JP2012111990A - 海水電解装置、海水電解システム及び海水電解方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電極30として陽極A及び陰極Kが収納された電解槽本体20内に流通される海水Wを、陽極A及び陰極K間に通電される電流によって電気分解する海水電解装置10において、酸化イリジウムを含むコーティング材をチタンに被覆した陽極Aを使用し、電極30表面の電流密度が20A/dm2〜40A/dm2の範囲となるように、陽極A及び陰極K間に電流を通電する電源装置40を設ける。
【選択図】図2
Description
この問題を解決するために、天然の海水に電気分解を施すことで次亜塩素酸ソーダを生成し、当該次亜塩素酸を取水口中に注入することにより海洋生物の付着を抑制する海水電解装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、未だ海水電解装置として実用化された事例はないが、電気分解の陽極のコーティング材として、酸化イリジウムを主体とした複合金属、即ち、酸化イリジウム主体コーティング材を適用することが提案されている(例えば特許文献3参照)。
このように電気分解の電流密度を抑える必要があるため、十分な塩素を発生させるためには数多くの電極を配置する必要があり、生産コストの増大、装置の大型化を招いてしまっていた。
即ち、本発明に係る海水電解装置は、電極として陽極及び陰極が収納された電解槽本体内に流通される海水を、前記陽極及び前記陰極間に通電される電流によって電気分解する海水電解装置において、前記陽極は、酸化イリジウムを含むコーティング材をチタンに被覆してなり、前記電極表面の電流密度が20A/dm2〜40A/dm2の範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電する電源装置を備えることを特徴とする。
なお、電流密度が大き過ぎる場合、例えば40A/dm2を超える場合には、陽極及び陰極でのスケール発生量が水素の洗浄効果の有効な範囲を超えてしまう。これに対して、本発明では電流密度の上限を40A/dm2としているため、水素により洗浄効果を有効に発現させることができ、陽極及び陰極でのスケール付着を効果的に防止することが可能となる。
これによって、水素ガスによる洗浄効果をより一層効果的に発現させることができ、陽極及び陰極でのスケール付着を有効に防止することができる。
酸素に対する耐久性が高いタンタルをコーティング材に添加することで、陽極で発生する酸素への耐久性を向上させ、電極の異常消耗をより一層効果的に防止することができる。
また、各二極電極板は海水の流通方向に沿って配置されているため、海水の流通が妨げられることはない。これにより、海水の流速を高く維持することができるため、当該海水による電極へのスケール付着の防止効果を有効に得ることができる。
さらに、互いに平行に隣り合う電極群同士の陽極及び陰極が対向していることから、これら陽極及び陰極の間に通電することで、電極間を流通する海水に対して効率的に電気分解を施すことが可能となる。
流通方向に隣り合う二極電極板同士の間隔が小さい場合には、これら二極電極板同士の間を流通する電流、即ち、電気分解への寄与の小さい迷走電流が発生する。この迷走電流は電極表面での電流密度が高くなるほど顕著なものとなる。これに対して、上記のように流通方向に隣り合う二極電極板同士の間隔の適正化を図ることにより、当該迷走電流の発生を抑制し、海水電解効率の低下を防止することができる。
電流密度を高くするほど、陰極での水素発生によって液ガス比が低下するため、塩素発生効率が低下してしまう。これに対して、接続管に設けられたガス抜き手段によって特に水素ガスを除去することで、電解槽内を所定の液ガス比以下に抑え、効率低下を防止することができる。
電流密度を高くすればするほど、電極表面へのスケールの付着が懸念されるが、海水電解装置の電解槽を通過した海水中に含まれるスケール成分による種晶効果により、電極表面へスケール付着を防止することができる。
図1は第一実施形態に係る海水電解システム100の概要を示す模式図である。海水電解システム100は、海水が流通する取水用水路1から海水を取水し、海水電解装置10にて海水に電気分解を施した後、当該海水を取水用水路1に注入するシステムである。
この海水電解システム100は、上記海水電解装置10と、海水電解装置10にて電気分解された海水Wが貯留される貯留タンク50と、海水電解装置10に取水用水路1から海水Wを導入する取水部60と、貯留タンク50の海水Wを取水用水路1に注入する注水部70とを備えている。
