近年、インフォメーションディスプレイおよび業務用ディスプレイとして、たとえば4台あるいは9台の表示パネルを縦横に隣接して配置し、1つの大きな画面を構成し、1台のパーソナルコンピュータから、DVI(Digital Visual Interface)やアナログRGB(Red Green Blue)映像信号、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)などのインターフェイスを経由して接続された各表示パネルへ、1つの画像を分割した画面信号を送ることによって、各表示パネルに画像が個別に表示され、画面全体として一連の画像を表示することができるように構成されている。
このようなマルチディスプレイ装置は、複数の表示パネルによっていわゆるマルチ画面とも称される大形の画面を容易に構築することができるが、各表示パネルの額縁上には画像を表示することができないため、隣接する各表示パネル間の目地または継目などに対応する領域に、表示画面上に線が格子状に入ったように見え、表示品位が低下してしまうという問題がある。
このような問題を解決するための従来技術は、たとえば特許文献1に提案されている。特許文献1に記載される従来技術では、1つの画像を4画面を使用して大きく映し出しているときに、画像を格子状に区切って目障りとなるという問題を解決するために、互いに独立な駆動系を介して映像信号によって駆動される画像表示する複数の画像表示器の表示画面を2次元的に配列して大形画面を形成した多画面表示装置において、表示画面の隣接するもの同士の境界領域に補助表示器を配列したマルチディスプレイ装置が提案されている。
この従来技術では、額縁に設けた補助表示装置に発光ダイオードを用い、非表示領域を挟む画面近傍の平均輝度によって駆動するように構成されている。しかしながら、額縁上で液晶カラー表示素子、発光ダイオード、エレクトロルミネセンスなどの電子部品を制御するため、製造コストが高額となり、かつ消費電力が大きくなるという課題がある。
また、前述のような電子部品を用いず光学的に解決する従来技術は、たとえば特許文献2,3に開示されている。これらの従来技術には、画面上に配置した凸レンズおよび凹レンズを用いて、画面表示光を屈折させ、額縁上まで拡張して表示する構成が提案されている。特許文献2に記載される従来技術では、複数のプラズマディスプレイパネル(Plasma
Display Panel、略称PDP)を縦横に並べて、各PDPの表示画面を繋ぎ合わせて1つの大画面として表示するために、各PDPの前面には、凸レンズ群の行列からなる第1のマルチレンズおよび第2のマルチレンズを配置して、PDPの表示画面に表示する表示画像の正立像を形成し、第2のマルチレンズの前面には、さらに、凹レンズを配置して、上記の正立像をPDP等の前面に配置した透過型スクリーン上に拡大して投影し、複数のPDPに表示した画像を連続した1つの画像として表示することができるマルチディスプレイ装置が提案されている。
また特許文献3に記載される従来技術では、画像が投射されるスクリーンが前面に装着されるスクリーンブロックを多段に積み上げて大形の画面を形成してなるマルチ投射型スクリーンにおいて、マルチ画面で生じる目地を目立たなくするため、前記画像が投射される各平行平板スクリーンブロックの光出射側に周辺が凸レンズ構造で中央部が平板であるレンズ状透明スクリーンを装着したマルチディスプレイ装置が提案されている。
しかしながら、これらの特許文献2,3の各従来技術を実施するためには、画面を覆う大きさの凹レンズや、画面と同サイズのアクリル板の側端部をレンズ状に加工する必要があり、大形のディスプレイ装置になるほど高額な部品が必要となる上、表示画面とレンズとの間に熱が蓄積するという問題がある。
さらに他の従来技術として、たとえば特許文献4〜6には、光ファイバの束を用いて、画面表示を額縁上に偏移させ、非表示部としての額縁を見えなくすることが提案されている。特許文献4に記載される従来技術では、ディスプレイの外周に非表示部(目地)を有するマルチディスプレイ装置において、前記ディスプレイの発光面上に光軸が傾斜した光ファイバプレートを備えたマルチディスプレイ装置が提案されている。
また特許文献5に記載される従来技術では、表示部とこの表示部を囲む額縁とを備えた平板状の表示ユニットの前面に、偏位手段を設け、この偏位手段によって表示ユニットに表示される分割画面を2次元方向に偏位させて分割画面を一体化させることによって、額縁による境界線のない大画面を形成することができるマルチディスプレイ装置が提案されている。
