近年、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイとして、たとえば4台あるいは9台の表示パネルを縦横に隣接して配置し、1つの大きな画面を構成し、1台のパーソナルコンピュータから、DVI(Digital Visual Interface)やアナログRGB(Red Green Blue)映像信号、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)などのインターフェイスを経由して接続された各表示パネルへ、1つの画像を分割した画面信号を送ることによって、各表示パネルに画像が個別に表示され、画面全体として一連の画像を表示することができるように構成されている。
このようなマルチディスプレイ装置は、複数の表示パネルによっていわゆるマルチ画面とも称される大形の画面を容易に構築することができるが、各表示パネルの額縁上には画像を表示することができないため、隣接する各表示パネル間の目地または継目などに対応する領域に、表示画面上に線が格子状に入ったように見え、表示品位が低下してしまうという問題がある。
このような問題を解決するための従来技術は、たとえば特許文献1に提案されている。特許文献1に記載される従来技術では、1つの画像を4画面を使用して大きく映し出しているときに、画像を格子状に区切って目障りとなるという問題を解決するために、互いに独立な駆動系を介して映像信号によって駆動される画像表示する複数の画像表示器の表示画面を2次元的に配列して大形画面を形成した多画面表示装置において、表示画面の隣接するもの同士の境界領域に補助表示器を配列したマルチディスプレイ装置が提案されている。
この従来技術では、額縁に設けた補助表示装置に発光ダイオードを用い、非表示領域を挟む画面近傍の平均輝度によって駆動するように構成されている。しかしながら、額縁上で液晶カラー表示素子、発光ダイオード、エレクトロルミネセンスなどの電子部品を制御するため、製造コストが高額となり、かつ消費電力が大きくなるという課題がある。
また、前述のような電子部品を用いず光学的に解決する従来技術は、たとえば特許文献2,3に開示されている。これらの従来技術には、画面上に配置した凸レンズおよび凹レンズを用いて、画面表示光を屈折させ、額縁上まで拡張して表示する構成が提案されている。特許文献2に記載される従来技術では、複数のプラズマディスプレイパネル(Plasma
Display Panel、略称PDP)を縦横に並べて、各PDPの表示画面を繋ぎ合わせて1つの大画面として表示するために、各PDPの前面には、凸レンズ群の行列からなる第1のマルチレンズおよび第2のマルチレンズを配置して、PDPの表示画面に表示する表示画像の正立像を形成し、第2のマルチレンズの前面には、さらに、凹レンズを配置して、上記の正立像をPDP等の前面に配置した透過型スクリーン上に拡大して投影し、複数のPDPに表示した画像を連続した1つの画像として表示することができるマルチディスプレイ装置が提案されている。
また特許文献3に記載される従来技術では、画像が投射されるスクリーンが前面に装着されるスクリーンブロックを多段に積み上げて大形の画面を形成してなるマルチ投射型スクリーンにおいて、マルチ画面で生じる目地を目立たなくするため、前記画像が投射される各平行平板スクリーンブロックの光出射側に周辺が凸レンズ構造で中央部が平板であるレンズ状透明スクリーンを装着したマルチディスプレイ装置が提案されている。
しかしながら、これらの特許文献2,3の各従来技術を実施するためには、画面を覆う大きさの凹レンズや、画面と同サイズのアクリル板の側端部をレンズ状に加工する必要があり、大形のディスプレイ装置になるほど高額な部品が必要となる上、表示画面とレンズとの間に熱が蓄積するという問題がある。
さらに他の従来技術として、たとえば特許文献4〜6には、光ファイバの束を用いて、画面表示を額縁上に偏移させ、非表示部としての額縁を見えなくすることが提案されている。特許文献4に記載される従来技術では、ディスプレイの外周に非表示部(目地)を有するマルチディスプレイ装置において、前記ディスプレイの発光面上に光軸が傾斜した光ファイバプレートを備えたマルチディスプレイ装置が提案されている。
また特許文献5に記載される従来技術では、表示部とこの表示部を囲む額縁とを備えた平板状の表示ユニットの前面に、偏位手段を設け、この偏位手段によって表示ユニットに表示される分割画面を2次元方向に偏位させて分割画面を一体化させることによって、額縁による境界線のない大画面を形成することができるマルチディスプレイ装置が提案されている。