電解槽本体20は、両端が開口する略筒状をなす外筒21を備えており、該外筒21の一端側には該一端側の開口を閉塞する上流側蓋部22が設けられ、さらに、外筒21の他端側には該他端側の開口を閉塞する下流側蓋部24が設けられている。電解槽本体20は、これら外筒21、上流側蓋部22及び下流側蓋部24によって所定の耐圧強度が確保されている。
端子板28,29は、電極支持箱26内に支持される電極30に対して、電解槽本体20外部からの電流を供給する役割を有しており、上記電極支持箱26の両端に一対が配置されている。
また、酸化イリジウム主体コーティング材には、タンタルが添加されていることが好ましい。さらに、この酸化イリジウム主体コーティング材は、白金が含有されていないものであることが好ましい。
上記電極30のうち二極電極板31は、図2及び図3に示すように、陽極Aを液入口側に向けるとともに陰極Kを液出口側に向けて、その延在方向が海水Wの流通方向に沿うように複数配列されている。また、これら二極電極板31は、上記流通方向に間隔をあけて直列的に配列されることで電極群Mを構成している。そして、このような電極群Mは、互いに平行をなすように間隔をあけて複数が設けられており、即ち、互いに並列的に複数が設けられている。
陽極板32は、その下流側の端部が一対の端子板28,29のうちの下流側にある端子板29に接続されており、これら陽極板32の上流側の端部はそれぞれ上記二極電極板31の陰極Kと流通方向に直交する方向に対抗状態とされている。さらに、陰極板33は、その上流側の端部が一対の端子板28,29のうちの上流側にある端子板28に接続されており、これら陰極板33の下流側の端部はそれぞれ上記二極電極板31の陽極Aと流通方向に直交する方向に対向状態とされている。
直流電源41は、直流電力を出力する電源であって、例えば交流電源から出力される交流電力を直流に整流して出力する構成であってもよい。
このような定電流制御回路42は、一対のリード線43,44を介して陽極Aが下流側の端子板29に接続されるとともに陰極Kが上流側の端子板28に接続されており、これにより、定電流制御回路42にて生成される定電流が端子板28,29を介して電極30に通電されるようになっている。
取水流路61は一端が取水用水路1に接続されるとともに他端が海水電解装置10における電解槽本体20の流入口23に接続された流路である。
第一ポンプ62は、この取水流路61の中途に設けられており、当該第一ポンプ62が取水用水路1の海水Wを一定の出力で汲み上げることで、この海水Wが上記流入口23へと導入される。
また、第一開閉制御弁63は、取水流路61における第一流量計64の上流側に設けられた弁であって、第一流量計64が検出する海水Wの流量Q1に基づいて開閉制御されるようになっている。これによって、取水流路61及び電解槽本体20の海水流通領域の面積比に応じて取水路を流通する海水Wの流量を調整することで、電解槽本体20内を流通する海水Wの流速を任意に調整することができるようになっている。
なお、第一開閉制御弁63の開閉制御によって電解槽本体20内での海水Wの流速を調整する構成のみならず、例えば第一ポンプ62の出力を制御することによって電解槽本体20内での海水Wの流速を調整する構成であってもよい。
流路の注水部71は一端が貯留タンク50に接続されるとともに他端が取水用水路1に接続された流路である。
第二ポンプ72は、この流路の注水部71の中途に設けられており、当該第二ポンプ72が貯留タンク50内の海水Wを一定の出力で送り込むことによって、この海水Wが取水用水路1へと導入される。
また、第二開閉制御弁73は、流路の注水部71における第二流量計74の上流側に設けられた弁であって、第二流量計74が検出する海水Wの流量Q2に基づいて開閉制御されるようになっている。これによって、取水用水路1に注入される海水Wの流量が調整される。なお、第二開閉制御弁73の開閉制御によって取水用水路1への海水Wの注入量を調整する構成のみならず、例えば第二ポンプ72の出力を制御することによって取水用水路1への海水Wの注入量を調整する構成であってもよい。
取水用水路1を流通する海水Wのうちの一部は、取水部60によって海水電解装置10の電解槽本体20の流入口23から電解槽本体20内に導入される。即ち、取水用水路1の海水Wが第一ポンプ62によって取水流路61内に汲み上げられることで、当該取水流路61を介して電解槽本体20内に海水Wが導入される。これにより、電解槽本体20内の電極30が海水Wに浸漬される。この際、第一開閉制御弁63が第一流量計64の検出する流量に応じて開閉することで、電解槽本体20内において流通方向に流通する海水Wの流速が所望の値に調整される。
