JP2012085928A - パン原料収納容器及びそれを備えた自動製パン器 - Google Patents
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Abstract
【課題】パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を収納しておくために用いられ、粉体パン原料の収納に好適なパン原料収納容器を提供する。
【解決手段】パン原料収納容器110は、容器本体111と、容器本体111の開口部111aを取り囲むように容器本体111に取り付けられるシール部材113と、閉位置においてシール部材113と当接する板状部112aを有し、閉位置から板状部112aが回動することにより開口部111aを開放する容器蓋112と、容器本体111に対して固定状態となるように設けられ、容器蓋112の回転中心となる支軸115と、容器蓋112を閉位置で維持するロック機構118と、を備える。板状部112aの一端側の両端部には、支軸115が挿通される係合孔EHを有する係合部112bが設けられ、係合孔EHは、板状部112aの板面と略平行な方向に延びる長孔である。
【選択図】図14
【解決手段】パン原料収納容器110は、容器本体111と、容器本体111の開口部111aを取り囲むように容器本体111に取り付けられるシール部材113と、閉位置においてシール部材113と当接する板状部112aを有し、閉位置から板状部112aが回動することにより開口部111aを開放する容器蓋112と、容器本体111に対して固定状態となるように設けられ、容器蓋112の回転中心となる支軸115と、容器蓋112を閉位置で維持するロック機構118と、を備える。板状部112aの一端側の両端部には、支軸115が挿通される係合孔EHを有する係合部112bが設けられ、係合孔EHは、板状部112aの板面と略平行な方向に延びる長孔である。
【選択図】図14
Description
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関し、詳細には、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を収納しておくために用いられるパン原料収納容器の構成に関する。
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れるパン容器をそのまま焼き型としてパンを製造する仕組みのものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このような自動製パン器では、まず、パン原料が入れられたパン容器が本体内の焼成室に入れられる。そして、パン容器内のパン原料がパン容器内に設けられる混練ブレードでパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、パン容器が焼き型として使用されてパンが焼き上げられる(焼成工程)。
このような自動製パン器を用いてパンの製造が行われる場合、これまでは、パン原料として、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料が混ぜられたミックス粉が必要とされた。しかしながら、一般家庭においては、米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物が所持されることがある。このために、自動製パン器が穀物粒から直接パンを製造できるように構成されていれば、非常に便利である。このようなことを念頭において、本出願人らは、穀物粒を出発原料としてパンを製造するパンの製造方法を開発している(特許文献2参照)。
このパンの製造方法では、まず、穀物粒と液体とが混合され、この混合物の中で粉砕ブレードが回転されて穀物粒が粉砕される(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉を含むパン原料が、混練ブレードを用いてパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、続いてパンを焼き上げる焼成工程が行われる。
本出願人らは、上述した、穀物粒を出発原料としてパンを製造する方法を実行可能な、新しい仕組みを備えた自動製パン器の開発に取り組んでいる。その中で、本出願人らは、パン容器内で液体と混合された穀物粒を粉砕した後に、例えばドライイーストやグルテン等の粉体パン原料を自動投入できる自動製パン器の開発を検討している。
粉体パン原料の自動投入は、例えば特許文献3や4に示されるような具材容器を使用して行うことが考えられる。しかしながら、本出願人らの鋭意検討により、従来の具材容器は、自動投入用に粉体パン原料を収納しておくといった使い方に向いておらず、改良の余地があることがわかった。具体例を挙げると、従来の具材容器は、粉体パン原料が内部に付着し易く、自動投入後に容器内に粉体パン原料が残留しやすい等の問題があることがわかった。
そこで、本発明の目的は、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を収納しておくために用いられ、粉体パン原料の収納に好適なパン原料収納容器を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのようなパン原料収納容器を備え、穀物粒を出発原料としてパンを製造するのに好適な自動製パン器を提供することである。
上記目的を達成するために本発明のパン原料収納容器は、自動製パン器に着脱自在に設けられ、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を収納しておくために用いられるパン原料収納容器であって、開口部を有する容器本体と、前記開口部を取り囲むように前記容器本体に取り付けられるシール部材と、前記開口部を塞ぐ閉位置において前記シール部材と当接する板状部を有し、前記閉位置から前記板状部が回動することにより前記開口部を開放する容器蓋と、前記容器本体に対して固定状態となるように設けられ、前記容器蓋の回転中心となる支軸と、前記容器蓋を前記閉位置で維持するロック機構と、を備え、前記板状部の一端側の両端部には、前記支軸が挿通される係合孔を有する係合部が設けられ、前記係合孔は、前記板状部の板面と略平行な方向に延びる長孔である。
穀物粒を出発原料としてパンを製造することができる自動製パン器では、例えば穀物粒を粉砕する粉砕工程において水蒸気が発生しやすい。この水蒸気がパン原料収納容器内に入り込むと、容器内に収納されているパン原料(例えばグルテンやドライイースト等の粉体パン原料)が容器内壁に付着し易くなる。この点、本構成によれば、シール部材の存在によって、容器蓋が容器本体の開口部を塞ぐ閉位置にある場合においては、容器内に水分が侵入し難くなる。このため、パン原料収納容器からパン原料を自動投入する際に、容器内にパン原料が付着(残留)して投入量が不適切となるといった事態を抑制できる。
また、パン原料収納容器にシール部材を設ける場合には、容器蓋とシール部材とがくっついて、容器蓋を閉位置からスムーズに開けないといったことが起こり得る。しかし、本構成では、回転中心となる支軸が挿通される係合孔(容器蓋に設けられる)が特定の長孔形状となっているために、容器蓋が閉位置から開かれる場合に、容器蓋がシール部材から離れる方向に移動する。このために、容器蓋がシール部材を巻き込みながら回転するといった事態を避けられ、容器蓋を閉位置からスムーズに開ける。
上記構成のパン原料収納容器において、前記シール部材の前記容器蓋と当接する部分の少なくとも一部には、シボ加工が施されているのが好ましい。本構成によれば、シボ加工が施された部分において、容器蓋とシール部材とが離れやすくなる。このために、容器蓋が閉位置からスムーズに開かれるようになる。
上記構成のパン原料収納容器において、前記シール部材を前記容器本体に固定する固定部材を更に備える、こととしてもよい。本構成によれば、シール部材の固定を確実に行い易い。また、例えばロック機構等のパン原料収納容器に必要な構成は、この固定部材上に設けることができ、本構成によれば、容器本体の構成を複雑とせずに済む。
上記構成のパン原料収納容器において、前記板状部の一端側には、外部側に向けて折り曲げられてなる折曲部が形成され、前記折曲部には、その先端から突出して前記容器蓋の最大開き角度を規制するストッパ部と、前記容器本体が下、前記容器蓋が上となる姿勢とした場合に、前記固定部材に設けられる第1の凸部と協働して、前記ストッパ部で規制される位置まで開かれた前記容器蓋が前記閉位置方向に向かって回動するのを規制する第2の凸部と、が設けられている、こととしてもよい。
本構成によれば、パン原料収納容器にパン原料(例えばグルテンやドライイースト等)を入れる作業が行われる際に、容器蓋が勝手に閉まるといった事態を抑制できる。すなわち、本構成によれば、ユーザに使い勝手が良く、安全性に優れるパン原料収納容器を提供できる。なお、容器蓋に設けられる係合孔が長孔であるために、このような構成を実現しやすい。
また、上記目的を達成するために本発明は、上記構成のパン原料収納容器を備える自動製パン器であることを特徴としている。本構成によれば、パン原料収納容器の容器蓋をスムーズに開いてパン原料を自動投入できるとともに、自動投入されるパン原料の投入量が不適切となり難い。
上記構成の自動製パン器は、パン原料が投入されるパン容器を本体の焼成室に受け入れて、前記パン容器内で穀物粒を粉砕する粉砕工程を含むパンの製造工程が実行されるように設けられ、前記パン原料収納容器は、前記粉砕工程後に前記パン容器に投入される粉体パン原料を収納するために用いられる、のが好ましい。
上記構成の自動製パン器において、本体内に設けられ、パン原料が投入されるパン容器が収容される焼成室と、前記焼成室の開口を開閉する蓋部と、を備え、前記パン原料収納容器が前記蓋部に取り付けられる、構成が採用されてもよい。これにより、パン原料収納容器からパン容器に一部のパン原料を自動投入する構成を実現し易くなる。
本発明によると、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を収納しておくために用いられ、粉体パン原料の収納に好適なパン原料収納容器を提供可能である。また、本発明によると、穀物粒を出発原料としてパンを製造するのに好適な自動製パン器を提供可能である。このため、本発明によれば、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
以下、本発明のパン原料収納容器及びそれを備えた自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、それらは本発明の内容を限定するものではない。
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、略直方体形状に設けられる自動製パン器1の本体10(その外殻は例えば金属や合成樹脂等によって形成される)の上面の一部には、操作部20が設けられている。この操作部20は、操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部と、によって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等が含まれる。表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成される。
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、略直方体形状に設けられる自動製パン器1の本体10(その外殻は例えば金属や合成樹脂等によって形成される)の上面の一部には、操作部20が設けられている。この操作部20は、操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部と、によって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコース等)を選択する選択キー等が含まれる。表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成される。
