効率を高く維持することができ、このため、ガスタービンプラントには有効である。
本発明のガスタービンシステムの第1の実施の形態を示す構成図である。 本発明のガスタービンシステムの第1の実施の形態に係る燃焼器の燃料ノズル部分の拡大断面図である。 図2(a)のA部詳細図である。 本発明のガスタービンシステムの第1の実施の形態に係る燃焼器の燃料ノズル部分を示し、図2(a)を右方向から見た図である。 図3(a)における空気孔の詳細図である。 本発明のガスタービンシステムの第1の実施の形態に係る運転方法の一例を示す図である。 本発明のガスタービンシステムの第1の実施の形態に係る運転方法の一例を示す図である。 本発明の実ガスタービンシステムの第1の実施の形態に係る加湿管出口目標値を表す図である。 本発明のガスタービンシステムの第1の実施の形態に採用される制御装置の一例を示すブロック図ある。 本発明のガスタービンシステムに採用される制御装置の他の例を示すブロック図ある。
以下、本発明のガスタービンシステムの一実施の形態について、図面を用いて説明する。
(1)第1の実施の形態
図1は、本発明の第1の実施の形態である高湿分空気を利用したガスタービンシステムの全体構成を示すものである。
該図に示す如く、発電用の高湿分空気を利用したガスタービンは、空気を圧縮する圧縮機1と、この圧縮機1で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼する燃焼器2と、燃焼器2からの燃焼ガスによって駆動されるタービン3と、前記圧縮機1で圧縮された圧縮空気を噴霧水で加湿する加湿管4と、この加湿管4で湿分を添加された加湿空気103とガスタービン排気ガス107との熱交換により加熱し、加熱された高温高湿分空気104を燃焼器ケーシング7へと注入する再生熱交換器5とから概略構成され、タービン3の出力により発電機20を回転させ電力を得るものである。
燃焼器2は、燃焼器ケーシング7及び燃焼器カバー8内に格納され、燃焼器2の上流端中央には燃料ノズル9が設置され、その下流には、未燃の空気と既燃の燃焼ガスを隔てる概略円筒状の燃焼器ライナ10が設置されている。
また、本実施の形態の高湿分空気を利用したガスタービンでは、圧縮機1の入口のガスタービン吸い込み空気100(大気圧)に、吸気噴霧水300を噴霧する吸気噴霧冷却装置11を備えている。この吸気噴霧冷却装置11には、水タンク12からの吸気噴霧水300が、制御装置400からの指令に基づいて吸気噴霧水遮断弁321及び322で開閉制御されて噴霧されている。吸気噴霧冷却装置11で水噴霧後の吸い込み空気101(大気圧)は圧縮機1で圧縮され、この圧縮された高圧空気102は、加湿管4において噴霧により水分を添加され加湿空気103となる。圧縮機1の圧縮機入口圧力403と圧縮機出口圧力402は、圧力計により計測され、この計測された圧縮機入口圧力403と圧縮機出口圧力402は、制御装置400に入力される。
加湿管4で水分が添加された加湿空気103は再生熱交換器5に導かれ、この再生熱交換器5でガスタービン排気ガス107(タービン出口低圧燃焼ガス)との熱交換により加熱されて、再生熱交換器5を通過した後の高温高湿空気104となり、燃焼器ケーシング7へと注入される。その途中の加湿管4からの加湿空気103の加湿管出口温度401は、例えば温度計によって計測され、その計測された加湿管出口温度401は、制御装置400に入力される。
燃焼器ケーシング7内での空気は、燃焼器ライナ10の外側の概して環状の空間を通って燃焼器2の頭部へ向かって流れ、途中、燃焼器ライナ10の対流冷却に使用される。また、その一部のライナ冷却空気105は、燃焼器ライナ10に設けられた冷却孔(図示せず)から燃焼器ライナ10内へ流入し、燃焼器ライナ10に設けられているフィルム(図示せず)の冷却に使用される。残りの空気噴流36は、後述する空気孔32から燃焼器ライナ10内に流入し、燃料ノズル31から噴出される燃料とともに燃焼に使用され、高温の燃焼ガス106となってタービン3へと送られる。タービン3を出た低圧のガスタービン排気ガス107は、再生熱交換器5で熱回収された後、排気ガス108として排気塔14から排気される。
