JP2012087141A - 抗腫瘍剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗腫瘍剤として有効なZn−プロトポルフィリン(ZnPP)等の金属ポルフィリン誘導体が、難水溶性のため、投与法に制限があり、また薬剤が腫瘍部に局所的に集積しにくいので、これを腫瘍部への局所的集積能を高め、抗腫瘍活性がより優れ、副作用の少ない薬剤とする。
【解決手段】両親媒性または水溶性のポリマーに結合したヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体、特にポリエチレングリコールと結合したZn−プロトポルフィリン(ZnPP)を有効成分とする抗腫瘍剤。
【選択図】なし
【解決手段】両親媒性または水溶性のポリマーに結合したヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体、特にポリエチレングリコールと結合したZn−プロトポルフィリン(ZnPP)を有効成分とする抗腫瘍剤。
【選択図】なし
Description
本発明は腫瘍部への局所的集積能が高く、そのため抗腫瘍活性が優れ、副作用の少ない抗腫瘍剤及びその製造方法に関する。更に詳しくは、水と油の双方に溶解する両親媒性または水溶性のポリマーが結合したヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体を有効成分とする抗腫瘍剤及び上記ポリマーが結合した金属ポルフィリン誘導体を収率良く製造する方法に関する。
発明者らはこれまで腫瘍の発生、抑制とヘムオキシゲナーゼとの関係を研究した結果、腫瘍内にはヘムオキシゲナーゼが高濃度に発現されており、この酵素は腫瘍内ではヘムを分解し、ビルベルジンと一酸化炭素および遊離鉄を放出することを見出している。
ビルベルジンは生体内でビリルビンに容易に代謝変換される。このビリルビンは強力な抗酸化物である。一方、宿主(癌患者)が生体防御のために動員する白血球等の放出するスーパーオキサイドやH2O2、NO等の活性酸素に対し、ビリルビンは癌細胞が抵抗するために放出する癌細胞のための防御分子である。従って活性酸素に対する最大の防御因子を産出するヘムオキシゲナーゼの活性を停止させれば腫瘍は担癌宿主の生体防御力で自滅する。
発明者らはこの観点から、ヘムオキシゲナーゼの阻害剤を体内に注入することにより、癌細胞を死滅させることを試み、ヘムオキシゲナーゼの阻害剤であるZn−プロトポルフィリン(ZnPP)を動脈内注射によって癌の局所に集め,ヘムオキシゲナーゼを停止させると、抗腫瘍活性があることを証明した。(非特許文献1:Doi,Kら、Br.J.Cancer 80, 1945-1954(1999))。
Doi,Kら、Br.J.Cancer 80, 1945-1954(1999)
しかしながらこのZnPPを抗腫瘍剤として癌の治療法として用いるに当たっては、いくつかの問題点があった。第一にZnPPは難水溶性のため、油剤として動脈内投与せねばならず、動脈内投与は静脈内投与よりも手順が複雑である。またZnPPそのものは腫瘍部に局所的に集積しないのでそのままで投与しても抗腫瘍効果が充分発揮されず、また薬剤が腫瘍部以外の全身に広く分布してしまうので、予期せぬ副作用が懸念される。
一方、発明者らは長年にわたり固形癌局所の物質透過と集積について研究を重ねてきた。その結果,血中に投与した物質は腫瘍血管に固有の性状と複数の因子により高分子物質のみが選択的に,その局所(腫瘍部)で漏出(浸出)集積し,かつ正常組織よりも長期間底の滞留することを見出した。この現象をEPR効果(Enhanced permeability and retention effect)と命名した。(例えば Y. Matsumura, H. Maeda: Cancer Res 47, 6387-6392(1986); H. Maeda: Inadvances in Enzyme Regulation(by G. Weber ed),Elsevier Scientific Ltd., Amsterdam, 41, 189-207(2001))。