本体10内部には、詳細は後述するパン容器80が収容される焼成室30が設けられている。この焼成室30は、例えば板金からなる底壁30a及び4つの側壁30b(後述の図4も参照)で構成された平面形状略矩形の箱形状の部屋であり、その上面は開口している。この焼成室30は、本体10上部に設けられる蓋40(本発明の蓋部の一例)によって開閉可能となっている。蓋40は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として回動することで、焼成室30の開閉が可能になっている。なお、図1は、この蓋40が開かれた状態を示している。
この蓋40には、焼成室30内を覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓41が設けられている。また、蓋40には、パン原料収納容器110が着脱自在に取り付けられるようになっている。このパン原料収納容器110は、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入することを可能にするものである。なお、図1は、蓋40にパン原料収納容器110が取り付けられた状態を示しており、更に詳細には、パン原料収納容器110の容器蓋が開いた状態を示している。パン原料収納容器110の詳細な構造については後述する。
また、蓋40は、それが閉じられた状態において、その上面の略全体が本体10の前面側から背面側に向けて高くなる傾斜構造を有している(後述の図16も参照)。このために、蓋40が閉じられた状態において、本体10前面寄りに配置される覗き窓10から焼成室30に収容されるパン容器80内の様子が観察し易くなっている。また、蓋40が閉じられた状態において、本体10の背面寄りに取り付けられるパン原料収納容器110は、蓋40の厚みが厚い部分に配置されることになるため、その高さを高くして大きな容積を稼げるようになっている。
図2は、本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合を想定しており、図の下側が自動製パン器1の正面側、図の上側が背面側である。図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室30の右横に練り工程で用いられる低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室30の後ろ側に粉砕工程で用いられる高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。
混練モータ50の上面から突出する出力軸51には第1のプーリ52が固定される。この第1のプーリ52は、第1のベルト53によって、その径が第1のプーリ52よりも大きく形成されるとともに第1の回転軸54の上部側に固定される第2のプーリ55に連結されている。第1の回転軸54の下部側には、その回転中心が第1の回転軸54とほぼ同一となるように第2の回転軸57が設けられている(後述の図3も参照)。なお、第1の回転軸54及び第2の回転軸57は、本体10内部に回転可能に支持されている。また、第1の回転軸54と第2の回転軸57との間には、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56が設けられている(後述の図3も参照)。このクラッチ56の構成については後述する。
第2の回転軸57の下部側には第3のプーリ58が固定されている(後述の図3も参照)。第3のプーリ58は、第2のベルト59によって、焼成室30の下部側に設けられるとともに原動軸11に固定される第1の原動軸用プーリ12(第3のプーリ58とほぼ同一の径を有する)に連結されている(後述の図3参照)。混練モータ50自身が低速・高トルクタイプであり、その上、第1のプーリ52の回転が第2のプーリ55によって減速回転される(例えば1/5の速度に減速される)。このため、クラッチ56が動力伝達を行う状態で混練モータ50を駆動すると、原動軸11は低速(例えば180rpm程度)・高トルクで回転する。
なお、第1のプーリ52、第1のベルト53、第1の回転軸54、第2のプーリ55、クラッチ56、第2の回転軸57、第3のプーリ58、第2のベルト59、及び第1の原動軸用プーリ12で構成される動力伝達部のことを、以下では、第1の動力伝達部PT1と表現することがある。
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61には、第4のプーリ62が固定されている。この第4のプーリ62は、第3のベルト63によって、原動軸11に固定される第2の原動軸用プーリ13(第1の原動軸用プーリ12より下側で固定される;後述の図3参照)に連結されている。第2の原動軸用プーリ13は第4のプーリ62とほぼ同一の径を有する。粉砕モータ60には高速回転可能なものが選定される。そして、第4のプーリ62の回転は第2の原動軸用プーリ13においてほぼ同一速度で維持されるために、粉砕モータ60の高速回転により、原動軸11は高速回転(例えば7000〜8000rpm)を行う。
なお、第4のプーリ62、第3のベルト63、及び第2の原動軸用プーリ13で構成される動力伝達部のことを、以下では、第2の動力伝達部PT2と表現することがある。第2の動力伝達部PT2は、クラッチを有さない構成であり、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結する。
図3は、本実施形態の自動製パン器が備える第1の動力伝達部に含まれるクラッチについて説明するための図である。図3は、図2の矢印X方向に沿って見た場合を想定した図である。なお、図3(a)はクラッチ56が動力遮断を行う状態を示し、図3(b)はクラッチ56が動力伝達を行う状態を示す。
図3に示すように、クラッチ56は、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とを有する。そして、第1のクラッチ部材561に設けられる爪561aと、第2のクラッチ部材562に設けられる爪562aとが噛み合う場合(図3(b)の状態)に、クラッチ56は動力伝達を行う。また、2つの爪561a、562bが噛み合わない場合(図3(a)の状態)に、クラッチ56は動力遮断を行う。すなわち、クラッチ56は噛み合いクラッチとなっている。
なお、本実施形態では、2つのクラッチ部材561、562のそれぞれには、周方向(第1のクラッチ部材561を下から平面視した場合、或いは、第2のクラッチ部材562を上から平面視した場合を想定)にほぼ等間隔に並ぶ6つの爪561a、562aが設けられているが、この爪の数は適宜変更してもよい。また、爪561a、562aの形状は、好ましい形状を適宜選択すればよい。
第1のクラッチ部材561は、抜け止め対策を施された上で、第1の回転軸54に、その軸方向(図3において上下方向)に摺動可能、且つ、相対回転不能に取り付けられている。第1の回転軸54の第1のクラッチ部材561の上部側には、バネ71が遊嵌されている。このバネ71は、第1の回転軸54に設けられるストッパ部54aと第1のクラッチ部材561とに挟まれるように配置されており、第1のクラッチ部材561を下側に向けて付勢している。一方、第2のクラッチ部材562は、第2の回転軸57の上端に固定されている。
クラッチ56における、動力伝達状態と動力遮断状態との切り替えは、下位置と上位置とに選択配置可能なアーム部72を用いて行われる。アーム部72は、その一部が第1のクラッチ部材561の下側に配置され、第1のクラッチ部材561の外周側と当接可能となっている。
アーム部72の駆動は、クラッチ用ソレノイド73を用いて行われる。クラッチ用ソレノイド73は、永久磁石73aを備え、いわゆる自己保持型のソレノイドとなっている。クラッチ用ソレノイド73のプランジャー73bは、アーム部72のプランジャー固定用の取付部72aに固定される。このために、電圧の印加によりハウジング73cからの突出量が変動するプランジャー73bの動きに合わせてアーム部72が動く。
アーム部72が下位置(図3(b)の状態)から上位置(図3(a)の状態)に移動すると、第1のクラッチ部材561は、アーム部72に押されてバネ71の付勢力に抗して上方向に移動する。アーム部72が上位置にある場合には、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とは噛み合わない。すなわち、アーム部72が上位置にある場合には、クラッチ56は動力遮断を行う。
一方、アーム部72が上位置から下位置に移動すると、第1のクラッチ部材561はバネ71の付勢力によって押される形で下方向に移動する。アーム部72が下位置にある場合には、第1のクラッチ部材561と第2のクラッチ部材562とは噛み合う。すなわち、アーム部72が下位置にある場合には、クラッチ56は動力伝達を行う。
粉砕モータ60を駆動する際に、クラッチ56が動力伝達を行う状態(図3(b)の状態)であると、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達される(図2参照)。この場合、粉砕モータ60が例えば8000rpmで回転されるとすると、第1のプーリ52と第2のプーリ55との半径比(例えば1:5)によって、混練モータ50の出力軸51を40000rpmで回転させる力が必要になる。その結果、粉砕モータ60に非常に大きな負荷が加わるために、粉砕モータ60が破損する可能性がある。このため、粉砕モータ60を駆動する際には、原動軸11を高速回転させる回転動力が混練モータ50の出力軸51に伝達されないようにする必要がある。そこで、自動製パン器1は、上述のように、動力伝達と動力遮断を行うクラッチ56を第1の動力伝達部PT1に含む構成となっている。
なお、上述のように自動製パン器1においては、第2の動力伝達部PT2にはクラッチが設けられない構成としているが、これは次の理由による。すなわち、混練モータ50を駆動しても原動軸11は低速回転(例えば180rpm等)されるのみである。このため、原動軸11を回転させる回転動力が粉砕モータ60の出力軸に伝達されるようになっていても、混練モータ50に大きな負荷が加わることはない。そして、このように第2の動力伝達部PT2にクラッチが設けられない構成を敢えて採用することで、自動製パン器1の製造コストが抑制される。ただし、第2の動力伝達部PT2にクラッチが設けられる構成を採用しても、勿論構わない。
図4は、本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示す図である。図4は、自動製パン器1を正面側から見た場合の構成を想定しており、焼成室30及びパン容器80の構成は概ね断面図で示されている。なお、パン原料が投入されるとともにパン焼き型として使用されるパン容器80は、焼成室30に対して出し入れ自在となっている。
図4に示すように、焼成室30の内部には、シーズヒータ31(加熱手段の一例)が焼成室30に収容されたパン容器80を包囲するように配置されている。このシーズヒータ31を用いることにより、パン容器80内のパン原料(生地となっているものも含む)の加熱が可能になる。
図4を参照して、焼成室30の底壁30aの略中心にあたる箇所には、パン容器80を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室30の底壁30aから窪むように形成され、その窪みの形状は上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁30aに対して略垂直となるように支持されている。原動軸11の上端には、本体側接続部11aが固定されている。
パン容器80は例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品(その他、板金等で構成しても構わない)であり、バケツのような形状をしており、開口部側縁に設けられる鍔部80aに手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器80の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器80の底部には、詳細は後述するブレードユニット90の一部を収容する平面視略円形状の凹部81が形成されている。
パン容器80の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸82が、シール対策を施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸82の下端(パン容器80の底部から外部側に突き出ている)には、容器側接続部82aが固定されている。
