JP2012097043A - ラジカル発生剤及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボンラジカルを発生させる焼成貝殻を効率的に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】ホタテの貝殻を粉砕し、貝殻粉砕物を得た後、この貝殻粉砕物を非酸化性雰囲気の下、保持温度580〜620℃で焼成する(1回の焼成)。これにより得られる焼成貝殻粉砕物は、有機成分を1.5重量%以上含有し、この残存有機成分に起因してカーボンラジカルが持続的に発生する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば防カビ抗菌剤、各種脱臭剤(ホルムアルデヒド抑制剤など)、土壌改良剤、殺菌剤(農薬)などへの利用に適したカーボンラジカル発生剤と、その製造方法とに関する。
ホタテやカキなどの天然貝の貝殻を粒径5〜10mm程度に粗粉砕し、貝殻の粗粉砕物としたものに2段階の焼成を行った後、さらに粒径0.5〜10μm程度に微粉砕することで得られた焼成貝殻の微粉砕物が、抗カビ性・抗菌性を発現することが知られている(特許文献1)。
WO2007/64000
特許文献1記載の技術は、所定雰囲気下で行う焼成の保持温度範囲を600℃を境に低中温の2領域に分け、貝殻の粗粉砕物に対して1段目の焼成を非酸化性雰囲気の下、保持温度が500〜600℃に属する低温で行い、その後、2段目の焼成を空気雰囲気の下、保持温度が600〜900℃に属する中温で行うことによって2段階の焼成を行った後、所定粒径に微粉砕することで、焼成貝殻の微粉砕物を得るものである。
しかしながら、特許文献1記載の技術では2回の焼成を行う必要があり、エネルギー効率の観点からこれを改善し、焼成貝殻の生産性を改善することが望まれている。なお、焼成貝殻からカーボンラジカルが発生することは知られていない。
そこで本発明の一側面では、焼成貝殻からなるラジカル発生剤と、カーボンラジカルを発生させる焼成貝殻を効率的に製造することができる方法とを提供する。
本発明者は、天然貝の貝殻を所定温度以上で焼成して得られる焼成貝殻の有機成分の含有量が所定重量%以上のときに、当該焼成貝殻から持続的にラジカルが発生し、この発生したラジカルがホルムアルデヒドの分解や防カビ・抗菌など広範囲に作用することを見出した。
すなわち本発明に係るラジカル発生剤は、天然貝の貝殻を非酸化性雰囲気の下、600℃前後以上で焼成して得られ、有機成分を1.5重量%以上含有する焼成貝殻で構成してあることを特徴とする。具体的には、例えば、天然貝の貝殻を粉砕し、貝殻粉砕物を得た後、この貝殻粉砕物を非酸化性雰囲気の下、600℃前後以上の保持温度で焼成(1回の焼成)して得られる焼成貝殻粉砕物で構成することができる(第1の観点)。また、天然貝の貝殻を粉砕することなく、非酸化性雰囲気の下、600℃前後以上の保持温度で焼成し焼成貝殻を得た後、この焼成貝殻を粉砕して得られる焼成貝殻粉砕物で構成することもできる(第2の観点)。
第1及び第2の両観点において、焼成貝殻粉砕物を使用形態に応じてさらに粉砕して得られる焼成貝殻第2粉砕物で構成することもできる(第3の観点)。
上記発明において、天然貝としてホタテを用いる場合、焼成の際の保持温度を580〜620℃の範囲とすることが好ましい。カキやアワビを用いる場合、焼成保持温度を580〜650℃の範囲とすることが好ましい。用いる貝種を問わず、保持温度の保持時間を30分〜3時間の範囲とすることが好ましい。非酸化性雰囲気として、窒素雰囲気を含む窒素雰囲気を採用することができる。
本発明によれば、天然貝の貝殻を所定条件(非酸化性雰囲気下で、かつ600℃前後以上)で焼成することにより、焼成前貝殻中に存在する有機成分の燃焼による消失を可能な限り防止し、焼成貝殻中に有機成分をより多く残存させることができる。その結果、得られた焼成貝殻から持続的にカーボンラジカルが発生し、この持続的に発生するカーボンラジカルを用いて、ホルムアルデヒドの分解や、防カビ・抗菌など広範囲の用途に利用することができる。
なお、焼成前貝殻にも当然ながら有機成分が多く存在するが、上記所定条件での焼成を行わない場合に上記ラジカルは持続的に発生することはない。上記所定条件で焼成することで、貝殻内に存在するタンパク質(有機成分の一部)の一部が分解し、貝殻構造中から窒素が引き抜かれ(カルボキシル基は残存するものと思われる)、これによって初めて、焼成貝殻から持続的にカーボンラジカルが発生するのではないかと思われる。
本発明によれば、1段の焼成で足りるので、エネルギー効率の点からも好ましく、生産性の改善が期待できる。
なお、特許文献1記載の技術は上述したが(発明が解決しようとする課題の欄)、これが本発明技術に近いことは否めない。しかしながら、特許文献1において、実施例レベル(実施例1,3,5,6)では、1段目の焼成条件を非酸化性雰囲気での保持温度500℃に固定した上で、2段目の焼成条件、特に保持温度を変動(具体的に、実施例1では700℃、実施例3では650℃、実施例5では850℃、実施例6では820℃。ただし何れも空気雰囲気の下)させたデータが掲載されるに留まり、600℃付近での焼成データは開示されていない。特に、600℃前後の所定範囲の温度領域で焼成した場合の、焼成貝殻の性状について示唆するものではない。