さらに特許文献6に記載される従来技術では、複数の投影機と並列して投影部を設け、これと同様の導光体を投影機と同様に並べてスクリーン部を構成し、導光体の画像光入力端面に、対応する投影機から画像光を投影可能とし、該導光体の反対側の端面である画像光出力端面を、前記画像表示面よりも中心側に偏倚させて、画面内に額縁が生じることのない統一画像表示面を形成するマルチディスプレイ装置が提案されている。この従来技術の導光体は、光ファイバを束ねてなり、画像光入力端面から画像光出力端面の間で光路が、統一画像表示面の中心側寄りに設けられる。
これらの特許文献4〜6に記載される各従来技術では、該従来技術に係るマルチディスプレイ装置を実現するために、画素数に相当する本数の光ファイバの束が必要となり、製造コストが高額になってしまうという問題がある。
図1は第1の本発明に係るマルチディスプレイ装置1を示す断面図であり、図2は図1に示すマルチディスプレイ装置1の簡素化した斜視図であり、図3は図2の切断面線III−IIIから見た断面図であり、図4は反射部材8を示す一部の拡大斜視図である。なお、図2および図3は、理解を容易にするため、簡略化して示されている。
本実施形態において、マルチディスプレイ装置1は、平面的に縦横に並んで配置される表示パネルとしての複数の液晶パネル2と、各液晶パネル2が装着されるシャーシ3と、筐体4と、各液晶パネル2に表示面側(図1の上方)から装着され、各液晶パネル2を各シャーシ3に保持する非表示部である額縁5と、各液晶パネル2の互いに隣接する各額縁5に設けられ、各額縁5よりも面内側の表示領域の出射光を反射する反射面6,7を有する反射部材8と、光学シート9と、拡散板10とを含んで構成される。
本実施形態において、マルチディスプレイ装置1は、テレビジョン受像機またはパーソナルコンピュータなどにおいて、画像情報を出力することによって、画像を表示画面に表示する表示装置によって実現される。各液晶パネル2は、平板状の形状に形成される。液晶パネル2において、厚み方向Zの2つの向きを前面側Z1および背面側Z2とする。
液晶パネル2は、液晶表示素子によって、背後側からのバックライト11の光によって画像を前面2a側に表示することができる。シャーシ3は、液晶パネル2の固定に用いられる基台であり、液晶パネル2よりも背面2b側に配置される。
前記筐体4は、液晶パネル2の固定を補助する複数の部材から成り、分割可能に構成されることが好ましい。筐体4は、枠体12を含んで構成される。枠体12は、乗載部分13と、接触部分14とを有する。乗載部分13は、液晶パネル2を厚み方向Zに見たときの液晶パネル2の外周部の少なくとも一部に、背面2b側から対向する。接触部分14は、外周部に対して液晶パネル2の面方向外方から接触する。額縁5は、液晶パネル2の外周部に前面2a側から対向し、筐体4とともに外周部を挟持する。これによって、液晶パネル2は、額縁5に対して前面2a側への相対的な変位が阻止される。
マルチディスプレイ装置1において、液晶パネル2の周囲を面方向外方から囲繞する額縁5は、いわゆる狭額縁化されている。たとえば、マルチディスプレイシステムに用いる場合には、複数のマルチディスプレイ装置1を一方向に沿って、またはマトリクス状に配置する。このとき、互いに隣接するマルチディスプレイ装置1の境目に当たる部分、すなわち額縁5は画像が表示されない非表示部となる。
各液晶パネル2に表示される各画像は、本来、面方向に連続する画像であるが、額縁5のZ方向から見た図1において左右方向の幅が大きいと、非表示部の幅が大きくなってしまう。マルチディスプレイシステムに用いるようなマルチディスプレイ装置1では、非表示部の幅をなるべく小さくするために、額縁5の幅を小さくする狭額縁化が求められる。本実施形態において、マルチディスプレイ装置1は、各液晶パネル2の対角線方向に長さが60インチで、縦横比率が9対16の狭額縁化された液晶表示装置である。
前記バックライト11は、液晶パネル2よりも背面側Z2に配置される複数の光源を含んで構成される。バックライト11は、シャーシ3に取付けられ、光源から出射された光は、拡散板10、光学シート9を通過し、さらに液晶パネル2を介してマルチディスプレイ装置1よりも前面側Z1に放射され、画像表示を行う表示光として使用される。光源としては、たとえば冷陰極線管などの蛍光管、LED(Light Emitting Diode)などの各種発光部品を用いることができる。