また、パン容器80の底部外面側には、ブレード回転軸82を取り囲むように筒状の台座83が設けられている。パン容器80は、この台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、焼成室30内に収容されるようになっている。なお、台座83は、パン容器80とは別に形成してもよいし、パン容器80と一体的に形成してもよい。
パン容器80の台座83がパン容器支持部14に受け入れられた状態で、パン容器80が焼成室30内に収容されると、ブレード回転軸82の下端に設けられる容器側接続部82aと、原動軸11の上端に固定される本体側接続部11aとの連結が得られるようになる。そして、これにより、ブレード回転軸82は原動軸11から回転動力を伝えられるようになる。すなわち、本体側接続部11aと容器側接続部82aとはカップリングを構成する。
ブレード回転軸82のパン容器80内部に突出する部分には、その上からブレードユニット90が着脱可能に取り付けられるようになっている。このブレードユニット90の構成について、図5から図9を参照しながら説明する。
なお、図5は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図である。図6は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略分解斜視図である。図7は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す図で、図7(a)は概略側面図、図7(b)は図7(a)のA−A位置における断面図である。図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図で、図8(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図8(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。図8においては、後述のガードが取り外された状態を示している。図9は、本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、パン容器を上から見た場合の図である。図9(a)は混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合の図、図9(b)は混練ブレードが開き姿勢にある場合の図である。
ブレードユニット90は、大きくは、ユニット用シャフト91と、ユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる粉砕ブレード92と、ユニット用シャフト91に相対回転可能且つ粉砕ブレード92を上から覆うように取り付けられる平面視略円形のドーム状カバー93と、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる混練ブレード101と、ドーム状カバー93に取り付けられ、粉砕ブレード92を下から覆うガード106と、を備える構成となっている(例えば、図5〜図7参照)。
なお、ブレードユニット90がブレード回転軸82に取り付けられた状態において、粉砕ブレード92は、パン容器80の凹部81底面より少し上の箇所に位置する。また、粉砕ブレード92及びドーム状カバー93のほぼ全体は凹部81に収容される(例えば図4参照)。
ユニット用シャフト91は、例えばステンレス鋼板等の金属によって形成される略円柱状の部材であり、一方端(下端)に開口が設けられ、その内部は中空となっている。すなわち、ユニット用シャフト91は、下端からブレード回転軸82を挿入できるように、挿入孔91cが形成された構成となっている(例えば図7(b)参照)。
また、ユニット用シャフト91の側壁の下部側(開口側)には、ユニット用シャフト91の回転中心を挟んで対称配置される一対の切り欠き部91aが形成されている(例えば図6参照。ただし、図6では一対の切り欠き部91aの一方のみが示される)。切り欠き部91aの形状は側面視略矩形状であり、詳細には一方端(上端)が丸みを帯びている。切り欠き部91aは、ブレード回転軸82を水平に貫くピン821(図7(b)参照)に係合させるために設けられている。ブレード回転軸82のピン821と、切り欠き部91aとが係合することによって、ユニット用シャフト91はブレード回転軸82に相対回転不能に取り付けられた状態になる。
図7(b)に示すように、ブレード回転軸82(破線で示す)の上端面(略円形状)の中央部に設けられる凸部82bと係合するように、ユニット用シャフト91の内部側の上面中央部には凹部91bが形成されている。これにより、ユニット用シャフト91とブレード回転軸82との中心を合わせた状態で、ブレードユニット90はブレード回転軸82に容易に取り付けることができる。このために、ブレード回転軸82を回転させた場合に、不要なガタツキが発生することが抑制される。本実施形態では、ブレード回転軸82側に凸部82b、ユニット用シャフト91側に凹部91bを設ける構成としたが、これとは逆に、ブレード回転軸82側に凹部、ユニット用シャフト91側に凸部が設けられる構成としても構わない。
穀物粒粉砕用の粉砕ブレード92は、例えばステンレス鋼板を加工することによって形成される。この粉砕ブレード92は、例えば図6に示すように、第1の切削部921と、第2の切削部922と、第1の切削部921と第2の切削部922とを連結する連結部923と、を備える。連結部923の中央部には、平面視略矩形状(スタジアム形状)の開口923aが形成されている。この開口923aにユニット用シャフト91の下部側が嵌め込まれる形で、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に取り付けられる。
なお、ユニット用シャフト91の下部側には、側面の一部(切り欠き部91aが設けられる位置近傍)を削って平坦面が形成されている。これにより、ユニット用シャフト91を下から平面視した場合に、ユニット用シャフト91の下部側は、連結部923に設けられる開口923aとほぼ同形状(略矩形状)となっている。ユニット用シャフト91の下部側を平面視した場合の面積は、開口923aより、ほんの僅かだけ小さくなっている。このような形状を採用しているために、粉砕ブレード92はユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード92の下部側には抜け止め用のストッパ部材94がユニット用シャフト91に嵌め込まれるために、粉砕ブレード92がユニット用シャフト91から脱落することはない。
粉砕ブレード92を囲んで覆い隠すように配置されるドーム状カバー93は、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、その内面側には、ベアリング95(本実施形態では転がり軸受けを使用している)を収容する凹状の収容部931(図7(b)参照)が形成されている。換言すると、この収容部931を形成するために、ドーム状カバー93は、それを外面から見た場合に、中央部に略円柱状の凸部93aが形成された構成となっている。なお、凸部93aには開口が形成されておらず、収容部931に収容されるベアリング95はその側面及び上面が収容部931の壁面に囲い込まれた状態となっている。
ベアリング95は上下に抜け止めリング96a、96bが配置された状態で、その内輪95aがユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている(内輪95a内側の貫通孔にユニット用シャフト91が圧入されている)。また、ベアリング95は、その外輪95bの外壁が収容部931の側壁に固定されるように、収容部931に圧入されている。このベアリング95(内輪95aが外輪95bに対して相対回転する)の介在によって、ドーム状カバー93はユニット用シャフト91に相対回転可能に取り付けられている。
また、ドーム状カバー93の収容部931には、外部からベアリング95内に異物(例えば穀物粒の粉砕時に用いられる液体や粉砕により得られたペースト状物等)が入り込まないように、例えばシリコン系或いはフッ素系の材料によって形成されるシール材97及び、このシール材97を保持する金属製のシールカバー98が、ベアリング95の下部側から圧入されている。シールカバー98は、ドーム状カバー93への固定が確実となるように、リベット99によってドーム状カバー93に固着されている。このリベット99による固定は行わなくてもよいが、確実な固定を得るために、本実施形態のように構成するのが好ましい。なお、シール材97及びシールカバー98はシール手段として機能する。
ドーム状カバー93の外面には、凸部93aに隣接する箇所に垂直方向に延びるように配置される支軸100(図6参照)により、平面形状「く」の字形の混練ブレード101(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。混練ブレード101は、支軸100に相対回転不能に取り付けられており、ドーム状カバー93に相対回転可能に取り付けられる支軸100と動きを共にする。換言すると、混練ブレード101は、ドーム状カバー93に対して相対回転可能に取り付けられた構成となっている。
混練ブレード101の先端(支軸100を中心として混練ブレード101を回転したときに最も大きな円を描く部分を想定)側近傍の一方面には、図5〜図9に示すように緩衝材107が取り付けられている。緩衝材107は、混練ブレード101の先端から僅かに突出するように設けられている(例えば図8(b)参照)。なお、本実施形態では3mm程度突出する(d≒3mm)ように設けられている。
緩衝材107の固定は、混練ブレード101の一方面と固定用板108とで緩衝材107を挟持した状態とし、混練ブレード101の他方面側から挿入されるリベット109のカシメで得られる構成となっている。なお、本実施形態ではリベット109の数を2つとしているが、その数が限定されないのは言うまでもない。
この緩衝材107は、混練ブレード101が詳細は後述する開き姿勢となった場合に、パン容器80(の内壁)と直接接触しないように配置されている。混練ブレード101とパン容器80とが直接接触すると、それらの間の干渉が原因となって破損が発生する可能性があり、このような破損を防止すべく緩衝材107は設けられている。
本実施形態の自動製パン器1においては、パン容器80及び混練ブレード101の表面にはフッ素コーティングが施されている。このため、本実施形態の緩衝材107は、このフッ素コーティングが混練ブレード101とパン容器80との接触で剥がれないように設けられたものといえる。そして、この点から、緩衝材107を構成する材料としては、フッ素コーティングを剥がさないようにコーティング材よりも柔らかい材料が好ましく、例えば、シリコーンゴムやTPE(Thermoplastic Elastomers;熱可塑性エラストマ)等が用いられる。また、緩衝材107は防音対策としても機能するが、この点は後述する。なお、以下では、この緩衝材107も混練ブレード101の一部と見なして説明が行われる場合がある。
また、本実施形態では、ドーム状カバー93の外面に、混練ブレード101に並ぶように補完混練ブレード102(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定配置されている。この補完混練ブレード102は、必ずしも設ける必要がないが、パン生地を練り上げる練り工程における混練効率を高めるために設けるのが好ましい。
ここで、混練ブレード101の動作について説明する。混練ブレード101は、支軸100と共に支軸100の軸線周りに回転し、図5、図7、図8(a)及び図9(a)に示す折り畳み姿勢と、図8(b)及び図9(b)に示す開き姿勢との2姿勢をとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード101の下縁から垂下した突起101a(図6参照)がドーム状カバー93の上面(外面)に設けられた第1のストッパ部93bに当接する。このために、混練ブレード101は、それ以上ドーム状カバー93に対して反時計方向(上から見た場合を想定)の回動を行うことができない。この折り畳み姿勢では、混練ブレード101の先端がドーム状カバー93から少し突き出している。
この姿勢(図9(a)の状態)から混練ブレード101がドーム状カバー93に対して時計方向(上から見た場合を想定)に回動して図9(b)に示す開き姿勢になると、混練ブレード101の先端はドーム状カバー93から大きく突き出す。この開き姿勢における混練ブレード101の開き角度は、ドーム状カバー93の内面に設けられる第2のストッパ部93c(図8参照)によって制限される。詳細は後述する第2係合体103b(支軸100に固定される)が、ドーム状カバー93の内面に設けられる第2のストッパ部93cに当って回転できなくなった時点で、混練ブレード101は最大開き角度となる。