タービン3で得られた駆動力は、シャフト21を通じて圧縮機1及び発電機20に伝えられ、発電機20では駆動力を電力に変換し、また、タービン3で得られた駆動力の一部は、圧縮機1において空気の加圧に用いられる。
高湿分空気を利用したガスタービン発電プラントの出力である発電量は、燃料流量調整弁211、212の開閉により制御され、一方、空気への加湿量は、加湿管4への加湿水量を加湿管給水遮断弁311、312、313、314の開閉により制御される。本実施の形態では、加湿管4への水供給系統は4系統あり、各系統には、多数のスプレーノズルが設置されている。また、4系統の水供給系統には、上述した加湿管給水遮断弁311、312、313、314がそれぞれ設けられ、それらは、制御装置400により個別に開閉制御される。
また、加湿管噴霧水ポンプ310の系統には、加湿管給水圧力調整弁319が設けられており、ポンプ圧力を調整することができる。この加湿管給水圧力調整弁319を開くと、ポンプ吐出側から水タンク12へ戻る水量が多くなるためポンプの圧力が低下し、逆に加湿管給水圧力調整弁319を閉じるとポンプの圧力は増加する。
図2(a)及び(b)は、本実施の形態に採用される燃料ノズル9の構造を示したものである。
図2(a)に示す如く、燃料ノズル9は、燃焼器カバー8の燃料ヘッダ30に多数の燃料ノズル31が取り付けられており、その1本1本に対応した空気孔32を備えた空気孔プレート33が、サポート34を介して燃焼器カバー8に取り付けられた構造となっている。また、図2(b)に示す如く、一対の燃料ノズル31と空気孔32はほぼ同心状であり、中央に燃料噴流35、その周囲に空気噴流36の同軸噴流を多数形成することができる。
この同軸噴流構造により、空気孔32内では、燃料と空気は未混合であるため、高湿分空気を利用したガスタービンのように、燃焼空気が高温であっても燃料の自発火は発生せず、空気孔プレート33が溶損するようなことはなく、信頼性の高い燃焼器とすることができる。
また、このような小さな同軸噴流を多数形成することにより、燃料と空気の界面が増加するため混合が促進され、NOxの発生量を抑制することができる。かくして、高湿分空気を利用したガスタービンにおいても、低NOx化と安定燃焼を両立することが可能となる。
図3(a)は、空気孔プレート33を燃焼器下流側(図2(a)の右側)から見た図である。
本実施の形態においては、多数の空気孔(図示されていないが、空気孔と対を成す燃料ノズル)32は、同心状に8列配置されている。また、中心から4列(第1列〜第4列)が第1群(F1)、第5列が第2群(F2)、その外側の2列(第6、7列)が第3群(F3)、最外周(第8列)が第4群(F4)と群分けされており、図2(a)に示した様に、F1〜F4それぞれの群ごとに燃料ヘッダ30に設けたフランジ41、42、43、44を通して燃料が供給できる様になっている。
このような燃料系統の群分け構造により、ガスタービンの燃料流量変化に対し燃料供給する燃料ノズルの本数を段階的に変化させる燃料ステージングが可能となり、ガスタービン部分負荷運転時の燃焼安定性が高まると共に、低NOx化が可能となる。
更に、図3(b)に示す如く、中央の4列(F1)の空気孔32は、ピッチ円接線方向に角度(図3中のα°)を持った斜め穴にすることで、空気流全体に旋回をかけ、これにより生じる循環流によって火炎を安定化させている。F1の周囲のF2、F3、F4は、中央のF1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化される。
従って、高湿分空気を利用したガスタービンにおいて加湿が開始され、燃焼用空気の湿分が増加する際には、F1バーナに供給する燃料流量を増加させ、局所的に高温な部分を設けることで、F1火炎の燃焼安定性が向上する。F1燃料の増加分、F2以降のバーナの燃料流量は減少するが、これらの火炎は、F1バーナの燃焼熱によって火炎が安定化されているため、バーナ全体としては、燃焼安定性が確保される。
