以下、本発明の実施形態について説明する。
〔太陽電池用保護シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、基材11と、基材11の一方の面(図1中では上面)に積層された熱可塑性樹脂層12とを備えている。この太陽電池用保護シート1は、太陽電池モジュールの表面保護シート(フロントシート)または裏面保護シート(バックシート)として用いられるものである。
基材11としては、電気絶縁性を有し、かつ熱可塑性樹脂層12が積層可能なものであればよく、通常は、樹脂フィルムを主体とするものが用いられる。
基材11に用いられる樹脂フィルムとしては、一般に太陽電池モジュール用バックシートにおける樹脂フィルムとして用いられているものが選択される。このような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン(商品名)などのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)などのポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂からなるフィルムまたはシートが用いられる。これらの樹脂フィルムのなかでも、ポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく、特にPETフィルムが好ましい。
なお、上記樹脂フィルムは、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、蓚酸アニリド系、シアノアクリレート系、トリアジン系等が挙げられる。
ここで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1を太陽電池モジュールのバックシートとして使用する場合は、樹脂フィルムは、可視光を反射させる顔料を含有することが好ましい。また、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1を太陽電池モジュールのフロントシートとして使用する場合は、可視光領域の光の透過率を低下させる顔料を含有しないことが好ましく、耐候性の向上を目的として紫外線吸収剤を含有することがより好ましい。
樹脂フィルムの熱可塑性樹脂層12が積層される側の面には、熱可塑性樹脂層12との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
基材11の厚さは、50〜250μmであり、好ましくは60〜200μmであり、特に好ましくは75〜150μmである。基材11の厚さがかかる範囲にあることで、後述する熱可塑性樹脂層12との関係で、太陽電池用保護シート1のカール量を小さく抑えることができる。また、電気絶縁性および軽量化の観点からも、上記厚さの範囲にあることが好ましい。
本実施形態における熱可塑性樹脂層12は、太陽電池用保護シート1を太陽電池モジュールの封止材に接着するためのものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態における熱可塑性樹脂層12は、基材11上に積層された第1層121と、第1層121上に積層された第2層122とから構成される。
第1層121は、基材11に対して接着性を示す材料からなり、第2層122は、オレフィン系樹脂を主成分とする。そして、熱可塑性樹脂層12の厚さは、基材11の厚さの1/3〜2倍であり、好ましくは0.4〜1.5倍であり、特に好ましくは0.6〜1.2倍である。熱可塑性樹脂層12が、上記の条件を満たす第1層121および第2層122からなることで、太陽電池用保護シート1のカール量は小さいものとなり、その結果、太陽電池用保護シート1のカールに起因して太陽電池モジュールに反りが生じることを抑制することができる。具体的には、太陽電池用保護シート1を300mm×300mmの正方形に切り出して水平なテーブルに載置した際、垂直方向へのカール量が20mm以下であると、太陽電池モジュールの反りを抑制することができるが、上記熱可塑性樹脂層12を備えた太陽電池用保護シート1によれば、当該カール量を20mm以下に抑えることができる。
また、第1層121が基材11に対して接着性を示す材料からなることで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、基材11と熱可塑性樹脂層12との接着性に優れるものとなる。一方、オレフィン系樹脂を主成分とする第2層122は、オレフィン系樹脂の優れた熱融着作用により、太陽電池モジュールの封止材に対する接着力が高い。これらの接着力の高さから、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は層間剥離し難く、これにより、太陽電池モジュールの内部を長期間にわたって保護することができる。
ここで、第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率は、1:9〜7:3であることが好ましく、1.5:8.5〜6.5:3.5であることがさらに好ましく、2:8〜6:4であることが特に好ましい。第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率が上記の範囲内にあることで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、カール量がより小さいものとなる。
第1層121の厚さは、上記の条件を満たせば特に制限されないが、具体的には、5〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましく、15〜75μmであることが特に好ましい。
同様に、第2層122の厚さも、上記の条件を満たせば特に制限されないが、具体的には、10〜200μmであることが好ましく、15〜150μmであることがさらに好ましく、25〜125μmであることが特に好ましい。
第1層121は、エチレンと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種との共重合体(以下「共重合体F」ということがある。)を主成分とすることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。上記材料からなる第1層121は、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。
上記共重合体Fは、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。また、上記共重合体Fは、常温でアモルファス(非結晶)であり、弾性を有するものである。したがって、オレフィン系樹脂を主成分とする第2層122が、加熱溶融状態から冷却したときに収縮したとしても、第1層121が共重合体Fを主成分とすることで、当該第1層121によってその収縮応力を緩和することができる。これにより、共押出コーティングにて第1層121および第2層122を基材11に形成したときでも、基材11に向かって働く応力が生じ難く、したがって太陽電池用保護シート1のカール量はより小さいものとなる。
第1層121は、好ましくは、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体を主成分とし、それら共重合体の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシルおよびメタアクリル酸メチルが好ましく、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
第1層121は、特に、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とするのが好ましく、それら共重合体の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記共重合体F中における単量体単位としての(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの合計含有量は、3.5〜15モル%であることが好ましく、4〜14モル%であることが特に好ましい。すなわち、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体では(メタ)アクリル酸の含有量、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体では(メタ)アクリル酸エステルの含有量、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体では酢酸ビニルの含有量は、3.5〜15モル%であることが好ましく、4〜14モル%であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルまたは酢酸ビニルの含有量が上記範囲内にあることで、前述した基材11に対する高い接着力およびカール抑制効果がより顕著なものとなる。なお、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの含有量が3.5モル%未満の場合は、基材11および第2層122に対する接着力が低くなる場合があり、15モル%以上の場合は、十分な凝集力が得られず、太陽電池用保護シート1を巻き取ったときに、巻きずれが発生するおそれがある。
第1層121は、共重合体Fを主成分として含有するのが好ましく、具体的には、当該共重合体Fを60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。第1層121は、当然、共重合体Fのみからなるものであってもよい。
第2層122は、オレフィン系樹脂を主成分とする。オレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880g/m3以上、910g/m3未満)、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910g/m3以上、915g/m3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE,密度:915g/m3以上、942g/m3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942g/m3以上)などのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン−ポリプロピレン重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また、上記オレフィン系樹脂の中でも、単量体単位としてエチレンを60〜100質量%、特に70〜99.5質量%含有するポリエチレン系樹脂が好ましい。かかるポリエチレン系樹脂は、加工適性に優れるとともに、太陽電池モジュールの封止材、特に同じエチレン系であるエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止材に対して親和性が高く、接着性に非常に優れる。さらには、加熱溶融状態から冷却したときにも収縮率の小さい超低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンが好ましく、特に超低密度ポリエチレンが好ましい。
上記オレフィン系樹脂は、密度が875〜920g/m3であることが好ましく、880〜915g/m3であることが特に好ましく、示差走査熱量計によって得られる融解熱量ΔHが100.0J/g以下であることが好ましく、95J/g以下であることが特に好ましい。密度は、JIS K7112に準じて測定して得られる値とする。
上記のように低密度または超低密度で、かつ融解熱量が低い、すなわち結晶性の低いオレフィン系樹脂は、加熱溶融状態から冷却したときにも収縮率が非常に小さいため、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、カール量がより小さいものとなる。
なお、オレフィン系樹脂の密度が875g/m3未満であると、第2層122にタックが生じて、巻き取った太陽電池用保護シート1にブロッキングが発生し、太陽電池用保護シート1にブロッキング跡が付いたり、巻き取った太陽電池用保護シート1を巻き出すことができなくなったりするおそれがある。
第2層122は、オレフィン系樹脂を主成分として含有していればよく、具体的には、オレフィン系樹脂を60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。第2層122は、当然、オレフィン系樹脂のみからなるものであってもよい。
第1層121の構成樹脂(共重合体F)および第2層122のオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1〜20g/10minであることが好ましく、特に2〜10g/10minであることが好ましい。両樹脂のMFRが上記範囲内にあることで、第1層121および第2層122を共押出コーティングによって形成することができる。
第1層121および第2層122は、上記主成分とする樹脂以外にも、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
なお、本実施形態における熱可塑性樹脂層12は、第1層121および第2層122からなるものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限り、他の層を備えていてもよい。例えば、第1層121と第2層122との間に第3層を備えていてもよい。
