しかしながら、前述したような従来のCFD銘柄とヘッジ対象原資産商品との1対1のヘッジ処理では、CFDは差金決済であるから、通常に比べて注文件数が多くなる傾向にあり、これに伴って、ヘッジ対象原資産商品のヘッジ対象原資産商品取引市場(取引所)への売買注文の発注も多くなるので、マーケットメーカが取引所へ支払う手数料(場口銭)が増え、コスト負担が大きくなる。
このため、流動性の分析を効果的に行い、取引所へのヘッジ発注のタイミングをコントロールすることにより、マーケットメーカの保有リスクを極小化したまま、ヘッジ注文の発注回数や発注数量を削減し、取引所へ発注する際の執行コスト(場口銭)を低減し、併せて、ヘッジ対象原資産商品取引市場(取引所)へのインパクトを軽減することが望まれる。
また、従来の1対1のヘッジ処理では、顧客によるCFDの売買の動向によっては、売りのヘッジ発注と買いのヘッジ発注とが繰り返されることもあるが、例えば、同じ数量について売りのヘッジ発注と買いのヘッジ発注とを行えば、マーケットメーカは、売り値(安い)と買い値(高い)の単価の差額に、当該数量を乗じた金額分だけ損失を生じることになる。従って、顧客によるCFDの売り注文と買い注文とが、うまく対等(ネッティング)したときに、売りのヘッジ発注と買いのヘッジ発注とを行わないようにすることができれば、このようなマーケットメーカに生じる損失を抑制することができる(売買対等・ネッティング効果)。
さらに、ヘッジ対象原資産商品が株式の場合には、空売り規制遵守のために、マーケットメーカは、十分な現物株の保有が必要になるが、その一方で、現物株の保有により、価格変動に伴う保有リスク(マーケットリスク)を負うことがあるので、現物株の保有量を適正量にコントロールする必要もある。
本発明の目的は、マーケットメーカの保有リスクを極小化したままで、ヘッジ注文の発注回数や発注数量を適正にコントロールし、マーケットメーカが支払う場口銭の軽減や、売りと買いのヘッジ発注の繰り返しにより生じるマーケットメーカの損失の抑制を図ることができるCFDヘッジ処理システムおよびその方法、並びにプログラムを提供するところにある。
本発明は、CFD取引市場へCFD気配用注文を出してCFD売買を行うマーケットメーカのコンピュータにより構成されたCFDヘッジ処理システムであって、CFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行するCFD気配用注文送信処理手段と、CFD取引市場システムから通信回線を介して送信されてくるCFD気配用注文の約定データを受信する処理を実行するCFD気配用注文約定受信処理手段と、このCFD気配用注文約定受信処理手段により約定データを受信した注文分について、CFDの買い数量からCFDの売り数量を減じたマーケットメーカの保有するCFDの数量または金額の残高を、CFDの銘柄識別情報と関連付けて記憶するCFDポジション記憶手段と、マーケットメーカがヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注しまたは当該市場で約定したヘッジ対象原資産商品の買い数量から売り数量を減じたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の数量または金額の残高を、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報と関連付けて記憶するヘッジポジション記憶手段と、リスクを許容することができる数量または金額として定められた閾値を、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報またはこれに対応するCFDの銘柄識別情報と関連付けて記憶するパラメータ記憶手段と、CFDポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するCFDの残高とこのCFDの銘柄識別情報に対応するヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてヘッジポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の残高との合計残高を算出し、この合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値として示されるヘッジ必要数量またはその相当金額が、パラメータ記憶手段に記憶された閾値を超過したか否か、または閾値以上になったか否かというヘッジ実施条件の成否を判断し、ヘッジ実施条件が成立した場合に、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がプラス値であれば、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を売り数量としてヘッジ対象原資産商品の売り注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注すると決定し、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がマイナス値であれば、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を買い数量としてヘッジ対象原資産商品の買い注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注すると決定する処理を実行するヘッジコントロール処理手段と、このヘッジコントロール処理手段による判断結果に従って、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を売り数量または買い数量としてヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文の発注データをヘッジ対象原資産商品取引市場システムへ通信回線を介して送信する処理を実行するヘッジ注文送信処理手段と、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムから通信回線を介して送信されてくるヘッジ対象原資産商品の約定データを受信する処理を実行するヘッジ約定受付処理手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、「合計残高」は、CFDの数量残高とヘッジ対象原資産商品の数量残高とを合計してもよく、CFDの金額残高(CFDの数量残高を時価単価で換算した時価金額)とヘッジ対象原資産商品の金額残高(ヘッジ対象原資産商品の数量残高を時価単価で換算した時価金額)とを合計してもよい。
この際、前者のように数量残高同士を合計する場合には、CFDの原資産およびヘッジ対象原資産商品が同じものであるときには、互いの数量残高をそのまま合計することができるが、より一般には、CFDおよびヘッジ対象原資産商品のそれぞれの商品種別に応じて、ヘッジを成立させるために定められたCFDとヘッジ対象原資産商品との数量の比率(従来のように顧客の1回のCFD注文に対してヘッジ発注を1回行うという1対1のヘッジを行うと仮定した場合に、このヘッジを行う際に用いられるCFDの売買数量とヘッジ対象原資産商品の売買数量との比率)を用いて、いずれか一方の数量を換算してから合計する。
例えば、原資産が株式である株式CFDの場合は、ヘッジ対象原資産商品は、原資産と同銘柄の株式とすることができるので、この場合は、株式CFDの数量残高およびヘッジ対象原資産商品の数量残高を、同じ単位(例えば、ともに何株という単位)で表したとすれば、株式CFDの数量残高とヘッジ対象原資産商品の数量残高とをそのまま合計してよい。
また、原資産が株価指数先物である株価指数先物CFDの場合に、ヘッジ対象原資産商品を、原資産と同銘柄の株価指数先物としたときには、株価指数先物CFDの数量残高およびヘッジ対象原資産商品の数量残高を、同じ単位(例えば、ともに何枚という単位)で表したとすれば、株価指数先物CFDの数量残高とヘッジ対象原資産商品の数量残高とをそのまま合計してよい。
さらに、原資産が株価指数である株価指数CFDの場合に、ヘッジ対象原資産商品を、原資産の先物である株価指数先物としたときには、株価指数CFDの数量残高およびヘッジ対象原資産商品の数量残高を、同じ単位(例えば、ともに何枚という単位)で表したとすれば、株価指数CFDの数量残高とヘッジ対象原資産商品の数量残高とをそのまま合計してよい。なお、双方の残高を同じ単位(例えば、ともに何枚という単位)で表したときでも、双方の乗数(取引単位の倍率)が相違する場合には、乗数の比を考慮して合計する必要がある。例えば、東京金融取引所(TFX)で取引されているTFX日経平均CFDの乗数は100であり、シンガポール取引所(SGX)で取引されている日経平均株価指数の先物取引であるSGX日経225先物の乗数は500であるが、マーケットメーカが、TFX日経平均CFD、1000枚をCFD取引市場から買ったとすると、SGX日経225先物をヘッジ対象原資産商品とする場合には、マーケットメーカは、SGX日経225先物を、1000枚×100÷500=200枚だけ売ることで、組合せポジションをフラットにすることができるので、1/5または5という乗数の比を用いて換算した後の数量を合計する。例えば、TFX日経平均CFDを2000枚保有し、SGX日経225先物を500枚保有しているときには、これらの枚数をそのまま合計した2500枚という数値は何ら意味を持たないので、TFX日経平均CFDの2000枚に乗数の比である1/5を乗じて400枚とし、この換算後のTFX日経平均CFDの400枚とSGX日経225先物の500枚とを合計して組合せポジションの数量残高を900枚とするか、またはSGX日経225先物の500枚に乗数の比である5を乗じて2500枚とし、TFX日経平均CFDの2000枚と、換算後のSGX日経225先物の2500枚とを合計して組合せポジションの数量残高を4500枚とする。前者の場合の組合せポジションの数量残高900枚と後者の場合の組合せポジションの数量残高4500枚との比は、当然、乗数(取引単位の倍率)の比となるが、前者と後者とは、組合せポジションの数量残高を、ヘッジ対象原資産商品の数量ベースとするか、CFDの数量ベースとするかの相違に過ぎず、金額ベースで定められた閾値を数量ベースに換算する際に、ヘッジ対象原資産商品の1枚当たりの金額で除するか、CFDの1枚当たりの金額で除するかの相違に過ぎない。但し、組合せポジションの残高管理は、ヘッジコントロールのために行っているので、ヘッジの発注数量をダイレクトに決定することができるという点からは、前者の場合のように、組合せポジションの数量残高を、ヘッジ対象原資産商品の数量ベースとすることが望ましい。後者の場合のように、組合せポジションの数量残高を、CFDの数量ベースとすると、CFDの数量ベースで閾値への到達等を判断することになるので、ヘッジの発注数量を決定する際に、再度、乗数の比を用いてヘッジ対象原資産商品の数量ベースに換算する必要が生じる。
一方、原資産が株価指数先物である株価指数先物CFDの場合に、ヘッジ対象原資産商品を、株価指数を構成する全銘柄とすることもでき、このようにしたときには、株価指数先物CFDの数量残高とヘッジ対象原資産商品の数量残高とをそのまま合計しても意味が無いため、換算が必要となる。例えば、従来の1対1のヘッジの考え方で、株価指数先物CFDのX枚の注文に対し、株価指数を構成する全銘柄をそれぞれY株ずつヘッジ注文する必要がある場合には、ヘッジを行う際の数量比率は、X:Yなので、例えば、株価指数先物CFDの数量残高(何枚という単位で表した数量残高)に、Y/Xを乗じて株数に換算してから、ヘッジ対象原資産商品の数量残高(何株という単位で表した数量残高;但し、ここでは、株価指数を構成する全銘柄に共通の株数であるという前提)と合計することができる。ヘッジを行う際には、ヘッジ対象原資産商品の注文数量(売り数量または買い数量)を算出する必要があるので、このように株価指数先物CFDの数量残高をヘッジ対象原資産商品の単位(株数)に換算するほうが、その後の演算処理上、都合がよい。なお、この例のように、双方の数量残高をそのまま合計することができない場合には、双方の数量残高を時価単価を用いて金額残高に換算した状態で合計してもよい。なお、換算に用いる時価単価は、例えば、ドイツ株価指数(DAX)や、ロンドン証券取引所(LSE)における株価指数であるFTSE100種総合株価指数等のように、円建てではないものがあるため、為替を考慮する必要がある場合もある。
また、「合計残高」を算出する際には、CFDの残高をそのまま合計するのではなく(つまり、CFDの残高をそのまま組合せポジションの残高に組み入れるのではなく)、実際のCFDの残高に、パラメータとしての組入れ比率を乗じることにより、その組入れ比率にて組合せポジションの残高に組み入れるようにしてもよく、あるいは、実際のCFDの残高から、パラメータとしての固定値(固定数量または固定金額)を差し引き、差し引いた後の残高を組合せポジションの残高に組み入れるようにしてもよい。このようなパラメータとしての組入れ比率や固定値(固定数量または固定金額)は、後述するパラメータ設定処理手段によりマーケットメーカの担当者が自在に設定し、後述するパラメータ記憶手段に記憶させることができるようにしておくことが好ましいが、システムで予め定められた組入れ比率や固定値(固定数量または固定金額)としてもよい。例えば、CFDポジションの残高が、実際には、+1000CFDである場合に、パラメータとして80%という組入れ比率を事前に設定しておけば、+800CFD(+1000CFD×80%)として組合せポジションの残高に組み入れられ、また、パラメータとして100CFDという固定数量を事前に設定しておけば、+900CDF(+1000CFD−100CFD)として組合せポジションの残高に組み入れられる。そして、これらの組入れ比率や固定値(固定数量または固定金額)は、実際のCFDポジションの残高が、プラスの場合とマイナスの場合とで別々に設定できるようにしてもよく、例えば、プラスの場合には、組入れ比率を80%と設定し、マイナスの場合には、組入れ比率を70%と設定したときには、実際のCFDポジションの残高が、+1000CFDであれば、+800CFD(+1000CFD×80%)として組合せポジションの残高に組み入れられ、実際のCFDポジションの残高が、−1000CFDであれば、−700CFD(−1000CFD×70%)として組合せポジションの残高に組み入れられる。同様に、プラスの場合には、固定値を200CFDと設定し、マイナスの場合には、固定値を300CFDと設定したときには、実際のCFDポジションの残高が、+1000CFDであれば、+800CFD(+1000CFD−200CFD)として組合せポジションの残高に組み入れられ、実際のCFDポジションの残高が、−1000CFDであれば、−700CFD(−1000CFD+300CFD)として組合せポジションの残高に組み入れられる。そして、実際のCFDポジションの残高が、プラスの場合またはマイナスの場合のいずれか一方の場合についてだけ、組合せポジションの残高に組み入れる設定(つまり、他方の場合の組入れ比率は、0%という設定)を行うことができるようにしてもよい。このように組入れ比率や固定値(固定数量または固定金額)を用いて「合計残高」を算出するようにした場合には、CFDポジションの残高が実際よりも小さく(絶対値が小さく)評価されることになるので、CFD気配用注文の約定に対し、全部ではなく、一部についてヘッジを行う状態となり、ヘッジの発注数量が抑えられることになる。
また、「合計残高」を算出するための「ヘッジポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の残高」、すなわち組合せポジションの残高に組み入れるヘッジ対象原資産商品の残高は、複数のヘッジ対象原資産商品の残高を組み合わせた残高でもよい。例えば、日経225先物の場合には、大阪証券取引所、シンガポール国際金融取引所(SIMEX)、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の商品を組み合わせること等ができる。このように複数のヘッジ対象原資産商品の残高を組み合わせる祭に、数量残高で合計するときは、それぞれの乗数(取引単位の倍率)が相違する場合には、乗数の比を考慮して合計する必要があり、それぞれの残高に乗数の比を乗じることにより、いずれかのヘッジ対象原資産商品の数量ベースに統一してから組み合わせる(合計する)ことが必要である。また、複数のヘッジ対象原資産商品の数量残高の全てをそれぞれの時価単価を用いて金額ベースに換算してから、金額残高を合計してもよい。さらに、ヘッジ対象原資産商品は、常に1つまたは複数の特定のヘッジ対象原資産商品に固定しておく必要はなく、時間の経過とともに、ヘッジ対象原資産商品を入れ替えていってもよい。