図1は実施例1〜3と比較例1〜4で得られた微粉砕物サンプルのホルムアルデヒド分解率を示す図である。 図2は市販カルサイト及び天然石灰石を用いた場合のホルムアルデヒド分解率を示す図である。 図3は未焼成サンプルのESRスペクトルを示す図である。 図4は実施例1〜3で得られた微粉砕物サンプルのESRスペクトルを示す図である。 図5は図4のピークを拡大した図である。 図6は比較例4で得られた微粉砕物サンプルのESRスペクトルを示す図である。 図7は図6のピークを拡大した図である。 図8は実施例1〜3で得られた微粉砕物サンプルから得られたEDTA残渣物のESRスペクトルを示す図である。 図9は図8のピークを拡大した図である。
《ラジカル発生剤》
本発明に係るラジカル発生剤は、天然貝の貝殻(焼成前貝殻と同義)を所定条件(後述)の下、焼成して得られる焼成貝殻で構成される。前記焼成貝殻は、有機成分を1.5重量%以上、好ましくは1.7重量%以上、より好ましくは1.9重量%以上、さらに好ましくは2.0重量%以上、最も好ましくは2.0〜2.5重量%程度の割合で含有する。所定条件下で焼成した後の焼成貝殻中の含有有機成分量が、多ければ多いほど、より持続的にカーボンラジカルが発生することが期待される。ここでの有機成分は、貝殻の構造に組み込まれている成分(主としてコラーゲンなどのタンパク質とキチン質)であり、後述の、貝殻に付着している有機物を含まない。
具体的には、本発明に係るラジカル発生剤は、天然貝の貝殻を粉砕し、貝殻粉砕物を得た後、この貝殻粉砕物を所定条件(後述)の下で焼成して得られる焼成貝殻粉砕物から構成される(第1の観点)。また、天然貝の貝殻を粉砕することなく、所定条件(後述)の下で焼成し焼成貝殻を得た後、前記焼成貝殻を粉砕して得られる焼成貝殻粉砕物で構成してもよい(第2の観点)。さらに、こうした焼成貝殻粉砕物を、使用形態に応じてさらに粉砕して得られる焼成貝殻第2粉砕物で構成することもできる(第3の観点)。何れにしても、本発明のラジカル発生剤(第1〜第3の各観点)は、焼成貝殻粉砕物中に、有機成分が上記割合で含有されていることが特徴である。
本発明者は、天然貝の貝殻を所定条件(後述)の下で焼成することにより、焼成前貝殻中に存在する有機成分の燃焼による消失を可能な限り防止し、焼成貝殻中に有機成分をより多く残存させることが可能な点と、この残存有機成分に起因して、焼成貝殻から持続的にラジカルが発生する点とを見出したものである。
本発明に係るラジカル発生剤が焼成貝殻第2粉砕物から構成される場合、本発明のラジカル発生剤は、そのままの形態で、例えば脱臭剤(ホルムアルデヒドの分解)、防カビ・抗菌剤、土壌改良剤、殺菌剤(農薬)などへの利用が期待できる。また、紙・ゴム・合成樹脂へ配合して使用することも考え得る。
本発明のラジカル発生剤が焼成貝殻粉砕物(ただし、焼成貝殻第2粉砕物を除く)から構成される場合、本発明のラジカル発生剤は、例えば活性炭や木炭との複合化使用が考え得る。
《ラジカル発生剤の製造方法》
次に、本発明のラジカル発生剤の製造方法の一例(上記第1の観点及び第3の観点に相当)を説明する。
(1)貝殻の準備
まずは、天然貝の貝殻を準備する。天然貝としては、ホタテ、カキ、ホッキ、アワビ、ムラサキガイ、アサリ、ハマグリなどが挙げられる。使用可能な貝殻は、上記天然貝の貝殻から適宜選択され、必要に応じてこれらを混在させて用いることもできる。
こうした貝殻は、一般に、90〜95重量の%炭酸カルシウムと、5〜10重量%程度の有機成分とが、交互に層状に重ねられた構造を持つ無機/有機複合材料である。
炭酸カルシウムの結晶形は、貝の種類によってカルサイト、アラゴナイト、もしくはその混合物とされる。焼成前貝殻中の有機成分は、貝殻の構造に組み込まれている上記成分の他、貝殻に付着している有機物も含む。天然の貝殻は、通常、少量の、鉄やアルミニウムなどの金属イオンを含むが、天然石灰石に比べるとその量は少ない。
本発明では、上記天然の貝殻の中で、ホタテ(又はカキ)の貝殻を用いることが好ましい。ホタテ(又はカキ)の貝殻は、通常、カルサイト型の炭酸カルシウムによって形成されている。ホタテは他の貝類に比べると、その生態が大きく異なる。すなわち、ホタテは、貝殻を開閉することによって海水を吸い込んだ後、それを勢いよく外部に放出しながら、その名のとおり帆を立てるようにして海中を遊泳している。そのために貝柱は大きく、貝殻は比較的薄く軽量であるにもかかわらず、大きな強度を持っている。その貝殻構造は、微細なカルサイト型炭酸カルシウム粒子が配列して葉状構造を維持して貝内面側を形成し、貝内層ではカルサイト型炭酸カルシウムの結晶配列構造が交差した板状構造を維持している。このため、焼成処理によって炭酸カルシウム粒子を接合している有機成分(コラーゲンなどのタンパク質)を燃焼させて除去すると、比表面積が比較的大きな多孔性の炭酸カルシウムになる。