ここで、図2に示すように、基材11における上記熱可塑性樹脂層12が積層されない側の面(図2中では下面)には、フッ素樹脂層13が設けられることが好ましい。このようにフッ素樹脂層13を設けることで、太陽電池用保護シート1の耐候性および耐薬品性が向上する。なお、基材11が樹脂フィルムからなる場合、当該樹脂フィルムのフッ素樹脂層13が積層される側の面は、フッ素樹脂層13との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されることが好ましい。
フッ素樹脂層13は、フッ素を含む層であれば特に制限されず、例えば、フッ素含有樹脂を有するシート(フッ素含有樹脂シート)や、フッ素含有樹脂を含む塗料を塗布してなる塗膜などによって構成される。これらの中でも、太陽電池用保護シート1の軽量化のため、フッ素樹脂層13をより薄くする観点から、フッ素含有樹脂を有する塗料を塗布してなる塗膜が好ましい。
フッ素含有樹脂シートとしては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)またはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を主成分とする樹脂をシート状に加工したものが用いられる。PVFを主成分とする樹脂としては、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company社製の「Tedlar」(商品名)が挙げられる。ECTFEを主成分とする樹脂としては、例えば、Solvay Solexis社製の「Halar」(商品名)が挙げられる。ETFEを主成分とする樹脂としては、例えば、旭硝子社製の「Fluon」(商品名)が挙げられる。
フッ素樹脂層13がフッ素含有樹脂シートである場合、接着層を介して、基材11にフッ素樹脂層13が積層される。接着層は、基材11およびフッ素含有樹脂シートに対して接着性を有する接着剤から構成される。かかる接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤などが用いられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、フッ素樹脂層13がフッ素含有樹脂を有する塗料を塗布してなる塗膜である場合、通常、接着層を介することなく、フッ素含有樹脂を含有した塗料を基材11に直接塗布することにより、基材11にフッ素樹脂層13が積層される。
フッ素含有樹脂を含有する塗料としては、溶剤に溶解または水に分散されたものであって、塗布可能なものであれば特に限定されない。
塗料に含まれるフッ素含有樹脂としては、本発明の効果を損なわず、フッ素を含有する樹脂であれば特に限定されないが、通常、塗料の溶媒(有機溶媒または水)に溶解し、架橋可能であるものが用いられる。フッ素含有樹脂としては、硬化性官能基を有するフルオロオレフィン樹脂を用いることが好ましい。かかるフルオロオレフィン樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、イソブチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体、あるいは、TFE、VdF、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体が挙げられる。
フルオロオレフィン樹脂の具体例としては、旭硝子社製の「LUMIFLON」(商品名)、セントラル硝子社製の「CEFRAL COAT」(商品名)、DIC社製の「FLUONATE」(商品名)などのクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類、ダイキン工業社製の「ZEFFLE」(商品名)などのテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類、E.I.du Pont de Nemours and Company社製の「Zonyl」(商品名)、ダイキン工業社製の「Unidyne」(商品名)などのフルオロアルキル基を有するポリマー、フルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などが挙げられる。これらの中でも、耐候性および顔料分散性などの観点から、CTFEを主成分としたポリマーおよびTFEを主成分としたポリマーが好ましく、「LUMIFLON」および「ZEFFLE」が特に好ましい。
「LUMIFLON」は、CTFEと、数種類の特定のアルキルビニルエーテル(VE)またはヒドロキシアルキルビニルエーテルとを主な構成単位として含む非結晶性の樹脂である。この「LUMIFLON」のように、ヒドロキシアルキルビニルエーテルのモノマー単位を有する樹脂は、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性、顔料分散性、硬さおよび柔軟性に優れるので好ましい。
「ZEFFLE」は、TFEと有機溶媒可溶性の炭化水素オレフィンとの共重合体であり、中でも反応性の高い水酸基を備えた炭化水素オレフィンを含むものが、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性および顔料分散性に優れることから好ましい。
塗料に含まれるフッ素含有樹脂を形成する共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ブチル、イソ酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニルおよび安息香酸ビニルなどのカルボン酸のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、CTFE、フッ化ビニル(VF)、VdFおよびフッ素化ビニルエーテルなどのフッ素含有モノマー類が挙げられる。
さらに、塗料に含まれるフッ素含有樹脂としては、1種以上のモノマーからなる樹脂であってもよく、三元重合体であってもよい。三元重合体としては、例えば、VdFとTFEとヘキサフルオロプロピレンとの三元重合体である3M Company社製の「Dyneon THV」(商品名)が挙げられる。このような三元重合体は、それぞれのモノマーが有する特性を樹脂に付与することができるので好ましい。特に、「Dyneon THV」は、比較的低温で製造することができ、エラストマーや炭化水素ベースのプラスチックにも接着でき、柔軟性や光学的透明度にも優れるので好ましい。
塗料は、上述したフッ素含有樹脂の他に、架橋剤、硬化触媒、溶媒等を含んでいてもよく、さらに必要であれば、顔料、充填剤等の無機化合物を含んでいてもよい。
塗料に含まれる溶媒としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、メタノール、イソプロパノール、エタノール、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチルまたはn−ブチルアルコールから選択されるいずれか1種または2種以上の有機溶媒を含む溶媒が好適に用いられる。
塗料に含まれる顔料または充填剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ペリレン顔料、マイカ、ポリアミドパウダー、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、紫外線吸収剤、防腐剤、乾燥剤などが用いられる。具体的に、顔料および充填剤としては、耐久性を付与するため、酸化ケイ素で処理したルチル型二酸化チタンであるE.I.du Pont de Nemours and Company社製の「Ti−Pure R105」(商品名)、およびジメチルシリコーンの表面処理によってシリカ表面の水酸基を修飾した疎水性シリカであるCabot社製の「CAB−O−SIL TS 720」(商品名)が好適に用いられる。
フッ素含有樹脂の塗膜は、耐候性および耐擦傷性を向上させるため、架橋剤により硬化していることが好ましい。架橋剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、金属キレート類、シラン類、イソシアネート類またはメラミン類が好適に用いられる。太陽電池用保護シート1を屋外において長期間使用することを想定した場合、耐候性の観点から、架橋剤としては、脂肪族のイソシアネート類が好ましい。
塗料に含まれる硬化触媒としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、フッ素含有樹脂とイソシアネートとの架橋を促進するためのジブチルジラウリン酸スズ等が挙げられる。
塗料の組成は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、例えば、フッ素含有樹脂、顔料、架橋剤、溶媒および触媒を混合して調製される。組成比としては、塗料全体を100質量%としたときに、フッ素含有樹脂の含有率が3〜80質量%、特に25〜50質量%であることが好ましく、顔料の含有率が5〜60質量%、特に10〜30質量%であることが好ましく、溶媒の含有率が20〜80質量%、特に25〜65質量%であることが好ましい。
塗料を基材11に塗布する方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等によって、得られるフッ素樹脂層13が所望の厚さになるように塗布すればよい。
基材11に塗布した塗料の乾燥温度は、本発明の効果を損なわない温度であればよく、基材11への影響を低減する観点からは、50〜130℃の範囲であることが好ましい。
フッ素樹脂層13の厚さは、耐候性、耐薬品性、軽量化などを考慮して設定され、5〜50μmであることが好ましく、特に10〜30μmであることが好ましい。
ここで、フッ素樹脂層13は、熱可塑性の材料からなるものであってもよく、その場合、塗料の塗布ではなく、押出コーティング法によって形成することができる。かかるフッ素樹脂層13は、基材11に直接押出コーティングしてもよいし、基材11との間に、基材11との接着力を高めることのできる他の層を介在させてもよい。例えば図3に示すように、フッ素樹脂層13と基材11との間に、第2の熱可塑性樹脂層14を介在させてもよい。この場合、基材11に対して、第2の熱可塑性樹脂層14とフッ素樹脂層13とを共押出コーティングすることが好ましい。
熱可塑性の材料からなるフッ素樹脂層13としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等、またはそれらの変性ポリマーを主成分とするものが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性の材料からなるフッ素樹脂層13は、高耐候性を有している利点がある。上記樹脂の中でも、基材11または第2の熱可塑性樹脂層14との密着性の観点から、ETFEが特に好ましい。
第2の熱可塑性樹脂層14としては、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:0.910g/cm3以上、0.915g/cm3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE,密度:0.915g/cm3以上、0.942g/cm3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:0.942g/cm3以上)などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、それらの中でもポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも特に好ましいものとして、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGA)およびエチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。このような樹脂は、官能基を有し、極性を有しているため、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。上記樹脂の中でも、官能基を含有しているフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層13およびPET等からなる基材11の両方への接着性が良好であるEGAが特に好ましい。
第2の熱可塑性樹脂層14の厚さは、基材11に対する所望の接着性を発揮するとともに、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。具体的には、第2の熱可塑性樹脂層14の厚さは、2〜100μmであることが好ましく、5〜75μmであることがさらに好ましく、10〜50μmであることが特に好ましい。
また、基材11における上記熱可塑性樹脂層12が積層されない側の面には、図4に示すように、基材11とフッ素樹脂層13との間に蒸着層15が設けられてもよいし、図5に示すように、接着層16を介して金属シート17が積層されてもよいし、さらに蒸着層15または金属シート17の表面(図4および図5中では下面)には、上述したフッ素樹脂層13が設けられてもよい。このように蒸着層15または金属シート17を設けることで、太陽電池用保護シート1の防湿性および耐候性を向上させることができる。