さらに特許文献6に記載される従来技術では、複数の投影機と並列して投影部を設け、これと同様の導光体を投影機と同様に並べてスクリーン部を構成し、導光体の画像光入力端面に、対応する投影機から画像光を投影可能とし、該導光体の反対側の端面である画像光出力端面を、前記画像表示面よりも中心側に偏倚させて、画面内に額縁が生じることのない統一画像表示面を形成するマルチディスプレイ装置が提案されている。この従来技術の導光体は、光ファイバを束ねてなり、画像光入力端面から画像光出力端面の間で光路が、統一画像表示面の中心側寄りに設けられる。
これらの特許文献4〜6に記載される各従来技術では、該従来技術に係るマルチディスプレイ装置を実現するために、画素数に相当する本数の光ファイバの束が必要となり、製造コストが高額になってしまうという問題がある。
図1は本発明に係る一実施形態のマルチディスプレイ装置1を示す断面図であり、図2は図1に示すマルチディスプレイ装置1の簡素化した斜視図であり、図3は図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。なお、図2および図3は、理解を容易にするため、簡略化して示されている。
本実施形態において、マルチディスプレイ装置1は、平面的に縦横に並んで配置される表示パネルとしての複数の液晶パネル2と、各液晶パネル2が装着されるシャーシ3と、筐体4と、各液晶パネル2に表示面側(図1の上方)から装着され、各液晶パネル2を各シャーシ3に保持する非表示部である額縁5と、各液晶パネル2の互いに隣接する各額縁5に設けられ、各額縁5よりも内側の表示領域の出射光を反射する反射面6,7を有する反射部材8と、光学シート9と、拡散板10とを含んで構成される。
本実施形態において、マルチディスプレイ装置1は、テレビジョン受像機またはパーソナルコンピュータなどにおいて、画像情報を出力することによって、画像を表示画面に表示する表示装置によって実現される。各液晶パネル2は、平板状の形状に形成される。液晶パネル2において、厚み方向Zの2つの向きを前面側Z1および背面側Z2とする。
液晶パネル2は、液晶表示素子によって、背後側からのバックライト11の光によって画像を前面2a側に表示することができる。シャーシ3は、液晶パネル2の固定に用いられる基台であり、液晶パネル2よりも背面2b側に配置される。
前記筐体4は、液晶パネル2の固定を補助する複数の部材から成り、分割可能に構成されることが好ましい。筐体4は、枠体12を含んで構成される。枠体12は、乗載部分13と、接触部分14とを有する。乗載部分13は、液晶パネル2を厚み方向Zに見たときの液晶パネル2の外周部の少なくとも一部に、背面2b側から対向する。接触部分14は、外周部に対して液晶パネル2の面方向外方から接触する。額縁5は、液晶パネル2の外周部に前面2a側から対向し、筐体4とともに外周部を挟持する。これによって、液晶パネル2は、額縁5に対して前面2a側への相対的な変位が阻止される。
マルチディスプレイ装置1において、液晶パネル2の周囲を面方向外方から囲繞する額縁5は、いわゆる狭額縁化されている。たとえば、マルチディスプレイシステムに用いる場合には、複数のマルチディスプレイ装置1を一方向に沿って、またはマトリクス状に配置する。このとき、互いに隣接するマルチディスプレイ装置1の境目に当たる部分、すなわち額縁5は画像が表示されない非表示部となる。
各液晶パネル2に表示される各画像は、本来、面方向に連続する画像であるが、額縁5のZ方向から見た図1において左右方向の幅が大きいと、非表示部の幅が大きくなってしまう。マルチディスプレイシステムに用いるようなマルチディスプレイ装置1では、非表示部の幅をなるべく小さくするために、額縁5の幅を小さくする狭額縁化が求められる。本実施形態において、マルチディスプレイ装置1は、各液晶パネル2の対角線方向に長さが60インチで、縦横比率が9対16の狭額縁化された液晶表示装置である。
前記バックライト11は、液晶パネル2よりも背面側Z2に配置される複数の光源を含んで構成される。バックライト11は、シャーシ3に取付けられ、光源から出射された光は、拡散板10、光学シート9を通過し、さらに液晶パネル2を介してマルチディスプレイ装置1よりも前面側Z1に放射され、画像表示を行う表示光として使用される。光源としては、たとえば冷陰極線管などの蛍光管、LED(Light Emitting Diode)などの各種発光部品を用いることができる。
マルチディスプレイ装置1を、正面から背面側Z2に見て、額縁5および液晶パネル2は長方形に形成される。この長方形は、マルチディスプレイ装置1が映像を表示するときの使用時の設置状態において、縦長に配置されてもよく、横長に配置されてもよいが、本実施形態では横長に配置される。