マルチディスプレイ装置1を、正面から背面側Z2に見て、額縁5および液晶パネル2は長方形に形成される。この長方形は、マルチディスプレイ装置1が映像を表示するときの使用時の設置状態において、縦長に配置されても横長に配置されてもよいが、本実施形態では横長に配置される。
前記額縁5は、厚み方向Zに垂直な平板状部分15と、平板状部分15に直角に連なり、液晶パネル2をその面方向外方から囲繞する外周部16とを含む。平板状部分15は、枠体12の前記乗載部分13とともに液晶パネル2の外周部分を挟持する。
液晶パネル2は、図示を省略する2枚の基板を含み、厚み方向Zに見て長方形の板状に形成される。液晶パネル2は、TFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を含み、2枚の基板の隙間には液晶が注入されている。液晶パネル2は、背面側Z2のバックライト11からの光が照射されることによって、表示機能を発揮する透過型液晶表示装置である。前記2枚の基板には、液晶パネル2における各画素の駆動制御用のドライバ(ソースドライバ)および配線が設けられている。
筐体4は、液晶パネル2よりも背面側Z2、かつシャーシ3よりも前面側Z1に配置され、シャーシ3に取付けられる。筐体4には、光学シート9、拡散板10、バックライト11および反射シート18が配置される。バックライト11の光源は、たとえば、複数本の蛍光管を含み、各蛍光管は、図示しないランプホルダによってシャーシ3に取付けられる。蛍光管よりも前面側Z1には、拡散板10が配置され、拡散板10よりも前面側Z1には前記光学シート9が配置される。拡散板10および光学シート9は、液晶パネル2に平行に配置される。
拡散板10は、蛍光管から発せられた光を、面方向に拡散することによって、輝度が局所的に偏ることを防止する。光学シート9は、複数の光学シートで構成され、本実施形態では、2枚の光学シート9aおよび光学シート9bによって構成され、たとえばカラーフィルタから成る。
拡散板10では、輝度が面方向に偏ることを防ぐために、光の進行方向は、ベクトル成分として、面方向の成分を多く含む。これに対し光学シート9は、面方向のベクトル成分を多く含む光の進行方向を、厚み方向Zの成分を多く含む光の進行方向に変換する。具体的には、光学シート9は、レンズまたはプリズム状に形成される部分が面方向に多数並んで形成され、これによって、厚み方向Zに進行する光の拡散度を小さくする。したがって、マルチディスプレイ装置1による表示において、輝度を上昇させることができる。
シャーシ3は、厚み方向Zに垂直な平板状の底部19と、底部19に連なり底部19から立ち上がる側壁部20と、側壁部20のうち底部19が連なる部分とは反対側の部分に連なり、底部19と平行に広がる平板状のフランジ部21とを含んで形成される。底部19は、厚み方向Zに見て長方形に形成される。
反射シート18は、前記シャーシ3における底部19の前面側Z1の表面の少なくとも一部と、前記フランジ部21とに接触して配置される。反射シート18は、前記側壁部20に対しては接触して配置されてもよく、また接触せず配置されてもよい。反射シート18の少なくとも前面側Z1に臨む表面は、バックライト11からの光に対して高い反射率、理想的には100%の反射率を有する。
枠体12は、光学シート9および拡散板10の各外周部が乗載される段差部17と、段差部17から背面側Z2に連なり、シャーシ3の側壁部20を内周面側から覆い、シャーシ3に対してビスなどによって連結される第2周壁部22と、段差部17の外周部から前面側Z1に連なって立ち上がる第1周壁部23とを含む。
第1周壁部23の前面側Z1の領域には、前面側Z1に臨み、液晶パネル2の外周部に対向する前記乗載部分13と、乗載部分13よりも面方向外方において前面側Z1に突出し、液晶パネル2に面方向外方から接触する接触部分14とが形成される。この乗載部分13は、液晶パネル2の外周部を額縁5の平板状部分15とともに挟持する部分である。したがって、乗載部分13は、液晶パネル2の外周部に確実に対向する必要があり、また乗載部分13は、面方向の幅を狭く設定するほど、狭額縁化の実現を容易にすることができる。
液晶パネル2の各辺を成す外周部を支持する乗載部分13について、厚み方向Zおよび各辺の延びる方向に垂直な方向における乗載部分13の寸法を、「幅寸法b1」と称する。マルチディスプレイ装置1の一例として、たとえば各液晶パネル2が60インチのマルチディスプレイ装置1の場合、液晶パネル2のうち画像の表示領域は、およそ長辺方向Xの寸法が133cmで、短辺方向Yの寸法がおよそ75cmである。この場合、乗載部分13の幅寸法b1は、3mm程度に設定される。