なお、基材11が樹脂フィルムからなる場合、当該樹脂フィルムの蒸着層15または接着層16が積層される側の面は、蒸着層15または接着層16との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されることが好ましい。
蒸着層15は、金属もしくは半金属、または金属もしくは半金属の酸化物、窒化物、珪化物などの無機材料から構成され、かかる材料から構成されることで、基材11(太陽電池用保護シート1)に防湿性(水蒸気バリア性)および耐候性を付与することができる。
蒸着層15を形成する蒸着方法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法などの化学気相法、または真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理気相法が用いられる。これらの方法の中でも、操作性や層厚の制御性を考慮した場合、スパッタリング法が好ましい。
この蒸着層15の原料となる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトウリム(Na)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)などが挙げられる。半金属としては、例えば、ケイ素(Si)、ホウ素(B)どが挙げられる。これらの金属または半金属の酸化物、窒化物、酸窒化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸窒化アルミニウムなどが挙げられる。
蒸着層15は、一種の無機材料からなるものであっても、複数種の無機材料からなるものであってもよい。蒸着層15が複数種の無機材料からなる場合、各無機材料からなる層が順に蒸着された積層構造の蒸着層であってもよいし、複数種の無機材料が同時に蒸着された蒸着層であってもよい。
蒸着層15の厚さは、水蒸気バリア性を考慮して適宜設定され、用いる無機材料の種類や蒸着密度などによって変更される。通常、蒸着層15の厚さは、5〜200nmであることが好ましく、特に10〜100nmであることが好ましい。
一方、金属シート17も、上記蒸着層15と同様に、基材11(太陽電池用保護シート1)に防湿性(水蒸気バリア性)および耐候性を付与することができる。金属シート17の材料としては、かかる機能を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム−鉄合金等のアルミニウム合金などの金属が挙げられる。
金属シート17の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、ピンホール発生頻度の低さ、機械強度の強さ、水蒸気バリア性の高さ、および軽量化などの観点から、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが特に好ましい。
接着層16は、基材11および金属シート17に対して接着性を有する接着剤から構成される。接着層16を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤などが用いられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
接着層16の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、通常は、1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmであることが特に好ましい。
なお、以上の実施形態では、基材11の一方の面に熱可塑性樹脂層12が積層された太陽電池用保護シート1を例示したが、本発明の太陽電池用保護シートはこれに限定されず、基材11の他方の面(上記一方の面とは反対側の面)にも熱可塑性樹脂層が積層されてもよい。
〔太陽電池用保護シートの製造方法〕
本実施形態に係る太陽電池用保護シート1(一例として図1に示す太陽電池用保護シート1)を製造するには、上記熱可塑性樹脂層12の第1層121を構成する第1の樹脂組成物と、第2層122を構成する第2の樹脂組成物とを、第1の樹脂組成物が基材11側となるように、基材11の少なくとも一方の面に共押出コーティングして、基材11上に積層された第1層121と、第1層121上に積層された第2層121とからなる熱可塑性樹脂層12を形成することが好ましい。このような共押出コーティング法によれば、高い生産性で安価に太陽電池用保護シート1を製造することができる。また、太陽電池モジュールの封止材に対して太陽電池用保護シート1を接着するための接着剤層を別途設ける必要がないため、当該接着剤の分解等による経時劣化を防止することができる。
具体的には、Tダイ製膜機等を使用して、上記第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物をそれぞれ溶融・混練し、基材11を一定の速度にて移動させながら、その基材11の一方の面に、溶融した第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を共押出コーティングして積層し、基材11上に第1層121および第2層122からなる熱可塑性樹脂層12を形成し、太陽電池用保護シート1を得る。
なお、図2〜図5に示すように、基材11に他の層が形成されている場合には、基材11の当該他の層が形成されていない側の面に、熱可塑性樹脂層12を形成すればよい。
熱可塑性樹脂層12を形成する第1および第2の樹脂組成物を溶融する温度は、溶融した樹脂組成物の温度(熱)によって基材11が変形しない程度とし、80〜350℃であることが好ましく、150〜300℃であることが特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂層12を形成する第1および第2の樹脂組成物のTダイ製膜機からの吐出量は、目的とする熱可塑性樹脂層12の第1層121および第2層122の厚みや基材11の移動速度に応じて適宜調整される。
基材11は、例えば、ロール・トゥ・ロール方式により一定速度にて、長手方向に移動(搬送)され、その移動速度は、熱可塑性樹脂層12を形成する第1および第2の樹脂材料のTダイ製膜機からの吐出量に応じて適宜調整される。
上記のような共押出コーティング法によれば、基材11の一方の面に、Tダイ製膜機から溶融した第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を共押出コーティングして積層するだけで、基材11に熱可塑性樹脂層12を強固に接合することができ、高い生産性で太陽電池用保護シート1を製造することができる。
〔太陽電池モジュール〕
図6は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。本実施形態に係る太陽電池モジュール10は、光電変換素子である結晶シリコン、アモルファスシリコン等からなる複数の太陽電池セル2と、それら太陽電池セル2を封止する電気絶縁体からなる封止材(充填層)3と、封止材3の表面(図6中では上面)に積層されたガラス板4と、封止材3の裏面(図6中では下面)に積層された、裏面保護シート(バックシート)としての太陽電池用保護シート1(上記実施形態における太陽電池用保護シート1)とから構成されている。
太陽電池用保護シート1は、熱可塑性樹脂層12の第2層122が封止材3と接するように、封止材3に積層されており、オレフィン系樹脂を主成分とする第2層122によって、封止材3に対する接着力は高いものとなっている。
また、前述した通り、本実施形態における太陽電池用保護シート1は、基材11と熱可塑性樹脂層12との接着性に優れるものである。これらの接着力の高さから、本実施形態に係る太陽電池モジュール10の内部は、太陽電池用保護シート1によって長期間にわたって保護される。さらに、本実施形態における太陽電池用保護シート1はカール量が小さいため、得られる太陽電池モジュール10に反りが生じることは抑制されている。したがって、太陽電池モジュール10の反りに起因して、太陽電池モジュール10の設置時に不具合を生じたり、太陽電池モジュール10が破損したりすることは防止される。
封止材3の材料は、オレフィン系樹脂であることが好ましく、例えば、熱可塑性樹脂層12の第2層122の主成分として例示したオレフィン系樹脂であることが好ましく、特に酸素等に対するガスバリア性が高いこと、架橋が容易であること、入手のし易さ等の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)であることが好ましい。封止材3の材料がオレフィン系樹脂であると、オレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層12の第2層122との親和性が大きくなり、熱可塑性樹脂層12と封止材3との接着力がより高くなる。
上記太陽電池モジュール10を製造する方法は特に限定されず、例えば、封止材3を構成する2枚のシートで太陽電池セル2をサンドイッチし、当該シートの一方の露出面に太陽電池用保護シート1、他方の露出面にガラス板4を設置し、それらを加熱しながらプレスして一体化することにより、太陽電池モジュール10を製造することができる。このとき、太陽電池用保護シート1は、熱可塑性樹脂層12と封止材3との熱融着により、封止材3に接合されることとなる。
なお、図7に示すように、ガラス板4の替わりに、太陽電池用保護シート1を表面保護シート(フロントシート)として使用することもできる。この場合、太陽電池セルにフレキシブル基板を用いれば、フレキシブル性を有する太陽電池モジュールを得ることができる。このように、太陽電池モジュールをフレキシブル化することにより、ロール・トゥ・ロールで大量生産することが可能となる。また、フレキシブル性を有する太陽電池モジュールは、アーチ状や放物線状の壁面を有する物体にもフィットさせることができるので、ドーム状の建築物や高速道路の防音壁などに設置することが可能となる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
基材としてのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ125μm)の一方の面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。Tダイ製膜機(シリンダー温度:230〜280℃,Tダイ温度:300℃)により、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 30BA02,アクリル酸ブチル含有量:8.6モル%,以下「共重合体A」という。)と、密度880g/m3のポリエチレン系樹脂(住友化学社製,品名:エクセレンCX4002)とを、それぞれ厚さが25μmおよび75μmになるように、そして共重合体Aが基材側となるように、上記PETフィルムのコロナ処理面に対して直接共押出コーティングし、第1層(共重合体A)および第2層(密度880g/m3のポリエチレン系樹脂)からなる熱可塑性樹脂層を形成し、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例2〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度890g/m3のポリエチレン系樹脂(プライムポリマー社製,商品名:エボリュー SP900100)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例3〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度900g/m3のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 22−6)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例4〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910g/m3のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例5〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度890g/m3のポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製,商品名:プライムポリプロ F−744NP)50質量部と、密度905g/m3のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック43−1)50質量部とをブレンドしたもの(ブレンド樹脂の密度:898g/m3)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例6〕
第1層を構成する共重合体Aを、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 28MA07,アクリル酸メチル含有量:11.2モル%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例7〕