前記額縁5は、厚み方向Zに垂直な平板状部分15と、平板状部分15に直角に連なり、液晶パネル2をその面方向外方から囲繞する外周部16とを含む。平板状部分15は、枠体12の前記乗載部分13とともに液晶パネル2の外周部分を挟持する。
液晶パネル2は、図示を省略する2枚の基板を含み、厚み方向Zに見て長方形の板状に形成される。液晶パネル2は、TFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を含み、2枚の基板の隙間には液晶が注入されている。液晶パネル2は、背面側Z2のバックライト11からの光が照射されることによって、表示機能を発揮する透過型液晶表示装置である。前記2枚の基板には、液晶パネル2における各画素の駆動制御用のドライバ(ソースドライバ)および配線が設けられている。
筐体4は、液晶パネル2よりも背面側Z2、かつシャーシ3よりも前面側Z1に配置され、シャーシ3に取付けられる。筐体4には、光学シート9、拡散板10、バックライト11および反射シート18が配置される。バックライト11の光源は、たとえば、複数本の蛍光管を含み、各蛍光管は、図示しないランプホルダによってシャーシ3に取付けられる。蛍光管よりも前面側Z1には、拡散板10が配置され、拡散板10よりも前面側Z1には前記光学シート9が配置される。拡散板10および光学シート9は、液晶パネル2に平行に配置される。
拡散板10は、蛍光管から発せられた光を、面方向に拡散することによって、輝度が局所的に偏ることを防止する。光学シート9は、複数の光学シートで構成され、本実施形態では、2枚の光学シート9aおよび光学シート9bによって構成され、たとえばカラーフィルタから成る。
拡散板10では、輝度が面方向に偏ることを防ぐために、光の進行方向は、ベクトル成分として、面方向の成分を多く含む。これに対し光学シート9は、面方向のベクトル成分を多く含む光の進行方向を、厚み方向Zの成分を多く含む光の進行方向に変換する。具体的には、光学シート9は、レンズまたはプリズム状に形成される部分が面方向に多数並んで形成され、これによって、厚み方向Zに進行する光の拡散度を小さくする。したがって、マルチディスプレイ装置1による表示において、輝度を上昇させることができる。
シャーシ3は、厚み方向Zに垂直な平板状の底部19と、底部19に連なり底部19から立ち上がる側壁部20と、側壁部20のうち底部19が連なる部分とは反対側の部分に連なり、底部19と平行に広がる平板状のフランジ部21とを含んで形成される。底部19は、厚み方向Zに見て長方形に形成される。
反射シート18は、前記シャーシ3における底部19の前面側Z1の表面の少なくとも一部と、前記フランジ部21とに接触して配置される。反射シート18は、前記側壁部20に対しては接触して配置されてもよく、また接触せず配置されてもよい。反射シート18の少なくとも前面側Z1に臨む表面は、バックライト11からの光に対して高い反射率、理想的には100%の反射率を有する。
枠体12は、光学シート9および拡散板10の各外周部が乗載される段差部17と、段差部17から背面側Z2に連なり、シャーシ3の側壁部20を内周面側から覆い、シャーシ3に対してビスなどによって連結される第2周壁部22と、段差部17の外周部から前面側Z1に連なって立ち上がる第1周壁部23とを含む。
第1周壁部23の前面側Z1の領域には、前面側Z1に臨み、液晶パネル2の外周部に対向する前記乗載部分13と、乗載部分13よりも面方向外方において前面側Z1に突出し、液晶パネル2に面方向外方から接触する接触部分14とが形成される。この乗載部分13は、液晶パネル2の外周部を額縁5の平板状部分15とともに挟持する部分である。したがって、乗載部分13は、液晶パネル2の外周部に確実に対向する必要があり、また乗載部分13は、面方向の幅を狭く設定するほど、狭額縁化の実現を容易にすることができる。
液晶パネル2の各辺を成す外周部を支持する乗載部分13について、厚み方向Zおよび各辺の延びる方向に垂直な方向における乗載部分13の寸法を、「幅寸法b1」と称する。マルチディスプレイ装置1の一例として、たとえば各液晶パネル2が60インチのマルチディスプレイ装置1の場合、液晶パネル2のうち画像の表示領域は、およそ長辺方向Xの寸法が133cmで、短辺方向Yの寸法がおよそ75cmである。この場合、乗載部分13の幅寸法b1は、3mm程度に設定される。
枠体12において、第2周壁部22は、液晶パネル2の厚み方向Zに平行に形成され、段差部17のうち、液晶パネル2に関する面方向内方の端部に連なり、背面側Z2に延びて形成される。第1周壁部23は、液晶パネル2の厚み方向Zに平行に形成され、段差部17のうち、液晶パネル2に関する面方向外方の端部に連なり、前面側Z1に延びて形成される。第1周壁部23の前面側Z1には、前面側Z1に臨み、液晶パネル2の外周部に対向する乗載部分13と、乗載部分13よりも面方向外方において前面側Z1に突出し、液晶パネル2の外縁部に面方向外方から接触する接触部分14とが形成される。枠体12の乗載部分13は、液晶パネル2の外周部を額縁5の平板状部分15と協働して挟持する部分である。したがって、乗載部分13は、液晶パネル2の外周部に確実に対向させて安定に支持し、狭額縁化を図ることができる幅寸法b1に選ばれる。
