JP2012087007A - 無機物含有微粒子、該無機物含有微粒子を含む分散体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、少ない分散安定化剤量で粒子径が制御され、媒体への分散性が良い無機物含有微粒子、該無機物含有微粒子を含む分散体およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】無機コア粒子と該無機コア粒子の表面に形成された有機物層とを含む無機物含有微粒子であって、該有機物層がグリコールと分散安定化剤とを含む無機物含有微粒子を用いる。このような無機物含有微粒子であれば、分散安定化剤の量が少ないにも関わらず、凝集しにくく、各種媒体への分散が良好となる。
【選択図】なし
【解決手段】無機コア粒子と該無機コア粒子の表面に形成された有機物層とを含む無機物含有微粒子であって、該有機物層がグリコールと分散安定化剤とを含む無機物含有微粒子を用いる。このような無機物含有微粒子であれば、分散安定化剤の量が少ないにも関わらず、凝集しにくく、各種媒体への分散が良好となる。
【選択図】なし
Description
本発明は、無機物含有微粒子、該無機物含有微粒子を含む分散体およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、無機コア粒子と該無機コア粒子表面に形成された有機物層とを含む無機物含有微粒子であって、該有機物層がグリコールと分散安定化剤とを含む無機物含有微粒子、該無機物含有微粒子を含む分散体および該無機物含有微粒子の製造方法に関する。
無機粒子の原料溶液を高温高圧で反応させて結晶性無機粒子を作製する水熱合成法の一種にアルコール類を媒体として用いるソルボサーマル法がある。このソルボサーマル法は、生成する無機粒子表面にアルコール分子の吸着層が存在するため、通常の水熱合成法よりもサイズが小さく凝集の少ない結晶性無機粒子を作製できるという利点を有している。また、合成仕込み時に生成粒子を媒体に分散させる効果のある有機物(分散安定化剤)を共存させることで、より粒子径が制御され媒体分散性の高い粒子を得ることができる。例えば、特許文献1には、エタノールもしくはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中にオレイルアミンのような生成粒子に吸着して粒子表面の媒体親和性を高める物質を添加することで、金属および金属酸化物の無機微粒子が凝集することなく合成できることが開示されている。この方法では、エタノールもしくはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の生成粒子表面への吸着は弱いので、粒子表面には分散安定化剤(オレイルアミン)の密度の高い吸着層が形成されていると考えられる。無機微粒子が使用される場において、その機能を十分に発揮させるためには、無機微粒子の機能には全く関係しない物質の吸着はできるだけ少ないことが好ましい。しかしながら、高い媒体分散性を確保するためには、分散安定化剤をある程度吸着させる必要があり、無機微粒子の機能を十分に発揮させ、かつ、高い媒体分散性を確保することは困難である。
本発明の目的は、少ない分散安定化剤量で粒子径が制御され、媒体への分散性が良い無機物含有微粒子、該無機物含有微粒子を含む分散体およびその製造方法を提供することである。
本発明の無機物含有微粒子は、無機コア粒子と該無機コア粒子の表面に形成された有機物層とを含む無機物含有微粒子であって、該有機物層がグリコールと分散安定化剤とを含む。
好ましくは、上記分散安定化剤は有機アミンである。
好ましくは、上記有機物層の割合は無機物含有微粒子の全重量の0.1〜15重量%である。
好ましくは、上記有機物層を構成する有機物の10〜70重量%がグリコールであり、該グリコールを除いた該有機物の30〜90重量%が分散安定化剤である。
好ましくは、上記無機コア粒子が金属酸化物、2種以上の金属からなる複合金属酸化物、金属、または2種以上の金属からなる複合金属で構成されている。
好ましくは、上記グリコールが上記無機コア粒子表面に吸着および/または結合され、前記分散安定化剤が前記無機コア粒子および該グリコールの両方、または、該グリコールにのみ吸着および/または結合されている。
本発明の別の局面によれば、分散体が提供される。該分散体は、上記無機物含有微粒子を含む。