また、ホタテの貝殻は、天然石灰石に比べて炭酸カルシウムの基本粒子径が小さく、鉄やアルミニウムなどの金属イオンの含有量が格段に少ないことも大きな特徴である。近年、食用貝類の水揚げ高は、年ごとに増加傾向にあり、その中でもホタテとカキの水揚げ高は、年間約50万トンにも上る。このため廃棄される貝殻量も急激に増大しており、山積みにされたまま放置されている例が多く、これが悪臭や水質汚染の原因となり、その有効な解決方法が強く望まれている。本発明によれば、大量の廃棄ホタテ(又はカキ)貝殻を有効に活用することができる。
また本発明では、上記天然の貝殻の中で、アワビの貝殻を用いることも好ましい。アワビの貝殻は、通常、アラゴナイト型の炭酸カルシウムによって形成されているが、比較的低温(310℃程度)の焼成でカルサイト型の炭酸カルシウムへと変化する。本発明によれば、廃棄アワビ貝殻も有効に活用することができる。
(2)粗粉砕工程
次に、準備した貝殻を水洗し、乾燥させた後、粗粉砕して貝殻粗粉砕物とする。粗粉砕する方法は特に限定されず、例えばロールミルなどの粗粉砕装置を用いて行うことができる。
この粗粉砕の工程では、得られる貝殻粗粉砕物の粒径があまり細かくなり過ぎない程度に粗粉砕することが好ましい。この時点であまり細かくしすぎると、後述の焼成工程で、効果的に有機成分を残存させることができなくなる。具体的には、粗粉砕に供する貝殻の平均直径の、好ましくは2〜30%程度の粒径(例えば平均直径が約150mmの貝殻を用いる場合、3〜45mm程度の粒径)、より好ましくは2〜10%程度の粒径(平均直径が約150mmの貝殻を用いる場合、3〜15mm程度の粒径)となるように粗粉砕する。
(3)焼成工程
次に、貝殻粗粉砕物は焼成工程に供される。焼成工程は、貝殻粗粉砕物を、例えば陶製の容器などに充填した後、例えば電気炉などの焼成装置に密に充填してからスタートする。
本発明で使用可能な焼成装置の材質や構造は、特に限定されないが、少なくとも、後述する保持温度の上限プラス数十℃くらいまでの加熱に耐えられる材質や構造とされる。ただし、ロータリーキルンのように焼成しながらかき混ぜたり、粉砕しながら焼成する装置は不適である。
本実施形態の焼成工程は、昇温工程と、温度保持工程と、降温工程とを有する。
昇温工程は、焼成装置内の雰囲気温度を、例えば室温から、焼成温度(保持温度)にまで昇温させる工程である。昇温工程は、焼成温度まで昇温させればよく、その過程は特に限定されない。例えば、焼成温度まで所定の昇温速度で昇温させてもよいし、あるいは一旦、所定温度(例えば焼成温度より低い温度)まで昇温させ、この所定温度から(例えば室温にまで)降温させた後に、焼成温度まで所定の昇温速度で昇温させてもよい。この場合の所定温度は、例えば400℃程度である。いずれにしても本発明の効果が得られる。
昇温速度は、例えば、好ましくは3〜30℃/分程度、より好ましくは5〜15℃/分程度とする。昇温速度が遅すぎると、焼成に時間がかかりすぎ、生産性が低下する。
温度保持工程は、前記昇温工程で昇温させた焼成装置内の雰囲気温度を、前記焼成温度で保持する工程である。
本実施形態では、この温度保持工程を、非酸化性雰囲気下で、かつ焼成温度(保持温度)が600℃前後以上となる温度で行うことが必須である。こうした所定条件の下で焼成を行うことで、焼成前の貝殻粗粉砕物中に存在する有機成分の燃焼による消失を可能な限り防止し、後述の、最終的に得られる焼成貝殻の微粉砕物中に有機成分をより多く残存させることができる。その結果、その微粉砕物から持続的にカーボンラジカルを発生させることができる。
ここで、「非酸化性雰囲気」とは、広く、空気や酸素を遮断した雰囲気を意味しており、例えば、焼成炉内を密閉した状態で炉内に窒素を導入することにより実現される、いわゆる窒素雰囲気や、一時大気開放した炉内に焼成対象物(天然貝殻そのもの、あるいはそれの粗粉砕物)を密に充填した後、炉内を密閉し、その後窒素などの雰囲気流体を炉内へ導入しない状態で炉内の雰囲気温度を上げ、所定時間経過した後に実現される無酸素雰囲気をも含むものとする。
また、「600℃前後」とは、広い意味で600℃を境に前後数十℃程度の温度幅(例えば580〜620℃など)を意味しており、狭い意味での600℃前後(例えば601℃や599℃など)を意図するものではない。
本実施形態において、焼成温度は、使用する貝殻の種類によって適切な温度は多少変動しうる。例えばホタテの貝殻を使用する場合、好ましくは550〜650℃、より好ましくは580〜620℃、最も好ましくは狭い意味での600℃前後である。例えばカキ又はアワビの貝殻を使用する場合、好ましくは550〜650℃、より好ましくは580〜650℃、最も好ましくは狭い意味での600℃前後である。
焼成温度が低すぎると、何れの貝殻種を用いた場合でも、貝殻内に存在するタンパク質(有機成分の一部)の一部が分解し難くなり、貝殻構造中から窒素が効果的に引き抜かれず、その結果、カーボンラジカルの発生量が減少し、また発生しても持続期間が短くなるなどの不都合を生じ得る。その一方で、焼成温度が高い場合、貝殻構造中でタンパク質の分解が促進され、貝殻構造中から効果的に窒素が引き抜かれるが、焼成温度が高すぎると、粗粉砕物中の有機成分が燃焼により消失しやすくなり、その結果、最終的に得られる焼成貝殻の微粉砕物から持続的なラジカルの発生が期待できなくなり得る。