液晶パネル2の厚み方向Zにおいて、接触部分14の幅寸法(深さあるいは高さ寸法)b2は、液晶パネル2の厚み寸法Tに対してわずかに小さく設定される。これによって、額縁5の平板状部分15が液晶パネル2の外周部に接触し、乗載部分13とともに液晶パネル2を挟持するときに、液晶パネル2が厚み方向Zにがたつくことを防止することができる。
前記反射部材8は、たとえばアクリル樹脂、あるいはアルミニウム製の2枚の長尺板状体24,25を略V字状に一体化された反射部26から成り、各額縁5に沿って延び、かつ反射部26の頂部を挟んで隣接する2つの斜面に反射面6,7が形成されている。前記板状体24,25の前記反射面6,7とは反対側の裏面に、反射部26の長手方向に沿った断面V字状の凹溝(以下、V溝と略記する)24a,25aが脆弱部として形成されている。このV溝24a,25aの形成部位が、各板状体24,25が弾性的に屈曲し得る長手方向に沿った所定部位とされる。前記板状体24,25の下端部24b,25bは斜めにカットされた形状とされ、この下端部24b,25bを、両面粘着テープ27,28を介して隣接する額縁5のそれぞれの平板状部分15の上面に接着することにより、反射部材8が額縁5に固定されている。各反射面6,7は、アルミニウム合金等の金属薄膜を前記反射部26の2つの斜面に対して、たとえば蒸着によって形成し、この金属薄膜を白鏡面仕上げ、鏡面加工、メッキ処理などの各種の処理を行うことによって鏡面に加工されて形成される。
このような反射部材8によって、各液晶パネル2を組立ててマルチディスプレイ装置1を構築した状態での表示画面に、非表示部である各額縁5が線状に露呈することを防止し、表示品位を向上することができる。また、反射部材8は、反射面6,7を有する機械的部品によって実現され、前記従来技術のような電子部品あるいは光ファイバなどの光学部品を用いず、しかも、反射部材8も単純な構造であるから、安価な製造コストで非表示部が露呈せず、また消費電力が少なく熱の蓄積を生じないマルチディスプレイ装置1を実現することができる。
また、反射部材8は、隣接する各額縁5に沿って延びる2つの表面に反射面6,7が形成される断面形状が山形の反射部26から成るので、各額縁5の両側の表示画面の表示光を各反射面6,7によってそれぞれ反射し、各額縁5を介して隣接する各表示画面の表示を、外見上、実質的に連続した一連の画像として視認することができ、各額縁5が線状に露見されること防止することができる。したがって、マルチディスプレイ装置1を正面から見ると、上下、左右のそれぞれに額縁5の近辺の画像が反射面6,7によって反射され、その反射像が目に入るために、額縁線を目立たなくすることができる。特に、本実施形態では、反射部材8の反射部26の断面がV字状に形成され、額縁5の線を隠蔽して目立たなくすることができる。図示の反射部材8は、非表示部としての額縁5を隠蔽する幅を有するものであるが、本発明の他の実施形態では、額縁5を隠蔽しかつ額縁5よりも内側の液晶パネル2の有効表示領域の外縁まで覆う幅に形成されてもよい。
図4は反射部材8が隣接する2つの額縁5に跨るように設置された状態を示す一部の斜視図である。前述のマルチディスプレイ装置1において、前記反射部材8は、図4に示すように、同一面上で隣接する2つの液晶パネル2の額縁5に前記両面粘着テープ27,28によって接着され設置される。反射部材8の各反射面6,7は、表示画面の額縁5近傍の反射対象領域29から矢符A1で示すように放射される光を矢符A2で示すように反射するため、額縁5は正面から表示画面を視認する看者には認識されず、実質的に額縁5を隠蔽し、マルチディスプレイ装置1全体としての表示画像の額縁5による表示品位の低下を防止することができる。
図5は本実施形態におけるマルチディスプレイ装置1の表示状態を示す正面図であり、図5(1)は額縁5に反射部材8が設けられていないときの画面の表示状態を示し、図5(2)は額縁5に反射部材8を設けたときの画面の表示状態を示す図である。また、図6は、同マルチディスプレイ装置1の液晶パネル2からの出射光の反射パターンを示す図である。前述のマルチディスプレイ装置1は、図5(2)から明らかなように、反射部材8が額縁5に設けられることによって、互いに隣接する各液晶パネル2間および各液晶パネル2の外周部に配置される各額縁5が、図5(1)のように額縁線が認識されることを防ぎ、表示品位の高い画像を実現することができる。また、図6に示すように、隣接する各液晶パネルの前記反射対象領域29からの出射光は反射面6,7(図6では反射面6のみを示している)によって反射され、この反射光を反射対象領域29の光画像として看者によって視認される。
