JP2012103210A - 温度制御装置及び恒温恒湿装置 - Google Patents

温度制御装置及び恒温恒湿装置 Download PDF

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Abstract

【課題】円滑にオイルを戻すことができ、且つオイル返し運転の際に、制御対象の温度変化を抑制することができる温度制御装置及び恒温恒湿装置を提供することを課題とするものである。
【解決手段】恒温恒湿装置1は、試験室2と、加熱器(ヒータ)3と、加湿器5を備えている。恒温恒湿装置1は、冷却手段として冷凍機を2基搭載している。「冷媒回路のいずれかを絞った状態で長時間に渡って冷凍機が運転された場合」にオイル返しモード運転が行われる。オイル返しモード運転では、冷凍機Aのバイパス開閉弁16aを開き、且つ蒸発器11aに溜まったオイルを強制的に排出すことができる回転数で圧縮機7aを運転し、この状態を一定時間維持する。当初の回転数からオイル返しモード運転に適する回転数に至るまでに、ゆっくりと圧縮機7aの回転数を上げる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、制御対象の温度を正確に制御する温度制御装置に関するものである。また本発明は恒温恒湿装置に関するものである。
機器や部品の耐久性等をテストする方策として環境試験が知られている。環境試験は、例えば恒温恒湿装置を使用して行われる。ここで恒温恒湿装置は、断熱材で覆われた試験室と、加熱器(ヒータ)と、加湿器及び冷凍機(冷却手段)を備え、試験室内に例えば摂氏60度、相対湿度80パーセントという様な所望の試験環境を作るものである。
恒温恒湿装置に使用される冷凍機は、一般に相変化する冷媒を使用して冷凍サイクルを実現する冷凍装置が採用される。
特開2006−285454号公報
ところで恒温恒湿装置は、前記した様に機器や部品の耐久性等をテストするものであるため、試験室内の温度や湿度を精密にコントロールする必要がある。即ち恒温恒湿装置は試験室内をあらゆる温度に保持することができる必要がある。また恒温恒湿装置は、温度変化の勾配についても制御できることが要求される。
そこでこの要求に応じるため、本発明者らは、図1に示すような恒温恒湿装置1を試作した。
図1に示す恒温恒湿装置1は、通常の恒温恒湿装置1と同様に、断熱材(図示せず)で覆われた試験室2と、加熱器(ヒータ)3と、加湿器5を備えている。
また恒温恒湿装置1は、冷却手段として冷凍機を2基搭載している。即ち恒温恒湿装置1は、冷却手段として、冷凍機Aと冷凍機Bを備えている。
各冷凍機A,Bは、圧縮機7a,7bと、凝縮器8a,8bと、膨張手段10a,10bと蒸発器11a,11bからなる冷凍回路6a,6bを有している。そして圧縮機7a,7bで気体状の冷媒を圧縮して凝縮器8a,8bに送り出し、凝縮器8a,8bで冷媒を液化する。そして膨張手段10a,10bを経て冷媒を蒸発器11a,11bに導入し、蒸発器11a,11b内で冷媒を気化して蒸発器11a,11bの表面温度を低下させる。
また試作した恒温恒湿装置1では、各冷凍機A,Bの冷媒吐出量(運転量)を増減制御するために、圧縮機7a,7bを駆動するモータ20a,20bとして、回転数を変更することができるものを採用した。具体的にはインバータ制御を行うモータ20a,20bを使用して圧縮機7a,7bを駆動することとした。
また試作した恒温恒湿装置1では、蒸発器11a,11bの表面温度をコントロールするために、蒸発器11a,11bの出口側に蒸発圧力制御弁12a,12bが設けられている。即ち蒸発圧力制御弁12a,12bは、蒸発器11a,11bの出口側を絞ることによって冷媒が蒸発する際の圧力を調整し、蒸発器11a,11bの表面温度をコントロールするものである。
また試作した恒温恒湿装置1では、蒸発圧力制御弁12a,12bを迂回するバイパス流路15a,15bを設け、当該流路15a,15bにバイパス開閉弁16a,16bを設けた。このバイパス開閉弁16a,16bは、通常は閉じられており、蒸発器11a,11bの表面温度を能力限界まで下げたい場合に開く。
