JP2012107213A - 難燃性樹脂組成物及びそれを用いた成形物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)MFRが15g/10分以下の不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体10〜85質量%、(b)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、(c)変性されていないポリプロピレン樹脂0〜65質量%、(d)変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、及び(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有し、(b)及び/又は(d)が合計で15〜90質量%である樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有する難燃性樹脂組成物であって、当該水酸化マグネシウム(B)の少なくとも1部が、無処理の水酸化マグネシウム及び/又はシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムである難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
難燃性を満足するために、ベース樹脂成分としてポリ塩化ビニル(PVC)を用いた難燃性樹脂組成物や、分子中に臭素原子や塩素原子を有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィン樹脂組成物に代わり、ハロゲンを含有しない難燃剤(ノンハロゲン系難燃剤)が配合された樹脂組成物が提案されている。
これまでノンハロゲン難燃材料に、VW−1や傾斜試験に合格するような高度の難燃性を付与する場合、樹脂成分に対して難燃剤である金属水和物を大量に配合する必要があった。その結果、耐磨耗性や耐外傷性が著しく低下するという問題があった。そこで、例えば架橋を施す方法やポリプロピレンをベース材料として使用する方法が提案されてきた。しかし、これらの方法では難燃性を向上させると、著しく耐摩耗性や強度、圧接特性が低下する等の問題があった。
一方、電線を接続する方法としては圧接加工の他に、電線の被覆を取り除き、ハンダ加工により基板や部品と接続する加工方法がある。しかし、この方法ではハンダ加工時の熱で電線の被覆が発泡して、電線の電気特性や機械特性を低下させることがあった。
さてこのような配線材等は圧接加工されたり、圧着加工されたり種々の方法で加工される。配線材は圧着端子や基板にハンダ加工される。
さて電子機器用に使用される耐熱性を有するハロゲンフリー配線材は通常電子線等の架橋処理がなされており、ポリマー自体が完全に架橋されているため、マテリアルリサイクルに対応することが出来ない。
それらの問題に対応すべく、特願平11―242809号、特願平11―120786号、特願2005―272392号にあげられているような、部分的な架橋等でマテリアルリサイクルが可能なハロゲンフリー電線が提案されている。
さてこのようなハロゲンフリー電線は大量の水酸化マグネシウムが含まれており、その電線被覆材には大量の水分が含まれており、また水分を吸収しやすい。
さてハンダ加工される際に被覆材にも熱が加わるが、その際にこの電線被覆材に含まれている水分が揮発する。その際電子線架橋なされたハロゲンフリー電線はこの水分の揮発により発泡を生じないが、上述の部分的に架橋したあるいは非架橋のハロゲンフリー電線はこの水分の揮発により、絶縁体に発泡を生じる。この発泡により絶縁体にクラックが生じたり、外径が膨らみコネクタにあわなくなったり、端末から水が進入しやすくなったり種々の問題が生じる。
<1>(a)MFRが15g/10分以下の不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体10〜85質量%、(b)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、(c)変性されていないポリプロピレン樹脂0〜65質量%、(d)変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、及び(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有し、(b)及び/又は(d)が合計で15〜90質量%である樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有する難燃性樹脂組成物であって、当該水酸化マグネシウム(B)の少なくとも1部が、無処理の水酸化マグネシウム及び/又はシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムである難燃性樹脂組成物、
<2>前記(a)成分である不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体がマレイン酸で変性されたプロピレンの単独重合体であることを特徴とする<1>記載の難燃性樹脂組成物、
<3>前記(c)成分の少なくとも一部のポリプロピレン樹脂のMFRが0.3〜5g/10分であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の難燃性樹脂組成物、
<4>前記(c)成分の少なくとも一部のポリプロピレン樹脂のMFRが0.3〜2g/10分であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の難燃性樹脂組成物、
<5>前記(a)成分である不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体と(b)成分であるマレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体との総和が樹脂成分(A)100質量部中、15〜85質量%であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
