JP2012114476A - 増幅用光ファイバ - Google Patents
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Abstract
【課題】ASE光発生を抑制しつつ高利得で被増幅光を光増幅することができる増幅用光ファイバを提供する。
【解決手段】増幅用光ファイバ1は、所定波長帯域において利得を有する光学活性元素が添加されたコア領域10と、コア領域10を取り囲むクラッド領域20とを備え、ファイバ軸に垂直なクラッド領域20の断面において屈折率分布が2次元周期構造を有し、その2次元周期構造の中心の欠陥によりコア領域10が形成され、クラッド領域20の断面における屈折率分布の2次元周期構造に由来する透過帯域および遮断帯域を有する。所定波長帯域の一部が遮断帯域と重なる帯域において光学活性元素が添加されたコア領域10による利得より大きい損失を有し、所定波長帯域の他の一部が透過帯域と重なる帯域において光学活性元素が添加されたコア領域10による利得より小さい損失を有する。
【選択図】図1
【解決手段】増幅用光ファイバ1は、所定波長帯域において利得を有する光学活性元素が添加されたコア領域10と、コア領域10を取り囲むクラッド領域20とを備え、ファイバ軸に垂直なクラッド領域20の断面において屈折率分布が2次元周期構造を有し、その2次元周期構造の中心の欠陥によりコア領域10が形成され、クラッド領域20の断面における屈折率分布の2次元周期構造に由来する透過帯域および遮断帯域を有する。所定波長帯域の一部が遮断帯域と重なる帯域において光学活性元素が添加されたコア領域10による利得より大きい損失を有し、所定波長帯域の他の一部が透過帯域と重なる帯域において光学活性元素が添加されたコア領域10による利得より小さい損失を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、増幅用光ファイバに関するものである。
信号光を伝送することにより大量の情報を高速に送受信することができる光通信システムにおいて、一般に信号光伝送線路として石英系光ファイバが用いられる。また、信号光波長帯域としては、石英系光ファイバの伝送損失が小さいCバンド(1530nm〜1565nm)やLバンド(1565nm〜1625nm)が用いられ、さらにSバンド(1460nm〜1530nm)も用いられる。
また、光通信システムでは、信号光伝送線路により伝送される間に信号光が損失を被ることから、信号光を光増幅する光増幅器が光送信器,光中継器および光受信器などに設けられる。光増幅器としては一般に光ファイバ増幅器が用いられる。光ファイバ増幅器は、希土類元素や遷移金属元素等の光学活性元素がコア領域に添加された増幅用光ファイバを光増幅媒体として備え、この光学活性元素を励起し得る波長の励起光を増幅用光ファイバに供給することで、この増幅用光ファイバにおいて信号光(被増幅光)を光増幅する。
このような光ファイバ増幅器において、高利得で信号光を光増幅することが重要であるとともに、信号光に対してノイズとなる自然放出光(ASE光)の発生を抑制することも重要である。しかし、高利得を得ようとするには、増幅用光ファイバに添加されている光学活性元素の反転分布率を高くする必要があり、そうするとASE光の発生量が多くなってしまう。すなわち、従来の増幅用光ファイバでは高利得とASE光抑制とは両立し得ない。
例えば、希土類元素であるEr元素が添加された増幅用光ファイバ(EDF:Erbium-doped fiber)を光増幅媒体として備える光ファイバ増幅器(EDFA:Erbium-doped fiber amplifier)では、Sバンドの信号光を光増幅するには、EDFに添加されているEr元素の反転分布率を高くする必要があり、非特許文献1によるとEr元素の反転分布率として0.7以上が必要と記載されている。このような高い反転分布率の場合、波長1530nm付近を中心に多くのASE光が発生してしまう。