焼成温度の保持時間は、最も効果的に有機成分を残留させる観点からは1時間前後であることが最も好ましいが、通常は30分〜3時間程度とする。なお、12時間を超過する焼成を行っても、例えば2時間程度焼成したサンプルと比較しても、最終的に得られる焼成貝殻の微粉砕物に性能上の違いが認められず、エネルギー効率の観点からもあまり好ましくない。
降温工程は、炉内の雰囲気温度を前記焼成温度から降温させる工程である。降温工程では、前記温度保持工程での雰囲気を変更しない状態で降温させてもよいが、降温工程の途中から雰囲気を変更してもよい(例えば炉内を大気開放した空気雰囲気にて)。
降温速度は、例えば、好ましくは3〜30℃/分程度、より好ましくは5〜15℃/分程度である。降温速度が遅すぎると、生産性が低下する。
以上の工程を経ることで、焼成貝殻の粗粉砕物(本発明の「焼成貝殻粉砕物」に相当)が得られる。
(4)微粉砕工程
次に、本実施形態では、得られた焼成貝殻の粗粉砕物を微粉砕し、最終物としての焼成貝殻の微粉砕物(本発明の「焼成貝殻第2粉砕物」に相当)を得る。微粉砕する方法は特に限定されず、例えばジェットミルなどの微粉砕装置を用いて行うことができる。
この微粉砕の工程では、使用形態に応じた粒径となるように、粉砕条件を選択すればよい。そのままの形態で、例えば脱臭剤(ホルムアルデヒドの分解)に用いる場合、5〜50μm程度の粒径となるように微粉砕する。防カビ・抗菌剤や殺菌剤(農薬)に用いる場合、1〜20μm程度の粒径となるように微粉砕する。土壌改良剤に用いる場合、5〜100μm程度の粒径となるように微粉砕する。
これに対し、そのままの形態で使用するのではなく、紙・ゴム・合成樹脂へ配合して用いる場合、扱いやすさの観点から、1〜10μm程度の粒径となるように微粉砕することが好ましい。
なお、本実施形態において、上記(2)の粗粉砕工程、上記(3)の焼成工程及び上記(4)の微粉砕工程は互いに独立して行うものであるが、これに限定されず、例えば上記(2)の粗粉砕工程と上記(3)の焼成工程を連続して行ってもよく、あるいは上記(3)の焼成工程と上記(4)の微粉砕工程を連続して行ってもよい。
以上、本発明の実施形態(一例)について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
例えば、上述した例では、上記(1)で準備した天然貝の貝殻を粗粉砕する工程(上記(2)の粗粉砕工程)を必ず経るものであるが、この粗粉砕工程を必ずしも経ることは必要ない(上記第2の観点に相当)。なぜならば、上記(3)の焼成工程に供する際の、焼成対象物の外径(または直径)が大きい方が、最終的に得られる焼成貝殻の微粉砕物中に、より多くの有機成分が残存しうると推測できるからである。ただ、天然貝の貝殻を水洗乾燥し、そのままの状態で焼成装置に充填しようとすると、充填率が低くなって(つまり装置内での配置隙間が大きくなって)デメリットを生じうる。この場合、上記(3)の焼成工程の温度保持工程において、炉内に窒素を導入した窒素雰囲気下で焼成温度を保持することにより、本発明の効果を得ることが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[実施例1]
<焼成貝殻の微粉砕物サンプルの作製>
まず、水洗乾燥したホタテ(北海道サロマ湖産)の貝殻(サイズ:直径約120mm程度)を準備した。次に、この貝殻をロールミルで粗粉砕し、未焼成貝殻の粗粉砕物(平均粒子径5mm程度)を得た。次に、得られた未焼成貝殻の粗粉砕物を電気炉内部に密に充填した後、炉内を密閉し、酸素の導入を遮断した無酸素雰囲気(非酸化性雰囲気)に炉内雰囲気を調整した。この非酸化性雰囲気の状態で、焼成を次の条件で行った。
まず、炉内の雰囲気温度を、昇温速度:10℃/分にて、室温(25℃)から焼成温度:600℃まで昇温させた。次に、炉内の雰囲気を変更しないで、この温度(600℃)を2時間維持して焼成を行った(保持温度:600℃、保持時間:2時間)。次に、炉内の雰囲気を変更しないで、炉内の雰囲気温度を、降温速度:3℃/分にて、室温にまで降温させた。
次に、得られた焼成貝殻の粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、焼成貝殻の微粉砕物(平均粒子径5μm程度)サンプルを得た。
このサンプルについて、X線回折によって成分を調べたところ、カルサイト型炭酸カルシウムを主成分とし、酸化カルシウムを含むことが確認された。また、BET比表面積を測定したところ、約1m/gであった。さらに、このサンプルは、電子顕微鏡によってホタテ貝殻の構造を維持した多孔体であることが観察された。また、このサンプルを化学分析したところ、Ca2+含有率が40.7%であり、CO/Caモル比は0.91であり、従って、5.0重量%のカルサイト型炭酸カルシウム多孔体に、92.5重量%の酸化カルシウムを含み、その他の成分が2.5重量%であり、このサンプルは均一な多孔質体組織を形成していることから、カルサイト型炭酸カルシウム多孔体に少量の酸化カルシウムと有機成分とが点在した複合粉末であることが確認された。
<EDTA残渣物の取得>