<6>前記(a)成分の少なくとも一部が、MFRが0.3〜10g/10分の不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
<7>前記(d)エチレン−α−オレフィン共重合体を10〜50質量%含有することを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物、
<8><1>〜<7>のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を用いた被覆層を導体、光ファイバ素線または光ファイバ心線上に有することを特徴とする成形物品、
を提供するものである。
(a)不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体としては、不飽和カルボン酸をプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレンにグラフトした樹脂が用いられる。
不飽和カルボン酸としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などがあげられる。この中でも無水マレイン酸が好ましい。
不飽和カルボン酸による変性量は、プロピレンの単独重合体に対して、通常0.2〜2質量%である。好ましい変性量は0.6〜1.2質量%である。
ポリプロピレンの変性は、例えば、ポリプロピレンと不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸により変性されたポリプロピレン樹脂としては、具体的には例えば、アドマーQE800(商品名:三井化学製)等が挙げられる。
この理由については定かではないが、特定のMFRを有する不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体に水酸化マグネシウムがイオン的に結合し、ハンダ加工される高温において、本発明の難燃性樹脂組成物は、粘度が上昇すると思われる。このため、該組成物中に水分を含有していたとしても、該組成物はハンダ加工時に水分が揮発し発泡しにくいことが考えられる。
不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体は、樹脂成分中のホストポリマーとして働く。ホストポリマーとして働く材料は融点および結晶性の高いものが好ましい。したがって、不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレンのMFRは15g/10分以下(ASTM D−1238、L条件、230℃)と、低いものが好ましい。またハンダ加工時に熱で溶融しにくいため融点が高く、結晶性の高いプロピレンの単独重合体がより好ましい。不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレンのMFRは好ましくは、0.5〜12g/10分、さらに好ましくは、0.8〜10g/10分である。上記プロピレンの単独重合体の融点は、好ましくは、153〜165℃である。なお、ここで融点は示差走査熱量計(DSC)により測定された値である。以下の樹脂成分の融点は、同様の方法により測定した値をいう。
(a)成分の不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンのMFRが0.3〜10g/10分であることが好ましい。
不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体とは、不飽和カルボン酸をエチレン−α−オレフィン共重合体にグラフトした樹脂のことである。不飽和カルボン酸による変性量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、通常0.2〜2質量%である。好ましい変性量は0.6〜1.2質量%である。
不飽和カルボン酸としては、上記の(a)不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体で使用されたものと同様のものを使用することが可能であり、好ましい範囲も同様である。
また、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体としては、MFR(ASTM D−1238、L条件、230℃)が0.5〜50g/10分のものが好ましい。
また不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体を不飽和カルボン酸とともに有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより製造することができる。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、樹脂成分(A)中0〜60質量%、好ましくは0〜50質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。含有量が多すぎると伸び特性や成形性が低下する。
上記(b)及び/又は(d)成分を加えることにより、樹脂組成物の耐熱老化特性(長期耐熱性)や伸び特性、ストレスクラック特性が大幅に向上する。通常、ポリプロピレン成分と(b)及び/又は(d)成分とは均一分散されにくい。本発明においては、(a)成分として不飽和カルボン酸で変性を行ったプロピレンを用い、さらにMFRが15g/10分以下のものを使用することにより、均一に分散がなされ、優れた強度、伸び、耐摩耗性のみならず、長期耐熱性が維持できるようになる。さらに無処理及び/又はシラン処理された水酸化マグネシウムを使用することにより、(a)成分を中心に、(b)及び/又は(e)成分がこれらの水酸化マグネシウムと非常に強く結合するため、水酸化マグネシウムが相溶化剤として働き、さらに優れた強度、伸び、耐摩耗性、耐熱老化特性を得ることが可能となる。汎用されているステアリン酸処理やリン酸エステル処理を施した水酸化マグネシウムを用いた場合と比較し、遙かに優れた長期耐熱性を得ることが出来る。