そこで、増幅用光ファイバでのASE光の成長を抑制するために、増幅用光ファイバで発生したASE光を除去することが行われている。例えば、非特許文献1に記載された技術は、増幅用光ファイバを多段に接続して、或る段の増幅用光ファイバと次の段の増幅用光ファイバとの間にASEカットフィルタを配置するものである。また、特許文献1に記載された技術は、特定の屈折率プロファイルを有する光ファイバを用い、信号光波長帯域より長波長側の帯域において該光ファイバの曲げ損失を大きくして、この長波長側の帯域のASE光を除去するものである。
さらに一般的に高い反転分布率を得た状態(すなわち、利得が高い状態)で、ASE光が多く発生するASE帯より外側の帯域で利得を得たい場合は、ASEフィルタリング技術が必要である。
E. Ishikawa, M. Nishihara, Y.Sato, C. Ohshima, Y. Sugaya, and J. Kumasako, "Novel1500nm-band EDFA with discrete Raman amplifier," ECOC2001,Postdeadline Papers, pp.48-49, (2001)
しかしながら、ASEカットフィルタを用いてASE光を除去する技術は、導波路の長手方向のポイントで行うことから、完全にASEを除去することが不可能である。また、この技術では、励起光波長や信号光波長での光挿入損失も存在してしまう。また、この技術では、部品点数が増えるので、光増幅器の構成が複雑になり、小型化が困難で高コスト化にもつながる。
特定の屈折率プロファイルを有する光ファイバの曲げによってASE発生帯域に損失を与える技術は、ASEフィルタリングが導波路の長手方向に分布した状態で行うので、ASEカットフィルタを用いる技術より性能が優れると考えられる。しかし、フィルタリングしたい帯域としたくない帯域とのアイソレーションが取りづらい(すなわち、急峻なフィルタ波形が得られにくい)という問題がある。また、特定の損失発生波長を合わせこむ設計が技術的に難しい問題もある。また、特許文献1で詳細に解説されているように、クラッドモードが存在するので、そこへの結合を防ぐ手段が必要である。さらに増幅モジュールとしてコイル巻きにする場合、環境温度変動による特性変動が生じやすいという問題も考えられる。
また、このような光ファイバを用いる場合、損失を与えることができるのは、透過波長帯の長波長側のみである。例えばASEを抑圧しながらその長波長側の利得を得たい場合は、この技術は使えない。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、ASE光発生を抑制しつつ高利得で被増幅光を光増幅することができる増幅用光ファイバを提供することを目的とする。
本発明に係る増幅用光ファイバは、光学活性元素を添加物として含むコア領域と、このコア領域を取り囲むクラッド領域とを備えた増幅用光ファイバであって、クラッド領域は、ファイバ軸に垂直な断面において2次元周期構造でありファイバ軸に沿って一様である屈折率分布を有し、コア領域は、2次元周期構造の断面中央部にある欠陥からなり、増幅用光ファイバは、2次元周期構造に由来する透過帯域および遮断帯域を有し、コア領域に導波されてファイバ軸方向に進むコア導波モードが透過帯域に存在し、励起光により励起された光学活性元素が利得を有する帯域は、遮断帯域と重なり増幅用光ファイバ全体として損失を有する第一利得帯域と透過帯域と重なり増幅用光ファイバ全体として利得を有する第二利得帯域とを含むことを特徴とする。
さらに、本発明に係る増幅用光ファイバは、(1) 2次元周期構造が、2次元三角格子の各格子点上に配置された高屈折率領域と、略均一の屈折率を有する低屈折率領域とからなり、(2) 高屈折率領域が、Ge,Cl,Ti,Alのうち少なくとも1種の元素を添加物として含むシリカガラスからなり、(3) 低屈折率領域が、純シリカガラスまたはF,B,Clのうち少なくとも1種の元素を添加物として含むシリカガラスからなることを特徴とする。