また、「閾値」は、数量または金額のいずれにより定められていてもよいが、「合計残高」が数量残高で示され、「閾値」が金額で定められている場合には、「閾値」をヘッジ対象原資産商品の時価単価(為替の考慮を含む場合もある。以下、同様である。)を用いて数量に換算し、数量ベースで「ヘッジ実施条件」の成否を判断するか、または「合計残高」をヘッジ対象原資産商品の時価単価を用いて金額に換算し、金額ベースで「ヘッジ実施条件」の成否を判断すればよい。逆に、「合計残高」が金額残高で示され、「閾値」が数量で定められている場合には、「閾値」をヘッジ対象原資産商品の時価単価を用いて金額に換算し、金額ベースで「ヘッジ実施条件」の成否を判断するか、または「合計残高」をヘッジ対象原資産商品の時価単価を用いて数量に換算し、数量ベースで「ヘッジ実施条件」の成否を判断すればよい。
さらに、「ヘッジ実施条件」の成否が、数量ベースで判断された場合には、数量で示された「合計残高」を用いて、ヘッジ対象原資産商品の注文数量(売り数量または買い数量)を決定すればよく、「ヘッジ実施条件」の成否が、金額ベースで判断された場合には、金額で示された「合計残高」を用いて、ヘッジ対象原資産商品の注文金額(売り金額または買い金額)を決定し、この金額をヘッジ対象原資産商品の時価単価を用いて数量に換算し、注文数量(売り数量または買い数量)を決定すればよい。
このような本発明のCFDヘッジ処理システムにおいては、CFDの残高と、これに対応するヘッジ対象原資産商品の残高との合計残高を算出することにより、CFDポジションとヘッジポジションとの組合せポジションを構築し、この組合せポジションの残高についての処理当日初期状態からの変化分が閾値に達したときにヘッジを実施する。
このため、閾値に達しないうちは、ヘッジを実施しないことから、すなわち閾値までのリスクは許容し、幅を持ったリスク管理を行うことから、従来のような顧客の1回のCFD注文に対してヘッジ注文の発注を1回行うという1対1のヘッジ処理の場合に比べ、ヘッジ対象原資産商品取引市場へのヘッジ注文の発注回数や発注数量を削減することが可能となるので、マーケットメーカの保有リスクを極小化したままで、ヘッジ注文の発注回数や発注数量を適正にコントロールし、マーケットメーカが支払う場口銭を軽減することや、マーケットインパクトを軽減することが可能となる。
そして、閾値に達しないうちは、ヘッジを実施しないことから、顧客によるCFDの売り注文と買い注文とが、うまく対等(ネッティング)したときには、売りのヘッジ発注と買いのヘッジ発注とを行わないようにすることが可能となる。従って、売りのヘッジ発注と買いのヘッジ発注との繰り返しによりマーケットメーカに生じる、売り値(安い)と買い値(高い)との差額に起因する損失を抑制することが可能となる(売買対等・ネッティング効果)。
また、異なる残高管理体系を組み合わせてなる組合せポジションの残高管理を行うことにより、ヘッジの実施タイミングやヘッジ注文の発注数量をコントロールするので、ヘッジ必要数量を変化させる複数の要因を統括して管理することができるため、より安定したヘッジ残高のコントロールが可能となる。例えば、ヘッジ売りをして組合せポジションの残高を減らしている最中に、顧客によるCFDの買いがあり、これによりマーケットメーカのCFDの売りが約定することで、組合せポジションの残高が減ることもあり、そうなれば、その分だけヘッジ売りをする必要がなくなるので、同時並行的に生じる複数の要因で変化する組合せポジションの残高を管理することにより、ヘッジの発注回数や発注数量を抑えることが可能となる。そして、このことによっても、マーケットメーカが支払う場口銭を軽減することができるようになり、また、ヘッジ対象原資産商品が株式の場合には、空売り機会を減らし、法令違反となるような空売りリスクを生じないようにすることも可能となる。
さらに、異なる残高管理体系を組み合わせてなる組合せポジションの残高管理を行うことにより、ヘッジの実施タイミングやヘッジ注文の発注数量をコントロールするので、CFDの商品種別とヘッジ対象原資産商品の商品種別との対応関係の多様化も容易に実現可能となる。すなわち、株式CFDに対して株式でヘッジしたり、株価指数先物CFDに対して株価指数先物でヘッジするのではなく、例えば、株価指数先物CFDの売りの約定に対し、現物株をヘッジ買いして保有するというようなヘッジコントロールも容易に行うことが可能となり、これらにより前記目的が達成される。
また、前述したCFDヘッジ処理システムにおいて、パラメータ記憶手段は、閾値に加え、ヘッジ必要数量若しくはその相当金額のうちヘッジを実施せずにマーケットメーカの内部に留保しておく数量若しくは金額として定められ、またはこれらの数量若しくは金額を算出するための閾値に対する割合として定められた留保値も、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報またはこれに対応するCFDの銘柄識別情報と関連付けて記憶する構成とされ、ヘッジコントロール処理手段は、ヘッジ実施条件が成立した場合に、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値から、パラメータ記憶手段に記憶された留保値を減じた数量または金額を、ヘッジ対象原資産商品の売り数量若しくは金額または買い数量若しくは金額として決定する処理を実行する構成とされていることが望ましい。
このようにヘッジを留保値まで実施する構成とした場合には、合計残高についての処理当日初期状態からの変化量がゼロになるまでヘッジを実施する場合に比べ、ヘッジの発注数量を減らすことができるので、より一層、場口銭を軽減することができるようになり、また、ヘッジ対象原資産商品が株式の場合には、空売り機会を減らし、法令違反となるような空売りリスクを生じないようにすることが可能となる。
また、合計残高についての処理当日初期状態からの変化量がゼロになるまで積極的にヘッジを実施しなくても、その後、顧客のCFD注文が行われることにより、合計残高についての処理当日初期状態からの変化量がゼロに近づくこともあり得るので、ヘッジの発注数量を抑えつつ、組合せポジションの残高を最適な状態に戻すことが可能となる。例えば、合計残高についての処理当日初期状態からの変化量(プラス値)が留保値になるまでヘッジ売りを行った後に、顧客によるCFDの買いがあり、これによりマーケットメーカのCFDの売りが約定することで、合計残高が減って合計残高についての処理当日初期状態からの変化量がゼロに近づくことがある。また、合計残高についての処理当日初期状態からの変化量(マイナス値)の絶対値が留保値になるまでヘッジ買いを行った後に、顧客によるCFDの売りがあり、これによりマーケットメーカのCFDの買いが約定することで、合計残高が増えて合計残高についての処理当日初期状態からの変化量がゼロに近づくことがある。
さらに、前述したCFDヘッジ処理システムにおいて、パラメータ記憶手段は、閾値および留保値に加え、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文の1回の発注での売り数量または買い数量の上限数量として定められたヘッジ上限数量も、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報またはこれに対応するCFDの銘柄識別情報と関連付けて記憶する構成とされ、ヘッジコントロール処理手段は、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文を複数回に分けて市場へ発注するために、パラメータ記憶手段に記憶されたヘッジ上限数量の範囲内で、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文の1回の発注でのヘッジ対象原資産商品の売り数量または買い数量を決定し、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値が、パラメータ記憶手段に記憶された留保値になるまで、前回発注した注文が約定すると、次の注文の発注を決定する処理を繰り返す構成とされていることが望ましい。
このようにヘッジ上限数量の範囲内でヘッジを複数回に分けて実施する構成とした場合には、マーケットインパクトを、より一層抑えることが可能となる。また、複数回に分けてヘッジ発注を繰り返している最中に、顧客によるCFD注文があり、合計残高についての処理当日初期状態からの変化量の絶対値が、留保値に近づくこともあり、そうなれば、その分だけヘッジ発注をする必要がなくなるので、ヘッジの発注数量を抑えることが可能となり、株式でのヘッジ売りを複数回に分けて実施している場合には、空売り機会を減らし、法令違反となるような空売りリスクを生じないようにすることも可能となる。
そして、前述したCFDヘッジ処理システムにおいて、パラメータ記憶手段は、閾値および留保値に加え、空売り規制対象となる売りが許容される限度数量または限度金額として定められた空売り許容値も、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報またはこれに対応するCFDの銘柄識別情報と関連付けて記憶する構成とされ、ヘッジコントロール処理手段は、ヘッジポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品のヘッジ処理後の残高のマイナス値の絶対値が、パラメータ記憶手段に記憶された空売り許容値を超えない範囲で、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定する処理を実行する構成とされていることが望ましい。
このように空売り許容値を超えない範囲でヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定する構成とした場合には、空売り規制を確実に遵守することが可能となる。すなわち、合計残高についての処理当日初期状態からの変化量が留保値になるまでヘッジを行うというヘッジコントロール(組合せポジションの残高のコントロール)だけにより、ヘッジ数量やヘッジ金額を決定すると、空売り規制によりヘッジすることができない数量分や金額分が生じる可能性があるが、組合せポジションの残高だけでなく、ヘッジポジションの残高についてもコントロール対象とすれば、そのような不都合を生じることなく、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定することが可能となる。
また、上記のように空売り許容値を超えない範囲でヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定する構成とする場合において、ヘッジポジション記憶手段は、ヘッジ注文送信処理手段により買い注文の発注データをヘッジ対象原資産商品取引市場システムへ送信した際に更新されるヘッジ対象原資産商品の買い数量から、ヘッジ注文送信処理手段により売り注文の発注データをヘッジ対象原資産商品取引市場システムへ送信した際に更新されるヘッジ対象原資産商品の売り数量を減じたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の数量または金額の第1の残高、および、ヘッジ約定受付処理手段により買い注文の約定データをヘッジ対象原資産商品取引市場システムから受信した際に更新されるヘッジ対象原資産商品の買い数量から、ヘッジ注文送信処理手段により売り注文の発注データをヘッジ対象原資産商品取引市場システムへ送信した際に更新されるヘッジ対象原資産商品の売り数量を減じたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の数量または金額の第2の残高を、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報と関連付けて記憶する構成とされ、ヘッジコントロール処理手段は、CFDポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するCFDの残高とこのCFDの銘柄識別情報に対応するヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてヘッジポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の第1の残高との合計残高を算出し、この第1の残高を用いた合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値として示されるヘッジ必要数量またはその相当金額が、パラメータ記憶手段に記憶された閾値を超過したか否か、または閾値以上になったか否かというヘッジ実施条件の成否を判断し、ヘッジ実施条件が成立した場合に、第1の残高を用いた合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がプラス値であれば、CFDポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するCFDの残高とこのCFDの銘柄識別情報に対応するヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてヘッジポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の第2の残高との合計残高を算出し、この第2の残高を用いた合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値から、パラメータ記憶手段に記憶された留保値を減じた数量または金額を、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額として決定するとともに、ヘッジ対象原資産商品のヘッジ処理後の第2の残高のマイナス値の絶対値が、パラメータ記憶手段に記憶された空売り許容値を超えない範囲で、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定し、ヘッジ実施条件が成立した場合に、第1の残高を用いた合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がマイナス値であれば、第1の残高を用いた合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値から、パラメータ記憶手段に記憶された留保値を減じた数量または金額を、ヘッジ対象原資産商品の買い数量または金額として決定する処理を実行する構成とされていることが望ましい。
このようにヘッジ注文の注文時と約定時とを区別してヘッジ対象原資産商品の残高の更新管理を行う構成とした場合には、空売り許容値を超えない範囲で、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定するに際し、より安全サイドの残高を使用して決定を行うことが可能となり、空売り規制を、より一層確実に遵守することが可能となる。
さらに、前述したCFDヘッジ処理システムにおいて、CFD気配用注文送信処理手段は、ヘッジポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の残高、およびパラメータ記憶手段に記憶された空売り許容値を用いて、CFD気配数量を算出し、算出したCFD気配数量を含むCFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行する構成とされていることが望ましい。
このようにCFD気配用注文送信処理手段により空売り許容値を用いてCFD気配数量を算出する構成とした場合には、ヘッジ対象原資産商品の保有残高に、空売り許容値の分を加えて、ヘッジ売りすることが可能な数量を算出決定し、この数量を上限として、マーケットメーカによるCFDのビッドの数量(買気配数量)を提示することができるので、より適切な気配提示を行うことが可能となる。
また、前述したCFDヘッジ処理システムにおいて、CFD取引市場システムまたはその他の相場情報提供システムから通信回線を介して他のマーケットメーカによるCFD気配用注文を含む全てのCFD気配用注文により形成されたCFDの気配情報を取得する処理を実行するCFD気配情報取得処理手段と、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムまたは相場情報提供システムから通信回線を介してヘッジ対象原資産商品の相場情報若しくは原資産の指数データを取得する処理を実行する相場情報取得処理手段とを備え、CFD気配用注文送信処理手段は、相場情報取得処理手段により取得したヘッジ対象原資産商品の相場情報若しくは原資産の指数データを用いて、CFD気配用注文の注文データを構成するCFD売気配値およびCFD買気配値を算出するとともに、算出したCFD売気配値を、CFD気配情報取得処理手段により取得したCFDの気配情報のうちの最良買気配値よりも高い値に補正し、算出したCFD買気配値を、CFD気配情報取得処理手段により取得したCFDの気配情報のうちの最良売気配値よりも安い値に補正し、補正後のCFD売気配値およびCFD買気配値を含むCFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行する構成とされていることが望ましい。