本発明における(c)成分は、共重合体または単独重合体の構成成分にプロピレンを含み、該プロピレンを含む構成成分が、例えば、上記の不飽和カルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸などにより変性されていないポリプロピレン樹脂である。(c)成分としては、プロピレンの単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体であって、変性されていないものを挙げることができる。
(c)成分のエチレン−プロピレンランダム共重合体は、エチレン成分含量が1〜5質量%程度のものが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分含量が5〜15質量%程度のものが好ましい。
(c)成分のポリプロピレン樹脂は(a)成分の不飽和カルボン酸で変性されたポリプロピレンと非常によく混合する。したがって、(c)成分の一部に0.3〜5g/10分のポリプロピレンを加えることにより、電線の成形性を維持しつつ、水酸化マグネシウムとイオン的結合を行っている(a)成分との相乗効果により、高温において樹脂粘度を大幅に向上させることが出来る。また、0.3〜5g/10分のポリプロピレンは分子量が大きく結晶性も非常に高いことから(a)成分と混合してホストポリマーとして働くため、高温まで溶けにくく、しかも高温においても水分が内部に包含されていても発泡しにくい樹脂組成物を得ることが可能となる。
本発明において、(c)成分の含有量は、樹脂成分(A)中0〜65質量%であり、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは20〜50質量%である。この含有量が多すぎると成形体の柔軟性が著しく損なわれたり、耐摩耗性が低下する。
本発明における(d)成分は、構成成分にエチレンとα−オレフィンを含み、これらのいずれの構成成分も、例えば、上記の不飽和カルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸などにより変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体である。(d)成分としては、例えば、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。α−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、ポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムのブロック又はランダム共重合体を挙げることができる。
ポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムのブロック又はランダム共重合体としては、サンアロマーから製品名:キャタロイ、アドフレックス、日本ポリプロ(株)から製品名:ニューコン、その他プライムポリマーからも製品名:プライムTPOとして上市されている。
変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は特に制限しないが、910kg/m3以下が好ましく、さらに好ましくは906kg/m3以下である。この密度の下限は863kg/m3が好ましい。
本発明において、エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、樹脂成分(A)中0〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。含有量が多すぎると著しく摩耗性や圧接性、強度が低下する場合がある。
樹脂に、(d)変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体を加えることにより、伸び特性とストレスクラック特性、長期耐熱特性を向上することが出来る。通常、
(a)成分と(d)成分とは相溶しないが、無処理及び/又はシラン処理された水酸化マグネシウムが相溶化剤となって均一に混合することが可能となる。一方、熱老化条件のような高温状態下では、(d)成分は完全に非結晶状態となり、(a)成分や(c)成分と相溶しなくなる。このような高温度下にさらされると、(a)成分及び(c)成分(特に(a)成分)は結晶化が進んで、伸び、耐熱老化特性及びストレスクラック特性が大幅に低下してしまう。その際、非結晶化して相溶していない(d)成分が、(a)成分や(c)成分が結晶化するのを阻害する。そのため、伸び特性、耐熱老化特性及びストレスクラック特性の低下を大幅に抑えることができる。
本発明において、不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとは、スチレン系共重合体を不飽和カルボン酸で変性することにより、不飽和カルボン酸をスチレン系共重合体にグラフトしたエラストマーのことである。
不飽和カルボン酸としては、上記の(a)不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体で使用されたものと同様のものを使用することが可能であり、好ましい範囲も同様である。
不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーとしては、たとえば、クレイトン1901FG(JSR クレイトン(株)製)、タフテック(旭化成(株)製)等が挙げられる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、上記樹脂成分(A)とともに水酸化マグネシウム(B)を含有する。本発明において用いる水酸化マグネシウム(B)の少なくとも1部は、無処理の水酸化マグネシウム及び/又はシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムである。本発明においては、無処理の水酸化マグネシウムや、シランカップリング剤で表面処理を行った水酸化マグネシウムをそれぞれ単独で使用するのは勿論、両者を併用してもよい。さらに、シランカップリング剤処理とは異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することも可能である。表面処理としてはたとえば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理などがあげられる。