次に、上述した高湿分空気を利用したガスタービンの運転方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4の横軸は、起動開始からの時刻、縦軸は、上から回転数、発電量、圧力比(圧縮機の出口圧力と入口圧力の比)、加湿管出口温度目標値、加湿管噴霧水量、加湿管出口温度である。また、図5は、図4に対応した燃料流量、燃焼ガス温度、F1〜F4各系統の個別燃料流量を模式的に表したものである。また、図中、期間aは、起動から定格回転数に達するまでの回転数昇速期間、期間bは、ガスタービン起動中の増負荷期間、期間cは、起動終了後の負荷追従運転期間を表す。増負荷期間bは、前半の水分無添加期間b1と水分添加期間b2に分かれる。
先ず、燃料流量が比較的少ない着火及び昇速時は、中央のF1バーナのみで運転(即ち、燃料系統201のみに燃料を供給)し、定格回転数無負荷条件付近まで昇速させる。このF1バーナ単独燃焼を、今後の説明では1/4モードと呼ぶことにする。次に、それ以降の負荷上昇過程(期間b)では、 F1バーナの外周のF2バーナに燃料を投入して、F1+F2で運転する。即ち、燃料系統201及び202に燃料を供給し、流量制御弁211及び212により各燃料流量を制御する。このときを2/4モードと呼ぶことにする。次に、さらに周囲の燃料系統203に燃料を供給し、F3バーナに着火した状態を3/4モードと呼ぶ。
ここまでの過程では、加湿管4には水分が添加されていない(b1)。即ち、図1に示した加湿管給水遮断弁311〜314は全閉である。また、この間の燃料流量増加は、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加するように、燃料流量調整弁211、212及び213によって燃料流量が制御される。また、F1、F2、F3各系統の燃料流量配分は、燃焼が安定し、かつ、生成するNOxが最小となる様に定められた比率で供給される。
本実施の形態においては、上述の3/4モードで加湿管4への水噴霧を開始する。発電量の上昇に伴い、図4に記載の時刻d1において、圧力比(圧縮機出口圧力402と圧縮機入口圧力403の比)が所定の設定値e1を越えると、温度計で計測された加湿管出口温度401が目標値f1へと低下する。これは、圧力比と加湿管出口温度目標値の関係が、図6のように、圧力比が所定の設定値e1を越えると、加湿管出口温度401が目標値f1へと低下するようになっているからである。このとき、実際の加湿管出口温度401の方が目標値f1よりも高くなるため、加湿管給水遮断弁311が開となって、加湿管4への水噴霧が開始される。水噴霧によって加湿管出口温度401が低下するが、本実施の形態では、温度計で計測された加湿管出口温度401が未だ目標値f1以上であるため、次の加湿管給水遮断弁312も開となる。
以上の操作によって、加湿管噴霧水量がゼロから2系統分増加し、加湿管出口温度401が目標値f1を下回ったので、加湿系統の数は2系統のまま維持される。ちなみに、この段階で実際の加湿管出口温度401が目標値f1よりも高ければ、さらにもう1系統の噴霧が開始され、反対に、目標値f2よりも低温であれば、1系統の噴霧が停止される設定になっている。
このように、加湿系統増の目標値f1と加湿系統減の目標値f2の温度差を適切に設定することで、加湿管出口温度401が目標値f1とf2の間となる系統数を自動的に決定することができる。更に詳細には、噴霧系統を1系統増減した際の加湿管出口温度401の変化幅に対して、目標値f1とf2の温度差を大きく設定することが適切である。