試作した恒温恒湿装置1は、試験室2内をあらゆる温度に保持することができ、さらに温度変化の勾配についても自由に制御することができるものであった。
しかしながら、試作した恒温恒湿装置1は、蒸発器11a,11bの出口側に蒸発圧力制御弁12a,12bを設けたので、蒸発器11a,11b等にオイルが残留してしまう問題があった。
即ち冷凍機A,Bに使用される圧縮機7a,7bは、密閉容器内に例えばロータリー式のコンプレッサーが内蔵されたものであり、密閉容器内には冷媒と共にオイルが入れられている。
そして圧縮機7a,7bは、冷媒と共に気化状態又は霧状態のオイルを圧縮し、当該オイルは、冷凍回路6a,6bの各部を循環し、各部の潤滑に寄与する。
しかしながら試作した恒温恒湿装置1は、蒸発器11a,11bの出口側に蒸発圧力制御弁12a,12bを設けたので、蒸発器11a,11bの出口側が絞られ、オイルの戻りが悪い。
特に、試作した恒温恒湿装置1は、冷凍機A,Bを2基搭載しており、かつ圧縮機7a,7bの回転数を増減することができるから、要求される冷却量が小さい場合には、蒸発圧力制御弁12a,12bを絞った状態であって圧縮機7a,7bの回転数が小さい状態で運転されることとなる。この様な蒸発圧力制御弁12a,12bを絞った状態であって圧縮機7a,7bの回転数が小さい状態で運転すると、蒸発器11a,11b内にオイルが溜まりやすく、特にオイルの戻りが悪い。
そこで蒸発圧力制御弁12a,12bを絞った状態で長時間運転された場合には、バイパス開閉弁16a,16bを開いてバイパス流路15a,15bを開放し、さらに圧縮機7a,7bの回転数(正確にはモータの回転数)を上げて蒸発器11a,11bに溜まったオイルを強制的に排出させることとした。即ちオイル返しモード運転を実行することとした。
しかしながら、この方策を採用すると、圧縮機7a,7bの回転数を上昇させることによって圧縮機7a,7bの仕事量(冷媒吐出量)が増大し、試験室2内の温度が低下してしまうという問題があった。
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、円滑にオイルを戻することができ、且つ制御対象の温度変化を抑制することができる温度制御装置及び恒温恒湿装置を提供することを課題とするものである。
そして上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、少なくとも一つの冷却手段と、他の1又は複数の冷却手段及び/又は他の1又は複数の加熱手段を有し、制御対象の温度を所望の温度に制御する温度制御装置において、少なくとも一つの冷却手段は圧縮機と凝縮器と膨張手段と蒸発器を有し相変化する冷媒をオイルと共に循環させて冷凍サイクルを実現するものであり、且つ当該冷却手段の圧縮機は冷媒吐出量を変更することが可能であり、一定の条件を満足する場合に圧縮機の冷媒吐出量を増大させてオイル返しモード運転が行われ、オイル返しモード運転の際には、他の冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件が圧縮機の冷媒吐出量の増大に伴う制御対象の温度変化を抑制する方向に変化し、前記他の冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件の変化によって制御対象の過激な温度変化が防止されることを特徴とする温度制御装置である。
ここでオイル返しモード運転を行う場合の「一定の条件」とは、蒸発器等にオイルが溜まっているであろうと予想される条件であり、例えば次の条件の一つ又は次の条件が複数揃った場合であり、経験則や実験によって決定される条件である。
(1)圧縮機の冷媒吐出量が小さい状態で長時間に渡って冷却手段が運転された場合。
(2)冷媒回路のいずれかを絞った状態で長時間に渡って冷却手段が運転された場合。
単に一定時間が経過したという条件だけでオイル返しモード運転を実行してもよい。
また本発明では、オイル返しモード運転の際には、他の冷却手段や加熱手段の運転条件が圧縮機の冷媒吐出量の増大に伴う制御対象の温度変化を抑制する方向に変化するが、この変化は、予めプログラムされていてもよいし、制御対象の温度をフィードバックして他の冷却手段等が自動的に運転条件を変化させるものであってもよい。