この増幅用光ファイバは、ファイバ軸に垂直なクラッド領域の断面において屈折率分布が2次元周期構造を有していることにより、この構造に由来する透過帯域および遮断帯域を有している。そして、この増幅用光ファイバは、コア領域に添加された光学活性元素により利得を有する所定波長帯域の一部が遮断帯域と重なり、その重なる帯域において光学活性元素が添加されたコア領域による利得より大きい損失を有しているので、この帯域においてASE発生を抑圧することができる。また、この増幅用光ファイバは、上記所定波長帯域の他の一部が透過帯域と重なり、その重なる帯域において光学活性元素が添加されたコア領域による利得より小さい損失を有しているので、この帯域において高利得で被増幅光を光増幅することができる。このような構成の増幅用光ファイバは、例えばスタックアンドドロー法などにより容易に製造され得る。
本発明に係る増幅用光ファイバは、シリカガラスを主成分とし、光学活性元素がEr元素であり、コア領域にAl元素を共添加物として含み、Sバンド(1460〜1530nm)のうちの少なくとも一部帯域が透過帯域であってコア導波基底モードを有し、遮断帯域が波長1530nmを含むのが好適である。この場合には、増幅用光ファイバは、ASE光発生を抑制しつつ、Sバンドの被増幅光を高利得で光増幅することができる。
本発明に係る増幅用光ファイバは、シリカガラスを主成分とし、光学活性元素がEr元素であり、コア領域にAl元素が共添加物として含み、Lバンド(1565〜1625nm)のうちの少なくとも一部帯域が透過帯域であってコア導波基底モードを有し、遮断帯域が波長1530nmを含むのが好適である。この場合には、増幅用光ファイバは、ASE光発生を抑制しつつ、Lバンドの被増幅光を高利得で光増幅することができる。
本発明に係る増幅用光ファイバは、クラッド領域の断面において2次元三角格子の格子点によって囲まれる領域の各中心位置に微小穴が存在するのが好適であり、この場合には曲げ損失が改善され得る。
本発明に係る増幅用光ファイバは、励起光の波長においてコア導波モードの実効屈折率が低屈折率領域の屈折率より高いのが好適であり、さらに、被増幅光の波長においてコア導波モードの実効屈折率が低屈折率領域の屈折率より高いのも好適である。また、本発明に係る増幅用光ファイバでは、コア領域は、内側領域と、この内側領域を取り囲む外側領域とを含み、内側領域の屈折率は低屈折率領域の屈折率より高いのが好適であり、さらに、外側領域の屈折率は低屈折率領域の屈折率より低いのも好適である。これらの場合には、コア導波モード光のモードフィールド径が調整され得る。
本発明に係る増幅用光ファイバは、励起光および被増幅光それぞれについて実効的に基底モードのみが導波されるのが好適であり、この場合には励起光および被増幅光の双方でシングルモード動作し得る。
本発明に係る増幅用光ファイバは、2次元周期構造のピッチΛに対する高屈折率領域の直径dの比(d/Λ)が0.6以上であるのが好適であり、この場合には曲げ損失が改善され得る。
本発明に係る増幅用光ファイバは、2次元周期構造によって現れる2次または3次のバンドギャップを透過帯域として使用するのが好適であり、この場合には外径が小さくなり得る。
本発明に係る増幅用光ファイバは、ASE光発生を抑制しつつ、高利得で被増幅光を光増幅することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る増幅用光ファイバ1の断面図である。この図は、増幅用光ファイバ1のファイバ軸に垂直な断面を示している。この図に示される増幅用光ファイバ1は、励起光により励起されて所定波長帯域において利得を有する光学活性元素が添加されたコア領域10と、このコア領域10を取り囲むクラッド領域20とを備える。コア領域10に添加される光学活性元素は、希土類元素や遷移金属元素等であり、好適にはEr元素やTm元素等の希土類元素である。
増幅用光ファイバ1は、ファイバ軸に垂直なクラッド領域20の断面において屈折率分布が2次元周期構造を有し、その2次元周期構造の中心の欠陥によりコア領域10が形成され、ファイバ軸方向に沿って同一の断面形状を維持している。また、増幅用光ファイバ1は、クラッド領域20の断面における屈折率分布の2次元周期構造に由来する透過帯域および遮断帯域を有し、コア領域10により導波されてファイバ軸方向に沿って進むコア導波モードが透過帯域に存在する。