噴霧系統を2系統加湿状態で発電量が増加すると、圧力比が大きくなり加湿管出口温度401も上昇する。圧力比に対応して加湿管出口温度目標値も増加するが、実際の加湿管出口温度401の上昇の方が目標値の上昇よりも大きくなるように設定されているため、時刻d2で加湿管出口温度401が目標値f1を上回る。そこで、時刻d2において第3の噴霧水系統の加湿管給水遮断弁313が開となり、噴霧水量が増加し、加湿管出口温度401が低下する。
この状態からさらに発電量が増加すると、圧力比が大きくなり加湿管出口温度401も上昇する。そして、時刻d3で加湿管出口温度401が目標値f1を上回り、第4の噴霧水系統の加湿管給水遮断弁314が開となり、噴霧水量が増加し、加湿管出口温度401が低下する。
本実施の形態においては、噴霧水系統は4系統であるので、4系統とも開になった後は、加湿管噴霧水ポンプ310の圧力を加湿管給水圧力調整弁319で調整することによって、加湿管出口温度401を目標値f2に合わせるように制御する。
以上のような制御の目標値として設定される加湿管出口温度目標値f1及びf2は、圧力比に対して図6のように予め設定されている。この設定は、ガスタービンの運転状態及び加湿管噴霧ノズルの蒸発特性に応じた最適値があり、この最適値は、予め熱・物質バランスシミュレーションによって求めておくことが可能である。また、シミュレーションには、予測誤差が含まれるため、実用運転前の試験運転時に調整しておくことで、より最適な設定にすることができる。
以上のような本実施の形態により、高湿分空気を利用したガスタービンの加湿管への噴霧量を最適にすることで、加湿管のドレン量を少なくすることができ、熱効率を高く維持することができる。
このように、加湿管への水噴霧が適切に制御されている状態において、ガスタービンの起動計画に定められた負荷上昇率に従ってガスタービン発電量が増加するように、燃料流量が制御される。そのうち、F1燃料は、燃焼の安定性確保に主要な役割を担うため、加湿開始前に対して加湿開始後には、全燃料流量に対するF1流量の比率が大きくなるように設定される(図5参照)。
発電量又はタービン排ガス温度が所定の量に達した時点で、高湿分空気を利用したガスタービンの起動が完了し、その後は、負荷の増減に合わせて燃料流量が増減することで負荷追従する(期間c)。高負荷運転時においては、主として最外周のF4バーナの燃料流量を増減させて対応する。このときF4燃料と空気の混合気は、F1〜F3バーナの燃焼ガスと混合して高温になるため、燃料の酸化反応が進行し、高い燃焼効率を得ることができる。また、燃焼完結後の温度をNOx生成が顕著となる温度以下になるよう空気配分が設定されているため、F4バーナからのNOx発生をほとんど零とする燃焼が可能となる。また、投入したF4燃料が、ごくわずかでも反応が完結するため、連続的な燃料切り換えが可能となり、運用性が向上する。
図7は、本実施の形態における制御装置400の一例を示したものである。該図に示す如く、制御装置400は、圧力比演算器411と目標値算出器412及び噴霧水制御器413で概略構成されている。
制御装置400への入力は、加湿管出口温度401、圧縮機出口圧力402、圧縮機入口圧力403であり、入力された圧縮機出口圧力402と圧縮機入口圧力403とから圧力比演算器411によって、圧力比404を求める。この圧力比404を入力として、目標値算出器412から加湿管出口温度目標値405が算出される。具体的には図6に示したような関係になっている。加湿管出口温度目標値405と加湿管出口温度401から、噴霧水制御器413によって加湿管給水遮断弁311〜314の開閉が指示される。また、全遮断弁が開となったときには、加湿管給水圧力調整弁319の開度も指示される。
かくして,図7に示した構成の制御装置400によって、図4及び図6に示した水噴霧量の最適制御が実現できる。
(2)第2の実施の形態
図8は、制御装置400の他の例を示したものであり、第1の実施の形態における図7に対応する。
図8において、図7に示した第1の実施の形態と異なる点は、目標値算出器412の入力として、吸気噴霧制御器414の出力を加えた点にある。
第1の実施の形態においては、目標値算出器412から出力される加湿管出口温度目標値405の値は、圧力比404に対して一意の値であった。