また本発明では、「他の冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件が、圧縮機の冷媒吐出量の増大に伴う制御対象の温度変化を抑制する方向に変化」するので、例えば2基の冷却手段を有する場合であれば、一方がオイル返しモード運転に入って圧縮機の冷媒吐出量が増大すれば、原則的に他方の冷却手段は冷媒吐出量を低下させる方向に運転条件が変化することとなる。しかしながら、要求される冷却量そのものが変化した場合はこの限りではない。例えば、一方の冷却手段がオイル返しモード運転に入って圧縮機の運転条件が冷媒吐出量を増大させることになっても、要求される冷却量そのものが増大した場合には、他方の冷却手段の冷媒吐出量が増大する場合もある。また冷却手段と加熱手段を併用している場合には、一方の冷却手段がオイル返しモード運転に入って運転条件が圧縮機の冷媒吐出量が増大した際に、他方の冷却手段の冷媒吐出量が維持されたり増大する場合も考えられる。
要するに本発明では、オイル返しモード運転が行われなかった場合と比較して「他の冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件が、圧縮機の冷媒吐出量の増大に伴う制御対象の温度変化を抑制する方向に変化」する。
請求項2に記載の発明は、オイル返しモード運転の際の圧縮機の冷媒吐出量の増大速度は、緩やかであることを特徴とする請求項1に記載の温度制御装置である。
本発明の温度制御装置では、オイル返しモード運転の際の圧縮機の冷媒吐出量の増大速度が通常の追従速度よりも緩やかであるから、他の機器(例えば他の冷却手段)が圧縮機の冷媒吐出量の増大変化に容易に追従することができ、冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件の変化によって制御対象の過激な温度変化が防止される。
請求項3に記載の発明は、圧縮機はモータによって駆動され、オイル返しモード運転においては圧縮機のモータの回転数を増加することによって圧縮機の冷媒吐出量が増大され、モータの回転数の上昇カーブは緩やかであって、オイル返しモード運転の開始時におけるモータの回転数が圧縮機の冷媒吐出量が最高吐出量となる回転数に対して20パーセントの回転数であった状態からオイル返し適正量となる回転数に至るまでに要する時間が3分以上となる場合の上昇カーブよりも緩いことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度制御装置である。
本発明は、オイル返しモード運転の際の圧縮機の冷媒吐出量の増大速度の指針を示すものである。本発明で規定する圧縮機の冷媒吐出量の増大速度は、圧縮機の冷媒吐出量をリニアに変化させることが出来得る速度である。
請求項4に記載の発明は、複数の冷却手段を有し、制御対象の状態に応じて前記複数の冷却手段の稼働割合が定められ、オイル返しモード運転においては、前記稼働割合が変更されるか或いは無視されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の温度制御装置である。
本発明の温度制御装置では、複数の冷却手段を有しているから、冷却量の変化幅が広い。また本発明の温度制御装置では、制御対象の状態に応じて前記複数の冷却手段の稼働割合が定められているから、冷却手段が干渉してハンチングを起こすことがない。
請求項5に記載の発明は、蒸発器と圧縮機との間に蒸発圧力制御弁が設けられており、蒸発圧力制御弁を迂回するバイパス流路があり、当該バイパス流路にバイパス開閉弁が設けられており、オイル返しモード運転の際にバイパス開閉弁が開かれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の温度制御装置である。
本発明の温度制御装置は、蒸発圧力制御弁が設けられているので、蒸発器の表面温度をコントロールすることができる。またオイル返しモード運転の際にバイパス開閉弁が開かれるのでオイルの戻りが円滑である。
請求項6に記載の発明は、前記一定の条件を満足する際に、圧縮機の冷媒吐出量が所定量以上である場合には圧縮機の冷媒吐出量を増大させずにオイル返しモード運転が行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の温度制御装置である。