枠体12において、第2周壁部22は、液晶パネル2の厚み方向Zに平行に形成され、段差部17のうち、液晶パネル2に関する面方向内方の端部に連なり、背面側Z2に延びて形成される。
第1周壁部23は、液晶パネル2の厚み方向Zに平行に形成され、段差部17のうち、液晶パネル2に関する面方向外方の端部に連なり、前面側Z1に延びて形成される。第1周壁部23の前面側Z1には、前面側Z1に臨み、液晶パネル2の外周部に対向する乗載部分13と、乗載部分13よりも面方向外方において前面側Z1に突出し、液晶パネル2の外縁部に面方向外方から接触する接触部分14とが形成される。枠体12の乗載部分13は、液晶パネル2の外周部を額縁5の平板状部分15と協働して挟持する部分である。したがって、乗載部分13は、液晶パネル2の外周部に確実に対向させて安定に支持し、狭額縁化を図ることができる幅寸法b1に選ばれる。
液晶パネル2の厚み方向Zにおいて、接触部分14の幅寸法(深さあるいは高さ寸法)b2は、液晶パネル2の厚み寸法Tに対してほぼ同一でかつわずかに小さく設定される。これによって、額縁5の平板状部分15が液晶パネル2の外周部に接触し、乗載部分13とともに液晶パネル2を挟持するときに、液晶パネル2が厚み方向Zにがたつくことを防止することができる。
前記反射部材8は、たとえばアクリル樹脂製の断面形状が山形の柱状部材から成り、各額縁5に沿って延び、かつ頂部を挟んで隣接する2つの斜面に反射面6,7が形成される山形柱状の反射部24と、反射部24に連なり、各液晶パネル2の互いに隣接する額縁5の外周部16によって各液晶パネル2の互いに隣接する各側部によって挟持される挟持部25とを有する。すなわち、挟持部25は各液晶パネル2の互いに隣接する各側部によって、間接的に挟持される。各反射面6,7は、三角柱状の反射部24の裾部、すなわち額縁5側に位置する湾曲部分6a,7aと、この湾曲部分6a,7aより連なり反射部24の頂部側に連なる平坦面6b,7bとによって、断面が三角柱状に形成される。各反射面6,7は、アルミニウム合金等の金属薄膜を前記反射部24の2つの斜面に対して、たとえば蒸着によって形成し、この金属薄膜を白鏡面仕上げ、鏡面加工、メッキ処理などの各種の処理を行うことによって鏡面に加工されて形成される。
反射部24と挟持部25とは、図1〜図3に示すように一体の成型体から成るものでもよく、あるいは、図4に示すように反射部24の底面から頂部に向って凹状に、かつ反射部24の長手方向に沿って形成された溝30に、挟持部25を嵌め込むことによって接続されるものであってもよい。反射部24は、断面形状が山形であり、各額縁5の各液晶パネル2の一辺を成す部分に全長にわたって延びる棒状体から成る。挟持部25は、断面がL字状の長尺材であり、反射部24の長さ全長にわたって延びていてもよく、また反射部24の長さの全長より短い部材が複数接続されていてもよい。挟持部25は、反射部24と同様にアクリル樹脂から成ってもよく、あるいはポリ塩化ビニル、アルミニウム合金など、その他の素材から成ってもよい。
このように挟持部25の断面がL字状に形成されることによって、挟持部25を両側から額縁5によって挟持しかつ片側の枠体12およびシャーシ3によって背面側Z2から係止して抜止めし、反射部材8を各額縁5上に確実に位置決めして保持することができる。また挟持部25は、他の実施形態では、断面が逆T字状に形成されてもよい。挟持部25の断面が逆T字状に形成されることによって、挟持部25を両側から額縁5によって挟持しかつ抜止めして、反射部材8を各額縁5上に確実に位置決めされた状態で抜止めし、安定に保持することができる。また挟持部25は、他の実施形態では、断面がI字状に形成されてもよい。挟持部25の断面がI字状に形成されることによって、マルチディスプレイを設置した後から、各液晶パネル2の互いに隣接する額縁5の各側部の間に挿入し、取付けることができる。
このような反射部材8によって、各液晶パネル2を組立ててマルチディスプレイ装置1を構築した状態での表示画面に、非表示部である各額縁5が線状に露呈することを防止し、表示品位を向上することができる。また、反射部材8は、反射面6,7を有する機械的部品によって実現され、前記従来技術のような電子部品あるいは光ファイバなどの光学部品を用いないため、安価な製造コストで非表示部が露呈しない消費電力の少ないマルチディスプレイ装置1を実現することができる。