本発明のさらに別の局面によれば、ソルボサーマル法を用いた上記無機物含有微粒子の製造方法が提供される。
好ましくは、上記ソルボサーマル法に用いられる反応媒体はグリコールである。
好ましくは、上記グリコールは1,4−ブタンジオールである。
好ましくは、上記分散安定化剤は有機アミンである。
好ましくは、上記有機物層の割合は無機物含有微粒子の全重量の0.1〜15重量%である。
好ましくは、上記有機物層を構成する有機物の10〜70重量%がグリコールであり、該グリコールを除いた該有機物の30〜90重量%が分散安定化剤である。
好ましくは、上記無機コア粒子が金属酸化物、2種以上の金属からなる複合金属酸化物、金属、または2種以上の金属からなる複合金属で構成されている。
好ましくは、上記グリコールが上記無機コア粒子表面に吸着および/または結合され、前記分散安定化剤が前記無機コア粒子および該グリコールの両方、または、該グリコールにのみ吸着および/または結合されている。
本発明の別の局面によれば、分散体が提供される。該分散体は、上記無機物含有微粒子を含む。
本発明のさらに別の局面によれば、ソルボサーマル法を用いた上記無機物含有微粒子の製造方法が提供される。
好ましくは、上記ソルボサーマル法に用いられる反応媒体はグリコールである。
好ましくは、上記グリコールは1,4−ブタンジオールである。
本発明の無機物含有微粒子は、無機コア粒子と該無機コア粒子の表面に形成された有機物層とを含む。該無機物含有微粒子において、有機物層はグリコールと分散安定化剤とを含む。これにより、本発明の無機物含有微粒子は、分散安定化剤の量が少ないにも関わらず、凝集しにくく、各種媒体への分散が良好となる。
<無機物含有微粒子>
本発明の無機物含有微粒子は、その無機コア粒子の表面に、製造過程の反応媒体であるグリコールと生成された粒子の媒体親和性を改善するために添加された分散安定化剤とを含む有機物層が形成されている。本発明の無機物含有微粒子における該有機物層の有無は、例えば、熱重量分析や固体NMRによって確認され得る。該有機物層は、無機コア粒子表面の全体に形成されていても、一部に形成されていてもよい。なお、本明細書において、熱重量分析により有機物層を確認する場合、窒素雰囲気下150〜350℃の範囲で見られる重量減少をグリコールに由来する重量減少、350〜470℃の範囲で見られる重量減少を分散安定化剤に由来する重量減少とする。
本発明の無機物含有微粒子は、その無機コア粒子の表面に、製造過程の反応媒体であるグリコールと生成された粒子の媒体親和性を改善するために添加された分散安定化剤とを含む有機物層が形成されている。本発明の無機物含有微粒子における該有機物層の有無は、例えば、熱重量分析や固体NMRによって確認され得る。該有機物層は、無機コア粒子表面の全体に形成されていても、一部に形成されていてもよい。なお、本明細書において、熱重量分析により有機物層を確認する場合、窒素雰囲気下150〜350℃の範囲で見られる重量減少をグリコールに由来する重量減少、350〜470℃の範囲で見られる重量減少を分散安定化剤に由来する重量減少とする。
上記有機物層の形成は、反応により生成した無機コア粒子表面にグリコールや分散安定化剤が吸着および/または結合することによって起こる。特に、グリコールはモノアルコールより吸着力が強いため、モノアルコールを使用した場合に比べて、媒体親和性が向上し粒子が凝集しにくくなる。こうしたグリコールに加えて分散安定化剤を併用することにより、生成粒子の媒体親和性がより改善される。これは、生成された粒子表面と該粒子表面に吸着されたグリコールの両方または該粒子表面に吸着したグリコールのみに分散安定化剤が吸着することで、粒子の媒体親和性が改善されることによると考えられる。なお、本明細書において、「媒体」とは、ヘキサンのような有機液体およびポリマーのような有機固体をいう。
上記有機物層の厚みは、定性的には薄いところでグリコールの単分子層の厚み、厚いところで分散安定化剤とグリコールが重なった複層レベルの厚みであると考えられる。上記有機物層の厚みは、分子レベルであるため数値的に規定することは難しいが、好ましくは1〜30Åである。上記有機物層は、重量換算すると、好ましくは無機物含有微粒子全重量の0.1〜15重量%であり、より好ましくは0.5〜10重量%である。有機物層がこのような範囲内であれば、粒子表面の媒体親和性が得られ、粒子の凝集が起こりにくくなる。