EPR効果によれば、薬物の体内での見かけ上の分子量40,000以上で血中濃度を高く維持できれば、数時間後には血中濃度よりも腫瘍内濃度の方がはるかに高くなり、24〜48時間後には腫瘍内濃度は血中濃度の数倍になる。つまり薬物を高分子化することにより、薬物の腫瘍選択的なデリバリーが可能となることを見出している。
そこで、ZnPPを始めとするヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体について投与法の改善法及び、腫瘍局所への選択的集積をさせる手段として上記EPR効果を利用することを検討した。その結果、ポリエチレングリコール等、水と油の双方に溶解する両親媒性または水溶性のポリマーを金属ポルフィリン誘導体と結合させることにより、金属ポルフィリン誘導体の水溶液の調製が可能となるので、動脈注射のみならず静脈注射が可能となり、またこれらのポリマーで高分子化されたことによりEPR効果が発揮されて、固形腫瘍局所的に選択的に集積され、しかも静脈注射や動脈注射後も集積を長時間持続させることが可能となった。その結果マウスの腫瘍モデルにおける実験では、わずか2〜3回の投与により、顕著な抗腫瘍効果(腫瘍消失)が認められた。
両親媒性または水溶性のポリマーと結合したヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体は、その合成方法も知られていなかったが、発明者らは両親媒性または水溶性のポリマーと、ヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体とをアミド結合を介して結合することによる合成方法を見出した。かくして得られたポリマーと結合した金属ポルフィリン誘導体はこれまでに知られていない新規物質である。
即ち本発明は、両親媒性または水溶性のポリマーに結合したヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体、特にZn−プロトポルフィリン(ZnPP)を有効成分とする抗腫瘍剤である。また本発明は、両親媒性または水溶性のポリマーとヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体がアミド結合を介して結合した抗腫瘍剤の成分として有用な新規化合物、及びその製造方法である。
本発明によれば、ヘムオキシゲナーゼの阻害剤である金属ポルフィリン誘導体を水と油の双方に溶解する両親媒性または水溶性のポリマーと結合させたことにより、薬剤の静脈注射が可能となり、また腫瘍部への局所的集積能が高い新規な抗腫瘍剤及びその製造法が見出された。本発明の抗腫瘍剤は顕著な副作用を伴うことなく優れた抗腫瘍活性を示し、かつこれまでの低分子抗腫瘍剤とは異なる作用機序と、優れた腫瘍集積能を有する有用な医薬品となしたものである。
金属ポルフィリン誘導体に結合させる両親媒性または水溶性のポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、各種ゼラチンとその誘導体(サクシニル化合物など)、ポリアミノ酸(グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、アラニン、グリシン、プロリン、チロシンその他)、ヒドロキシプロピル化などのポリメタアクリル酸ポリマー、スチレン・マレイン酸共重合体(SMA)またはその各種誘導体等である。これらの両親媒性または水溶性のポリマーのうち、特にポリエチレングリコール及びSMAが好ましい。
ポリエチレングリコールは分子量が2000〜5000であるものが好ましい。
スチレン・マレイン酸共重合体(SMA)はスチレンとマレイン酸との共重合体であり、マレイン酸のカルボキシル基が結合手となって金属ポルフィリン誘導体と直接または間接的に結合する。SMAはそれ自身またはマレイン酸の一部がエステル化された誘導体として使用することができる。
金属ポルフィリン誘導体はポルフィリン環を有する化合物に金属が配位した錯化合物であるが、ポルフィリン環を有する化合物としてプロトポルフィリンが、入手容易であり、好適に使用される。