オイル返しモード運転を実行する直前に、すでに圧縮機の冷媒吐出量が所定量以上である場合には圧縮機の冷媒吐出量を増大させる必要がない。そのため本発明では、圧縮機の冷媒吐出量を増大させずにオイル返しモード運転を行わしめることとした。
請求項7に記載の発明は、 請求項1乃至6のいずれかに記載の温度制御装置が搭載された恒温恒湿装置である。
本発明の恒温恒湿装置は、温度制御を円滑に行うことができ、且つ試験中の温度の変化も小さい。
また本発明の温度制御装置及び恒温恒湿装置は、少なくとも一つの冷却手段と、他の1又は複数の冷却手段及び/又は他の1又は複数の加熱手段を有し、制御対象の温度を所望の温度に制御する温度制御装置において、少なくとも一つの冷却手段は圧縮機と凝縮器と膨張手段と蒸発器を有し相変化する冷媒をオイルと共に循環させて冷凍サイクルを実現するものであり、且つ当該冷却手段の圧縮機は冷媒吐出量を変更することが可能であり、一定の条件を満足する場合にオイル返しモード運転が行われ、オイル返しモード運転の際には、他の冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件を変更して制御対象の温度を所望の温度に制御するものであるとも言える。
本発明の温度制御装置及び恒温恒湿装置は、冷却手段のオイル戻しが円滑に行われるので、冷却手段の故障や使用中における冷却能力の低下が起こりにくい効果がある。また本発明の温度制御装置及び恒温恒湿装置は、オイル返し運転の際の制御対象や試験室の温度変化が小さいという効果がある。
本発明の実施形態及び本発明者らが試作した恒温恒湿装置の概念図である。 本発明の実施形態の恒温恒湿装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態の恒温恒湿装置の冷凍機A,Bのオイル返しモード運転前後における冷媒吐出量の時間変化と圧縮機のモータの回転数の時間変化を示すタイムチャートであり、オイル返しモード運転前の冷凍機Aの冷媒吐出量がオイル開始運転に適する冷媒吐出量よりも小さかった場合を示す。 本発明の実施形態の恒温恒湿装置の冷凍機A,Bのオイル返しモード運転前後における冷媒吐出量の時間変化と圧縮機のモータの回転数の時間変化を示すタイムチャートであり、オイル返しモード運転前の冷凍機Aの冷媒吐出量がオイル開始運転に適する冷媒吐出量よりも大きかった場合を示す。 本発明の実施形態の恒温恒湿装置の冷凍機A,Bのオイル返しモード運転前後における冷媒吐出量の時間変化の実例を示すタイムチャートである。 本発明の他の実施形態の恒温恒湿装置の冷凍機A,Bのオイル返しモード運転前後における冷媒吐出量の時間変化と圧縮機のモータの回転数の時間変化を示すタイムチャートである。
以下さらに本発明の実施形態について説明する。本実施形態の恒温恒湿装置1の機械的構成や回路構成は、先に説明した恒温恒湿装置1(図1)と同一である。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、2基の冷凍機A,Bの運転方法と、オイル返しモード運転の動作に特徴があり、これらを中心に説明する。
なお本実施形態の恒温恒湿装置1ては、2基の冷凍機A,Bを備えているが、2基の冷凍機A,Bは冷凍能力が異なる。
本実施形態の恒温恒湿装置1は、試験室2内の環境が所望の環境となる様に、2基の冷凍機A,Bがフィードバック制御されているが、これに加えて、冷凍機A,Bは予め演算された冷媒吐出量でも運転される。
また2基の冷凍機A,Bは、予め演算された稼働割合で運転される。
即ち本実施形態の恒温恒湿装置1は、目標の環境と、現在の環境から必要な冷却量を演算する必要冷却量演算機能を備えている。
そして必要冷却量演算機能で演算された冷却量は、所定の稼働割合で、2基の冷凍機A,Bに分配される。
稼働割合は、運転状況に応じて相違し、1対1の場合もあるし、比率が大きく異なる場合もある。
そして分配された冷却量を発揮する様に、各冷凍機A,Bの圧縮機7a,7bを駆動するモータ20a,20bが制御される。より具体的には、分配された冷却量を発揮する様に、モータ20a,20bの回転数がインバータ制御される。