なお、額縁5上においては、反転された映像、すなわちマルチディスプレイ装置1に表示される映像に対して、反射部26の長手方向が上下になるように取付けた場合は左右反転像、反射部26の長手方向が左右になるように取付けた場合は上下反転像が表示される。各液晶パネル2の大形画面化および狭額縁化によって、額縁5のサイズは、各液晶パネル2の画面全体のサイズに比較して非常に微細な範囲であるため、反転されていても目立たない。また、文字などの細かい表示の場合、額縁線上にかからないよう、すなわち額縁5が反射面6,7に移り込まないように配置することによって、反転表示を防止することが可能である。
図7は本実施形態のマルチディスプレイ装置1において液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが熱膨張した状態を示す断面図である。図1に示すように、隣接する液晶パネル2は、マルチスクリーンを組み立てる際には、熱膨張を考慮して隙間Dをあけて配置される。そして、反射部材8は、前述のとおり両面粘着テープ27,28によって、隣接する額縁5の平板状部分15に跨るように接着され、一体に固定される。この状態で各液晶パネル2が駆動すると、各液晶パネル2は熱を持ち、面方向(図7に示す矢符B,C参照)に膨張する。この結果、前記隙間Dが小さくなる。この熱膨張は、反射部材8に対してその板状体24,25を互いに接近させようとする力として作用する。本実施形態の反射部材8においては、板状体24,25に前記V溝24a,25aが形成され、V溝24a,25aの底部が薄肉化による脆弱部とされているから、熱膨張力によって、各板状体24,25のV溝24a,25aより先側部分が互いに接近するよう前記薄肉化部分で屈曲する。これによって、反射部材8が前記熱膨張分を吸収し、液晶パネル2にひずみを生じさせることなく額縁5に一体固定化された状態に維持される。この場合、反射面6,7がフラットな状態から、屈折した状態に変化し、反射対象領域29からの出射光の反射状態に多少の変化を生じるが、前記初期の効果はほぼ維持される。
図8は本実施形態の反射部材8を隣接する液晶パネル2が互いにフラットでない接続状態で構成されるマルチディスプレイ装置1a,1bに適用した場合の断面図を示す。図8(1)は隣接する液晶パネル2の接続部が谷形となるマルチディスプレイ装置1aの例を、図8(2)は隣接する液晶パネル2の接続部が山形となるマルチディスプレイ装置1bの例を示している。なお、前述の各実施形態と対応する部分には同一の参照符を付す。図8(1)に示す例では、隣接する液晶パネル2の成す角度αが180°より小さく、図8(2)に示す例では、隣接する液晶パネル2の成す角度βが180°より大きいことを示している。これらの例においても、隣接する額縁5に跨るように、かつ、両額縁5とその間の隙間を隠蔽するように、下端部24b,25bを、両面粘着テープ27,28を介して隣接する額縁5のそれぞれの平板状部分15の上面に接着することにより反射部材8が設置される。この場合、隣接する額縁5間の間隔に応じて、V溝24a,25aの形成部位において、V溝24a,25aより先側部分を内向き、あるいは外向きに屈曲させて、前記隠蔽が完全に成されるよう調整される。そして、液晶パネル2の駆動に伴う温度上昇によって液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが熱膨張した場合には、前記と同様に板状体24,25が前記V溝24a,25aにおいて屈曲する。これによって、反射部材8が、前記熱膨張分を吸収し、液晶パネル2にひずみを生じることなく、額縁5に一体固定化された状態に維持される。
図9は、本発明に関連する第1の関連発明に係る一実施形態のマルチディスプレイ装置100を示している。また、図10は、第1の関連発明に係る他の実施形態のマルチディスプレイ装置200を示している。なお、前述の各実施形態と対応する部分には同一の参照符を付す。これら実施形態では、隣接する液晶パネル2が互いにフラットでない接続状態で構成されるマルチディスプレイ装置100,200において、それぞれの接続部分の形態に応じた反射部材50,60が用いられる。