配位させる金属としては、鉄のようにヘムオキシゲナーゼ阻害活性がないもの、水銀のように有毒な金属、1価金属のように配位が困難な金属以外であれば特に限定されず、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、銅等が使用できるが、特に亜鉛が好ましい。プロトポルフィリンに亜鉛が配位したZn−プロトポルフィリン(ZnPP)は式(B)で示される。
本発明の抗腫瘍剤はこの金属ポルフィリン誘導体に両親媒性または水溶性のポリマーに結合した高分子化合物であるが、金属ポルフィリン誘導体が水に難溶性であるため、金属ポルフィリン誘導体の状態でポリマーの付加反応を起こさせるのは難しい。そこで金属を配位させる前のポルフィリンにポリマーを付加させた後金属を配位させた。
両親媒性または水溶性のポリマーと金属ポルフィリン誘導体との結合は直接結合の他、ポリマーとの結合を容易にするため、適当な官能基を導入し、この官能基を介して間接的に結合したものでも良い。金属ポルフィリン誘導体としてZnPPを例にとると、プロトポルフィリンは2個のカルボキシル基を有しているので、このカルボキシル基にポリマーを直接結合しても良いが、プロトポルフィリン分子中のカルボキシル基は反応性が弱いので、直接結合によるポリマー付加は有利な方法ではない。発明者らはこの点について検討した結果、式(A)に示すジアミン構造を介してPEGが付加したZnPP(式(5))を合成することに成功した。
このような高分子化ZnPPは、プロトポルフィリンIXへのアミノ基の導入、各種高分子との反応、ポルフィリン環への亜鉛の配位の逐次反応により合成することができる。
例えば、PEG結合ZnPPは下記式に示す合成スキームにより段階的に行われる。
[反応a]プロトポルフィリンIX(式(1))をテトラヒドロフラン中、エチルクロロホルメートと反応させ、カルボキシル基を活性化させる(式(2))。
[反応b]これにエチレンジアミンを加えて、アミノ基導入ポルフィリンIX(式(3))を得る。
[反応c]続いて活性化PEGを加えてポルフィリンにPEG鎖を導入する(式(4))。
[反応d])最後に酢酸亜鉛を反応液に加えてポルフィリン環に亜鉛を導入し、PEG結合ZnPPを得る(式(5))。
[反応a]プロトポルフィリンIX(式(1))をテトラヒドロフラン中、エチルクロロホルメートと反応させ、カルボキシル基を活性化させる(式(2))。
[反応b]これにエチレンジアミンを加えて、アミノ基導入ポルフィリンIX(式(3))を得る。
[反応c]続いて活性化PEGを加えてポルフィリンにPEG鎖を導入する(式(4))。
[反応d])最後に酢酸亜鉛を反応液に加えてポルフィリン環に亜鉛を導入し、PEG結合ZnPPを得る(式(5))。
両親媒性または水溶性のポリマーとしてPEG以外のポリマー、例えばSMAを用いた場合もPEG付加の場合と同様に、アミノ基導入ポルフィリン(式(3))にSMAを縮合させることにより、高分子化反応を行うことができる。
式(A)で示されるPEG付加ZnPPは固形腫瘍局所的に選択的に集積され、薬効も優れるので、抗腫瘍剤の成分として有用な新規物質である。式(A)において金属が亜鉛、ポリマーがPEGである化合物を合成し、その構造が式(5)であることは下記の分析結果によって確認することができた。
先ずアミノ基導入ポルフィリン(式(3))の構造を下記の方法により確認した。
(1)赤外線吸収スペクトル測定により、1641cm-1,1552cm-1に吸収が認められることから、新たなアミド結合の生成を確認した。
(2)次に分子量測定により、式(3)の構造(計算値646)と一致する分子量実測値646が得られた。
(1)赤外線吸収スペクトル測定により、1641cm-1,1552cm-1に吸収が認められることから、新たなアミド結合の生成を確認した。
(2)次に分子量測定により、式(3)の構造(計算値646)と一致する分子量実測値646が得られた。