次にオイル返しモード運転について、図2を参照しつつ説明する。
前記した様に、必要冷却量演算機能によって必要な冷却量が演算され、ステップ1の様に冷凍機Aは、分配された冷却量を発生する様にモータ20aの回転数がインバータ制御される。冷凍機B側についても同様であり、分配された冷却量を発生する様にモータ20bの回転数がインバータ制御されている。冷凍機A,Bの動作は、同じであるから、以下、冷凍機Aについて説明する。
そしてステップ2,3,4で、「一定の条件」を満足するか否かを確認する。即ち蒸発器11a等にオイルが溜まっているであろうと予想される条件が揃ったか否かを確認する。本実施形態では、「一定の条件」は、「冷媒回路のいずれかを絞った状態で長時間に渡って冷凍機が運転された場合」である。
より具体的には、ステップ2,3,4で冷凍機Aのバイパス開閉弁16aの連続閉止時間を積算する。即ちステップ2でタイマの計時を開始し、ステップ3で冷凍機Aのバイパス開閉弁16aが閉じていることを確認する。そしてバイパス開閉弁16aが閉じていれば、ステップ4に移行し、バイパス開閉弁16aの連続閉止時間が一定の時間に至ったか否かを判断する。バイパス開閉弁16aの連続閉止時間が一定の時間に至ったならばステップ4からステップ5に移行する。
バイパス開閉弁16aの連続閉止時間が一定の時間に至っていなければ、ステップ3に戻って計時を続ける。また途中でバイパス開閉弁16aが開かれた場合には、ステップ3がNOとなり、ステップ16でタイマをクリアしてステップ2に戻り、再度バイパス開閉弁16aの連続閉止時間を積算する。
ステップ2,3,4で、「一定の条件」を満足することが確認されたらステップ5以下に進み、オイル返しモード運転を実行する。即ち冷凍機Aのバイパス開閉弁16aを開き、蒸発器11aに溜まったオイルを強制的に排出することができる回転数で圧縮機7aを運転し、この状態を一定時間維持する。
具体的には、ステップ5で、冷凍機Aのバイパス開閉弁16aを開く。そして続くステップ6で、必要冷却量の演算を停止する。なお必要冷却量の演算を停止してもフィードバック制御は有効に機能しているから、試験室2内の環境が急変することはない。
そしてステップ7に進み、現在の圧縮機7aの回転数(実際にはモータ20aの回転数)がオイル返しモード運転に適する回転数未満であるか否かを判断する。ここで「オイル返しモード運転に適する回転数」は、蒸発器11aに溜まったオイルを強制的に排出することができる回転数であり、実験によって予め決定されている。なお「オイル返しモード運転に適する回転数」は、オイルの種類、配管の内径、配管の曲路等によって異なる。
現在の圧縮機7aの回転数がオイル返しモード運転に適する回転数未満である場合は、圧縮機7aの回転数を徐々に上昇させ、オイル返しモード運転に適する回転数に至らしめる(ステップ8)。
具体的には、当初の回転数からオイル返しモード運転に適する回転数に至るまでゆっくりと圧縮機7aの回転数を上げてゆく。
例えば圧縮機7aの回転数(モータ20aの回転数)がフル運転となる際のモータ20aの回転数の20パーセントの状態であった場合を仮定すると、通常の運転状態であるならば、オイル返しモード運転に適する回転数に至るまでに要する時間は数秒であるが、本実施形態では、故意にゆっくりと圧縮機7a(モータ20a)の回転数を上げてゆく。具体的には、現在の圧縮機7a(モータ20a)の回転数が、圧縮機7aがフル運転となる回転数の20パーセントであったと仮定した場合、オイル返しモード運転に適する回転数に至るまでに3分を越える時間をかけてゆっくりと回転数を上げてゆく。
より望ましくは、この間を10分以上かけて回転数を上げる。またさらに望ましくは、この間に30分以上をかける。
実際の運転では、当初の回転数がフル運転の20パーセントであるとは限らないので、当初の回転数からオイル返しモード運転に適する回転数の上昇カーブが、先に示した指針に準じる様に制御する。
即ち現在の圧縮機7aの回転数が、圧縮機7aがフル運転となる回転数の20パーセントであったと仮定し、オイル返しモード運転に適する回転数に至るまでに3分を要する場合の回転数の上昇カーブよりも緩い上昇カーブを描いて実際の当初の回転数(例えばフル運転の30パーセント)を上昇させ、オイル返しモード運転に適する回転数に至らしめる。