図9に示すマルチディスプレイ装置100は、図8(1)の例と同様に、隣接する液晶パネル2の成す角度αが180°より小さく、隣接する液晶パネル2の接続部が谷形を成す場合である。この実施形態の反射部材50は、非表示部としての額縁5から突出する側に2つの反射面51,52が形成される三角柱状の長尺材から成る反射部53と、該反射部53に連なり、前記各液晶パネル2の互いに隣接する各側部の一方に止着される脚部54とを有する。前記反射部53は、各額縁5の各液晶パネル2の一辺を成す部分に全長にわたって延びるアクリル樹脂などの成型材による棒状体から成る。反射部53における前記脚部54が連なる部分は、外側(前記反射部53の頂部53aとは反対側)に突出する屈曲面55とされている。この屈曲面55の屈曲角度は前記角度αにほぼ整合するよう形成され、これによって前記谷形の接続部に、反射部53が納まりよく正確に位置決めして配置することができる。反射部53と脚部54とは、図9に示すように、アクリル樹脂による一体の成型体から成るものでもよく、あるいは、屈曲面55から頂部53aに向って凹状に、かつ反射部53の長手方向に沿って形成された溝(図示を省略)に、脚部54を嵌め込むことによって接続されるものであってもよい。
脚部54は断面がL字状の長尺材であり、反射部53の長さ全長にわたって延びていてもよく、また反射部53の長さの全長より短い部材が複数接続されていてもよい。また、脚部54は、反射部53と同様にアクリル樹脂から成ってもよく、あるいはポリ塩化ビニル、アルミニウム合金など、その他の素材から成ってもよい。脚部54における下端の横向片54aには、ビス挿入用の透孔54bが形成されている。この透孔54bにビス56を挿入し、一方の液晶パネル2を支持するシャーシ3のフランジ部21、および枠体12の第1周壁部23に螺着することによって、脚部54が当該フランジ部21および第1周壁部23に止着される。これによって、反射部材50は、隣接する液晶パネル2の一方の側部に固定される。このような固定による反射部材50の設置状態においては、隣接する額縁5の各平板状部分15が、前記反射部53の屈曲面に接触状態で対向する。そして、液晶パネル2の駆動に伴う温度上昇によって、液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが面方向に熱膨張しても、反射部材50は一方の液晶パネル2に固定され、他方には固定されていないから、この他方の液晶パネル2と反射部材50との相対変位が許容され、熱膨張分が吸収される。
図10に示すマルチディスプレイ装置200は、図8(2)の例と同様に、隣接する液晶パネル2の各表示面の成す角度βが180°より大きく、隣接する液晶パネル2の接続部が山形を成す場合である。この実施形態の反射部材60は、非表示部としての額縁5から突出する側に2つの反射面61,62が形成される断面山形の柱状体から成る反射部63と、該反射部63に連なり、前記各液晶パネル2の互いに隣接する各側部の一方に止着される脚部64とを有する。この実施形態の反射部63も、各額縁5の各液晶パネル2の一辺を成す部分に全長にわたって延びる棒状体から成る。反射部63における前記脚部64が連なる部分は、内側(前記反射部63の頂部63aに向く側)に凹む屈曲面65とされている。この屈曲面65の屈曲角度は前記角度βにほぼ整合するよう形成される。反射部63と脚部64とは、前記例と同様にアクリル樹脂による一体の成型体から成るものでもよく、あるいは、屈曲面65から頂部33aに向って凹状に、かつ反射部63の長手方向に沿って形成された溝(図示を省略)に、脚部64を嵌め込むことによって接続されるものであってもよい。
この実施形態においても、脚部64は断面がL字状の長尺材であり、反射部63の長さ全長にわたって延びていてもよく、また反射部63の長さの全長より短い部材が複数接続されていてもよい。また、脚部64は、反射部63と同様にアクリル樹脂からなってもよく、あるいはポリ塩化ビニル、アルミニウム合金など、その他の素材からなってもよい。脚部64における下端の横向片64aには、ビス挿入用の透孔64bが形成されている。この透孔64bにビス66を挿入し、一方の液晶パネル2を支持するシャーシ3のフランジ部21、および枠体12の第1周壁部23に螺合することによって、脚部64が当該フランジ部21および第1周壁部23に止着される。これによって、これによって前記山形の接続部に、反射部63が納まりよく配置される。反射部材60は、隣接する液晶パネル2の一方の側部に固定される。このような固定による反射部材60の設置状態においては、隣接する額縁5の各平板状部分15が、前記反射部53の屈曲面に接触状態で対向する。そして、液晶パネル2の駆動に伴う温度上昇によって、液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが面方向に熱膨張しても、反射部材50は一方の液晶パネル2に固定され、他方には固定されていないから、この他方の液晶パネル2と反射部材60との相対変位が許容され、熱膨張分が吸収される。図10では、隣接する額縁5の両外周部16が、脚部64の両面に当接した状態を示しているが、液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などの熱膨張を考慮して、反射部材60の設置時には、反射部材50が固定されない側の外周部16と脚部64とは隙間を設けておくことが望ましい。