そして、増幅用光ファイバ1において励起光により励起された前記光学活性元素が利得を有する帯域は、遮断帯域と重なり増幅用光ファイバ1全体として損失を有する第一利得帯域と、透過帯域と重なり増幅用光ファイバ1全体として利得を有する第二利得帯域とを含む。
具体的には、クラッド領域20の断面における屈折率分布の2次元周期構造は、2次元三角格子の各格子点上に配置された高屈折率領域21と、略均一の屈折率を有する低屈折率領域22とからなる。断面の中央において高屈折率領域21が欠けている領域がコア領域10となる。高屈折率領域21の屈折率は、低屈折率領域22の屈折率と比べて高い。例えば、高屈折率領域21は、Ge,Cl,Ti,Alのうち少なくとも1種の元素が添加されたシリカガラスからなる。また、低屈折率領域22は、純シリカガラスまたはF,B,Clのうち少なくとも1種の元素が添加されたシリカガラスからなる。
図2は、本実施形態に係る増幅用光ファイバ1の損失スペクトルの一例を示す図である。この図において、実線は増幅用光ファイバ1の励起されていない状態での添加物(Er3+)による吸収を除いた全損失を示し、破線は添加物による吸収を除いた材料損失を示す。増幅用光ファイバ1の全損失は、材料損失および曲げ損失に加えて、クラッド領域20の断面における屈折率分布の2次元周期構造に基づく不連続な損失を含む。また、フォトニックバンドギャップ効果によって光が導波される場合は、増幅用光ファイバ1の全損失は閉じ込め損をも含む。2次元周期構造に基づく損失は、光の波長だけでなく、屈折率や、2次元周期構造のピッチや外径などのパラメータによって決定される。この図に示されるように、増幅用光ファイバ1の損失スペクトルにおいては、透過帯域と遮断帯域とが交互に存在し、両帯域の透過率の差は1m程度のサンプルの透過率測定で通常15〜50dBである。
図1に示される増幅用光ファイバ1は例えばスタックアンドドロー法などにより容易に製造され得る。図3は、スタックアンドドロー法による増幅用光ファイバ1の製造方法の一例を説明する図である。スタックアンドドロー法では、同図に示されるように各種のロッド101〜103をジャケット管100内に規則的に配列したプリフォームを用意し、これをコラプス後線引または直接線引することで、図1に示されるような断面構造を持つ増幅用光ファイバ1が得られる。
ロッド101,102それぞれの直径は互いに等しい。1本のロッド101の周りに多数のロッド102が三角格子状に規則正しく配置され、これらがジャケット管100内に挿入されるとともに、これらとジャケット管100との隙間を埋めるようにロッド103が挿入される。
ロッド101は、直近のロッド102の一部とともに線引後にコア領域10となるべきもので、光学活性元素が添加されている。ロッド102,103は、線引後にクラッド領域29となるべきものである。そのうち、ロッド102の中心部は線引後に高屈折率領域21となるべき領域であり、これの周囲の部分は線引後に低屈折率領域22となるべき領域である。これらのロッド101〜103は、通常の光ファイバ母材の製造方法と同様の方法(例えばMCVD法やOVD法やコラップス法など)により製造され、また、必要に応じて外周が機械研削またはHFエッチングされる。
図4および図5それぞれは、反転分布率の各値について利得スペクトルの一例を示す図である。この図は、Er元素およびAl元素が添加されたシリカガラスからなるコア領域10による利得を、40%〜90%の範囲内の各反転分布率について示す。
図4に示される例では、増幅用光ファイバ1は、Sバンド(1460〜1530nm)のうちの少なくとも一部帯域が透過帯域であってコア導波基底モードを有し、遮断帯域が波長1530nmを含む。具体的には、増幅用光ファイバ1は、波長1525nm付近に透過帯域の長波長側境界が存在し、且つ、励起光波長である980nmが透過帯に入るよう、パラメータが調整されている。このような増幅用光ファイバ1を用いてSバンドで高い利得を得ようとする場合は、高い反転分布率が必要であるが、同時に波長1530nm付近の利得が大きくなり多くのASE光が発生して成長することが知られている。図4中に点線で示した波長の付近に透過帯域と損失帯域との境界を設定することで、このASE光をカットすることが可能で、反転分布率を高い条件でも使用できるようになる。