上記有機物層を構成する有機物のうち、グリコールは好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%含まれる。上記有機物層を構成する有機物のうち、分散安定化剤は、好ましくは該グリコールを除いた有機物の30〜90重量%、より好ましくは40〜85重量%、さらに好ましくは50〜80重量%含まれる。有機物層が上記のような構成を有することにより、グリコールのような小さい分子を主体とする有機物層であっても粒子の凝集を効率よく防ぐ事ができ、かつ媒体への分散性も格段に向上する。上記無機物含有微粒子に含まれる有機物層の構成割合は、無機物含有微粒子の熱重量分析により求めることができる。
上記有機物層に含まれるグリコールは、好ましくは共有結合、イオン結合、水素結合または配位結合により上記無機コア粒子表面に結合、あるいは静電的相互作用により上記無機コア粒子表面に吸着されている。上記有機物層に含まれる分散安定化剤は、無機コア粒子の表面ならびに該無機コア粒子の表面に吸着および/または結合したグリコールの両方、または、該無機コア粒子表面に吸着および/または結合したグリコールにのみ、イオン結合、水素結合により結合、あるいは疎水的相互作用または静電的相互作用により吸着されている。分散安定化剤と無機コア粒子表面またはグリコールとの吸着および/または結合は、グリコールと無機コア粒子表面との吸着および/または結合より弱いため、分散安定化剤は洗浄などにより有機物層から除去され得る。上記無機コア粒子表面とグリコールおよび分散安定化剤との結合または吸着形態は、無機コア粒子を形成する無機物の種類に応じて変化し得る。上記有機物層が複数の有機物から形成される場合、有機物層と無機コア粒子との間には、複数種の結合または吸着形態が存在し得る。
上記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。グリコールの二つの水酸基に由来する酸素原子が無機コア粒子表面と二点で構造的に安定な共有結合、イオン結合、または配位結合のような結合、あるいは静電的相互作用のような吸着を形成しやすいという点から、1,4−ブタンジオールが好ましい。
上記分散安定化剤としては、無機コア粒子表面に強く吸着および/または結合しない物質であれば、任意の適切な化合物を用いることができる。具体的には、有機アミン類、例えば、オレイルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン類、アニリン等の芳香族アミン、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等の水酸基含有アミン類、さらにそれらの誘導体などが挙げられる。上記分散安定化剤としては、好ましくは有機アミンが用いられ、なかでもグリコールとの併用において、得られる無機物含有微粒子の粒径分布や無機物含有微粒子自体の粒子径のコントロールが容易である点から、オレイルアミンが好適である。
上記無機コア粒子は、好ましくは金属酸化物、2種以上の金属からなる複合金属酸化物、金属、2種以上の金属からなる複合金属で構成されている。上記無機コア粒子に含まれる金属としては、ナノメートルサイズの無機コア粒子を製造できる金属であればよく、所望の用途に応じて、任意の適切なものを用いることができる。具体的には、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Te、Po、Mn、Tc、Re、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Sc、Y、ランタノイド(例えば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Luなど)、アクチノイド(Ac、Thなど)、ミッシュメタル、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Rb、Cs等が挙げられる。
上記無機コア粒子の形状は、特に制限はなく、例えば、球体、立方体、多角形立方体、棒体、円柱体、卵形状体、正方晶、六方晶、三方晶、斜方晶、単斜晶、三斜晶、ウルツ鉱型結晶、単一壁または複数壁ナノチューブの形状、あるいはその他のナノスケールの形状等が挙げられる。
