JP2012115210A - 神経変性疾患の病態モデルマウスおよびその作製方法並びに当該モデルマウスを用いた神経変性疾患の予防・治療薬のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウスおよびその作製方法を提供する。
【解決手段】傍脊椎筋温を37.5〜37.8℃で維持しながら、マウスの左鎖骨下動脈と、左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈とを3.5〜5分間遮断することにより得られるアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウスである。
【選択図】図6
【解決手段】傍脊椎筋温を37.5〜37.8℃で維持しながら、マウスの左鎖骨下動脈と、左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈とを3.5〜5分間遮断することにより得られるアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウスである。
【選択図】図6
Description
本発明は、病態モデルマウスに関し、さらに詳細には、神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウスおよび当該モデルマウスを高い生存率で作製する方法並びに当該モデルマウスを用いた神経変性疾患の予防・治療薬のスクリーニング方法に関する。
薬剤のスクリーニングや、病気に対する有効性を確認するために、病態モデル動物の果たす役割は非常に大きい。特に神経系の疾患など、単一の細胞レベルではなく、個体レベルで機能しているシステムの疾患について、病態モデル動物の解析は有用である。このような神経変性疾患として、アルツハイマー病やパーキンソン病、筋委縮性側索硬化症などがある。これらの疾患に共通の現象として、神経細胞のアポトーシスが認められる。アポトーシスは、Fasリガンドなどデスリガンドやミトコンドリア、小胞体からのシグナルによって、カスパーゼが順次活性化されていき、最終的に活性化型カスパーゼ−3により誘導されると考えられている。
アポトーシスのin vitroモデルとしては、PC12培養細胞にコリン欠乏状態を付加するモデル(非特許文献1)、一酸化窒素を付加するモデル(非特許文献2)、高濃度糖負荷を与えるモデル(非特許文献3)など、既に様々なモデルが報告されている。しかし、アポトーシスのin vivoモデルは、未だほとんど確立されていないのが実情である。特に、マウスは大量生産が可能であり、比較的安価に遺伝子改変マウスが作製できるため、このような病態モデル動物として適している。しかし、現在脳海馬における神経細胞アポトーシスを誘導し得る中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)が利用されているだけであり、またこのモデルでは、アポトーシスの有無を確認するために脳を取り出して病理組織学的検討を行う必要があるため、スクリーニング等の効率が低いという問題がある。さらに、脊髄の神経細胞アポトーシスを発現したマウスについては未だ報告されていない。
Chi-liang E. Yena, Mei-heng Mara, Steven H. Zeisel,"Choline deficiency-induced apoptosis in PC12 cells is associated with diminished membrane phosphatidylcholine and sphingomyelin, accumulation of ceramide and diacylglycerol, and activation of a caspase",The FASEB Journal,1999;13:135-142
Anna Bal-Price, Guy C. Brown," Nitric-Oxide-Induced Necrosis and Apoptosis in PC12 Cells Mediated by Mitochondria",Journal of Neurochemistry 2000;75:1455-1464
Ali M. Sharifi1,Seyed Hadi Mousavi, Mona Farhadi1, Bagher Larijani," Study of High Glucose-Induced Apoptosis in PC12 Cells:Role of Bax Protein", Journal of Pharmacological Science 2007;104:258-262