図5に示される例では、増幅用光ファイバ1は、Lバンド(1565〜1625nm)のうちの少なくとも一部帯域が透過帯域であってコア導波基底モードを有し、遮断帯域が波長1530nmを含む。具体的には、増幅用光ファイバ1は、波長1565nm付近に透過帯域と遮断帯域との境界が設定されている。励起光波長を980nmとする場合は気にしなくても良いが、励起光波長を1480nmとする場合はこれが透過帯に含まれるように、短波長側の境界も設計される。通常のLバンド増幅では反転分布率を低く設定することで、Lバンドの広い帯域で増幅させることが良く行われるが、利得は全般に低い。しかし、この例の増幅用光ファイバ1を用いて、反転分布率を高くした状態で、波長1530nmを中心としたASE光を抑えることで、Lバンドで従来技術より大きな利得が得られる。
本実施形態に係る増幅用光ファイバ1は、反転分布率を高く設定したままASE光を抑制することができるので、EDFのASE光発生帯域の中心付近(1520〜1540nm)を除く帯域における光増幅やレーザ発振において、利得及びその効率の面で有利である。図4および図5に示した例の他に、例えばCバンドのうちの長波長側(1540nm以上)の帯域の信号光を光増幅する場合は、それ以下の波長のASE光を遮断することで、反転分布率を高く設定することができるので、この帯域で高い利得が得たい目的には有利である。
本実施形態に係る増幅用光ファイバ1は、光学活性元素としてはEr元素に限らず、他の光活活性元素が添加されてもよい。上記の説明と同様に、ASE帯が遮断帯域と重なるようにするとともに、利得を得たい波長大域を透過帯域と重なるようにすれば良い。これによって、ASE光を抑圧しない場合に比べて高い利得が得られる。
本実施形態に係る増幅用光ファイバ1では、コア領域10での光導波の形態は必ずしもフォトニックバンドギャップ(PBG)効果による必要はない。図1に示されるような断面構造において、クラッド領域20のうちの低屈折率領域22の屈折率よりコア領域10の屈折率が高い場合、波長によって導波モードの実効屈折率は低屈折率領域22の屈折率より高くなって、PBGの定義から外れる。しかし、そのような場合であっても、クラッド領域20における屈折率分布の2次元周期構造に由来する不連続な透過スペクトルが得られる。
クラッド領域20における屈折率分布の2次元周期構造に由来する不連続な透過帯域は、長波長側から1次,2次,・・・と呼ばれる。この次数が低いと、曲げ損失が大きくなり、また、バンドギャップ導波の場合は閉じ込め損が大きくなるが、周期構造のピッチ(高屈折率領域21のピッチ)を小さく設定することができ、したがって、増幅用光ファイバ1の外径を小さくすることができる。このような関係を考慮すると、実用的には2次または3次の透過帯域を、利得を得たい帯域として使用するのが良い。
また、上記内容との関連で、コア領域10における屈折率分布を適切に設定することにより、導波モードのフィールドを調整することも可能である。図1に示される増幅用光ファイバ1のコア径は周期構造のパラメータによって決まるが、この構造で定義されるコア径を小さくするには限界がある。一方で、励起光が光学活性元素を励起する効率を考慮すると、小さいモードフィールド径が必要な場合が想定される。
このような場合、図6に示されるように、コア領域10のうちでも中心部の内側領域11を適切な径とした上で、その内側領域11の屈折率が低屈折率領域22の屈折率より高い構造とすることで、モードフィールド径を小さくすることができる。また、このとき、コア領域10のうち内側領域11を取り囲む外側領域12のうちロッド101に由来する部分の屈折率は、低屈折率領域22の屈折率より低いのが好ましい。例えば、コア領域10のうちの内側領域11にEr元素およびAl元素を添加することで、その内側領域11の屈折率は純シリカガラスの屈折率より大きくなる。さらに、屈折率上昇剤であるGeや屈折率低下剤であるFやBの添加により、コア領域10のうちロッド101に由来する部分における屈折率分布を任意に調整することも可能である。