このようにCFD気配用注文送信処理手段により他のマーケットメーカが提示したCFD気配情報を考慮して自己の提示するCFD売気配値およびCFD買気配値を補正する構成とした場合には、CFD取引市場において略同時期にCFDを安く買って高く売ることにより顧客が極めて短期間で容易に利益を得ることができるようなCFDの相場形成を回避し、より適切な気配提示を行うことが可能となる。
そして、前述したCFDヘッジ処理システムにおいて、端末装置からの閾値および留保値の入力設定を受け付け、パラメータ記憶手段に記憶させる処理を実行するパラメータ設定処理手段を備えた構成とすることが望ましい。
このようにパラメータ設定処理手段を備えた構成とした場合には、閾値や留保値を容易に設定変更することが可能となるので、例えば、閾値および留保値をゼロに設定することで、従来の1対1のヘッジ処理を行うシステムを実現することも可能となる。このため、1つのシステムで、複数のアルゴリズムを保有する必要がなくなるので、メンテナンス性に優れたシステムを実現することが可能となる。
また、以上に述べた本発明のCFDヘッジ処理システムにより実現されるCFDヘッジ処理方法として、以下のような本発明のCFDヘッジ処理方法が挙げられる。
すなわち、本発明は、CFD取引市場へCFD気配用注文を出してCFD売買を行うマーケットメーカのコンピュータにより構成されたCFDヘッジ処理システムで実行されるCFDヘッジ処理方法であって、CFD気配用注文送信処理手段が、CFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行し、CFD気配用注文約定受信処理手段が、CFD取引市場システムから通信回線を介して送信されてくるCFD気配用注文の約定データを受信する処理を実行し、CFD気配用注文約定受信処理手段により約定データを受信した注文分について、CFDの買い数量からCFDの売り数量を減じたマーケットメーカの保有するCFDの数量または金額の残高を、CFDの銘柄識別情報と関連付けてCFDポジション記憶手段に記憶させ、マーケットメーカがヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注しまたは当該市場で約定したヘッジ対象原資産商品の買い数量から売り数量を減じたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の数量または金額の残高を、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報と関連付けてヘッジポジション記憶手段に記憶させ、リスクを許容することができる数量または金額として定められた閾値を、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報またはこれに対応するCFDの銘柄識別情報と関連付けてパラメータ記憶手段に記憶させ、ヘッジコントロール処理手段が、CFDポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するCFDの残高とこのCFDの銘柄識別情報に対応するヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてヘッジポジション記憶手段に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の残高との合計残高を算出し、この合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値として示されるヘッジ必要数量またはその相当金額が、パラメータ記憶手段に記憶された閾値を超過したか否か、または閾値以上になったか否かというヘッジ実施条件の成否を判断し、ヘッジ実施条件が成立した場合に、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がプラス値であれば、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を売り数量としてヘッジ対象原資産商品の売り注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注すると決定し、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がマイナス値であれば、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を買い数量としてヘッジ対象原資産商品の買い注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注すると決定する処理を実行し、ヘッジ注文送信処理手段が、ヘッジコントロール処理手段による判断結果に従って、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を売り数量または買い数量としてヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文の発注データをヘッジ対象原資産商品取引市場システムへ通信回線を介して送信する処理を実行し、ヘッジ約定受付処理手段が、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムから通信回線を介して送信されてくるヘッジ対象原資産商品の約定データを受信する処理を実行することを特徴とするものである。
このような本発明のCFDヘッジ処理方法においては、前述した本発明のCFDヘッジ処理システムで得られる作用・効果がそのまま得られ、これにより前記目的が達成される。
さらに、本発明のプログラムは、前述したCFDヘッジ処理システムとして、コンピュータを機能させるためのものである。
なお、上記のプログラムまたはその一部は、例えば、光磁気ディスク(MO)、コンパクトディスク(CD)を利用した読出し専用メモリ(CD−ROM)、CDレコーダブル(CD−R)、CDリライタブル(CD−RW)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)を利用した読出し専用メモリ(DVD−ROM)、DVDを利用したランダム・アクセス・メモリ(DVD−RAM)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、ハードディスク、読出し専用メモリ(ROM)、電気的消去および書換可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)等の記録媒体に記録して保存や流通等させることが可能であるとともに、例えば、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(MAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、エクストラネット等の有線ネットワーク、あるいは無線通信ネットワーク、さらにはこれらの組合せ等の伝送媒体を用いて伝送することが可能であり、また、搬送波に載せて搬送することも可能である。さらに、上記のプログラムは、他のプログラムの一部分であってもよく、あるいは別個のプログラムと共に記録媒体に記録されていてもよい。
また、本発明は、CFD取引市場へCFD気配用注文を出してCFD売買を行うとともに、CFD取引市場でのCFD気配用注文の約定に対し、ヘッジ対象原資産商品の注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注するヘッジ処理を行うマーケットメーカのコンピュータにより構成されたCFDヘッジ処理システムであって、CFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行するCFD気配用注文送信処理手段と、CFD取引市場システムまたはその他の相場情報提供システムから通信回線を介して他のマーケットメーカによるCFD気配用注文を含む全てのCFD気配用注文により形成されたCFDの気配情報を取得する処理を実行するCFD気配情報取得処理手段と、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムまたは相場情報提供システムから通信回線を介してヘッジ対象原資産商品の相場情報若しくは原資産の指数データを取得する処理を実行する相場情報取得処理手段とを備え、CFD気配用注文送信処理手段は、相場情報取得処理手段により取得したヘッジ対象原資産商品の相場情報若しくは原資産の指数データを用いて、CFD気配用注文の注文データを構成するCFD売気配値およびCFD買気配値を算出するとともに、算出したCFD売気配値を、CFD気配情報取得処理手段により取得したCFDの気配情報のうちの最良買気配値よりも高い値に補正し、算出したCFD買気配値を、CFD気配情報取得処理手段により取得したCFDの気配情報のうちの最良売気配値よりも安い値に補正し、補正後のCFD売気配値およびCFD買気配値を含むCFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行する構成とされていることを特徴とするものである。
このような本発明のCFDヘッジ処理システムにおいては、CFD気配用注文送信処理手段により、他のマーケットメーカが提示したCFD気配情報を考慮して自己の提示するCFD売気配値およびCFD買気配値を補正するので、CFD取引市場において略同時期にCFDを安く買って高く売ることにより顧客が極めて短期間で容易に利益を得ることができるようなCFDの相場形成を回避し、適切な気配提示を行うことが可能となる。
なお、このようなCFDヘッジ処理システムにおけるCFD気配情報提示処理(CFD気配情報提示処理システム)は、前述したような閾値を用いたヘッジコントロールを行う場合のみならず、従来のように、CFD銘柄とヘッジ対象原資産商品との1対1のヘッジ処理を行う場合にも適用することができる。すなわち、CFD取引市場システムから通信回線を介して送信されてくるCFD気配用注文の約定データを受信する処理を実行するCFD気配用注文約定受信処理手段と、このCFD気配用注文約定受信処理手段によりCFD気配用注文の約定データを受信した場合に、CFDの買いの約定数量若しくは約定金額と同一若しくは同程度か、またはそれらの一部の数量若しくは金額のヘッジ対象原資産商品の売り注文の発注データを、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムへ通信回線を介して送信し、CFDの売りの約定数量若しくは約定金額と同一若しくは同程度か、またはそれらの一部の数量若しくは金額のヘッジ対象原資産商品の買い注文の発注データを、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムへ通信回線を介して送信する処理を実行するヘッジ注文送信処理手段と、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムから通信回線を介して送信されてくるヘッジ対象原資産商品の約定データを受信する処理を実行するヘッジ約定受付処理手段とを備えた構成とする場合にも、適用することができる。ここで、「同一若しくは同程度か、またはそれらの一部」における「同程度」というのは、後述する図12のような価格の調整幅程度の相違はあるという意味であり、「一部」というのは、約定数量若しくは約定金額の全部ではなく、一部についてのヘッジでもよいという意味であり、一部は、約定数量若しくは約定金額に対する比率で定めてもよく、固定値(固定数量若しくは固定金額)を差し引いて定めてもよい。
さらに、本発明は、CFD取引市場へCFD気配用注文を出してCFD売買を行うとともに、CFD取引市場でのCFD気配用注文の約定に対し、ヘッジ対象原資産商品の注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注するヘッジ処理を行うマーケットメーカのコンピュータにより構成されたCFDヘッジ処理システムで実行されるCFDヘッジ処理方法であって、CFD気配用注文送信処理手段が、CFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行し、CFD気配情報取得処理手段が、CFD取引市場システムまたはその他の相場情報提供システムから通信回線を介して他のマーケットメーカによるCFD気配用注文を含む全てのCFD気配用注文により形成されたCFDの気配情報を取得する処理を実行し、相場情報取得処理手段が、ヘッジ対象原資産商品取引市場システムまたは相場情報提供システムから通信回線を介してヘッジ対象原資産商品の相場情報若しくは原資産の指数データを取得する処理を実行し、CFD気配用注文送信処理手段がCFD気配用注文の注文データの送信処理を実行する際には、相場情報取得処理手段により取得したヘッジ対象原資産商品の相場情報若しくは原資産の指数データを用いて、CFD気配用注文の注文データを構成するCFD売気配値およびCFD買気配値を算出するとともに、算出したCFD売気配値を、CFD気配情報取得処理手段により取得したCFDの気配情報のうちの最良買気配値よりも高い値に補正し、算出したCFD買気配値を、CFD気配情報取得処理手段により取得したCFDの気配情報のうちの最良売気配値よりも安い値に補正し、補正後のCFD売気配値およびCFD買気配値を含むCFD気配用注文の注文データを、通信回線を介してCFD取引市場システムへ送信する処理を実行することを特徴とするものである。
このような本発明のCFDヘッジ処理方法(CFD気配情報提示処理方法)においては、前述した本発明のCFDヘッジ処理システム(CFD気配情報提示処理システム)で得られる作用・効果がそのまま得られる。
以上に述べたように本発明によれば、CFDの残高と、これに対応するヘッジ対象原資産商品の残高との合計残高を算出することにより、CFDポジションとヘッジポジションとの組合せポジションを構築し、この組合せポジションの残高についての処理当日初期状態からの変化分が閾値に達したときにヘッジを実施するので、マーケットメーカの保有リスクを極小化したままで、ヘッジ注文の発注回数や発注数量を適正にコントロールし、マーケットメーカが支払う場口銭を軽減することができ、また、マーケットインパクトを抑えることができるという効果がある。
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本実施形態のCFDヘッジ処理システム20を含むCFD売買システム10の全体構成が示されている。図2には、CFD気配情報記憶手段40の構成の一例が示され、図3には、CFDポジション記憶手段41の構成の一例が示され、図4には、ヘッジポジション記憶手段42の構成の一例が示され、図5には、組合せポジションの算出例が示され、図6には、パラメータ記憶手段43の構成の一例が示されている。また、図7には、CFDヘッジ処理システム20によるヘッジ処理の流れがフローチャートで示され、図8は、ヘッジを実施するか否かの判断処理の説明図であり、図9は、ヘッジ数量の決定処理の説明図であり、図10には、ヘッジポジションの推移の例が示され、図11には、組合せポジションの推移の例が示されている。さらに、図12は、CFD気配値の決定に関する説明図であり、図13は、CFD気配値の補正に関する説明図である。
図1において、CFD売買システム10は、マーケットメーカM1(自社)を含む複数のマーケットメーカがCFD取引市場へCFDの気配情報(買気配値および買気配数量からなるビッド情報、並びに、売気配値および売気配数量からなるオファー情報)の提示用の注文(CFD気配用注文)を出し、一方、顧客によるCFDの売買注文をCFD取扱業者がCFD取引市場へ取り次ぎ、CFD取引市場において、これらのマーケットメーカによるCFD気配用注文と、顧客の注文とを約定させるとともに、CFDの約定に伴うマーケットメーカのCFDの保有リスクを回避するために、マーケットメーカが、ヘッジ対象原資産商品取引市場でヘッジを行うためのシステムである。CFD取扱業者は、例えば、個人顧客向けの営業(リテール)を行う証券会社等の金融機関であり、マーケットメーカは、例えば、企業向けの営業(ホールセール)を行う証券会社等の金融機関であるが、これらは金融機関に限定されず、例えば、商社等の企業であってもよい。