また、反射部材8は、隣接する各額縁5に沿って延びる2つの表面に反射面6,7が形成される断面形状が山形の柱状部材から成るので、各額縁5の両側の表示画面の表示光を各反射面によってそれぞれ反射し、各額縁5を介して隣接する各表示画面の表示を、外見上、実質的に連続した一連の画像として視認することができ、各額縁5が線状に露見されること防止することができる。したがって、マルチディスプレイ装置1を正面から見ると、上下、左右のそれぞれに額縁5の近辺の画像が反射面6,7によって反射され、その反射像が目に入るために、額縁線を目立たなくすることができる。特に、本実施形態では、反射部材8の反射部24の断面が山形の柱状に形成され、額縁5の線を隠蔽して目立たなくすることができる。
さらに、反射部材8は、隣接する各額縁5に沿って延びる2つの表面に反射面6,7が形成される山形柱状の反射部24と、反射部24に連なり、各液晶パネル2の互いに隣接する各側部によって挟持される挟持部25とを有するので、反射部材8を各液晶パネル2の各額縁5に正確に位置決めされた状態で容易かつ確実に設けることができる。
前述の実施形態の反射部材8は、非表示部として額縁5を隠蔽する幅を有する構成について述べたが、本発明の他の実施形態では、額縁5を隠蔽しかつ額縁5よりも内側の液晶パネル2の有効表示領域の外縁まで覆う幅に形成されてもよい。
図5は反射部材8が隣接する2つの額縁5に設置された状態を示す一部の斜視図であり、図6は反射部材8がマルチディスプレイ装置1の周縁部の額縁5に設置された状態を示す一部の斜視図である。前述のマルチディスプレイ装置1において、前記反射部材8は、図5に示すように、同一面上で隣接する2つの液晶パネル2の額縁5に設置されるとともに、マルチディスプレイ装置1の周縁部、すなわち面方向外方に配置される額縁5には、図6に示すように、表示画面に臨む斜辺に対応する片側の表面だけに反射面6を有する断面が半山形形状の反射部材8aが、たとえば両面粘着テープ31によって接着されて設けられる。各反射部材8,8aの各反射面6,7は、表示画面の額縁5近傍の反射対象領域32から矢符A1で示すように放射される光を矢符A2で示すように反射するため、額縁5は正面から表示画面を視認する看者には認識されず、実質的に額縁5を隠蔽し、マルチディスプレイ装置1全体としての表示画像の額縁5による表示品位の低下を防止することができる。
図6に示すようなマルチディスプレイ装置1の周縁部の額縁5に設けられる反射部材8aは、本発明の他の実施形態においては、表示上の支障がない場合には、省略されてもよい。
図7は液晶パネル2からの出射光の反射パターンを示す図であり、図7(1)は本実施形態の反射部材8による反射パターンを示す図であり、図7(2)は比較例として反射部材の反射面が傾斜した平面である場合の反射パターンを示す図である。本実施形態の反射部材8による場合、図7(1)に示すように、液晶パネル2の額縁5に近い部分からの出射光をも反射させることができ、これによって、液晶パネル2からの出射光による画像と、反射面6,7からの反射光による画像との違和感をより少なくすることができる。さらに、隣接する液晶パネル2からの出射光による画像の連続的視認性も改良される。これに比べて、図7(2)に示す比較例では、液晶パネル2の額縁5に近い部分からの出射光の反射が充分に成されないため、前記のような違和感や、連続的視認性の点において不充分さがある。
なお、額縁5上においては、反転された映像、すなわちマルチディスプレイ装置1に表示される映像に対して、反射部24の長手方向が上下になるように取付けた場合は左右反転像、反射部24の長手方向が左右になるように取付けた場合は上下反転像が表示される。各液晶パネル2の大形画面化および狭額縁化によって、額縁5のサイズは、各液晶パネル2の画面全体のサイズに比較して非常に微細な範囲であるため、反転されていても目立たない。また、文字などの細かい表示の場合、額縁線上にかからないよう、すなわち額縁5が反射面6,7に移り込まないように配置することによって、反転表示を防止することが可能である。しかも、本実施形態では、山形形状の反射部24の裾部に、反射面6,7の一部を成す湾曲部分6a,7aが形成され、これによって、前述のとおり液晶パネル2の額縁5に近い部分からの出射光の反射が充分に成されるから、文字などの細かい表示を反射面6,7に移り込まないように配置することがより容易となる。
図8はマルチディスプレイ装置1の表示状態を示す正面図であり、図8(1)は額縁5に反射部材8が設けられていないときの画面の表示状態を示し、図8(2)は額縁5に反射部材8を設けたときの画面の表示状態を示す図である。前述のマルチディスプレイ装置1は、図8(2)から明らかなように、反射部材8が額縁5に設けられることによって、互いに隣接する各液晶パネル2間および各液晶パネル2の外周部に配置される各額縁5が、図8(1)のような額縁線が認識されることを防ぎ、表示品位の高い画像を実現することができる。