コア領域10および内側領域11それぞれの外径については、製造時に中心に挿入されるロッド101のコア/クラッド比を調整することで容易に実現できる。コア領域10のうちの外側領域12の屈折率は、低屈折率領域21の屈折率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。この屈折率を調整することによっても導波モードのモードフィールド径を調整することができる。
従来技術のEDFに見られるように、コア領域10においてEr元素が添加される領域を内側領域11に限定することも可能である。これによってパワー密度の高い領域にErイオンが限定されるので励起効率が改善される。
励起光および被増幅光それぞれのコア導波モードは実質的にはシングルモード動作することが望ましい。高次モードが存在するか否かについては計算により算出される。適切なパラメータを選択することで、シングルモード動作し得る構造は選択される。しかし、計算上では高次モードが存在する場合でも、実際には高次モードの損失が大きいことから、比較的広い波長範囲でシングルモード動作を行うことが可能である。また、特に光増幅器の場合は、増幅用光ファイバ1は、収納のために曲げて使用されることが多いが、高次モードの曲げ損が大きいので、シングルモード動作しやすくなる。
図1に示された増幅用光ファイバ1は、穴が存在せず、中実である。このような構造の増幅用光ファイバ1は、従来の光ファイバ製造技術を用いて容易に製造できる利点がある。一方で、図7に示される増幅用光ファイバ2は、クラッド領域20の断面において2次元三角格子の近接した3つの格子点(高屈折率領域21)により囲まれる領域の中心位置に微小穴(エアホール)が設けられているものであり、このような構造であっても所期の機能を果たすことができる。
図7に示される増幅用光ファイバ2は、図3に示された状態からコラプスや線引を行う際に、加工終了端側において、予め端を塞ぐ、一定圧に保つ、およびできるだけ低温で加工を行うといった条件により、比較的容易に製造される。この構造の増幅用光ファイバ2は、エアホールが無い増幅用光ファイバ1の場合に比べて、若干損失が高くなるが、エアホールを含む低屈折率領域22と高屈折率領域21との実効的な比屈折率差が大きくなる効果があるので、曲げ損失が低下し、また、透過帯域と遮断帯域とのアイソレーションが大きくなる点において有利である。
増幅用光ファイバ1が光増幅器内に設置される場合、収納性の観点から増幅用光ファイバ1がコイル巻きにされることが多い。それ故、増幅用光ファイバ1は曲げ損失に強いことが要求される。図1に示される構造の増幅用光ファイバ1は、直径数十mmφコイル巻きの状態であっても曲げ損失を発生しないような設計が可能である。具体的には、周期構造のピッチΛに対する高屈折率領域21の直径dの比(d/Λ)を0.6より大きくすることで、実用上充分に低い曲げ損失が得られる。また、前述の増幅用光ファイバ2の構造のような小さなエアホールの導入や、コア領域10のうちの内側領域11の屈折率を上昇させるような設計と組み合わせれば、曲げ損失に対してさらに有利である。
増幅用光ファイバのコア領域にP、B、Fなどの元素を添加することで、SバンドやLバンドでの利得帯域が広がることが知られている。本実施形態に係る増幅用光ファイバ1,2でも、コア領域10にP、B、Fなどの元素を添加すれば、より広い帯域で高い利得を得ることが可能であり、また、場合によっては利得平坦性にも優れた状態で高い利得を得ることが可能である。
増幅用光ファイバ1,2の背景損失(光学活性現その影響を除いた材料およびその不純物や製法に起因する損失)は、20dB/km以下であることが望ましく、より好ましく10dB/km以下であることが望ましい。このような増幅用光ファイバ1,2は、図3に示されるスタック後のプリフォームに対し、高温で塩素系ガスを含む雰囲気で加熱処理を行った後にコラプスまたは線引することで得られる。