従って、神経細胞のアポトーシスの有無をより容易に判定することが可能なモデルマウスの確立が切望されており、本発明はそのようなモデルマウスおよびその作製方法を提供することを課題とするものである。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、マウスの傍脊椎筋温を一定範囲で維持しながら、大動脈の特定部位と左鎖骨下動脈を一定時間遮断することにより、脊髄神経細胞のアポトーシスを誘導できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、傍脊椎筋温を37.5〜37.8℃で維持しながら、マウスの左鎖骨下動脈と、左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈とを3.5〜5分間遮断することにより得られる神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウスである。
また本発明は、弓部大動脈の遮断を、挟持部に2.8〜3.2mmの間隔で2箇所の目印を付した血管クリップで挟持することにより行う上記病態モデルマウスである。
さらに本発明は、傍脊椎筋温を37.5〜37.8℃で維持しながら、マウスの左鎖骨下動脈と、左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈とを、3.5〜5分間遮断することを特徴とする神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウスの作製方法である。
また発明は、上記病態モデルマウスに被験物質を適用し、アポトーシスの発現を評価することを特徴とする神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の予防・治療薬のスクリーニング方法である。
本発明によれば、マウスに脊髄神経細胞のアポトーシスを高い再現性で誘導することができる。このため、神経細胞のアポトーシスが関与する種々の神経変性疾患の病態モデルマウスとして、薬剤のスクリーニングや、創薬のターゲットとなるタンパク質や遺伝子の検索などの目的に利用することができる。そして、このモデルマウスは、虚血後24〜48時間にかけて運動機能障害(対麻痺)が生じるため、運動機能障害の有無により、アポトーシスの有無を確認することができ、病理組織学的評価を行う必要がない。このため、薬剤の評価等を非常に簡便に効率良く行うことが可能である。また、本発明の方法によれば、高い生存率でこの病態モデルマウスを作製することができ、特に挟持部に目印を付した血管クリップを用いることによって、再現率および生存率を顕著に向上することができる。さらに、本発明によって、脊髄神経細胞のアポトーシスを誘導したモデルマウスが初めて確立され、特に脊髄神経細胞のアポトーシスが関与する筋委縮性側索硬化症や神経因性疼痛などの病態モデルマウスとして好適に利用することが可能である。
本発明に用いるマウスは、特に系統は限定されないが、例えば、C57BL/6等が好適に使用される。このようなマウスを開胸し、図2(a)に示すように、弓部大動脈21と左鎖骨下動脈22の2箇所を遮断する。弓部大動脈21は、左総頸動脈23と左鎖骨下動脈22の間で遮断する。一方、左内胸動脈は遮断せず血流維持することが好ましい。また手術は人工呼吸下で行うことが望ましい。呼吸状態を安定させることにより、生存率を向上することができる。人工呼吸は、吸入酸素濃度20%以上で行うことが好適である。遮断時間は、虚血自体では神経障害を来さない時間であることが好ましく、具体的には、3.5〜5分間、より好ましくは4〜5分間である。遮断時間が5分を超えると、アポトーシスではなく、細胞壊死を生じる可能性が高い。
弓部大動脈21および左鎖骨下動脈22の遮断は、血管クリップで血管を挟持することにより行う。しかし、弓部大動脈21の左総頸動脈23と左鎖骨下動脈22の間を適切な位置で遮断することは非常に困難である。すなわち、血管クリップを深く挿入した場合、その先端が肺動脈あるいは左心耳にかかり、手術後マウスが死亡するおそれがある(図2(c))。一方、浅すぎると大動脈の遮断が不十分となるため、安定してアポトーシスを誘導することが困難となる(図2(b))。このため、弓部大動脈21の遮断には、適切な挿入位置が視認できるように目印が付された血管クリップを用いることが好ましい。この血管クリップ10としては、図1に示すように、血管を挟持する一対の挟持部1と弧状の把持部2により形成されたものが好適に利用できる。このような血管クリップ10として、例えば、ROBOZ社製Micro Clip RS-5435等が使用できる。しかし、この形状に限られるものではない。当該挟持部1外面の先端部に目印3aを付し、その目印から内幅が2.8〜3.2mmとなるように把持部方向に離間して別の目印3bを付している。それぞれの目印は、例えば幅0.4〜1.2mm程度の線とすればよい。これにより、肺動脈や左心耳を損傷したり、不完全に大動脈を閉塞することを防止でき、生存率および再現性を向上することが可能となる。