図9は本発明の他の実施形態の反射部材8bを具備するマルチディスプレイ装置1aを示す一部の断面図である。なお、前述の各実施形態と対応する部分には同一の参照符を付す。本実施形態では、反射部材8bは、隣接する各額縁5に沿って延びる2つの表面に前記と同様の反射面6,7が形成される山形柱状の反射部24のみから成り、すなわち、前記のような挟持部25を有さず、かつ隣接する各額縁5に両面粘着テープ31bによって固着される。このような構成によって、反射部材8bを容易に各額縁5へ高い強度で取付けることができる。
図10は本発明のさらに他の実施形態の反射部材8cを具備するマルチディスプレイ装置1bを示す一部の断面図である。なお、前述の各実施形態と対応する部分には同一の参照符を付す。本実施形態では、反射部材8cは、隣接する各額縁5に沿って延びる2つの表面に前記と同様の反射面6,7が形成される山形柱状の反射部24のみから成り、すなわち、前記のような挟持部25を有さず、隣接する各額縁5の一方に両面粘着テープ31cによって固着され、かつ各非表示部の他方に帯状にスペーサである合成樹脂製のシート体31dを介して乗載されるので、各非表示部の近接/離反する方向に相対変位しても、反射部材8cは一方の額縁5に両面粘着テープ31cによって固着され、かつ他方の額縁5にシート体31dを介して乗載されるので、反射部材8cが固着されている側の額縁5に追従して移動し、他方の額縁5に固着されたシート体31d上を摺動することができ、前記相対変位を許容することができる。一方の非表示部は他方の非表示部よりも幅が大きいので、反射部材8cを前記一方の非表示部に対して高い強度で接合することができる。
図11は本発明のさらに他の実施形態の反射部材8dを具備するマルチディスプレイ装置1cを示す一部の断面図である。なお、前述の各実施形態と対応する部分には同一の参照符を付す。本実施形態では、反射部材8dが前述の額縁5および枠体12を兼ねた構造体として一体に形成される。これによってもまた、前述の各実施形態と同様に額縁5が線として認識されることを抑制し、または防止することができるとともに、額縁5と反射部材8dとを一体成形によって同時に製造することができ、製造コストの削減を図ることができる。
図12は本発明のマルチディスプレイ装置1の全体斜視図と、本マルチディスプレイ装置1における反射部材8の交差部Aの一部を拡大して示す斜視図であり、図13は図12の交差部Aの拡大平面図である。図14は図13に示す反射部材8の交差部A側に配置される端部81の構造を示す図であり、図14(1)は反射部材8の端部81の平面図であり、図14(2)は反射部材8の端部81の側面図であり、図14(3)は反射部材8の端部81を図14(2)の右側から見た正面図である。なお、本実施形態の反射部材8の端部81の構成は、前述の各実施形態の反射部材8,8a〜8dの全てに適用可能であるため、反射部材8について説明し、残余の反射部材8a〜8dについては重複を避けて説明は省略する。
複数(図12では16)の液晶パネル2が各画像表示面にて共通な一平面を成すようにマトリクス状に配置されたマルチディスプレイ装置1において、前記反射部材8は各額縁5上に前述のように搭載され、複数の交差部Aを有する。各交差部Aでは、各反射部材8の端部81が隙間なく接触した状態とするため、交差部Aにおける各画像表示面を含む共通な仮想一表面に垂直な中心軸線Lに関して軸対称または中心軸線Lを含む仮想一平面に関して面対称に、略三角錐状に形成される。
図15〜図20は第2の本発明に係るマルチディスプレイ装置100を示し、図15はマルチディスプレイ装置100の一実施形態における反射部材50が隣接する2つの額縁5に設置された状態を示す一部の斜視図であり、図16は図5に示す反射部材50における反射面51および非反射面52の額縁5に対する傾斜角度を示す断面図であり、図17は本実施形態のマルチディスプレイ装置100の表示状態を示す正面図の一部である。図17(1)は額縁5に反射部材50が設けられているときの画面の表示状態を示し、図17(2)は比較例として額縁5に3つの角が全て鋭角の三角柱状の反射部材500を設けたときの画面の表示状態を示す図である。また、図18は本実施形態の第1の変形例の反射部材50aを示す一部の拡大斜視図であり、図19は本実施形態の第2の変形例の反射部材50bを示す一部の拡大斜視図である。図20は第2の変形例の反射部材50bを用いたマルチディスプレイ装置100aの全体斜視図と、各部位における反射部材50bの設置態様を示す図である。