光ファイバ増幅器の光増幅媒体として増幅用光ファイバ1,2を用いる場合、増幅用光ファイバ1,2と他の光ファイバとの融着接続が必要である。増幅用光ファイバ1,2は、穴がないか、あっても微小であるので、他の光ファイバとの融着接続の際に汎用の放電方式での融着損失を低く抑えることができる。但し、増幅用光ファイバ1,2は、石英ガラスに対する添加物が多いので、粘性が低い点、および、拡散する可能性がある点で、注意が必要である。汎用SMファイバの条件に比べて、増幅用光ファイバ1,2の融着の条件として放電時間および放電パワーを1/2〜1/3に抑えれば、比較的低損失(1dB以下/1箇所)で融着接続することができる。
1,2…増幅用光ファイバ、10…コア領域、11…内側領域、12…外側領域、20…クラッド領域、21…高屈折率領域、22…低屈折率領域。
Claims (10)
- 光学活性元素を添加物として含むコア領域と、このコア領域を取り囲むクラッド領域とを備えた増幅用光ファイバであって、
前記クラッド領域は、ファイバ軸に垂直な断面において2次元周期構造でありファイバ軸に沿って一様である屈折率分布を有し、
前記コア領域は、前記2次元周期構造の前記断面中央部にある欠陥からなり、
前記増幅用光ファイバは、前記2次元周期構造に由来する透過帯域および遮断帯域を有し、前記コア領域に導波されてファイバ軸方向に進むコア導波モードが前記透過帯域に存在し、
励起光により励起された前記光学活性元素が利得を有する帯域は、前記遮断帯域と重なり前記増幅用光ファイバ全体として損失を有する第一利得帯域と前記透過帯域と重なり前記増幅用光ファイバ全体として利得を有する第二利得帯域とを含み、
前記2次元周期構造が、2次元三角格子の各格子点上に配置された高屈折率領域と、略均一の屈折率を有する低屈折率領域とからなり、
前記高屈折率領域が、Ge,Cl,Ti,Alのうち少なくとも1種の元素を添加物として含むシリカガラスからなり、
前記低屈折率領域が、純シリカガラスまたはF,B,Clのうち少なくとも1種の元素を添加物として含むシリカガラスからなる、
ことを特徴とする増幅用光ファイバ。 - 励起光の波長においてコア導波モードの実効屈折率が前記低屈折率領域の屈折率より高いことを特徴とする請求項1記載の増幅用光ファイバ。
- 被増幅光の波長においてコア導波モードの実効屈折率が前記低屈折率領域の屈折率より高いことを特徴とする請求項2記載の増幅用光ファイバ。
- 前記コア領域が、内側領域と、この内側領域を取り囲む外側領域とを含み、前記内側領域の屈折率が前記低屈折率領域の屈折率より高い、ことを特徴とする請求項3記載の増幅用光ファイバ。
- 前記外側領域の屈折率が前記低屈折率領域の屈折率より低いことを特徴とする請求項3記載の増幅用光ファイバ。
- 励起光および被増幅光それぞれについて実効的に基底モードのみが導波されることを特徴とする請求項4記載の増幅用光ファイバ。
- 前記クラッド領域の断面において2次元三角格子の格子点によって囲まれる領域の各中心位置に微小穴が存在することを特徴とする請求項4記載の増幅用光ファイバ。
- 前記2次元周期構造のピッチΛに対する前記高屈折率領域の直径dの比(d/Λ)が0.6以上であることを特徴とする請求項6記載の増幅用光ファイバ。
- 前記2次元周期構造によって現れる2次または3次のバンドギャップを前記透過帯域として使用することを特徴とする請求項8記載の増幅用光ファイバ。
- シリカガラスを主成分とし、
前記光学活性元素がEr元素であり、前記コア領域にAl元素が共添加物として含み、
Lバンド(1565〜1625nm)のうちの少なくとも一部帯域が前記透過帯域であってコア導波基底モードを有し、
前記遮断帯域が波長1530nmを含む、
ことを特徴とする請求項9記載の増幅用光ファイバ。
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