次いで、式(3)のアミノ基導入ポルフィリンにPEG鎖を導入し、亜鉛を配位させて得られたZnPPの構造を、分子量測定及び紫外線吸収スペクトルにより確認した。分子量測定は飛行時間型分子量測定(TOF-MS)分析にて分子量11,000付近にピークを得た。また、紫外可視吸収スペクトルより亜鉛がポルフィリン環に配位していることを確認した(化合物式(5)の最大吸収 421, 543, 583 nm)。上記の結果より、得られた化合物が式(5)の構造を有するPEG-ZnPPであることが確認された。
またポルフィリンIXを原料として、[反応a]〜[反応d]によるPEG付加ZnPPの製造方法は新規な製造方法である。
かくして得られた本発明の両親媒性または水溶性のポリマーと結合した金属ポルフィリン誘導体は水溶性であり水溶液として注射用剤(静脈および動脈)の形で用いることができる。
次に製造例、実施例および実験例を挙げて本発明PEG-ZnPPの調製方法、PEG-ZnPPのヘムオキシゲナーゼ活性阻害、及びPEG-ZnPPの動脈内投与後の抗腫瘍効果等につき具体的に説明する。ただし、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
[製造例]ポリエチレングリコール結合ZnPP(PEG-ZnPP)の合成
100 mgのプロトポルフィリンIXを20 mlのテトラヒドロフランに溶解し、2.45mlのトリエチルアミンを加えた。その溶液を約0℃になるまで氷上に保ち、そこへ1.7 mlのエチルクロロホルメートを少量ずつ撹拌下に加え、さらに2時間反応させた。その後、生じたトリエチルアミン塩酸塩をろ過にて取り除き、さらにこのろ液に1.2 mlのエチレンジアミンを加えて、室温で24時間反応させた。減圧留去にて溶媒のテトラヒドロフランを除いたあと、茶褐色の固形物を蒸留水50 mlにて7回洗浄し、1分子当たり2つのアミノ基を導入したポルフィリン誘導体(60 mg)を得た。5 mgのアミノ基導入ポルフィリンをクロロホルム25 mlに溶解し、そこへ800 mgのポリエチレングリコール(PEG、分子量5000)のサクシミドエステルを添加し、撹拌下、室温にて24時間反応させた。
100 mgのプロトポルフィリンIXを20 mlのテトラヒドロフランに溶解し、2.45mlのトリエチルアミンを加えた。その溶液を約0℃になるまで氷上に保ち、そこへ1.7 mlのエチルクロロホルメートを少量ずつ撹拌下に加え、さらに2時間反応させた。その後、生じたトリエチルアミン塩酸塩をろ過にて取り除き、さらにこのろ液に1.2 mlのエチレンジアミンを加えて、室温で24時間反応させた。減圧留去にて溶媒のテトラヒドロフランを除いたあと、茶褐色の固形物を蒸留水50 mlにて7回洗浄し、1分子当たり2つのアミノ基を導入したポルフィリン誘導体(60 mg)を得た。5 mgのアミノ基導入ポルフィリンをクロロホルム25 mlに溶解し、そこへ800 mgのポリエチレングリコール(PEG、分子量5000)のサクシミドエステルを添加し、撹拌下、室温にて24時間反応させた。
得られたPEG結合ポルフィリンを、クロロホルムを溶離液とするゲルろ過クロマトグラフィーへ展開すると、図1に示すようにPEG結合ポルフィリンには、未反応のアミノ基導入ポルフィリンが全く無く、全てのアミノ基導入ポルフィリンがPEGと反応し、高分子化ポルフィリンが生成していることが示された。また、未修飾のプロトポルフィリンは、フラクション番号20を中心に溶出し、アミノ基導入ポルフィリンと同様の挙動を示した。
その後、このPEG結合ポルフィリン溶液に40mgの酢酸亜鉛を加え、室温にてさらに2時間反応させ、PEG結合亜鉛ポルフィリン(PEG-ZnPP)を得た。
[実験例1]PEG-ZnPPのヘムオキシゲナーゼに対する阻害活性