図15および図16において、反射部材50を除くマルチディスプレイ装置100の構成部材は、図5に示す例と同様であるので対応する部分には同一の参照符を付す。本実施形態の反射部材50は、非表示部としての額縁5を覆い、かつ、この額縁5に対して斜めに配される1個の平面状の反射面51を含む。そして、この反射部材50は、たとえばアクリル樹脂から成り、前記平面状の反射面51が形成される反射部53と、各液晶パネル2の互いに隣接する額縁5の各外周部16によって挟持される挟持部54とを有する。本実施形態の反射部53は、底角が鋭角と鈍角の三角形状の柱状体から成り、鋭角側の斜面が反射面51とされ、鈍角側の斜面が非反射面52とされる。反射面51に対して、前記と同様に、アルミニウム合金等の金属薄膜をたとえば蒸着によって形成し、この金属薄膜を白鏡面仕上げ、鏡加工、メッキ処理などの各種の処理を行うことによって鏡面に加工されて形成される。本実施形態では、挟持部54は反射部53とともに樹脂の一体成型によって形成されている。
本実施形態において、反射面51の額縁5における平板状部分15に対する傾斜角度αは、45°<α<90°、非反射面52の平板状部分15に対する傾斜角度βは、45°<α≦90°でかつα<βになるよう設定される。これによって、反射部24の底部の幅寸法を隣接する額縁5の両平板状部分15の両端部間寸法に整合するよう設定すれば、平面視において隣接する額縁5が反射面51によって完全に覆われることになる。そして、図15に示すように、反射面51の傾斜立ち上がり基部51a側の液晶パネル2における反射対象領域32から矢符A1で示すように放射される光を、反射面51によって矢符A2で示すように反射するため、額縁5は正面から表示画面を視認する看者には認識されず、実質的に額縁5を隠蔽し、マルチディスプレイ装置1全体としての表示画像の額縁5による表示品位の低下を防止することができる。
図17(1)は、図15および図16に示すように額縁5に反射部材50が設けられているときの画面の表示状態を平面的に示しており、前記反射対象領域32からの放射光が平面状の反射面51の全面から反射されるから、この反射光画像には、反射対象領域32からの放射光画像以外の筋などが視認されない。これに対して図17(2)に示すように、断面形状が三角形の反射部材500(たとえば、前記先願に開示された反射部材)を用いると、その反射光画像の中央部に三角形の頂部に対応する線500aが視認される。
図18は、本実施形態の第1の変形例の反射部材50aを示す一部の拡大斜視図である。この例では、反射部53が平板状部材から成り、この平板状の反射部53が挟持部54に対して所定の傾斜角度となるよう一体に固定されている。そして、反射部53の挟持部54による固定部とは反対側の傾斜面が反射面51とされている。
また、図19は、第2の変形例の反射部材50bを示す一部の拡大斜視図である。この例では、反射部53が第1の変形例と同様に平板状部材から成るが、反射部53は断面形状が直状(I字状)の挟持部55に対して、該挟持部55の上端に反射部材50bの長手方向に沿って固着された支持軸56の軸線56a回りに回動可能に連結され、反射面51の前記額縁5に対する傾斜角度α(図16参照)が調整可能とされている。そして、挟持部55がI字状に形成されることによって、マルチディスプレイを設置した後から、各液晶パネル2の互いに隣接する額縁5の各外周部16の間に挿入し、取付けることができるとともに、額縁5からの反射部材50bの突出高さを調整することができる。反射部53の下面には、前記支持軸56に同心的に嵌合する断面扇形(扇角が180°以上)の開環状の嵌合部材57が固着されている。嵌合部材57の内径は、支持軸56の外径よりやや小とされ、嵌合部材57は支持軸56に対してフリクションを持って嵌合されている。したがって、反射部材50bは、嵌合部材57の支持軸56に対する嵌合によって、支持軸56の軸線56a回りに回動可能に支持されるとともに、任意の回動位置に保持され、反射面51の傾斜角度αの任意設定が可能とされている。