即ち、陽極Aにおいては、下記(1)式に示すように、海水W中の塩素イオンから電子eが奪われ酸化が起こり、塩素が生成される。
さらに、電極30表面での電流密度の増加によって、陽極A付近で発生する酸素の量も増大するが、酸化イリジウムは酸素への十分な耐久性を備えているため、当該酸化イリジウムを含むコーティング材で被覆された陽極Aが酸素によって消耗してしまうことを防止することができる。
したがって、海水電解装置10のメンテナンス性を向上させることができる他、高い塩素発生効率によって電極30の数を減らすことができ、装置のコンパクト化を図ることができる。
なお、この酸化イリジウム主体コーティング材に白金を含有させないことにより、コストの低減を図ることができる。
また、各二極電極板31は海水Wの流通方向に沿って配置されているため、海水Wの流通が妨げられることない。これにより、海水Wの流速を高く維持することができ、電極30へのスケール付着の防止効果を有効に得ることができる。
そして、互いに平行に隣り合う電極群M同士の陽極A及び陰極Kが対向していることから、これら陽極A及び陰極Kの間に通電することで、電極30間を流通する海水Wに対して効率的に電気分解を施すことができる。
これに対して、本実施形態においては、各電極群Mにおける流通方向に隣り合う二極電極板31同士の間隔が、互いに平行に隣り合う電極群M同士の間隔の8倍以上に設定されており、即ち、流通方向に隣り合う二極電極板31同士の間隔の適正化が図られているため、上記迷走電流の発生を抑制し、海水電解効率の低下を防止することができる。
循環流路81は一端が流路の注水部71に接続されるとともに他端が取水流路61に接続された流路である。本実施形態においては、循環流路81の一端は、流路の注水部71における第二ポンプ72と第二開閉制御弁73との間に接続されており、該循環流路81の他端は、取水流路61における第一ポンプ62と第一開閉制御弁63との間に接続されている。
また、第三開閉制御弁83は、循環流路81における第三流量計84の下流側に設けられた弁であって、第三流量計84が検出する海水Wの流量Q3に基づいて開閉制御されるようになっている。これによって、流路の注水部71から循環流路81を介して取水流路61に循環される海水Wの流量を任意に制御することができる。
このように、電解槽本体20の流出口25から流出した電気分解後の海水Wが、循環流路81を流通することで、電解槽本体20の流入口23から再流入する。
例えば、海水電解システム100においては、注水部70から取水用水路1に注入される海水Wの次亜塩素酸濃度が概ね2500ppm程度とされていることが好ましい。
また、実施形態において二極電極板31は、陽極Aを液入口側に向けるとともに陰極Kを液出口側に向けて配置されていたが、陽極Aを液出口側に向けるとともに陰極Kを液入口側に向けて配置してもよい。
<塩素発生効率測定試験>
海水を電気分解する際における電極表面の電流密度と塩素発生効率との関係を調査する試験を行なった。
電極面積が50×50mmの板状をなす陽極板及び陰極板を用意し、5mmの間隔をあけて対向配置させた。陽極板としては、酸化イリジウム(IrO2)を質量比で50%以上含むコーティング材をチタン基板に被覆したものを使用した。また、陰極板としては、コーティング材を被覆しないチタン基板を使用した。
なお、塩素発生効率とは、流通させる電流の電流密度に基づいて理論上発生し得る塩素量に対しての実際に発生する塩素量の比率を意味している。
この塩素発生効率の測定結果を図7に示す。
なお、白金を含むコーティング材を使用した電極において技術常識とされていた電流密度が15A/dm2の場合には、塩素発生効率は93%であった。
また、電流密度が20A/dm2、30A/dm2の際の塩素効率は96%と最も高い値が得られた。
このことから、酸化イリジウムを含むコーティング材を使用した電極においては、電流密度を20A/dm2〜30A/dm2の範囲に設定することにより、高い塩素発生効率を得られることがわかった。これは、発生する水素ガスの量が増大したため、当該水素ガスによる陽極板及び陰極板のスケール洗浄効果が得られたことに起因すると考えられる。
よって、電流密度を40A/dm2とした際には、塩素発生効率は93%と電流密度15A/dm2の際と同等の効率を示すが、塩素発生量は電流密度40A/dm2の場合の方が電流密度15A/dm2の場合に比べて大きなものとなる。したがって、電流密度を40A/dm2とすることは、塩素の発生量の観点から有効であると言える。一方、電流密度が40A/dm2を超えると、水素ガスの洗浄効果が有効に作用する範囲を超えてしまい、塩素発生効率が15A/dm2の場合よりも低下してしまう。したがって、電流密度の上限は40A/dm2とすることが好ましく、これにより、塩素発生効率を高く維持しながら、発生する塩素の量を多く確保できることがわかった。