なお、混練ブレード101が折り畳み姿勢となっている場合には、例えば図5や図7に示すように補完混練ブレード102は混練ブレード101に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード101のサイズが大型化したようになる。
ところで、ユニット用シャフト91には、例えば図6に示すように、粉砕ブレード92とシールカバー98との間にカバー用クラッチ103を構成する第1係合体103aが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第1係合体103aには略矩形状(スタジアム形状)の開口103aaが形成されており、この開口103aaにユニット用シャフト91の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第1係合体103aはユニット用シャフト91に相対回転不能に取り付けられている。この第1係合体103aは粉砕ブレード92よりも先に、ユニット用シャフト91の下側から取り付けられ、ストッパ部材94によって、粉砕ブレード92と共にユニット用シャフト91からの脱落が防止されている。なお、本実施形態では、第1係合体103aとシールカバー98との間には、第1係合体103aの劣化防止等を考慮してワッシャ104を配置する構成としているが、このワッシャ104は必ずしも設けなくてもよい。
また、混練ブレード101が取り付けられる支軸100の下部側には、カバー用クラッチ103を構成する第2係合体103bが取り付けられている。例えば亜鉛ダイカストからなる第2係合体103bには略矩形状(スタジアム形状)の開口103baが形成されており、この開口103baに支軸100の下部側の平面視略矩形状部分が嵌め込まれることにより、第2係合体103bは支軸100に相対回転不能に取り付けられている。なお、本実施形態では、第2係合体103bの上側に、第2係合体103bの劣化防止等を考慮してワッシャ105を配置する構成としているが、このワッシャ105は必ずしも設けなくてもよい。
第1係合体103aと第2係合体103bとで構成されるカバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達するか否かを切り替えるクラッチとして機能する。カバー用クラッチ103は、混練モータ50が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする。図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転となる。)において、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達する。逆に、粉砕モータ60が原動軸11を回転させるときのブレード回転軸82の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする。図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転となる。)においては、カバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82の回転動力をドーム状カバー93に伝達しない。以下、このカバー用クラッチ103の動作について更に詳細に説明する。
混練ブレード101が折り畳み姿勢にある場合(例えば図8(a)、図9(a)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103ab(本実施形態では2つあるが1つでもよい)の回転軌道に干渉する角度となる(図8(a)の破線参照)。このため、ブレード回転軸82が正方向回転すると、第1係合体103aと第2係合体103bは係合し、ブレード回転軸82の回転動力がドーム状カバー93に伝達される。
一方、混練ブレード101が開き姿勢にある場合(例えば図8(b)、図9(b)の状態)、第2係合体103bの係合部103bbは第1係合体103aの係合部103abの回転軌道から逸脱した角度となる(図8(b)の破線参照)。このために、ブレード回転軸82が回転しても、第1係合体103aと第2係合体103bは係合しない。従って、ブレード回転軸82の回転動力はドーム状カバー93に伝達されない。
例えば図5及び図6に示すように、ドーム状カバー93には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓93dが形成される。窓93dは粉砕ブレード92に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。なお、本実施形態では、計4個の窓93dが90°間隔で並んでいるが、それ以外の数と配置間隔を選択することもできる。
また、ドーム状カバー93内面には、各窓93dに対応して計4個のリブ93eが形成されている(図8参照)。各リブ93eはドーム状カバー93の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ93eは、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
また、ドーム状カバー93の下面には、ガード106が着脱可能に取り付けられている。このガード106は、ドーム状カバー93の下面を覆って粉砕ブレード92にユーザの指が接近するのを阻止する。ガード106は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。なお、このガード106は設けなくても構わないが、ユーザの安全を確保する目的等から、設けるのが好ましい。
例えば図6に示すように、ガード106の中心には、ユニット用シャフト91に固定されるストッパ部材94を通すリング状のハブ106aがある。また、ガード106の周縁には、ハブ106aの外側に同心円状に設けられたリング状のリム106bがある。ハブ106aとリム106bとは複数のスポーク106cで連結される。複数のスポーク106cは所定の間隔を置いて配置され、スポーク106c同士の間は、粉砕ブレード92によって粉砕される穀物粒を通す開口部106dとなる。開口部106dは、指が通り抜けられない程度の大きさとなっている。
ガード106のスポーク106cは、ドーム状カバー93に取り付けられた時、粉砕ブレード92と近接状態となる。そして、あたかも、ガード106が回転式電気かみそりの外刃で、粉砕ブレード92が内刃のような形になる。
リム106bの周縁には、90°間隔で計4個(この構成に限定されないのは言うまでもない)の柱106eが一体成形されている。この柱106eのガード106中心側を向いた側面には、一端が行き止まりになった水平な溝106eaが形成される。この溝106eaと、ドーム状カバー93の外周に形成される突起93f(これも45°間隔で計4個配置されている)とを係合させることによって、ガード106はドーム状カバー93に取り付けられる。なお、詳細な説明は省略するが、溝106eaと突起93fとは、バヨネット結合を構成するように設けられている。複数の柱106eの各々は、ブレード回転軸82が正方向回転する場合に回転方向前面となる側面106ebが斜め上向きとなるように傾斜している。
以上のように、本実施形態の自動製パン器1では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101を1つのユニット(ブレードユニット90)に組み込む構成としているので、その取り扱いが便利である。ユーザは、ブレードユニット90をブレード回転軸82から簡単に引き抜くことが可能であり、製パン作業終了後にブレードの洗浄を手軽に行うことができる。また、ブレードユニット90が備える粉砕ブレード92は、ユニット用シャフト91に着脱可能に取り付けられるものであり、その量産が行いやすく、ブレード交換等のメンテナンス性にも優れる。
また、本実施形態の自動製パン器1では、パン容器80に水等の液体が入れられるために、ベアリング95に液体が入り込まないように、ベアリング95は密閉構造とされるのが好ましい。この点、自動製パン器1では、ベアリング95がドーム状カバー93に設けられる凹状の収容部931に収容されているために、ドーム状カバーの内面側にのみシール手段(シール材97及びシールカバー98)を設ければ、ベアリング95を密閉する構造が得られる。このため、ベアリング95の上下にシール手段を設ける必要がなく、ベアリング95のシール構造の小型化が図れる。このため、自動製パン器1では、焼き上がったパンの形状に対する悪影響(例えば、パンの底面が大きく凹む等)を抑制することが可能になる。
ここで、蓋40に着脱自在に取り付けられるパン原料収納容器110について、図10〜図14を参照しながら詳細に説明する。図10は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略斜視図で、図10(a)は主に前面側を示す図、図10(b)は主に背面側を示す図である。なお、パン原料収納容器110が取り付けられた蓋40が閉じられた状態において、本体10前面側となる面をパン原料収納容器110の前面、本体10背面側となる面をパン原料収納容器110の背面としている(以下、同様)。また、図10(a)と図10(b)では、パン原料収納容器110の上下が逆となっている。図11は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略図で、図11(a)は図10(a)のB−B位置における概略断面図、図11(b)はパン原料収納容器を蓋側(図11(a)の下側)から見た場合の概略平面図である。なお、図11(b)においては、容器蓋112が外されている。
図12は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の容器蓋の構成を示す概略図で、図12(a)は概略斜視図、図12(b)は図12(a)のC−C位置における概略断面図である。図13は、パン原料収納容器の容器蓋が回転する際の動作について説明するための模式図で、図13(a)は本実施形態の場合について説明するための図、図13(b)は本実施形態と異なる形態を採用した場合について説明するための図(比較用の図)である。図14は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器にパン原料が投入される場合の、パン原料収納容器の姿勢を示す概略断面図である。なお、図14は、パン原料収納容器を長手方向の中央位置で切った断面図である。
自動製パン器1が備えるパン原料収納容器110は、例えば図10や図11に示すように、大きくは、容器本体111と、容器本体111に対して回動可能に設けられて容器本体111の開口部111aを開閉する容器蓋112と、を備えている。
容器本体111は、図11(a)に示すように、その断面形状が略矩形状の箱形部材であり、パン原料を投入するための投入口となる開口部111aを有する。この容器本体111は、その内部に粉体パン原料(例えばグルテンやドライイースト等)が付着するのを抑制できるように、静電気を帯び難い、例えばアルミニウムや鉄等の金属によって形成されている。また、粉体パン原料が容器内に付着するのをできる限り抑制するために、容器本体111の内面は、シリコン系やフッ素系等のコーティング層CLによって覆われている。なお、容器本体111内面には、リベットやネジ等の突起物(凹凸)が形成されないようにし、容器本体111内面は滑らかな面となるようにするのが好ましい。
また、容器本体111には、開口部111aの全周を取り囲むように、外向きに突出する鍔部(フランジ部)111bが形成されている(図11(a)参照)。この鍔部111bには、例えばシリコーンで構成されるパッキン113が取り付けられている。なお、このパッキン113は、本発明のシール部材の実施形態である。パッキン113は、図11(b)に示すように、平面形状略額縁状となっており、鍔部111b全周に取り付けられている。すなわち、パッキン113は、容器本体111の開口部111aを取り囲むように容器本体111に取り付けられている。