しかしながら、吸気噴霧冷却を実施すると、加湿管4へ流入する空気中の湿分が大きくなるため、加湿管4へ噴霧する水量の最適値は小さい方へシフトする。
そこで、本実施の形態においては、吸気噴霧冷却を制御するための何らかの吸気噴霧制御トリガー421(この吸気噴霧制御トリガー421は、圧力比404を使用してもよいし、発電量や燃料流量で代用してもよい)により、吸気噴霧制御器414によって加湿管給水遮断弁321、322及び加湿管給水圧力調整弁329が制御されている。それに加えて、吸気噴霧制御器414からの吸気噴霧流量信号422を目標値算出器412の入力に設定している。目標値算出器412では、吸気噴霧流量信号422をもとに加湿管出口温度目標値405を修正して出力する。
以上の構成により、吸気噴霧冷却を実施して加湿管4へ流入する空気中の湿分が大きくなった場合でも、水噴霧量の最適制御が実現でき、加湿管4でのドレン量を少なくすることができ、熱効率を高く維持することができる。
1・・・圧縮機、2・・・燃焼器、3・・・タービン、4・・・加湿管、5・・・再生熱交換器、7・・・燃焼器ケーシング、8・・・燃焼器カバー、9・・・燃料ノズル、10・・・燃焼器ライナ、11・・・吸気噴霧冷却装置、12・・・水タンク、14・・・排気塔、20・・・発電機、21・・・シャフト、30・・・燃料ノズルヘッダ、31・・・燃料ノズル、32・・・空気孔、33・・・空気孔プレート、34・・・サポート、35・・・燃料噴流、36・・・空気噴流、41、42、43、44・・・燃料フランジ、100・・・ガスタービン吸い込み空気(大気圧)、101・・・水噴霧後の吸い込み空気(大気圧)、102・・・高圧空気、103・・・加湿空気、104・・・高温高湿空気、105・・・ライナ冷却空気、106・・・燃焼ガス、107・・・ガスタービン排気ガス、108・・・排気ガス、200・・・燃料、201、202、203、204・・・燃料、210・・・燃料遮断弁、211、212、213、214・・・燃料流量調整弁、300・・・吸気噴霧水、301・・・加湿管給水、310・・・加湿管噴霧水ポンプ、311、312、313、314・・・加湿管給水遮断弁、319・・・加湿管給水圧力調整弁、320・・・吸気噴霧水ポンプ、321、322・・・吸気噴霧水遮断弁、329・・・吸気噴霧水圧力調整弁、400・・・制御装置、401・・・加湿管出口温度、402・・・圧縮機出口圧力、403・・・圧縮機入口圧力、404・・・圧力比、405・・・加湿管出口温度目標値、411・・・圧力比演算器、412・・・目標値算出器、413・・・噴霧水制御器、414・・・吸気噴霧制御器、421・・・吸気噴霧制御トリガー、422・・・吸気噴霧流量信号。

Claims (8)

  1. 圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて燃料を燃焼器で燃焼させ、該燃焼器からの燃焼ガスによってタービンを駆動する際に、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気が加湿装置に送られ、該加湿装置内の圧縮空気に噴霧水を噴霧することにより加湿し、その圧縮空気の加湿を制御するガスタービンの加湿制御方法において、
    前記加湿装置へ供給する水系統を複数有し、それぞれの系統ごとに遮断弁を備え、
    前記圧縮機の出口圧力と入口圧力の圧力比及び前記加湿装置の出口温度を計測し、かつ、前記圧力比に対する前記加湿装置の出口温度目標値を予め設定し、前記計測された加湿装置の出口温度が、前記予め設定された加湿装置の出口温度目標値となるように、前記水系統の遮断弁の開閉を制御することを特徴とするガスタービンの加湿制御方法。
  2. 請求項1に記載のガスタービンの加湿制御方法において、
    前記圧縮機の吸気部に水滴を噴霧する吸気噴霧冷却装置を備え、該吸気噴霧冷却装置で噴霧される水量に応じて、前記加湿装置への出口温度目標値を修正することを特徴とするガスタービンの加湿制御方法。