図11は、本発明に関連する第2の関連発明に係る一実施形態のマルチディスプレイ装置300を示す断面図であり、図12は本実施形態に適用される反射部材70を模式的に示す斜視図である。なお、前述の各実施形態と対応する部分には同一の参照符を付す。この実施形態のマルチディスプレイ装置300に適用される反射部材70は、非表示部としての額縁5から突出する側に2つの反射面71,72が形成される断面山形の柱状体から成る反射部73と、該反射部73に連なり、前記各液晶パネル2の互いに隣接する各側部間に弾性的圧縮状態で挟持される弾性体製の挟持部74とを有する。前記反射部73は、各額縁5の各液晶パネル2の一辺を成す部分に全長にわたって延びるアクリル樹脂などの成型体による断面三角形の棒状体から成る。挟持部74は、金属製のばね性部材から成り、反射部73の下面73aから下向き(図1においては背面側Z2)に延びるように設けられている。具体的には、挟持部74は、反射部73の成型時にインサート成型によって、上端部側が下面73aより反射部73内に埋設されるよう、反射部73に一体に形成されている。挟持部74は、反射部73の長さ全長にわたって延びていてもよく、また反射部73の長さの全長より短い部材が複数接続されていてもよい。
図11および図12に示す挟持部74は、2枚のばね性を有する金属板75,76を重ね合わせ、両者を一体に固着して構成されている。各金属板75,76は、途中の同じ位置に反射部73の長手方向に平行に連なる山部75a,76aが湾曲形成されており、これらの湾曲部としての山部75a,76aは、その頂部が互いに離反方向に向くように形成されている。このように形成された挟持部74は、両山部75a,76aの頂部を結ぶ方向に圧縮弾性を保有する。本実施形態の反射部材70は、隣接する液晶パネル2間に設置する際、隣接する額縁5の両外周部16間に、挟持部74をその両山部75a,76aが圧縮変形を伴うよう圧入する。したがって、両山部75a,76aの弾性復元力によって、挟持部74が隣接する額縁5の両外周部16間にしっかりと挟持され、反射部材70は所定部位に安定した状態で設置される。この場合、隣接する額縁5の両外周部16間の隙間には多少のばらつきが生じることは不可避であるが、このような圧縮弾性を有する挟持部74によって、ばらつきへの対応が好適になされる。そして、液晶パネル2の駆動に伴う温度上昇によって、液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが面方向に熱膨張しても、両山部75a,76aの前記圧縮弾性によってこの熱膨張が吸収され、液晶パネル2にひずみなどを生じるおそれがない。
図13は、本実施形態に適用される反射部材70の変形例70aを模式的に示す斜視図である。この例の反射部材70aにおいては、挟持部74が、1枚の金属板77から成り、その上端部側が前記と同様に反射部73内に埋設されるよう、反射部73に一体に形成されている。なお、図12の例と対応する部分には同一の参照符を付す。金属板77の途中には、金属板77の延びる方向に沿った各2本の平行な切り込み部77aの対が、金属板77の板面に方形を成すよう4箇所に設けられている。そして、対角位置にある切り込み部77aの各2対を表裏より同方向に押出すことによって、金属板77の表裏にそれぞれ2個ずつ突出する4個の凸曲片部77bが形成されている。これら湾曲部としての各凸曲片部77bは、図12の例と同様に金属板77の表裏方向に圧縮弾性を保有するから、この圧縮弾性によって、図11に示すよう隣接する額縁5の外周部16間に挟持部74を同様にしっかりと挟持させることができる。したがって、本変形例の反射部材70aを隣接する額縁5に設置する場合における、前記ばらつき対応機能や、熱膨張吸収機能も同様に発揮される。