上記にて得られた焼成貝殻の微粉砕物サンプルの一部(20g)を、0.25M ETDA(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)、M.W.=372.24、和光純薬工業社製、特級試薬)水溶液150mLに入れ、サンプル中の炭酸カルシウムが完全に溶解するまで、溶解と遠心分離を繰り返し行った。そのとき溶け残ったものを40℃、24時間の条件で乾燥させ、約0.47gの溶解残渣物(EDTA残渣物、含有有機成分。少量の金属イオンを含む)を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合(金属イオンを含まず)は2.3重量%であった。
<EDTA残渣物の検討>
上記にて得られたEDTA残渣物に対し、その定性分析としてビウレット反応とキサントプロテイン反応を行い、それぞれの反応における溶液の変化を観察した。ビウレット反応において、得られたEDTA残渣物は、溶液が赤紫色への変化はみられなかった。これによりペプチド結合は存在していないことが確認された。また、キサントプロテイン反応において、得られたEDTA残渣物は、溶液が、酸性では薄い黄色に、アルカリ性では薄い橙黄色に変化がみられた。このことから、EDTA残渣物の有機成分は芳香環(ベンゼン環)をもつタンパク質として存在していることが推測される。さらに、飛行時間型二次イオン質量分析装置(アルバック・ファイ社製、TOF−SIMS,TRIFT−II型)によってEDTA残渣物中のタンパク質の確認を行った。その結果、アミノ酸残基を含むタンパク質が存在するものと考えられるとの結論を得た。
[実施例2]
焼成時の保持温度を580℃(従って昇温工程では580℃まで昇温させた)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.5重量%であった。
[実施例3]
焼成時の保持温度を620℃(従って昇温工程ではこの620℃まで昇温させた)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.2重量%であった。
[比較例1]
焼成時の保持温度を400℃(従って昇温工程ではこの400℃まで昇温させた)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.5重量%であった。
[比較例2]
焼成時の保持温度を500℃(従って昇温工程ではこの500℃まで昇温させた)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.4重量%であった。
[比較例3]
焼成時の保持温度を700℃(従って昇温工程ではこの700℃まで昇温させた)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は0.92重量%であった。
[比較例4]
焼成時の保持温度を800℃(従って昇温工程ではこの800℃まで昇温させた)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中に有機成分は含まれていなかった(0重量%)。
上記各例での結果(焼成条件と有機成分(EDTA残渣物)の割合)を表1に示す。
Figure 2012097043
[評価]
各例で得られた微粉砕物サンプルとそのEDTA残渣物に対して、下記の評価を行なった。
(1)ホルムアルデヒドの分解性
<微粉砕物サンプルに対して>
まず、200mLのメスフラスコに酢酸アンモニウム(M.W.=77.08、和光純薬工業社製、特級試薬)30gと蒸留水160mLを加えて溶解させ、さらに氷酢酸(M.W.=60.00、和光純薬工業社製、特級試薬)0.6mLとアセチルアセトン(M.W.=100.12、和光純薬工業社製、特級試薬)0.4mLを加え、メスアップしてアセチルアセトン−酢酸アンモニウム溶液を得た。次に、このアセチルアセトン−酢酸アンモニウム溶液25mLに、9ppmのホルムアルデヒド(M.W.=30.03、和光純薬工業社製、特級試薬。以下「FA」と略記する。)水溶液25mLを加え、60℃で30分、振とうさせ、黄色錯化複合体を含む溶液を得た。次に、その溶液に、各例で得られた微粉砕物サンプル0.1gを加え、遮光しながら室温(25℃)で24時間、振とうさせ、ろ過後のろ液を得た。このろ液(溶液)の黄色の退色度合いからFA分解率を求めた。結果を図1に示す。
図1より、FA分解能は、焼成温度が400℃(比較例1)、500℃(比較例2)、580〜620℃(実施例1〜3)と上昇することに伴って大きくなり、600℃前後(実施例1〜3)で最も大きくなることが確認できる。これに対し、それ以上の温度、例えば700℃(比較例3)、800℃(比較例4)では、急激に減少している。以上より、実施例1〜3で得られた微粉砕物サンプルの有用性が確認できた。
なお、同様の実験(ただし、焼成温度400℃、500℃は除く)を、市販のカルサイトと天然の石灰石で行った場合を図2に示す。図2より、市販カルサイトを用いた場合、どの温度(580℃〜620℃、700℃、800℃)で焼成してもFA分解能が低いことが確認できる。天然の石灰石を用いた場合も市販カルサイトと同様にFA分解能が低いことが確認できる。