  3. 空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて個別に燃料が供給されて燃焼させる複数の燃焼部を有する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスによって駆動されるタービンと、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を噴霧水で加湿する加湿装置と、該加湿装置への噴霧水量を制御する制御装置とを備えたガスタービンシステムにおいて、
    前記制御装置は、前記圧縮機の出口圧力、又は圧縮機の出口圧力との入口圧力の圧力比と、前記加湿装置の出口温度から該加湿装置への噴霧量の目標値を設定し、この目標値に合うように前記加湿装置への噴霧量を制御する手段を備えていることを特徴とするガスタービンシステム。
  4. 請求項3に記載のガスタービンシステムにおいて、
    前記加湿装置へ供給する水系統を複数有し、それぞれの系統ごとに遮断弁を備え、
    前記制御装置は、前記加湿装置への噴霧量の目標値に合うように、前記水系統の遮断弁の開閉を調整することにより、前記加湿装置への噴霧量を制御することを特徴とするガスタービンシステム。
  5. 請求項3又は4に記載のガスタービンシステムにおいて、
    前記圧縮機の吸気部に水滴を噴霧する吸気噴霧冷却装置を備え、
    前記制御装置は、前記吸気噴霧冷却装置で噴霧される水量に応じて、前記加湿装置への噴霧量の目標値を修正することを特徴とするガスタービンの加湿制御方法。
  6. 空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された圧縮空気を用いて個別に燃料が供給されて燃焼させる複数の燃焼部を有する燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスによって駆動されるタービンと、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を噴霧水で加湿する加湿装置と、該加湿装置への噴霧水量を制御する制御装置とを備えたガスタービンシステムにおいて、
    前記加湿装置へ供給する水系統を複数有し、それぞれの系統ごとに遮断弁を備え、
    前記制御装置は、前記圧縮機の出口圧力と入口圧力の圧力比及び前記加湿装置の出口温度を計測し、かつ、前記圧力比に対する前記加湿装置の出口温度目標値を予め設定し、前記計測された加湿装置の出口温度が、前記予め設定された加湿装置の出口温度目標値となるように、前記水系統の遮断弁の開閉を制御する手段を備えていることを特徴とするガスタービンシステム。
  7. 請求項6に記載のガスタービンシステムにおいて、
    前記圧縮機の吸気部に水滴を噴霧する吸気噴霧冷却装置を備え、
    前記制御装置は、前記吸気噴霧冷却装置で噴霧される水量に応じて、前記加湿装置への出口温度目標値を修正することを特徴とするガスタービンシステム。
  8. 請求項6に記載のガスタービンシステムにおいて、
    前記計測された加湿装置の出口温度が、前記予め設定された加湿装置の出口温度目標値となるように、前記水系統の遮断弁の開閉を制御する手段は、圧力比演算器と目標値算出器及び噴霧水制御器を備え、
    前記制御装置への入力は、加湿装置出口温度と圧縮機出口圧力及び圧縮機入口圧力であり、かつ、入力された前記圧縮機出口圧力と圧縮機入口圧力とから前記圧力比演算器によって圧力比を求め、この圧力比を入力として、前記目標値算出器から加湿管出口温度目標値が算出され、該加湿管出口温度目標値と加湿管出口温度から前記噴霧水制御器によって前記各遮断弁の開閉が指示されるものであることを特徴とするガスタービンシステム。
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