第1層を構成する共重合体Aを、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製,ニュクレルN1525,メタクリル酸メチル含有量:5.4モル%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例8〕
第1層を構成する共重合体Aを、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製,ウルトラセン750,酢酸ビニル含有量:13.3モル%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例9〕
第1層を構成する共重合体Aを、共重合体Aとエチレン−アクリル酸ブチル共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 35BA40,アクリル酸ブチル含有量:10.5モル%,以下「共重合体B」という。)とを質量比で6:4(共重合体A:共重合体B)にブレンドしたものに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例10〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910g/m3のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更するとともに、第1層の厚さを10μm、第2層の厚さを90μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例11〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910g/m3のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更するとともに、第1層の厚さを50μm、第2層の厚さを50μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例12〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910g/m3のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更するとともに、第1層の厚さを70μm、第2層の厚さを30μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例13〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ50μm)に変更するとともに、第1層の厚さを5μm、第2層の厚さを15μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例14〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ100μmのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ100μm)に変更するとともに、第1層の厚さを50μm、第2層の厚さを50μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例15〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ250μmのPETフィルム(帝人社製,メリネックスS,厚さ250μm)に変更するとともに、第1層の厚さを75μm、第2層の厚さを225μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例16〕
攪拌機付き重合釜中を脱気し、当該重合釜へ1H−トリデカフルオロヘキサン300.0g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(和光ケミカル社製:HCFC−225)75.0g、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン1.49gを注ぎ入れた。さらに、ヘキサプルオロプロパン157.3g、テトラフルオロエチレン49.2gおよびエチレン1.6gを圧入して、重合釜の温度を66℃に昇温させた。
次いで、重合開始剤であるピバロイルtert−ブチルペルオキシド0.564gを添加し、重合を開始させた。重合中に圧力を一定に保たせるために、テトラフルオロエチレン/エチレン混合モノマーガス(混合比:54/46)を連続的に重合釜へ流入させた。さらに、1.0モル%の3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン、0.25モル%の無水イタコン酸、および1質量%の1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンを含むテトラフルオロエチレン/エチレン混合モノマーガス(混合比:54/46)を連続的に流入させた。その後、混合モノマーガスを70g仕込んだ時点で、重合を停止し、重合釜温度を室温まで冷却し、同時に常圧までパージを行った。得られた樹脂を120℃で24時間乾燥させ、目的のフッ素樹脂(エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)樹脂;フッ素樹脂1という)を得た。
得られたフッ素樹脂1に、酸化チタンが20質量%となるようにETFEの顔料マスターバッチ(大日精化工業社製,H−5100)を添加して混錬し、白色フッ素樹脂(フッ素樹脂2という)を得た。
PETフィルム(帝人・デュポン社製,テトロンSL,厚さ125μm)の両面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。そして、Tダイ製膜機(シリンダー温度:200℃,Tダイ温度:300℃)により、上記で得たフッ素樹脂2とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTADER AX8840)とを、それぞれ厚さが25μmとなるように、そしてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が基材側となるように、上記PETフィルムの一方の面に対して直接共押出コーティングして熱可塑性樹脂層およびフッ素樹脂層を形成した。
また、上記PETフィルムの他方の面に、実施例1と同様にして共押出コーティングし、第1層(エチレン−アクリル酸ブチル共重合体A)および第2層(密度880g/m3のポリエチレン系樹脂)からなる熱可塑性樹脂層を形成し、図3に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例17〕
基材としてのPETフィルム(帝人・デュポン社製,テトロンSL,厚さ125μm)の一方の面上に、フッ素樹脂(旭硝子社製のルミフロンLF−200と、住化バイエルウレタン社製のスミジュール3300と、デュポン社製タイピュアR105とを、100質量部:10質量部:30質量部の比率で混合したもの)をマイヤーバーで塗布し、130℃で1分間乾燥させて、厚さ15μmのフッ素樹脂層を形成し、フッ素コート処理PETフィルムを作製した。そして、得られたフッ素コート処理PETフィルムの非フッ素コート面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。
上記PETフィルムのコロナ処理面に、実施例2と同様にして共押出コーティングし、第1層(エチレン−アクリル酸ブチル共重合体A)および第2層(密度890g/m3のポリエチレン系樹脂)からなる熱可塑性樹脂層を形成し、図2に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例18〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度890g/m3のポリエチレン系樹脂(プライムポリマー社製,商品名:エボリュー SP900100)100質量部と酸化チタン15質量部とを混合したものに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔比較例1〕
基材としてのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ125μm)の一方の面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。Tダイ製膜機(シリンダー温度:230〜280℃,Tダイ温度:300℃)により、密度918g/m3のポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン社製,商品名:ノバテック LC615Y)を、厚さが100μmになるように、上記PETフィルムのコロナ処理面に対して押出コーティングして単層の熱可塑性樹脂層を形成し、太陽電池用保護シートを得た。
〔比較例2〕
基材としてのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ125μm)の一方の面にコロナ処理(出力2000W)を施した。Tダイ製膜機(シリンダー温度:230〜280℃,Tダイ温度:300℃)により、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体A(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 30BA02,アクリル酸ブチル含有量:8.6モル%)を、厚さが100μmになるように、上記PETフィルムのコロナ処理面に対して押出コーティングして単層の熱可塑性樹脂層を形成し、太陽電池用保護シートを得た。
〔比較例3〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ100μmのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ100μm)に変更するとともに、第1層の厚さを75μm、第2層の厚さを225μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔試験例1〕<融解熱量測定>
実施例および比較例における熱可塑性樹脂層を構成するオレフィン系樹脂について、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製,型番:Q2000)を用いて、下記の条件で熱量変化の測定を行い、データを採取した。
・サンプル調整条件
−40℃から250℃まで昇温速度20℃/分で加熱を行った。
・測定条件
250℃で5分間保持した後に、降温速度20℃/分で−40℃まで冷却を行い、熱量の変化を測定した。
得られたデータより固体化に伴うピークの面積を算出し、これを融解熱量ΔH(J/g)とした。結果を表1に示す。
〔試験例2〕<密度測定>
実施例および比較例における熱可塑性樹脂層を構成するオレフィン系樹脂について、JIS K7112に準じて密度(g/m3)の測定を行った。なお、2種以上の樹脂のブレンド物を測定する場合には、二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名:ラボプラストミル)にて210℃で混練し、水槽で急冷を行った後に再度ペレット状に加工したものについて、測定を実施した。結果を表1に示す。
〔試験例3〕<ブロッキング評価>
実施例または比較例で作製した太陽電池用保護シートを、直径3インチ、幅350mmの紙管に100m巻き、評価サンプルを作製した。この評価サンプルを40℃の雰囲気下に1週間保管した後、再度巻き出しを行ったときの状況を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:抵抗なく巻き出すことができる。
△:巻き出すことはできるが、部分的にブロッキングが生じており、シート表面にブロッキングの跡が残る。
×:部分的もしくは全体的にブロッキングが生じ、巻き出すことができない。
〔試験例4〕<接着性評価>
日本工業規格:JIS K6854−3:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離」に規定された方法に準拠して、実施例および比較例で得られた太陽電池用保護シートの接着性を評価した。具体的には、以下に示す通りである。
実施例および比較例で得られた太陽電池用保護シートを、25mm×200mmに切断し、試験片を作製した。この試験片において基材と熱可塑性樹脂層とが剥離し得るように、それぞれ万能引張り試験機の上下に固定し、温度23℃、湿度50%RHの条件下、剥離速度300mm/minの速度で試験片を剥離し、その際の負荷を接着力(初期:N/25mm)として測定した(測定中は剥離部が180度になるように固定)。結果を表1に示す。
また、上記試験片をプレッシャークッカー試験(Pressure cooker test:121℃,湿度100%RH,24時間)に投入した後に、上記と同様にして接着力(耐久後:N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例5〕<カール量測定>