<ETDA残渣物に対して>
同様の実験を、ETDA残渣物0.01gに対して行ったところ、微粉砕物サンプルとほとんど同じ結果が得られた。これにより、実施例1〜3で得られた微粉砕物サンプル中のEDTA残渣物、つまり焼成貝殻中の有機成分がFA分解に対して寄与していることが確認できた。
(2)FAの分解性持続性
実施例1〜3で得られた微粉砕物サンプル0.1gをデシケーター内で放置した後、FA分解能を評価した。その結果、何れのサンプルも、少なくとも3ヶ月間はFA分解能が持続することが確認できた。
(3)焼成貝殻の微粉砕物サンプルからのカーボンラジカルの検出
各例で得られた微粉砕物サンプルに対し、電子スピン共鳴装置(JES−FE−3X、日本電子社製)を使用して、ESR測定することで、ラジカルの検出を試みた。具体的には、得られた焼成貝殻の微粉砕物サンプル60mgを試料管に入れ、共振器にセットし、ラジカルを検出した。測定条件は、マイクロ波周波数:8.89GHz、マイクロ波出力:1〜2mW、変調磁場幅:0.5G、スイープタイム:700G、リスポンスタイム:0.1秒とした。
未焼成サンプルのESRスペクトルを図3に示し、580〜620℃(実施例1〜3)の温度で焼成した微粉砕物サンプルのESRスペクトルを図4に示し、この図4のピークを拡大した図を図5に示し、800℃(比較例4)の温度で焼成した微粉砕物サンプルのESRスペクトルを図6に示し、この図6のピークを拡大した図を図7に示す。
図3に示すように、未焼成サンプルからは、貝殻に含まれるMn(II)の超微細結合のピークのみが見られた。
これに対し、図4に示すように、実施例1〜3で得られた580〜620℃で焼成した微粉砕物サンプルからは、約317mTに大きなピークが見られ、このピークを拡大した図5からは、g値が2.0026の、カーボンラジカルのピークが見られた。さらに比較例4で得られた800℃で焼成した微粉砕物サンプルを調べた結果、図6に示すように、Mn(II)の超微細結合のピークと、このピークを拡大した図7に示すように、g値が2.0054の小さいピークが見られた。
以上より、580〜620℃で焼成した実施例1〜3の微粉砕物サンプルからはカーボンラジカルが発生するが、800℃で焼成したもの(比較例4のサンプル)からは、カーボンラジカルはほとんど発生しないことが分かった。800℃焼成の場合にカーボンラジカルが発生しないのは、サンプル中の有機成分が燃焼してほとんど除去されたためであると推測される。
(4)EDTA残渣物からのラジカルの検出
上記より、580〜620℃で焼成した実施例1〜3の微粉砕物サンプルからカーボンラジカルが発生することが明らかになった。そこで、そのカーボンラジカルの発生源を追求すべく、上記にて得られたEDTA残渣物に対し、上記と同様の電子スピン共鳴装置(JES−FE−3X、日本電子社製)を使用して、同一条件でESR測定することで、ラジカルの検出を試みた。
580〜620℃(実施例1〜3)の温度で焼成した微粉砕物サンプルから得られたEDTA残渣物のESRスペクトルを図8に示し、この図8のピークを拡大した図を図9に示す。
図8に示すように、実施例1〜3の微粉砕物サンプルから得られたEDTA残渣物からは、実施例1〜3の微粉砕物サンプルにおける場合と同様に約317mTに大きなピークが見られ、このピークを拡大した図9からは、g値が2.0027の、カーボンラジカルのピークが見られた。
以上より、580〜620℃で焼成した実施例1〜3の微粉砕物サンプルからはカーボンラジカルが発生し、それは有機成分によるものであることが明らかになった。
(5)カビ抵抗性
各例で得られた微粉砕物サンプルをFRP材料に0.3〜1.0重量%となるように配合し、これを均一に分散させた試験体を調製し、この試験体に対してカビ抵抗性の試験を行った。この試験は、真菌45種を用いるMS−45法に基づいて行った。試験菌、試験条件、評価方法を表2に示す。そして、この試験結果を表3に示す。
Figure 2012097043
Figure 2012097043
表3に示すように、未焼成サンプルを配合した試験体では、抗カビ効果が全く認められなかった。焼成温度が400℃(比較例1)及び500℃(比較例2)と低温の場合、試験中期まで抗カビ効果が認められたが、試験後期ではカビの発生が多くなった。焼成温度が700℃(比較例3)及び800℃(比較例4)と高温の場合、試験初期には抗カビ効果があるもの持続性が乏しかった。
これに対し、焼成温度が580〜620℃(実施例1〜3)の場合、試験初期から後期まで全く菌が発生せず、優れた抗カビ効果を有し、かつ抗カビ効果が長期間持続することが確認された。しかも、この複合系抗カビ剤を配合したFRP材料は本来の性能には全く支障はなかった。以上より、実施例1〜3で得られた微粉砕物サンプルの有用性が確認できた。
(6)まとめ
ホルムアルデヒドの分解性については、比較例1〜4(焼成保持温度が580〜620℃の範囲外)の微粉砕物サンプルに対し、実施例1〜3(焼成保持温度が580〜620℃)の微粉砕物サンプルが優れていた。これらの3つのサンプルは、何れもFAの分解持続性に優れ、しかも優れた抗カビ効果があることが確認された。これらの理由は明らかではないが、微粉砕物サンプルから得られたEDTA残渣物(有機成分)からラジカル、特にカーボンラジカルが発生し、このラジカルが、フロンのラジカル反応によるオゾン分解と同様の機構でホルムアルデヒドに作用し、分解に寄与しているものと推測される。