より望ましくは、現在の圧縮機7aの回転数が、圧縮機7aがフル運転となる回転数の20パーセントであったと仮定し、オイル返しモード運転に適する回転数に至るまでに10分を要する場合の回転数の上昇カーブよりも緩い上昇カーブを描いて実際の当初の回転数(例えばフル運転の30パーセント)を上昇させ、オイル返しモード運転に適する回転数に至らしめる。
さらに望ましくは、現在の圧縮機7aの回転数が、圧縮機7aがフル運転となる回転数の20パーセントであったと仮定し、オイル返しモード運転に適する回転数に至るまでに30分を要する場合の回転数の上昇カーブよりも緩い上昇カーブを描いて実際の当初の回転数(例えばフル運転の30パーセント)を上昇させ、オイル返しモード運転に適する回転数に至らしめる。
数値を挙げて説明すると、圧縮機7aがフル運転となる際のモータ20aの回転数を2000rpmと仮定し、オイル返しモード運転に適する回転数を1500rpmと仮定したとき、20パーセントの回転数たる400rpmからオイル返しモード運転に適する回転数を1500rpmに上昇させるのに3分を要すると仮定すると、上昇カーブの勾配は、((1500−400)/3)=1100/3(rpm/分)であり、約366(rpm/分)である。
そのため例えば現在の圧縮機7aの回転数が、1000rpmであったならば、オイル返しモード運転に適する回転数たる1500rpmとの差が500rpmであるから、(500/366)=1.38分を越える時間をかけてゆっくりと回転数を上げてゆく。
またより望ましくは、4.5分を越える時間をかけてゆっくりと回転数を上げてゆく。さらに望ましくは、13分を越える時間をかけてゆっくりと回転数を上げてゆく。
圧縮機7aの回転数を上げることによって冷凍機Aの冷媒吐出量(冷却量)が増加するが、前記した様に試験室2内の環境をフィードバックする機能は有効に機能しており、且つ圧縮機7aの回転数を上げる速度が極めてゆっくりであるから、試験室2内の環境は、目標値に維持される。
より具体的には、他方の冷凍機Bの機能がフィードバック制御によって低下し、冷凍機A,Bの総冷熱量が同一に維持される。
即ち図3の様に、冷凍機Aのオイル開始モード運転が開始されると、冷凍機Aの圧縮機7aの回転数がゆっくりと上昇し、これに伴って冷凍機Aの冷媒吐出量(冷却量)が増加する。
そしてこの変化に追従して冷凍機Bの圧縮機7bの回転数がゆっくりと低下し、冷凍機Bの冷媒吐出量(冷却量)が減少する。その結果、両者の合計冷却量は変化しない。
相当の時間を掛けて圧縮機7aの回転数がオイル返しモード運転に適する回転数に至れば、ステップ9からステップ10に移行し、オイル返しモード運転に適する回転数を維持する。そしてステップ11に移行してタイマの計時を開始し、このタイマがオイル返しが行われるのに十分な時間を計時するまでモータ20aは、オイル返しモード運転に適する回転数を維持する。
なお「オイル返しが行われるのに十分な時間」は、予め実施された実験によって定められる。
具体的には「オイル返しが行われるのに十分な時間」は、1分から60分程度である。即ち「オイル返しが行われるのに十分な時間」は、蒸発器11a,11bの大きさに依存し、小型のもので1分から10分程度であり、大型のものでは60分程度の時間を要する。
そしてステップ12で、「オイル返しが行われるのに十分な時間」が経過したことが確認されると、ステップ13に移行し、先のステップ5で開いたバイパス開閉弁16aを閉じる。
その後、ステップ14に移行し、必要冷却量演算機能を復活させて冷凍機Aが要求される冷却量を演算する。そしてステップ15に移行し、冷凍機Aの冷媒吐出量を徐々に下げてゆく。
即ち冷凍機Aの圧縮機7aの回転数をゆっくりと演算された冷却量に近づけて行き、ステップ1に戻る。
このときの、回転数の変化勾配の絶対値は、前記したオイル返しモード運転を開始した際のカーブに準じる。
具体的には、冷凍機Aの圧縮機7aの回転数を演算された冷却量に一致させるまで、20分程度をかけてゆっくりと圧縮機7aの回転数を変化させて行くことが望ましい。