ここで、CFDは、原資産の価値変動に連動する商品としてCFD取引市場で提供される金融商品(CFD取引市場がCFD取引所であれば、上場CFDということになる。)であるが、このCFDの商品種別により、CFDと、原資産(金融商品ではなく、金融指標である場合もある。)と、ヘッジ対象原資産商品(ヘッジに用いられる金融商品)との関係には、次のようなものがある。例えば、株式CFD(例えば、α社株CFD)の場合は、原資産が株式(例えば、α社株)であるが、ヘッジ対象原資産商品は、同銘柄の株式(例えば、α社株)とすることができる。また、株価指数先物CFD(例えば、日経225指数先物CFD)の場合は、原資産が株価指数先物(例えば、日経225指数先物)であるが、ヘッジ対象原資産商品は、同銘柄の株価指数先物(例えば、日経225指数先物)としたり、あるいは株価指数を構成する全銘柄(例えば、日経225銘柄全部)とすることができる。さらに、株価指数CFD(例えば、日経225指数CFD)の場合は、原資産が金融商品ではない株価指数(例えば、日経225指数)であるが、ヘッジ対象原資産商品は、株価指数先物(例えば、日経225指数先物)としたり、あるいは株価指数を構成する全銘柄(例えば、日経225銘柄全部)とすることができる。本実施形態では、具体例として、主として株式CFDの場合(原資産およびヘッジ対象原資産商品が、同銘柄の株式である場合)および株価指数CFDの場合(原資産が株価指数であり、ヘッジ対象原資産商品がその株価指数の先物である場合)について説明するが、本発明は、これら以外の種別のCFDにも適用することができる。
また、CFD取引市場は、CFDの売買取引を取り扱っている市場という意味であり、少なくともCFDを取り扱っていればよく、その他の金融商品を取り扱っていてもよい。同様に、ヘッジ対象原資産商品取引市場は、ヘッジ対象原資産商品の売買取引を取り扱っている市場という意味であり、少なくともヘッジ対象原資産商品を取り扱っていればよく、その他の金融商品を取り扱っていてもよい。
図1において、CFD売買システム10は、マーケットメーカM1が運用・管理するCFDヘッジ処理システム20と、このCFDヘッジ処理システム20と通信回線1で接続されたCFD取引市場システム50とを備えている。CFDヘッジ処理システム20には、通信回線2を介してヘッジ対象原資産商品取引市場システム60が接続されるとともに、通信回線3を介してマーケットメーカM1の担当者(例えば、ディーラ等)が操作する端末装置70が接続されている。なお、CFD取引市場システム50には、図示されない他のマーケットメーカM2,M3,M4…が運用・管理するCFDヘッジ処理システムが接続されているが、これらの他のマーケットメーカM2等のCFDヘッジ処理システムは、本発明のCFDヘッジ処理システムを採用していてもよく、あるいは本発明のCFDヘッジ処理システムを採用せずに、異なるヘッジ処理を行っていてもよく、さらには、他のマーケットメーカM2等については、ヘッジ処理を行っているか否かは不問であり、ヘッジ処理を行っていなくてもよい。また、顧客またはその入力代行者(例えば、CFD取扱業者の営業員やオペレータ等)が操作する端末装置80には、通信回線4を介してCFD取扱業者のシステム90が接続され、さらに、CFD取扱業者のシステム90には、通信回線5を介してCFD取引市場システム50が接続されている。なお、図示は省略されているが、CFD取引市場へCFDの売買注文を出す顧客またはその入力代行者の操作する端末装置80は、多数存在し、また、それらの端末装置80からの各顧客の注文をCFD取引市場へ取り次ぐCFD取扱業者も、1社に限らず、複数社存在してもよいので、CFD取引市場システム50には、複数のCFD取扱業者のシステム90が接続されていてもよい。
ここで、CFDヘッジ処理システム20とCFD取引市場システム50とを接続する通信回線1は、通常は専用線であるが、ネットワークとしてもよい。なお、CFDヘッジ処理システム20とCFD取引市場システム50との間には、図示されない相場情報提供システムが介在する通信経路も存在するので、実際には、複数の通信経路が形成されることになるが、説明の便宜上、それらをまとめて通信回線1として説明している。また、CFDヘッジ処理システム20とヘッジ対象原資産商品取引市場システム60とを接続する通信回線2も、通常は専用線であるが、ネットワークとしてもよい。さらに、CFDヘッジ処理システム20と端末装置70とを接続する通信回線3は、例えばLANやイントラネット等のネットワークであり、端末装置80とCFD取扱業者のシステム90とを接続する通信回線4は、例えばインターネットやイントラネット等のネットワークである。そして、CFD取扱業者のシステム90とCFD取引市場システム50とを接続する通信回線5は、通常は専用線であるが、ネットワークとしてもよい。
CFDヘッジ処理システム20は、1台または複数台のコンピュータにより構成され、CFD気配情報取得処理手段21と、CFD気配用注文送信処理手段22と、CFD気配用注文約定受信処理手段23と、相場情報取得処理手段24と、ヘッジコントロール処理手段25と、ヘッジ注文送信処理手段26と、ヘッジ約定受付処理手段27と、パラメータ設定処理手段28と、CFD気配情報記憶手段40と、CFDポジション記憶手段41と、ヘッジポジション記憶手段42と、パラメータ記憶手段43とを含んで構成されている。
CFD気配情報取得処理手段21は、CFD取引市場システム50から図示されない相場情報提供システム経由で通信回線1を介して、マーケットメーカM1(自社)および他のマーケットメーカM2等(他社)によるCFD気配用注文を含む全てのCFD気配用注文により形成された各CFD銘柄の気配情報(買気配値および買気配数量からなるビッド情報、並びに、売気配値および売気配数量からなるオファー情報)を含む各CFD銘柄の相場情報(各CFD銘柄毎の時価単価、板情報、出来高等)を取得し、各CFDの銘柄識別情報(銘柄コード)と関連付けて図示されないCFD相場情報記憶手段に記憶させるとともに、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)の時価単価を更新する処理を実行するものである。
なお、CFD気配情報取得処理手段21は、CFD取引市場システム50以外の相場情報提供システム(不図示)、例えば、1次情報源であるCFD取引市場システム50から取得した相場情報を提供する2次情報源である情報ベンダーのシステム等(より具体的には、例えば、ロイター社相場報道システム等)から、各CFD銘柄の相場情報を取得しているが、CFD取引市場システム50自体から直接に各CFD銘柄の相場情報を取得することができる場合には、直接に取得してもよい。
CFD気配用注文送信処理手段22は、CFD気配用注文の注文データ(CFDの銘柄識別情報、マーケットメーカM1(自社)を示すマーケットメーカ識別情報、買気配値および買気配数量からなるビッド情報、並びに、売気配値および売気配数量からなるオファー情報を含む。)を作成し、作成したCFD気配用注文の注文データを、通信回線1を介してCFD取引市場システム50へ送信するとともに、送信したCFD気配用注文の注文データのビッド情報(買気配値、買気配数量)およびオファー情報(売気配値、売気配数量)を、マーケットメーカM1(自社)が直近に提示したビッド情報(買気配値、買気配数量)およびオファー情報(売気配値、売気配数量)として、CFDの銘柄識別情報と関連付けてCFD気配情報記憶手段40(図2参照)に記憶させる処理を実行するものである。なお、ビッド情報とオファー情報とは、別々の注文データとして送信してもよい。
この際、CFD気配用注文送信処理手段22は、後述する相場情報取得処理手段24により取得して図示されないヘッジ対象原資産商品相場情報記憶手段に記憶されているヘッジ対象原資産商品の相場情報または図示されない指数データ記憶手段に記憶されている原資産の指数データを用いて、CFD気配用注文の注文データを構成するCFD売気配値およびCFD買気配値を算出する。また、CFD気配用注文送信処理手段22は、算出したCFD売気配値を、CFD気配情報取得処理手段21により取得して図示されないCFD相場情報記憶手段に記憶されている各マーケットメーカのCFD気配情報のうちの最良買気配値よりも高い値に補正し、一方、算出したCFD買気配値を、CFD気配情報取得処理手段21により取得して図示されないCFD相場情報記憶手段に記憶されている各マーケットメーカのCFD気配情報のうちの最良売気配値よりも安い値に補正し、補正後のCFD売気配値やCFD買気配値を含むCFD気配用注文の注文データを作成し、作成したCFD気配用注文の注文データを、通信回線1を介してCFD取引市場システム50へ送信する。
より具体的には、CFD気配用注文送信処理手段22は、図12に示すように、[1]ヘッジ対象原資産商品が指数先物であり、この指数先物の相場情報を用いて指数CFDの気配情報を提示する場合には、指数先物の相場情報のうちの最良売気配値PH1に、当該指数CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されているトレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2を加算し、続いて、当該指数CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43に記憶されているフューチャーベーシスFBを減算し(但し、後述するように加算する場合もある。)、さらに、当該指数CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43に記憶されている裁量調整スプレッドS3を加算することにより、当該指数CFDの売気配値PC1=PH1+S2−FB+S3を算出する。一方、指数先物の相場情報のうちの最良買気配値PH2から、トレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2を減算し、続いて、フューチャーベーシスFBを減算し(但し、後述するように加算する場合もある。)、さらに、裁量調整スプレッドS3を減算することにより、当該指数CFDの買気配値PC2=PH2−S2−FB−S3を算出する。なお、この[1]の場合は、原資産である指数のデータから提示用の気配情報を作成するわけではないので、後述するインデックススプレッドS1は用いていない。また、双方からフューチャーベーシスFBを減算する(但し、後述するように加算する場合もある。)のは、先物価格から現物価格へ換算するためである。
ここで、トレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2は、ヘッジ対象原資産商品のヘッジ注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注する際に要する手数料(場口銭等)やヘッジリスク等の理論計算値である。フューチャーベーシスFBは、現物価格と先物価格との差額であり、加減両方がある。先物理論価格の算出式は、例えば、先物理論価格=日経平均株価×{1+(短期金利−配当利回り)×(限月取引決済までの日数÷365)}=日経平均株価+日経平均株価×(短期金利−配当利回り)×(限月取引決済までの日数÷365)であり、フューチャーベーシスFBは、先物理論価格と日経平均株価との差額であるから、第2項を指すため、短期金利と配当利回りの大小により、減算する場合もあり、加算する場合もある。すなわち、短期金利が配当利回りよりも大きい場合には、第2項は、プラス値となり、先物理論価格が日経平均株価よりも大きくなるので、先物価格から現物価格への換算時には、フューチャーベーシスFBを減算することになる。一方、短期金利が配当利回りよりも小さい場合には、第2項は、マイナス値となり、先物理論価格が日経平均株価よりも小さくなるので、先物価格から現物価格への換算時には、フューチャーベーシスFBを加算することになる。もっとも、フューチャーベーシスFBである第2項を、絶対値で考えるのではなく、符号も含めて考えれば、常に減算ということになる。後者の場合は、第2項がマイナス値となるので、マイナス値を減算すると考えれば、フューチャーベーシスFBの絶対値を加算することになるからである。裁量調整スプレッドS3は、マーケットメーカM1のトレーダが裁量で決める調整値である。
また、CFD気配用注文送信処理手段22は、図12に示すように、[2]原資産である指数のデータを用いて、指数CFDの気配情報を提示する場合には、指数のデータPGに、当該指数CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されているインデックススプレッドS1の1/2を加算し、続いて、当該指数CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43に記憶されているトレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2を加算し、さらに、当該指数CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43に記憶されている裁量調整スプレッドS3を加算することにより、当該指数CFDの売気配値PC1=PG+S1/2+S2+S3を算出する。一方、指数のデータPGから、インデックススプレッドS1の1/2を減算し、続いて、トレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2を減算し、さらに、裁量調整スプレッドS3を減算することにより、当該指数CFDの買気配値PC2=PG−S1/2−S2−S3を算出する。なお、この[2]の場合は、現物価格から現物価格を求めていることになるので、フューチャーベーシスFBは用いていない。また、指数CFDの気配情報を提示する場合に、ヘッジ対象原資産商品が指数先物であれば、前述した[1]の場合のように、ヘッジ対象原資産商品である指数先物の相場情報を用いて指数CFDの気配値を算出してもよく、あるいは、この[2]の場合のように、ヘッジ対象原資産商品である指数先物の相場情報ではなく、原資産である指数のデータを用いて指数CFDの気配値を算出してもよく、要するに、気配値の算出の基準となる情報は、ヘッジ対象原資産商品の相場情報である必要はなく、何を基準に気配を出すかということと、何でヘッジするかということとは、切り離して考えてよい。
ここで、インデックススプレッドS1は、1本値である指数のデータから、擬似的に売気配値および買気配値を作り出すための値である。
さらに、CFD気配用注文送信処理手段22は、図12に示すように、[3]ヘッジ対象原資産商品(株式)の相場情報を用いて、株式CFDの気配情報を提示する場合、およびヘッジ対象原資産商品(指数先物)の相場情報を用いて、指数先物CFDの気配情報を提示する場合には、株式や指数先物の相場情報のうちの最良売気配値PH1に、当該CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されているトレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2を加算し、続いて、当該CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43に記憶されている裁量調整スプレッドS3を加算することにより、当該CFDの売気配値PC1=PH1+S2+S3を算出する。一方、株式や指数先物の相場情報のうちの最良買気配値PH2から、トレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2を減算し、続いて、裁量調整スプレッドS3を減算することにより、当該CFDの買気配値PC2=PH2−S2−S3を算出する。なお、この[3]の場合は、株式CFDであれば、現物価格から現物価格を求めていることになり、指数先物CFDであれば、先物価格から先物価格を求めていることになるので、フューチャーベーシスFBは用いていない。また、原資産である指数のデータから提示用の気配情報を作成するわけではないので、インデックススプレッドS1も用いていない。