実施例または比較例で得られた太陽電池用保護シートを300mm×300mmの正方形に切り出し、水平なテーブルに置き、四隅のテーブル面からの垂直距離(mm)を測定した。得られた4箇所の各距離の平均値を算出し、これをカール量(mm)とした。結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例の太陽電池用保護シートは、基材(PETフィルム)と熱可塑性樹脂層との接着力が高く、またカール量が小さく、さらにはブロッキングの問題もなかった。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔太陽電池用保護シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、基材11と、基材11の一方の面(図1中では上面)に積層された熱可塑性樹脂層12とを備えている。この太陽電池用保護シート1は、太陽電池モジュールの表面保護シート(フロントシート)または裏面保護シート(バックシート)として用いられるものである。
基材11としては、電気絶縁性を有し、かつ熱可塑性樹脂層12が積層可能なものであればよく、通常は、樹脂フィルムを主体とするものが用いられる。
基材11に用いられる樹脂フィルムとしては、一般に太陽電池モジュール用バックシートにおける樹脂フィルムとして用いられているものが選択される。このような樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン(商品名)などのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)などのポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、フッ素系樹脂などの樹脂からなるフィルムまたはシートが用いられる。これらの樹脂フィルムのなかでも、ポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく、特にPETフィルムが好ましい。
なお、上記樹脂フィルムは、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、蓚酸アニリド系、シアノアクリレート系、トリアジン系等が挙げられる。
ここで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1を太陽電池モジュールのバックシートとして使用する場合は、樹脂フィルムは、可視光を反射させる顔料を含有することが好ましい。また、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1を太陽電池モジュールのフロントシートとして使用する場合は、可視光領域の光の透過率を低下させる顔料を含有しないことが好ましく、耐候性の向上を目的として紫外線吸収剤を含有することがより好ましい。
樹脂フィルムの熱可塑性樹脂層12が積層される側の面には、熱可塑性樹脂層12との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
基材11の厚さは、50〜250μmであり、好ましくは60〜200μmであり、特に好ましくは75〜150μmである。基材11の厚さがかかる範囲にあることで、後述する熱可塑性樹脂層12との関係で、太陽電池用保護シート1のカール量を小さく抑えることができる。また、電気絶縁性および軽量化の観点からも、上記厚さの範囲にあることが好ましい。
本実施形態における熱可塑性樹脂層12は、太陽電池用保護シート1を太陽電池モジュールの封止材に接着するためのものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態における熱可塑性樹脂層12は、基材11上に積層された第1層121と、第1層121上に積層された第2層122とから構成される。
第1層121は、基材11に対して接着性を示す材料からなり、第2層122は、オレフィン系樹脂を主成分とする。そして、熱可塑性樹脂層12の厚さは、基材11の厚さの1/3〜2倍であり、好ましくは0.4〜1.5倍であり、特に好ましくは0.6〜1.2倍である。熱可塑性樹脂層12が、上記の条件を満たす第1層121および第2層122からなることで、太陽電池用保護シート1のカール量は小さいものとなり、その結果、太陽電池用保護シート1のカールに起因して太陽電池モジュールに反りが生じることを抑制することができる。具体的には、太陽電池用保護シート1を300mm×300mmの正方形に切り出して水平なテーブルに載置した際、垂直方向へのカール量が20mm以下であると、太陽電池モジュールの反りを抑制することができるが、上記熱可塑性樹脂層12を備えた太陽電池用保護シート1によれば、当該カール量を20mm以下に抑えることができる。
また、第1層121が基材11に対して接着性を示す材料からなることで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、基材11と熱可塑性樹脂層12との接着性に優れるものとなる。一方、オレフィン系樹脂を主成分とする第2層122は、オレフィン系樹脂の優れた熱融着作用により、太陽電池モジュールの封止材に対する接着力が高い。これらの接着力の高さから、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は層間剥離し難く、これにより、太陽電池モジュールの内部を長期間にわたって保護することができる。
ここで、第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率は、1:9〜7:3であることが好ましく、1.5:8.5〜6.5:3.5であることがさらに好ましく、2:8〜6:4であることが特に好ましい。第1層121の厚さと第2層122の厚さとの比率が上記の範囲内にあることで、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、カール量がより小さいものとなる。
第1層121の厚さは、上記の条件を満たせば特に制限されないが、具体的には、5〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましく、15〜75μmであることが特に好ましい。
同様に、第2層122の厚さも、上記の条件を満たせば特に制限されないが、具体的には、10〜200μmであることが好ましく、15〜150μmであることがさらに好ましく、25〜125μmであることが特に好ましい。
第1層121は、エチレンと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種との共重合体(以下「共重合体F」ということがある。)を主成分とすることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。上記材料からなる第1層121は、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。
上記共重合体Fは、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。また、上記共重合体Fは、常温でアモルファス(非結晶)であり、弾性を有するものである。したがって、オレフィン系樹脂を主成分とする第2層122が、加熱溶融状態から冷却したときに収縮したとしても、第1層121が共重合体Fを主成分とすることで、当該第1層121によってその収縮応力を緩和することができる。これにより、共押出コーティングにて第1層121および第2層122を基材11に形成したときでも、基材11に向かって働く応力が生じ難く、したがって太陽電池用保護シート1のカール量はより小さいものとなる。
第1層121は、好ましくは、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、またはエチレンと酢酸ビニルとの共重合体を主成分とし、それら共重合体の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシルおよびメタアクリル酸メチルが好ましく、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
第1層121は、特に、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とするのが好ましく、それら共重合体の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記共重合体F中における単量体単位としての(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの合計含有量は、3.5〜15モル%であることが好ましく、4〜14モル%であることが特に好ましい。すなわち、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体では(メタ)アクリル酸の含有量、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体では(メタ)アクリル酸エステルの含有量、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体では酢酸ビニルの含有量は、3.5〜15モル%であることが好ましく、4〜14モル%であることが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルまたは酢酸ビニルの含有量が上記範囲内にあることで、前述した基材11に対する高い接着力およびカール抑制効果がより顕著なものとなる。なお、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルおよび酢酸ビニルの含有量が3.5モル%未満の場合は、基材11および第2層122に対する接着力が低くなる場合があり、15モル%以上の場合は、十分な凝集力が得られず、太陽電池用保護シート1を巻き取ったときに、巻きずれが発生するおそれがある。
第1層121は、共重合体Fを主成分として含有するのが好ましく、具体的には、当該共重合体Fを60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。第1層121は、当然、共重合体Fのみからなるものであってもよい。
第2層122は、オレフィン系樹脂を主成分とする。オレフィン系樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m 3 以上、910kg/m 3 未満)、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m 3 以上、915kg/m 3 未満)、中密度ポリエチレン(MDPE,密度:915kg/m 3 以上、942kg/m 3 未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m 3 以上)などのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン−ポリプロピレン重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(EBA)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また、上記オレフィン系樹脂の中でも、単量体単位としてエチレンを60〜100質量%、特に70〜99.5質量%含有するポリエチレン系樹脂が好ましい。かかるポリエチレン系樹脂は、加工適性に優れるとともに、太陽電池モジュールの封止材、特に同じエチレン系であるエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止材に対して親和性が高く、接着性に非常に優れる。さらには、加熱溶融状態から冷却したときにも収縮率の小さい超低密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンが好ましく、特に超低密度ポリエチレンが好ましい。
上記オレフィン系樹脂は、密度が875〜920kg/m 3 であることが好ましく、880〜915kg/m 3 であることが特に好ましく、示差走査熱量計によって得られる融解熱量ΔHが100.0J/g以下であることが好ましく、95J/g以下であることが特に好ましい。密度は、JIS K7112に準じて測定して得られる値とする。
上記のように低密度または超低密度で、かつ融解熱量が低い、すなわち結晶性の低いオレフィン系樹脂は、加熱溶融状態から冷却したときにも収縮率が非常に小さいため、本実施形態に係る太陽電池用保護シート1は、カール量がより小さいものとなる。
なお、オレフィン系樹脂の密度が875kg/m 3 未満であると、第2層122にタックが生じて、巻き取った太陽電池用保護シート1にブロッキングが発生し、太陽電池用保護シート1にブロッキング跡が付いたり、巻き取った太陽電池用保護シート1を巻き出すことができなくなったりするおそれがある。
第2層122は、オレフィン系樹脂を主成分として含有していればよく、具体的には、オレフィン系樹脂を60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがさらに好ましく、90質量%以上含有することが特に好ましい。第2層122は、当然、オレフィン系樹脂のみからなるものであってもよい。
第1層121の構成樹脂(共重合体F)および第2層122のオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1〜20g/10minであることが好ましく、特に2〜10g/10minであることが好ましい。両樹脂のMFRが上記範囲内にあることで、第1層121および第2層122を共押出コーティングによって形成することができる。