上記無機コア粒子の平均一次粒子径は、好ましくは1〜500nmであり、より好ましくは1〜100nmであり、さらに好ましくは2〜20nmである。また、該無機コア粒子の粒子サイズは均一なものが好ましいが、一定の割合でその粒子サイズの異なるものが混合されていてもよい。上記無機物含有微粒子の平均一次粒子径は、無機物含有微粒子の形状が、棒体、円柱体、直方体、楕円柱体などの場合は、短軸の長さが上記平均一次粒子径の範囲に含まれていればよく、長軸の長さは上記の範囲を超えるものであってもよい。上記平均一次粒子径の測定は任意の適切な方法を用いることができ、例えば、TEM、吸着法、光散乱法、SAXS等が挙げられる。
<無機物含有微粒子分散体>
本発明の分散体は、上記の本発明の無機物含有微粒子を含む。本発明の分散体の分散媒は、任意の適切な溶媒を用いることができる。好ましくは比誘電率が12以下の有機液体であり、より好ましくは比誘電率が6以下の有機液体である。該分散媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、分散媒として水を含んでいてもよい。
本発明の分散体は、上記の本発明の無機物含有微粒子を含む。本発明の分散体の分散媒は、任意の適切な溶媒を用いることができる。好ましくは比誘電率が12以下の有機液体であり、より好ましくは比誘電率が6以下の有機液体である。該分散媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、分散媒として水を含んでいてもよい。
<無機物含有微粒子の製造方法>
本発明の無機物含有微粒子は、任意の適切な方法で製造することができ、好ましくはソルボサーマル法を用いて製造される。
本発明の無機物含有微粒子は、任意の適切な方法で製造することができ、好ましくはソルボサーマル法を用いて製造される。
本発明の製造方法においては、反応媒体として上記グリコール、他の化合物として上記分散安定化剤を用いることが好ましい。また、必要に応じて、他の有機溶媒および/または水を併用してもよい。他の有機溶媒としては、グリコール以外のアルコール類、カルボニル基を有するケトン類またはアルデヒド類、シアノ基を有するニトリル類、ラクタム化合物、オキシム化合物、アミド基を有するアミド類ないしは尿素類、アミノ基を有するアミン類、スルフィド類、スルホキシド類、リン酸エステル類、カルボン酸又はカルボン酸誘導体であるエステル、炭酸又は炭酸エステル、エーテル類等が挙げられる。
無機コア粒子前駆体としては、所望の無機物含有微粒子が得られるものであればよく、任意の物質(例えば、製造しようとする無機物含有微粒子に含有される元素を含有する単体や化合物)を使用することができる。本発明の無機物含有微粒子の製造を簡便に行うことができる点から、市販されており容易に入手できるもの、あるいは、それらから容易に導くことができるものを使用することが好ましい。無機コア粒子前駆体として用いられる代表的な物質としては、例えば、金属ハロゲン化物、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属アルコキシド、金属アルキルキサントゲン酸塩、金属カルボニル化合物などの金属錯体化合物、金属塩化物、金属アセテート、金属水酸化物、金属酢酸塩、金属クエン酸塩、金属リン酸塩、金属アミン錯体、金属アセトン錯体、金属アセチルアセトナート等が好適に用いられる。該無機コア粒子前駆体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
上記無機コア粒子前駆体は、上記反応媒体に溶解するものが好ましいが、懸濁状態であってもよい。製造操作上の簡便性の理由から、液状であるものも好適に使用できる。無機コア粒子前駆体は、必要に応じて任意の適切な有機溶媒又は水、あるいはそれらの混合物の溶液としてもよい。本発明では、無機コア粒子前駆体は、反応場で均一系を形成可能であるものが好適である。
また、所望の無機物含有微粒子の構成元素供与体として、当該構成元素を含有している化合物を併用してもよい。そうした構成元素供与体としては、制限はなく、任意の適切なものを用いることができる。
本発明の製造方法において、分散安定化剤とグリコールとの仕込み比率は、所望の無機物含有微粒子が得られるよう、適宜設定され得る。好ましくは、分散安定化剤とグリコールの仕込み比率は、容量比(v/v)で1:100〜100:1、より好ましくは1:10〜10:1である。