このパッキン113は、より詳細には、鍔部111bを上下から挟むように取り付けられる断面略コの字状の部分113aと、この断面略コの字状の部分から突出(図11(a)においては下方に突出)し、先端側が開口部111aに向かう方向とは逆向きに向かうように折り返された薄肉の弾性部113bと、を有している。パッキン113が、容器本体111の開口部111aへとはみ出していると、容器本体111に収納されたパン原料がパッキン113に引っ掛かり易くなり、容器内にパン原料が残留する原因となる。このために、パッキン113は、開口部111aへとはみ出さないように鍔部111bへの取付位置が調整されている。また、パッキン113が容器蓋112側に取り付けられると、パン原料がパン原料収納容器110からパン容器80に投入される際に、パン原料がパッキン113に引っ掛かり易くなってパン原料の投入量が不適切となる。このために、パッキン110は、容器蓋112側でなく、容器本体111側に取り付けられている。
なお、パッキン113の薄肉の弾性部113bは、シボ加工が施された部分を有する。詳細には、容器蓋112が開口部111aを塞ぐ閉位置にある場合に容器蓋112と当接する部分の一部(図11(b)のハッチングが施された部分)に、シボ加工が施されている。シボ加工の効果については後述する。
パッキン113の固定は、パッキン113の略コの字状の部分113aを挟み込むようにして容器本体111に取り付けられる固定部材114(本発明の固定部材に相当する)を用いて行われる。固定部材114は、平面形状略額縁状である。この固定部材114の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスフィラーが分散されたポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等が選択できる。固定部材114は、詳細には2つのパーツで構成されている。2つのパーツは、パッキン113(弾性部113bは除く)及び鍔部111bを挟み込むように配置されている。そして、これら2つのパーツがネジ留めされることにより、固定部材114によるパッキン113の固定が実現されている。
容器蓋112は、例えば金属プレートを用いて形成される。容器蓋112を構成する金属としては、容器本体111の場合と同様の理由(粉体パン原料の付着を抑制)でアルミニウム等が好ましい。図12に示すように、容器蓋112は、容器本体111の開口部111aよりやや面積が広く形成される平面視略矩形状の板状部112aと、板状部112aの一端側(図10に示されるようにパン原料収納容器110の背面側が相当する)の両端部に設けられる一対の係合部112b(本発明の係合部の一例)と、一対の係合部112bに挟まれるように板状部112aの一端側に設けられる折曲部112cと、を有する。
板状部112aの内面(容器蓋112が閉位置にある状態を想定した表現である)は、容器本体111の場合と同様の理由で、例えばシリコン系のコーティング層CLで覆われている(図11(a)参照)。また、板状部112aの内面の他端側(折曲部112cが設けられる一端側に対向する側)中央部には、微小な溝部GPが形成されている。この溝部GPは、容器本体111の開口部111aが容器蓋112で閉じられた状態において、容器内部と外部とを連通する微小通気路として機能する。この微小通気路として機能する溝部GPを設けた効果については後述する。
一対の係合部112bは、容器本体111に対して固定状態となるように設けられる支軸115を中心として容器蓋112が回転可能となるように設けられる。この一対の係合部112bは、金属プレートの板状部112aと連続する部分を外部側(容器蓋112が閉位置にある状態において容器本体111から離れる方向)に折り曲げることによって得られる。一対の係合部112bは、板状部112aの板面に対して略垂直となっている。一対の係合部112bのそれぞれには、板状部112aの板面から所定の距離だけオフセットした位置に、支軸115が挿通される係合孔EH(本発明の係合孔に相当する)が形成されている。この係合孔EHは、板状部112aの板面と略平行な方向に延びる長孔となっている。係合孔EHを長孔とする理由については後述する。
なお、支軸115は、パン原料収納容器110の背面側に設けられている。具体的には、支軸115となる棒状部を有する略L字状の板金部材を2つ用意し、これらを、背面側の両端において、固定部材114を構成する2つのパーツで挟み込むことによって支軸115を得ている。なお、支軸115を得る構成はこれに限らず、例えば、容器本体111に支軸115を支える支持部を設けることによって、支軸が得られるようにしてもよい。また、支軸115は、場合によっては、背面側の一方の端部から他方の端部へと延びる、1本の棒であっても構わない。
折曲部112cは、係合部112b同様に、金属プレートの板状部112aと連続する部分を外部側に折り曲げることによって得られる。ただし、折曲部112cは、係合部112bのように急激に折り曲げられるのではなく、徐々に板面に対する折り曲げ角が大きくなるように折り曲げられている。折曲部112cの先端側の板面は、板状部112aの板面に対して、略90度となっている。この折曲部112cは、容器蓋112が開かれる場合に、容器蓋112の端部がパッキン113に引っ掛かったり、パッキン113を損傷したりするのを防止するために設けられている。
折曲部112cの略中央部・先端には、外部方向に斜めに突出する、平面視略矩形状の突起部116が設けられている。この突起部116は、ユーザが容器蓋112を開く際の操作が行い易いように設けられている。また、この突起部116は、容器蓋112の最大開き角度を規制するストッパとしても機能する。すなわち、この突起部116は、本発明のストッパ部の一例である。
突起部116をストッパ部として機能させるのは、次の理由による。すなわち、自動製パン器1においては、容器本体111に対して容器蓋112が下となる姿勢(図10(a)の姿勢)で、パン原料収納容器110は使用される。容器蓋112が閉位置から開いた状態になる(重力によって回動する)場合に、その開き角度が大きくなり過ぎると、パン容器80に投入されずに、その外部へとこぼれるパン原料の量が増えることが懸念される。このため、容器蓋112がある角度(例えば95°)以上開かないように、突起部116(正確には、後述のカバー部材116aの一部)が固定部材114の一部に衝突するように構成されている。
なお、突起部116のサイズ、形状及び設置位置は、当然ながら適宜変更してよい。また、本実施形態では、突起部116には、例えばシリコーン等からなる弾性のカバー部材116aが被せられている(図10(b)参照)。このカバー部材116aは設けなくてもよいが、ユーザの指等を保護するために設けるのが好ましい。また、突起部116はストッパ部として機能するために、他の部材との衝突時の衝撃が和らげられるように、突起部116にはカバー部材116aを取り付けるのが好ましい。
折曲部112cの略中央部・中腹には、外部方向に突出する蓋側凸部LP(本発明の第2の凸部の一例)が設けられている。この蓋側凸部LPは、固定部材114の背面側略中央部に設けられる固定部材側凸部FP(本発明の第1の凸部の一例)と協働して、最大開き角度まで開かれた容器蓋112が閉位置に向かって回動するのを規制する。この蓋側凸部LP及び固定部材側凸部FPを設けた効果の詳細については後述する。
パン原料収納容器110の前面側には、ロック機構118が設けられている。このロック機構118は、固定部材114に取り付けられている。ロック機構118は、ユーザが指を載せられるように設けられた載置部118aと、この載置部118aから容器本体111の開口部111a方向に向かって突出し、閉位置にある容器蓋112を外面側から押さえるフック部118bと、載置部118aから容器本体111の長手方向と略平行な方向に延びる腕部118cと、を有する構成となっている。
腕部118cは、容器本体111の深さ方向と平行な回転軸C1(図11(b)参照)を中心に回動可能に、固定部材114に軸支されている。腕部118cは、その一端部側を図示しない付勢部材によって付勢されており、腕部118cの他端側に設けられる載置部118a及びフック部118bは、その付勢力によって、容器本体111の開口部111a側に向かうようになっている。
フック部118bは断面視略三角形状に設けられており、容器蓋112をフック部118bに載せた状態で、下向き(図10(b)や図11(b)の姿勢を前提とした表現)に力を加えると、腕部118cを付勢する付勢部材の付勢力に抗した力が発生する。このために、フック部118bに容器蓋112を載せて下向きに力を加えると、容器蓋112がフック部118bに載っている状態では、腕部118cが付勢部材の付勢力に反する力によって回転し、フック部118bが容器蓋112から離れる方向に移動する。そして、フック部118bに容器蓋112が載っていない状態になると、腕部118cが付勢部材の付勢力によって回転して容器蓋112側に移動するため、フック部118bは容器蓋112を外面側から押さえる位置(本発明の第1の位置に該当)に至る。これにより、ロック状態(容器蓋112の閉位置で維持された状態)が得られる。
ロック状態においては、例えば図11(a)に示すように、容器蓋112の内面外周側がパッキン113の弾性部113bと接触した状態で鍔部111bと重なり、開口部111aが完全に塞がれた状態となる。このロック状態においては、パッキン113によって容器本体111と容器蓋112との間がシールされているために、容器本体111内に外部から水分や埃等が入り込み難くなる。
このロック状態を解除して容器本体111の開口部111aを開いた状態とする場合には、腕部118cが付勢力に反して回動(回転軸C1を中心とする回動)するように外部から力を付与し、フック部118bが容器蓋112を外面側から押さえない位置(本発明の第2の位置に該当)に移動するようにすればよい。これにより、容器蓋112が重力によって回動されるようにでき(例えば図10(a)や図11(a)の姿勢を前提とした表現)、開口部111aが開いた状態(開状態)が得られる。
なお、本実施形態の自動製パン器1では、操作部20(図1参照)の下部側の本体10内に自動投入用ソレノイド16(後述の図17参照)が設けられている。このソレノイド16が駆動すると、そのプランジャーが、蓋40に隣接する本体壁面10aに設けられる開口10b(図1参照)から突出する。そして、突出したプランジャーが蓋40の側壁40aに設けられる可動部材46(後述の図15(a)参照)を押圧する。押圧された可動部材46が動くことでロック機構118の腕部118cが押圧され、図示しない付勢部材の付勢力に反して腕部118cが回動する。これにより、フック部118bによる容器蓋112の押さえが解除され、容器蓋112が重力によって回動し、開口部111aが開いた状態となるようになっている。
ところで、本実施形態のパン原料収納容器110のように、パッキン113を用いて容器本体111と容器蓋112との間をシール(密閉)する場合、その密閉度が良すぎると、フック部118bによる容器蓋112の支持(押さえ)を解除した後において、すぐに容器蓋112が回動しない場合がある。この場合、パン原料収納容器110からパン容器80へとパン原料を投入するタイミングが遅れて、出来の良いパンが得られない場合が起こり得る。この点を考慮して、容器蓋112の内面側には、上述の微小な溝部GPが設けられているのである。微小な溝部GPの存在により、容器蓋112が容器本体111の開口部111aを閉じた状態における容器内の密閉度は、溝部GPが設けられない場合に比べて若干低下する。このために、ロック機構118による容器蓋112の支持が解除された場合に、容器蓋112がスムーズに回動しやすい。
なお、パッキン113は容器本体111内に水分等が入り込むのを抑制するために設けられたものである。このパッキン113を設けた意義を損なわないように、容器蓋112に設ける溝部GPは極力小さくするのが好ましい。また、容器蓋112とパッキン113との間に微小な隙間が得られればよいため、本実施形態以外の構成(例えば、パッキン113に凸部を設ける等)を採用しても構わない。
また、容器蓋112の内面には、上述のようにシリコン系のコーティング層CLを施している。このために、シリコン系の素材で構成されるパッキン113との相性がよく、容器蓋112とパッキン113とがくっついて、ロック機構118による閉状態が解除されても、容器蓋112がスムーズに回動しない場合がある。このために、本実施形態では、容器蓋112とパッキン113とが離れやすくなる効果を狙って、パッキン113の一部(弾性部113bの容器蓋112と当接する部分の一部)にシボ加工を施している。シボ加工を施す位置(本実施形態では図11(b)のハッチング部分)は本実施形態の位置に限らず、例えば、容器蓋112とパッキン113とが当接する当接面全体等でも構わない。