ラット脾臓より精製したヘムオキシゲナーゼ画分に対し、その基質であるヘミン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ビリルビンレダクターゼを含む細胞質画分を加えて37℃でインキュベーションし、生成するビリルビンをクロロホルムで抽出後、465 nmの波長の測定により、PEG-ZnPP添加、未修飾ZnPP添加及び阻害剤無添加のそれぞれの場合についてヘムオキシゲナーゼ活性を定量し、Lineweaver-BurkプロットによるPEG-ZnPPのヘムオキシゲナーゼ活性阻害の解析を行った(図2)。図2の結果から、今回合成したPEG-ZnPPは濃度依存的にヘムオキシゲナーゼ活性を阻害し、その阻害定数(Ki)は0.13 mMであり、阻害様式は競合阻害であることが明かとなった。この数値は従来の未修飾のZnPPのそれ(Ki =0.12 mM)にほぼ匹敵するものである。
ラット脾臓より精製したヘムオキシゲナーゼ画分に対し、その基質であるヘミン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、ビリルビンレダクターゼを含む細胞質画分を加えて37℃でインキュベーションし、生成するビリルビンをクロロホルムで抽出後、465 nmの波長の測定により、PEG-ZnPP添加、未修飾ZnPP添加及び阻害剤無添加のそれぞれの場合についてヘムオキシゲナーゼ活性を定量し、Lineweaver-BurkプロットによるPEG-ZnPPのヘムオキシゲナーゼ活性阻害の解析を行った(図2)。図2の結果から、今回合成したPEG-ZnPPは濃度依存的にヘムオキシゲナーゼ活性を阻害し、その阻害定数(Ki)は0.13 mMであり、阻害様式は競合阻害であることが明かとなった。この数値は従来の未修飾のZnPPのそれ(Ki =0.12 mM)にほぼ匹敵するものである。
[実験例2]培養細胞に対するPEG-ZnPPの作用、特に細胞に対する酸化的障害
培養肺腺癌細胞のA549細胞をプラスチックプレートに播種し、1晩培養した後、蒸留水に溶解した濃度5μM及び10μのMPEG-ZnPPをそれぞれプレートに添加した。37℃で8時間培養した後、酸化反応の指示薬としてジクロロジヒドロフルオレセイン酢酸エステルを添加し、さらに30分培養した。このジクロロジヒドロフルオレセイン酢酸エステルは細胞内の酸化物により蛍光を有するフルオレセインへと変わるために、蛍光強度の測定により生じたフルオレセインを定量することで細胞内の酸化物の生成を見積もることができる。トリプシン処理にて細胞をプレートより回収し、フローサイトメーターにて細胞内に生じたフルオレセインを定量し、PEG-ZnPP濃度5μM、10μ及びPEG-ZnPP無添加の場合の、蛍光強度と細胞の数を図3に示した。図3から明らかなように、PEG-ZnPPは濃度依存的に細胞内に酸化物の生成・蓄積をもたらした。
培養肺腺癌細胞のA549細胞をプラスチックプレートに播種し、1晩培養した後、蒸留水に溶解した濃度5μM及び10μのMPEG-ZnPPをそれぞれプレートに添加した。37℃で8時間培養した後、酸化反応の指示薬としてジクロロジヒドロフルオレセイン酢酸エステルを添加し、さらに30分培養した。このジクロロジヒドロフルオレセイン酢酸エステルは細胞内の酸化物により蛍光を有するフルオレセインへと変わるために、蛍光強度の測定により生じたフルオレセインを定量することで細胞内の酸化物の生成を見積もることができる。トリプシン処理にて細胞をプレートより回収し、フローサイトメーターにて細胞内に生じたフルオレセインを定量し、PEG-ZnPP濃度5μM、10μ及びPEG-ZnPP無添加の場合の、蛍光強度と細胞の数を図3に示した。図3から明らかなように、PEG-ZnPPは濃度依存的に細胞内に酸化物の生成・蓄積をもたらした。
[実験例3]マウス固型腫瘍モデルにおけるPEG-ZnPPの腫瘍内ヘムオキシゲナーゼ活性の阻害効果
体重約35 gの雄のddYマウスの背部皮下にS180肉腫を移植した。移植後約1週間で固型腫瘍の大きさが5 mm四方となった時点で蒸留水に溶解したPEG-ZnPPを体重1 kgあたり0.5 mg ZnPP相当となるように尾静脈より投与した。PEG-ZnPP投与24時間後、固型腫瘍を摘出し、組織中のヘムオキシゲナーゼ活性を上記実験例1と同様の操作により測定した。対照としてPEG-ZnPPを含まない蒸留水を投与したマウスから摘出した腫瘍を用いた。表1に示すように、尾静脈より投与されたPEG-ZnPPは顕著に腫瘍組織内のヘムオキシゲナーゼ活性を低下させた。また未修飾ZnPPは水に不溶のため投与ができなかった。