第1層121および第2層122は、上記主成分とする樹脂以外にも、必要に応じて、顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
なお、本実施形態における熱可塑性樹脂層12は、第1層121および第2層122からなるものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限り、他の層を備えていてもよい。例えば、第1層121と第2層122との間に第3層を備えていてもよい。
ここで、図2に示すように、基材11における上記熱可塑性樹脂層12が積層されない側の面(図2中では下面)には、フッ素樹脂層13が設けられることが好ましい。このようにフッ素樹脂層13を設けることで、太陽電池用保護シート1の耐候性および耐薬品性が向上する。なお、基材11が樹脂フィルムからなる場合、当該樹脂フィルムのフッ素樹脂層13が積層される側の面は、フッ素樹脂層13との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されることが好ましい。
フッ素樹脂層13は、フッ素を含む層であれば特に制限されず、例えば、フッ素含有樹脂を有するシート(フッ素含有樹脂シート)や、フッ素含有樹脂を含む塗料を塗布してなる塗膜などによって構成される。これらの中でも、太陽電池用保護シート1の軽量化のため、フッ素樹脂層13をより薄くする観点から、フッ素含有樹脂を有する塗料を塗布してなる塗膜が好ましい。
フッ素含有樹脂シートとしては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)またはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を主成分とする樹脂をシート状に加工したものが用いられる。PVFを主成分とする樹脂としては、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company社製の「Tedlar」(商品名)が挙げられる。ECTFEを主成分とする樹脂としては、例えば、Solvay Solexis社製の「Halar」(商品名)が挙げられる。ETFEを主成分とする樹脂としては、例えば、旭硝子社製の「Fluon」(商品名)が挙げられる。
フッ素樹脂層13がフッ素含有樹脂シートである場合、接着層を介して、基材11にフッ素樹脂層13が積層される。接着層は、基材11およびフッ素含有樹脂シートに対して接着性を有する接着剤から構成される。かかる接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤などが用いられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、フッ素樹脂層13がフッ素含有樹脂を有する塗料を塗布してなる塗膜である場合、通常、接着層を介することなく、フッ素含有樹脂を含有した塗料を基材11に直接塗布することにより、基材11にフッ素樹脂層13が積層される。
フッ素含有樹脂を含有する塗料としては、溶剤に溶解または水に分散されたものであって、塗布可能なものであれば特に限定されない。
塗料に含まれるフッ素含有樹脂としては、本発明の効果を損なわず、フッ素を含有する樹脂であれば特に限定されないが、通常、塗料の溶媒(有機溶媒または水)に溶解し、架橋可能であるものが用いられる。フッ素含有樹脂としては、硬化性官能基を有するフルオロオレフィン樹脂を用いることが好ましい。かかるフルオロオレフィン樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、イソブチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体、あるいは、TFE、VdF、ヒドロキシブチルビニルエーテルおよびその他のモノマーからなる共重合体が挙げられる。
フルオロオレフィン樹脂の具体例としては、旭硝子社製の「LUMIFLON」(商品名)、セントラル硝子社製の「CEFRAL COAT」(商品名)、DIC社製の「FLUONATE」(商品名)などのクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類、ダイキン工業社製の「ZEFFLE」(商品名)などのテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類、E.I.du Pont de Nemours and Company社製の「Zonyl」(商品名)、ダイキン工業社製の「Unidyne」(商品名)などのフルオロアルキル基を有するポリマー、フルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などが挙げられる。これらの中でも、耐候性および顔料分散性などの観点から、CTFEを主成分としたポリマーおよびTFEを主成分としたポリマーが好ましく、「LUMIFLON」および「ZEFFLE」が特に好ましい。
「LUMIFLON」は、CTFEと、数種類の特定のアルキルビニルエーテル(VE)またはヒドロキシアルキルビニルエーテルとを主な構成単位として含む非結晶性の樹脂である。この「LUMIFLON」のように、ヒドロキシアルキルビニルエーテルのモノマー単位を有する樹脂は、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性、顔料分散性、硬さおよび柔軟性に優れるので好ましい。
「ZEFFLE」は、TFEと有機溶媒可溶性の炭化水素オレフィンとの共重合体であり、中でも反応性の高い水酸基を備えた炭化水素オレフィンを含むものが、溶剤可溶性、架橋反応性、基材密着性および顔料分散性に優れることから好ましい。
塗料に含まれるフッ素含有樹脂を形成する共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ブチル、イソ酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニルおよび安息香酸ビニルなどのカルボン酸のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、CTFE、フッ化ビニル(VF)、VdFおよびフッ素化ビニルエーテルなどのフッ素含有モノマー類が挙げられる。
さらに、塗料に含まれるフッ素含有樹脂としては、1種以上のモノマーからなる樹脂であってもよく、三元重合体であってもよい。三元重合体としては、例えば、VdFとTFEとヘキサフルオロプロピレンとの三元重合体である3M Company社製の「Dyneon THV」(商品名)が挙げられる。このような三元重合体は、それぞれのモノマーが有する特性を樹脂に付与することができるので好ましい。特に、「Dyneon THV」は、比較的低温で製造することができ、エラストマーや炭化水素ベースのプラスチックにも接着でき、柔軟性や光学的透明度にも優れるので好ましい。
塗料は、上述したフッ素含有樹脂の他に、架橋剤、硬化触媒、溶媒等を含んでいてもよく、さらに必要であれば、顔料、充填剤等の無機化合物を含んでいてもよい。
塗料に含まれる溶媒としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、メタノール、イソプロパノール、エタノール、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチルまたはn−ブチルアルコールから選択されるいずれか1種または2種以上の有機溶媒を含む溶媒が好適に用いられる。
塗料に含まれる顔料または充填剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ペリレン顔料、マイカ、ポリアミドパウダー、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、紫外線吸収剤、防腐剤、乾燥剤などが用いられる。具体的に、顔料および充填剤としては、耐久性を付与するため、酸化ケイ素で処理したルチル型二酸化チタンであるE.I.du Pont de Nemours and Company社製の「Ti−Pure R105」(商品名)、およびジメチルシリコーンの表面処理によってシリカ表面の水酸基を修飾した疎水性シリカであるCabot社製の「CAB−O−SIL TS 720」(商品名)が好適に用いられる。
フッ素含有樹脂の塗膜は、耐候性および耐擦傷性を向上させるため、架橋剤により硬化していることが好ましい。架橋剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、金属キレート類、シラン類、イソシアネート類またはメラミン類が好適に用いられる。太陽電池用保護シート1を屋外において長期間使用することを想定した場合、耐候性の観点から、架橋剤としては、脂肪族のイソシアネート類が好ましい。
塗料に含まれる硬化触媒としては、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、フッ素含有樹脂とイソシアネートとの架橋を促進するためのジブチルジラウリン酸スズ等が挙げられる。
塗料の組成は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、例えば、フッ素含有樹脂、顔料、架橋剤、溶媒および触媒を混合して調製される。組成比としては、塗料全体を100質量%としたときに、フッ素含有樹脂の含有率が3〜80質量%、特に25〜50質量%であることが好ましく、顔料の含有率が5〜60質量%、特に10〜30質量%であることが好ましく、溶媒の含有率が20〜80質量%、特に25〜65質量%であることが好ましい。
塗料を基材11に塗布する方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等によって、得られるフッ素樹脂層13が所望の厚さになるように塗布すればよい。
基材11に塗布した塗料の乾燥温度は、本発明の効果を損なわない温度であればよく、基材11への影響を低減する観点からは、50〜130℃の範囲であることが好ましい。
フッ素樹脂層13の厚さは、耐候性、耐薬品性、軽量化などを考慮して設定され、5〜50μmであることが好ましく、特に10〜30μmであることが好ましい。
ここで、フッ素樹脂層13は、熱可塑性の材料からなるものであってもよく、その場合、塗料の塗布ではなく、押出コーティング法によって形成することができる。かかるフッ素樹脂層13は、基材11に直接押出コーティングしてもよいし、基材11との間に、基材11との接着力を高めることのできる他の層を介在させてもよい。例えば図3に示すように、フッ素樹脂層13と基材11との間に、第2の熱可塑性樹脂層14を介在させてもよい。この場合、基材11に対して、第2の熱可塑性樹脂層14とフッ素樹脂層13とを共押出コーティングすることが好ましい。
熱可塑性の材料からなるフッ素樹脂層13としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン系共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等、またはそれらの変性ポリマーを主成分とするものが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性の材料からなるフッ素樹脂層13は、高耐候性を有している利点がある。上記樹脂の中でも、基材11または第2の熱可塑性樹脂層14との密着性の観点から、ETFEが特に好ましい。
第2の熱可塑性樹脂層14としては、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m 3 以上、915kg/m 3 未満)、中密度ポリエチレン(MDPE,密度:915kg/m 3 以上、942kg/m 3 未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m 3 以上)などのポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、それらの中でもポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも特に好ましいものとして、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGA)およびエチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。このような樹脂は、官能基を有し、極性を有しているため、基材11、特に樹脂フィルムからなる基材11、さらにはPETフィルムからなる基材11に対する接着力が高い。上記樹脂の中でも、官能基を含有しているフッ素樹脂からなるフッ素樹脂層13およびPET等からなる基材11の両方への接着性が良好であるEGAが特に好ましい。
第2の熱可塑性樹脂層14の厚さは、基材11に対する所望の接着性を発揮するとともに、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。具体的には、第2の熱可塑性樹脂層14の厚さは、2〜100μmであることが好ましく、5〜75μmであることがさらに好ましく、10〜50μmであることが特に好ましい。
また、基材11における上記熱可塑性樹脂層12が積層されない側の面には、図4に示すように、基材11とフッ素樹脂層13との間に蒸着層15が設けられてもよいし、図5に示すように、接着層16を介して金属シート17が積層されてもよいし、さらに蒸着層15または金属シート17の表面(図4および図5中では下面)には、上述したフッ素樹脂層13が設けられてもよい。このように蒸着層15または金属シート17を設けることで、太陽電池用保護シート1の防湿性および耐候性を向上させることができる。