水酸化マグネシウムをシランカップリング剤で処理をする場合、いずれか1種のシランカップリング剤のみでも、2種以上を併用してもよい。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、たとえばキスマ5(商品名、協和化学(株))、マグニフィンH5(商品名、アルベマール(株))などがあげられる。
シランカップリング剤処理とは異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムは、無処理又はシランカップリング剤処理を行った水酸化マグネシウムを各処理に用いる処理剤で通常の方法により処理することにより得ることができる。処理剤としては特に限定されないが、脂肪酸処理の場合はオレイン酸、ステアリン酸、ラウリル酸等の脂肪酸を、リン酸処理の場合はリン酸エステル等を用いることが好ましく、オレイン酸、リン酸エステルを用いることが好ましい。
シランカップリング剤以外の処理剤の含有量は、水酸化マグネシウムに対し1.0%質量以下が好ましく、さらに0.6質量%以下が好ましい。シランカップリング剤と、それ以外の処理剤とを併用する場合、シラン処理剤の含有量がそれ以外の処理剤の含有量の2倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることがより好ましい。また、シラン処理剤の含有量がそれ以外の処理剤の含有量の0.8倍以上であることが好ましい。シランカップリング剤処理とは異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することにより、伸び特性や、加熱老化特性、耐酸特性等を向上させることができる。他方、シランカップリング剤以外の処理剤の含有量が多すぎると、耐摩耗性や圧接加工性が低下したり、ハンダ加工時に絶縁被覆材が発泡しやすくなる。
また、シランカップリング処理又は無処理の水酸化マグネシウムと、それ以外の処理がなされた水酸化マグネシウムとを併用する場合、シランカップリング処理又は無処理の水酸化マグネシウムの含有量は、水酸化マグネシウム全量に対し1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。
さらに、(a)成分と相溶する形で柔軟性を有する(b)成分が存在するため、比較的柔軟性を確保し、耐摩耗性、耐外傷性に優れた樹脂組成物を得ることができる。さらにまた、メカニズムははっきりしていないものの(b)成分の導入により長期的な耐熱性の向上が達成される。
この原因については定かではないが、特定のMFR値であって、粘度の高い不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体に、水酸化マグネシウムがイオン的に結合し、高温においても粘度が向上すると推定される。これらは配合中のホストポリマーとして働くため、この部分が高温まで溶けずにさらに溶融しても粘度が高いことから、水分等で発泡しにくい。したがって、MFRが低く、しかも融点および結晶性の高い変性プロピレンの単独重合体が好ましいと考えられる。
(e)成分である不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーは、(a)成分の不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体や(c)成分のポリプロピレン樹脂と良く相溶する。また、(e)成分である不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーは水酸化マグネシウムと混合することにより、強いイオン結合で結合すると思われる。水酸化マグネシウムと強いイオン結合を有する(a)不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体との相乗作用により、(e)成分の不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマーを含有する本発明の難燃性樹脂組成物は、高強度、高摩耗性を維持することができる。さらに、(a)成分である不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体や(c)成分である変性されていないポリプロピレン樹脂との相乗効果で柔軟性をさらに向上させることができる。また、(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー成分を加えることにより、ハンダ加工時の絶縁被覆部の発泡をより抑えることが可能である。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛の平均粒子径は5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B2O3・3.5H2O)、アルカネックスFRC−600(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。また、スズ酸亜鉛(ZnSnO3)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH)6)として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系などがあげられ、なかでも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
本発明の成形物品としては例えば、導体や光ファイバやその他成形体の周りに上記の本発明の難燃性樹脂組成物が被覆された絶縁電線やケーブルなどを挙げることができる。絶縁電線やケーブルは、本発明の難燃性樹脂組成物を通常の押出成形機を用いて導体、光ファイバ、集合絶縁電線やその他成形体の周囲に押出被覆することにより製造することができる。またチューブについても同様な方式で製造することができる。