そして、CFD気配用注文送信処理手段22は、図12に示すようして決定したCFDの売気配値PC1および買気配値PC2について、図13に示すようにして補正を行う。[1]CFDの売気配値PC1を補正する場合は、例えば、マーケットメーカM1(自社)の提示するCFDの売気配値PC1が100円、買気配値PC2が80円であり、一方、マーケットメーカM2等(他社)を含む全てのマーケットメーカの提示する最良売気配値が100円、最良買気配値が90円であるとする。このとき、マーケットメーカM2等(他社)を含む全てのマーケットメーカの提示する最良買気配値が90円から110円に変化したとすると、顧客は、CFDを100円で買って直ぐに110円で売ることができ、短期間で容易に利益を得ることができる状態となってしまう。マーケットメーカのCFD気配用注文同士は約定しないので、このような状態になり得る。そこで、この状態を回避するために、CFD気配情報取得処理手段21により最良買気配値が110円に変化したという情報を取得したときに、マーケットメーカM1(自社)の提示するCFDの売気配値PC1を、100円から、110円に例えば1ティック分を加算した値段に補正する。例えば、1ティック=1円とすれば、100円から111円に補正する。変化後の最良買気配値の110円に何ティック分の金額を加算するかは、当該CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されている補正時の調整値を用いる。
また、[2]CFDの買気配値PC2を補正する場合は、例えば、マーケットメーカM1(自社)の提示するCFDの売気配値PC1が110円、買気配値PC2が90円であり、一方、マーケットメーカM2等(他社)を含む全てのマーケットメーカの提示する最良売気配値が100円、最良買気配値が90円であるとする。このとき、マーケットメーカM2等(他社)を含む全てのマーケットメーカの提示する最良売気配値が100円から80円に変化したとすると、顧客は、CFDを80円で買って直ぐに90円で売ることができ、短期間で容易に利益を得ることができる状態となってしまう。そこで、この状態を回避するために、CFD気配情報取得処理手段21により最良売気配値が80円に変化したという情報を取得したときに、マーケットメーカM1(自社)の提示するCFDの買気配値PC2を、90円から、80円から例えば1ティック分を減算した値段に補正する。例えば、1ティック=1円とすれば、90円から79円に補正する。変化後の最良売気配値の80円から何ティック分の金額を減算するかは、当該CFDの銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されている補正時の調整値を用いる。
また、CFD気配用注文送信処理手段22は、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))、およびパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶された空売り許容値Hmを用いて、CFD気配数量を算出する。
具体的には、CFD気配用注文送信処理手段22は、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカの保有するヘッジ対象原資産商品の第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))がプラス値の場合には、第2の数量残高H2と空売り許容値Hmとの合計数量(H2+Hm)が、ヘッジ売りすることができる数量であるから、この数量と同数量のCFDを買うことができるので、この数量を上限としてマーケットメーカのビッド数量(買気配数量)を提示する。第2の数量残高H2がマイナス値の場合には、空売り許容値Hmから第2の数量残高H2の絶対値を減算した数量(Hm−|H2|)=(H2+Hm)(結局、同じ式となる。)が、ヘッジ売りすることができる数量であるから、この数量を上限としてマーケットメーカのビッド数量(買気配数量)を提示する。一方、ヘッジ対象原資産商品取引市場にヘッジ対象原資産商品の売気配があれば、ヘッジ買いすることができ、従って、CFDを売ることができるので、マーケットメーカのオファー数量(売気配数量)は、任意に決定してもよい。
CFD気配用注文約定受信処理手段23は、CFD取引市場システム50から通信回線1を介して送信されてくるCFD気配用注文の約定データ(CFDの銘柄識別情報、約定数量、売買区分、約定単価等を含む。)を受信し、受信した約定データを用いてCFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)を更新し、さらに、CFD約定に伴うトリガー信号(ヘッジ実施の判断処理を開始させるための信号)を、ヘッジコントロール処理手段25に送る処理を実行するものである。
この際、CFD気配用注文約定受信処理手段23は、受信した約定データの売買区分が「買」の場合は、顧客のCFDの売り注文とマーケットメーカM1のビッド情報(買)とが約定した場合であるから、受信した約定データの約定数量を、約定したCFD銘柄についてCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶された数量(マーケットメーカM1のCFDポジションの数量残高)Cに加算し、一方、受信した約定データの売買区分が「売」の場合は、顧客のCFDの買い注文とマーケットメーカM1のオファー情報(売)とが約定した場合であるから、受信した約定データの約定数量を、約定したCFD銘柄についてCFDポジションテーブル41Aに記憶された数量(マーケットメーカM1のCFDポジションの数量残高)Cから減算する更新処理を実行する。また、CFD気配用注文約定受信処理手段23は、更新後の数量Cに約定単価または図示されないCFD相場情報記憶手段に記憶されている時価単価を乗じて数量Cの更新後の時価を算出し、数量Cの時価を更新する。
また、CFD気配用注文約定受信処理手段23は、受信した約定データの売買区分が「買」の場合は、受信した約定データの約定数量を、約定したCFD銘柄についてCFD気配情報記憶手段40(図2参照)に記憶されているビッド(買)の約定残数量(直近に提示した買気配数量のうちの未約定数量)から減算することにより、マーケットメーカM1(自社)のビッド(買)の約定残数量を更新し、一方、受信した約定データの売買区分が「売」の場合は、受信した約定データの約定数量を、約定したCFD銘柄についてCFD気配情報記憶手段40(図2参照)に記憶されているオファー(売)の約定残数量(直近に提示した売気配数量のうちの未約定数量)から減算することにより、マーケットメーカM1(自社)のオファー(売)の約定残数量を更新する。
相場情報取得処理手段24は、ヘッジ対象原資産商品取引市場システム60から通信回線2を介してヘッジ対象原資産商品の相場情報(各銘柄毎の時価単価、板情報、出来高等)を取得し、各ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報(銘柄コード)と関連付けて図示されないヘッジ対象原資産商品相場情報記憶手段に記憶させるとともに、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)の時価単価を更新する処理を実行するものである。
なお、相場情報取得処理手段24は、ヘッジ対象原資産商品取引市場システム60以外の相場情報提供システム、例えば、1次情報源であるヘッジ対象原資産商品取引市場システム60から取得した相場情報を提供する2次情報源である情報ベンダーのシステム等から、各ヘッジ対象原資産商品の相場情報を取得してもよい。また、株価指数CFDの気配情報を、株価指数を用いて作成する場合等には、相場情報取得処理手段24は、相場情報提供システムから、原資産である株価指数のデータを取得し、各株価指数の識別情報と関連付けて図示されない指数データ記憶手段に記憶させる。
ヘッジコントロール処理手段25は、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカM1のCFDの数量残高(本実施形態では、金額残高は参考値として記載している。)と、このCFDの銘柄識別情報に対応するヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカM1のヘッジ対象原資産商品の数量残高(本実施形態では、金額残高は参考値として記載している。)との合計残高(本実施形態では、数量ベースの合計値とする。)を算出することにより、図5に示すようなCFDポジションとヘッジポジションとの組合せポジションを算出形成し、この合計残高についての処理当日初期状態からの変化分の絶対値として示されるヘッジ必要数量またはその相当金額(本実施形態では、数量ベースで把握する。)が、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶された閾値Atを数量ベースに換算した閾値At(ThresholdまたはTrigger)を超過したか否か、または閾値At以上になったか否かというヘッジ実施条件の成否を判断し、ヘッジ実施条件が成立した場合に、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がプラス値であれば、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を売り数量としてヘッジ対象原資産商品の売り注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注すると決定し、合計残高についての処理当日初期状態からの変化分がマイナス値であれば、ヘッジ必要数量の少なくとも一部を買い数量としてヘッジ対象原資産商品の買い注文をヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注すると決定する処理を実行するものである。
なお、CFDの銘柄識別情報(銘柄コード)とヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報(銘柄コード)との対応関係(図5参照)は、図示されない銘柄識別情報対応関係記憶手段に記憶されている。この対応関係は、本実施形態では、株式CFDの売買を株式でヘッジしたり、指数CFDの売買を指数先物でヘッジする場合を取り扱っているので、1対1となるが、例えば、日経225指数先物CFDに対し、ヘッジ対象原資産商品を、日経225指数先物ではなく、日経225銘柄全部とする場合には、1対225になってしまうので、日経225銘柄全部をまとめて識別するための1つの銘柄識別情報を設けておくことが好ましい。この場合、ヘッジポジション記憶手段42(図4参照)に記憶させるヘッジポジションは、日経225銘柄全部をまとめて示す数量残高(例えば、日経225銘柄全部をそれぞれY株ずつ保有するときに、ヘッジ対象原資産商品の数量残高をY株とする等)で管理することができる。
具体的には、ヘッジコントロール処理手段25は、先ず、組合せポジションを算出する。この際、ヘッジコントロール処理手段25は、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカM1のCFDの数量残高(図3中の数量C)と、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカM1のヘッジ対象原資産商品の第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))との合計残高(図5中の第1の数量A1(注文時))を算出する。ここで、ヘッジ対象原資産商品の第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))は、ヘッジ対象原資産商品の買い数量を注文時に更新し、売り数量も注文時に更新して算出された数値である。
また、ヘッジコントロール処理手段25は、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカM1のCFDの数量残高(図3中の数量C)と、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカM1のヘッジ対象原資産商品の第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))との合計残高(図5中の第2の数量A2(約定時))を算出する。ここで、ヘッジ対象原資産商品の第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))は、ヘッジ対象原資産商品の買い数量は約定時に更新し、売り数量は注文時に更新して算出された数値である。
さらに、ヘッジコントロール処理手段25は、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカM1のCFDの数量残高の処理当日の初期数量Csと、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカM1のヘッジ対象原資産商品の数量残高の処理当日の初期数量Hsとを合計した合計残高(数量ベース)の処理当日の初期数量As(図5参照)を算出する。なお、これらの初期状態の数値は、処理当日の開局までに(前日までに)約定して確定している数値である。そして、ヘッジコントロール処理手段25は、合計残高A1,A2についての処理当日初期状態からの変化分(A1−As),(A2−As)を算出する。
次に、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されている閾値At(ThresholdまたはTrigger)を取得し、図示されないヘッジ対象原資産商品相場情報記憶手段に記憶されている当該銘柄の相場情報に含まれる時価単価(直近仲値とする。)を用いて、金額ベースで指定されている閾値Atを数量ベースに換算する。そして、ヘッジコントロール処理手段25は、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値として示されるヘッジ必要数量(|A1−As|)が、換算後の閾値Atを超過したか否か、または閾値At以上になったか否かというヘッジ実施条件の成否を判断する。
また、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ実施条件が成立したと判断した場合に、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶された留保値Af(AllowanceまたはFloor)を取得し、数量ベースに換算後の閾値Atに、閾値Atに対する割合で指定された留保値Afを乗じることにより、数量ベースの留保値Afを算出する。なお、数量ベースの留保値Afの算出処理は、閾値Atの数量ベースへの換算処理時に行ってもよい。
そして、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ実施条件が成立したと判断した場合に、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分(A1−As)がプラス値であれば、ヘッジ売りを実施すると判断し、合計残高A2(第2の残高H2を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A2−As|)から、数量ベースの留保値Afを減じた数量(|A2−As|−Af)を、ヘッジ対象原資産商品の売り数量として決定する。但し、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ売りを実施すると判断した場合には、ヘッジ対象原資産商品が株式であれば、図10に示すように、ヘッジ対象原資産商品のヘッジ処理後の第2の残高H2のマイナス値の絶対値が、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶された空売り許容値Hm(Available Margin Position)を超えない範囲で、ヘッジ対象原資産商品の売り数量を決定する。図10の網掛け部分は、第2の残高H2がとり得ない値を示している。すなわち、現時点(ヘッジ実施条件の成否の判断時点)でのヘッジ対象原資産商品の第2の残高H2が、プラス値である場合は、(H2+Hm)を売り数量の最大数量とし、マイナス値である場合は、(Hm−|H2|)=(H2+Hm)(結局、同じ式となる。)を売り数量の最大数量とする。従って、(|A2−As|−Af)が、(H2+Hm)を超えた場合には、(H2+Hm)しかヘッジ売りすることができない。
一方、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ実施条件が成立したと判断した場合に、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分(A1−As)がマイナス値であれば、ヘッジ買いを実施すると判断し、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A1−As|)から、数量ベースの留保値Afを減じた数量(|A1−As|−Af)を、ヘッジ対象原資産商品の買い数量として決定する。