手術中は、マウスの体温を一定の範囲で管理することが必要である。体温は、脊髄温と相関する傍脊椎筋温で管理することが好ましく、この温度を37.5〜37.8℃、好ましくは37.5〜37.6℃の範囲で調節する。この範囲外では、生存率が低下したり、アポトーシスを安定して誘導できないおそれがある。
かくして得られたマウスは、虚血後24時間までは脊髄に明らかな病理学的変化は認められないが、30時間後から脊髄前角領域に空洞化を伴う脊髄運動神経細胞脱落が認められ、48時間〜72時間では完全な脱落が認められる。また、このマウスのTUNEL染色を行うと陽性細胞が認められる。さらに虚血後24時間から活性型カスパーゼ3陽性神経細胞が認められ、30〜48時間には、ほとんどすべての神経細胞が陽性細胞となる。また、このモデルマウスは、虚血後24〜48時間にかけて運動機能障害(対麻痺)が生じる。
本発明の病態モデルマウスに、アポトーシス制御関連遺伝子を導入して評価することにより、アポトーシス制御関連遺伝子の病態生理学的機能を評価することができる。また、本発明の病態モデルマウスに、薬剤を投与して、アポトーシスの発現を評価することにより、アポトーシスが関与する神経変性疾患に対する薬剤のスクリーニングや創薬のターゲットとなるタンパク質や遺伝子の検索を行うことができる。そして、アポトーシスの発現は、病理組織学的評価を行う必要がなく、運動機能障害の有無によって評価できるため、非常に簡便で効率が高い。神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患としては、アルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン舞踏病、心肺蘇生後脳症、筋委縮性側索硬化症および神経因性疼痛などが挙げられる。これらの中でも脊髄神経細胞のアポトーシスが関与する筋委縮性側索硬化症や神経因性疼痛などの病態モデルマウスとして好適である。
以下実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
実 施 例 1
8〜10週齢の雄マウス(C57/BL6)を酸素・イソフルラン(1.5〜2.0%)で麻酔し、傍脊柱筋温を37.5℃に維持した。気管挿管後に吸入酸素濃度100%で人工呼吸を行った。左大腿動脈より動脈ライン(PE-10)を確保した。頸部および前胸部正中切開し左内頚動脈を指標に第2肋骨まで胸骨切開した。次に胸骨を左右に牽引し、胸腺を剥離することで左総頚動脈と弓部大動脈を露出させ、ヘパリン20単位を左大腿動脈より投与した。左鎖骨下動脈と左総頚動脈との間で、図1の血管クリップを弓部大動脈が目印の間になる位置まで挿入し、大動脈を把持して閉塞した。さらに左鎖骨下動脈を目印が付されていない通常の血管クリップ(ROBOZ社製Micro Clip RS-5435)を用いて遮断した。大動脈遮断5分後に遮断を解除し再灌流した。閉創し麻酔から覚醒させた。覚醒後、抜管し30℃の環境温下で2時間観察した。同様にして、大動脈遮断を9分間行ったモデルも作製した。
8〜10週齢の雄マウス(C57/BL6)を酸素・イソフルラン(1.5〜2.0%)で麻酔し、傍脊柱筋温を37.5℃に維持した。気管挿管後に吸入酸素濃度100%で人工呼吸を行った。左大腿動脈より動脈ライン(PE-10)を確保した。頸部および前胸部正中切開し左内頚動脈を指標に第2肋骨まで胸骨切開した。次に胸骨を左右に牽引し、胸腺を剥離することで左総頚動脈と弓部大動脈を露出させ、ヘパリン20単位を左大腿動脈より投与した。左鎖骨下動脈と左総頚動脈との間で、図1の血管クリップを弓部大動脈が目印の間になる位置まで挿入し、大動脈を把持して閉塞した。さらに左鎖骨下動脈を目印が付されていない通常の血管クリップ(ROBOZ社製Micro Clip RS-5435)を用いて遮断した。大動脈遮断5分後に遮断を解除し再灌流した。閉創し麻酔から覚醒させた。覚醒後、抜管し30℃の環境温下で2時間観察した。同様にして、大動脈遮断を9分間行ったモデルも作製した。
虚血後2、4、6、24、48、72時間目にMotor Deficit Index (Stroke 1996;27:1850)を用い神経学的運動機能評価を行った。その結果を図3に示す。9分間の虚血では、虚血直後から麻痺が認められたのに対し(GroupI)、5分間の虚血では、24時間以内は歩行可能であり、48時間以降に麻痺が認められた(GroupD:遅発対麻痺)。