この際の冷凍機A,Bの冷媒吐出量の時間変化と圧縮機のモータの回転数の時間変化は、図3の通りであり、冷凍機A,Bの冷媒吐出量の合計冷却量はオイル開始モード運転が解除される際にも変化しない。
なお図3は、必要な冷却量が、オイル返しモードの開始直後と終了直後で変化せず、オイル返しモードが終了して暫く時間が経過した後に、必要な冷却量が増大した状態を示している。
またオイル返しモード運転が開始された際の圧縮機7aの回転数がオイル返しモード運転に適する回転数以上であった場合は、ステップ8,9を実行せずにステップ10に移行し、オイル返しモード運転開始された際の圧縮機7aの回転数を維持する。そしてステップ11,12で「オイル返しが行われるのに十分な時間」、上記した回転数を保って蒸発器11aからオイルを回収する。
この時の冷凍機A,Bの冷媒吐出量の時間変化と圧縮機のモータの回転数の時間変化は、図4の通りであり、冷凍機A,Bの冷媒吐出量の合計は変化しない。
その後の工程は、先の場合と同一であり、ステップ13に移行し、先のステップ5で開いたバイパス開閉弁16aを閉じ、ステップ14に移行して必要冷却量演算機能を復活させて冷凍機Aが要求される冷却量を演算する。ただしオイル返しモード運転を開始する際に、既に圧縮機7aの回転数がオイル返しモード運転に適する回転数以上であり、且つオイル返しモード運転の前後で必要冷却量が変わらなかった場合には、冷凍機Aの冷媒吐出量は変わらない。即ちこの場合には、ステップ14に移行しても冷凍機Aの圧縮機7aの回転数は変化しない。もちろん、オイル返しモード運転の前後で必要冷却量が変化した場合には、冷凍機Aに要求される冷却量が変わるので、冷凍機Aの冷媒吐出量をゆっくりと演算された冷却量に近づけて行き、ステップ1に戻ることとなる。即ちこの場合には、冷凍機Aの圧縮機7aの回転数をゆっくりと演算された冷却量に近づけて行き、ステップ1に戻る。
なお、図3,図4は、説明を容易にするために、オイル返しモード運転の最中に試験室2の目標環境が変化せず、且つ試験室2の環境を変化させる外的要因が無かった場合を示しているが、実際には、オイル返しモード運転の最中にこれらが変化し、要求される冷熱量が変化する。そのため実際の冷凍機A,Bの冷媒吐出量の時間変化と圧縮機のモータの回転数の時間変化は、図5の様に複雑に変化する。ただし、この場合でも、冷凍機A,Bの冷媒吐出量の合計量は、必要な冷却量と一致する。
以上説明した実施形態では、冷凍機A,Bだけがフィードバックされて所望の冷却量を確保する例を説明したが、加熱器(ヒータ)3を機能させてオイル返しモード運転中の環境変化を抑制させてもよい。
図6は、冷凍機A,Bと加熱器3によってオイル返しモード運転中の環境変化を抑制する場合のタイムチャートである。図6のタイムチャートに従うと、通常運転の際に、冷凍機A,Bと加熱器3を共に運転して試験装置2内を所望の環境に維持している。
そして冷凍機Aのオイル返しモード運転が開始させると、冷凍機Bの冷媒吐出量を維持して試験装置2内の環境変化を加熱器3にフィードバックさせる。即ち冷凍機Aの冷媒吐出量の増大に伴って、加熱器3の発熱量を増加させ、冷凍機Aの冷熱増加分を補う。
この様に加熱器3を機能させてオイル返しモード運転中の環境変化を抑制させる方策は、冷凍機を一台だけ搭載する恒温恒湿装置にも応用することができる。
以上説明した実施形態では、冷凍機を2基備えた構成を例示したが、3基以上の冷凍機を搭載したものであってもよい。逆に冷凍機を1基だけ搭載したものであってもよい。
冷凍機を2基以上搭載する場合、その内の少なくとも1基は、冷凍サイクルを実現するものであることが必要であるが、他の冷凍機は、この限りではなく、例えばペルチェ効果を応用した冷凍機を採用することもできる。
複数の冷凍機を搭載する場合には、各冷凍機の冷凍能力(容量)が異なるものであることが望ましいが、同一のものであってもよい。
上記した実施形態では、一方の冷凍機Aがオイル返しモード運転の際に、オイル返しモード運転を行っていない側の冷凍機Bをフィードバック制御して試験室2内の環境を維持したが、冷凍機Aの冷媒吐出量の変化予想値から冷凍機Bの冷媒吐出量の変更量を演算して冷凍機Bの運転状態を変化させてもよい。