さらに、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文を複数回に分けて市場へ発注するために、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されたヘッジ上限数量Hu(Upperbound)以内で、かつ、ヘッジ対象原資産商品が株式の場合にはパラメータ記憶手段43に記憶された単元株数U以上の範囲内で、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文の1回の発注でのヘッジ対象原資産商品の売り数量または買い数量を決定する。これは、アイスバーグ(Iceburg)の考え方を改良したものである。そして、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ売りの場合には、合計残高A2についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A2−As|)が、留保値Afになるまで、一方、ヘッジ買いの場合には、合計残高A1についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A1−As|)が、留保値Afになるまで、前回発注した注文が約定すると、次の注文の発注を決定する処理を繰り返す(図10参照)。
また、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ注文を指値注文で発注する場合には、ヘッジ売りの指値を、相場情報取得処理手段24により取得したヘッジ対象原資産商品の相場情報に含まれる板情報(ヘッジ対象原資産商品取引市場システム60の買い気配)に基づき決定し、ヘッジ買いの指値を、相場情報取得処理手段24により取得したヘッジ対象原資産商品の相場情報に含まれる板情報(ヘッジ対象原資産商品取引市場システム60の売り気配)に基づき決定する。なお、ヘッジ注文は、成行注文で発注してもよい。
ヘッジ注文送信処理手段26は、ヘッジコントロール処理手段25による判断結果に従って、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文の発注データ(ヘッジ注文の注文識別情報、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報、ヘッジコントロール処理手段25により決定された売り数量または買い数量、売買区分、および指値を含む。)を作成し、作成した発注データを、ヘッジ対象原資産商品取引市場システム60へ通信回線2を介して送信するとともに、発注したヘッジ注文の注文データを、ヘッジ注文の注文識別情報と関連付けてヘッジポジション記憶手段42のヘッジ注文テーブル42A(図4参照)に記憶させ、さらに、ヘッジ売りの場合には、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカM1のヘッジ対象原資産商品の第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))および第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))のそれぞれから、売り数量を減算する更新処理を実行し、一方、ヘッジ買いの場合には、第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))に、買い数量を加算する更新処理を実行するものである。なお、ヘッジ買いの場合には、第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))については約定時に更新するので、この注文時においては更新しない。
ヘッジ約定受付処理手段27は、ヘッジ対象原資産商品取引市場システム60から通信回線2を介して送信されてくるヘッジ対象原資産商品の約定データ(ヘッジ注文の注文識別情報、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報、約定数量、売買区分、約定価格を含む。)を受信し、約定したヘッジ注文についてヘッジ注文テーブル42A(図4参照)に記憶されているステータスを、「未約定」から「約定」に更新するとともに、ヘッジ買いの場合には、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカM1のヘッジ対象原資産商品の第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))に、買い数量を加算する更新処理を実行し、さらに、ヘッジ約定に伴うトリガー信号(ヘッジ実施の判断処理を開始させるための信号)を、ヘッジコントロール処理手段25に送る処理を実行するものである。なお、ヘッジ売りの場合には、第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))および第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))については、いずれも注文時に更新されているので、この約定時においては更新しない。また、ヘッジ買いの場合には、第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))については注文時に更新されているので、この約定時においては更新しない。
パラメータ設定処理手段28は、マーケットメーカM1の担当者(例えば、ディーラ等)の操作する端末装置70からの通信回線3を介してのパラメータ(閾値At、留保値Af、ヘッジ上限数量Hu、空売り許容値Hm、単元株数U、取引単位の倍率B、インデックススプレッドS1、トレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2、フューチャーベーシスFB、裁量調整スプレッドS3、補正時の調整値等)の入力設定を受け付け、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報と関連付けてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶させる処理を実行するものである。
CFD気配情報記憶手段40は、図2に示すように、CFDの銘柄識別情報(銘柄コード等)、マーケットメーカM1(自社)によるビッド情報(直近に提示した買気配数量、約定残数量(直近に提示した買気配数量のうちの未約定数量)、および直近に提示した買気配値)、オファー情報(直近に提示した売気配数量、約定残数量(直近に提示した売気配数量のうちの未約定数量)、および直近に提示した売気配値)を対応付けて記憶するものである。なお、図2の例では、説明の便宜上、株式CFDと指数CFDとが同じテーブルに記載されているが、CFDの商品種別毎に異なるテーブルを設けてもよい。
CFDポジション記憶手段41は、図3に示すように、CFDポジションテーブル41Aを備えている。CFDポジションテーブル41Aは、CFDの銘柄識別情報(銘柄コード等)、当日の初期数量Cs(CFDの数量残高Cについての処理当日の初期状態)、数量C(CFDの数量残高C)、時価単価、数量Cの時価(数量C×時価単価であり、指数CFDの場合には、さらに取引単位の倍率Bを乗じた値)を対応付けて記憶するものである。ここで、取引単位の倍率Bは、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されており、指数の何倍の数値を取引単位とするのかを定める倍率である。なお、図3の例では、説明の便宜上、株式CFDと指数CFDとが同じテーブルに記載されているが、CFDの商品種別毎に異なるテーブルを設けてもよい。
ヘッジポジション記憶手段42は、図4に示すように、ヘッジ注文テーブル42Aと、ヘッジポジションテーブル42Bとを備えている。ヘッジ注文テーブル42Aは、ヘッジ注文の注文識別情報、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報(銘柄コード等)、数量、売買区分、指値、注文の処理状態を示すステータス等を対応付けて記憶するものである。ヘッジポジションテーブル42Bは、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報(銘柄コード等)、当日の初期数量Hs(ヘッジ対象原資産商品の数量残高についての処理当日の初期状態)、第1の数量H1(ヘッジ対象原資産商品の数量残高であるが、買い数量を注文時に更新し、売り数量も注文時に更新した場合の数量残高)、第2の数量H2(ヘッジ対象原資産商品の数量残高であるが、買い数量は約定時に更新し、売り数量は注文時に更新した場合の数量残高)、時価単価、第1の数量H1の時価(第1の数量H1×時価単価であり、ヘッジ対象原資産商品が指数先物の場合には、さらに取引単位の倍率Bを乗じた値)、第2の数量H2の時価(第2の数量H2×時価単価であり、ヘッジ対象原資産商品が指数先物の場合には、さらに取引単位の倍率Bを乗じた値)を対応付けて記憶するものである。ここで、取引単位の倍率Bは、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されており、指数先物の何倍の数値を取引単位とするのかを定める倍率である。なお、第2の数量H2については、買い数量(残高に加算されるべき数量)が約定時に更新されるので、第2の数量H2は、常に、第1の数量H1と同じか、または第1の数量H1よりも小さい数量となる。また、図3の例では、説明の便宜上、ヘッジ対象原資産商品が株式の場合と指数先物の場合とが同じテーブルに記載されているが、ヘッジ対象原資産商品の商品種別毎に異なるテーブルを設けてもよい。
パラメータ記憶手段43は、図6に示すように、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報(銘柄コード等)、閾値At(ThresholdまたはTrigger)、留保値Af(AllowanceまたはFloor)、ヘッジ上限数量Hu(Upperbound)、空売り許容値Hm(Available
Margin Position)、単元株数U、取引単位の倍率B、インデックススプレッドS1、トレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2、フューチャーベーシスFB、裁量調整スプレッドS3、補正時の調整値等を対応付けて記憶するものである。なお、インデックススプレッドS1、トレーディングコスト・ヘッジリスクスプレッドS2、フューチャーベーシスFB、裁量調整スプレッドS3、補正時の調整値は、金額でもよく、CFD気配値の算出の基準となる金額等の何らかの金額に対する割合でもよい。
以上において、各処理手段21〜28は、CFDヘッジ処理システム20を構成するコンピュータ本体の内部に設けられた中央演算処理装置(CPU)、およびこのCPUの動作手順を規定する1つまたは複数のプログラムにより実現される。
また、各記憶手段40〜43は、例えばハードディスク等により好適に実現されるが、記憶容量やアクセス速度等に問題が生じない範囲であれば、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリ、RAM、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、FD、磁気テープ、あるいはこれらの組合せ等を採用してもよい。
さらに、CFDヘッジ処理システム20は、1台のコンピュータあるいは1つのCPUにより実現されるものに限定されず、複数のコンピュータあるいは複数のCPUで分散処理を行うことにより実現されるものであってもよい。
CFD取引市場システム50は、コンピュータにより構成されたCFDを取り扱う金融商品の取引市場システムであり、例えば、取引所システム、私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)等である。
CFD取引市場システム50は、マーケットメーカM1が運用・管理するCFDヘッジ処理システム20から、通信回線1を介して送信されてくるマーケットメーカM1の提示するCFD気配用注文の注文データ(買気配数量および買気配値からなるビッド情報、並びに、売気配数量および売気配値からなるオファー情報を含む。)や、他のマーケットメーカM2等が運用・管理する図示されないCFDヘッジ処理システムから、通信回線を介して送信されてくる他のマーケットメーカM2等の提示するCFD気配用注文(買気配数量および買気配値からなるビッド情報、並びに、売気配数量および売気配値からなるオファー情報を含む。)を受信するとともに、顧客によるCFDの売買注文を受け付けたCFD取扱業者のシステム90から、通信回線5を介して送信されてくる顧客のCFDの注文データ(注文識別情報、顧客識別情報、CFDの銘柄識別情報、注文数量、売買区分、指値を含む。)を受信し、これらの複数のマーケットメーカM1,M2,…の提示するCFD気配用注文の注文データと、顧客のCFDの注文データとを用いて、図2に示すようなCFD板情報をCFD銘柄毎に算出形成し、マーケットメーカのCFD気配用注文と顧客のCFD注文とを約定させる処理を実行するものである。
この際、CFD取引市場システム50が注文を約定させる処理は、既存の取引市場で行われている処理と同様であり、顧客の未約定の買いのCFD注文データと、各マーケットメーカによるオファー情報(売気配数量および売気配値)とを比較するとともに、顧客の未約定の売りのCFD注文データと、各マーケットメーカによるビッド情報(買気配数量および買気配値)とを比較することにより、マーケットメーカのCFD気配用注文と顧客のCFD注文とを約定させる処理である。なお、マーケットメーカのCFD気配用注文と顧客のCFD注文とが約定するだけであり、マーケットメーカのCFD気配用注文同士、あるいは顧客のCFD注文同士は、約定することはない。例えば、図2に示すα社株CFD板情報では、気配値が101円や100円で、顧客同士の売気配数量と買気配数量との双方が存在する状態となっているが、CFDは、顧客同士で売買されることはないので、このような状態になり得る。このα社株CFD板情報は、右側の欄で、顧客の買いと、マーケットメーカのオファー(売)とが約定し、左側の欄で、顧客の売りと、マーケットメーカのビッド(買)とが約定するように記載されている。従って、右側の欄で、マーケットメーカM2の提示する102円以上で売りというオファーが最良売気配値(顧客が最も安く買うことができる値段)であり、左側の欄で、マーケットメーカM1の提示する99円以下で買いというビッドが最良買気配値(顧客が最も高く売ることができる値段)である。
また、CFD取引市場システム50は、マーケットメーカM1のCFD気配用注文が約定した場合には、マーケットメーカM1のCFD気配用注文の約定データ(マーケットメーカM1を示すマーケットメーカ識別情報、CFDの銘柄識別情報、約定数量、売買区分、約定価格を含む。)を、通信回線1を介してCFDヘッジ処理システム20へ送信し、他のマーケットメーカM2等のCFD気配用注文が約定した場合には、マーケットメーカM2等のCFD気配用注文の約定データ(マーケットメーカM2等を示すマーケットメーカ識別情報、CFDの銘柄識別情報、約定数量、売買区分、約定価格を含む。)を、通信回線を介して図示されないCFDヘッジ処理システムへ送信するとともに、顧客のCFD注文の約定データ(注文識別情報、顧客識別情報、CFDの銘柄識別情報、約定数量、売買区分、約定価格を含む。)を、通信回線5を介してCFD取扱業者のシステム90へ送信する。
ヘッジ対象原資産商品取引市場システム60は、コンピュータにより構成されたヘッジ対象原資産商品を含む金融商品の取引市場システムであり、例えば、証券取引所システム、私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)等である。
端末装置70,80は、コンピュータにより構成され、例えばマウスやキーボード等の入力手段と、例えば液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示手段と、印刷装置とを備えている。これらの端末装置70,80は、例えば、携帯電話機や携帯情報端末(PDA)等の携帯機器でもよい。