本発明の製造方法において、無機コア粒子前駆体の仕込み量は、所望の無機物含有微粒子が得られるよう、適宜設定され得る。好ましくは、無機コア粒子前駆体:分散安定化剤の仕込み比率は、重量比で1:0.5〜1:20、より好ましくは1:5〜1:10である。グリコール、分散安定化剤および無機コア粒子前駆体の仕込み量が上記範囲内であれば、媒体中で凝集しにくい無機物含有微粒子が得られ得る。
本発明の製造方法において、反応媒体として上記グリコールに加えて、さらに水が添加されている場合、無機物含有微粒子の製造に用いられるグリコールと水の仕込み比率は、所望の無機物含有微粒子が得られるよう、適宜設定され得る。グリコールと水との仕込み比率は、容量比(v/v)で、例えば、100:1〜1:10に設定され得る。
ソルボサーマル法は、反応媒体に水以外の液体を使用する点で水熱合成法と異なるが、基本的には、装置、手順および反応条件は水熱合成法のそれらを援用することができる。本発明の製造方法でも、反応媒体にグリコールを用いる点以外は、通常の水熱合成法に用いられる反応装置、反応条件、操作手順を援用することができる。また、必要に応じて超臨界状態又は亜臨界状態で反応を行うこともできる。
例えば、超臨界状態で無機物含有微粒子を製造するためには、一般に溶媒の臨界点よりも高い温度に保持し、無機物含有微粒子の製造を行う。反応装置(例えば、オートクレーブ)に対する充填率が高い場合には、臨界温度以下の温度でも圧力は臨界圧力を越え得る。本明細書において、超臨界状態とは、このような臨界圧力を越えた状態を含み得る。反応混合物(通常、無機コア粒子前駆体、分散安定化剤および反応媒体)は一定容積(容器容積)内に封入されているので、温度上昇は、流体の圧力を増大する。一般に、温度TはT>Tc(Tc:溶媒の臨界温度)および圧力P>Pc(Pc:溶媒の臨界圧力)であれば、超臨界状態にある。実際に、反応媒体中に導入された原料の溶解度は、亜臨界条件と超臨界条件との間で極めて異なるので、超臨界条件では、無機物含有微粒子の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に、原料の反応性および熱力学的パラメーター(すなわち、温度および圧力の値)に依存する。
本発明の製造方法に用いる反応装置は、高温高圧の条件を達成できる装置であればよい。このような装置であれば特に制限はなく、任意の適切な装置を使用することができる。例えば、回分式装置、流通式装置のいずれも使用でき、好ましくはオートクレーブが用いられる。
反応場(例えば、オートクレーブ内)の温度は、使用する反応媒体により適切な値が選択され得る。通常、反応場の温度は、200〜500℃に設定され得る。上記温度は、目的とする無機物含有微粒子の種類、組成に応じて選択され得る。
反応場(例えば、オートクレーブ内)の圧力は、使用する反応媒体に応じて、適宜設定され得る。例えば、通常は、液体状の反応混合物(無機コア粒子前駆体、分散安定化剤および反応媒体)を反応装置に収容後、オートクレーブに入れて密封し、上記所定の温度に昇温することで得られる圧力が挙げられる。上記密封条件下で所定の温度に昇温することで得られる圧力であり、かつ、無機物含有微粒子を製造するための目的の反応が起こるものであれば特に限定されない。反応場の圧力は、通常、1MPa〜60MPaに設定され得る。
反応装置(例えば、オートクレーブ)中の上記の温度範囲、圧力範囲を達成するための反応媒体の注入の割合、すなわち充填率は、反応装置内部のフリー容積(すなわち、オートクレーブ内の無機コア粒子前駆体、分散安定化剤、および反応媒体の体積をオートクレーブの全容積から差し引いて残存する容積)に対する反応媒体の容積を基準として、好ましくは20〜98%、より好ましくは30〜90%、さらに好ましくは50〜85%に設定され得る。
本発明の製造方法では、急速に混合・昇温させるために、原料とあらかじめ余熱した反応媒体・分散安定化剤とを異なる配管から供給して混合してもよい。所定の温度に達した後の反応時間については、目的とする無機物含有微粒子の種類、用いる無機コア粒子前駆体、分散安定化剤、および反応媒体、製造する無機物含有微粒子の大きさや量によっても異なるが、通常、数分間から数時間とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよく、徐々に昇温または降温してもよい。降温する場合、方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内にオートクレーブを設置したまま放冷してもよく、オートクレーブを電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷してもよい。
<無機物含有微粒子の用途>
本発明の無機物含有微粒子は、無機物含有微粒子表面に形成された有機物層、特に分散安定化剤由来の有機物が少なく、かつ、制御された粒子径と媒体への良分散性を有する。したがって、本発明の無機物含有微粒子は、塗料、半導体、発光体、光学材料、電極材料、触媒材料、潤滑材等に好適に用いることができる。また、上記の通り、本発明の無機物含有微粒子は有機物層に含まれる分散安定化剤由来の有機物が少ないため、ポリマーへも良好に分散させることができる。したがって、本発明の無機物含有微粒子は、ナノコンポジットに用いる無機物含有微粒子として、好適に用いることができる。
本発明の無機物含有微粒子は、無機物含有微粒子表面に形成された有機物層、特に分散安定化剤由来の有機物が少なく、かつ、制御された粒子径と媒体への良分散性を有する。したがって、本発明の無機物含有微粒子は、塗料、半導体、発光体、光学材料、電極材料、触媒材料、潤滑材等に好適に用いることができる。また、上記の通り、本発明の無機物含有微粒子は有機物層に含まれる分散安定化剤由来の有機物が少ないため、ポリマーへも良好に分散させることができる。したがって、本発明の無機物含有微粒子は、ナノコンポジットに用いる無機物含有微粒子として、好適に用いることができる。
本発明について、実施例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例)
ガラス容器に50mlの1,4−ブタンジオールと50mlのオレイルアミン(アルドリッチ製 テクニカルグレード)を入れ、次いでTi(OiPr)45.00gを加えて撹拌した。オレイルアミンとTi(OiPr)4の仕込み比率は、重量比で8:1であった。得られた溶液をオートクレーブ内にセットして密閉し、系内をアルゴン置換した後、2時間かけて300℃まで昇温し、その後300℃で2時間保持した後放冷した。この時、オートクレーブ内の圧力は4.3MPaであった。反応終了後、白色の上澄み液と白色の沈殿物からなる反応液が得られた。この反応液から遠心沈降により固形分を回収し、これを遠心分離機を用いて3回ヘキサンで洗浄した(ヘキサン洗浄品)。さらに、ヘキサン洗浄品の一部をアセトンに分散し、再度遠心沈降させて乾燥させた(アセトン洗浄品)
ヘキサン洗浄品の一部を取り出して、ヘキサンで希釈して透過型電子顕微鏡(TEM)用グリッドに展開後、TEMで観察した。また、ヘキサン洗浄品の一部を乾燥させ、熱重量分析(TG−DTA)を行った。この時、同時にアセトン洗浄品の熱重量分析も行った。さらに、別にアセトン洗浄品のX線回折(XRD)測定を行った。
TEM観察では、グリッド上に5〜8nmの粒子が凝集することなく孤立して分布している様子が観察された(図1)。ヘキサン洗浄品のTG−DTAでは、3.26重量%のブタンジオールに由来する重量減少と5.46重量%のオレイルアミンに由来する重量減少が観察された。アセトン洗浄品のTG−DTAでは、2.67重量%のブタンジオールに由来する重量減少だけ観察された。XRDより、生成粒子の無機コア粒子は、結晶性の良いアナタース型酸化チタンであることがわかった。
以上から、生成粒子はヘキサン中で1次粒子の状態で分散しているものと考えられる。また、生成粒子表面の有機物層は、ブタンジオールとオレイルアミンからなり、ブタンジオールは粒子表面に強く吸着し、一方、オレイルアミンはアセトンで除去される程度の強さで吸着しているものと考えられる。
ガラス容器に50mlの1,4−ブタンジオールと50mlのオレイルアミン(アルドリッチ製 テクニカルグレード)を入れ、次いでTi(OiPr)45.00gを加えて撹拌した。オレイルアミンとTi(OiPr)4の仕込み比率は、重量比で8:1であった。得られた溶液をオートクレーブ内にセットして密閉し、系内をアルゴン置換した後、2時間かけて300℃まで昇温し、その後300℃で2時間保持した後放冷した。この時、オートクレーブ内の圧力は4.3MPaであった。反応終了後、白色の上澄み液と白色の沈殿物からなる反応液が得られた。この反応液から遠心沈降により固形分を回収し、これを遠心分離機を用いて3回ヘキサンで洗浄した(ヘキサン洗浄品)。さらに、ヘキサン洗浄品の一部をアセトンに分散し、再度遠心沈降させて乾燥させた(アセトン洗浄品)