なお、基材11が樹脂フィルムからなる場合、当該樹脂フィルムの蒸着層15または接着層16が積層される側の面は、蒸着層15または接着層16との密着性を向上させるために、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等の表面処理が施されることが好ましい。
蒸着層15は、金属もしくは半金属、または金属もしくは半金属の酸化物、窒化物、珪化物などの無機材料から構成され、かかる材料から構成されることで、基材11(太陽電池用保護シート1)に防湿性(水蒸気バリア性)および耐候性を付与することができる。
蒸着層15を形成する蒸着方法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法などの化学気相法、または真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理気相法が用いられる。これらの方法の中でも、操作性や層厚の制御性を考慮した場合、スパッタリング法が好ましい。
この蒸着層15の原料となる金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトウリム(Na)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)などが挙げられる。半金属としては、例えば、ケイ素(Si)、ホウ素(B)どが挙げられる。これらの金属または半金属の酸化物、窒化物、酸窒化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸窒化アルミニウムなどが挙げられる。
蒸着層15は、一種の無機材料からなるものであっても、複数種の無機材料からなるものであってもよい。蒸着層15が複数種の無機材料からなる場合、各無機材料からなる層が順に蒸着された積層構造の蒸着層であってもよいし、複数種の無機材料が同時に蒸着された蒸着層であってもよい。
蒸着層15の厚さは、水蒸気バリア性を考慮して適宜設定され、用いる無機材料の種類や蒸着密度などによって変更される。通常、蒸着層15の厚さは、5〜200nmであることが好ましく、特に10〜100nmであることが好ましい。
一方、金属シート17も、上記蒸着層15と同様に、基材11(太陽電池用保護シート1)に防湿性(水蒸気バリア性)および耐候性を付与することができる。金属シート17の材料としては、かかる機能を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、アルミニウム−鉄合金等のアルミニウム合金などの金属が挙げられる。
金属シート17の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、ピンホール発生頻度の低さ、機械強度の強さ、水蒸気バリア性の高さ、および軽量化などの観点から、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが特に好ましい。
接着層16は、基材11および金属シート17に対して接着性を有する接着剤から構成される。接着層16を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエステルポリウレタン系接着剤などが用いられる。これらの接着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
接着層16の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、通常は、1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmであることが特に好ましい。
なお、以上の実施形態では、基材11の一方の面に熱可塑性樹脂層12が積層された太陽電池用保護シート1を例示したが、本発明の太陽電池用保護シートはこれに限定されず、基材11の他方の面(上記一方の面とは反対側の面)にも熱可塑性樹脂層が積層されてもよい。
〔太陽電池用保護シートの製造方法〕
本実施形態に係る太陽電池用保護シート1(一例として図1に示す太陽電池用保護シート1)を製造するには、上記熱可塑性樹脂層12の第1層121を構成する第1の樹脂組成物と、第2層122を構成する第2の樹脂組成物とを、第1の樹脂組成物が基材11側となるように、基材11の少なくとも一方の面に共押出コーティングして、基材11上に積層された第1層121と、第1層121上に積層された第2層121とからなる熱可塑性樹脂層12を形成することが好ましい。このような共押出コーティング法によれば、高い生産性で安価に太陽電池用保護シート1を製造することができる。また、太陽電池モジュールの封止材に対して太陽電池用保護シート1を接着するための接着剤層を別途設ける必要がないため、当該接着剤の分解等による経時劣化を防止することができる。
具体的には、Tダイ製膜機等を使用して、上記第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物をそれぞれ溶融・混練し、基材11を一定の速度にて移動させながら、その基材11の一方の面に、溶融した第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を共押出コーティングして積層し、基材11上に第1層121および第2層122からなる熱可塑性樹脂層12を形成し、太陽電池用保護シート1を得る。
なお、図2〜図5に示すように、基材11に他の層が形成されている場合には、基材11の当該他の層が形成されていない側の面に、熱可塑性樹脂層12を形成すればよい。
熱可塑性樹脂層12を形成する第1および第2の樹脂組成物を溶融する温度は、溶融した樹脂組成物の温度(熱)によって基材11が変形しない程度とし、80〜350℃であることが好ましく、150〜300℃であることが特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂層12を形成する第1および第2の樹脂組成物のTダイ製膜機からの吐出量は、目的とする熱可塑性樹脂層12の第1層121および第2層122の厚みや基材11の移動速度に応じて適宜調整される。
基材11は、例えば、ロール・トゥ・ロール方式により一定速度にて、長手方向に移動(搬送)され、その移動速度は、熱可塑性樹脂層12を形成する第1および第2の樹脂材料のTダイ製膜機からの吐出量に応じて適宜調整される。
上記のような共押出コーティング法によれば、基材11の一方の面に、Tダイ製膜機から溶融した第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を共押出コーティングして積層するだけで、基材11に熱可塑性樹脂層12を強固に接合することができ、高い生産性で太陽電池用保護シート1を製造することができる。
〔太陽電池モジュール〕
図6は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。本実施形態に係る太陽電池モジュール10は、光電変換素子である結晶シリコン、アモルファスシリコン等からなる複数の太陽電池セル2と、それら太陽電池セル2を封止する電気絶縁体からなる封止材(充填層)3と、封止材3の表面(図6中では上面)に積層されたガラス板4と、封止材3の裏面(図6中では下面)に積層された、裏面保護シート(バックシート)としての太陽電池用保護シート1(上記実施形態における太陽電池用保護シート1)とから構成されている。
太陽電池用保護シート1は、熱可塑性樹脂層12の第2層122が封止材3と接するように、封止材3に積層されており、オレフィン系樹脂を主成分とする第2層122によって、封止材3に対する接着力は高いものとなっている。
また、前述した通り、本実施形態における太陽電池用保護シート1は、基材11と熱可塑性樹脂層12との接着性に優れるものである。これらの接着力の高さから、本実施形態に係る太陽電池モジュール10の内部は、太陽電池用保護シート1によって長期間にわたって保護される。さらに、本実施形態における太陽電池用保護シート1はカール量が小さいため、得られる太陽電池モジュール10に反りが生じることは抑制されている。したがって、太陽電池モジュール10の反りに起因して、太陽電池モジュール10の設置時に不具合を生じたり、太陽電池モジュール10が破損したりすることは防止される。
封止材3の材料は、オレフィン系樹脂であることが好ましく、例えば、熱可塑性樹脂層12の第2層122の主成分として例示したオレフィン系樹脂であることが好ましく、特に酸素等に対するガスバリア性が高いこと、架橋が容易であること、入手のし易さ等の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)であることが好ましい。封止材3の材料がオレフィン系樹脂であると、オレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層12の第2層122との親和性が大きくなり、熱可塑性樹脂層12と封止材3との接着力がより高くなる。
上記太陽電池モジュール10を製造する方法は特に限定されず、例えば、封止材3を構成する2枚のシートで太陽電池セル2をサンドイッチし、当該シートの一方の露出面に太陽電池用保護シート1、他方の露出面にガラス板4を設置し、それらを加熱しながらプレスして一体化することにより、太陽電池モジュール10を製造することができる。このとき、太陽電池用保護シート1は、熱可塑性樹脂層12と封止材3との熱融着により、封止材3に接合されることとなる。
なお、図7に示すように、ガラス板4の替わりに、太陽電池用保護シート1を表面保護シート(フロントシート)として使用することもできる。この場合、太陽電池セルにフレキシブル基板を用いれば、フレキシブル性を有する太陽電池モジュールを得ることができる。このように、太陽電池モジュールをフレキシブル化することにより、ロール・トゥ・ロールで大量生産することが可能となる。また、フレキシブル性を有する太陽電池モジュールは、アーチ状や放物線状の壁面を有する物体にもフィットさせることができるので、ドーム状の建築物や高速道路の防音壁などに設置することが可能となる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
基材としてのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ125μm)の一方の面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。Tダイ製膜機(シリンダー温度:230〜280℃,Tダイ温度:300℃)により、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 30BA02,アクリル酸ブチル含有量:8.6モル%,以下「共重合体A」という。)と、密度880kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(住友化学社製,品名:エクセレンCX4002)とを、それぞれ厚さが25μmおよび75μmになるように、そして共重合体Aが基材側となるように、上記PETフィルムのコロナ処理面に対して直接共押出コーティングし、第1層(共重合体A)および第2層(密度880kg/m 3 のポリエチレン系樹脂)からなる熱可塑性樹脂層を形成し、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例2〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度890kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(プライムポリマー社製,商品名:エボリュー SP900100)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例3〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度900kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 22−6)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例4〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例5〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度890kg/m 3 のポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製,商品名:プライムポリプロ F−744NP)50質量部と、密度905kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック43−1)50質量部とをブレンドしたもの(ブレンド樹脂の密度:898kg/m 3 )に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例6〕
第1層を構成する共重合体Aを、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 28MA07,アクリル酸メチル含有量:11.2モル%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例7〕