CFD取扱業者のシステム90は、1台または複数台のコンピュータにより構成され、顧客またはその入力代行者(例えば、CFD取扱業者の営業員やオペレータ等)により入力されて端末装置80から通信回線4を介して送信されてくる顧客のCFDの注文データ(顧客識別情報、CFDの銘柄識別情報、注文数量、売買区分、指値を含む。)を受信し、受信した注文データに注文識別情報(注文番号等)を自動付与し、受信した注文データ(注文識別情報、顧客識別情報、CFDの銘柄識別情報、注文数量、売買区分、指値を含む。)を、通信回線5を介してCFD取引市場システム50へ送信するとともに、図2に示すようにCFD注文データベースに記憶させる処理を実行するものである。図2のCFD注文データベースは、CFD注文の注文識別情報(注文番号等)、顧客識別情報(口座番号等)、CFDの銘柄識別情報(銘柄コード等)、数量、売買区分、指値、注文の処理状態を示すステータス等を対応付けて記憶するものである。
また、CFD取扱業者のシステム90は、CFD取引市場システム50から通信回線5を介して送信されてくる顧客のCFD注文の約定データ(注文識別情報、顧客識別情報、CFDの銘柄識別情報、約定数量、売買区分、約定価格を含む。)を受信し、受信した約定データを、通信回線4を介して端末装置80へ送信するとともに、約定したCFD注文についてCFD注文データベース(図2参照)に記憶されているステータスを、「未約定」から「約定」に更新する処理を実行する。
このような本実施形態においては、以下のようにしてCFDヘッジ処理システム20によるヘッジ処理が行われる。
先ず、図11に示した組合せポジションの推移の例を参照してヘッジ処理の概要を説明する。本実施形態では、金額ベースで閾値Atが指定されるため、図11の縦軸は金額ベースで示されている。図11の推移を概説すると、P1点からP2点までは、顧客がCFDを売り(売り建て、または売り埋め)、これに対し、マーケットメーカのCFDの買いが約定することにより、マーケットメーカのCFD残高が増加し、従って、組合せポジションの残高A(CFDとヘッジ対象原資産商品の合計残高であるが、残高Aは、ヘッジ対象原資産商品の第1の残高H1を用いた合計残高A1と、第2の残高H2を用いた合計残高A2とをまとめて説明するための記号とする。)が増加する。
P2点からP3点までは、顧客がCFDを買い(買い建て、または買い埋め)、これに対し、マーケットメーカのCFDの売りが約定することにより、マーケットメーカのCFD残高が減少し、従って、組合せポジションの残高Aが減少する。P3点からP4点までは、P1点からP2点までと同様である。
P4点で、組合せポジションの残高A1(第1の残高H1を用いた合計残高A1)についての処理当日の初期状態Asからの変化分の絶対値|A1−As|の時価が、閾値Atを超えているので、ヘッジ実施条件が成立しており、かつ、変化分(A1−As)がプラス値であるから、ヘッジ売りをすると判断する。
P4点からP5点までは、マーケットメーカがヘッジ対象原資産商品を売って(ヘッジ売り)、ヘッジ対象原資産商品の残高が減少し、従って、組合せポジションの残高Aが減少する。また、このP4点からP5点までの推移には、顧客がCFDを買い(買い建て、または買い埋め)、これに対し、マーケットメーカのCFDの売りが約定することにより、マーケットメーカのCFD残高が減少し、従って、組合せポジションの残高Aが減少する場合も含まれている。ヘッジ売りは、組合せポジションの残高A2(第2の残高H2を用いた合計残高A2)についての処理当日の初期状態Asからの変化分の絶対値|A2−As|の時価が、留保値Afに達するまでしか行わない。なお、本実施形態では、ヘッジ実施条件の成否の判断時(閾値Atを超えているか否かの判断時)には、合計残高A1を用いるが、ヘッジの売り数量を決定する際には、合計残高A1ではなく、合計残高A2を用いる。ここで合計残高A2(買い数量が、注文時ではなく約定時に残高に反映される場合)を用いるのは、ヘッジ売りの場合には、ヘッジ対象原資産商品が株式であれば、空売り規制があるので、この規制をより確実に遵守するため、安全サイドをとって、残高が少なくカウントされる方を用いるためである。
P5点からP6点までは、顧客がCFDを買い(買い建て、または買い埋め)、これに対し、マーケットメーカのCFDの売りが約定することにより、マーケットメーカのCFD残高が減少し、従って、組合せポジションの残高Aが減少する。P5点からP6点までは、P2点からP3点までと同様である。P5点からP6点までは、ヘッジ売りは行われてない。
P6点で、組合せポジションの残高A1(第1の残高H1を用いた合計残高A1)についての処理当日の初期状態Asからの変化分の絶対値|A1−As|の時価が、閾値Atを超えているので、ヘッジ実施条件が成立しており、かつ、変化分(A1−As)がマイナス値であるから、ヘッジ買いをすると判断する。
P6点からP7点までは、マーケットメーカがヘッジ対象原資産商品を買って(ヘッジ買い)、ヘッジ対象原資産商品の残高が増加し、従って、組合せポジションの残高Aが増加する。また、このP6点からP7点までの推移には、顧客がCFDを売り(売り建て、または売り埋め)、これに対し、マーケットメーカのCFDの買いが約定することにより、マーケットメーカのCFD残高が増加し、従って、組合せポジションの残高Aが増加する場合も含まれている。ヘッジ買いは、組合せポジションの残高A1(第1の残高H1を用いた合計残高A1)についての処理当日の初期状態Asからの変化分の絶対値|A1−As|の時価が、留保値Afに達するまでしか行わない。なお、本実施形態では、前述したP4点からP5点までの説明の如く、ヘッジの売り数量を決定する際には、合計残高A1ではなく、合計残高A2を用いるが、ヘッジの買い数量を決定する際には、合計残高A1を用いる。ここで合計残高A1(買い数量が、約定時ではなく注文時に残高に反映される場合)を用いるのは、既にヘッジ対象原資産商品の買い注文を発注しているのに、約定前なのでそれが反映されず、2重に買い注文を発注してしまうという事態を防ぐためである。
なお、以上の図11を用いた組合せポジションの推移の例の概要説明では、説明の便宜上、各ポイント間の残高推移を、1つのイベントで代表させて説明したが、実際には、図11のような残高推移は、多数のイベントが複合して形成されており、例えば、顧客によるCFDの買いが行われたことによる残高推移であると説明している時間帯は、実際には、多数のCFDの買いと多数のCFDの売りがあり、それらが相殺されてCFDの買いが残った状態と考えればよい。そして、時間帯によっては、多数のCFDの買いおよび多数のCFDの売りに、さらに、ヘッジ売りまたはヘッジ買いというイベントが加わって残高推移が形成されていると考えればよい。
次に、図7に示すヘッジ処理の流れを詳細に説明する。図7において、CFDヘッジ処理システム20によるヘッジ処理を開始し(ステップS1)、ヘッジコントロール処理手段25により、相場情報取得処理手段24からのヘッジ対象原資産商品の相場情報の更新に伴うトリガー信号(または、図示は省略されているが、CFD気配情報取得処理手段21からのCFDの相場情報の更新に伴うトリガー信号を含めてもよい。)、CFD気配用注文約定受信処理手段23からのCFD約定に伴うトリガー信号、またはヘッジ約定受付処理手段27からのヘッジ約定に伴うトリガー信号のうちのいずれかを受信する(ステップS2)。これらのトリガー信号は、いずれも、ヘッジ発注を実施するか否かの判断処理を開始させるためのものである。
続いて、ヘッジコントロール処理手段25により、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカのCFDの数量残高(本実施形態では、金額残高は参考値として記載している。)と、このCFDの銘柄識別情報に対応するヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカのヘッジ対象原資産商品の数量残高(本実施形態では、金額残高は参考値として記載している。)との合計残高(本実施形態では、数量ベースの合計値とする。)を算出することにより、図5に示すようなCFDポジションとヘッジポジションとの組合せポジションを算出形成する(ステップS3)。
例えば、α社株CFDについて、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカのCFDの数量残高(図3中の数量C)は、△40CFD(△4,000株)となっており、また、α社株について、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカのヘッジ対象原資産商品の第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))は、3,000株となっているので、合計残高(図5中の第1の数量A1(注文時))は、△4,000株+3,000株=△1,000株と算出される。
また、α社株CFDについて、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカのCFDの数量残高(図3中の数量C)は、△40CFD(△4,000株)となっており、また、α社株について、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカのヘッジ対象原資産商品の第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))は、2,500株となっているので、合計残高(図5中の第2の数量A2(約定時))は、△4,000株+2,500株=△1,500株と算出される。
さらに、α社株CFDについて、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカのCFDの数量残高の処理当日の初期数量Csは、△30CFD(△3,000株)となっており、また、α社株について、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカのヘッジ対象原資産商品の数量残高の処理当日の初期数量Hsは、3,500株となっているので、合計残高(数量ベース)の処理当日の初期数量As(図5参照)は、△3,000株+3,500株=500株と算出される。
そして、ヘッジコントロール処理手段25により、合計残高A1,A2についての処理当日初期状態Asからの変化分(A1−As),(A2−As)を算出する。図5のα社株CFDおよびα社株でのヘッジの例では、A1−As=△1,000株−500株=△1,500株と算出され、A2−As=△1,500株−500株=△2,000株と算出される。
同様に、例えば、δ指数CFDについて、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカのCFDの数量残高(図3中の数量C)は、△40CFD(△40枚)となっており、また、δ指数先物について、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカのヘッジ対象原資産商品の第1の数量残高(図4中の第1の数量H1(注文時))は、30枚となっているので、合計残高(図5中の第1の数量A1(注文時))は、△40枚+30枚=△10枚と算出される。
また、δ指数CFDについて、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカのCFDの数量残高(図3中の数量C)は、△40CFD(△40枚)となっており、また、δ指数先物について、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカのヘッジ対象原資産商品の第2の数量残高(図4中の第2の数量H2(約定時))は、25枚となっているので、合計残高(図5中の第2の数量A2(約定時))は、△40枚+25枚=△15枚と算出される。
さらに、δ指数CFDについて、CFDポジション記憶手段41のCFDポジションテーブル41A(図3参照)に記憶されたマーケットメーカのCFDの数量残高の処理当日の初期数量Csは、△30CFD(△30枚)となっており、また、δ指数先物について、ヘッジポジション記憶手段42のヘッジポジションテーブル42B(図4参照)に記憶されたマーケットメーカのヘッジ対象原資産商品の数量残高の処理当日の初期数量Hsは、35枚となっているので、合計残高(数量ベース)の処理当日の初期数量As(図5参照)は、△30枚+35枚=5枚と算出される。
そして、ヘッジコントロール処理手段25により、合計残高A1,A2についての処理当日初期状態Asからの変化分(A1−As),(A2−As)を算出する。図5のδ指数CFDおよびδ指数先物でのヘッジの例では、A1−As=△10枚−5枚=△15枚と算出され、A2−As=△15枚−5枚=△20枚と算出される。
それから、ヘッジコントロール処理手段25により、ヘッジ対象原資産商品の銘柄識別情報に関連付けられてパラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されている閾値At(ThresholdまたはTrigger)を取得し、図示されないヘッジ対象原資産商品相場情報記憶手段に記憶されている当該銘柄の相場情報に含まれる時価単価(直近仲値とする。)を用いて、金額ベースで指定されている閾値Atを数量ベースに換算する(ステップS4)。
例えば、図8に示すように、α社株について、パラメータ記憶手段43(図6参照)に、金額ベースの閾値At=400,000円が記憶され、図示されない相場情報記憶手段に記憶されている当該銘柄の相場情報に含まれる時価単価(直近仲値とする。)が、100円(/株)であるとすると、数量ベースに換算後の閾値At=400,000円÷100円/株=4,000株と算出される。同様に、δ指数先物の場合は、時価単価(直近仲値とする。)が、100円(/枚)であるとすると、これにパラメータ記憶手段43(図6の参照)に記憶された取引単位の倍率Bの100倍を乗じて10,000円/枚となるので、数量ベースに換算後の閾値At=400,000円÷10,000円/枚=40枚と算出される。
続いて、ヘッジコントロール処理手段25により、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値として示されるヘッジ必要数量(|A1−As|)が、換算後の閾値Atを超過したか否か、または閾値At以上になったか否かというヘッジ実施条件の成否を判断する(ステップS5)。
例えば、図8に示すように、α社株の場合は、|A1−As|=6,000株であれば、閾値At=4,000株よりも大きいので、ヘッジ実施条件が成立してヘッジが実施され、|A1−As|=2,000株であれば、閾値At=4,000株よりも小さいので、ヘッジ実施条件が不成立となり、ヘッジは実施されない。同様に、δ指数先物の場合は、|A1−As|=60枚であれば、閾値At=40枚よりも大きいので、ヘッジ実施条件が成立してヘッジが実施され、|A1−As|=20枚であれば、閾値At=40枚よりも小さいので、ヘッジ実施条件が不成立となり、ヘッジは実施されない。
そして、ステップS5でヘッジ実施条件が成立したと判断した場合には、ヘッジコントロール処理手段25により、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶された留保値Af(AllowanceまたはFloor)を取得し、数量ベースに換算後の閾値Atに、閾値Atに対する割合で指定された留保値Afを乗じることにより、数量ベースの留保値Afを算出する。例えば、α社株の場合は、換算後の閾値At=4,000株と算出されたときに、パラメータ記憶手段43(図6参照)に、留保値Af=40%と記憶されていれば、数量ベースの留保値Af=4,000株×40%=1,600株と算出される。同様に、δ指数先物の場合は、換算後の閾値At=40枚と算出されたときに、パラメータ記憶手段43(図6参照)に、留保値Af=40%と記憶されていれば、数量ベースの留保値Af=40枚×40%=16枚と算出される。なお、この留保値Afの算出処理は、前述したステップS4で行ってもよい。
続いて、ヘッジコントロール処理手段25により、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分(A1−As)がプラス値であると判断すれば(ステップS6)、ヘッジ売りを実施すると判断し、合計残高A2(第2の残高H2を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A2−As|)から、数量ベースの留保値Afを減じた数量(|A2−As|−Af)を、ヘッジ対象原資産商品の売り数量として決定する(ステップS7)。