[実施例4]
未焼成貝殻の粗粉砕物を電気炉内部に充填した後、炉内を密閉した状態で炉内に窒素を導入して窒素雰囲気(非酸化性雰囲気)とすることで炉内雰囲気を調整した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、同様の結果が得られた。
[比較例5]
未焼成貝殻の粗粉砕物を電気炉内部に充填した後、炉内を大気開放した状態で焼成、つまり空気雰囲気(酸化性雰囲気)下で焼成した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は実施例1の場合と比較してほぼ半分であった。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、実施例1のものと比較してほぼ半分の有機成分が残存していることを示す結果、すなわち、カーボンラジカルの検出されず、これに起因して、ホルムアルデヒドの分解性と分解持続性に乏しく、また抗カビ効果も認められなかった。これにより実施例1〜4の有用性が確認できた。
[実施例5]
準備した未焼成貝殻の粗粉砕条件を変更し、得られた未焼成貝殻の粗粉砕物(平均粒子径10mm程度)を用いた以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、実施例1のものと比較してより多くの有機成分が残存していることを示す結果が得られた。これは、焼成の際の、未焼成貝殻の粗粉砕物の粒径が10mmと大きく、これに起因して、より有機成分の燃焼による除去が抑制されたことによると推測される。
[実施例6]
準備した未焼成貝殻の粗粉砕条件を変更し、得られた未焼成貝殻の粗粉砕物(平均粒子径20mm程度)を用いた以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、実施例5のものと比較して、さらに多くの有機成分が残存していることを示す結果が得られた。これは、焼成の際の、未焼成貝殻の粗粉砕物の粒径が20mmとさらに大きく、より一層、有機成分の燃焼による除去が抑制されたことによるものと思われる。
[実施例7]
粗粉砕を行わず、準備した未焼成砕貝殻を電気炉内部に充填し、炉内を密閉した後、これを焼成した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、実施例6のものと比較して、さらに多くの有機成分が残存していることを示す結果が得られた。これは、焼成の際に、未焼成貝殻を粗粉砕しておらず、そのままの状態で焼成したことにより、さらに、より一層、有機成分の燃焼による除去が抑制されたことによるものと思われる。
[比較例6]
粗粉砕を行わず、準備した未焼成貝殻をジェットミルで微粉砕し、未焼成貝殻の微粉砕物を得た後、その微粉砕物を焼成しようとしたが、微粉砕の段階で貝殻の硬度が高すぎて微粉砕することができなかった。このため、評価を行わなかった。
[実施例8]
焼成時の保持時間を10時間に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、同様の結果が得られた。
[実施例9]
焼成時の保持時間を0.5時間(30分)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、同様の結果が得られた。
[実施例10]
貝殻の種類をカキ(岩手県三陸産)の貝殻(サイズ:直径約120mm程度)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.0重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
[実施例11]
焼成温度を630℃に変更した以外は、実施例10と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は1.9重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
[実施例12]
焼成温度を650℃に変更した以外は、実施例10と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は1.7重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
[比較例7]
焼成温度を500℃に変更した以外は、実施例10と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.2重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、比較例2とほぼ同様の結果が得られた。
[比較例8]
焼成温度を700℃に変更した以外は、実施例10と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は1.1重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、比較例3とほぼ同様の結果が得られた。