また、容器蓋112の係合部112bに形成された係合孔EHを長孔(板状部112aの板面と略平行な方向に延びる孔)とした理由も、容器蓋112とパッキン113とが離れやすくなることを狙ったものである。これについては、図13を参照しながら説明する。なお、図13(b)は、係合部112aに設けられる係合孔EHを長孔とせずに丸孔とした場合を比較用として示したものである。
図13(a)に示すように、係合孔EHを本実施形態のような長孔とすると、容器蓋112が閉位置から回動する際に、容器蓋112の係合孔EHと支軸115との位置関係にずれが生じる。一方、図13(b)に示すように、係合孔EHを丸孔とすると、このような相対移動は生じない。換言すると、係合孔EHが本実施形態のような長孔とされると、係合孔が丸孔とされる場合に比べて、容器蓋112が容器本体111に対して下側に移動する効果を得られる。このために、容器蓋112とパッキン113とが離れやすくなる効果が期待でき、パッキン113が容器内側に巻き込まれ、容器蓋112の開き具合が不十分となるといった事態を避けられる。
なお、容器蓋112を開いた状態から閉位置に戻す場合には、容器蓋112は、開く場合の動作と逆の動作を行う。このために、容器蓋112は、閉位置においてパッキン113に十分押さえつけられる。また、係合孔EHを支軸115に対して十分大きな孔(いわゆるバカ孔)とすると、閉位置において、容器蓋112にガタついて、容器蓋112がパッキン113に十分押さえつけられなくなる。この場合、パン原料収納容器110に収納されたパン原料がこぼれるといった事態が発生し、好ましくない。
本実施形態のパン原料収納容器110にパン原料を投入する場合には、ユーザは次のような動作を行えばよい。まず、ユーザは、指(例えば右手親指)を載置部118aに載せ、外向き(図14の右向き)に力を加える。これにより、ロック機構118の腕部118cが回転し、フック部118bが容器蓋112の外面を押さえない位置(第2の位置)に移動される。そして、この状態で、突起部116を指(例えば左手親指)で外向き(図14の左向き)に押すことによって、容器蓋112が回動して開いた状態が得られる。載置部118a及び突起部116を設けたことによって、ユーザは簡単に容器蓋112を開くことができる。なお、載置部118aは、指を載せる載置面が断面視略L字状となっている(図14参照)ために、指の掛かりがよい。
容器蓋112が開かれる場合、突起部116(正確には、突起部116に取り付けられるカバー部材116aの一部)が固定部材114の一部に衝突して、容器蓋112の最大開き角度が規制される。本実施形態では、例えば、閉位置からの回転角度が略95°となるように調整されている。このように閉位置からの回転角度を90°より大きくすれば、図14に示すように、パン原料収納容器110を台2上に置いて容器本体111にパン原料を入れる際に、容器蓋112が閉位置に向かって回動しにくい(倒れ難い)。
ただし、この場合でも、振動等によって容器蓋112が倒れる可能性がある。このために、本実施形態では、容器蓋112の折曲部112cに蓋側凸部LPを設け、固定部材114に固定部材側凸部FPを設けた構成となっている。ユーザの手によって容器蓋112が閉位置から開かれる場合(図14のような姿勢とする場合)、最大開き角度に至る前に蓋側凸部LPが固定部材側凸部FPと衝突するようになっている。しかし、係合孔EHが長孔とされているために、蓋側凸部LPが固定部材側凸部FPを乗り越える形で、容器蓋112は2つの凸部LP、FP間の衝突を回避して最大開き角度まで開くことができる。
蓋側凸部LPが固定部材側凸部FPを乗り越えた後は、容器蓋112は自重によって下方に移動する。この結果、蓋側凸部LPと固定部材側凸部FPとは、図14の破線円内(拡大図)に示すような関係となる。すなわち、容器蓋112が閉位置に向かって回動しようとしても(図14において右方向に倒れようとする)、蓋側凸部LPの動きが固定部材側凸部FPに邪魔されて、容器蓋112が閉位置に向かって回動するのが規制される。
なお、パン原料収納容器110が自動製パン器1にセットされた状態(例えば図10(a)に示す姿勢となる)で容器蓋112が開かれる場合には、容器蓋112は、係合孔EHが長孔とされているために、自重によって下がりながら(固定部材114から離れながら)開かれる。このために、蓋側凸部LPの動きが固定部材側凸部FPによって邪魔されて容器蓋112の開きが不完全となるという事態は避けられるようになっている。
また、蓋側凸部LP及び固定部材側凸部FPの構成は、本実施形態の構成に限定される趣旨ではない。すなわち、数、配置、形状等について適宜変更しても構わない。
次にパン原料収納容器110が自動製パン器1にどのように取り付けられるかについて、主に、図10、図15、図16を参照しながら説明する。なお、図15は、本実施形態の自動製パン器のパン原料収納容器が取り付けられる蓋の構成を示す概略図で、図15(a)は蓋を斜め下から見た場合の斜視図、図15(b)は蓋を下から見た場合の平面図である。図16は、図15(b)のD−D位置における概略断面図である。なお、図15及び図16は、蓋40にパン原料収納容器110が取り付けられた状態を示している。
図10に示すように、パン原料収納容器110の蓋40による保持が可能となるように、パン原料収納容器110の固定部材114には、背面側に第1の取付用係合部119、前面側に第2の取付用係合部120が形成されている。
第1の取付用係合部119は、固定部材114の側面から外側に向けて突出する(図16において斜め上方に向けて突出する)第1の係合傾斜面119aを有する。この第1の取付用係合部119は、背面側の両端部近傍に、それぞれ近接して2つずつ、計4つ設けられている。ただし、この第1の取付用係合部119の数、及び配置は一例であり、適宜変更してよい。
第2の取付用係合部120は、ハウジング部120aと、ハウジング部120aに、その一部が収容された取付用フック部(可動式フック部)120bと、を有する。取付用フック部120bは、ハウジング部120a内部に設けられる付勢部材120c(図16参照)によって、容器本体111の短手方向と略平行な方向外向き(図16において左向き)に付勢されている。また、取付用フック部120bは、付勢部材120cの付勢力に抗する方向(図16において右向き)に力を加えると、その方向に移動可能となっており、ハウジング部120aからの突出量が可変となっている。
図15及び図16に示すように、自動製パン器1の蓋40の内部にはフレーム部材42(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が収容され、このフレーム部材42は、蓋40の裏面側から内カバー43(例えば板金製)によって支持されている。フレーム部材42には、蓋40を閉状態とした場合において本体10の背面寄りとなる部分に、ドーム状壁42bによって形成される凹部空間45が形成されている。この凹部空間45は、パン原料収納容器110を保持する保持部である。なお、フレーム部材42の、蓋40を閉状態とした場合において本体10の前面寄りとなる部分には、壁部42aによって囲まれた略矩形状(蓋40を裏面側から見た場合を想定)の貫通孔44が設けられている。壁部42aは、蓋40の上面側に配置される覗き窓41に当接して覗き窓41を支持する。
凹部空間45(パン原料収納容器110の保持部となる)内の前面(図16において左側)には、パン原料収納容器110が保持部45に保持された場合に、第2の取付用係合部120の取付用フック部120bと係合する係合溝45aが形成されている。また、この保持部45内の背面(図16において右側)には、パン原料収納容器110が保持された場合に、パン原料収納容器110の第1の係合傾斜面119aと略平行となって第1の係合傾斜面119aに当接する、第2の係合傾斜面45bが形成されている。
この保持部45内にパン原料収納容器110を収納する場合、ユーザは、第2の取付用係合部120の取付用フック部120bがハウジング部120a内に引っ込む方向の力(付勢部材120cの付勢力に反する方向の力)を付与する。そして、取付用フック部120bのハウジング部120aからの突出量が減じられた状態で、パン原料収納容器110を第1の係合傾斜面119aが第2の係合傾斜面45bにぶつからないように斜めにして保持部45内に押し込む。その後、取付用フック部120bに加えていた力を抜いて、取付用フック部120bを突出方向に移動させ、取付用フック部120bと係合溝45aとを係合させる。
このようにして、パン原料収納容器110を保持部45に嵌め込むと、蓋40を閉状態とした場合において(図16の状態が該当)、第1の係合傾斜面119aと第2の係合傾斜面45bとが当接した状態となる。そして、パン原料収納容器110は、第2の係合傾斜面45bから鉛直方向上向き(図16の上向き)の力と、取付用フック部120bの係合溝45aへの係合が解除される方向と反対方向の力(図16の左向きの力)とを受けることになる。このため、保持部45内で、パン原料収納容器110は、取付用フック部120bと係合する係合溝45aと、第1の係合傾斜面119aに当接する第2の係合傾斜面45bと、によって支持され、保持部45に保持されることになる。
なお、パン原料収納容器110を保持部45から取り外す場合には、取付用フック部120bをハウジング部120aに引っ込む方向に押圧して、取付用フック部120bと係合溝45aとの係合を解除する。そして、第1の係合傾斜面119aが第2の係合傾斜面45bによって邪魔されないように斜めに引き出せばよい。すなわち、ユーザは、取付用フック部120bを押すだけで、簡単に、パン原料収納容器110の蓋40への取付及び取外しを行える。
なお、取付用フック部120bを有する第2の取付用係合部120やロック機構118等を、例えば、固定部材114ではなく容器本体111に設ける構成としてもよい。しかし、このような構成の場合、固定(リベット等を用いた固定)のために容器本体111内に凹凸が形成される可能性がある。容器本体111内に凹凸が形成されると、粉体パン原料が収納される容器内にパン原料が残留しやすくなることがある。このために、本実施形態のように、第2の取付用係合部120やロック機構118等は、固定部材114に設けるのが好ましい。
図17は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図17に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置130によって行われる。制御装置130は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置130は、焼成室30の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置130には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。
制御装置130には、上述の操作部20と、焼成室30の温度を検知する温度センサ15と、混練モータ駆動回路131と、粉砕モータ駆動回路132と、ヒータ駆動回路133と、第1のソレノイド駆動回路134と、第2のソレノイド駆動回路135と、が電気的に接続されている。
混練モータ駆動回路131は、制御装置130からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御するための回路である。また、粉砕モータ駆動回路132は、制御装置130からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御するための回路である。ヒータ駆動回路133は、制御装置130からの指令の下でシーズヒータ31の動作を制御するための回路である。第1のソレノイド駆動回路134は、制御装置130からの指令の下で、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入する際に駆動する自動投入用ソレノイド16の駆動を制御するための回路である。第2のソレノイド駆動回路135は、制御装置130からの指令の下でクラッチ56(図3参照)の状態を切り替えるクラッチ用ソレノイド73(図3参照)の駆動を制御するための回路である。