図14は、本実施形態に適用される反射部材70の他の変形例70bを模式的に示す斜視図である。この例の反射部材70bにおいては、挟持部74が、1枚の金属板78から成り、その上端部側が前記と同様に反射部73内に埋設されるよう、反射部73に一体に形成されている。なお、図12の例と対応する部分には同一の参照符を付す。金属板78には、その下端部側に、反射部73の長手方向に沿って凹凸が繰り返す波型部分78aが形成されている。この湾曲部としての波型部分78aは、図12および図13に示す例と同様に金属板78の表裏方向に圧縮弾性を保有するから、この圧縮弾性によって、図11に示すよう隣接する額縁5の外周部16間に挟持部74を同様に挟持させることができる。したがって、本変形例の反射部材70bを隣接する額縁5に設置する場合における、金属板78の表裏方向への圧縮弾性によって、前記ばらつき対応機能や、熱膨張吸収機能も同様に発揮される。
なお、前記各実施形態における反射部材の、各反射面の傾斜角度はマルチディスプレイ装置の要求仕様に基づき適宜設定される。また、第1の関連発明および第2の関連発明における各反射面も、本発明において図4〜図6を参照して説明したと同様の機能を奏することは言うまでもない。また、第2の関連発明において、反射部73の下面73aと、隣接する額縁5の平板状部分15とが対向する部分において、一方には両面粘着テープを介在させて相互に接着し手固定し、他方にはスペーサ部材を介在させ、この部分での相互の変位を許容するように構成してもよい。
図15は本発明に関連する第3の関連発明に係る一実施形態のマルチディスプレイ装置400を示す断面図である。なお、本実施形態は、前述の図1〜図8に示される実施形態に類似し、対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態のマルチディスプレイ400は、反射部材80が用いられる。この反射部材80は、非表示部としての額縁5から突出する側に2つの反射面6,7が形成される断面が逆V字状の長尺材から成る反射部26を有し、この反射部26が脚部としても用いられる。
前記反射部26は、各額縁5の各液晶パネル2の一辺を成す部分に全長にわたって延びる一対の板状体24,25から成る。各板状体24,25は、一体的に形成されてもよく、別部材を接着、溶接またはビス止めなどによって連結した構成であってもよい。各板状体24,25の下端部24b,25bの下面24b1,25b1は、接着剤によって各額縁5の平板状部分15に直接、接着されて固定される。前記板状体24,25は、アクリル樹脂から成ってもよく、あるいはポリ塩化ビニル、アルミニウム合金など、その他の素材から成ってもよい。
このように反射部材80は、隣接する額縁5の各平板状部分15に接着によって固定されるので、反射部材80を額縁5に容易に取付けることができる。また、反射部材80は、液晶パネル2の駆動に伴う温度上昇によって、液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが面方向に熱膨張しても、各板状体24,25の弾性変形によって、熱膨張などによる液晶パネル2と反射部材80との相対変位を許容することができる。
図16は第3の関連発明に係る他の実施形態のマルチディスプレイ装置500を示す断面図である。なお、本実施形態は、前述の図1〜図8および図15に示される実施形態に類似し、対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態のマルチディスプレイ装置500では、前述の図15に示す実施形態の反射部材80に代えて、各板状体24,25に下端部24b,25bに、断面において相互に近接する方向に延びる接合部分24b2,25b2が一体的に形成された反射部材90が用いられる。各接合部分24b2,25b2の各下面24b3,25b3は、各額縁5の平板状部分15に直接、接着され、より大きな接合強度で固定することができる。これによって、液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが面方向に熱膨張しても、各板状体24,25の弾性変形によって、熱膨張などによる液晶パネル2と反射部材80との相対変位を許容することができ、より大きな相対変位を許容することが可能となる。
このように図15および図16に示す各実施形態においても、前述の実施形態と同様に、平面状に並んで配置される複数の液晶パネル2の各非表示部に、表示領域からの出射光を反射する反射面6,7を有する反射部材80,90が設けられるので、各液晶パネル2を組立ててマルチスクリーンを構築した状態での表示画面に、非表示部が線状に露呈することを防止し、表示品位を向上することができる。しかも、前記反射部材80,90は、各板状体24,25が弾性変形可能であるので、隣接する液晶パネル2の側部である各額縁5間の隙間にばらつきがあったり、液晶パネル2を保持するシャーシ3、筐体4および額縁5などが熱膨張した場合であっても、各板状体24,25の弾性変形によってこれを吸収し、液晶パネル2にひずみが生じることなく、安定した設置状態を維持することができる。