例えば、絶縁電線に使用される場合、導体の周りに形成される絶縁樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜3mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、本発明の難燃性の絶縁樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。
また、本発明の配線材においては、本発明の樹脂組成物を押出被覆してそのまま被覆層を形成することが好ましい。さらに耐熱性を向上させることを目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能である。
電子線架橋法の場合は、樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当である。また、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
化学架橋法の場合は、樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として含有し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋をおこなう。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1に実施例1〜32および表2に比較例1〜13それぞれの樹脂組成物の各成分の含有量(表中の数値は質量部である)を示す。表に示された各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて195〜205℃で溶融混練して、各難燃性樹脂組成物を製造した。
(A)樹脂成分
(a)成分
・マレイン酸で変性されたプロピレンの単独重合体
商品名:アドマーQE800、製造元:三井化学(株)、MFR=9g/10分、融点160℃(ASTM D2117により測定した値)
商品名:アドマーQE810、製造元:三井化学(株)、MFR=70g/10分、融点160℃(ASTM D2117により測定した値)
・アクリル酸で変性されたプロピレンの単独重合体
商品名:ポリボンドP1002、製造元:ケムチュラ(株)、MFR=20g/10分、融点160℃(ASTM D2117により測定した値)
(b)成分
・マレイン酸で変性されたポリエチレン樹脂
商品名:アドマーXE070、製造元:三井化学(株)
商品名:アドテックスL6100M、製造元:日本ポリエチレン(株)
(c)成分
・ブロックポリプロピレン
商品名:150GK、製造元:プライムポリマー(株)、MFR=0.6g/10分
・ランダムポリプロピレン
商品名:BC6DR、製造元:日本ポリプロピレン(株)、MFR=2.5g/10分
・ランダムポリプロピレン
商品名:BC3F、製造元:日本ポリプロピレン(株)、MFR=8.5g/10分
・ブロックポリプロピレン
商品名:BC3A、製造元:日本ポリプロピレン(株)、MFR=9g/10分
・ブロックポリプロピレン
商品名:PB170A、製造元:サンアロマー(株)、MFR=0.9g/10分
・ブロックポリプロピレン
商品名:PB270A、製造元:サンアロマー(株)、MFR=0.7g/10分
・ホモポリプロピレン
商品名:PL400A、製造元:サンアロマー(株)、MFR=2.0g/10分
・ブロックポリプロピレン
商品名:BC8、製造元:日本ポリプロピレン(株)、MFR=1.8g/10分
(d)成分
・メタロセンポリエチレン
商品名:カーネルKS−240T、製造元:日本ポリエチレン(株)、密度:0.88
商品名:ユメリット0540F、製造元:宇部丸善石油化学(株)、密度:0.905
・ポリプロピレンとエチレンプロピレンゴムのブロック共重合体
商品名:キャタロイQ300F、製造元:サンアロマー(株)
(e)成分
・マレイン酸変性スチレン系エラストマー(MAH−SBC)
商品名:クレイトン1901FG、製造元:クレイトンポリマー(株)
・水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5L(シランカップリング剤処理)、製造元:協和化学工業(株)
商品名:キスマ5(無処理)、製造元:協和化学工業(株)
水酸化マグネシウムA 商品名:キスマ5(無処理)にオレイン酸0.3質量%、ビニルシラン0.3質量%を加えて表面処理を行ったもの
水酸化マグネシウムB 商品名:キスマ5(無処理)にオレイン酸0.3質量%、ビニルシラン0.7質量%を加えて表面処理を行ったもの
水酸化マグネシウムC 商品名:キスマ5(無処理)にオレイン酸0.9質量%、ビニルシラン0.3質量%を加えて表面処理を行ったもの
商品名:キスマ5A(ステアリン酸処理)、製造元:協和化学工業(株)
商品名:キスマ5B(オレイン酸処理)、製造元:協和化学工業(株)
商品名:キスマ5J(リン酸エステル処理)、製造元:協和化学工業(株)
<その他の成分>
・滑剤
商品名:ACポリエチレンNO.6(ポリエチレンワックス)、製造元:ヘキスト社
・ヒンダートフェノール系酸化防止剤
商品名:イルガノックス1010、製造元:BASFジャパン
得られた各々の絶縁電線に対して、以下の評価を行い、得られた結果をそれぞれ表1および表2に示した。なお、ストレスクラック試験は一部の電線について行った。
電線より管状片を作成し引張試験を行った。標線間25mm、引張速度50mm/分で試験を行い、引張り強さおよび伸びを測定した。伸び100%以上、引張り強さ18MPa以上が必要である。
(2)長期耐熱試験
電線より管状片を作成し、136℃のギアー付き恒温槽に168時間放置した。取り出し後、上記条件で引張試験を行った。引張強さ残率50%以上、伸び残率50%以上で合格である。
(3)耐摩耗性試験
R=0.225のブレードを用い、JASO D608に基づきブレード往復法により試験を行った。加重は7Nとした。回数800回以上で合格であるが、1000回以上がより好ましい。
(4)難燃性(水平難燃)