制御装置130は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、混練モータ駆動回路131を介して混練モータ50による混練ブレード101及び補完混練ブレード102の回転の制御、粉砕モータ駆動回路132を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード92の回転の制御、ヒータ駆動回路133を介してシーズヒータ31による加熱動作の制御、第1のソレノイド駆動回路134を介して自動投入用ソレノイド16によるロック機構118の動作制御、第2のソレノイド駆動回路135を介してクラッチ用ソレノイド73によるクラッチ56の切替制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
(自動製パン器の動作)
次に、以上のように構成される自動製パン器1でパンを製造する場合の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に、自動製パン器1の動作を説明する。
(自動製パン器の動作)
次に、以上のように構成される自動製パン器1でパンを製造する場合の動作について説明する。ここでは、自動製パン器1によって米粒を出発原料に用いてパンを製造する場合を例に、自動製パン器1の動作を説明する。
米粒が出発原料に用いられる場合には、米粒用製パンコースが実行される。図18は自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図18に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、休止工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、パン容器80のブレード回転軸82にユニット用シャフト91を被せることによって、ブレードユニット90をブレード回転軸82に取り付ける。上述のように、ブレードユニット90がガード106を備える構成であるために、この作業時にユーザの指が粉砕ブレード92に触れることがなく、ユーザは安全に作業を行える。このブレードユニット90の取り付け作業後に、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば食塩、砂糖、ショートニング等)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器80に入れる。
また、ユーザは、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を計量してパン原料収納容器110の容器本体111に入れる。この作業時において、蓋側凸部LPと固定部材側凸部FPとが設けられた効果により、開状態にある容器蓋112が勝手に倒れるという事態は、起こりにくくなっている。そして、ユーザは、収納すべきパン原料を容器本体111に収納したら、ロック機構118を用いて、容器蓋112によって容器本体111の開口部111aが閉じられた閉状態を維持するようにする。
なお、パン原料収納容器110に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイースト等が挙げられる。グルテンの代わりに、例えば小麦粉、増粘剤(グアガム等)及び上新粉のうちの少なくとも1つをパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤、上新粉等は用いずに、例えばドライイーストのみがパン原料収納容器110に収納されるようにしてもよい。更に、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングといった調味料についてもパンの製造工程の途中で自動投入すべく、例えばグルテン、ドライイーストと共に、これらの原料をパン原料収納容器110に収納するようにしてもよい。この場合には、パン容器80に予め投入しておくパン原料は米粒及び水(単なる水の代わりに、例えばだし汁のような味成分を有する液体、果汁やアルコールを含有する液体等でもよい)となる。
この後、ユーザは、パン容器80を焼成室30に入れ、更に、パン原料収納容器110を蓋40の保持部45に嵌め込む。そして、ユーザは蓋40を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御装置130は、米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースの制御動作を開始する。
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置130の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、パン容器80に予め投入されたパン原料が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では30分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制することが可能になる。また、浸漬時間を短時間とするために、シーズヒータ31に通電して、焼成室30の温度が高められるようにしてもよい。
また、浸漬工程の初期段階で粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよく、更に、その後も、断続的に粉砕ブレード92が回転されるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率が高められる。
上記所定時間が経過すると、制御装置130の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード92が高速回転(例えば7000〜8000rpm)される。この粉砕工程では、制御装置130は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸82を逆方向回転(図8では時計方向回転、図9では反時計方向回転)させる。ブレード回転軸82の逆方向回転により、粉砕ブレード92の切削刃が回転方向前方となるために、粉砕ブレード92を用いた粉砕機能が得られる。
なお、粉砕モータ60を用いて粉砕ブレード92を回転させる場合、制御装置130は、クラッチ用ソレノイド73を駆動させて、クラッチ56が動力遮断を行うようにする(図3(a)の状態とする)。上述したように、このように制御しないとモータ破損の可能性があるからである。
粉砕ブレード92を回転させるために、ブレード回転軸82が逆方向回転された場合、ドーム状カバー93もブレード回転軸82の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってドーム状カバー93の回転はすぐに阻止(停止)される。なお、粉砕ブレード92は、粉砕工程の初期段階では低速で回転され、その後、高速回転されるようにするのが好ましい。
粉砕ブレード92を回転させるためのブレード回転軸82の回転に伴うドーム状カバー93の回転方向は、図9において反時計方向であり、混練ブレード101は、それまで折り畳み姿勢(図9(a)に示す姿勢)であった場合には、米粒と水が含まれる混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図9(b)に示す姿勢)に転じていく。
混練ブレード101が開き姿勢になると、第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)から逸脱する。このために、カバー用クラッチ103は、ブレード回転軸82とドーム状カバー93との連結を切り離す。また、開き姿勢になった混練ブレード101は、図9(b)に示すように、その一部(正確には、先端側に設けられる緩衝材107)がパン容器80の内側壁(詳細には粉砕効率を向上するためにパン容器80の内壁に設けられた畝状の凸部80b)に当接するために、ドーム状カバー93の回転は阻止(停止)される。
なお、粉砕工程においては、粉砕ブレード92の回転中に振動が発生するが、緩衝材107がパン容器80と接触する構成を採用しているために、この振動によって生じる衝突音が緩和されるようになっている。
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード92の回転は本実施形態では間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード92の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器80内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
粉砕工程においては、米粒の粉砕が回転停止したドーム状カバー93内で行われるから、米粒がパン容器80の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード106の開口部106dからドーム状カバー93内に入る米粒は、静止したスポーク106cと回転する粉砕ブレード92との間でせん断されるので、効率良く粉砕が行える。また、ドーム状カバー93に設けられるリブ93eによって、米粒と水とが含まれる混合物の流動(粉砕ブレード92の回転と同方向の流動である)が抑制されるので、効率良く粉砕が行える。
また、粉砕された米粒と水とを含む混合物は、ドーム状カバー93のリブ93eによって窓93dの方向に誘導されて、窓93dからドーム状カバー93の外に排出される。ドーム状カバー93のリブ93eは、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ93eの表面に滞留しにくく、スムーズに窓93dの方へ流れていく。更に、ドーム状カバー93内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部81の上の空間に存在していた混合物が凹部81に入り、凹部81からガード106の開口部106dを通ってドーム状カバー93内に入いる。このような循環をさせつつ粉砕ブレード92による粉砕を行うので、効率良く粉砕できる。
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了が、粉砕モータ60の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断される構成等としても構わない。また、パッキン113を設けた効果により、この粉砕工程で発生する水蒸気は、パン原料収納容器110の容器内に入り込み難くなっている。
粉砕工程が終了すると、制御装置130の指令によって休止工程が実行される。この休止工程は、粉砕工程によって上昇したパン容器80内の内容物の温度を下げる冷却期間として設けられている。温度を下げるのは、次に行われる練り工程が、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で実行されるようにするためである。本実施形態では、休止工程は所定時間(30分)とされているが、場合によっては、パン容器80の温度等が所定の温度となるまで、休止工程が行なわれる構成等としても構わない。
休止工程が終了すると、制御装置130の指令によって練り工程が開始される。練り工程の開始にあたって、制御装置130はクラッチ用ソレノイド73を駆動して、クラッチ56が動力伝達を行うようにする(図3(b)の状態)。そして、制御装置130は混練モータ50を制御してブレード回転軸82を正方向回転(図8では反時計方向回転、図9では時計方向回転)させる。
ブレード回転軸82を正方向回転させると、粉砕ブレード92も正方向に回転する。この場合、粉砕ブレード92は、切削刃が回転方向後方となって回転し、粉砕機能を発揮しない。粉砕ブレード92の回転により、粉砕ブレード92の周囲のパン原料が正方向に流動する。それにつられてドーム状カバー93が正方向(図9では時計方向)に動くと、混練ブレード101は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図9(b)参照)から折り畳み姿勢(図9(a)参照)へと角度を変えて行く。これにより、第2係合体103bの係合部103bbが第1係合体103aの係合部103abの回転軌道(図8の破線参照)に干渉する角度となる。そして、カバー用クラッチ103がブレード回転軸82とドーム状カバー93とを連結し、ドーム状カバー93はブレード回転軸82によって本格的に駆動される態勢に入る。ドーム状カバー93と折り畳み姿勢になった混練ブレード101とは、ブレード回転軸82とともに正方向回転する。