またそれぞれについて経時的脊髄病理組織を検討した(図4)。5分間虚血では、虚血後24時間までは脊髄に明らかな病理学的変化は認められないが、30時間から脊髄前角領域に空洞化をともなう脊髄運動神経細胞脱落が認められ、虚血48〜72時間では脊髄前角細胞は完全に脱落していた。これに対し、9分間虚血では虚血後8時間では既に大多数の神経細胞が脱落しており、24時間以降ではほとんどの神経細胞がみとめられない所見であった。
また5分間虚血したマウスの虚血後8、24、72時間目の脊髄切片をパラフィン固定し、TUNEL染色を行った。TUNEL染色は、アポトーシスの際に生じるDNAの断片化を検出する染色法であり、断片化DNAの遊離3'-OH末端を、ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)を用いて、フルオレセインーdUTPで高効率かつ特異的に標識した後、蛍光顕微鏡で検出する。TUNEL染色の結果、図5に示すとおりTUNEL陽性細胞が認められた。
さらに、5分間虚血したマウスの虚血後8、24、30、48時間目の脊髄切片をパラフィン固定し、アポトーシスを引き起こすカギとなる酵素のひとつである活性型カスパーゼ3に対する一次抗体(ウサギから抽出した抗体)を脊髄に反応させ、さらにBiotinを添加したウサギ抗体に対する二次抗体(ヤギ抗体)をさせた後に、avidinを反応させて発色させる免疫染色法により活性型カスパーゼ3陽性神経細胞を検出した。結果を図6に示す。虚血後24時間後から活性型カスパーゼ3陽性神経細胞がいくつか認められ、30〜48時間目にはほとんど全ての神経細胞が陽性細胞となっていた。9分虚血後の脊髄における活性型カスパーゼ3の免疫染色では、活性型カスパーゼ3陽性細胞は認められなかったが、5分虚血後の脊髄では、虚血後24〜48時間後に活性型カスパーゼ3陽性細胞が検出された。
実 施 例 2
実施例1と同様にして、8〜10週齢の雄マウス(C57/BL6)を1分間隔で2〜10分間の範囲で虚血し運動機能を評価した。虚血時間毎に、正常運動機能、遅発性対麻痺又は急性対麻痺が認められた個体数を表1に示す。さらに、これらの結果をZivinらの方法(Zivin JA, Waud DR. Quantal bioassay and stroke. Stroke. 1992;23:767-773.)でLogistic解析した。その結果を図7に示す。この結果から、3.5分以上の脊髄虚血を与えると遅発性対麻痺が出現しはじめ、4.5分以上ではすべてのマウスが遅発性対麻痺となった。さらに虚血時間を延ばすと、6分以上の脊髄虚血から急性対麻痺が出現しはじめ8分以上からすべてのマウスで急性対麻痺となることが示された。
実施例1と同様にして、8〜10週齢の雄マウス(C57/BL6)を1分間隔で2〜10分間の範囲で虚血し運動機能を評価した。虚血時間毎に、正常運動機能、遅発性対麻痺又は急性対麻痺が認められた個体数を表1に示す。さらに、これらの結果をZivinらの方法(Zivin JA, Waud DR. Quantal bioassay and stroke. Stroke. 1992;23:767-773.)でLogistic解析した。その結果を図7に示す。この結果から、3.5分以上の脊髄虚血を与えると遅発性対麻痺が出現しはじめ、4.5分以上ではすべてのマウスが遅発性対麻痺となった。さらに虚血時間を延ばすと、6分以上の脊髄虚血から急性対麻痺が出現しはじめ8分以上からすべてのマウスで急性対麻痺となることが示された。
実 施 例 3
カスパーゼ3ノックアウトマウス(CK5:カスパーゼ3ノックアウトC57/BL6マウス 雄 8〜10週齢)と正常マウス(W5:Wild type C57/BL6マウス 雄 8〜10週齢)を用いて、実施例1と同様にして5分間虚血させ、虚血後2、4、6、24、48、72時間目にMotor Deficit Indexを用い神経学的運動機能評価を行った。結果を図8に示す。正常マウス(W5)では遅発対麻痺が生じたのに対し、カスパーゼ3ノックアウトマウス(CK5)では遅発対麻痺が認められなかった。また、経時的脊髄病理組織を検討したところ、カスパーゼ3ノックアウトマウスでは、虚血後72時間においても神経細胞に変性は認められなかった(図9(a))。さらにカスパーゼ3ノックアウトマウスと正常マウスについて、パラフィン固定された脊髄切片をニッスル染色して、神経細胞を可視化し、実験群を知らない検者により、顕微鏡下に神経細胞数を数えた(図9(b))。カスパーゼ3ノックアウトマウスに対し、正常マウスでは、神経細胞が著しく減少していた。これらの結果から、カスパーゼ3は5分虚血後の神経細胞死に大きく影響を及ぼす酵素であることが示された。