但し、ヘッジ売りを実施すると判断した場合には、ヘッジ対象原資産商品が株式であれば、ヘッジコントロール処理手段25により、ヘッジ対象原資産商品のヘッジ処理後の第2の残高H2のマイナス値の絶対値が、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶された空売り許容値Hm(Available Margin Position)を超えない範囲で、ヘッジ対象原資産商品の売り数量を決定する(ステップS7)。すなわち、現時点(ヘッジ実施条件の成否の判断時点)でのヘッジ対象原資産商品の第2の残高H2が、プラス値である場合は、(H2+Hm)を売り数量の最大数量とし、マイナス値である場合は、(Hm−|H2|)=(H2+Hm)(結局、同じ式となる。)を売り数量の最大数量とする。従って、(|A2−As|−Af)が、(H2+Hm)を超えた場合には、(H2+Hm)しかヘッジ売りすることができない。
例えば、図9に示すように、|A2−As|=5,500株、留保値Af=1,600株の場合には、ヘッジ売り数量は、|A2−As|−Af=5,500株−1,600株=3,900株と算出される。このとき、図9に示すように、現時点(ヘッジ実施条件の成否の判断時点)でのヘッジ対象原資産商品の第2の残高H2が、2,500株であれば、3,900株−2,500株=1,400株が空売り対象分となるが、パラメータ記憶手段43(図6参照)に、空売り許容値Hm=3,000株と記憶されていれば、空売り対象分の1,400株は、空売り許容値Hm=3,000株の範囲内なので、結局、|A2−As|−Af=3,900株の全部を、ヘッジ売り数量とすることができる。しかし、図9に示すように、現時点(ヘッジ実施条件の成否の判断時点)でのヘッジ対象原資産商品の第2の残高H2が、500株であれば、3,900株−500株=3,400株が空売り対象分となるが、この空売り対象分の3,400株は、空売り許容値Hm=3,000株の範囲を超えているので、3,400株のうちの400株は、空売りできない分となり、結局、|A2−As|−Af=3,900株のうち、500株+3,000株=3,500株だけを、ヘッジ売り数量とすることができる。
なお、ヘッジ対象原資産商品が指数先物の場合には、同様にして、例えば、|A2−As|=55枚、留保値Af=16枚であれば、ヘッジ売り数量は、|A2−As|−Af=55枚−16枚=39枚と算出されるが、ヘッジ対象原資産商品が株式の場合とは異なり、空売り許容値Hmは考慮しないでヘッジ対象原資産商品の売り数量を決定する。
一方、ステップS6で、ヘッジコントロール処理手段25により、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分(A1−As)がマイナス値であると判断すれば、ヘッジ買いを実施すると判断し、合計残高A1(第1の残高H1を用いた場合の合計残高)についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A1−As|)から、数量ベースの留保値Afを減じた数量(|A1−As|−Af)を、ヘッジ対象原資産商品の買い数量として決定する(ステップS8)。
例えば、図9に示すように、|A1−As|=5,500株、留保値Af=1,600株の場合には、ヘッジ買い数量は、|A1−As|−Af=5,500株−1,600株=3,900株と算出される。また、ヘッジ対象原資産商品が指数先物の場合も同様にして、例えば、|A1−As|=55枚、留保値Af=16枚であれば、ヘッジ買い数量は、|A1−As|−Af=55枚−16枚=39枚と算出される。
また、ステップS7,S8のいずれにおいても、ヘッジコントロール処理手段25により、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文を複数回に分けてヘッジ対象原資産商品取引市場へ発注するために、パラメータ記憶手段43(図6参照)に記憶されたヘッジ上限数量Hu(Upperbound)以内で、かつ、ヘッジ対象原資産商品が株式の場合にはパラメータ記憶手段43に記憶された単元株数U以上の範囲内で、ヘッジ対象原資産商品の売り注文または買い注文の1回の発注でのヘッジ対象原資産商品の売り数量または買い数量を決定する。
例えば、図9に示すように、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または買い数量が、3,900株と算出されたときに、パラメータ記憶手段43(図6参照)に、ヘッジ上限数量Hu=1,000株、単元株数U=100株と記憶されていたとすれば、ヘッジ上限数量Huをそのまま使う場合には、第1回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量を1,000株とし、第2回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量も1,000株とし、第3回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量も1,000株とし、第4回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量については、1,000株ではなく、900株とすることにより、合計残高A1,A2についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A1−As|,|A2−As|)が、留保値Afになるまで、ヘッジ発注を繰り返すことができる。なお、これらのヘッジ発注は、前回発注した注文が約定したら、次の注文を発注する。
また、ヘッジ対象原資産商品が指数先物の場合も同様にして、例えば、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または買い数量が、39枚と算出されたときに、パラメータ記憶手段43(図6参照)に、ヘッジ上限数量Hu=10枚と記憶されていたとすれば、ヘッジ上限数量Huをそのまま使う場合には、第1回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量を10枚とし、第2回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量も10枚とし、第3回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量も10枚とし、第4回目の発注のヘッジ売り数量または買い数量については、10枚ではなく、9枚とすることにより、合計残高A1,A2についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A1−As|,|A2−As|)が、留保値Afになるまで、ヘッジ発注を繰り返すことができる。
以上により、CFDヘッジ処理システム20による一連のヘッジ処理を終了する(ステップS9)。また、ステップS5で、ヘッジ実施条件が成立していないと判断された場合にも、ヘッジを実施せずに、一連のヘッジ処理を終了する。
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、CFDの残高Cと、これに対応するヘッジ対象原資産商品の残高H(H1,H2)との合計残高A(A1,A2)を算出することにより、CFDポジションとヘッジポジションとの組合せポジションを構築したので、この組合せポジションの残高A1を管理し、組合せポジションの残高A1についての処理当日初期状態Asからの変化分の絶対値(|A1−As|)が閾値Atに達したときにヘッジを実施するというヘッジの実施タイミングの制御を行うことができる。
このため、閾値Atに達しないうちは、ヘッジを実施しないことから、すなわち閾値Atまでのリスクは許容し、幅を持ったリスク管理を行うことから、従来のような顧客の1回のCFD注文に対してヘッジ注文の発注を1回行うという1対1のヘッジ処理の場合に比べ、ヘッジ対象原資産商品取引市場へのヘッジ注文の発注回数や発注数量を削減することができるので、マーケットメーカの保有リスクを極小化したままで、ヘッジ注文の発注回数や発注数量を適正にコントロールし、マーケットメーカが支払う場口銭を軽減することや、マーケットインパクトを軽減することができる。
そして、閾値Atに達しないうちは、ヘッジを実施しないことから、閾値Atに達しない段階で、顧客によるCFDの売り注文と買い注文とが、うまく対等(ネッティング)したときには、それらに対応する売りのヘッジ発注と買いのヘッジ発注とを行わなくて済む。従って、売りのヘッジ発注と買いのヘッジ発注との繰り返しによりマーケットメーカに生じる、売り値(安い)と買い値(高い)との差額に起因する損失を抑制することができる(売買対等・ネッティング効果)。
また、異なる残高管理体系を組み合わせてなる組合せポジションの残高管理を行うことにより、ヘッジの実施タイミングやヘッジ注文の発注数量をコントロールするので、ヘッジ必要数量を変化させる複数の要因(CFD買い、CFD売り、ヘッジ買い、ヘッジ売りという各イベント)を統括して管理することができるため、より安定したヘッジ残高のコントロールを実現することができる。例えば、ヘッジ売りをして組合せポジションの残高Aを減らしている最中に、顧客によるCFDの買いがあり、これに対してマーケットメーカのCFDの売りが約定することで、組合せポジションの残高Aが減ることもあり、そうなれば、その分だけヘッジ売りをする必要がなくなるので、同時並行的に生じる複数の要因で変化する組合せポジションの残高Aを管理することにより、ヘッジの発注回数や発注数量を抑えることができる。そして、このことによっても、マーケットメーカが支払う場口銭を軽減することができ、また、株式でヘッジする場合には、空売り機会を減らし、法令違反となるような空売りリスクを生じないようにすることもできる。
さらに、異なる残高管理体系を組み合わせてなる組合せポジションの残高管理を行うことにより、ヘッジの実施タイミングやヘッジ注文の発注数量をコントロールするので、CFDの商品種別とヘッジ対象原資産商品の商品種別との対応関係の多様化も容易に実現することができる。すなわち、本実施形態のように株式CFDに対して株式でヘッジしたり、あるいは株価指数先物CFDに対して株価指数先物でヘッジするのではなく、例えば、株価指数先物CFDの売りの約定に対し、現物株をヘッジ買いして保有するというようなヘッジコントロールも容易に行うことができる。
また、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジを留保値Afまで実施する(留保値Afまでしか実施しない)構成とされているので、合計残高A(A1,A2)についての処理当日初期状態Asからの変化量がゼロになるまでヘッジを実施する場合に比べ、ヘッジの発注数量を減らすことができるため、より一層、マーケットメーカが支払う場口銭を軽減することができ、また、株式でヘッジする場合には、空売り機会を減らし、法令違反となるような空売りリスクを生じないようにすることができる。
そして、合計残高A(A1,A2)についての処理当日初期状態Asからの変化量がゼロになるまで積極的にヘッジを実施しなくても、その後、顧客のCFD注文が行われることにより、合計残高A(A1,A2)についての処理当日初期状態Asからの変化量がゼロに近づくこともあり得るので、ヘッジの発注数量を抑えつつ、組合せポジションの残高A(A1,A2)を最適な状態に戻すことができる。例えば、合計残高A2についての処理当日初期状態Asからの変化量(プラス値)が留保値Afになるまでヘッジ売りを行った後に、顧客によるCFDの買いがあり、これに対してマーケットメーカのCFDの売りが約定することで、合計残高A2が減って合計残高A2についての処理当日初期状態Asからの変化量がゼロに近づくことがある。また、合計残高A1についての処理当日初期状態Asからの変化量(マイナス値)の絶対値が留保値Afになるまでヘッジ買いを行った後に、顧客によるCFDの売りがあり、これに対してマーケットメーカのCFDの買いが約定することで、合計残高A1が増えて合計残高A1についての処理当日初期状態Asからの変化量がゼロに近づくことがある。
さらに、ヘッジコントロール処理手段25は、ヘッジ上限数量Huの範囲内でヘッジを複数回に分けて実施する構成とされているので、マーケットインパクトを、より一層抑えることができる。また、複数回に分けてヘッジ発注を繰り返している最中に、顧客によるCFD注文があり、合計残高A(A1,A2)についての処理当日初期状態Asからの変化量の絶対値(|A1−As|,|A2−As|)が、留保値Afに近づくこともあり、そうなれば、その分だけヘッジ発注をする必要がなくなるので、ヘッジの発注数量を抑えることができ、株式でのヘッジ売りを複数回に分けて実施している場合には、空売り機会を減らし、法令違反となるような空売りリスクを生じないようにすることもできる。
そして、ヘッジコントロール処理手段25は、株式でのヘッジを行う場合には、空売り許容値Hmを超えない範囲でヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定する構成とされているので、空売り規制を確実に遵守することができる。すなわち、合計残高A2についての処理当日初期状態Asからの変化量の絶対値(|A2−As|)が留保値Afになるまでヘッジを行うというヘッジコントロール(組合せポジションの残高A2のコントロール)だけにより、ヘッジ数量やヘッジ金額を決定すると、空売り可能数量制約によりヘッジすることができない数量分や金額分が生じる可能性があるが、組合せポジションの残高A2だけでなく、ヘッジポジションの残高H2についてもコントロール対象とすれば、そのような不都合を生じることなく、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定することができる。
また、CFDヘッジ処理システム20は、ヘッジ注文の注文時と約定時とを区別してヘッジ対象原資産商品の残高H1,H2の更新管理を行う構成とされているので、株式でのヘッジを行う場合には、空売り許容値Hmを超えない範囲で、ヘッジ対象原資産商品の売り数量または金額を決定するに際し、より安全サイドの残高H2を使用して決定を行うことができ、空売り規制を、より一層確実に遵守することができる。
さらに、CFDヘッジ処理システム20は、株式でのヘッジを行う場合には、CFD気配用注文送信処理手段22により空売り許容値Hmを用いてCFD気配数量を算出する構成とされているので、ヘッジ対象原資産商品の保有残高H2に、空売り許容値Hmの分を加えて、ヘッジ売りすることが可能な数量(H2+Hm)を算出決定し、この数量を上限として、マーケットメーカによるCFDのビッドの数量(買気配数量)を提示することができるため、より適切な気配提示を行うことができる。
また、CFDヘッジ処理システム20は、CFD気配用注文送信処理手段22により他のマーケットメーカM2等(他社)が提示したCFD気配情報を考慮してマーケットメーカM1(自社)の提示するCFD売気配値およびCFD買気配値を補正する構成とされているので、CFD取引市場において略同時期にCFDを安く買って高く売ることにより顧客が極めて短期間で容易に利益を得ることができるようなCFDの相場形成を回避することができ、より適切な気配提示を行うことができる。
そして、CFDヘッジ処理システム20は、パラメータ設定処理手段28を備えているので、閾値Atや留保値Af等のパラメータを容易に設定変更することができる。このため、例えば、閾値Atおよび留保値Afをゼロに設定することで、従来の1対1のヘッジ処理を行うシステムを実現することもできる。従って、1つのシステムで、複数のアルゴリズムを保有する必要がなくなるので、メンテナンス性に優れたシステムを実現することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、CFD取引市場での株式CFDの気配用注文の約定に対し、ヘッジ対象原資産商品を同銘柄の株式とするヘッジ処理を行う場合や、CFD取引市場での指数CFDの気配用注文の約定に対し、ヘッジ対象原資産商品を、対応する指数先物とするヘッジ処理を行う場合について説明を行っていたが、本発明のCFDの商品種別や、CFDとヘッジ対象原資産商品との対応関係は、これに限定されるものではなく、例えば、CFDの商品種別は、株価指数先物CFD(例えば、日経225指数先物CFD)でもよく、この場合は、ヘッジ対象原資産商品を、同銘柄の株価指数先物(例えば、日経225指数先物)としたり、あるいは株価指数を構成する全銘柄(例えば、日経225銘柄全部)とすることができる。さらに、CFDの商品種別を、株価指数CFD(例えば、日経225指数CFD)とする場合でも、ヘッジ対象原資産商品を、前記実施形態のように株価指数先物(例えば、日経225指数先物)とするだけではなく、株価指数を構成する全銘柄(例えば、日経225銘柄全部)とすることもできる。
また、前記実施形態では、閾値Atは、金額ベースで指定されていたが、数量ベースで指定してもよく、留保値Afは、閾値Atに対する割合で指定されていたが、数量や金額で指定してもよい。