なお、以上に説明したカバー用クラッチ103の連結を確実に行うために、練り工程初期におけるブレード回転軸82の回転は、間欠回転或いは低速回転とするのが好ましい。また、上述のように、混練ブレード101が折り畳み姿勢になると、混練ブレード101の延長上に補完混練ブレード102が並ぶために、混練ブレード101があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
混練ブレード101(この用語は、折り畳み姿勢においては、補完混練ブレード102を含む表現として用いる。以下同様。)の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置130によって制御される。混練ブレード101の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置130は自動投入用ソレノイド16を駆動させて、パン原料収納容器110のロック機構118の腕部118cを回動させる。これにより、フック部118bが容器蓋112を押さえた状態が解除され、容器蓋112が重力によって回動する。すなわち、容器本体111の開口部111aが開かれて、例えば、グルテン、ドライイーストといったパン原料がパン容器80内に自動投入される。
上述のように、パン原料収納容器110は、パン原料が内部に残留し難いように工夫されているために、パン原料収納容器110にはパン原料がほとんど残ることなく、自動投入が完了できる。また、パン原料容器110の容器蓋112には溝部GPが形成されている。更には、パン原料収納容器110は、支軸115と係合する係合孔EHが長孔となっているとともに、パッキン113の一部にシボ加工が施されている。このために、パン原料収納容器110の容器蓋112は、パッキン113を内部側に巻き込むことなくスムーズに回転する。
また、蓋40が閉じられた状態において、覗き窓41が前面側となり、パン原料収納容器110が背面側となるようになっており、パン原料収納容器110の容器蓋112は、背面側に向けて回動してその板状面が鉛直方向と略平行な状態(図16の状態)となる。このため、パン原料収納容器110を用いた自動投入が行われた後においても、覗き窓41を利用した、パン容器80内の様子の観察が行い難くなるということはない。
なお、本実施形態では、パン原料収納容器110に収納されるパン原料を、混練ブレード101が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード101が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード101が回転している状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散することができるので好ましい。
パン原料収納容器110に収納されたパン原料がパン容器80に投入された後は、混練ブレード101の回転によって、パン原料は所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード101が生地を振り回してパン容器80の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード101の回転によりドーム状カバー93も回転する。ドーム状カバー93が回転すると、ドーム状カバー93に形成されるリブ93eも回転するために、ドーム状カバー93内のパン原料は速やかに窓93dから排出され、混練ブレード101が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
なお、練り工程においては、ドーム状カバー93と共にガード106も正方向に回転する。ガード106のスポーク106cは、正方向回転時、ガード106の中心側が先行しガード106の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード106は、正方向に回転することにより、ドーム状カバー93内外のパン原料(パン生地)をスポーク106cで外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
また、ガード106の柱106eは、ガード106が正方向に回転するときに回転方向前面となる側面106ebが、上向きに傾斜する構成となっている。このために、混練時、ドーム状カバー93の周囲のパン原料(パン生地)が柱106eの側面106ebで上方に跳ね上げられる。跳ね上げられたパン原料は、上方のパン原料の塊(生地)に同化するために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(本実施形態では10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ50の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に、練り工程の終了時点が判断される構成等としても構わない。
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で投入するようにすればよい。
練り工程が終了すると、制御装置130の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード101を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
発酵工程が終了すると、制御装置130の指令によって焼成工程が開始される。制御装置130はシーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させる。そして、制御装置130は、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋40を開けてパン容器80を取り出して、パンの製造を完了させる。
なお、パン容器80内のパンは、例えば、パン容器80の開口を斜め下に向けることで取り出すことができる。そして、このパンの取り出しと同時に、ブレード回転軸82に取り付けられたブレードユニット90もパン容器80から取り出される。ガード106の存在により、このパンの取り出し作業時にユーザは粉砕ブレード92に触れることがなく、ユーザは安全にパンの取り出し作業を行える。パンの底には、ブレードユニット90の混練ブレード101及び補完混練ブレード102(パン容器80の凹部81から上側に突き出ている)の焼き跡が残る。しかし、ドーム状カバー93とガード106が凹部81の中に収容される構成であるために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことは抑制される。
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
例えば、以上に示した実施形態では、パン原料収納容器110が蓋40に取り付けられる構成を示したが、場合によっては、パン原料収納容器110は、本体10に取り付けられるようにしてもよい。
また、以上においては、自動製パン器1によって、米粒を出発原料としてパンを製造する場合を示したが、自動製パン器1は例えば小麦粉や米粉等の穀物粉を出発原料としてパンを製造することも可能である(製パン工程は適宜変更される)。そして、小麦粉や米粉を出発原料に用いてパンを製造する場合には、パン原料収納容器110はレーズンやナッツ等の具材入りパンを製造する場合の具材を入れるために用いることも可能である。
また、以上に示した実施形態においては、米粒が出発原料として用いられる場合を例に、自動製パン器の構成及び動作が説明された。しかし、本発明は、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒が出発原料として用いられる場合にも、適用可能である。
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、米粒用製パンコースは他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程後の休止工程は省いてもよい。
また、以上に示した実施形態では、粉砕ブレード92及び混練ブレード101がブレードユニット90に含まれ、ブレード回転軸82に一体的に取り付けられる(取り外される)構成とした。しかし、この構成に限らず、粉砕ブレード92及び混練ブレード101は、別々にブレード回転軸82に取り付けられる構成であっても構わない。また、場合によっては、粉砕ブレードと混練ブレードとを別々とせず、粉砕機能と混練機能とを発揮する1つのブレードのみを備える構成等としても構わない。
また、以上に示した実施形態では、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、別々のモータが使用される構成とした。しかし、本発明の自動製パン器は、この構成に限定される趣旨ではない。すなわち、例えば1つのモータのみが備えられる構成とし、粉砕ブレード92によって穀物粒が粉砕される場合と、混練ブレード101によってパン生地が練り上げられる場合とで、同一のモータを使用する構成としても構わない。
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
1 自動製パン器
10 本体
30 焼成室
40 蓋(蓋部)
80 パン容器
110 パン原料収納容器
111 容器本体
111a 開口部
112 容器蓋
112a 板状部
112b 係合部
112c 折曲部
113 パッキン(シール部材)
114 固定部材
115 支軸
116 突起部(ストッパ部)
118 ロック機構
EH 係合孔
FP 固定部材側凸部(第1の凸部)
LP 蓋側凸部(第2の凸部)
10 本体
30 焼成室
40 蓋(蓋部)
80 パン容器
110 パン原料収納容器
111 容器本体
111a 開口部
112 容器蓋
112a 板状部
112b 係合部
112c 折曲部
113 パッキン(シール部材)
114 固定部材
115 支軸
116 突起部(ストッパ部)
118 ロック機構
EH 係合孔
FP 固定部材側凸部(第1の凸部)
LP 蓋側凸部(第2の凸部)
Claims (7)
- 自動製パン器に着脱自在に設けられ、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を収納しておくために用いられるパン原料収納容器であって、
開口部を有する容器本体と、
前記開口部を取り囲むように前記容器本体に取り付けられるシール部材と、
前記開口部を塞ぐ閉位置において前記シール部材と当接する板状部を有し、前記閉位置から前記板状部が回動することにより前記開口部を開放する容器蓋と、
前記容器本体に対して固定状態となるように設けられ、前記容器蓋の回転中心となる支軸と、
前記容器蓋を前記閉位置で維持するロック機構と、を備え、
前記板状部の一端側の両端部には、前記支軸が挿通される係合孔を有する係合部が設けられ、
前記係合孔は、前記板状部の板面と略平行な方向に延びる長孔である、パン原料収納容器。 - 前記シール部材の前記容器蓋と当接する部分の少なくとも一部には、シボ加工が施されている、請求項1に記載の自動製パン器。
- 前記シール部材を前記容器本体に固定する固定部材を更に備える、請求項1又は2に記載の自動製パン器。
- 前記板状部の一端側には、外部側に向けて折り曲げられてなる折曲部が形成され、
前記折曲部には、
その先端から突出して前記容器蓋の最大開き角度を規制するストッパ部と、
前記容器本体が下、前記容器蓋が上となる姿勢とした場合に、前記固定部材に設けられる第1の凸部と協働して、前記ストッパ部で規制される位置まで開かれた前記容器蓋が前記閉位置方向に向かって回動するのを規制する第2の凸部と、
が設けられている、請求項3に記載のパン原料収納容器。 - 請求項1から4のいずれかに記載のパン原料収納容器を備える、自動製パン器。
- パン原料が投入されるパン容器を本体の焼成室に受け入れて、前記パン容器内で穀物粒を粉砕する粉砕工程を含むパンの製造工程が実行されるように設けられ、
前記パン原料収納容器は、前記粉砕工程後に前記パン容器に投入される粉体パン原料を収納するために用いられる、請求項5に記載の自動製パン器。 - 本体内に設けられ、パン原料が投入されるパン容器が収容される焼成室と、
前記焼成室の開口を開閉する蓋部と、を備え、
前記パン原料収納容器は前記蓋部に取り付けられる、請求項5又は6に記載の自動製パン器。
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