図20は、第2の変形例の反射部材50bを用いたマルチディスプレイ装置100aの模式的全体斜視図と、各部位における反射部材50bの設置態様を側面して示す模式図である。このマルチディスプレイ装置100aは、5×5(=25)枚の液晶パネル2をマトリックス状に並べて構成されている。マルチディスプレイ装置100aの周縁部分には、額縁(図示せず)のみで反射部材50bは設けられていない。そして、隣接する各額縁5間には反射部材50bが設けられるが、縦方向(上下方向)には、縦方向全長に亘り連続する反射部材50bが各1本ずつ計4本設けられ、横方向(左右方向)には、隣接する液晶パネル2毎に反射部材50bが計20本設けられている。左右方向に並ぶ縦向きの4本の反射部材50b(1)〜50b(4)のうち、左右両端の反射部材50b(1),50b(4)は、反射面51が互いに向き合うとともに、反射面51の傾斜角度が大きく設定され、かつ、額縁5からの突出位置が高くなるよう挟持部55が隣接する額縁5間に挟持されている。また、中間部の反射部材50b(2),50b(3)は、反射面51が互いに向き合うとともに、反射部材50b(1),50b(4)より反射面51の傾斜角度が小さく設定され、かつ、額縁5からの突出位置が低くなるよう挟持部55が隣接する額縁5間に挟持されている。さらに、上下方向に並ぶ横向きの反射部材50b(5)〜50b(8)は、いずれも反射面51が下方に向けられ、上端の反射部材50b(5)から下端の反射部材50b(8)にかけて、反射面51の傾斜角度が徐々に小さくなるよう設定され、かつ、額縁5からの突出位置が徐々に低くなるよう挟持部55が隣接する額縁5間に挟持されている。
なお、横向きの反射部材50b(5)〜50b(8)においては、各列の横方向に並ぶ各5本の反射部材50bは、それぞれ同様の設置態様とされる。
図20に示すような大画面のマルチディスプレイ装置100aの場合、看者はマルチディスプレイ装置100aの中央の少し離れた位置からやや見上げるように位置することが想定される。したがって、前記のような態様で各反射部材50bを設置することによって、反射部材50bによる表示画面からの反射光が看者の視点に集まりやすくなり、額縁5が露呈して表示品位が低下することを可及的に少なくすることができる。
図21は、第3の本発明に係るマルチディスプレイ装置200の一実施形態における反射部材60が隣接する2つの額縁5に設置された状態を示す一部の斜視図である。また、図22は図21に示す反射部材60による液晶パネル2からの出射光の反射パターンを示す図である。図21において、反射部材60を除くマルチディスプレイ装置200の構成部材は、図5に示す例と同様であるので対応する部分には同一の参照符を付す。本実施形態の反射部材60は、断面形状が三角形の柱状部材から成り、2つの斜面による反射面61,62を有する反射部63と、この反射部63に連なり、隣接する額縁5の各外周部16に挟持される挟持部64とを含む。前記反射面61は、粗面化処理部65を含む。図21の拡大部は、粗面化処理部65を誇張して示す拡大断面図である。粗面化処理部65は、反射面61の全面に亘り形成してもよいが、本実施形態では、額縁5から離れるに従って粗面化度合いが大きくなるよう形成されている。粗面化処理部65は、ショットブラスト、エッチング処理、その他の公知の処理法によって形成される。
このような反射部材60が設けられたマルチディスプレイ装置200においては、液晶パネル2の反射対象領域32から矢符A1で示すように放射される光は、反射部材60の反射面61によって反射される。このとき、反射面61には粗面化処理部65が形成されているから、この粗面化処理部65によって図21の矢符A2,A3、および図22の反射光で示すように乱反射する。この乱反射によって、反射映像をぼやかすことができる。本実施形態では、粗面化処理部65が、額縁5から離れるに従って粗面化度合いが大きくなるよう形成されているから、隣接する液晶パネル2からの反射映像が違和感なく視覚される。特に、反射部分で反転することにより、その部分が目立ち、見づらくなるような映像が多用される場合には、額縁5から離れるに従ってぼやけた映像を表示させることは、スムーズな表示に有効である。
なお、第3の本発明に係る粗面化処理部を、第1および第2の本発明に係る反射部材8、50にも適用することは可能である。これによって、第1および第2の本発明と、第3の本発明との複合した効果が得られる。また、第1および第3の本発明においても、看者の視点Bが最も集まりやすい位置を想定して反射方向を設定した反射部材を実装してマルチディスプレイ装置を構成することによって、それぞれの反射部材が表示画面からの光を反射し、額縁5が露呈して表示品位が低下することを可及的に少なくすることができる。また、図9〜図11に示す実施形態を第2の本発明あるいは第3の本発明に適用することも可能である。