第1層を構成する共重合体Aを、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製,ニュクレルN1525,メタクリル酸メチル含有量:5.4モル%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例8〕
第1層を構成する共重合体Aを、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製,ウルトラセン750,酢酸ビニル含有量:13.3モル%)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例9〕
第1層を構成する共重合体Aを、共重合体Aとエチレン−アクリル酸ブチル共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 35BA40,アクリル酸ブチル含有量:10.5モル%,以下「共重合体B」という。)とを質量比で6:4(共重合体A:共重合体B)にブレンドしたものに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例10〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更するとともに、第1層の厚さを10μm、第2層の厚さを90μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例11〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更するとともに、第1層の厚さを50μm、第2層の厚さを50μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例12〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度910kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(東ソー社製,商品名:ルミタック 54−1)に変更するとともに、第1層の厚さを70μm、第2層の厚さを30μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例13〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ50μm)に変更するとともに、第1層の厚さを5μm、第2層の厚さを15μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例14〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ100μmのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ100μm)に変更するとともに、第1層の厚さを50μm、第2層の厚さを50μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例15〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ250μmのPETフィルム(帝人社製,メリネックスS,厚さ250μm)に変更するとともに、第1層の厚さを75μm、第2層の厚さを225μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例16〕
攪拌機付き重合釜中を脱気し、当該重合釜へ1H−トリデカフルオロヘキサン300.0g、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(和光ケミカル社製:HCFC−225)75.0g、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン1.49gを注ぎ入れた。さらに、ヘキサプルオロプロパン157.3g、テトラフルオロエチレン49.2gおよびエチレン1.6gを圧入して、重合釜の温度を66℃に昇温させた。
次いで、重合開始剤であるピバロイルtert−ブチルペルオキシド0.564gを添加し、重合を開始させた。重合中に圧力を一定に保たせるために、テトラフルオロエチレン/エチレン混合モノマーガス(混合比:54/46)を連続的に重合釜へ流入させた。さらに、1.0モル%の3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン、0.25モル%の無水イタコン酸、および1質量%の1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンを含むテトラフルオロエチレン/エチレン混合モノマーガス(混合比:54/46)を連続的に流入させた。その後、混合モノマーガスを70g仕込んだ時点で、重合を停止し、重合釜温度を室温まで冷却し、同時に常圧までパージを行った。得られた樹脂を120℃で24時間乾燥させ、目的のフッ素樹脂(エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)樹脂;フッ素樹脂1という)を得た。
得られたフッ素樹脂1に、酸化チタンが20質量%となるようにETFEの顔料マスターバッチ(大日精化工業社製,H−5100)を添加して混錬し、白色フッ素樹脂(フッ素樹脂2という)を得た。
PETフィルム(帝人・デュポン社製,テトロンSL,厚さ125μm)の両面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。そして、Tダイ製膜機(シリンダー温度:200℃,Tダイ温度:300℃)により、上記で得たフッ素樹脂2とエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(アルケマ社製,商品名:LOTADER AX8840)とを、それぞれ厚さが25μmとなるように、そしてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が基材側となるように、上記PETフィルムの一方の面に対して直接共押出コーティングして熱可塑性樹脂層およびフッ素樹脂層を形成した。
また、上記PETフィルムの他方の面に、実施例1と同様にして共押出コーティングし、第1層(エチレン−アクリル酸ブチル共重合体A)および第2層(密度880kg/m 3 のポリエチレン系樹脂)からなる熱可塑性樹脂層を形成し、図3に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例17〕
基材としてのPETフィルム(帝人・デュポン社製,テトロンSL,厚さ125μm)の一方の面上に、フッ素樹脂(旭硝子社製のルミフロンLF−200と、住化バイエルウレタン社製のスミジュール3300と、デュポン社製タイピュアR105とを、100質量部:10質量部:30質量部の比率で混合したもの)をマイヤーバーで塗布し、130℃で1分間乾燥させて、厚さ15μmのフッ素樹脂層を形成し、フッ素コート処理PETフィルムを作製した。そして、得られたフッ素コート処理PETフィルムの非フッ素コート面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。
上記PETフィルムのコロナ処理面に、実施例2と同様にして共押出コーティングし、第1層(エチレン−アクリル酸ブチル共重合体A)および第2層(密度890kg/m 3 のポリエチレン系樹脂)からなる熱可塑性樹脂層を形成し、図2に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔実施例18〕
第2層を構成するポリエチレン系樹脂を、密度890kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(プライムポリマー社製,商品名:エボリュー SP900100)100質量部と酸化チタン15質量部とを混合したものに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔比較例1〕
基材としてのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ125μm)の一方の面に、コロナ処理(出力2000W)を施した。Tダイ製膜機(シリンダー温度:230〜280℃,Tダイ温度:300℃)により、密度918kg/m 3 のポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン社製,商品名:ノバテック LC615Y)を、厚さが100μmになるように、上記PETフィルムのコロナ処理面に対して押出コーティングして単層の熱可塑性樹脂層を形成し、太陽電池用保護シートを得た。
〔比較例2〕
基材としてのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ125μm)の一方の面にコロナ処理(出力2000W)を施した。Tダイ製膜機(シリンダー温度:230〜280℃,Tダイ温度:300℃)により、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体A(アルケマ社製,商品名:LOTRYL 30BA02,アクリル酸ブチル含有量:8.6モル%)を、厚さが100μmになるように、上記PETフィルムのコロナ処理面に対して押出コーティングして単層の熱可塑性樹脂層を形成し、太陽電池用保護シートを得た。
〔比較例3〕
基材としてのPETフィルムを、厚さ100μmのPETフィルム(東レ社製,X10S,厚さ100μm)に変更するとともに、第1層の厚さを75μm、第2層の厚さを225μmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、図1に示す構成の太陽電池用保護シートを得た。
〔試験例1〕<融解熱量測定>
実施例および比較例における熱可塑性樹脂層を構成するオレフィン系樹脂について、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製,型番:Q2000)を用いて、下記の条件で熱量変化の測定を行い、データを採取した。
・サンプル調整条件
−40℃から250℃まで昇温速度20℃/分で加熱を行った。
・測定条件
250℃で5分間保持した後に、降温速度20℃/分で−40℃まで冷却を行い、熱量の変化を測定した。
得られたデータより固体化に伴うピークの面積を算出し、これを融解熱量ΔH(J/g)とした。結果を表1に示す。
〔試験例2〕<密度測定>
実施例および比較例における熱可塑性樹脂層を構成するオレフィン系樹脂について、JIS K7112に準じて密度(kg/m 3 )の測定を行った。なお、2種以上の樹脂のブレンド物を測定する場合には、二軸混練機(東洋精機製作所社製,製品名:ラボプラストミル)にて210℃で混練し、水槽で急冷を行った後に再度ペレット状に加工したものについて、測定を実施した。結果を表1に示す。
〔試験例3〕<ブロッキング評価>
実施例または比較例で作製した太陽電池用保護シートを、直径3インチ、幅350mmの紙管に100m巻き、評価サンプルを作製した。この評価サンプルを40℃の雰囲気下に1週間保管した後、再度巻き出しを行ったときの状況を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:抵抗なく巻き出すことができる。
△:巻き出すことはできるが、部分的にブロッキングが生じており、シート表面にブロッキングの跡が残る。
×:部分的もしくは全体的にブロッキングが生じ、巻き出すことができない。
〔試験例4〕<接着性評価>
日本工業規格:JIS K6854−3:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第3部:T形はく離」に規定された方法に準拠して、実施例および比較例で得られた太陽電池用保護シートの接着性を評価した。具体的には、以下に示す通りである。
実施例および比較例で得られた太陽電池用保護シートを、25mm×200mmに切断し、試験片を作製した。この試験片において基材と熱可塑性樹脂層とが剥離し得るように、それぞれ万能引張り試験機の上下に固定し、温度23℃、湿度50%RHの条件下、剥離速度300mm/minの速度で試験片を剥離し、その際の負荷を接着力(初期:N/25mm)として測定した(測定中は剥離部が180度になるように固定)。結果を表1に示す。
また、上記試験片をプレッシャークッカー試験(Pressure cooker test:121℃,湿度100%RH,24時間)に投入した後に、上記と同様にして接着力(耐久後:N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例5〕<カール量測定>
実施例または比較例で得られた太陽電池用保護シートを300mm×300mmの正方形に切り出し、水平なテーブルに置き、四隅のテーブル面からの垂直距離(mm)を測定した。得られた4箇所の各距離の平均値を算出し、これをカール量(mm)とした。結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例の太陽電池用保護シートは、基材(PETフィルム)と熱可塑性樹脂層との接着力が高く、またカール量が小さく、さらにはブロッキングの問題もなかった。