[評価]
以上より、実施例1〜3と比較して貝殻の種類が変わると、適切な焼成条件(特に焼成保持温度の範囲)は変わることが理解できる。また比較例7及び8に対して、実施例10〜12の有用性が確認できた。
なお、上記各例での結果(焼成条件と有機成分(EDTA残渣物)の割合)を表4に示す。
Figure 2012097043
[実施例13]
貝殻の種類をアワビ(岩手県三陸産)の貝殻(サイズ:直径約100mm程度)に変更した以外は、実施例1と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.3重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
[実施例14]
焼成温度を630℃に変更した以外は、実施例13と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.1重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
[実施例15]
焼成温度を650℃に変更した以外は、実施例13と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は1.9重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。
[比較例9]
焼成温度を500℃に変更した以外は、実施例13と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は2.4重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、比較例2とほぼ同様の結果が得られた。
[比較例10]
焼成温度を700℃に変更した以外は、実施例13と同条件で焼成貝殻の微粉砕物サンプル及びEDTA残渣物を得た。焼成貝殻の微粉砕物サンプル中の有機成分のみの含有割合は1.2重量%であった。そして実施例1と同じ評価を行った。その結果、比較例3とほぼ同様の結果が得られた。
[評価]
以上より、比較例9及び10に対して、実施例13〜15の有用性が確認できた。
なお、上記各例での結果(焼成条件と有機成分(EDTA残渣物)の割合)を表5に示す。
Figure 2012097043

Claims (12)

  1. 天然貝の貝殻を非酸化性雰囲気の下、600℃前後以上で焼成して得られ、有機成分を1.5重量%以上含有する焼成貝殻で構成してあるラジカル発生剤。
  2. ホタテの貝殻を粉砕し、貝殻粉砕物を得た後、前記貝殻粉砕物を非酸化性雰囲気の下、580〜620℃の保持温度で焼成して得られ、有機成分を1.5重量%以上含有する焼成貝殻粉砕物で構成してあるラジカル発生剤。
  3. ホタテの貝殻を粉砕することなく、非酸化性雰囲気の下、580〜620℃の保持温度で焼成し焼成貝殻を得た後、前記焼成貝殻を粉砕して得られ、有機成分を1.5重量%以上含有する焼成貝殻粉砕物で構成してあるラジカル発生剤。
  4. カキ又はアワビの貝殻を粉砕し、貝殻粉砕物を得た後、前記貝殻粉砕物を非酸化性雰囲気の下、580〜650℃の保持温度で焼成して得られ、有機成分を1.5重量%以上含有する焼成貝殻粉砕物で構成してあるラジカル発生剤。
  5. カキ又はアワビの貝殻を粉砕することなく、非酸化性雰囲気の下、580〜650℃の保持温度で焼成し焼成貝殻を得た後、前記焼成貝殻を粉砕して得られ、有機成分を1.5重量%以上含有する焼成貝殻粉砕物で構成してあるラジカル発生剤。
  6. 請求項2〜5の何れかに記載のラジカル発生剤において、
    前記焼成貝殻粉砕物を使用形態に応じてさらに粉砕して得られる焼成貝殻第2粉砕物で構成してあるラジカル発生剤。
  7. 請求項2〜6の何れかに記載のラジカル発生剤において、
    前記保持温度の保持時間が30分〜3時間であるラジカル発生剤。
  8. 請求項2〜6の何れかに記載のラジカル発生剤において、
    前記非酸化性雰囲気は、窒素雰囲気を含むラジカル発生剤。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載のラジカル発生剤を有効成分とする防カビ抗菌剤。
  10. 請求項1〜8の何れかに記載のラジカル発生剤を有効成分とする脱臭剤。
  11. 請求項1記載のラジカル発生剤を製造する方法であって、
    前記天然貝の貝殻を粉砕し、貝殻粉砕物を得た後、前記貝殻粉砕物を非酸化性雰囲気の下、保持温度600℃前後以上で、保持時間30分〜3時間の間、焼成することを特徴とするラジカル発生剤の製造方法。
  12. 請求項1記載のラジカル発生剤を製造する方法であって、
    前記天然貝の貝殻を粉砕することなく、非酸化性雰囲気の下、保持温度600℃前後以上で、保持時間30分〜3時間の間、焼成することを特徴とするラジカル発生剤の製造方法。
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