ヘキサン洗浄品の一部を取り出して、ヘキサンで希釈して透過型電子顕微鏡(TEM)用グリッドに展開後、TEMで観察した。また、ヘキサン洗浄品の一部を乾燥させ、熱重量分析(TG−DTA)を行った。この時、同時にアセトン洗浄品の熱重量分析も行った。さらに、別にアセトン洗浄品のX線回折(XRD)測定を行った。
TEM観察では、グリッド上に5〜8nmの粒子が凝集することなく孤立して分布している様子が観察された(図1)。ヘキサン洗浄品のTG−DTAでは、3.26重量%のブタンジオールに由来する重量減少と5.46重量%のオレイルアミンに由来する重量減少が観察された。アセトン洗浄品のTG−DTAでは、2.67重量%のブタンジオールに由来する重量減少だけ観察された。XRDより、生成粒子の無機コア粒子は、結晶性の良いアナタース型酸化チタンであることがわかった。
以上から、生成粒子はヘキサン中で1次粒子の状態で分散しているものと考えられる。また、生成粒子表面の有機物層は、ブタンジオールとオレイルアミンからなり、ブタンジオールは粒子表面に強く吸着し、一方、オレイルアミンはアセトンで除去される程度の強さで吸着しているものと考えられる。
(比較例)
オレイルアミンを用いなかったこと、および1,4−ブタンジオールを70ml、Ti(OiPr)4を24.59g用いた以外は、実施例と同様にして、アセトン洗浄品を得、分析を行った。
生成粒子は、実施例と同様に結晶性の良いアナタース型酸化チタンであった。生成粒子は、メタノールやアセトンには比較的よく分散したがヘキサンには全く分散しなかった。メタノール分散液を希釈してTEMグリッドに展開し、TEM観察を行ったところ、粒子径は10nm程度であるが、凝集している様子が観察された(図2)。
オレイルアミンを用いなかったこと、および1,4−ブタンジオールを70ml、Ti(OiPr)4を24.59g用いた以外は、実施例と同様にして、アセトン洗浄品を得、分析を行った。
生成粒子は、実施例と同様に結晶性の良いアナタース型酸化チタンであった。生成粒子は、メタノールやアセトンには比較的よく分散したがヘキサンには全く分散しなかった。メタノール分散液を希釈してTEMグリッドに展開し、TEM観察を行ったところ、粒子径は10nm程度であるが、凝集している様子が観察された(図2)。
以上のように、本発明の無機物含有微粒子は無機物含有微粒子本来の特性を有しかつポリマーにも良好に分散させることができるので、ナノコンポジットに用いる無機物含有微粒子として、好適に用いることができる。
Claims (10)
- 無機コア粒子と該無機コア粒子の表面に形成された有機物層とを含む無機物含有微粒子であって、該有機物層がグリコールと分散安定化剤とを含む、無機物含有微粒子。
- 前記分散安定化剤が有機アミンである、請求項1に記載の無機物含有微粒子。
- 前記有機物層の割合が無機物含有微粒子の全重量の0.1〜15重量%である、請求項1または2に記載の無機物含有微粒子。
- 前記有機物層を構成する有機物の10〜70重量%がグリコールであり、該グリコールを除いた該有機物の30〜90重量%が分散安定化剤である、請求項1から3のいずれかに記載の無機物含有微粒子。
- 前記無機コア粒子が金属酸化物、2種以上の金属からなる複合金属酸化物、金属、または2種以上の金属からなる複合金属で構成されている、請求項1から4のいずれかに記載の無機物含有微粒子。
- 前記グリコールが前記無機コア粒子表面に吸着および/または結合され、前記分散安定化剤が前記無機コア粒子および該グリコールの両方、または、該グリコールにのみ吸着および/または結合されている、請求項1から5のいずれかに記載の無機物含有微粒子。
- 請求項1から6のいずれかに記載の無機物含有微粒子を含む、分散体。
- ソルボサーマル法を用いた、請求項1から6のいずれかに記載の無機物含有微粒子の製造方法。
- 前記ソルボサーマル法に用いられる反応媒体がグリコールである、請求項8に記載の無機物含有微粒子の製造方法。
- 前記グリコールが1,4−ブタンジオールである、請求項9に記載の無機物含有微粒子の製造方法。
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