体重約35 gの雄のddYマウスの背部皮下にS180肉腫を移植した。移植後約1週間で固型腫瘍の大きさが5 mm四方となった時点で蒸留水に溶解したPEG-ZnPPを体重1 kgあたり0.5 mg ZnPP相当となるように尾静脈より投与した。PEG-ZnPP投与24時間後、固型腫瘍を摘出し、組織中のヘムオキシゲナーゼ活性を上記実験例1と同様の操作により測定した。対照としてPEG-ZnPPを含まない蒸留水を投与したマウスから摘出した腫瘍を用いた。表1に示すように、尾静脈より投与されたPEG-ZnPPは顕著に腫瘍組織内のヘムオキシゲナーゼ活性を低下させた。また未修飾ZnPPは水に不溶のため投与ができなかった。
[実験例4]マウス固型腫瘍モデルに対するPEG-ZnPPの抗腫瘍効果及び体重の変化
上記実験例3と同様、マウスS180肉腫を背部皮下に移植したddYマウスに対し、移植後10、13及び15日目にそれぞれ30nmol,30nmol,及び50nmolのPEG-ZnPPを尾静脈より投与した(図中矢印)。対照としてPEG-ZnPPを含まない蒸留水を投与したマウスのグループを設けた。経時的に腫瘍の大きさを測定した(図4)。図4から明らかなように、PEG-ZnPPを投与したグループでは、対照のグループにくらべて腫瘍の増殖が著しく抑制された。
上記実験例3と同様、マウスS180肉腫を背部皮下に移植したddYマウスに対し、移植後10、13及び15日目にそれぞれ30nmol,30nmol,及び50nmolのPEG-ZnPPを尾静脈より投与した(図中矢印)。対照としてPEG-ZnPPを含まない蒸留水を投与したマウスのグループを設けた。経時的に腫瘍の大きさを測定した(図4)。図4から明らかなように、PEG-ZnPPを投与したグループでは、対照のグループにくらべて腫瘍の増殖が著しく抑制された。
またこのとき同時に体重変化を測定したが、図5に示すようにPEG-ZnPP投与のマウスにおいても顕著な体重の減少は見られなかった。
Claims (7)
- 両親媒性または水溶性のポリマーに結合したヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体を有効成分とする抗腫瘍剤。
- ヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体が、プロトポルフィリンに金属が配位した錯化合物であることを特徴とする請求項1記載の抗腫瘍剤。
- 両親媒性または水溶性のポリマーがポリエチレングリコールまたはスチレン・マレイン酸共重合体(SMA)であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗腫瘍剤。
- 両親媒性または水溶性のポリマーと、ヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体が、アミド結合を介して結合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
- 金属が亜鉛であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
- プロトポルフィリンIXにエチレンジアミンを付加させ、次いで活性化ポリエチレングリコールを加えてポルフィリンにポリエチレングリコール鎖を導入した後、金属塩を加えてポルフィリン環に金属を導入することを特徴とする請求項6記載の両親媒性または水溶性のポリマーに結合したヘムオキシゲナーゼ阻害活性を有する金属ポルフィリン誘導体の製造方法。
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JP2015137303A (ja) * | 2014-01-22 | 2015-07-30 | 国立大学法人埼玉大学 | 水溶性ポルフィリン誘導体とそれらの製造方法 |
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