JASO D608に基づき、水平燃焼試験を行った。60秒以上延焼したものを不合格とした。
(5)耐外傷性
JASO D 608に基づく耐摩耗試験のブレード往復法の試験方法で、R=0.125mmのブレードを使用し、荷重5Nで4往復摩耗を行った。その後のサンプルを観察した。外傷がない又は白化が無いものを合格とし、「○」で示した。外傷がある又は白化が著しいものを不合格とし、「×」で示した。
(6)外観
外観は、絶縁電線の外径の変動の有無や表面の状態を目視で調査し、これらが良好であったものを合格とし、「○」で示した。外径が変動しており不安定なもの、表面に肌荒れが発生したもの、ブリードが発生したものを不合格とし、「×」で示した。
(7)電線の圧接性
ハンドプレス機を用い、モレックスMi−IIコネクタを用い圧接を行った後に、観察を行った。圧接刃の部分で1カ所でも割れがあるサンプル及びストレインリリーフ部分で電線被覆部の盛り上がりが矢尻部分を超えたものが発生したものを不合格とし、「×」で示した。
(8)ハンダ加工性
電線の片端を5mm被覆を除去した。その後、340℃に設定した非鉛ハンダのハンダバスに被覆除去した導体部を浸せきすることにより、導体にハンダを載せた。ハンダバスに浸せきする時間は0.5秒、1秒で試験を行った。試験後、外観の観察及び先端の絶縁部を輪切りにして発泡状態を確認した。浸せき時間が0.5秒のもので外観から発泡が確認されないものが合格である。
(9)ストレスクラック耐性試験1
電線を自己径で6ターン巻き付けた電線を110℃で24時間保持した後、−25℃の槽に6時間入れ、その後電線を直線に戻し、クラックを確認した。
クラックが入っていないものを○、入っているものを×とした。
(10)ストレスクラック耐性試験2
電線を自己径で6ターン巻き付けた電線を140℃で24時間保持した後、−25℃の槽に6時間入れ、その後電線を直線に戻し、クラックを確認した。
クラックが入っていないものを○、入っているものを×とした。なお、本試験は上記(9)よりも高度なストレスクラック耐性を評価するもので、これを満たすことがより望ましいが、満たさなくとも使用上特に問題はない。
これに対し、MFRの大きい不飽和カルボン酸変性ホモポリプロピレン樹脂を用いた比較例1、2、6および7は、いずれも耐ハンダ性が不合格であった。不飽和カルボン酸変性ホモポリプロピレン樹脂の含有量の多い比較例3は、外観が不合格であった。逆に不飽和カルボン酸変性ホモポリプロピレン樹脂の含有量の少ない比較例4は、耐外傷性および圧接性ならびに耐ハンダ性が不合格であった。MFRの高い変性ホモポリプロピレンの含有量が多い比較例5は、耐外傷性、外観、圧接性および耐ハンダ性が不合格であった。不飽和カルボン酸変性ホモポリプロピレンの含有量が少なく、変性されていないポリプロピレンの含有量の多い比較例8は、耐外傷性、圧接性および耐ハンダ性が不合格であった。水酸化マグネシウムの含有量の少ない比較例9は、難燃性および圧接性に劣った。水酸化マグネシウムの含有量の多い比較例10は、耐外傷性、外観、圧接性および耐ハンダ性に劣った。無処理又はシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムを使用していない比較例11〜13は、耐外傷性、圧接性および耐ハンダ性に劣った。
Claims (8)
- (a)MFRが15g/10分以下の不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体10〜85質量%、(b)不飽和カルボン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、(c)変性されていないポリプロピレン樹脂0〜65質量%、(d)変性されていないエチレン−α−オレフィン共重合体0〜60質量%、及び(e)不飽和カルボン酸で変性されたスチレン系エラストマー0〜40質量%を含有し、(b)及び/又は(d)が合計で15〜90質量%である樹脂成分(A)100質量部に対し、水酸化マグネシウム(B)50〜300質量部を含有する難燃性樹脂組成物であって、当該水酸化マグネシウム(B)の少なくとも1部が、無処理の水酸化マグネシウム及び/又はシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムである難燃性樹脂組成物。
- 前記(a)成分である不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体がマレイン酸で変性されたプロピレンの単独重合体であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(c)成分の少なくとも一部のポリプロピレン樹脂のMFRが0.3〜5g/10分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(c)成分の少なくとも一部のポリプロピレン樹脂のMFRが0.3〜2g/10分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(a)成分である不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体と(b)成分であるマレイン酸で変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体との総和が樹脂成分(A)100質量部中、15〜85質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(a)成分の少なくとも一部が、MFRが0.3〜10g/10分の不飽和カルボン酸で変性されたプロピレンの単独重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記(d)エチレン−α−オレフィン共重合体を10〜50質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を用いた被覆層を導体、光ファイバ素線または光ファイバ心線上に有することを特徴とする成形物品。
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