以上の説明では、試験室2の湿度の変化について触れなかったが、恒温恒湿装置1は、多くの場合、試験室2の湿度についてもコントロールしている。その一方で、オイル返しモード運転が実行されてバイパス開閉弁16aが開かれ、さらに圧縮機7aの回転数がオイル返しモード運転に適する回転数に上昇すると、蒸発器11aの表面温度が変化し、蒸発器11aの表面における結露量が変化し、試験室2の湿度を変える要因となる。しかしながら本実施形態の恒温恒湿装置1では、試験室2の湿度は冷凍機A,Bだけでなく、加湿器5によっても制御されているから、試験室2の湿度の変化も小さい。
即ち本実施形態では、試験室2の実際の湿度を検知し、冷凍機A,Bと加湿器5とをフィードバック制御して試験室2の湿度を制御している。そのためオイル返しモード運転が実行されて必要冷却量の演算を停止しても、加湿器5に対するフィードバック制御は有効に機能しているから、試験室2内の湿度が急変することはない。
1 恒温恒湿装置
2 試験室
3 加熱器(ヒータ)
5 加湿器
7a,7b 圧縮機
8a,8b 凝縮器
10a,10b 膨張手段
11a,11b 蒸発器
12a,12b 蒸発圧力制御弁
15a,15b バイパス流路
16a,16b バイパス開閉弁
20a,20b モータ
A,B 冷凍機(冷却手段)

Claims (7)

  1. 少なくとも一つの冷却手段と、他の1又は複数の冷却手段及び/又は他の1又は複数の加熱手段を有し、制御対象の温度を所望の温度に制御する温度制御装置において、少なくとも一つの冷却手段は圧縮機と凝縮器と膨張手段と蒸発器を有し相変化する冷媒をオイルと共に循環させて冷凍サイクルを実現するものであり、且つ当該冷却手段の圧縮機は冷媒吐出量を変更することが可能であり、一定の条件を満足する場合に圧縮機の冷媒吐出量を増大させてオイル返しモード運転が行われ、オイル返しモード運転の際には、他の冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件が圧縮機の冷媒吐出量の増大に伴う制御対象の温度変化を抑制する方向に変化し、前記他の冷却手段及び/又は加熱手段の運転条件の変化によって制御対象の過激な温度変化が防止されることを特徴とする温度制御装置。
  2. 前記オイル返しモード運転の際の圧縮機の冷媒吐出量の増大速度は、緩やかであることを特徴とする請求項1に記載の温度制御装置。
  3. 圧縮機はモータによって駆動され、オイル返しモード運転においては圧縮機のモータの回転数を増加することによって圧縮機の冷媒吐出量が増大され、モータの回転数の上昇カーブは緩やかであって、オイル返しモード運転の開始時におけるモータの回転数が圧縮機の冷媒吐出量が最高吐出量となる回転数に対して20パーセントの回転数であった状態からオイル返し適正量となる回転数に至るまでに要する時間が3分以上となる場合の上昇カーブよりも緩いことを特徴とする請求項1又は2に記載の温度制御装置。
  4. 複数の冷却手段を有し、制御対象の状態に応じて前記複数の冷却手段の稼働割合が定められ、オイル返しモード運転においては、前記稼働割合が変更されるか或いは無視されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の温度制御装置。
  5. 蒸発器と圧縮機との間に蒸発圧力制御弁が設けられており、蒸発圧力制御弁を迂回するバイパス流路があり、当該バイパス流路にバイパス開閉弁が設けられており、オイル返しモード運転の際にバイパス開閉弁が開かれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の温度制御装置。
  6. 前記一定の条件を満足する際に、圧縮機の冷媒吐出量が所定量以上である場合には圧縮機の冷媒吐出量を増大させずにオイル返しモード運転が行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の温度制御装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の温度制御装置が搭載された恒温恒湿装置。
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