カスパーゼ3ノックアウトマウス(CK5:カスパーゼ3ノックアウトC57/BL6マウス 雄 8〜10週齢)と正常マウス(W5:Wild type C57/BL6マウス 雄 8〜10週齢)を用いて、実施例1と同様にして5分間虚血させ、虚血後2、4、6、24、48、72時間目にMotor Deficit Indexを用い神経学的運動機能評価を行った。結果を図8に示す。正常マウス(W5)では遅発対麻痺が生じたのに対し、カスパーゼ3ノックアウトマウス(CK5)では遅発対麻痺が認められなかった。また、経時的脊髄病理組織を検討したところ、カスパーゼ3ノックアウトマウスでは、虚血後72時間においても神経細胞に変性は認められなかった(図9(a))。さらにカスパーゼ3ノックアウトマウスと正常マウスについて、パラフィン固定された脊髄切片をニッスル染色して、神経細胞を可視化し、実験群を知らない検者により、顕微鏡下に神経細胞数を数えた(図9(b))。カスパーゼ3ノックアウトマウスに対し、正常マウスでは、神経細胞が著しく減少していた。これらの結果から、カスパーゼ3は5分虚血後の神経細胞死に大きく影響を及ぼす酵素であることが示された。
本発明によれば、薬剤を投与して、アポトーシスの発現を運動機能低下の有無を指標として評価することにより、神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患に対する薬剤のスクリーニングや創薬のターゲットとなるタンパク質や遺伝子の検索を簡便に行うことができる。したがって、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症などの神経変性疾患の病態モデルマウスとして極めて有用である。
1 挟持部
2 把持部
3a,3b 目印
10 目印付血管クリップ
11 血管クリップ
21 弓部大動脈
22 左鎖骨下動脈
23 左総頸動脈
以 上
2 把持部
3a,3b 目印
10 目印付血管クリップ
11 血管クリップ
21 弓部大動脈
22 左鎖骨下動脈
23 左総頸動脈
以 上
Claims (10)
- 傍脊椎筋温を37.5〜37.8℃で維持しながら、マウスの左鎖骨下動脈と、左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈とを、3.5〜5分間遮断することにより得られる神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウス。
- 左鎖骨下動脈および弓部大動脈の遮断を吸入酸素濃度20%以上の人工呼吸管理下で行うものである請求項1記載の病態モデルマウス。
- 弓部大動脈の遮断を、挟持部に2.8〜3.2mmの間隔で2箇所の目印を付した血管クリップで挟持することにより行うものである請求項1または2記載の病態モデルマウス。
- 神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、心肺蘇生後脳症、筋委縮性側索硬化症および神経因性疼痛よりなる群から選ばれたものである請求項1ないし3のいずれかの項記載の病態モデルマウス。
- 傍脊椎筋温を37.5〜37.8℃で維持しながら、マウスの左鎖骨下動脈と、左総頸動脈と左鎖骨下動脈の間で弓部大動脈とを、3.5〜5分間遮断することを特徴とする神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の病態モデルマウスの作製方法。
- 左鎖骨下動脈および弓部大動脈の遮断を吸入酸素濃度20%以上の人工呼吸管理下で行うものである請求項5記載の病態モデルマウスの作製方法。
- 大動脈の遮断を、挟持部に2.8〜3.2mmの間隔で2箇所の目印を付した血管クリップで挟持することにより行うものである請求項5または6記載の病態モデルマウスの作製方法。
- 神経障害疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、心肺蘇生後脳症、筋委縮性側索硬化症および神経因性疼痛よりなる群から選ばれたものである請求項5ないし7のいずれかの項記載の病態モデルマウスの作製方法。
- 請求項1ないし4のいずれかの項に記載の病態モデルマウスに被験物質を適用し、アポトーシスの発現を評価することを特徴とする神経細胞のアポトーシスが関与する神経変性疾患の予防・治療薬のスクリーニング方法。
- アポトーシスの発現の評価を運動機能障害の評価によって行うものである請求項9に記載のスクリーニング方法。
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