なお、電気分解を長時間続けると電極が徐々に消耗していくため、測定結果を示す図7のカーブはより急峻なものになっていくと考えられる。したがって、特に電極が消耗した後には、電流密度を上記範囲に設定することがより一層有効であることが推認できる。
海水の電気分解の際の電流密度と触媒保持量との関係を調査する試験を行なった。
塩素発生効率測定試験と同様、電極面積が50×50mmの板状をなす陽極板及び陰極板を用意し、5mmの間隔をあけて対向配置させた。陽極板としては、酸化イリジウム(IrO2)を質量比で50%以上含むコーティング材をチタン基板に被覆したものと、白金(Pt)を含むコーティング材をチタン基板に被覆したものとの二種類を用いた。また、陰極板としては、コーティング材を被覆しないチタン基板を使用した。
これら陽極板及び陰極板をそれぞれ海水中に浸漬し、当該海水を250ml/minの流量で流通させ、陽極板及び陰極板間に通電することにより海水の電気分解を行った。そして、各電流密度における触媒保持量を時間とともに測定した。
なお、触媒保持量とは、電気分解後に保持される電極の触媒量を意味しており、時間とともに触媒保持量が小さくなればそれだけ電極が消耗したことになる。この触媒保持量の測定結果を図8に示す。
一方、陽極板として酸化イリジウムを含むコーティング材を使用した場合(IrO2)には、時間が経過しても触媒保持量が低下することはなかった。
これにより、酸化イリジウムを含むコーティング材を使用した陽極板は、白金を含むコーティング材を使用した陽極板に比べて、電極の耐久性が高いことがわかった。
Claims (8)
- 電極として陽極及び陰極が収納された電解槽本体内に流通される海水を、前記陽極及び前記陰極間に通電される電流によって電気分解する海水電解装置において、
前記陽極は、酸化イリジウムを含むコーティング材をチタンに被覆してなり、
前記電極表面の電流密度が20A/dm2〜40A/dm2の範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電する電源装置を備えることを特徴とする海水電解装置。 - 前記電源装置は、前記電極表面の電流密度が20A/dm2〜30A/dm2の範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電することを特徴とする請求項1に記載の海水電解装置。
- 前記コーティング材に、タンタルの酸化物が添加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水電解装置。
- 前記電極は、前記海水の流通方向一方側の部分が前記陽極とされるとともに他方側の部分が前記陰極とされた複数の二極電極板を含み、
これら二極電極板を前記流通方向に間隔をあけて配列してなる電極群が、互いに平行をなすように複数配置され、
互いに平行に隣り合う前記電極群同士の前記二極電極板が、前記陽極と前記陰極とを対向させて配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の海水電解装置。 - 各前記電極群における前記流通方向に隣り合う前記二極電極板同士の間隔が、互いに平行に隣り合う前記電極群同士の間隔の8倍以上に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の海水電解装置。
- 複数の前記電解槽本体と、
これら電解槽本体同士における前記海水の流出口と流入口とを接続する接続管と、
該接続管内のガスを除去するガス抜き手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の海水電解装置。 - 請求項1から6のいずれか一項に記載の海水電解装置と、
前記電解槽本体の流出口から流出する電気分解後の前記海水を、前記電解槽本体の流入口から流入する前の前記海水に混合させる循環流路とを備えることを特徴とする海水電解システム。 - 電極として陽極及び陰極が収納される電解槽本体内に流通された海水を、前記陽極及び前記陰極間に通電される電流によって電気分解する海水電解方法において、
前記陽極として酸化イリジウムを含むコーティング材を被覆したチタンを使用し、
前記電極表面の電流密度が20A/dm2〜40A/dm2の範囲となるように、前記陽極及び前記陰極間に電流を通電することを特徴とする海水電解方法。
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